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  • 特開-粒子検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149174
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粒子検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20231005BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/85 B
G01V8/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057605
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 司
【テーマコード(参考)】
2G051
2G105
【Fターム(参考)】
2G051AA48
2G051AB01
2G051BA01
2G051CA03
2G051CA07
2G051CB05
2G105AA01
2G105BB17
2G105CC02
2G105CC03
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH05
(57)【要約】
【課題】粒子検出装置の検出精度を向上させる。
【解決手段】粒子検出装置100は、流体が流れる通路60と、光源20から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子1を検出する検出器10と、を備え、通路60は、第一通路61と、水平方向に対して下方に傾斜するとともに流体の流れ方向が第一通路61から変化して導かれる第二通路62と、を有し、検出器10は、第二通路62を流れる流体中の粒子1を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる通路と、
光源から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子を検出する検出器と、を備え、
前記通路は、
第一通路と、
水平方向に対して下方に傾斜するとともに流体の流れ方向が前記第一通路から変化して導かれる第二通路と、を有し、
前記検出器は、前記第二通路を流れる流体中の粒子を検出することを特徴とする粒子検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子検出装置であって、
前記第二通路は、下流側ほど流路径が大きくなることを特徴とする粒子検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体流路の管路の一部を偏平とし、偏平部において液体の流れる方向とほぼ直角にかつ流路幅全体をカバーするように透明部を設け、透明部幅全体を一次元イメージセンサーカメラにより監視して流路内を流れる液体と液体に含まれる異物との光学的差異を検出する異物検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-54441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような異物検出装置では、水平方向に延びる流路に対して鉛直方向にセンサが設けられる。そのため、液体中の異物がセンサの検出範囲に滞留すると、当該異物がセンサにより常時検出されることで、検出精度が悪化するおそれがある。これに対して、センサを水平方向に延びる流路に対して垂直方向に設け、流路の中心付近を流れる液体中の異物のみを検出することも考えられる。しかしながら、この場合では、流路の底面(鉛直方向下方側)付近を流れる液体中の異物を検出しづらくなり、検出精度が悪化する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、粒子検出装置の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粒子検出装置であって、流体が流れる通路と、光源から流体に向けて照射した光を受光して流体中の粒子を検出する検出器と、を備え、通路は、第一通路と、水平方向に対して下方に傾斜するとともに流体の流れ方向が第一通路から変化して導かれる第二通路と、を有し、検出器は、第二通路を流れる流体中の粒子を検出することを特徴とする。
【0007】
この発明では、第一通路と第二通路との境界で、流体の乱流が生じる。そのため、乱流により、流体中の粒子が分散されるため、第二通路の底面に粒子が滞留することが防止される。加えて、第二通路は水平方向に対して下方に傾斜するため、第二通路の底面に粒子が滞留することがより防止される。
【0008】
また、本発明は、第二通路は、下流側ほど流路径が大きくなることを特徴とする。
【0009】
この発明では、流体は第二通路を拡散しながら流れる。これにより、流体中の粒子が拡散されるため、第二通路の底面に粒子が滞留することがより防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子検出装置の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る粒子検出装置の概略図である。
図2】通路、光源、及び受光部の配置を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態の変形例に係る粒子検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る粒子検出装置100について説明する。なお、以下では、単に鉛直方向上方を「上方」、鉛直方向下方を「下方」とも称する。
【0013】
粒子検出装置100は、例えば、油圧機械(図示せず)に作動油を給排する配管(図示せず)を連結する継手間に設けられ、作動油中の異物である粒子1を検出するものである。具体的には、粒子検出装置100は、作動油中の粒子1の粒径及び材質といった粒子1に関するパラメータを検出する。なお、粒子検出装置100は、作動油以外の作動水や圧縮空気等の流体中の粒子を検出してもよい。また、粒子検出装置100は、作動油を給排する配管から分岐して設けられる粒子検出用の通路に設けられて粒子1を検出してもよい。
【0014】
図1に示すように、粒子検出装置100は、作動油が流れる通路60と、光源20から作動油に向けて照射した光を受光して作動油中の粒子1を検出する検出器10と、を備える。通路60は、上流側に設けられる第一通路61と、下流側に設けられる第二通路62と、を有する。通路60の詳細な構成については後述する。
【0015】
図1図2に示すように、検出器10は、通路60の第一通路61に向けて光を照射する第一光源21と、通路60の第二通路62に向けて光を照射する第二光源22と、第一光源21からの光を受光する第一受光部31と、第二光源22からの光を受光する第二受光部32と、第一受光部31及び第二受光部32が受光した光の情報が出力される処理部40と、を備える。第一光源21及び第二光源22により光源20が構成され、第一受光部31及び第二受光部32により受光部30が構成される。
【0016】
第一光源21及び第二光源22は、本実施形態では、LEDにより構成される。第一光源21及び第二光源22は、通路60の外部でかつ通路60の下方側に設けられる。第一光源21は、第二光源22よりも通路60の上流側に設けられる。第一光源21からの光は、第一通路61を流れる作動油中の粒子1により一部が遮蔽され、第一受光部31に入射する。第二光源22からの光は、第二通路62を流れる作動油中の粒子1により一部が散乱され、散乱された散乱光が第二受光部32に入射する。なお、「散乱」とは、第二光源22からの光の進行方向が作動油中の粒子1により変わることを指す。「散乱光」には、例えば、粒子1の表面で反射された光、粒子1により屈折された光、粒子1を回折した光が含まれる。
【0017】
第一受光部31は、本実施形態では、受光した光を撮像するイメージセンサにより構成される。イメージセンサには、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが用いられる。第一受光部31は、通路60の第一通路61を挟んで第一光源21に対向するように、通路60の外部でかつ通路60の上方側に設けられる。第一受光部31は、第一光源21からの光のうち粒子1により遮蔽されずに透過した透過光を受光し、所定の時間間隔で透過光を撮像した画像70(図3参照)を処理部40に出力する。
【0018】
図2に示すように、第二受光部32は、本実施形態では、複数の受光素子32a,32b,32cにより構成される。受光素子32a,32b,32cには、例えばPD(Photo Diode)が用いられる。受光素子32a,32b,32cは、互いに異なる角度で通路60の第二通路62に対向し、通路60の外部でかつ通路60の上方側に設けられる。具体的には、受光素子32a,32b,32cは、自身の受光軸と第二光源22の光軸とのなす角度α,β,γがそれぞれ異なるように設けられる。受光素子32a,32b,32cは、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱された散乱光をそれぞれ受光し、受光した光を電気信号(具体的には、電圧値)に変換して連続的に処理部40に出力する。受光素子32a,32b,32cは、第二光源22からの光のうち粒子1により散乱されずに透過した光を受光しないように、第二通路62を挟んで第二光源22には対向しないように設けられる。
【0019】
図1に示す処理部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは処理部40に接続された機器との情報の入出力に使用される。なお、処理部40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0020】
処理部40は、第一受光部31から出力された透過光の情報及び第二受光部32から出力された散乱光の情報から、作動油中の粒子1に関するパラメータを検出する。例えば、処理部40は、透過光の情報(図3の画像70)から粒子1の粒径を検出し、散乱光の情報(受光素子32a,32b,32cからの電気信号)から粒子1の材質を検出し、検出結果を表示部(図示せず)等に出力する。
【0021】
次に、通路60の詳細な構成について説明する。
【0022】
図1図2に示すように、通路60は、上流側に設けられる第一通路61と、水平方向に対して下方に傾斜する第二通路62と、下流側に設けられる第三通路63と、を有する。
【0023】
第一通路61は、本実施形態では水平方向に延びて設けられ、上流側の端部が外部の油路に接続される。第一通路61は、流路径が一様(鉛直方向の寸法が一様)である。第一通路61には、第一光源21からの光を透過させるための透過窓65,66がそれぞれ第一光源21、第一受光部31に対向して設けられる。なお、第一通路61は、水平方向に対して傾いて設けられてもよい。
【0024】
第二通路62は、第一通路61と連続するとともに第一通路61よりも下流側に設けられる。第二通路62は、下流側ほど流路径が大きくなるように(鉛直方向の寸法が大きくなるように)、作動油の流れ方向に沿って拡径して(鉛直方向に広がって)形成される。具体的には、第二通路62は、底面が第一通路61から下方に傾斜して設けられる。このように第二通路62が設けられるため、第二通路62には、作動油の流れ方向が第一通路61から変化して導かれる。第二通路62には、第二光源22からの光を透過させるための透過窓67が第二光源22に対向して設けられ、作動油中の粒子1により散乱された散乱光を透過させるための透過窓68が第二受光部32に対向して設けられる。透過窓65,66,67,68は、例えば、ガラス、人工石英、サファイア等の光透過性の材料で形成される。
【0025】
第三通路63は、本実施形態では水平方向に延びて設けられる。第三通路63は、第二通路62と連続するとともに第二通路62よりも下流側に設けられ、下流側の端部が外部の油路に接続される。このように、通路60は、油圧機械に作動油を給排する油路間を中継するように設けられる。なお、第三通路63は必須の構成ではなく、第二通路62の下流側の端部を外部の油路に接続してもよい。
【0026】
このように、粒子検出装置100は、第一通路61及び第二通路62を流れる作動油中の粒子1を検出する。粒子検出装置100では、第二通路62には作動油の流れ方向が第一通路61から変化して導かれるため、第一通路61と第二通路62との境界A(図1図2参照)で、作動油の乱流が生じる。そのため、乱流により、作動油中において凝集した粒子1が分散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することが防止される。加えて、第二通路62は水平方向に対して下方に傾斜するため、粒子1が第二通路62の底面に接触したとしても底面に沿って移動しやすいため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0027】
さらに、粒子検出装置100では、第二通路62は下流側ほど流路径が大きくなるように形成されるため、作動油は第二通路62を拡散しながら流れる。これにより、作動油中の粒子1が拡散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0028】
また、粒子検出装置100では、第二通路62の下方側に設けられる第二光源22から光が照射されるため、第二通路62の底面付近を流れる作動油中の粒子1も検出することができる。よって、粒子検出装置100の検出精度が向上する。
【0029】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0030】
粒子検出装置100では、第一通路61と第二通路62との境界Aで、作動油の乱流が生じるため、乱流により作動油中の粒子1が分散され、第二通路62の底面に粒子1が滞留することが防止される。加えて、第二通路62は水平方向に対して下方に傾斜するため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0031】
粒子検出装置100では、第二通路62は下流側ほど流路径が大きくなるように形成されるため、作動油は第二通路62を拡散しながら流れる。これにより、作動油中の粒子1が拡散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0032】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0033】
<変形例1>
上記実施形態では、粒子検出装置100は、第一通路61及び第二通路62を流れる作動油中の粒子1を検出する。しかしながら、第一通路61を流れる作動油の粒子1を検出することは必須ではない。つまり、粒子検出装置100は、第二通路62を流れる作動油中の粒子1を検出する構成であればよい。
【0034】
<変形例2>
上記実施形態では、粒子検出装置100は、第二通路62において第二光源22からの光のうち粒子1により散乱された散乱光を第二受光部32により受光して粒子1を検出し、第二受光部32は第二通路62を挟んで第二光源22には対向しないように設けられる。これに限らず、第二光源22及び第二受光部32に代えて、第一光源21及び第一受光部31が第二通路62に対向して設けられてもよい。この場合では、第一受光部31は第二通路62を挟んで第一光源21に対向するように設けられる。
【0035】
<変形例3>
上記実施形態では、第二受光部32は、三つの受光素子32a,32b,32cにより構成される。これに限らず、第二受光部32を構成する受光素子の数はいくつであってもよい。なお、受光素子から出力される電圧値から粒子1の各材質の表面積を演算する場合には、受光素子は、粒子1に含まれる材質の数以上が必要となる。
【0036】
<変形例4>
上記実施形態では、第一受光部31は、受光した光を撮像するイメージセンサにより構成され、所定の時間間隔で透過光を撮像した画像70を処理部40に出力する。これにより、粒子検出装置100を安価な構成にしつつ、粒子検出装置100により粒子1を正確に検出できる。これに限らず、粒子検出装置100が高価にはなるものの、第一受光部31が例えば受光素子により構成され、受光した光を電圧値等の電気信号に変換して連続的に処理部40に出力する構成であってもよい。
【0037】
<変形例5>
上記実施形態では、第二通路62は、下流側ほど流路径が大きくなるように設けられる。これに限らず、第二通路62は、流路径が一様になるように設けられてもよい。つまり、図3に示すように、第二通路62は、水平方向に対して下方に傾斜するとともに作動油の流れ方向が第一通路61から変化して導かれればよい。この構成であっても、第二通路62の底面に粒子1が滞留することが防止され、粒子検出装置100の検出精度が向上する。
【0038】
<変形例6>
上記実施形態では、第一光源21及び第二光源22は通路60の下方側に設けられ、第一受光部31及び第二受光部32は通路60の上方側に設けられる。これに限らず、第一光源21及び第二光源22が通路60の上方側に設けられ、第一受光部31及び第二受光部32が通路60の下方側に設けられてもよい。この構成であっても、第二通路62の底面付近を流れる粒子1を検出することができ、粒子検出装置100の検出精度が向上する。
【0039】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0040】
粒子検出装置100は、流体が流れる通路60と、光源20から流体(作動油)に向けて照射した光を受光して流体中の粒子1を検出する検出器10と、を備え、通路60は、第一通路61と、水平方向に対して下方に傾斜するとともに流体の流れ方向が第一通路61から変化して導かれる第二通路62と、を有し、検出器10は、第二通路62を流れる流体中の粒子1を検出する。
【0041】
この構成では、第一通路61と第二通路62との境界Aで、流体の乱流が生じる。そのため、乱流により、流体中の粒子1が分散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することが防止される。加えて、第二通路62は水平方向に対して下方に傾斜するため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0042】
また、粒子検出装置100では、第二通路62は、下流側ほど流路径が大きくなる。
【0043】
この構成では、作動油は第二通路62を拡散しながら流れる。これにより、作動油中の粒子1が拡散されるため、第二通路62の底面に粒子1が滞留することがより防止される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0045】
1・・・粒子、10・・・検出器、20・・・光源、60・・・通路、61・・・第一通路、62・・・第二通路
図1
図2
図3