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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149173
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粒子検出装置及び粒子検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01N15/14 P
G01N15/14 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057604
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 司
(57)【要約】
【課題】流体中の粒子に関するパラメータの検出性能を向上させる。
【解決手段】粒子検出装置100は、流体が流れる通路60と、光源20から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子1を検出する検出器10と、を備え、検出器10は、通路60に向けて光を照射する第一光源21と、第一光源21からの光のうち粒子1により遮蔽されずに透過した透過光を受光する第一受光部31と、通路60に向けて光を照射する第二光源22と、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱された散乱光を受光する第二受光部32と、第一受光部31が受光した透過光の情報から粒子1の粒径を検出し、第二受光部32が受光した散乱光の情報から粒子1の材質を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる通路と、
光源から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子を検出する検出器と、を備え、
前記検出器は、
前記通路に向けて光を照射する第一光源と、
前記第一光源からの光のうち粒子により遮蔽されずに透過した透過光を受光する第一受光部と、
前記通路に向けて光を照射する第二光源と、
前記第二光源からの光のうち粒子により散乱された散乱光を受光する第二受光部と、
前記第一受光部が受光した透過光の情報から粒子の粒径を検出し、第二受光部が受光した散乱光の情報から粒子の材質を特定する処理部と、を有することを特徴とする粒子検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子検出装置であって、
前記処理部は、散乱光の情報から粒子の総表面積を演算し、当該総表面積と、透過光の情報から検出した粒子の粒径と、から粒子の総量を検出することを特徴とする粒子検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粒子検出装置であって、
前記通路は、
第一通路と、
前記第一通路と連続するとともに前記第一通路から広がって設けられる第二通路と、を有し、
前記第一光源は、前記第一通路に向けて光を照射し、
前記第二光源は、前記第二通路に向けて光を照射することを特徴とする粒子検出装置。
【請求項4】
流体が流れる通路に向けて照射した光のうち流体中の粒子により遮蔽されずに透過した透過光と、前記通路に向けて照射した光のうち流体中の粒子により散乱された散乱光と、により流体中の粒子を検出する粒子検出方法であって、
受光した透過光の情報から粒子の粒径を検出し、受光した散乱光の情報から粒子の材質を特定することを特徴とする粒子検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子検出装置及び粒子検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給油経路内に対向配設されたレーザ光源及び受光器と、を備えるオイル監視装置が開示されている。油中に異物が存在している場合には受光器に入射する光が少量となり、これを検出することで異物の存在を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-35984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような、レーザ光源からの光のうち油中の異物により遮蔽されずに透過した透過光を受光して異物を検出する方法では、異物の材質の特定が難しい。これに対して、レーザ光源からの光のうち油中の異物により散乱された散乱光を受光して異物を検出する方法では、油中に複数存在する異物のそれぞれからの散乱光をまとめて受光するため、異物の粒径の検出が難しい。このように、透過光を受光して異物を検出する方法と、散乱光を受光して異物を検出する方法には、それぞれ異物に関するパラメータについて検出が難しいものがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体中の粒子に関するパラメータの検出性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粒子検出装置であって、流体が流れる通路と、光源から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子を検出する検出器と、を備え、検出器は、通路に向けて光を照射する第一光源と、第一光源からの光のうち粒子により遮蔽されずに透過した透過光を受光する第一受光部と、通路に向けて光を照射する第二光源と、第二光源からの光のうち粒子により散乱された散乱光を受光する第二受光部と、第一受光部が受光した透過光の情報から粒子の粒径を検出し、第二受光部が受光した散乱光の情報から粒子の材質を特定することを特徴とする。
【0007】
この発明では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子の粒径は、第一受光部が受光した透過光の情報から検出され、透過光の情報からは特定が難しい粒子の材質は、第二受光部が受光した散乱光の情報から特定される。これにより、流体中の粒子の粒径を検出し、材質を特定することができる。
【0008】
また、本発明は、処理部は、散乱光の情報から粒子の総表面積を演算し、当該総表面積と、透過光の情報から検出した粒子の粒径と、から粒子の総量を検出することを特徴とする。
【0009】
この発明では、透過光の情報と散乱光の情報を併用することで、流体中の粒子の総量をより正確に検出することができる。
【0010】
また、本発明は、通路は、第一通路と、第一通路と連続するとともに第一通路から広がって設けられる第二通路と、を有し、第一光源は、第一通路に向けて光を照射し、第二光源は、第二通路に向けて光を照射することを特徴とする。
【0011】
この発明では、検出器が、第一通路に向けて照射した光から透過光の情報を取得し、第一通路と連続するとともに第一通路よりも広い第二通路に向けて照射した光から散乱光の情報を取得する。このように、連続して設けられ広さの異なる通路を利用して、一つの検出器で透過光の情報と散乱光の情報の両方を取得することができる。よって、透過光の情報を取得する検出器と散乱光の情報を取得する検出器とを別々に設ける場合と比較し、粒子検出装置を小型化することができる。さらに、第一通路と第二通路との間の空間に第一光源及び第二光源を設けることにより、粒子検出装置をより小型化することができる。
【0012】
また、本発明は、流体が流れる通路に向けて照射した光のうち流体中の粒子により遮蔽されずに透過した透過光と、通路に向けて照射した光のうち粒子により散乱された散乱光と、により流体中の粒子を検出する粒子検出方法であって、受光した透過光の情報から粒子の粒径を検出し、受光した散乱光の情報から粒子の材質を特定することを特徴とする。
【0013】
この発明では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子の粒径は、透過光の情報から検出され、透過光の情報からは特定が難しい粒子の材質は、散乱光の情報から特定される。これにより、流体中の粒子の粒径を検出し、材質を特定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体中の粒子に関するパラメータの検出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る粒子検出装置の概略図である。
図2】通路、光源、及び受光部の配置を示す模式図である。
図3】背景差分処理を示す概略図である。
図4】処理部に予め記憶される、粒子の材質と電圧値との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る粒子検出装置100について説明する。なお、以下では、単に鉛直方向上方を「上方」、鉛直方向下方を「下方」とも称する。
【0017】
粒子検出装置100は、例えば、油圧機械(図示せず)に作動油を給排する配管(図示せず)を連結する継手間に設けられ、作動油中の異物である粒子1を検出するものである。具体的には、粒子検出装置100は、作動油中の粒子1の粒径、総量(具体的には、総粒子数)、及び材質といった粒子1に関するパラメータを検出する。なお、粒子検出装置100は、作動油以外の作動水や圧縮空気等の流体中の粒子を検出してもよい。また、粒子検出装置100は、作動油を給排する配管から分岐して設けられる粒子検出用の通路に設けられて粒子1を検出してもよい。
【0018】
図1に示すように、粒子検出装置100は、作動油が流れる通路60と、光源20から作動油に向けて照射した光を受光して作動油中の粒子1を検出する検出器10と、を備える。通路60は、上流側に設けられる第一通路61と、下流側に設けられる第二通路62と、を有する。通路60の詳細な構成については後述する。
【0019】
図1図2に示すように、検出器10は、通路60の第一通路61に向けて光を照射する第一光源21と、通路60の第二通路62に向けて光を照射する第二光源22と、第一光源21からの光を受光する第一受光部31と、第二光源22からの光を受光する第二受光部32と、第一受光部31及び第二受光部32が受光した光の情報が出力される処理部40と、を備える。第一光源21及び第二光源22により光源20が構成され、第一受光部31及び第二受光部32により受光部30が構成される。
【0020】
第一光源21及び第二光源22は、本実施形態では、LEDにより構成される。第一光源21及び第二光源22は、通路60の外部でかつ通路60の下方側(後述する空間80)に設けられる。第一光源21は、第二光源22よりも通路60の上流側に設けられる。第一光源21からの光は、第一通路61を流れる作動油中の粒子1により一部が遮蔽され、第一受光部31に入射する。第二光源22からの光は、第二通路62を流れる作動油中の粒子1により一部が散乱され、散乱された散乱光が第二受光部32に入射する。なお、「散乱」とは、第二光源22からの光の進行方向が作動油中の粒子1により変わることを指す。「散乱光」には、例えば、粒子1の表面で反射された光、粒子1により屈折された光、粒子1を回折した光が含まれる。
【0021】
第一受光部31は、本実施形態では、受光した光を撮像するイメージセンサにより構成される。イメージセンサには、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが用いられる。第一受光部31は、通路60の第一通路61を挟んで第一光源21に対向するように、通路60の外部でかつ通路60の上方側に設けられる。第一受光部31は、第一光源21からの光のうち粒子1により遮蔽されずに透過した透過光を受光し、所定の時間間隔で透過光を撮像した画像70(図3参照)を処理部40に出力する。
【0022】
図2に示すように、第二受光部32は、本実施形態では、複数の受光素子32a,32b,32cにより構成される。受光素子32a,32b,32cには、例えばPD(Photo Diode)が用いられる。受光素子32a,32b,32cは、互いに異なる角度で通路60の第二通路62に対向し、通路60の外部でかつ通路60の上方側に設けられる。具体的には、受光素子32a,32b,32cは、自身の受光軸と第二光源22の光軸とのなす角度がそれぞれα,β,γとなるように設けられる。受光素子32a,32b,32cは、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱された散乱光をそれぞれ受光し、受光した光を電気信号(具体的には、電圧値)に変換して連続的に処理部40に出力する。受光素子32a,32b,32cは、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱されずに透過した光を受光しないように、第二通路62を挟んで第二光源22には対向しないように設けられる。
【0023】
図1に示す処理部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは処理部40に接続された機器との情報の入出力に使用される。なお、処理部40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0024】
処理部40は、第一受光部31から出力された透過光の情報及び第二受光部32から出力された散乱光の情報から、作動油中の粒子1に関するパラメータを検出する。例えば、処理部40は、透過光の情報(図3の画像70)から粒子1の粒径を検出し、散乱光の情報から粒子1の材質を特定する。さらに、処理部40は、散乱光の情報から粒子1の総表面積を演算し、演算された粒子1の総表面積と、透過光の情報から検出した粒子1の粒径と、から粒子1の総量を検出する。処理部40は、これらの検出結果を表示部(図示せず)等に出力する。処理部40による粒子1に関するパラメータの検出方法については後述する。
【0025】
次に、通路60の詳細な構成について説明する。
【0026】
図1図2に示すように、通路60は、上流側に設けられる接続通路64と、接続通路64と連続して接続通路64よりも下流側に設けられる第一通路61と、水平方向に対して下方に傾斜する第二通路62と、下流側に設けられる第三通路63と、を有する。なお、図2では、接続通路64の図示を省略している。
【0027】
図1に示すように、接続通路64は、水平方向に延びる水平部64aと、底面が水平部64aから上方に傾斜して設けられる傾斜部64bと、を有する。水平部64aは、外部の油路に接続される。傾斜部64bは、水平部64aと第一通路61の間に設けられ、水平部64aから第一通路61に向けて狭まるように(鉛直方向の寸法が小さくなるように)設けられる。また、傾斜部64bの傾斜角Iは、第二通路62の底面の傾斜角IIよりも大きく設けられる。これにより、通路60の水平方向の寸法が小さくなる。
【0028】
図1図2に示すように、第一通路61は、本実施形態では水平方向に延びて設けられ、上流側の端部が接続通路64の傾斜部64bに接続される。第一通路61は、鉛直方向の寸法が一様である。第一通路61には、第一光源21からの光を透過させるための透過窓65,66がそれぞれ第一光源21、第一受光部31に対向して設けられる。なお、第一通路61は、水平方向に対して傾いて設けられてもよい。
【0029】
第二通路62は、第一通路61と連続するとともに第一通路61よりも下流側に設けられる。第二通路62は、下流側ほど鉛直方向の寸法が大きくなるように設けられる。つまり、第二通路62は、第一通路61よりも広がって(具体的には、鉛直方向に広がって)設けられる。第二通路62は、底面が第一通路61から下方に傾斜して設けられる。このように第二通路62が設けられるため、第二通路62には、作動油の流れ方向が第一通路61から変化して導かれる。第二通路62には、第二光源22からの光を透過させるための透過窓67が第二光源22に対向して設けられ、作動油中の粒子1により散乱された散乱光を透過させるための透過窓68が第二受光部32に対向して設けられる。透過窓65,66,67,68は、例えば、ガラス、人工石英、サファイア等の光透過性の材料で形成される。
【0030】
第三通路63は、本実施形態では水平方向に延びて設けられる。第三通路63は、第二通路62と連続するとともに第二通路62よりも下流側に設けられ、下流側の端部が外部の油路に接続される。このように、通路60は、油圧機械に作動油を給排する油路間を中継するように設けられる。なお、第三通路63は必須の構成ではなく、第二通路62の下流側の端部を外部の油路に接続してもよい。
【0031】
このように、通路60は、接続通路64の傾斜部64bが水平部64aから第一通路61に向けて狭まるように設けられ、第二通路62が第一通路61よりも広がって設けられる。そのため、接続通路64の傾斜部64b、第一通路61、及び第二通路62により、空間80が形成される。このように形成される空間80に第一光源21及び第二光源22が設けられるため、粒子検出装置100を小型化することができる。なお、通路60は、図1,2に示すように水平方向に延びる構成に限らず、水平方向に対して傾いて設けられてもよく、鉛直方向に延びて設けられてもよい。この場合であっても、第一光源21,第二光源22,第一受光部31,及び第二受光部32は、図1,2に対応した位置関係で設けられる。
【0032】
次に、処理部40による粒子1に関するパラメータの検出方法について説明する。
【0033】
まず、第一受光部31が受光した透過光の画像70から粒子1の粒径を検出する方法について説明する。
【0034】
図3に示すように、処理部40は、まず、透過光の画像70に対して背景差分処理を行う。具体的には、出力された二枚目以降の画像70bと当該画像70bの直前に出力された画像70aとを比較し(例えば、三枚目の画像70cについては二枚目の画像70bと比較し)、背景差分画像71を取得する。これにより、画像70に映り込んだ傷3や第一光源21の劣化等により生じる画像70の暗部が粒子1として検出されることが防止される。なお、背景差分処理において、画像70との比較対象となる基準画像には、処理部40に予め記憶された一枚の画像を用いてもよい。また、処理部40での処理において、背景差分処理は必須の処理ではなく省略してもよい。
【0035】
その後、処理部40は、取得した背景差分画像71に対して二値化処理及びラベリング処理を行う。具体的には、背景差分画像71の各画素について、二値化処理により予め設定された閾値内の画素値であれば第一画素値、閾値外の画素値であれば第二画素値を割り当て、例えば粒子1が存在する箇所が黒色となる白黒の二値画像を取得する。そして、ラベリング処理により同一の画素値(色)が連続する領域を検出し、粒子1が存在する領域(黒色の領域)の画素数と一画素あたりの実際の寸法とから粒子1の粒径を検出する。このようにして、粒子1の粒径が検出される。
【0036】
次に、第二受光部32が受光した散乱光の情報から粒子1の材質及び総表面積を検出する方法について説明する。
【0037】
処理部40は、第二受光部32の受光素子32a,32b,32cからそれぞれ出力された電圧値Va,Vb,Vcから、作動油中の粒子1の材質を特定する。本実施形態では、受光素子32a,32b,32cが受光する散乱光としては、粒子1の表面で反射される光が支配的となる。そのため、処理部40は、反射率に基づいて粒子1の材質を特定する。処理部40には、作動油中に粒子1として含まれ得る材質について、受光素子32a,32b,32cの受光軸と第二光源22の光軸とのなすそれぞれの角度α,β,γにおける反射率が予め記憶される。処理部40は、第二光源22の出力電圧値と、処理部40に出力された電圧値Va,Vb,Vcと、から角度α,β,γにおけるそれぞれの反射率を演算し、演算された反射率と、予め記憶された各材質における角度α,β,γの反射率と、から作動油中の粒子1の材質を特定する。
【0038】
また、処理部40は、電圧値Va,Vb,Vcから粒子1の総表面積を演算する。図4に示すように、処理部40には、粒子1に含まれ得る材質について、各材質の粒子の表面の単位面積(1μm2)の領域により第二光源22からの光を反射した場合に出力される電圧値Va,Vb,Vcがマップとして予め記憶される。当該マップは、実験的に求められる。なお、図4の数値は、参考として記載した数値であり、実際の数値を示したものではない。例えば、粒子1に銅、鉄、及び砂利が含まれ、それぞれが第二光源22からの光を反射した面積をx,y,zとすると、図4に示すマップより、Va=1の場合は、1=0.3x+0.1y+0.01zと表すことができる。同様にして、Vb,Vcについても、x,y,zを含む関係式で表すことができる。このようにして表されるx,y,zを含む三つの関係式から、x,y,zの数値が演算され、第二光源22からの光を反射した粒子1の総面積が演算される。また、処理部40には、実験的に求められた、粒子1における表面積と第二光源22からの光を反射する面積との関係が予め記憶される。当該関係と、第二光源22からの光を反射した粒子1の総面積と、から粒子1の総表面積が演算される。
【0039】
なお、x,y,zの比は、そのまま銅、鉄、砂利の含有比となるため、x,y,zの数値から含有比を検出することもできる。これにより、油圧機器の摩耗箇所の推定や、砂利等の外部からの混入を検出することができる。
【0040】
処理部40は、演算された粒子1の総表面積(ΣA)と、検出した粒子1の粒径と、から粒子1の総量(具体的には、総粒子数)を検出する。具体的には、粒子1を球とした場合、粒子1の粒径から粒子1の表面積(A)を演算する。より具体的には、粒子1の半径(粒径の半分)をrとして、A=4πr2より、Aを演算する。そして、粒子1の総表面積(ΣA)を粒子1の表面積(A)で割ることで(ΣA/A)、粒子1の総量を検出する。
【0041】
このようにして、粒子検出装置100は、第一通路61及び第二通路62を流れる作動油中の粒子1を検出する。言い換えれば、上記の検出方法は、流体が流れる通路60に向けて照射した光のうち流体中の粒子1により遮蔽されずに透過した透過光と、通路60に向けて照射した光のうち流体中の粒子1により散乱された散乱光と、により流体中の粒子1を検出する粒子検出方法であって、受光した透過光の情報から粒子1の粒径を検出し、受光した散乱光の情報から粒子1の材質を特定し、透過光の情報及び散乱光の情報から粒子1の総量を検出する。
【0042】
ここで、第一光源からの光のうち粒子により遮蔽されずに透過した透過光を受光して粒子を検出する方法では、粒子の反射率を検出することができないため、粒子の材質の特定が難しい。また、第二光源からの光のうち粒子により散乱された散乱光を受光して粒子を検出する方法では、作動油中に複数存在する粒子のそれぞれからの散乱光をまとめて受光するため、粒子の粒径の検出が難しい。このように、透過光を受光して粒子を検出する方法と、散乱光を受光して粒子を検出する方法には、それぞれ粒子に関するパラメータについて検出が難しいものがある。
【0043】
これに対して、粒子検出装置100では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子1の粒径は、第一受光部31が受光した透過光の情報から検出され、透過光の情報からは特定が難しい粒子1の材質は、第二受光部32が受光した散乱光の情報から特定される。さらに、粒子検出装置100では、散乱光の情報から粒子1の総表面積を演算し、演算された粒子1の総表面積と、透過光の情報から検出した粒子1の粒径とから粒子1の総量が検出される。
【0044】
このように、粒子検出装置100では、粒子1の粒径は、散乱光の情報からは検出が難しく透過光の情報からは検出が容易であるために透過光の情報から検出され、粒子1の材質は、透過光の情報からは特定が難しく散乱光の情報からは特定が容易であるために散乱光の情報から特定される。また、粒子1の総量は、透過光の情報から検出が容易な粒子1の粒径と、散乱光の情報から検出が容易な粒子1の総表面積と、から検出される。
【0045】
また、粒子検出装置100では、検出器10が、第一通路61に向けて照射した光から透過光の情報を取得し、第一通路61と連続するとともに第一通路61よりも広い第二通路62に向けて照射した光から散乱光の情報を取得する。このように、連続して設けられ広さの異なる通路60を利用して、一つの検出器10で透過光の情報と散乱光の情報の両方を取得することができる。言い換えれば、粒子検出装置100では、二つの異なる方法により粒子1を検出するための構成が一つの検出器10に組み込まれる。よって、透過光の情報を取得する検出器と散乱光の情報を取得する検出器とを別々に設ける場合と比較し、粒子検出装置100の小型化及び低コスト化をすることができる。さらに、第一通路61と第二通路62との間の空間80に第一光源21及び第二光源22を設けることにより、粒子検出装置100をより小型化することができる。加えて、検出器10は、狭い方の通路である第一通路61に向けて照射した光から透過光の情報を取得する。そのため、第一通路61内で第一光源21からの光の照射方向において粒子1が重なることが抑制され、粒子1の粒径の検出精度が向上する。
【0046】
また、粒子検出装置100では、第二通路62には作動油の流れ方向が第一通路61から変化して導かれるため、第一通路61と第二通路62との境界A(図1図2参照)で、作動油の乱流が生じる。そのため、乱流により、作動油中において凝集した粒子1が分散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することが防止され、粒子検出装置100の検出精度が向上する。加えて、第二通路62は水平方向に対して下方に傾斜するため、粒子1が第二通路62の底面に接触したとしても底面に沿って移動しやすいため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0047】
また、粒子検出装置100では、第二通路62は下流側ほど流路径が大きくなるように形成されるため、作動油は第二通路62を拡散しながら流れる。これにより、作動油中の粒子1が拡散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0048】
また、粒子検出装置100では、第二通路62の下方側に設けられる第二光源22から光が照射されるため、第二通路62の底面付近を流れる作動油中の粒子1も検出することができる。よって、粒子検出装置100の検出精度が向上する。
【0049】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0050】
粒子検出装置100では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子1の粒径は、第一受光部31が受光した透過光の情報から検出され、透過光の情報からは特定が難しい粒子1の材質は、第二受光部32が受光した散乱光の情報から特定される。さらに、粒子1の総量は、透過光の情報及び散乱光の情報から検出される。これにより、作動油中の粒子1の粒径、総量を検出し、材質を特定することができる。
【0051】
粒子検出装置100では、散乱光の情報から粒子1の総表面積を演算し、演算された粒子1の総表面積と、透過光の情報から検出した粒子1の粒径と、から粒子1の総量を検出することで、作動油中の粒子1の総量をより正確に検出することができる。
【0052】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0053】
<変形例1>
上記実施形態では、粒子検出装置100は、第一受光部31が受光した透過光の画像70から粒子1の粒径を検出する。これに限らず、粒子検出装置100は、粒子1の粒径の検出結果を蓄積することにより粒子1の粒径分布を演算し、演算された粒径分布から得られる平均粒径を粒子1の粒径として検出してもよい。この場合では、粒子1の粒径としての平均粒径と粒子1の総表面積とから粒子1の総量が検出される。この構成では、作動油中の粒子1の粒径及び総量をより正確に検出することができる。また、粒子1の粒径を、例えば5μm,10μm,15μmといった粒径のグループに分類し、粒子1全体に対する各粒径のグループの粒子1の存在比を演算してもよい。そして、各粒径のグループの粒子1の存在比と、検出された粒子1の総表面積と、から粒子1の総量を検出してもよい。この構成では、処理部40による演算を簡素化することができる。
【0054】
<変形例2>
上記実施形態では、粒子検出装置100は、散乱光の情報から検出される粒子1の総表面積と透過光の情報から検出される粒子1の粒径とから粒子1の総量を検出する。これにより、作動油中の粒子1の総量をより正確に検出することができる。これに限らず、粒子検出装置100は、作動油中の粒子1の総量の検出精度は低下するものの、透過光の情報及び散乱光の情報の一方から粒子1の総量を検出してもよい。具体的には、透過光の情報においては、ラベリング処理後の画像から当該画像内の粒子1の総数を検出し、粒子1の総数と第一受光部31の撮像範囲、及び通路60の第一通路61の流路面積から、粒子1の総量を検出する。また、散乱光の情報においては、演算された粒子1の総表面積と、処理部40に予め記憶された各材質の粒子の粒径と、により粒子1の総量を検出する。この構成であっても、作動油中の粒子1の粒径、総量、を検出し、材質を特定することができる。
【0055】
<変形例3>
上記実施形態では、通路60は、上流側に設けられる接続通路64と、接続通路64と連続して接続通路64よりも下流側に設けられる第一通路61と、水平方向に対して下方に傾斜する第二通路62と、水平方向に延びる第三通路63と、を有する。しかしながら、通路60の構成は、第一光源21からの透過光を第一受光部31により受光し、第二光源22からの散乱光を第二受光部32により受光できる構成であればこれに限らない。例えば、通路60は、全体の流路径が一様であって水平方向に延びる構成でもよく、また、全体の流路径が一様であって水平方向に延びるとともに途中で水平方向に対して下方に傾斜する構成であってもよい。また、接続通路64及び第三通路63は、通路60に必須の構成ではない。
【0056】
<変形例4>
上記実施形態では、第二受光部32は、三つの受光素子32a,32b,32cにより構成される。これに限らず、第二受光部32を構成する受光素子の数はいくつであってもよい。なお、受光素子から出力される電圧値から粒子1の各材質の表面積を演算する場合には、受光素子は、粒子1に含まれる材質の数以上が必要となる。
【0057】
<変形例5>
上記実施形態では、第一受光部31は、受光した光を撮像するイメージセンサにより構成され、所定の時間間隔で透過光を撮像した画像70を処理部40に出力する。これにより、粒子検出装置100を安価な構成にしつつ、粒子検出装置100により粒子1を正確に検出できる。これに限らず、粒子検出装置100が高価にはなるものの、第一受光部31が例えば受光素子により構成され、受光した光を電圧値等の電気信号に変換して連続的に処理部40に出力する構成であってもよい。
【0058】
<変形例6>
上記実施形態では、第一光源21及び第二光源22は通路60の下方側に設けられ、第一受光部31及び第二受光部32は通路60の上方側に設けられる。これに限らず、第一光源21及び第二光源22が通路60の上方側に設けられ、第一受光部31及び第二受光部32が通路60の下方側に設けられてもよい。この構成であっても、第二通路62の底面付近を流れる粒子1を検出することができ、粒子検出装置100の検出精度が向上する。
【0059】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0060】
粒子検出装置100は、流体が流れる通路60と、光源20から流体(作動油)に向けて照射した光を受光して流体中の粒子1を検出する検出器10と、を備え、検出器10は、通路60に向けて光を照射する第一光源21と、第一光源21からの光のうち粒子1により遮蔽されずに透過した透過光を受光する第一受光部31と、通路60に向けて光を照射する第二光源22と、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱された散乱光を受光する第二受光部32と、第一受光部31が受光した透過光の情報から粒子1の粒径を検出し、第二受光部32が受光した散乱光の情報から粒子1の材質を特定する処理部40と、を有する。
【0061】
この構成では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子1の粒径は、第一受光部31が受光した透過光の情報から検出され、透過光の情報からは特定が難しい粒子1の材質は、第二受光部32が受光した散乱光の情報から特定される。これにより、流体中の粒子1の粒径を検出し、材質を特定することができる。
【0062】
また、処理部40は、散乱光の情報から粒子1の総表面積を演算し、当該総表面積と、透過光の情報から検出した粒子1の粒径と、から粒子1の総量を検出する。
【0063】
この構成では、透過光の情報と散乱光の情報を併用することで、流体中の粒子1の総量をより正確に検出することができる。
【0064】
また、通路60は、第一通路61と、第一通路61と連続するとともに第一通路61から広がって設けられる第二通路62と、を有し、第一光源21は、第一通路61に向けて光を照射し、第二光源22は、第二通路62に向けて光を照射する。
【0065】
この構成では、検出器10が、第一通路61に向けて照射した光から透過光の情報を取得し、第一通路61と連続するとともに第一通路61よりも広い第二通路62に向けて照射した光から散乱光の情報を取得する。このように、連続して設けられ広さの異なる通路60を利用して、一つの検出器10で透過光の情報と散乱光の情報の両方を取得することができる。よって、透過光の情報を取得する検出器と散乱光の情報を取得する検出器とを別々に設ける場合と比較し、粒子検出装置100を小型化することができる。さらに、第一通路61と第二通路62との間の空間80に第一光源21及び第二光源22を設けることにより、粒子検出装置100をより小型化することができる。
【0066】
また、流体が流れる通路60に向けて照射した光のうち流体中の粒子1により遮蔽されずに透過した透過光と、通路60に向けて照射した光のうち粒子1により散乱された散乱光と、により流体中の粒子1を検出する粒子検出方法は、受光した透過光の情報から粒子1の粒径を検出し、受光した散乱光の情報から粒子1の材質を特定する。
【0067】
この構成では、散乱光の情報からは検出が難しい粒子1の粒径は、透過光の情報から検出し、透過光の情報からは特定が難しい粒子1の材質は、散乱光の情報から特定する。これにより、流体中の粒子1の粒径を検出し、材質を特定することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0069】
1・・・粒子、10・・・検出器、20・・・光源、21・・・第一光源、22・・・第二光源、31・・・第一受光部、32・・・第二受光部、40・・・処理部、60・・・通路、61・・・第一通路、62・・・第二通路
図1
図2
図3
図4