IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シフトアクチュエータ 図1
  • 特開-シフトアクチュエータ 図2
  • 特開-シフトアクチュエータ 図3
  • 特開-シフトアクチュエータ 図4
  • 特開-シフトアクチュエータ 図5
  • 特開-シフトアクチュエータ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149172
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】シフトアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20231005BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20231005BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20231005BHJP
   B60K 23/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
F16H19/04 L
F16H1/06
B60K23/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057602
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓造
(72)【発明者】
【氏名】増田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 展資
【テーマコード(参考)】
3D036
3J009
3J062
【Fターム(参考)】
3D036GA05
3D036GA16
3D036GB03
3D036GB05
3D036GD09
3D036GJ01
3D036GJ17
3J009DA15
3J009DA19
3J009DA20
3J009EA06
3J009EA11
3J009EA19
3J009EA25
3J009EA32
3J009EA43
3J009EB22
3J009ED06
3J009FA03
3J062AA01
3J062AB02
3J062BA12
3J062BA14
3J062BA23
3J062BA27
(57)【要約】
【課題】角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板への潤滑剤の付着を防止する。
【解決手段】シフトアクチュエータ100は、回転軸1aを有するモータ1と、回転軸1aの回転を減速して出力軸2に出力する減速機構3と、出力軸2の回転角度を検出する角度センサ44と、角度センサ44が取り付けられる基板45と、を備え、減速機構3と基板45との間には、プレート8が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動状態を二輪駆動と四輪駆動とに変更するシフトアクチュエータであって、
回転軸を有するモータと、
前記回転軸の回転を減速して出力軸に出力する減速機構と、
前記出力軸の回転角度を検出する角度検出器と、
前記角度検出器が取り付けられる基板と、を備え、
前記減速機構と前記基板との間には、プレートが設けられている、ことを特徴とするシフトアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のシフトアクチュエータであって、
前記プレートには、前記出力軸の一端を回転可能に支持する軸受が設けられる、ことを特徴とするシフトアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシフトアクチュエータであって、
前記減速機構は、
前記回転軸の回転を減速して出力する第1減速機構と、
前記第1減速機構の出力を減速して前記出力軸に出力する第2減速機構と、を有し、
前記プレートは、少なくとも前記第1減速機構と前記基板との間に設けられている、ことを特徴とするシフトアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシフトアクチュエータであって、
前記減速機構及び前記基板を収容し、前記プレートが固定されるハウジングをさらに備え、
前記プレートは、前記ハウジング内において、前記減速機構が設けられる空間全体を覆っている、ことを特徴とするシフトアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のシフトアクチュエータであって、
前記出力軸と一体に回転する第1歯車と、
前記第1歯車に噛合し、シャフトに支持される第2歯車と、
前記角度検出器と対向するように設けられ、前記第2歯車と一体に回転する磁石と、をさらに備え、
前記第2歯車は、径方向における移動が前記プレートによって規制され、
前記基板は、前記プレートの前記減速機構と対向する面と反対側の面に取り付けられている、ことを特徴とするシフトアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動モータと、複数のギアによって構成された減速機構と、を備えた駆動力配分装置(シフトアクチュエータ)が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のシフトアクチュエータは、減速機構を構成する減速ギアが固定されたピニオンシャフトの回転角度を検出するための回転角センサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-205453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシフトアクチュエータでは、ギアに塗布された潤滑剤がギアの回転に伴って飛び散った場合に、回転角センサや回転角センサが取り付けられた基板などに付着することが考えられる。
【0006】
回転角センサや回転角センサが取り付けられた基板に潤滑剤が付着すると、回転角センサの検出精度が低下したり、基板がショートするおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板への潤滑剤の付着を防止すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両の駆動状態を二輪駆動と四輪駆動とに変更するシフトアクチュエータであって、回転軸を有するモータと、回転軸の回転を減速して出力軸に出力する減速機構と、出力軸の回転角度を検出する角度検出器と、角度検出器が取り付けられる基板と、を備え、減速機構と基板との間には、プレートが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、プレートが減速機構と基板との間に設けられているので、減速機構の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板に付着することを防止できる。これにより、角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板に潤滑剤が付着して、角度検出器の検出精度が低下したり、基板がショートすることを防止できる。
【0010】
また、本発明は、プレートには、出力軸の一端を回転可能に支持する軸受が設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、プレートは、減速機構の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板に付着することを防止する機能だけでなく、軸受を支持する部材としての機能も有する。これにより、軸受を支持する部材を別途設ける必要がなく、また、ハウジングに軸受を設ける場合に比べ、出力軸の長さを短くできる。よって、コストを低減できるとともに、装置を小型化することができる。
【0012】
また、本発明は、減速機構が、回転軸の回転を減速して出力する第1減速機構と、第1減速機構の出力を減速して出力軸に出力する第2減速機構と、を有し、プレートは、少なくとも第1減速機構と基板との間に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、少なくとも、第1減速機構と基板との間にプレートを設けている。第1減速機構は、減速機構の中で回転速度が最も速いので、潤滑剤は第1減速機構によって飛散する量が多くなる。そこで、少なくとも、第1減速機構と基板との間にプレートを設けることで、飛散した潤滑剤が角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板に付着することを防止しつつ、プレートを小さくすることができる。
【0014】
また、本発明は、減速機構及び基板を収容し、プレートが固定されるハウジングをさらに備え、プレートは、ハウジング内において、減速機構が設けられる空間全体を覆っていることを特徴とする。
【0015】
この発明では、プレートが、減速機構が設けられる空間全体を覆っているので、減速機構の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板に付着することを確実に防止できる。
【0016】
また、本発明は、出力軸と一体に回転する第1歯車と、第1歯車に噛合し、シャフトに支持される第2歯車と、角度検出器と対向するように設けられ、第2歯車と一体に回転する磁石と、をさらに備え、第2歯車は、径方向における移動がプレートによって規制され、基板が、プレートの減速機構と対向する面と反対側の面に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
この発明では、プレートが振動した場合に、第2歯車に取り付けられた磁石が、プレートとともに振動しても、角度検出器もプレートとともに振動することになる。つまり、プレートを通じて磁石と角度検出器が振動した場合には、磁石と角度検出器が同じように振動することになる。これにより、振動に伴う磁石と角度検出器との位置ずれの発生を抑制できるので、測定誤差を小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、角度検出器や角度検出器が取り付けられた基板への潤滑剤の付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータが搭載される車両の概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータの外観図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータのハウジングを取り除いた状態での斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータの駆動部の図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータの主要部の図2のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、変形例に係るシフトアクチュエータの主要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るシフトアクチュエータ100について説明する。
【0021】
まず、図1を参照しながら、シフトアクチュエータ100が搭載される車両Vの概略について説明する。なお、図1は、シフトアクチュエータ100が搭載される車両Vの概略図である。
【0022】
本実施形態の車両Vは、通常は後輪RTのみで駆動する後輪駆動をベースとする車両である。エンジンEから出力されたトルクは、自動変速機TMを通じて後輪RTに伝達される。
【0023】
シフトアクチュエータ100は、車両Vの駆動状態を二輪駆動と四輪駆動とに変更するために用いられる。シフトアクチュエータ100を制御することによって、車両Vは、後輪RTのみによって駆動する二輪駆動と、前輪FT及び後輪RTによって駆動する四輪駆動と、を切り換えることが可能に構成される。
【0024】
車両Vは、駆動源としてのエンジンEと、エンジンEの回転を変速して出力する自動変速機TMと、自動変速機TMの出力トルクを前輪FT及び後輪RTに分配するトランスファTFと、を備える。なお、車両Vの駆動源は、エンジンEに限らず、モータ、あるいは、エンジンE及びモータであってもよい。
【0025】
トランスファTFは、エンジンEからの動力伝達経路における自動変速機TMと前輪FTとの間の動力を断接するクラッチCLと、クラッチCLの動作を制御するシフトアクチュエータ100と、を有する。
【0026】
クラッチCLは、例えば、多板式の湿式クラッチによって構成される。クラッチCLが締結されると、エンジンEから出力されたトルクは、後輪RTのみならず、クラッチCLを通じて前輪FTにも伝達される。これに対し、クラッチCLが解放されると、エンジンEから出力されたトルクは、前輪FTに伝達されず、後輪RTのみに伝達される。
【0027】
後輪駆動と四輪駆動との切り換えは、車室内に設けられたスイッチSWを切り換えることにより行われる。なお、これに限らず、後輪駆動と四輪駆動との切り換えは、車両Vの走行状態に応じてコントローラCが自動的に切り換えるようにしてもよい。
【0028】
次に、図2から図5を参照して、シフトアクチュエータ100の具体的な構成について説明する。図2は、シフトアクチュエータ100の外観図である。図3は、シフトアクチュエータ100のハウジング10を取り除いた状態での斜視図である。図4は、シフトアクチュエータ100の駆動部の断面図である。図5は、シフトアクチュエータ100の主要部の断面図である。
【0029】
図2から図5に示すように、シフトアクチュエータ100は、駆動部としてのモータ1と、モータ1の回転軸1aの回転を減速して出力軸2に出力する減速機構3と、出力軸2の回転角度を検出する角度検出機構4と、減速機構3及び角度検出機構4を収容するハウジング10と、を備える。
【0030】
ハウジング10は、減速機構3と角度検出機構4とを収容する凹部10cが形成された本体部10aと、凹部10cを覆うカバー10bと、を有する。
【0031】
モータ1は、車両Vに搭載されたバッテリ(図示せず)を電源として車両Vを制御するコントローラCによって制御される。図2から図4に示すように、モータ1は、回転軸1aと、バッテリからの電力の供給を受けて回転軸1aを回転させる回転動力を発生させるコイル部1bと、回転軸1aの回転を規制する電磁ブレーキ1cと、を備える。
【0032】
図4に示すように、モータ1の回転軸1aは、軸受1d及びスリーブ1eによってハウジング10に対して回転可能に支持される。本実施形態では、図5などに示すように、回転軸1aは、出力軸2に対して略直交するように配置される。
【0033】
回転軸1aは、コイル部1bのロータ(図示せず)に連結される。コイル部1bは、ハウジング10の外面にボルト70によって固定される(図4など参照)。
【0034】
電磁ブレーキ1cは、例えば、無励磁作動型の電磁ブレーキである。電磁ブレーキ1cでは、電磁ブレーキ1cに電流が印加されると、ブレーキが解除され、回転軸1aの回転が許容される。これに対し、電磁ブレーキ1cへの電流の印加が遮断されると、ブレーキが作動し、回転軸1aの回転が規制される。
【0035】
図4などに示すように、モータ1の回転軸1aには、ウォームギア31aが設けられる。ウォームギア31aは、軸受1dとスリーブ1eの間の領域に設けられる。
【0036】
図5などに示すように、減速機構3は、モータ1の回転軸1aの回転を減速する第1減速機構31と、第1減速機構31の出力回転をさらに減速する第2減速機構32と、を有する。
【0037】
第1減速機構31は、ウォームギア31aと、ウォームギア31aに噛合するウォームホイール31bと、を有する。ウォームホイール31bは、ハウジング10に端部5aが固定されたシャフト5に回転可能に支持される。
【0038】
第2減速機構32は、ウォームホイール31bと一体に回転する平歯車32aと、平歯車32aと噛合し、出力軸2に固定された平歯車32bと、を有する。
【0039】
平歯車32aは、シャフト5に回転可能に支持されるとともに、ウォームホイール31bと一体に回転する。具体的には、平歯車32aとウォームホイール31bは、それぞれ個別に製作され、これらは、接着やキー結合などにより結合されることで、一体となって回転する。平歯車32aとウォームホイール31bは、シャフト5に係止された止め輪7とハウジング10の凹部10cの底面10dとの間で保持される。
【0040】
平歯車32bは、出力軸2に固定され、出力軸2と一体になって回転する。平歯車32bの歯数は、平歯車32aの歯数より多い。
【0041】
このように構成された第1減速機構31及び第2減速機構32によって、モータ1の回転軸1aの回転は、所定の変速比で減速され、出力軸2に伝達される。
【0042】
図5に示すように、シフトアクチュエータ100は、ハウジング10内にボルトによって固定されたプレート8をさらに備える。
【0043】
出力軸2の一端(端部2a)側は、ハウジング10の本体部10aに取り付けられた軸受2bによって回転可能に支持される。また、出力軸2の他端(端部2d)側は、プレート8に軸受としてのスリーブ2cを介して回転可能に支持される。出力軸2の端部2aは、ハウジング10の本体部10aを貫通して、上述のクラッチCLの動作を制御するための動力伝達機構(図示せず)に接続される。また、出力軸2は、端部2dをプレート8に形成された貫通孔8aに挿入し、プレート8をハウジング10の本体部10aに固定することで、ハウジング10の本体部10aとプレート8の間において保持されて、軸方向の移動が規制される。
【0044】
図5に示すように、角度検出機構4は、出力軸2に固定され出力軸2と一体に回転する第1歯車としての平歯車41と、平歯車41に噛合し、シャフト5に回転可能に支持される第2歯車としての平歯車42と、平歯車42に取り付けられ、平歯車42と一体に回転する磁石43と、磁石43と対向するように設けられた角度検出器としての角度センサ44と、を有する。
【0045】
本実施形態では、平歯車41と平歯車42は、減速機構40を構成する。減速機構40は、出力軸2の回転角を所定の比率で減少して平歯車42の回転として出力する。
【0046】
図5に示すように、平歯車42は、シャフト5の端部5bを覆うキャップ部42aと、平歯車41と噛合する歯車部42bと、を有する。
【0047】
キャップ部42aは、外周に歯車部42bが固定される本体部42cと、本体部42cに形成され、シャフト5の端部5bが挿入される孔42dと、本体部42cより外径の小さな小径部42eと、本体部42cと小径部42eとによって構成される段差部42fと、小径部42eの端面から突出するように形成され、先端に磁石43が取り付けられる突起部42gと、を有する。
【0048】
平歯車42の本体部42cの外径は、プレート8に形成された貫通孔8bの内径より大きく形成される。平歯車42は、平歯車42の孔42dにシャフト5が挿入されるとともに、プレート8に形成された貫通孔8bに小径部42eが挿入された状態で、プレート8をハウジング10の本体部10aに固定することにより、シャフト5の端部5bとプレート8の間に保持される。このとき、段差部42fがプレート8と摺動可能に接することで、平歯車42のシャフト5の軸方向における移動が規制される。
【0049】
平歯車42の小径部42eの外径は、プレート8に形成された貫通孔8bの内径よりわずかに小さく形成される。これにより、平歯車42は、プレート8に形成された貫通孔8bに小径部42eが挿入された状態では、プレート8によって径方向の移動が規制される。
【0050】
なお、平歯車42を形成する場合には、キャップ部42aと歯車部42bとを別体で形成した後、これらを一体にすることで形成してもよいし、1つの部材からキャップ部42aと歯車部42bとを形成してもよい。
【0051】
角度センサ44は、基板45に取り付けられる。基板45は、ハウジング10のカバー10bにビスなどによって取り付けられる。角度センサ44によって検出された平歯車42の回転角は、コントローラC(図1参照)に送信される。なお、平歯車42の回転角は、出力軸2の回転角を減速機構40によって所定の比率(減速比)で減少させた回転角に相当する。
【0052】
プレート8は、ハウジング10の凹部10c内の空間を、減速機構3が設けられる空間S1と、角度センサ44及び角度センサ44が取り付けられる基板45が設けられる空間S2とに仕切る。プレート8は、減速機構3と基板45との間、言い換えると、減速機構3を覆うように設けられる。プレート8は、凹部10c内を空間S1と空間S2に仕切る機能だけでなく、減速機構3を構成するギアなどに塗布された潤滑剤がギアの回転によって飛散した場合に、潤滑剤が角度センサ44や基板45に付着することを防止する機能を有する。
【0053】
なお、プレート8は、ハウジング10の凹部10cを空間S1と空間S2とに完全に仕切る、つまり、減速機構3が設けられる空間S1全体を覆うことが好ましいが、少なくとも第1減速機構31と基板45との間に設けられていればよい。減速機構3の中で、第1減速機構31のウォームギア31aの回転速度が最も速い。このため、ウォームギア31a近傍に塗布された潤滑剤は飛散しやすい。また、図5などから明らかなように、ウォームギア31aの回転方向から、ウォームギア31aの回転によって飛散する潤滑剤は、角度センサ44や基板45の方向に向かって飛散する可能性が高い。そこで、プレート8を少なく第1減速機構31と基板45との間に設けることができれば、角度センサ44や基板45に潤滑剤が付着することを防止できる。これにより、角度センサ44や基板45に潤滑剤が付着することによって、角度センサ44の検出精度が低下したり、あるいは、基板45において電気的な短絡が発生することを防止できる。
【0054】
このように構成されたシフトアクチュエータ100の制御の一例を説明する。
【0055】
スイッチSW(図1参照)が四輪駆動に切り換える位置に操作されると、コントローラCは、電磁ブレーキ1cに電流を印加して、モータ1の回転軸1aにおける回転の規制を解除した後、モータ1のコイル部1bに電流を印加する。これにより、モータ1の回転軸1aが回転する。回転軸1aの回転は、第1減速機構31及び第2減速機構32によって減速されて出力軸2に伝達される。出力軸2の回転は、トランスファTF(図1参照)の動力伝達機構に伝達され、クラッチCLを締結する締結力に変換される。このようにして、クラッチCLが締結されると、エンジンEから出力されたトルクは、後輪RTに伝達されるとともに、クラッチCLを通じて前輪FTに伝達される。そして、コントローラCが、角度センサ44の検出値に基づいて、出力軸2の回転角がクラッチCLが締結されたと判断できる回転角まで回転したと判断すると、コントローラCは、モータ1のコイル部1bへの電流の印加を停止するとともに、電磁ブレーキ1cへの電流の印加を停止する。これにより、モータ1の回転軸1aの回転が規制される。このとき、出力軸2は、モータ1の回転軸1aと機械的に接続されているため、出力軸2の回転も規制される。これにより、クラッチCLは締結状態に維持される。
【0056】
反対に、スイッチSW(図1参照)が二輪駆動に切り換える位置に操作されると、コントローラCは、電磁ブレーキ1cに電流を印加して、モータ1の回転軸1aにおける回転の規制を解除した後、モータ1のコイル部1bにモータ1の回転軸1aを逆方向に回転させる電流を印加する。これにより、モータ1の回転軸1aが逆方向に回転する。回転軸1aの回転は、第1減速機構31及び第2減速機構32によって減速されて出力軸2に伝達される。出力軸2の回転は、トランスファTF(図1参照)の動力伝達機構に伝達され、クラッチCLの締結力を減少させる方向の力に変換される。このようにして、クラッチCLが解放されると、エンジンEから出力されたトルクは、前輪FTには伝達されず、後輪RTのみに伝達される。そして、コントローラCが、角度センサ44の検出値に基づいて、出力軸2の回転角がクラッチCLが解放されたと判断できる回転角まで回転したと判断すると、コントローラCは、モータ1のコイル部1bへの電流の印加を停止するとともに、電磁ブレーキ1cへの電流の印加を停止する。これにより、モータ1の回転軸1aの回転が規制される。このとき、出力軸2は、モータ1の回転軸1aと機械的に接続されているため、出力軸2の回転も規制される。これにより、クラッチCLは解放状態に維持される。
【0057】
なお、この例では、クラッチCLを完全に締結、あるいは解放する場合を説明したが、クラッチCLの締結状態(トルク容量)を制御することで、前輪FTと後輪RTとの駆動力の分配量を制御することも可能である。
【0058】
本実施形態のシフトアクチュエータ100は、減速機構3と基板45との間にプレート8が設けられている。これにより、減速機構3の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度センサ44や角度センサ44が取り付けられた基板45に付着することを防止できる。
【0059】
さらに、プレート8は、減速機構3の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度センサ44や基板45に付着することを防止する機能だけでなく、軸受としてのスリーブ2cを支持する部材としての機能も有する。これにより、軸受(スリーブ2c)を支持する部材を別途設ける必要がない。また、ハウジング10に軸受を設ける場合に比べ、出力軸2の長さを短くできる。よって、コストを低減できるとともに、装置を小型化することができる。
【0060】
本実施形態のシフトアクチュエータ100は、モータ1の回転軸1aの回転を規制する電磁ブレーキ1cを備えている。電磁ブレーキ1cは、クラッチCLのばね反力などが出力軸2に逆トルクとして作用した場合に、モータ1の回転軸1aの回転を規制することで、回転軸1aと機械的に接続された出力軸2の回転を規制する。このように、シフトアクチュエータ100が、電磁ブレーキ1cを備えることにより、クラッチCLのばね反力などが出力軸2に逆トルクが作用した場合に、出力軸2が回転することでクラッチCLが不用意に解放、または締結されてしまうこと、あるいは、駆動力の分配量が変化してしまうことを防止できる。
【0061】
そして、本実施形態のシフトアクチュエータ100では、第1減速機構31が、ウォームギア31aとウォームホイール31bとによって構成されている。ウォームホイール31bからウォームギア31aへ動力を伝達する場合の動力伝達効率は、ウォームギア31aからウォームホイール31bへ動力を伝達する場合の動力伝達効率と比較して低い。このため、上述のような逆トルクが出力軸2から第1減速機構31に作用した場合に、この逆トルクの一部を第1減速機構31によって吸収させることができる。これにより、モータ1の回転軸1aに伝達される逆方向のトルクを小さくできるので、電磁ブレーキ1cを小型化することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のシフトアクチュエータ100では、回転軸1aと出力軸2が略直交するように配置されている。回転軸1aと出力軸2とが平行に配置された構成では、シフトアクチュエータ100をトランスファTFに取り付けた際に、モータ1のコイル部1bが出力軸2の軸線方向に位置することになり、出力軸2の軸線方向にその分スペースを確保する必要がある。これに対し、本実施形態のシフトアクチュエータ100では、回転軸1aと出力軸2が略直交するように配置されているので、出力軸2の軸線方向にモータ1のコイル部1bを設けるためのスペースが不要となるため、シフトアクチュエータ100を設置するためスペースを小さくすることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、出力軸2の回転角を減速機構40によって所定の比率(減速比)で減少させた回転角を角度センサ44によって検出するように構成している。これにより、例えば、出力軸2の回転角の変動範囲が360°(1回転)を超えるような場合であっても、減速機構40によって磁石43(平歯車42)の回転角の変動範囲を360°以内にすることができるので、出力軸2の回転数をカウントする必要がない。この結果、例えば、一時的に電源が喪失してしまった場合などに、カウントされた出力軸2の回転数が不明となり、出力軸2の回転角が検出できないといった事態を避けることができる。
【0064】
上記実施形態では、減速機構3が、第1減速機構31及び第2減速機構32を有している場合を例として説明したが、これに限らず、減速機構3は、第1減速機構31のみであってもよい。
【0065】
上記実施形態では、シフトアクチュエータ100の出力軸2の回転角を検出するために角度センサ44を設けているが、出力軸2の回転角を検出するために、例えば、出力軸2の端部2dに対向する位置に角度センサを設けてもよい。あるいは、モータ1の回転軸1aの回転角を検出するセンサによって検出されたモータ1の回転軸1aの回転角から、出力軸2の回転角を算出するようにしてもよい。また、これらを併用してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、シャフト5がハウジング10の本体部10aに固定されている場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、シャフト5とハウジング10の間に軸受を設け、シャフト5とウォームホイール31bとが一体に回転する、あるいは、シャフト5と平歯車42とが一体に回転するようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、平歯車41と平歯車42が減速機構40を構成する場合を説明が、平歯車41と平歯車42が増速機構を構成してもよい。この場合には、増速機構は、出力軸2の回転角を所定の比率で増加して平歯車42の回転として出力する。このような増速機構を用いた場合には、出力軸2の回転角を検出する際の分解能を高めることができる。
【0068】
なお、図5に示す実施形態では、基板45がカバー10bに取り付けられている場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、図6に示す変形例のように、基板45は、プレート8の減速機構3と対向する面8cと反対側の面8dにスペーサ9を介して取り付けられるようにしてもよい。
【0069】
図6に示す変形例においても、平歯車42は、プレート8に形成された貫通孔8bによって小径部42eが挿入されることによって径方向の移動が規制される。このため、プレート8がハウジング10や出力軸2を通じて振動した場合に、平歯車42に取り付けられた磁石43が、プレート8とともに振動しても、角度センサ44もプレート8とともに振動することになる。つまり、プレート8を通じて磁石43と角度センサ44が振動した場合には、磁石43と角度センサ44が同じように振動することになる。これにより、振動に伴う磁石43と角度センサ44との位置のずれが発生することを抑制できるので、測定誤差を小さくできる。
【0070】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0071】
シフトアクチュエータ100は、回転軸1aを有するモータ1と、回転軸1aの回転を減速して出力軸2に出力する減速機構3(第1減速機構31)と、出力軸2の回転角度を検出する角度センサ44(角度検出器)と、角度センサ44(角度検出器)が取り付けられる基板45と、を備え、減速機構3と基板45との間には、プレート8が設けられている。
【0072】
この構成では、プレート8が減速機構3と基板45との間に設けられているので、減速機構3の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度センサ44(角度検出器)や角度センサ44(角度検出器)が取り付けられた基板45に付着することを防止できる。これにより、角度センサ44(角度検出器)や角度センサ44(角度検出器)が取り付けられた基板45に潤滑剤が付着して、角度センサ44(角度検出器)の検出精度が低下したり、基板45がショートすることを防止できる。
【0073】
シフトアクチュエータ100では、プレート8には、出力軸2の一端を回転可能に支持するスリーブ2c(軸受)が設けられる。
【0074】
この構成では、プレート8は、減速機構3の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度センサ44(角度検出器)や角度センサ44(角度検出器)が取り付けられた基板45に付着することを防止する機能だけでなく、スリーブ2c(軸受)を支持する部材としての機能も有する。これにより、スリーブ2c(軸受)を支持する部材を別途設ける必要がなく、また、ハウジング10に軸受を設ける場合に比べ、出力軸2の長さを短くできる。よって、コストを低減できるとともに、装置を小型化することができる。
【0075】
シフトアクチュエータ100では、減速機構3は、回転軸1aの回転を減速して出力する第1減速機構31と、第1減速機構31の出力を減速して出力軸2に出力する第2減速機構32と、を有し、プレート8は、少なくとも第1減速機構31と基板45との間に設けられる。
【0076】
この構成では、少なくとも、第1減速機構31と基板45との間にプレート8を設けている。第1減速機構31は、減速機構3の中で回転速度が最も速いので、潤滑剤は第1減速機構31によって飛散する量が多くなる。そこで、少なくとも、第1減速機構31と基板45との間にプレート8を設けることで、飛散した潤滑剤が角度センサ44(角度検出器)や角度センサ44(角度検出器)が取り付けられた基板45に付着することを防止しつつ、プレート8を小さくすることができる。
【0077】
シフトアクチュエータ100は、減速機構3及び基板45を収容し、プレート8が固定されるハウジング10をさらに備え、プレート8は、ハウジング10内において、減速機構3が設けられる空間S1全体を覆っている。
【0078】
この構成では、プレート8が、減速機構3が設けられる空間S1全体を覆っているので、減速機構3の回転に伴って飛散した潤滑剤が角度センサ44(角度検出器)や角度センサ44(角度検出器)が取り付けられた基板45に付着することを確実に防止できる。
【0079】
シフトアクチュエータ100では、出力軸2と一体に回転する平歯車41(第1歯車)と、平歯車41(第1歯車)に噛合し、シャフト5に支持される平歯車42(第2歯車)と、角度センサ44(角度検出器)と対向するように設けられ、平歯車42(第2歯車)と一体に回転する磁石43と、をさらに備え、平歯車42(第2歯車)は、径方向における移動がプレート8によって規制され、基板45は、プレート8の減速機構3と対向する面8cと反対側の面8dに取り付けられている。
【0080】
この構成では、プレート8が振動した場合に、平歯車42(第2歯車)に取り付けられた磁石43は、プレート8とともに振動しても、角度センサ44(角度検出器)もプレート8とともに振動することになる。つまり、プレート8を通じて磁石43と角度センサ44(角度検出器)が振動した場合には、磁石43と角度センサ44(角度検出器)が同じように振動することになる。これにより、振動に伴う磁石43と角度センサ44(角度検出器)との位置ずれの発生を抑制できるので、測定誤差を小さくできる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0082】
上記実施形態では、第1減速機構31をウォームギア31aとウォームホイール31bで構成した場合を例に説明したが、これに限らず、傘歯車の組み合わせや、平歯車の組み合わせなどであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
100・・・シフトアクチュエータ、1・・・モータ、1a・・・回転軸、1c・・・電磁ブレーキ、2・・・出力軸、3・・・減速機構、4・・・角度検出機構、5・・・シャフト、5a・・・端部、5b・・・端部、8・・・プレート、10・・・ハウジング、31・・・第1減速機構、31a・・・ウォームギア、31b・・・ウォームホイール、32・・・第2減速機構、32a・・・平歯車、32b・・・平歯車、40・・・減速機構、41・・・平歯車(第1歯車)、42・・・平歯車(第2歯車)、43・・・磁石、44・・・角度センサ(角度検出器)、45・・・基板、S1・・・空間、S2・・・空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6