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特開2023-149153粘着フィルム、光学フィルム及び有機EL表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149153
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粘着フィルム、光学フィルム及び有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231005BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231005BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231005BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09J7/38
C08L53/02
C08K5/13
C09J153/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057568
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】山井 敦史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BP011
4J002EJ007
4J002EU176
4J002EU186
4J002FD020
4J002FD056
4J002FD077
4J002FD340
4J002GP00
4J004AA05
4J004AB01
4J004DB03
4J004EA05
4J004EA06
4J004FA08
4J040DM011
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】

【課題】 低透湿性、紫外線の吸収性、湿熱耐性、耐光性により優れた粘着フィルムを提供する。また、有機EL表示装置等の段差形状を有する光学装置に用いる場合に、透明性、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、粘着フィルムである。当該粘着フィルムは、(A)水素添加ブロック共重合体と、(B)紫外線吸収剤と、(C)酸化防止剤とを含み、前記(A)水素添加ブロック共重合体は、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含み、前記(B)紫外線吸収剤は、25℃におけるFedorsのSP値が11.0~12.0(cal/cm1/2である。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水素添加ブロック共重合体と、(B)紫外線吸収剤と、(C)酸化防止剤とを含み、
前記(A)水素添加ブロック共重合体は、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含み、
前記(B)紫外線吸収剤は、25℃におけるFedorsのSP値が11.0~12.0(cal/cm1/2であることを特徴とする、粘着フィルム。
【請求項2】
前記(B)紫外線吸収剤の含有量は、(A)水素添加ブロック共重合体100質量部に対して、5~70質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率が10.0%以下であり、
40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が100g/m/24時間以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
厚みを50μmとした場合のヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
測定周波数を1Hzとした場合の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.50MPaであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
85℃、85%RH環境下において1000時間保存後の、厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率が10.0%以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記(B)紫外線吸収剤は、23℃において液状であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記(A)水素添加ブロック共重合体は、水素添加スチレン系共重合体であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記(C)酸化防止剤は、フェノール化合物であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着フィルムを含む、光学フィルム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着フィルムを含む、有機EL表示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、光学フィルム及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以降、有機ELと略す場合がある)表示装置はスマートフォンをはじめ様々な用途に広く用いられている。有機EL表示装置に含まれる有機EL素子は、水分に弱く、大気中の水分によって劣化することが知られている。このため、有機EL表示装置の表示パネル部にはバリア機能を有する光学フィルムが設けられており、光学フィルムを積層するための粘着剤についても大気中の水分を透過しにくくすること(低透湿性)が求められている。
【0003】
特許文献1には、ジエン及び1つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体を含む封止樹脂及び特定の多官能性の活性エネルギー線重合性化合物を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムが、外部から有機電子デバイスに流入される水分又は酸素を効果的に遮断することができ、高温高湿等の苛酷条件での信頼性だけでなく、優れた光特性を有することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ブチレンから誘導された高分子を含み、5%ストレイン、1Hzの周波数及び30℃~150℃の温度範囲のうちいずれかの温度で8mm直径のフラットパネル治具を利用してせん断応力により測定したムーニー粘度(η*)が5000~107Pa・sである、粘着剤組成物を用いた封止フィルムが、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を効果的に遮断できる構造の形成が可能であり、パネル製造工程のうちの工程性が優秀で同時に高温高湿条件での耐熱維持力が優れる特性を有することが開示されている。
【0005】
一般に、有機EL表示装置は屋外で使用されるスマートフォン等のモバイルデバイスに用いられており、有機EL表示装置の表示パネルの表面には、外光の反射光を防ぐ目的で円偏光板が用いられている。円偏光板は有機EL素子からの光も吸収してしまうため、有機EL表示装置が一定の明るさを保つためには有機EL素子の発光強度を高める必要がある。このため、有機EL表示装置の消費電力が高くなっている。近年、有機EL表示装置では、消費電力を低減するという要求が高まっており、円偏光板を使用しない有機EL表示装置が期待されている。
一方、円偏光板は、外部から有機EL表示装置の表示パネル内へ入射される紫外線等の光を吸収する役割も果たしている。従って、円偏光板を有機EL表示装置から取り除くと、表示パネルの有機部材や有機EL素子が外部からの紫外線等の光に暴露され、有機EL表示装置において光による劣化が促進されるおそれがある。このため、円偏光板に代わって、紫外線等の光を吸収する部材の導入が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-513155号公報
【特許文献2】特開2019-194348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている粘着性組成物は、水分の侵入を効果的に遮断しながら、高温高湿条件での信頼性が維持でき、光学特性にも優れることが開示されているものの、紫外線の透過性や耐光性等については検討されていない。そのため、特許文献1に開示されている粘着性組成物を、円偏光板を使用しない有機EL表示装置に用いた場合には、紫外線等の光による有機EL表示装置の劣化を引き起こすおそれがあった。
また、特許文献2に開示されている組成物は、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を効果的に遮断できる構造の形成が可能であり、高温高湿条件での耐熱維持力が優れているものの、粘着性組成物自体の水分又は酸素を効果的に遮断できる効果や紫外線等の光による有機EL表示装置の劣化についての評価は行われておらず、特許文献2に開示されている粘着剤組成物を、円偏光板を使用しない有機EL表示装置に用いた場合には、大気中の水分や紫外線等の光による有機EL表示装置の劣化を引き起こすおそれがあった。
【0008】
そこで本発明の目的は、低透湿性、紫外線の吸収性、湿熱耐性、耐光性により優れた粘着フィルムを提供することである。また、有機EL表示装置等の表示面内に段差形状を有する光学装置に用いる場合に、透明性、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを提供することである。さらに本発明の粘着フィルムを用いた光学フィルム及び有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行い、特定のブロック共重合体と、特定の紫外線吸収剤と、酸化防止剤を含む粘着フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本開示技術を完成させた。即ち、本開示技術は以下の通りである。
【0010】
本開示技術の一態様によれば、(A)水素添加ブロック共重合体と、(B)紫外線吸収剤と、(C)酸化防止剤とを含み、前記(A)水素添加ブロック共重合体は、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含み、前記(B)紫外線吸収剤は、25℃におけるFedorsのSP値が11.0~12.0(cal/cm1/2であることを特徴とする、粘着フィルムを提供することができる。
前記(B)紫外線吸収剤の含有量は、(A)水素添加ブロック共重合体100質量部に対して、5~70質量部であることが好ましい。
前記粘着フィルムは、厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率が10.0%以下であり、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が100g/m/24時間以下であることが好ましい。
前記粘着フィルムは、厚みを50μmとした場合のヘイズ値が2.0%以下であることが好ましい。
前記粘着フィルムは、測定周波数を1Hzとした場合の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.50MPaであることが好ましい。
前記粘着フィルムは、85℃、85%RH環境下において1000時間保存後の、厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率が10.0%以下であることが好ましい。
前記(B)紫外線吸収剤は、23℃において液状であることが好ましい。
前記(A)水素添加ブロック共重合体は、水素添加スチレン系共重合体であることが好ましい。
前記(C)酸化防止剤は、フェノール化合物であることが好ましい。
本開示技術の別の一態様によれば、前記粘着フィルムを含む光学フィルムを提供することができる。
本開示技術の別の一態様によれば、前記粘着フィルムを含む有機EL表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示技術によれば、低透湿性、紫外線の吸収性、湿熱耐性、耐光性により優れた粘着フィルムを提供することができる。また、有機EL表示装置等の段差形状を有する光学装置に用いる場合に、透明性、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを提供することができる。さらに本発明の粘着フィルムを用いた光学フィルム及び有機EL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示技術の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0013】
<<<粘着フィルム>>>
本開示の粘着フィルムは、(A)水素添加ブロック共重合体と、(B)紫外線吸収剤と、(C)酸化防止剤とを含む。
【0014】
<<粘着フィルムの構成>>
<(A)水素添加ブロック共重合体>
(A)水素添加ブロック共重合体は、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含む共重合体である。
ここで水素添加とは、ブロック共重合体に含まれる共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックの不飽和結合に対し、水素を付加したものであることを示す。(A)水素添加ブロック共重合体は、一部又は全ての不飽和結合を水素添加したブロック共重合体を用いることが可能であるが、全ての不飽和結合を水素添加したブロック共重合体が好ましく用いられる。(A)水素添加ブロック共重合体は、本開示の粘着フィルムの低透湿性、耐光性をより優れたものとすることができる。
【0015】
(A)水素添加ブロック共重合体は、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックを含む。(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等由来の単量体単位を含むものを挙げることができる。
【0016】
(A)水素添加ブロック共重合体は、(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを含む。(a2)水素添加された共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が水素添加された単量体単位を含むものを挙げることができる。
【0017】
(A)水素添加ブロック共重合体は、例えば、(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含むブロック共重合体を合成した後、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを水素添加することで得ることができる。
【0018】
(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含むブロック共重合体の合成方法は、特に限定されず公知の方法を用いることが可能であり、例えば、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができる。
【0019】
(a1)芳香族ビニル単量体単位を含む重合体ブロックと、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックとを含むブロック共重合体を水素添加する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることが可能であり、例えば、20~150℃、0.1~10.0MPaの水素加圧下、水素添加触媒の存在下でブロック共重合体と水素を反応させる方法を挙げることができる。
【0020】
水素添加触媒としては、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物等を用いることができ、より具体的には、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;
Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;
Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と、有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;
Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;
水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0021】
(A)水素添加ブロック共重合体としては、水素添加スチレン系共重合体が好ましく、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBSBS)共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン(SIS)共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン(SISIS)共重合体、そしてポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SISBS)共重合体等のトリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、テーパーブロック共重合体、スターブロック共重合体等のブロック共重合体の水素添加物を用いることができる。なお、(A)水素添加ブロック共重合体は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。
【0022】
なお、(A)水素添加ブロック共重合体は市販のものを用いることも可能である。市販の(A)水素添加ブロック共重合体としては、旭化成ケミカルズ社製のタフテック(登録商標)、クレイトン社製のクレイトン(登録商標)、クラレ社製のセプトン(登録商標)、JSR社製のダイナロン等を挙げることができる。
【0023】
(A)水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量は、10,000~500,000とすることができ、20,000~400,000が好ましく、30,000~300,000がより好ましい。(A)水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量がかかる範囲にある場合には、低透湿性、湿熱耐性、耐光性により優れた粘着フィルムを得ることができ、さらに密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを得ることができる。
【0024】
(A)水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリスチレン換算の分子量を基準として算出される。
【0025】
<(B)紫外線吸収剤>
(B)紫外線吸収剤は、25℃におけるFedorsのSP値(溶解度パラメーター)が11.0~12.0(cal/cm1/2である。(B)紫外線吸収剤の25℃におけるFedorsのSP値がかかる範囲にある場合には、透明性、低透湿性、紫外線の吸収性、耐光性により優れた粘着フィルムを得ることができる。
【0026】
(B)紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル系紫外線吸収剤等を用いることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうち、透明性、低透湿性、紫外線の吸収性、耐光性の観点でベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、(B)紫外線吸収剤は、23℃において液状であることが好ましい。このような(B)紫外線吸収剤を用いることで、透明性、低透湿性、紫外線の吸収性、耐光性により優れた粘着フィルムを得ることができる。
【0027】
<(C)酸化防止剤>
(C)酸化防止剤は、フェノール化合物、硫黄化合物、リン化合物、キノン化合物、アミン化合物を用いることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
フェノール化合物としては、例えば、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、Irganox1010、Irganox1330、Irganox3114、Irganox1035(以上、BASFジャパン社製)、Sumilizer MDP-S、Sumilizer GA-80(以上、住友化学社製)等を挙げることができる。
硫黄化合物としては、例えば、3,3’-チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TPL-R、Sumilizer TPM、Sumilizer TPS、Sumilizer MB、Sumilizer TP-D(以上、住友化学社製)等を挙げることができる。
リン化合物としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、Irgafos168、Irgafos38(以上、BASFジャパン社製)、Sumilizer GP(住友化学社製)等を挙げることができる。
キノン化合物としては、例えば、p-ベンゾキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン等を挙げることができる。
アミン化合物としては、例えば、ジメチルアニリンやフェノチアジン等を挙げることができる。
これらの酸化防止剤のうち、低透湿性、湿熱耐性、耐光性、密着性、段差吸収性(形状追従性)により優れた粘着フィルムを得ることができる点でフェノール化合物が好ましい。
【0028】
<その他の成分>
粘着フィルムは、本開示技術の効果を阻害しない限りにおいて、上述した成分以外のその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、粘着付与剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、相溶化剤、カップリング剤、架橋剤、溶媒等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうち、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを得ることができる点で、粘着付与剤、可塑剤を含むことが好ましく、粘着付与剤と可塑剤を併用することがより好ましい。
【0029】
粘着付与剤は、公知のものを用いることができ、例えば、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンのペンタエリスリトールエステル等のロジン系化合物;
天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂の水素添加誘導体、テルペンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂の水素添加誘導体、テルペン樹脂(モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、ポリペルテン等)、水素添加テルペン樹脂、等のテルペン系化合物;
脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素添加誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素添加誘導体、ジシクロペンタジエン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂の水素添加誘導体、C5/C9共重合系樹脂、C5/C9共重合系樹脂の水素添加誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素添加誘導体等の石油炭化水素系化合物;等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうち、石油炭化水素系化合物が好ましく、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素添加誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素添加誘導体がより好ましい。
【0030】
粘着付与剤の軟化点は、特に限定されないが、例えば、70~190℃とすることができ、80~160℃が好ましく、90~135℃がより好ましい。粘着付与剤の軟化点がかかる範囲にある場合には、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムを得ることができる。粘着付与剤の軟化点は、JIS K5902:1969「ロジン」に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定する。
【0031】
可塑剤は、公知のものを用いることができ、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、エポキシ等の熱可塑性樹脂;パラフィンオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の軟化剤;オリゴマー;動物油、植物油等の油分;灯油、重油、軽油、ナフサ等の石油留分;等の化合物を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうちブリードアウトを起こしにくいという点で、熱可塑性樹脂が好ましく、(A)水素添加ブロック共重合体との相溶性の点でポリオレフィンがより好ましく、液状ポリイソブチレン、液状ポリブテンがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、例えば、500~100,000とすることができ、500~80,000が好ましく、500~60,000がより好ましい。
【0032】
<<粘着フィルムの物性>>
<380~400nmの紫外線平均透過率>
粘着フィルムの厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率(以降、紫外線平均透過率と略す場合がある)は、10.0%以下が好ましく、9.0%以下がより好ましく、8.5%以下がさらに好ましい。粘着フィルムの紫外線平均透過率がかかる範囲にある場合には、粘着フィルムは十分に紫外線を吸収するため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、有機EL表示装置の紫外線による劣化を防止することが可能となる。
【0033】
粘着フィルムの紫外線平均透過率の測定方法は、粘着フィルムの厚みを50μmとして、分光分析装置を用い、粘着フィルムに対し380~400nmの波長の光の透過率を1nmごとに測定し、その値の平均値を求める。
【0034】
<40℃、90%RHにおける水蒸気透過度>
粘着フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過度(以降、水蒸気透過度と略す場合がある)は、100g/m/24時間以下が好ましく、90g/m/24時間以下がより好ましく、70g/m/24時間以下がさらに好ましい。粘着フィルムの水蒸気透過度がかかる範囲にある場合には、粘着フィルムは優れた低透湿性を有するため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、有機EL表示装置の大気中の水分による劣化を防止することが可能となる。
【0035】
粘着フィルムの水蒸気透過度の測定方法は、透湿度測定装置を用いて、JIS Z0208:1976に準じた方法で温度40℃、90%RHの条件(条件B)で測定する。粘着フィルムの厚みは50μmとして測定する。
【0036】
<ヘイズ値>
粘着フィルムの厚みを50μmとした場合のヘイズ値(以降、ヘイズ値と略す場合がある)は、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。粘着フィルムのヘイズ値がかかる範囲にある場合には、粘着フィルムは、優れた透明性を有するため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、有機EL表示装置の表示がより明瞭なものとすることが可能となる。
【0037】
粘着フィルムのヘイズ値の測定方法は、粘着フィルムの厚みを50μmとし、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136:2000に準じた方法にて測定する。
【0038】
<貯蔵弾性率>
粘着フィルムの測定周波数を1Hzとした場合の25℃における貯蔵弾性率は0.05~0.50MPaが好ましく、0.05~0.30MPaがより好ましい。粘着フィルムの貯蔵弾性率がかかる範囲にある場合には、粘着フィルムは、優れた柔軟性を有する。このため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、有機EL表示装置に存在する凹凸(段差形状)を吸収し、有機EL表示装置の表示面に凹凸を生じさせない(言い換えれば段差追従性を有する)。また、粘着フィルムは、多種にわたる光学フィルム等の被着体への粘着性に優れるため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、光学フィルム等の部品の密着性を優れたものとすることができ、光学フィルムの浮きや剥がれが生じにくくすることができる。
【0039】
粘着フィルムの貯蔵弾性率の測定方法は、動的粘弾性測定装置を用い、測定周波数を1Hzとし、測定温度を25℃として測定する。
【0040】
<湿熱処理後の紫外線平均透過率>
粘着フィルムの85℃、85%RH環境下において1000時間保存後の、厚みを50μmとした場合の380~400nmの紫外線平均透過率(以降、湿熱処理後の紫外線平均透過率と略す場合がある)が10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下がより好ましく、8.5%以下がさらに好ましい。粘着フィルムの湿熱処理後の紫外線平均透過率がかかる範囲にある場合には、粘着フィルムは、より優れた湿熱耐性を有するため、粘着フィルムを有機EL表示装置に用いた場合に、屋外等の高温高湿環境下で使用した場合においても、粘着フィルムは十分に紫外線を吸収し、有機EL表示装置の紫外線による劣化を防止することが可能となる。
【0041】
湿熱処理後の粘着フィルムにおける紫外線平均透過率の測定方法は、粘着フィルムの厚みを50μmとして、85℃、85%RH環境下において1000時間保存したのち、分光分析装置を用い、粘着フィルムに対し、380~400nmの波長の光の透過率を1nmごとに測定し、その平均値を求める。
【0042】
<<粘着フィルムの製造方法>>
所定量の(A)水素添加ブロック共重合体、(B)紫外線吸収剤、(C)酸化防止剤を秤量したのち攪拌混合し、粘着フィルム組成物を調製する。この際、必要に応じて、所定量の粘着付与剤、可塑剤等のその他の成分も同様に混合する。各成分の混合は、必要に応じて溶剤に溶解して又は加熱下で行うことができる。
【0043】
粘着フィルム組成物における(A)水素添加ブロック共重合体の含有量は、粘着フィルム組成物の全固形分質量を100質量%とした場合に、20~99質量%であることが好ましく、25~70質量%がより好ましい。本明細書における粘着フィルム組成物の全固形分質量とは、粘着フィルム組成物を完全に乾燥させた(溶媒を除去した)場合の質量を意味する。
【0044】
粘着フィルム組成物における(B)紫外線吸収剤の含有量は、粘着フィルム組成物の全固形分質量を100質量%とした場合に、1~30.0質量%が好ましく、3~25.0質量%がより好ましく、4.5~20.0質量%がさらに好ましい。
また、(A)水素添加ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、(B)紫外線吸収剤の含有量は、5~70質量部とすることが好ましく、10~60質量部とすることがより好ましい。
【0045】
粘着フィルム組成物における(C)酸化防止剤の含有量は、粘着フィルム組成物の全固形分質量を100質量%とした場合に、0.01~3.0質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましく、0.08~0.3質量%がさらに好ましい。
また、(A)水素添加ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、(C)酸化防止剤の含有量は、0.1~1.0質量部とすることが好ましく、0.2~0.5質量部とすることがより好ましい。
【0046】
粘着付与剤を添加する場合の粘着フィルム組成物における粘着付与剤の含有量は、粘着フィルム組成物の全固形分質量を100質量%とした場合に、5~40.0質量%が好ましく、10~35.0質量%がより好ましい。
また、(A)水素添加ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、粘着付与剤の含有量は、10~120質量部とすることが好ましく、20~100質量部とすることがより好ましい。
【0047】
可塑剤を添加する場合の粘着フィルム組成物における可塑剤の含有量は、粘着フィルム組成物の全固形分質量を100質量%とした場合に、5~40.0質量%が好ましく、10~35.0質量%がより好ましい。
また、(A)水素添加ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、可塑剤の含有量は、10~120質量部とすることが好ましく、20~100質量部とすることがより好ましい。
【0048】
粘着フィルムは、例えば、粘着フィルム組成物を剥離基材上に塗工し、必要に応じて乾燥させた後、保護フィルムを貼合することで作製することができる。
【0049】
基材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を挙げることができる。また、基材として、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、カラーフィルター、光拡散フィルム、視野角補償フィルム等の光学フィルムを用いることで、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いることができる。
【0050】
保護フィルムは、粘着フィルムの基材とは反対側表面を保護するものであり、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を用いることができる。
保護フィルムは、保護フィルムと粘着フィルムの密着力が、基材と粘着フィルムの密着力よりも低くなるものを選択することが好ましい。保護フィルムと粘着フィルムの密着力を、基材と粘着フィルムの密着力よりも低くするため、保護フィルムの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0051】
粘着フィルムの厚みは、特に限定されないが、用途に応じて、10~200μmとすることができる。なお、粘着フィルムの厚みの調整は、例えば、基材上に粘着フィルム組成物を塗布し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター又はスプレーコーター等を用いて行うことができる。
【0052】
<<粘着フィルムの用途>>
粘着フィルムは、用途に応じて各種フィルムに積層して用いることができる。特に、液晶表示装置や有機EL表示装置の表示部に用いられる画面保護フィルム、飛散防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、カラーフィルター、光拡散フィルム、視野角補償フィルム等の機能性フィルムの固定用に好適である。
【実施例0053】
本開示技術を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本開示技術は実施例に限定されるものではない。
【0054】
<<粘着フィルムの作製>>
表1に示した各原料の配合に従い、各原料を混合、攪拌して溶剤に溶解し、実施例1~6及び比較例1~4の粘着フィルム組成物を作製した。表1中の各原料の配合量は質量部で示した。得られた各実施例及び各比較例の粘着フィルム組成物を剥離PETフィルム上に、膜厚調整機能付きフィルムアプリケーターを用いて、溶剤除去後の粘着フィルム厚みが50μmとなるように塗布し、溶剤成分を乾燥除去し粘着フィルムを成膜した。粘着フィルムに剥離PETフィルムを貼合して、各実施例及び各比較例の両面剥離PET付粘着フィルムとした。
【0055】
<原料>
(水素添加ブロック共重合体)
・水素添加ブロック共重合体1:セプトン2002(クラレ社製、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン構造、重量平均分子量40,000)
・水素添加ブロック共重合体2:セプトン2006(クラレ社製、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン構造、重量平均分子量280,000)
・水素添加ブロック共重合体3:セプトン1020(クラレ社製、スチレン-エチレン-プロピレン構造、重量平均分子量85,000)
(紫外線吸収剤)
・紫外線吸収剤1:Tinuvin384(BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、23℃で液状、SP値10.8)
・紫外線吸収剤Tinuvin109(BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、23℃で液状、SP値11.1)
・紫外線吸収剤3:Tinuvin477(BASF社製、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、23℃で液状、SP値11.4)
・紫外線吸収剤4:Seesorb107(シプロ化成社製、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、23℃で固体、SP値13.0)
(酸化防止剤)
・酸化防止剤1:Irganox1010(BASF社製、フェノール系酸化防止剤)
(粘着付与剤)
・粘着付与剤1:アルコンP125(荒川化学工業社製、脂環族飽和炭化水素樹脂、軟化点125±5℃)
・粘着付与剤2:FTR6100(三井化学社製、芳香族石油炭化水素樹脂、軟化点95℃)
(可塑剤)
・可塑剤1:TETRAX 4T(ENEOS社製、ポリイソブチレン、重量平均分子量59,000)
・可塑剤2:HV-100(ENEOS社製、ポリイソブチレン、重量平均分子量1,100)
【0056】
【表1】
【0057】
<<測定・評価>>
各実施例及び各比較例の粘着フィルムにおける各物性の測定結果及び評価結果を表2に示した。
<380~400nmの紫外線平均透過率>
粘着フィルムの紫外線平均透過率は、以下の方法で測定した。各実施例及び各比較例の両面剥離PET付粘着フィルムについて、両面の剥離PETフィルムを剥がし、一方の粘着フィルム主表面側には100μmの厚みのPETフィルム(東洋紡社製、A4360)を、他方の粘着フィルム主表面側には厚み1.8mmのソーダガラスを貼合し、粘着フィルム積層体を作製した。得られた粘着フィルム積層体に対し、分光分析装置(島津製作所社製、UV-2550)を用いて、PETフィルム主表面側から紫外光を照射して、380~400nmの波長で1nmごとの透過率を測定し、その値の平均値を求めた。
【0058】
<40℃、90%RHにおける水蒸気透過度>
粘着フィルムの水蒸気透過度は、以下の方法で測定した。各実施例及び各比較例の両面剥離PET付粘着フィルムについて、両面の剥離PETを剥がし、粘着フィルムのみとして、透湿度測定装置を用いて、JIS Z0208:1976に準じた方法で温度40℃、90%RHの条件(条件B)にて測定した。
【0059】
<ヘイズ値>
粘着フィルムのヘイズ値は、以下の方法で測定した。紫外線平均透過率の測定で作製した各実施例及び各比較例の粘着フィルム積層体に対し、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-7000)を用いて、粘着フィルム積層体のPETフィルム主表面側に光を照射することにより測定した。
【0060】
<25℃における貯蔵弾性率>
粘着フィルムの貯蔵弾性率は、以下の方法で測定した。各実施例及び各比較例の両面剥離PET付粘着フィルムについて、両面の剥離PETフィルムを剥がし、各粘着フィルムの厚みが1mmとなるように同じ粘着フィルムを複数積層した後、直径8mmの円形金型で打ち抜き、試験片とした。8mmのパラレルプレートを用い、試験片を、動的粘弾性測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、HAAKE MARS)により、貯蔵弾性率を測定した。測定条件としては温度を25℃とし、測定周波数を1Hzとして測定した。
【0061】
<湿熱処理後の紫外線平均透過率>
粘着フィルムの紫外線平均透過率は、以下の方法で測定した。紫外線平均透過率の測定で作製した各実施例及び各比較例の粘着フィルム積層体を、85℃、85%RHに設定した恒温恒湿槽内にて1000時間保存したのち、24時間常温(25℃環境下)に放置した。その後、分光分析装置を用い、粘着フィルム積層体のPETフィルム主表面から紫外光を照射して、380~400nmの波長で1nmごとの透過率を測定し、その値の平均値を求めた。
【0062】
<外観>
粘着フィルムの外観は、以下の方法で行った。紫外線平均透過率の測定で作製した各実施例及び各比較例の粘着フィルム積層体について、粘着フィルム積層体の外観を目視で確認することにより行った。なお、評価は以下の基準に従った。
○:浮き、剥がれ、変色、及び/又は発泡を確認できない。
×:一部又は全体に、浮き、剥がれ、変色、及び/又は発泡を確認することができる。
【0063】
<耐光性試験>
粘着フィルムの耐光性試験は、以下の方法で行った。各実施例及び各比較例の両面剥離PET付粘着フィルムについて、両面の剥離PETフィルムを剥がし、一方の粘着フィルム主表面側には100μmの厚みのPETフィルム(東洋紡社製、A4360)を貼合した後、他方の粘着フィルム主表面側を、7インチ有機ELディスプレイ(Midas社製、MCT070PC12W800480LML)の表示画面全面に貼合し、評価用の有機ELディスプレイとした。
続いて、表示画面の半分の面をアルミ箔で覆い、遮光部を作製した(表示画面の遮光部以外の残りの半分を照射部とする)。
遮光部及び照射部を有する評価用の有機ELディスプレイを、耐光性試験機(スガ試験機社製、紫外線フェードメーターU48、光源:カーボンアークランプ)内に設置し、PETフィルム側より紫外線(照度:500W/m、BP温度63℃±3℃)を40時間照射した。試験終了後に遮光部のアルミ箔を剥がした後、有機ELディスプレイを最大輝度にて白表示させてから目視にて点灯状態を確認した。なお、評価は以下の基準に従った。
○:照射部と遮光部との間で輝度差や色差を確認できない。
×:照射部と遮光部との間で輝度差や色差を確認することができる。
【0064】
【表2】
【0065】
上記より、本発明実施例の粘着フィルムは、低透湿性、紫外線の吸収性、湿熱耐性、耐光性に優れたものである。また、有機EL表示装置等の段差形状を有する光学装置に用いる場合に、透明性、密着性、段差吸収性(形状追従性)に優れた粘着フィルムとすることができるものである。