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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149158
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】バルブボディ及びその鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F16K27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057578
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇多
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051BB02
3H051BB10
3H051CC11
3H051DD01
3H051EE03
(57)【要約】
【課題】湾曲した流路の検査を容易に行うこと。
【解決手段】バルブボディ100は、スプール1が収容されるスプール穴20と、少なくとも一部が湾曲し、両端部24a,24bがスプール穴20に接続された流路21と、バルブボディ100の外面100aに開口して形成され、流路21に接続された検査孔22と、検査孔22を封止するプラグ23と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディであって、
弁体が収容される弁体収容穴と、
少なくとも一部が湾曲し、両端部が前記弁体収容穴に接続された流路と、
前記バルブボディの外面に開口して形成され、前記流路に接続された検査孔と、
前記検査孔を封止するプラグと、を備える
ことを特徴とするバルブボディ。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブボディであって、
前記流路は、
前記弁体収容穴に接続され、前記弁体収容穴と垂直に形成される第1流路部及び第2流路部と、
前記第1流路部及び前記第2流路部に接続され、前記弁体収容穴と平行に形成される第3流路部と、
前記第1流路部と前記第3流路部に接続され、湾曲して形成される第1湾曲部と、
前記第2流路部と前記第3流路部に接続され、湾曲して形成される第2湾曲部と、を有し、
前記検査孔として、
前記第1湾曲部に接続される第1検査孔と、
前記第2湾曲部に接続される第2検査孔と、を有する
ことを特徴とするバルブボディ。
【請求項3】
バルブボディの鋳造方法であって、
前記バルブボディは、
前記バルブボディに形成される弁体収容穴を形成するための弁体収容穴用中子と、
前記バルブボディに形成され少なくとも一部が湾曲し両端部が前記弁体収容穴に接続される流路を形成するための流路用中子と、
前記バルブボディの外面に開口して形成され前記流路に接続される検査孔を形成するための検査孔用中子と、を用いて鋳造される
ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブボディの鋳造方法であって、
前記検査孔用中子は、前記流路用中子に接続されると共に、前記バルブボディの外形を形成するための型に支持されることを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のバルブボディの鋳造方法であって、
前記流路は、
前記弁体収容穴に接続され、前記弁体収容穴と垂直に形成される第1流路部及び第2流路部と、
前記第1流路部及び前記第2流路部に接続され、前記弁体収容穴と平行に形成される第3流路部と、
前記第1流路部と前記第3流路部に接続され、湾曲して形成される第1湾曲部と、
前記第2流路部と前記第3流路部に接続され、湾曲して形成される第2湾曲部と、を有し、
前記検査孔として、
前記第1湾曲部に接続される第1検査孔と、
前記第2湾曲部に接続される第2検査孔と、を有し、
前記検査孔用中子として、
前記第1検査孔を形成するための第1検査孔用中子と、
前記第2検査孔を形成するための第2検査孔用中子と、を有する
ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディ及びその鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スプールが摺動自在に挿入されるスプール穴と、スプール穴に連通するタンク通路と、が形成されるバルブボディが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-200205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなバルブボディにおいて、製造後に、タンク通路のような湾曲して形成される流路を検査する際には、スプール穴を通じて目視や内視鏡を用いて検査するが、流路中に死角が存在し、流路全体を検査するのが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、湾曲した流路の検査を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弁体が収容される弁体収容穴と、少なくとも一部が湾曲し、両端部が前記弁体収容穴に接続された流路と、バルブボディの外面に開口して形成され、流路に接続された検査孔と、検査孔を封止するプラグと、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、バルブボディには、流路に接続された検査孔が形成されるため、湾曲した流路の検査を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明は、流路が、弁体収容穴に接続され弁体収容穴と垂直に形成される第1流路部及び第2流路部と、第1流路部及び第2流路部に接続され、弁体収容穴と平行に形成される第3流路部と、第1流路部と第3流路部に接続され、湾曲して形成される第1湾曲部と、第2流路部と第3流路部に接続され、湾曲して形成される第2湾曲部と、を有し、検査孔として、第1湾曲部に接続される第1検査孔と、第2湾曲部に接続される第2検査孔と、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明では、第1検査孔及び第2検査孔により流路内で死角となる部位は存在しなくなるため、流路の検査を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明は、バルブボディの鋳造方法であって、バルブボディは、バルブボディに形成される弁体収容穴を形成するための弁体収容穴用中子と、バルブボディに形成され少なくとも一部が湾曲し両端部が弁体収容穴に接続される流路を形成するための流路用中子と、バルブボディの外面に開口して形成され流路に接続される検査孔を形成するための検査孔用中子と、を用いて鋳造されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、バルブボディには、流路に接続された検査孔が形成されるため、鋳造後に湾曲した流路の検査を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明は、検査孔用中子が、流路用中子に接続されると共に、バルブボディの外形を形成するための型に支持されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、流路用中子は検査孔用中子を介して型に支持されるため、鋳造時の流路用中子の損傷を防止することができる。
【0014】
また、本発明は、流路が、弁体収容穴に接続され、弁体収容穴と垂直に形成される第1流路部及び第2流路部と、第1流路部及び第2流路部に接続され、弁体収容穴と平行に形成される第3流路部と、第1流路部と第3流路部に接続され、湾曲して形成される第1湾曲部と、第2流路部と第3流路部に接続され、湾曲して形成される第2湾曲部と、を有し、検査孔として、第1湾曲部に接続される第1検査孔と、第2湾曲部に接続される第2検査孔と、を有し、検査孔用中子として、第1検査孔を形成するための第1検査孔用中子と、第2検査孔を形成するための第2検査孔用中子と、を有することを特徴とする。
【0015】
この発明では、流路用中子は、互いに向きが異なる2つの第1検査孔用中子及び第2検査孔用中子により支持されるため、流路用中子の組み立て強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、湾曲した流路の検査を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るバルブボディ及びスプール弁の断面図である。
図2】本発明の実施形態の変形例に係るバルブボディ及びスプール弁の断面図である。
図3】バルブボディを製造するための鋳型の断面図である。
図4】鋳造によって得られたバルブボディの断面図である。
図5】加工後のバルブボディの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るバルブボディ100及びその製造方法について説明する。
【0019】
図1に示すように、バルブボディ100は、スプール弁101のボディである。スプール弁101は、液圧シリンダや液圧モータ等のアクチュエータ(図示せず)との間で作動流体としての作動油を給排して、アクチュエータの動作を制御するものである。バルブボディ100は、アルミニウム合金や鉄系合金を材料として鋳造により製造される。
【0020】
スプール弁101は、バルブボディ100に摺動自在に組み込まれた弁体としてのスプール1と、スプール1の両端のそれぞれに臨んで設けられた第1パイロット室2及びドレン室3と、第1パイロット室2内に収容されスプール1の一端部にばね力を付与する付勢部材としてのセンタリングスプリング4と、を備える。スプール弁101は、下流に設けられる通路との連通を切り換えるものである。スプール弁101は、下流に設けられる第1,第2通路にそれぞれ接続される第1,第2ポート5,6、後述する流路21に接続される第3ポート7、油圧供給源としてのポンプに連通する第1,第2ポンプポート8,9等の各ポートを備える。ドレン室3はドレン通路に接続される。
【0021】
第1パイロット室2にパイロット圧が作用していないときには、スプール1はセンタリングスプリング4の付勢力によって中立位置に保持される。この状態では、第1ポンプポート8から吐出される作動油は、第3ポート7を介して第1ポート5を通じて第1通路に供給され、第2ポンプポート9から吐出される作動油は、第2ポート6を通じて第2通路に供給される。
【0022】
第1パイロット室2にパイロット圧が導かれると、スプール1がセンタリングスプリング4のばね力に抗して移動し、第1ポンプポート8と第2ポート6とが連通し、第3ポート7と第1ポート5の連通が遮断される。また、第2ポンプポート9と第1ポート5とが連通し、第2ポンプポート9と第2ポート6との連通が遮断される。
【0023】
バルブボディ100には、スプール1が収容される弁体収容穴としてのスプール穴20と、少なくとも一部が湾曲して形成され、両端部24a,24bがスプール穴20に接続された流路21と、バルブボディ100の外面100aに開口して形成され、流路21に接続された検査用の検査孔22と、が形成される。
【0024】
スプール穴20は、その両端がバルブボディ100の外面100aに開口して形成される。スプール穴20は、スプール1が摺動する摺動穴20aと、摺動穴20aよりも内径が大きい各ポート5~9と、を有する。
【0025】
流路21は、本実施形態では、両端部24a,24bがスプール穴20に接続された断面U字状に形成された高圧流路である。具体的には、流路21は、端部24aがスプール穴20の第1ポンプポート8に接続され、スプール穴20と垂直に形成される第1流路部21aと、端部24bがスプール穴20の第3ポート7に接続され、スプール穴20と垂直に形成される第2流路部21bと、第1流路部21a及び第2流路部21bに接続され、スプール穴20と平行に形成される第3流路部21cと、第1流路部21aと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第1湾曲部25aと、第2流路部21bと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第2湾曲部25bと、を有する。このように、第1流路部21aは第1湾曲部25aを介して第3流路部21cの一端部に接続され、第2流路部21bは第2湾曲部25bを介して第3流路部21cの他端部に接続される。第1~第3流路部21a,21b,21cは直線状に形成され、第1湾曲部25a及び第2湾曲部25bは、滑らかに曲がって形成される。このように、流路21は、2つの湾曲部25a,25bを有し、一部が湾曲して形成される。なお、上記「垂直」とは、完全に垂直である他、厳密には垂直でなく製造誤差等により僅かに傾斜した状態も含まれる。同様に、上記「平行」は、完全に平行である他、厳密には平行でなく製造誤差等により僅かに傾斜した状態も含まれる。
【0026】
検査孔22は、バルブボディ100の製造後に、湾曲して形成された流路21を検査するための孔である。本実施形態では、バルブボディ100は鋳造により製造されるため、後述するように流路21を形成するための流路用中子40(図3参照)の鋳造時の変形に伴い流路21が変形したり、流路21内に鋳バリが発生したりする可能性がある。また、鋳造後に行う鋳物の加工により発生した切粉が流路21内に残存することもある。このような流路21に関する不良を、バルブボディ100の製造後に検査孔22を通じて検査することができる。
【0027】
検査孔22として、第1湾曲部25aに接続される第1検査孔22aと、第2湾曲部25bに接続される第2検査孔22bと、を有する。具体的には、第1検査孔22aは、第1流路部21aと同軸状に延設され、第2検査孔22bは、第3流路部21cと同軸状に延設される。このように、本実施形態では、バルブボディ100には2つの検査孔22a,22bが形成される。第1検査孔22a及び第2検査孔22bの内周面にはめねじが形成され、めねじにはそれぞれプラグ23が締結される。このように、第1検査孔22a及び第2検査孔22bはプラグ23により封止される。
【0028】
流路21の検査について詳細に説明する。流路21を検査する場合において、仮に、検査孔22が存在しない構造には、流路21内を目視により直接検査することはできない。内視鏡をスプール穴20の開口から挿入し、スプール穴20に沿って移動させることにより、第1流路部21a及び第2流路部21bの内部を検査することはできるが、第3流路部21cはスプール穴20からは死角となるため検査することができない。内視鏡をスプール穴20から第1流路部21a又は第2流路部21bに挿入し、第3流路部21cまで導くことも考え得るが、そのように内視鏡を導くことは困難な作業となる。このように、流路21は、2つの湾曲部25a,25bを有し、湾曲して形成され、かつ、両端部24a,24bがスプール穴20に接続されて流路21自体はバルブボディ100の外面100aに開口しない構成であるため、流路21内に死角が存在する。
【0029】
これに対して、本実施形態では、流路21に接続された第1検査孔22a及び第2検査孔22bが形成されるため、流路21の検査を容易に行うことができる。具体的には、第1検査孔22aを通じて第1流路部21a内を目視により直接検査することができ、かつ、第2検査孔22bを通じて第3流路部21c内を目視により直接検査することができる。また、第1検査孔22aを通じて内視鏡を第1流路部21aに挿入して第1流路部21a内を検査することができ、かつ、第2検査孔22bを通じて内視鏡を第3流路部21cに挿入して第3流路部21c内を検査することができる。第2流路部21bについては、第2検査孔22bを通じて内視鏡を第3流路部21cに挿入することによって検査すればよい。このように、第1検査孔22a及び第2検査孔22bを利用して流路21を検査することにより流路21内で死角となる部位は存在しなくなるため、流路21の検査を容易に行うことができる。
【0030】
なお、検査孔22として、第2湾曲部25bに接続され第2流路部21bと同軸状に延設された第3検査孔(図示せず)を設けてもよい。これにより、第3検査孔を通じて第2流路部21b内を目視により直接検査することができ、かつ、第3検査孔を通じて内視鏡を第2流路部21bに挿入して第2流路部21b内を検査することができる。
【0031】
また、図2に示すように、第3流路部21cにおける長さ方向中央付近に接続される検査孔22のみを設けてもよい。この場合には、検査孔22を通じて内視鏡を第3流路部21cに挿入して第3流路部21c内を検査すると共に、第1流路部21a及び第2流路部21bについては、スプール穴20に内視鏡を挿入することによって検査すればよい。
【0032】
流路21の検査完了後、第1検査孔22a及び第2検査孔22bはそれぞれプラグ23により封止される。このように、第1検査孔22a及び第2検査孔22bは、流路として機能するものではなく、検査専用に設けられる。
【0033】
第1検査孔22a及び第2検査孔22bは、バルブボディ100の製造後に行うバルブボディ100内部の洗浄の際に、洗浄液の供給口又は排出口として利用することもできる。
【0034】
次に、図3~5を参照して、バルブボディ100の鋳造方法について説明する。図3はバルブボディ100を製造するための鋳型102の断面図であり、図4は鋳造によって得られたバルブボディ100の断面図であり、図5は加工後のバルブボディ100の断面図である。
【0035】
バルブボディ100を鋳造によって製造するにあたり、図3に示す、スプール穴20を形成するための弁体収容穴用中子としてのスプール穴用中子30や、流路21を形成するための流路用中子40や、検査孔22を形成するための検査孔用中子50等の各中子を予め製作する。図3では、スプール穴用中子30、流路用中子40、及び検査孔用中子50以外の中子の図示を省略している。中子の製作と併せて、バルブボディ100の外形を形成するための型60も予め製作する。そして、型60内に各中子30,40,50が組み立てられた鋳型102内に鋳物の原料となる溶融金属を流し込む。
【0036】
各中子30,40,50及び型60は、樹脂バインダを含む砂型により形成される。溶融金属が凝固する過程で溶融金属の熱により樹脂バインダはガスとして鋳物外へ排出される。溶融金属が凝固した後、鋳物から砂を除去する。このようにして、図4に示すバルブボディ100の鋳物が得られる。鋳物を加工することにより、図5に示すバルブボディ100が得られる。具体的には、第1検査孔22a及び第2検査孔22bにめねじを形成したり、スプール穴20の内周面に各ポート5~9に対応して環状溝が形成される。
【0037】
次に、鋳型102を構成する中子30,40,50及び型60について詳しく説明する。
【0038】
図3に示すように、スプール穴20を形成するためのスプール穴用中子30は、スプール1が摺動する摺動穴20aに対応する摺動穴形成部31と、各ポート5~9に対応するポート形成部32と、を有する。
【0039】
流路21を形成するための流路用中子40は、第1流路部21aに対応する第1流路形成部40aと、第2流路部21bに対応する第2流路形成部40bと、第3流路部21cに対応する第3流路形成部40cと、第1湾曲部25aに対応する第1湾曲形成部40dと、第2湾曲部25bに対応する第2湾曲形成部40eと、を有する。流路用中子40は、断面U字状に形成され、両端部である第1流路形成部40a及び第2流路形成部40bがスプール穴用中子30に接続される。具体的には、流路用中子40は、スプール穴用中子30と別体に形成されスプール穴用中子30に接着剤により接着される。
【0040】
検査孔用中子50として、第1検査孔22aを形成するための第1検査孔用中子51と、第2検査孔22bを形成するための第2検査孔用中子52と、を有する。
【0041】
第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、流路用中子40に接続されると共に、型60に支持される。具体的には、第1検査孔用中子51は、第1湾曲形成部40dに接続され第1流路形成部40aと同軸状に延設されると共に、型60に支持される。また、第2検査孔用中子52は、第2湾曲形成部40eに接続され第3流路形成部40cと同軸状に延設されると共に、型60に支持される。なお、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、型60に直接支持される構成には限定されず、型60に接続される中子を介して間接的に支持される構成であってもよい。
【0042】
本実施形態では、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、流路用中子40と一体に形成される。つまり、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52と、流路用中子40とは一つの中子として製作される。一方、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、型60と別体に形成され、型60に接着剤により接着される。なお、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は型60と一体に形成され、流路用中子40と別体に形成され流路用中子40に接着剤により接着されてもよい。
【0043】
以上のように構成される鋳型102に溶融金属を流し込むと、鋳型102内への溶融金属の流入時、流路用中子40に溶融金属の圧力が作用する。また、溶融金属の比重と比較して流路用中子40の比重は小さくかつ両者の比重には大きな差があるため、鋳型102が図3に示す向きでは溶融金属中の流路用中子40には大きな浮力が作用する。これにより、流路用中子40が変形したり、流路用中子40とスプール穴用中子30の接続部に応力が発生し当該接続部が破損したりするおそれがある。しかし、本実施形態では、流路用中子40は検査孔用中子50を介して型60に支持されるため、流路用中子40の組み立て強度が向上し、流路用中子40の変形や、流路用中子40とスプール穴用中子30の接続部の破損が防止される。これにより、流路用中子40により形成される流路21の不良を防止することができる。特に、本実施形態では、検査孔用中子50は、流路用中子40のうち第1及び第2湾曲形成部40d,40eに接続されるため、図3に示す矢印で示すように、流路用中子40を2方向で支持する。さらに、本実施形態では、互いの向きが90度異なる2つの第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52により流路用中子40を支持する構成である。よって、流路用中子40の組み立て強度を効果的に向上させることができる。
【0044】
流路用中子40の強度を向上させる方法として、流路用中子40の製作時に針金等の骨材を追加したり、流路用中子40の樹脂バインダとして硬度の高いものを使用したり、流路用中子40の表面に塗布する塗型を厚くしたりすることが考えられる。しかし、いずれの方法もコストが嵩む。これに対して、本実施形態では、検査孔用中子50により流路用中子40を支持する簡易な構成であるため低コストで行うことができる。
【0045】
以上のように、鋳造前には、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、流路用中子40を組み立てる際の流路用中子40の位置合わせ精度を向上させる機能を有する。また、鋳造時には、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、流路用中子40を支持して流路用中子40の組み立て強度を向上させる機能を有する。さらに、鋳造後には、第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52により形成される第1検査孔22a及び第2検査孔22bは流路としては機能しないが、流路21を検査するための構成として機能する。
【0046】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0047】
バルブボディ100には、流路21に接続された第1検査孔22a及び第2検査孔22bが形成されるため、第1検査孔22a及び第2検査孔22bを通じて湾曲した流路21の検査を容易に行うことができる。また、鋳造時には、第1検査孔22a及び第2検査孔22bを形成するための第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52は、流路用中子40の支持部材として機能するため、流路用中子40の変形や、流路用中子40とスプール穴用中子30の接続部の破損が防止される。これにより、流路用中子40により形成される流路21の不良を防止することができる。したがって、バルブボディ100の品質が向上する。
【0048】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0049】
(1)上記実施形態では、バルブボディ100はスプール弁101のボディである。しかし、バルブボディ100は、スプール弁101のボディには限定されず、他の弁のボディでもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、流路21は、3つの直線状の第1~第3流路部21a,21b,21cと、2つの湾曲部25a,25bとを有し、一部が湾曲した断面U字状に形成される。しかし、流路21は、この形状に限定されず、1つ又は3つ以上の湾曲部を有する形状でもよい。また、流路21は、直線部を有さず全体が湾曲した形状であってもよい。つまり、流路21は、少なくとも一部が湾曲した形状であればよい。また、上記実施形態では、流路21は高圧流路である。しかし、流路21は高圧流路には限定されず、低圧流路でもよい。
【0051】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0052】
バルブボディ100は、スプール1(弁体)が収容されるスプール穴20(弁体収容穴)と、少なくとも一部が湾曲し、両端部24a,24bがスプール穴20に接続された流路21と、バルブボディ100の外面100aに開口して形成され、流路21に接続された検査孔22と、検査孔22を封止するプラグ23と、を備える。
【0053】
この構成では、バルブボディ100には、流路21に接続された検査孔22が形成されるため、湾曲した流路21の検査を容易に行うことができる。
【0054】
また、流路21は、スプール穴20(弁体収容穴)に接続されスプール穴20と垂直に形成される第1流路部21a及び第2流路部21bと、第1流路部21a及び第2流路部21bに接続され、スプール穴20と平行に形成される第3流路部21cと、第1流路部21aと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第1湾曲部25aと、第2流路部21bと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第2湾曲部25bと、を有し、検査孔22として、第1湾曲部25aに接続される第1検査孔22aと、第2湾曲部25bに接続される第2検査孔22bと、を有する。
【0055】
この構成では、第1検査孔22a及び第2検査孔22bにより流路21内で死角となる部位は存在しなくなるため、流路21の検査を容易に行うことができる。
【0056】
また、バルブボディ100は、バルブボディ100に形成されるスプール穴20(弁体収容穴)を形成するためのスプール穴用中子30(弁体収容穴用中子)と、バルブボディ100に形成され少なくとも一部が湾曲し両端部24a,24bがスプール穴20に接続される流路21を形成するための流路用中子40と、バルブボディ100の外面100aに開口して形成され流路21に接続される検査孔22を形成するための検査孔用中子50と、を用いて鋳造される。
【0057】
この構成では、バルブボディ100には、流路21に接続された検査孔22が形成されるため、鋳造後に湾曲した流路21の検査を容易に行うことができる。
【0058】
また、検査孔用中子50は、流路用中子40に接続されると共に、バルブボディ100の外形を形成するための型60に支持される。
【0059】
この構成では、流路用中子40は検査孔用中子50を介して型60に支持されるため、鋳造時の流路用中子40の損傷を防止することができる。
【0060】
また、流路21は、スプール穴20(弁体収容穴)に接続され、前記弁体収容穴と垂直に形成される第1流路部21a及び第2流路部21bと、第1流路部21a及び第2流路部21bに接続され、スプール穴20と平行に形成される第3流路部21cと、第1流路部21aと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第1湾曲部25aと、第2流路部21bと第3流路部21cに接続され、湾曲して形成される第2湾曲部25bと、を有し、検査孔22として、第1湾曲部25aに接続される第1検査孔22aと、第2湾曲部25bに接続される第2検査孔22bと、を有し、検査孔用中子50として、第1検査孔22aを形成するための第1検査孔用中子51と、第2検査孔22bを形成するための第2検査孔用中子52と、を有する。
【0061】
この構成では、流路用中子40は、互いに向きが異なる2つの第1検査孔用中子51及び第2検査孔用中子52により支持されるため、流路用中子40の組み立て強度を向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・バルブボディ、100a・・・バルブボディの外面、101・・・スプール弁、102・・・鋳型、1・・・スプール(弁体)、20・・・スプール穴(弁体収容穴)、21・・・流路、21a・・・第1流路部、21b・・・第2流路部、21c・・・第3流路部、22・・・検査孔、22a・・・第1検査孔、22b・・・第2検査孔、23・・・プラグ、25a・・・第1湾曲部、25b・・・第2湾曲部、30・・・スプール穴用中子(弁体収容穴用中子)、40・・・流路用中子、50・・・検査孔用中子、51・・・第1検査孔用中子、52・・・第2検査孔用中子、60・・・型
図1
図2
図3
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図5