(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014919
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20230124BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230124BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230124BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
F16C11/04 E
F16C11/04 F
G06F1/16 312J
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
H05K5/03 C
H05K5/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119145
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】河村 英治
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
【Fターム(参考)】
3J105AA01
3J105AB02
3J105AB06
3J105AB12
3J105AB13
3J105AB17
3J105AB23
3J105AC07
3J105BA22
3J105BB06
3J105BB12
3J105BB16
3J105BB52
3J105BC03
3J105BC12
3J105BC23
3J105BC26
3J105DA03
3J105DA06
3J105DA23
3J105DA50
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360BA04
4E360BB02
4E360BB12
4E360BB17
4E360BB27
4E360BC06
4E360BC07
4E360BC08
4E360EA18
4E360EC05
4E360EC11
4E360EC14
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED04
4E360ED15
4E360ED16
4E360ED17
4E360ED23
4E360ED28
4E360GA02
4E360GA08
4E360GA14
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】第1筐体と第2筐体とが意図せず開成することを抑制しつつ、第1筐体と第2筐体とを閉成操作するときに、ゆっくりと閉成させることのできる開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器を提供する。
【解決手段】開閉装置としては、第1筐体と第2筐体のいずれか一方に取り付けられる取付部材と、いずれか他方に取り付けた支持部材とをヒンジシャフトを介して連結し、前記ヒンジシャフトが前記取付部材或は支持部材と共に回転することによって、前記第1筐体と前記第2筐体を相対的に開閉可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジシャフトの軸方向に設けたダンパー機構と、前記ダンパー機構を構成するダンパー装置と前記ヒンジシャフトの間に設けた前記ヒンジシャフトの回転動作を当該ヒンジシャフトの軸方向の進退動作に変換する動作変換機構とで構成し、端末機器としては前記開閉装置を用いることで解決した。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体のいずれか一方に取り付けられる取付部材と、いずれか他方に取り付けた支持部材とをヒンジシャフトを介して連結し、前記ヒンジシャフトが前記取付部材或は支持部材と共に回転することによって、前記第1筐体と前記第2筐体を相対的に開閉可能に連結するヒンジ部と、
前記ヒンジシャフトの軸方向に設けたダンパー機構と、
前記ダンパー機構を構成するダンパー装置と前記ヒンジシャフトの間に設けた前記ヒンジシャフトの回転動作を当該ヒンジシャフトの軸方向の進退動作に変換する動作変換機構と、を有し、
前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に閉成させる際に、所定の閉成角度から前記動作変換機構を介して前記ダンパー機構が動作して緩衝効果が得られるように成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項2】
前記開閉装置は、さらに前記ヒンジシャフトの回転付勢機構を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記開閉装置は、さらに前記ヒンジシャフトのフリクショントルク発生機構を備えていることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記ダンパー機構は、前記取付部材か或は前記支持部材のいずれか一方に取り付けられたダンパー装置と当該ダンパー装置のピストン杆に接する往復動可能な押圧部材とで構成したことを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記動作変換機構は、前記ヒンジシャフトに形成されたスパイラル溝と、一端部を前記ヒンジシャフトのスパイラル溝とスライド可能に係合したスパイラルガイドピンと、前記取付部材か或は前記支持部材に前記ヒンジシャフトの軸方向へスライド可能に設けられ前記スパイラルガイドピンの他端部が取り付けられたスライド部材と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記ヒンジシャフトの回転付勢機構は、前記取付部材か或は前記支持部材のいずれか一方に設けられたところのヒンジシャフト受部に固定され前記ヒンジシャフトを回転可能に挿通させて成る一端部側に第1カム面を有する第1カム部材と、この第1カム部材の前記第1カム面に接する側に第2カム面を有し前記ヒンジシャフトに対しスライド可能であるが回転を拘束されて設けられた第2カム部材と前記第1カム部材と前記第2カム部材を互いに圧接させるべく前記ヒンジシャフトに設けられた弾性部材とで構成したことを特徴とする、請求項2に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記フリクショントルク発生機構は、前記ヒンジシャフトに軸方向へはスライド可能であるが回転を拘束されて取り付けられたフリクションワッシャーと、このフリクションワッシャーを前記ヒンジシャフトの軸方向へ押圧するところの前記ヒンジシャフトに取り付けた複数の皿バネから成る弾性部材とで構成したことを特徴とする、請求項3に記載の開閉装置。
【請求項8】
請求項1~7に記載の開閉装置によって、第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結したことを特徴とする、端末機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコン、ラップトップ型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)等の端末機器において、相対的に開閉可能に連結される第1筐体と第2筐体とを互いに連結する開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した端末機器は、一般的に、下記特許文献1や2に記載されているように、テンキーやキーボードを設けた装置本体を構成する第1筐体と、ディスプレイ装置を設けた蓋体を兼ねる第2筐体とが、互いに重ね合わせた状態から上下方向へ相対的に開閉可能となるように、開閉装置を用いて連結されている。端末機器を閉成状態でロックする機構を設けない場合、このような開閉装置の多くは、端末機器が意図せず開成することを抑制するために吸込み機構を備えている。このような開閉装置を備える端末機器を閉成操作するとき、所定の閉成角度から引き込み用カムによって第1筐体と第2筐体とが勢いよく閉じる。
【0003】
第1筐体と第2筐体とが勢いよく閉じると、例えば第1筐体と第2筐体とが衝突すること等によって衝突音が生じ、ユーザは端末機器がチープな作りであるかのような印象を受けてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-337301号公報
【特許文献2】特開2012-211606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の持つ問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、第1筐体と第2筐体とが意図せず開成することを抑制しつつ、第1筐体と第2筐体とを閉成操作するときに、ゆっくりと閉成させることのできる開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る請求項1の開閉装置は、第1筐体と第2筐体のいずれか一方に取り付けられる取付部材と、いずれか他方に取り付けた支持部材とをヒンジシャフトを介して連結し、前記ヒンジシャフトが前記取付部材或は支持部材と共に回転することによって、前記第1筐体と前記第2筐体を相対的に開閉可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジシャフトの軸方向に設けたダンパー機構と、前記ダンパー機構を構成するダンパー装置と前記ヒンジシャフトの間に設けた前記ヒンジシャフトの回転動作を当該ヒンジシャフトの軸方向の進退動作に変換する動作変換機構と、を有し、前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に閉成させる際に、所定の閉成角度から前記動作変換機構を介して前記ダンパー機構が動作して緩衝効果が得られるように成したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の開閉装置は、さらに前記ヒンジシャフトの回転付勢機構を備えていることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3の開閉装置は、前記ヒンジシャフトのフリクショントルク発生機構を備えていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項4の開閉装置は、前記ダンパー機構が、前期取付部材か或は前記支持部材のいずれか一方に取り付けられたダンパー装置と当該ダンパー装置のピストン杆に接する往復動可能な押圧部材とで構成されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項5の開閉装置は、前記動作変換機構が、前記ヒンジシャフトに形成されたスパイラル溝と、一端部を前記ヒンジシャフトのスパイラル溝とスライド可能に係合したスパイラルガイドピンと、前記取付部材か或は前記支持部材に前記ヒンジシャフトの軸方向へスライド可能に設けられ前記スパイラルガイドピンの他端部が取り付けられたスライド部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項6の開閉装置は、前記ヒンジシャフトの回転付勢機構が、前記取付部材か或は前記支持部材のいずれか一方に設けられたところのヒンジシャフト受部に固定され前記ヒンジシャフトを回転可能に挿通させて成る一端部側に第1カム面を有する第1カム部材と、この第1カム部材の前記第1カム面に接する側に第2カム面を有し前記ヒンジシャフトに対しスライド可能であるが回転を拘束されて設けられた第2カム部材と前記第1カム部材と前記第2カム部材を互いに圧接させるべく前記ヒンジシャフトに設けられた弾性部材とで構成したことを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項7の開閉装置は、前記フリクショントルク発生機構が、前記ヒンジシャフトに軸方向へはスライド可能であるが回転を拘束されて取り付けられたフリクションワッシャーと、このフリクションワッシャーを前記ヒンジシャフトの軸方向へ押圧するところの前記ヒンジシャフトに取り付けた複数の皿バネから成る弾性部材構成したことを特徴とする。
【0013】
そして、請求項8の端末機器は、前記第1筐体と前記第2筐体を請求項1~7に記載の開閉装置によって開閉可能に連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の開閉装置によれば、第1筐体と第2筐体の開閉操作に伴うヒンジシャフトの回転動作を、動作変換機構によってヒンジシャフトの軸方向のスライド動作に変換し、このスライド動作によりダンパー機構のダンパー装置のピストン杆を動作させることができるので、第1筐体と第2筐体の所定の閉成角度からダンパー装置を作動することができることから、第1筐体と第2筐体が勢いよく閉じられることを防止でき、結果、第1筐体と第2筐体の閉成時に衝撃音が発生するのを防止することができるものである。
【0015】
請求項2に記載の開閉装置によれば、回転付勢機構により、第1筐体と第2筐体をその所定の閉成角度から自動的に閉じさせることができた上で、閉じられた第1筐体と第2筐体が不用意に開いてしまうことも防止することができるものである。
【0016】
請求項3に記載の開閉装置によれば、フリクショントルク発生機構によって、開閉される第1筐体と第2筐体を任意の開閉角度で停止保持させることができるものである。
【0017】
請求項4に記載の開閉装置によれば、ダンパー機構の構成を簡単にすることができた上で、金属製のピストン杆に接する部材が合成樹脂のような材料で構成されている場合には、永年使用により合成樹脂製の材料が摩耗してしまうことを防止できるものである。
【0018】
請求項5に記載の開閉装置によれば、簡単な構成で動作変換機構を構成でき、コストダウンを図ることができるものである。
【0019】
請求項6に記載の開閉装置によれば、回転付勢機構の構成を簡単にすることができた上で、同時にフリクショントルクも創出できるという効果を奏し得るものである。
【0020】
請求項7に記載の開閉装置によれば、フリクショントルク発生機構の構成を簡単にできた上で、安定したフリクショントルクを創出できるという効果を奏し得るものである。
【0021】
請求項8に記載の開閉装置によれば、端末機器の効用をより一層高めることができるという効果を奏しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の一例としてのノート型パソコンを示し、(a)は開成状態の斜視図、(b)は閉成状態の斜視図である。
【
図2】
図1に示した端末機器を側面から見た状態を示し、(a)は、
図1(a)の右側面図、(b)は、
図1(b)の右側面図である。
【
図3】本発明に係る開閉装置の第1筐体と第2筐体へ取り付けた状態を斜め下側から見た斜視図である。
【
図4】本発明に係る開閉装置の閉成状態の右側面図である。
【
図5】本発明に係る開閉装置の開閉角度25°の時の右側面図である。
【
図6】本発明に係る開閉装置を90°開成させた状態の右側面図である。
【
図7】本発明に係る開閉装置を180°開成させた状態の右側面図である。
【
図10】本発明に係る開閉装置の取付部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその右側面図である。
【
図11】本発明に係る開閉装置の支持部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその右側面図である。
【
図12】本発明に係る開閉装置のヒンジシャフトを示し、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)は拡大左側面図である。
【
図13】本発明に係る開閉装置のスライド部材を示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【
図15】連接部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその断面図である。
【
図16】本発明に係る開閉装置の第1カム部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその左側面図である。
【
図17】本発明に係る開閉装置の第2カム部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその左側面図である。
【
図18】本発明に係る開閉装置の回転角度規制部を示し、(a)は第1筐体に対する第2筐体の閉成角度0°、(b)は開成角度180°の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を、端末機器であるノート型パソコンに実施した場合について説明するが、本発明を実施する端末機器には、ノート型パソコン以外のラップトップ型パソコン、PDA等の端末機器も含まれる。
【0024】
図1及び
図2において、指示記号1で示したものは、本発明に係る端末機器1の一例としてのノート型パソコンを示し、この端末機器1は、図示しないテンキーやキーボード等の入力手段を設けた機器本体としての第1筐体2と、図示しないディスプレイ装置を設けた蓋体としての機能を合わせ持つ第2筐体3とを有する。端末機器1は、第1筐体2と第2筐体3とが一対の開閉装置4、4Aを介して上下方向へ相対的に0°から約180°の間で開閉可能に連結されている。尚、以下の説明にあたり、
図1(a)、(b)等に直交座標系で示した前後、左右、及び上下の方向を適宜参照する。
【0025】
図1から
図18に示す実施例では、本発明に係る開閉装置4を具体的に示している。なお、端末機器1の左側に設けられた開閉装置4Aは、開閉装置4の後述する動作変換機構Bやダンパー機構Dを省略した構成なので、以下に
図1(a)における右側の開閉装置4について説明を行い、開閉装置4Aの説明は省略する。尚、この開閉装置4Aは、このものに限定されない。他の構成のものであっても良い。
【0026】
本発明に係る開閉装置4は、とくに
図3と
図8~
図9に示すように、ヒンジ部Aと、動作変換機構Bと、回転付勢機構Cと、ダンパー機構D、フリクショントルク発生機構Eと、回転角度規制部Fを備えている。開閉装置4では、動作変換機構Bがヒンジ部Aの閉成(回転)動作をヒンジ部Aの軸方向への直線(ダンパー装置20のピストン杆20aを押す)動作に変換し、ダンパー機構Dは、第2筐体3の第1筐体2に対する所定の閉成角度から回転付勢機構Cによるヒンジシャフト7の回転トルクを減衰させる。これにより、開閉装置4は、第1筐体2と第2筐体3の閉成操作時において、閉成動作の終了直前にゆっくりと閉成させることができるものである。
【0027】
また、開閉装置4は、フリクショントルク発生機構Eを備えているので、第1筐体2と第2筐体3とを任意の開成角度で安定停止させることができる。さらに、端末機器1を閉成状態でロックする機構を設けていないが、回転付勢機構Cが第2筐体3を第1筐体2に向けて回転付勢させているので、第1筐体2と第2筐体3とが意図せず開いてしまうことを防止している。
【0028】
まず、ヒンジ部Aからその構成を説明する。とくに
図3と
図8~
図9に示すように、ヒンジ部Aは、第1筐体2の後端部側に左右方向の両端部側に向かって伸び、そこに取り付けられる取付部材5と、第2筐体3側に取り付ける支持部材6と、この支持部材6を取付部材5に対して回転可能に連結するヒンジシャフト7と、このヒンジシャフト7のヒンジシャフトホルダー8及び動作変換機構Bのスライド部材9とで構成されている。
【0029】
詳しくは、取付部材5は、合成樹脂製の成型品で、とくに
図8~
図10に示すように、第1筐体2に取り付けられる本体部5aと、この本体部5aの一端側(右端側)から後方に向けて設けたところのヒンジシャフト7の軸受孔5cと係止孔5mを有するヒンジシャフト受部5bと、本体部5aの左側に位置して設けられたヒンジシャフトホルダー取付部5dと、このヒンジシャフトホルダー取付部5dから後方に向けて形成されたスライド部材配置部5eと、このスライド部材配置部5eからさらに左側に位置して設けられたダンパー載置部5fと、を有し、スライド部材配置部5eには、ガイド長孔5hが設けられている。ヒンジシャフトホルダー取付部5dには、取付ネジ穴5p、5pと取付凸部5rが設けられている。
【0030】
さらに、本体部5aには、取付部材5を第1筐体2に取り付けるための取付孔5g、5g、5gが形成されている。また、ヒンジシャフト受部5bの左側面には、とくに
図19に示したように、ストッパー凸部5iが軸支孔5cの周りに形成されており、ヒンジシャフト7の回転時に当該ヒンジシャフト7のフランジ部7aの側面略扇形状を呈したストッパー段部7bと当接することにより、ヒンジシャフト7の最大回転角度を規制する。ヒンジシャフトホルダー取付部5dには、後述するヒンジシャフトホルダー8を取り付けるための取付ネジ穴5p、5p及び取付凸部5rが形成されている。スライド部材配置部5eには、後述するスライド部材9をヒンジシャフト7の軸方向に移動可能に取り付けられるようにヒンジシャフト7の軸方向にガイド長孔5hが設けられている。ダンパー載置部5fには、後述するダンパー保持部材12を取り付ける取付孔5j、5j及びダンパー装置20の左端を嵌合させる嵌合凹部5kが形成されている。
【0031】
支持部材6は、とくに
図11に示すように、取付孔6d、6d、6dと6d、6dを有する平板状の支持板部6aと、この支持板部6aから略くの字状に折り曲げて垂設されたところのヒンジシャフト7に取り付けられる腕部6bとから成る。支持板部6aには、支持部材6が第2筐体3の所定の位置に取り付けられるように凸部6cが形成されている。腕部6bには、支持部材6をヒンジシャフト7に取り付けるための取付孔6f、6fと補強リブ6g、6gが設けられている。
【0032】
ヒンジシャフト7は、とくに
図8、
図9、
図12(a)~(c)に示すように、ストッパー段部7bを設けたフランジ部7aと、フランジ部7aの一方の側に短い円形軸部7cを残して設けた変形軸部7dと、変形軸部7dの先端部に設けた雄ネジ部7fと、フランジ部7aを挟んだ他方の側に設けたところの円形軸部7gと、この円形軸部7gに続いて設けられたところの取付孔7h、7hを有する変形軸部7iから成るブラケット取付部7iと、このブラケット取付部7iに続いて設けられた円形軸部7jと、この円形軸部7jの途中からその開放端までに渡って設けられたスパイラル溝7kと、を有するものである。
【0033】
ヒンジシャフトホルダー8は、
図3と
図8~
図9に示すように、取付部材5に固定される基部8aと、基部8aから後方に延出され、ヒンジシャフト7の左端部側の下方を回転可能に支持する支持部8bと、を有する。基部8aには、取付孔8c、8cが設けられると共に、この取付孔8c、8cの一方のものの隣に図示されていないが、取付部材5のヒンジシャフトホルダー取付部5dに設けた取付凸部5rを受け入れる凹部が設けられている。ヒンジシャフトホルダー8は、取付孔8c、8cを通した取付ネジ8e、8eを用いてヒンジシャフトホルダー取付部5dに設けた取付ネジ穴5p、5pにネジ着されている。さらに、ヒンジシャフトホルダー8の支持部8bには、ヒンジシャフト7のスパイラル溝7kを設けた円形軸部7jの半径方向の約半分を回転可能に抱える湾曲部8dが設けられている。
【0034】
したがって、ヒンジシャフト7は、とくに
図3と
図8~
図9に示したように、その一端部を第1筐体2に取り付ける取付部材5のヒンジシャフト受部5bに設けた軸受孔5cに回転可能に軸支され、他端部側を、取付部材5に取り付けたヒンジシャフトホルダー8の湾曲部8dと後述するスライド部材9の湾曲凹部9bに回転可能に保持されており、さらに、そのブラケット取付部7iに支持部材6を取り付けてあることによって、第1筐体2と第2筐体3の開閉操作に伴い、支持部材6と共に回転することによって、その開閉操作を許容するようになっている。
【0035】
次に、動作変換機構Bについて説明する。この動作変換機構Bは、ヒンジシャフト7の他側部側に設けたスパイラル溝7kと、取付部材5のスライド部材配置部5eにヒンジシャフトの軸方向に設けたガイド長孔5hに挿通させた一対のスライドガイドピン10b、10bに取り付けられてヒンジシャフト7の軸方向へスライド可能に設けたスライドガイド部材9と、一端部をこのスライド部材9に取り付けられ、他端部をヒンジシャフト7のスパイラル溝7k内に挿入係合させたスパイラルガイドピン10aと、で構成されている。その結果、第2筐体3の第1筐体2に対する開閉操作に伴い回転するヒンジシャフト7の動きに伴い、スライド部材9がその回転動作をヒンジシャフト7の軸方向への動きに変換するものである。
【0036】
次に、ヒンジシャフト7の回転付勢機構Cは、一側面に一対のカム凹部18c、18cから成る第1カム面18dを有し、取付部材5のヒンジシャフト受部5bに設けた係止孔5mにその外周に突設した係止ピン部18bを係止させ、その軸心部軸方向に設けた円形の挿通孔18aにヒンジシャフト7の変形軸部7dを回転可能に挿通させた第1カム部材18と、この第1カム部材18に設けられた第1カム面18dと対向する側に設けたカム凸部19b、19bから成る第2カム面19cを有し、ヒンジシャフト7と共に回転するようにその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔19aにヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させて設けた第2カム部材19と、変形挿通孔13aを有し、第2カム部材19に隣接して同じく軸方向に設けた変形挿通孔14aにヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させることによって回転を拘束させて取り付けられた平ワッシャー14と、この平ワッシャー14に同じく隣接してその軸方向に設けた変形挿通孔16b、16bへヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させることによって、ヒンジシャフト7と共に回転するように取り付けられた複数の皿バネ16a、16a・・から成る弾性部材16と、この弾性部材16に隣接して、その軸方向に設けた変形挿通孔15aへヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させることによって、ヒンジシャフト7と共に回転するように取り付けられた押え平ワッシャー15と、この押え平ワッシャー15に隣接してヒンジシャフト7の変形軸部7dの端部に形成させた雄ネジ部7fにねじ着された締付ナット17から成る。したがって、弾性部材16が締付ナット17を締め付けることにより、第2カム部材19を第1カム部材18側に押圧していることにより、ヒンジシャフト7の所定回転角度、即ちそれは、第2筐体3の第1筐体2に対する所定閉成角度において、第1カム部材18に設けた第1カム面18dのカム凹部18c、18cへ、第2カム部材19に設けた第2カム面19cのカム凸部18c、18cが落ち込む際にヒンジシャフト7を第2筐体3の閉成方向へ回転付勢させるものである。尚、第1カム部材18に設ける第1カム面と第2カム部材19に設ける第2カム面は、両方共にカム凸部とすることもできる。
【0037】
即ち、第1カム部材18に設けた第1カム面18dは、180°間隔に設けられた一対のカム凹部18c、18cとその間を繋ぐ一対の平坦部18e、18eから成り、第2カム部材19の第2カム面19cはカム凹部18c、18cに対向する面に180°間隔に設けられた一対のカム凸部19b、19bと、その間を繋ぐ一対の平坦部19d、19dから成り、第2カム部材19は常に弾性部材16により第1カム部材18側に押されていることから、第1筐体2に対して第2筐体3が閉じられる際の閉成直前において、第2カム部材19のカム凸部19b、19bが第1カム部材18のカム凹部18c、18cに落ち込む際に回転付勢力が発生し、第2筐体3を第1筐体2に対し自動的に回転させて閉じさせるものである。
【0038】
次に、動作変換機構Bは、ヒンジシャフト7の回転動作を当該ヒンジシャフト7の軸方向への進退動作に変換する機構である。この動作変換機構Bは、とくに
図3、
図8及び
図9に示すように、ヒンジシャフト7のスパイラル溝部7kと、取付部材5のスライド部材配置部5e上にヒンジシャフト7の軸方向へスライド可能に取り付けられたスライド部材9を有している。このスライド部材9は、ベース部9aと、このベース部9aの軸方向に設けた一端部解放の湾曲凹部9bと、他端部に設けた雄ネジ部9cと、湾曲凹部9bにその軸方向と直交する方向に設けたスパイラルガイドピン10aの取付孔9dと、スライドガイドピン10b、10bの取付孔9e、9eとを有している。動作変換機構Bはさらにスパラル溝部7k内にその一端部を嵌入させ、他端部をスライド部材9に取り付けたスパイラルガイドピン10aと、一端部側をスライド部材配置部5eに設けたガイド長孔5hに挿通させ、他端部をスライド部材9に取り付けたスライドガイドピン10b、10bとを有しており、このスライドガイドピン10b、10bの端部側には、ワッシャー10c、10cが取り付けられている。
【0039】
次に、ダンパー機構Dは、取付部材5のダンパー載置部5fの側壁部5nに設けた嵌合凹部5kにその一端部を嵌め込むと共に、ダンパー載置部5f内に設置したダンパー保持部材12にその先端部側を保持され、さらに、そこに設けた挿通孔12aにピストン杆20aを挿通させているダンパー装置20と、一端部をピストン杆20aの先端部に当接させ、他端部側に設けた雌ネジ穴11aをスライド部材9の端部に設けた雄ネジ部9cにネジ着させた連接部材11とで構成されている。ダンパー保持部材12には、とくに
図14に示したように、取付孔12b、12bが設けられ、
図9に示したように、取付ネジ12c、12cを用いてダンパー載置部5f内に取り付けられている。尚、ダンパー装置20は公知の流体ダンパーである。
【0040】
次に、フリクショントルク発生機構Eは、とくに
図3及び
図8と
図9に示したように、ヒンジシャフト7の変形軸部7dの基部側にその中心部軸方向に設けた変形挿通孔13aを挿通係合させて成る第1フリクションワッシャー13と、その中心部軸方向に設けた円形の挿通孔18aにヒンジシャフト7の変形軸部7dを回転転可能に挿通させて、その外周に設けた係止ピン部18bをヒンジシャフト受部5bに設けた係止孔5mへ係止させると共に、その一端部側に180°間隔で設けた一対のカム凹部18c、18cから成る第1カム面18dを有する第1カム部材18と、この第1カム部材18の第1カム面18dを有しない側とヒンジシャフト7のフランジ部7aとの間に、当該ヒンジシャフト7の変形軸部7dに中心部軸方向に設けた変形挿通孔13aを挿通係合させた第1フリクションワッシャー13と、第1カム部材18のカム凹部18c、18cから成る第1カム面18dを設けた側にカム凸部19b、19bから成る第2カム面19cを重ね合わせ、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔19aをヒンジシャフト7の変形軸部7dに係合挿通させて設けた第2カム部材19と、この第2カム部材19の他側面側に重ね合わされたところの中心部軸方向に設けた変形挿通孔14aにヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させてなる平ワッシャー14と、この平ワッシャー14に重ね合わされ同じくその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔16b、16b・・・にヒンジシャフト7の変形軸部7dを挿通係合させて設けた複数の皿バネ16a、16a・・から成る弾性部材16と、この弾性部材16に重ね合わされてヒンジシャフト7の変形軸部7dにその中心部軸方向に設けた変形挿通孔15aを挿通させて成る押え平ワッシャー15と、この押え平ワッシャー15に重ね合わされてヒンシャフト7の変形軸部7dに設けた雄ネジ部7fにネジ着された締付ナット17とで構成されている。実施例のものは、ヒンジシャフト7が回転すると、第1フリクションワッシャー13の両側、即ち、ヒンジシャフト受部5bと第1カム部材18の間にフリクショントルクが発生する構成である。尚、このフリクショントルク発生機構Eは、実施例のものに限定されない。それは公知のものを含めて様々な構成のものが考えられる。
【0041】
そして、第1筐体2に対する第2筐体3の開成角度を規制する回転角度規制部Fは、
図18に示したように、取付部材5のヒンジシャフト受部5bの外周に設けたストッパー凸部5iと、ヒンジシャフト7のフランジ部7aの外周に設けたストッパー段部7bとで構成されており、ヒンジシャフト7の所定の回転角度でストッパー段部7bとストッパー凸部5iが当接することにより、ヒンジシャフト7の回転角度が、実施例のものでは180度に規制される。
【0042】
次に、本願発明に係る開閉装置4の動作について説明する。以下の説明では開閉装置4のみについて説明するが、開閉装置4Aは、上述のとおり動作変換機構B及びダンパー機構Dを備えていないので、開閉装置4Aの開閉の際には以下の動作変換機構B及びダンパー機構Dの動作は行われない。
図1(a)及び
図2(a)に示すように、第1筐体2に対し第2筐体3を閉じた端末機器1の使用前の状態から、第1筐体2に対し第2筐体3を開閉させると、支持部材6に取り付けたヒンジシャフト7が、取付部材5に対して回転するので、第1筐体2に取り付けた取付部材5対し、第2筐体3に取り付けた支持部材6が回転することから、第1筐体2と第2筐体3は相対的に開閉される。第1筐体2と第2筐体3の最大開成角度は、回転角度規制部Fが動作することにより180°に規制される。
【0043】
第1筐体2と第2筐体3の開閉操作時においては、第2筐体3が第1筐体2に対し0°に閉じられる直前を除いては、フリクショントルク発生機構Eが創出するフリクショントルクにより、第2筐体3は第1筐体2に対してフリーストップに停止保持できる。しかしながら、閉成直前においては、回転付勢機構Cにより第1筐体2と第2筐体3が自動的に閉じられ、その後閉成状態を自然に開くことがないように安定的に維持する。
【0044】
しかしながら、この第1筐体2と第2筐体3が回転付勢機構Cによって自動的に閉じられる際には、動作変換機構Bが動作してダンパー機構Dによるダンパー作用がなされ、第1筐体2と第2筐体3は急激に閉じられることを阻止されるので、衝撃音を発することなく静かに閉じられることになる。即ち、第1筐体2と第2筐体3の所定の開成角度から第1筐体2に対して第2筐体3を閉じて行くと、ヒンジシャフト7のスパイラル溝7kに嵌入しているスパイラルガイドピン10aによって、スライド部材9がヒンジシャフト7の軸方向へスライドさせられ、その雄ネジ部9cで連接部材11を介してダンパー装置20のピストン杆20aを押すことからダンパーが効き始め、ヒンジシャフト7が急激に回転することなく静かに回転し、第1筐体2と第2筐体3の間で閉止時の衝撃音が発生することを防止できるものである。
【0045】
この際には、フリクショントルク発生機構Eは動作しており、ヒンジシャフト7の回転を制御することになるので、第2筐体3を開く際の操作力の軽減と、閉じる際の急激な落下を緩衝することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る開閉装置は、以上のように構成したので、端末機器の第1筐体と第2筐体を開閉可能に連結する開閉装置として用いると、第1筐体と第2筐体を閉じる際には、回転付勢機構により閉成動作が加速に向かおうとする一方で、ダンパー機構により閉成動作の加速を抑制することができ、これにより、第1筐体と第2筐体を閉じる際の衝撃音を抑制でき、かつ、第1筐体と第2筐体が閉じられた後においては、回転付勢機構により、閉成状態を安定的に維持できる開閉装置として好適に用いられ、さらにはこの開閉装置を用いた端末機器として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
A ヒンジ部
B 動作変換機構
C 回転付勢機構
D ダンパー機構
E フリクショントルク発生機構
E 回転角度規制機構
1 端末機器(ノート型パソコン)
2 第1筐体
3 第2筐体
4 開閉装置
5 取付部材
6 支持部材
7 ヒンジシャフト
8 ヒンジシャフトホルダー
9 スライド部材
10a スパイラルガイドピン
10b スライドガイドピン
11 連接部材
11a 雌ネジ穴
12 ダンパー保持部材
12a 挿通孔
12b 取付孔
12c 取付ビス
13 フリクションワッシャー
13a 変形挿通孔
14 平ワッシャー
15 押え平ワッシャー
16 弾性部材
16a 皿バネ
17 締付ナット
18 第1カム部材
19 第2カム部材
20 ダンパー装置
20a ピストン杆