(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149185
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のシート取付構造
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B62J1/12 C
B62J1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057616
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健
(57)【要約】
【課題】シート高を上げることなく、シート後側のクッション材の厚さを確保できる鞍乗型車両のシート取付構造を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両のシート取付構造は、運転者が着座するライダーシート24と、ライダーシート24の前方に配置された燃料タンク22とを備え、ライダーシート24を前後方向に離れた少なくとも2か所で車体フレームFRに支持する。ライダーシート24の前側の支持部が、シートロック機構50により施錠・解錠自在に車体フレームFRに支持されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が着座するライダーシートと、前記ライダーシートの前方に配置されて前記ライダーシートの前端から上方に延びる後壁を有する前方部材とを備え、前記ライダーシートを前後方向に離れた少なくとも2か所で車体フレームに支持する鞍乗型車両のシート取付構造であって、
前記ライダーシートの前側の支持部が、シートロック機構により施錠・解錠自在に車体フレームに支持されている鞍乗型車両のシート取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両のシート取付構造において、前記前方部材と、前記シートロック機構が、共通のブラケットを介して前記車体フレームに支持されている鞍乗型車両のシート取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両のシート取付構造において、前記前方部材の後部は、弾性体を介して前記ブラケットに支持され、
前記シートロック機構と、前記弾性体が前記ブラケットの上面に取り付けられている鞍乗型車両のシート取付構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の鞍乗型車両のシート取付構造において、前記前方部材の後部は、車幅方向に離れた2か所の支持部で前記ブラケットに支持され、
前記シートロック機構が、2か所の前記支持部の間に配置されている鞍乗型車両のシート取付構造。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両のシート取付構造において、前記シートは、その底面に突起を有し、
前記ブラケットが、前記突起が挿通可能な貫通孔を有している鞍乗型車両のシート取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両のシート取付構造において、前記ライダーシートは、その前部の底面における前記突起の左右両側に、下方に突出したダンパを有し、
前記ダンパが、前記ブラケットに載置されている鞍乗型車両のシート取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、鞍乗型車両の運転者が着座するライダーシートの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のような鞍乗型車両において、シート下方の空間にアクセスするために、シートを着脱自在に車体に取り付ける構造が知られている。このような構造に、シートロック機構を用いてシートを施錠するものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示のシートロック機構は、運転者が着座するライダーシートの後側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、シートロック機構を配置する分だけ、シート位置が高くなったり、シートの後側のクッション材の厚さが薄くなったりする。
【0005】
本出願の開示は、シート高を上げることなく、シート後側のクッション材の厚さを確保できる鞍乗型車両のシート取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態では、運転者が着座するライダーシートと、前記ライダーシートの前方に配置されて前記ライダーシートの前端から上方に延びる後壁を有する前方部材とを備え、前記ライダーシートを前後方向に離れた少なくとも2か所で車体フレームに支持する鞍乗型車両のシート取付構造であって、前記ライダーシートの前側の支持部が、シートロック機構により施錠・解錠自在に車体フレームに支持されている。前方部材は、例えば、ライダーシートの前方に配置された燃料タンクである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の鞍乗型車両のシート取付構造によれば、ライダーシートの前側にシートロック機構を配置することで、シート高を上げることなく、ライダーシートの後側に配置する場合に比べて、シートロック機構の厚さの分だけライダーシートの後側のシート厚さを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1形態に係るシート取付構造を備えた鞍乗型車両の一種である自動二輪車を示す側面図である。
【
図3】同自動二輪車のライダーシートを斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】同シート取付構造を斜め側方から見た斜視図である。
【
図6】同シート取付構造からシートロックガードを取り外した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本開示の第1形態に係るシート取付構造を備えた鞍乗型車両の一種である自動二輪車の前部を示す側面図である。本明細書において、「右」、「左」は、車両に乗車した運転者から見た「右」、「左」をいう。つまり、左右方向は、車幅方向に一致する。また、「前」「後」とは、車両の進行方向の「前」「後」をいう。つまり、車体の長手方向は、車両用の前後方向に一致する。車幅方向内側とは前後方向に延びる車体中心線に向かう側をいい、車体の車幅方向外側とは車体中心線から離れる側をいう。
【0010】
本形態の自動二輪車は、シートに対してハンドルの位置が高いアップライトポジションの車両である。アップライトポジションの車両は、ハンドルに対してシート高が低く、運転者はライダーシートの後側に着座する。ただし、自動二輪車は、アップライトポジションの車両に限定されない。自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びたのち、下方に湾曲して上下方向に延びている。リヤフレーム2は、メインフレーム1から後方に延びている。
【0011】
図2に示すように、メインフレーム1およびリヤフレーム2は、左右一対のメインフレーム片1aおよびリヤフレーム2aを有している。左右のリヤフレーム片2aは、
図1に示す車幅方向に延びるクロスパイプ2bで連結されている。
図1では、クロスパイプ2bが1つのみ描かれているが、リヤフレーム片2aは複数のクロスパイプ2bで連結されてもよい。
【0012】
ヘッドパイプ4にフロントフォーク6が支持されている。フロントフォーク6の下端部に前輪8が支持され、フロントフォーク6の上端部にハンドル10が取り付けられている。
【0013】
メインフレーム1の後端下部に、スイングアームブラケット12が設けられている。スイングアームブラケット12に、スイングアーム14が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム14の後端部に、後輪16が取り付けられている。
【0014】
メインフレーム1の下方でスイングアームブラケット12の前方に、駆動源であるエンジンEが配置され、車体フレームFRに支持されている。エンジンEの動力が動力伝達部材18を介して後輪16に伝達され、後輪16が駆動する。動力伝達部材18は、例えば、ドライブチェーン、ドライブベルト等である。ただし、動力伝達部材18は、これらに限定されない。
【0015】
メインフレーム1の上部に燃料タンク22が配置されている。燃料タンク22は、前端部がピンを差し込むことで車体フレームFRに支持され、後端部がボルト連結により車体フレームFRに支持されている。燃料タンク22の後端部の支持構造については後述する。
【0016】
燃料タンク22の後方に運転者が着座するライダーシート24と同乗者が着座するパッセンジャーシート26が配置され、車体フレームFRに支持されている。運転者が着座するライダーシート24は、パッセンジャーシートが一体化されたダブルシートであってもよい。また、パッセンジャーシート26じゃ省略されてもよい。本実施形態では、燃料タンク22が、ライダーシート24の前端から上方に延びる後壁22aを有する前方部材を構成している。ライダーシート24の後部の下方に後輪16が位置している。
【0017】
図3に示すように、ライダーシート24の前端部24fは、車幅方向両端から中央部に向かって後方に凹んだ形状を有している。このライダーシート24の前端部24fの後方に凹んだ凹み部24a内に、燃料タンク22の後壁22aが位置している。詳細には、ライダーシート24の前端の凹み部24aと、燃料タンク22の後壁22aが若干の隙間を介して前後方向に対向している。
【0018】
図1に示すライダーシート24の下方に、電装部品25が配置されている。電装部品25は、例えば、ETCユニット(Electronic Toll Collection Unit)である。ただし、電装部品25は、ETCユニットに限定されず、バッテリ、スマートフォン充電用のUSB端子、盗難防止装置であってもよい。また、ライダーシート24の下方に、左右一対のサイドカバー30が車体フレームFRに取り付けられている。サイドカバー30は、ライダーシート24の下方の領域を外側方から覆っている。左側のサイドカバー30にキー孔31が開口している。
【0019】
図3に示すように、ライダーシート24は、シート底板32と、シート底板32に取り付けられた表皮レザー34と、シート底板32と表皮レザー34との間に充填されたクッション材36とを有している。クッション材36は、弾発性を有する。クッション材36は、例えば、ウレタン、ゴム系のスポンジ等である。ただし、クッション材36の材質はこれに限定されない。
【0020】
シート底板32は、例えば、樹脂製であり、その底面に補強用のリブ32aを有している。リブ32aは、例えば、型成形によりシート底板32と一体に形成されている。また、シート底板32は、その底面に複数の突出部分38を有している。突出部分38は、シート底板32の底面から下方に突出する円柱形状または円錐台形状である。突出部分38も、型成形によりシート底板32と一体に形成されている。本実施形態では、シート底板32は、8つの突出部分38を有している。ただし、突出部分38の数はこれに限定されない。
【0021】
各突出部分38の先端に、ダンパ40が取り付けられている。ダンパ40は、ゴムのような弾性部材からなる。ダンパ40が取り付けられた突出部分38は、車体にシート24を装着した際に車体フレームFRの上面に当接する。
【0022】
シート底板32は、その後端部に係合片42を有している。係合片42は、シート底板32の後端から下方に湾曲しながら後方に延びている。係合片42も、型成形によりシート底板32と一体に形成されている。本実施形態では、シート底板32は、車幅方向に並んだ2つの係合片42を有している。
【0023】
シート底板32は、その前部に突起44を有している。突起44は、シート底板32の前部の車幅方向中間部に位置し、シート底板32の底面から下方に突出している。突起44は、金属製の円柱形状のピンである。詳細には、突起44は、シート底板32の底面にボルト連結された板金製の取付プレート45に溶接で接合されている。突起44の左右両側に、ダンパ40が取り付けられた突出部分38が配置されている。
図4に示すように、突起44の先端部に、突起44の径方向、本実施形態では車幅方向に延びる係合溝44aが形成されている。
【0024】
図3に示すライダーシート24の係合片42が、
図1のクロスパイプ2bに前方から差し込まれる。これにより、ライダーシート24の後部が車体に支持される。詳細には、ライダーシート24の後部の各係合片42(
図3)が、車体フレームFRに設けられた係合孔に前方から差し込まれ、ライダーシート24の後部の上下方向および車幅方向の移動が規制される。この状態で、ライダーシート24の前部を下方に回動させて、
図3に示すライダーシート24の突起44が、
図1の車体フレームFRに係合される。これにより、ライダーシート24の前部が車体に支持される。前部の支持構造の詳細は後述する。このとき、突出部分38の先端のダンパ40が車体フレームFRの上面に当接する。
【0025】
このように、本実施形態では、前後方向に離れた2か所の支持部でライダーシート24が車体フレームFRに支持されている。ただし、ライダーシート24は、前後方向に離れた少なくとも2か所で車体フレームFRに支持されていればよく、例えば、前端部、後端部および前後方向の中間部の3か所で車体フレームFRに支持されていてもよい。以下に、ライダーシート24の前側の支持部について説明する。
【0026】
ライダーシート24の前部は、
図5に示すシートロック機構50を介して車体フレームFRに支持されている。換言すれば、ライダーシート24の前側の支持部が、シートロック機構50により施錠・解錠自在に車体フレームFRに支持されている。
【0027】
図6に示すように、シートロック機構50は、シートロック本体52と、ロック片54と、ワイヤ56とを有している。シートロック本体52は、箱形状であり、ライダーシート24の突起44(
図3)が挿通する突起挿通孔52aを有している。また、シートロック本体52は、突起挿通孔52aの左右両側に第1ボルト挿通孔52b、52bを有している。突起挿通孔52aおよび各第1ボルト挿通孔52bは上下方向を向いている。
【0028】
ロック片54は、細長い板状であり、その長手方向中間部でねじ体55によりシートロック本体52に回動自在に取り付けられている。ロック片54の一端部54aは、取付金具58を介してワイヤ56の一端部56aに車幅方向に移動自在に連結されている。ロック片54の他端部54bは、半円形状の係止部54bを有している。
【0029】
ワイヤ56の他端部56bは、
図1に示すキー孔31を有するキー部材に連結されている。キー孔31にキーを挿入して回動操作することで、
図3に矢印A1で示すように、ワイヤ56が車幅方向に移動する。ワイヤ56の移動に伴い、ロック片54が実線のロック位置と、二点鎖線の解除位置に切り替えられる。ロック位置ではロック片54の係止部54bが突起挿通孔52a内に侵入し、解除位置では係止部54bが突起挿通孔52aから後退する。
【0030】
詳細には、ロック片54は、ワイヤ56の一端部56aのばね体60によりロック位置に位置するようばね力が付与されている。シートを取り付ける際にライダーシート24の突起44(
図4)が突起挿通孔52aに挿通されると、ばね力に抗して係止部54bが突起挿通孔52aから一旦後退した後、ばね力により突起44の係合溝44a(
図4)に係合する。これにより、ライダーシート24が施錠される。
【0031】
一方、
図1のライダーシート24を取り外す際は、サイドカバー30のキー孔31にキーを差し込んで回すことで、
図6のワイヤ56がばね力に抗して引っ張られ、係止部54bが解除位置に移動する。これにより、シートを取り外し可能な状態となる。
【0032】
図2に示すように、シートロック機構50は、さらに、シートロックガード62を有している。本実施形態では、シートロックガード62は、シートロック本体52と、ロック片54と、ばね体60を含むワイヤ56の一部とを上方から覆っている。
【0033】
シートロックガード62は、板金を折り曲げることで構成され、シートロック本体52の突起挿通孔52a(
図6)および第1ボルト挿通孔52b、52b(
図6)に相当する位置に、突起挿通孔62aおよび第2ボルト挿通孔62b,62bを有している。突起挿通孔60aおよび各第2ボルト挿通孔60bは上下方向を向いている。
【0034】
シートロック機構50は、燃料タンク22と共通のブラケット64を介して車体フレームFRに支持されている。詳細には、ブラケット64が車体フレームFRにボルト連結され、燃料タンク22の後部とシートロック機構50がブラケット64にボルト連結されている。
【0035】
ブラケット64は、板金を折り曲げることで形成され、
図7に示すように、メインフレーム片1aに平行な主面を有する第1のブラケット66と、水平方向に延びる主面を有する第2のブラケット68とを含んでいる。本実施形態では、第1のブラケット66の上面に、第2のブラケット68が溶接で接合されている。
【0036】
図6に示すように、ブラケット64は、左右のメインフレーム片1a,1a間を車幅方向に延びており、その車幅方向両端部でメインフレーム片1a,1aにボルト連結されている。詳細には、左右のメインフレーム片1a,1aそれぞれにステー69が溶接で接合されており、第1のブラケット66の車幅方向両端部が締結部材70によりステー69のねじ孔69a(
図8)に締結されている。本実施形態では、ステー69のねじ孔69a(
図8)は溶接ナットである。
【0037】
本実施形態では、左右それぞれで前後方向に並んだ2つの締結部材70、すなわち合計4つの締結部材70で、ブラケット64がメインフレーム片1aに連結されている。ただし、締結部材70の数はこれに限定されない。左側の後方の締結部材70は、ワイヤ支持部材72も締結している。つまり、左側の後方の締結部材70により、ブラケット64とワイヤ支持部材72がステー69に共締めされている。ワイヤ支持部材72は、シートロック機構50のワイヤ54の中間部を支持ずる。ワイヤ支持部材72は、本実施形態外の場所に設けてもよく、省略してもよい。
【0038】
図5に示すように、燃料タンク22の後面にタンクステー74が取り付けられている。板金を折り曲げることで形成され、上下方向に延びる鉛直部分74aと水平方向に延びる水平部分74bを有する断面L字形状である。タンクステー74は、鉛直部分74aで燃料タンク22の後面に溶接で接合されている。
【0039】
タンクステー74の水平部分74bは、
図6に示すように、車幅方向に離れた2つの支持片74c,74cを有している。詳細には、左右の支持片74c,74cはそれぞれ、水平部分74bの左右両端部から後方に延びている。この左右の支持片74c,74cの間に、シートロック機構本体52が配置されている。
【0040】
タンクステー74の左右の支持片74c,74cが、ラバーマウントにより第2のブラケット68の上面に取り付けられている。詳細には、
図7に示すように、ゴムのような弾性体からなる筒状のダンパ部材76が各支持片74cに装着されている。このダンパ部材76の中空部にボルト75が挿通され、第2のブラケット68のねじ孔78に締め付けられている。これにより、燃料タンク22の後部が、ブラケット64を介して車体フレームFRに支持される。本実施形態では、ねじ孔78は溶接ナットにより形成されている。
【0041】
さらに、シートロック機構50が、第2のブラケット68の上面に取り付けられている。詳細には、
図8に示すように、ボルトのような締結部材80が、上方からシートロックガード62の第2ボルト挿通孔62bおよびシートロック本体52の第1ボルト挿通孔52bの順に挿通され、第2のブラケット68のねじ孔82に締め付けられている。これにより、シートロック本体52およびシートロックガード62が締結部材80により第2のブラケット68に共締めされる。本実施形態では、ねじ孔82は溶接ナットにより形成されている。
【0042】
このように、燃料タンク22の後部とシートロック機構50は、水平な面である第2のブラケット68の上面に取り付けられている。つまり、燃料タンク22の後部とシートロック機構50は同じ高さで車体に取り付けられている。
【0043】
また、第2のブラケット68が水平であるから、ボルト75および締結部材80を上方から操作できる。したがって、作業性がよい。また、シートロック機構50が水平面に設置されるので、ライダーシート24の突起44が上方からほぼ鉛直方向にシートロックガード62およびシートロック本体52の突起挿通孔62a,52aに挿入される。よってライダーシート24を取り付けやすい。
【0044】
第2のブラケット68は、ライダーシート24の突起44に相当する位置に、突起44が挿通可能な貫通孔84を有している。これにより、ライダーシート24を装着時、すなわち、突起44を挿入した時に突起44が第2のブラケット68に接触するのを防ぐことができる。
【0045】
さらに、突起44の左右両側のダンパ40が、シートロックガード62の上面に載置されている。シートロック機構50が水平面に設置されているので、シートロックガード62の上面も水平であり、ダンパ40を載せやすい。
【0046】
ライダーシート24の後部の下方に後輪16が位置している。つまり、走行時の後輪16の上下動を考慮してライダーシート24を配置する必要がある。ライダーシート24の後部に、シートロック機構50を設けると、後輪16とのクリアランスを確保するため、シートロック機構50が後輪16から上方に十分離れた位置することになり、シート全体が高くなったり、シート厚みが薄くなったりする。
【0047】
このように、ライダーシート24の後側にシートロック機構50を設けると、ライダーシート24の位置を下げにくいうえに、ライダーシート24の後側のシート厚を確保しにくい。このため、ライダーシート24下方の収納空間を確保しにくい。特に、ハンドル10の位置が高いアップライトポジションの自動二輪車では、後側のシート厚も要求される。
【0048】
上記構成によれば、
図1に示すように、シートロック機構50が、ライダーシート24の前側に配置されている。ライダーシート24の前側にシートロック機構50を配置することで、シート高を上げることなく、シートロック機構50の厚さの分だけライダーシート24の後側のシート厚さを確保できる。
【0049】
また、ライダーシート24の前方の燃料タンク22によって、ライダーの前方への移動が防がれる。燃料タンク22があるために、ライダーシート24におけるライダーの荷重を支える部分が、前端部24f以外に位置することになる。その結果、前端部24fのシート厚みが薄くても乗り心地に影響することが少ない。さらに、ライダーの体格や乗車スタイルによって、ライダーシート24の前側に臀部が位置した場合でも、ライダーシート24の燃料タンク22が配置されているので、ライダーシート24の前端部24fにライダー臀部が位置することはない。
【0050】
図5に示すように、燃料タンク22の後部とシートロック機構50が、共通のブラケット64を介して車体フレームFRに支持されている。これにより、ライダーシート24(
図1)と燃料タンク22の隙間がばらつくのを抑制できる。また、共通のブラケット64に支持されることで、別々の部材に支持される場合に生じる誤差の累積を防ぐことができる。これによって、不所望に隙間が大きくなったり、クリアランスが得られなくなったりすること回避できる。
【0051】
図7に示すように、燃料タンク22の後部は弾性体76を介してブラケット64に支持され、シートロック機構50と弾性体76がブラケット64の上面に取り付けられている。このように、シートロック機構50を燃料タンク22の後部と同じ高さで支持することで、シートロック機構50を燃料タンク22の後部よりも高い位置で支持する場合に比べて、ライダーシート24(
図1)のシート高さを抑えることができる。
【0052】
図2に示すように、燃料タンク22の後部は車幅方向に離れた2か所の支持片74c,74cでブラケット64に支持され、シートロック機構50が2か所の支持片74c,74cの間に配置されている。これにより、燃料タンク22の支持片74cの後方にシートロック機構50を配置するのに比べて、シートロック機構50を前方に配置し易い。
【0053】
シートロック機構50を前方に配置することで、シート高を上げることなく、シート下方の空間を確保できる。シート下のスペースを確保したことで、シート下方に、例えば、電装部品25を配置できる。電装部品25以外に、シート下方に、ツールボックス等を配置してもよい。
【0054】
図8に示すように、ライダーシート24は底面に突起44を有し、ブラケット64が突起44の挿通可能な貫通孔84を有している。これにより、ライダーシート24の装着時に突起44がブラケット64に接触するのを防ぐことができる。よって、シートロック機構50の上下方向の高さを抑えることができる。
【0055】
また、ライダーシート24の底面における突起44の左右両側のダンパ40がブラケット64の上面に載置されている。これにより、突起44の支持が安定する。
【0056】
突起44は、ライダーシート24の上面の最も低い領域よりも前方に配置されている。ライダーシート24の厚み、すなわち、クッションの高さ寸法は、前端部が残余の部分に比べて薄い場合がある。この場合、前端部のクッションの高さが薄い領域に、突起44が配置される。車体にライダーシート24が取り付けられた状態で、ライダーシート24の底面における残余部分よりも高い位置に、突起44が配置される。これにより、低い部分のクッションを厚くしやすい。
【0057】
突起44は、車幅方向中央部に配置されている。係合片42は、左右一対設けられ、車幅方向に関して突起44の両側にそれぞれ配置される。燃料タンク22の後部は、左右2点でボルト締結されるので、ねじれが防がれる。ブラケット64における燃料タンク22が固定される部分が、車体フレームFRから上方に浮いて配置される。これにより、ブラケット64の変形により、エンジン振動が燃料タンク22に伝達されるのを抑えることができる。また、車体フレームFRから浮いて配置されることで、突起44の下端部をブラケット64に貫通させて、さらに下方に配置できる。燃料タンク22固定用のボルト75が、シートロック機構50へのアクセスを妨げる部位としても機能しやすい。
【0058】
本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。ライダーシートの前方に配置される前方部材は、燃料タンクに限定されない。例えば、燃料タンクはライダーシート下方など上記実施形態とは他の領域に配置されていてもよく、その場合も、ライダーの前方への移動の規制、ニーグリップ等のために、ライダーシートの前端から上方に突出する前方部材が設けられる。
【0059】
本開示のシート取付構造は自動二輪車以外の鞍乗型車両、例えば、三輪車、四輪バギー等にも適用可能である。また、本開示のシート取付構造は、電動の鞍乗型車両、ハイブリッドの鞍乗型車両にも適用可能である。電動の鞍乗型車両の場合、燃料タンクとは異なる前方部材、例えば、ダミータンクが設けられる。このような前方部材が設けられることで、ライダーシートに跨る運転者が前方に移動するが防がれる。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
22 燃料タンク(前方部材)
24 ライダーシート
40 ダンパ
44 突起(ライダーシートの前側の支持部)
50 シートロック機構
64 共通のブラケット
76 弾性体(ダンパ部材)
84 貫通孔
FR 車体フレーム