(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149219
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】高靭性RC構造物
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20231005BHJP
E04H 12/12 20060101ALI20231005BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E01D19/02
E04H12/12
E04H9/02 301
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057666
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230973
【氏名又は名称】日本工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】輿石 正己
【テーマコード(参考)】
2D059
2E139
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG05
2D059GG40
2D059GG56
2E139AA01
2E139AC14
2E139AC26
2E139AC29
2E139AD01
(57)【要約】
【課題】RC構造物における塑性ヒンジ部分の軸方向鉄筋に簡単な加工を施すだけで他の部材を用いることなく、目的の靭性率に向上させること。
【解決手段】複数本の軸方向鉄筋41とこれらの軸方向鉄筋41を拘束する部材としての帯鉄筋42とからなるRC構造物40において、前記軸方向鉄筋41は、前記RC構造物40の載荷方向の一方の側に配置された引張鉄筋41aと、前記RC構造物40の載荷方向の他方の側に配置された圧縮鉄筋41bとを具備し、前記RC構造物40の塑性ヒンジ部46における前記引張鉄筋41aと圧縮鉄筋41bの一部を所定の曲率で内方に湾曲して内向き湾曲部47を形成して座屈を防止し靭性率を向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の軸方向鉄筋と、これらの軸方向鉄筋の外側から所定間隔で囲んだ軸方向鉄筋を拘束する部材とからなるRC構造物において、
前記軸方向鉄筋は、前記RC構造物の載荷方向の一方側に配置された引張鉄筋と、前記RC構造物の載荷方向の他方側に配置された圧縮鉄筋とを具備し、
前記RC構造物の塑性ヒンジ部における前記引張鉄筋と前記圧縮鉄筋の一部を所定の曲率で内向きに湾曲部を形成して座屈を防止し靭性率を向上したことを特徴とする高靭性RC構造物。
【請求項2】
前記引張鉄筋の作用する引張力Tと前記圧縮鉄筋の作用する圧縮力Cの中立軸位置N-N点でのポストピーク域において次の釣り合い構造式が成立するようにしたことを特徴とする請求項1記載の高靭性RC構造物。
T(σsy×As)=C(σsy×As)
ここで、σsy:鉄筋の降伏応力
As:鉄筋の全断面積
【請求項3】
前記内向き湾曲部における曲率は、前記RC構造物の水平変位時における前記RC構造物が目標とする靭性率に到達した時点で前記軸方向鉄筋の内向き湾曲部が直線となるように設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の高靭性RC構造物。
【請求項4】
前記RC構造物は、RC橋脚、PC橋脚等からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の高靭性RC構造物。
【請求項5】
前記RC構造物は、既存のRC構造物の外周に巻き立てる工法における補強用RC構造物の軸方向鉄筋に内向き湾曲部を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の高靭性RC構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模地震時における鉄筋コンクリート橋脚(以下、RC橋脚という)、その他のRC構造物の倒壊を防止するために靭性率を向上させ、想定以上の地震力、その他の振動に対しても倒壊しない高靭性RC構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大地震に対しては塑性設計が多用されており、その際、RC橋脚などのRC構造物の崩壊は、塑性ヒンジ部における帯鉄筋の緩み、軸方向鉄筋のはらみ出しの発生、このはらみ出しの後の座屈等により、耐力が低下し倒壊に至る。
【0003】
図6に示すように、コンクリート製橋脚の補強方法が提案されている(特許文献1)。
この
図6において、コンクリート製橋脚10の耐震補強又は劣化補強として、このコンクリート製橋脚10の四側面に縦溝を形成して補強縦筋12を配筋し、更に上記補強縦筋12の下端に傾斜曲げ部13を形成し、該傾斜曲げ部13を上記コンクリート製橋脚10の側面11とコンクリート製フーチング14の上面15とで形成する入隅角部16から同フーチング14内へ食い込み角αを以って斜めに埋設し、そして上記コンクリート製橋脚10の四側面(周面)に上記補強縦筋12を覆う補強コンクリート17や接着剤を増し打ちして補強構造を形成したものである。
【0004】
図7に示すように、軸方向の主筋18が軸圧縮力を受けたとき、外側にはらみ出すのを防止する手段が提案されている(特許文献2)。
この
図7において、軸方向の主筋18から鋼板21に連続するくの字の曲がり部の傾斜部19のはらみ出しを防止するのに、
図7(a)では、帯鉄筋20を用い、
図7(b)では、J字形の連結鋼材22を用い、
図7(c)では、C形パイプなどの抱持鋼材23を用いている。
【0005】
図8に示すように、大地震等で損傷したRC柱状構造物における塑性ヒンジ部の補修方法が提案されている(特許文献3)。
この
図8(a)(b)において、塑性ヒンジ部27は、フーチング25と接続するRC橋脚26の最下部及び上部構造物24と接続するRC橋脚26の最上部に形成される。この塑性ヒンジ部27は、RC橋脚26の軸方向(上下方向)に沿って埋設配置された複数の軸方向鉄筋28(軸方向筋)が曲げ降伏してRC橋脚26全体が変位することでRC橋脚26に入力される地震エネルギーをひずみエネルギーとして消費して吸収する機能を有している。
図8(b)において、RC橋脚26には、すくなくとも四隅に軸方向鉄筋28が配設され、それらを囲繞するように複数の帯鉄筋(図示せず)が上下方向に所定間隔をおいて配置される。
前記塑性ヒンジ部27には、複数の軸方向鉄筋28と、これらの軸方向鉄筋28を取り外して交換可能に接続する上下一対で複数対の機械式継手29と、前記RC橋脚26の中心軸に沿って埋設された管体である鋼管31を備えている。また、前記RC橋脚26の塑性ヒンジ部27と一般部32との境界には、これらを区分けする仕切材として鋼板30が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4732506号特許公報。
【特許文献2】特許第4081602号特許公報。
【特許文献3】特許第6886664号特許公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、コンクリート製橋脚10の耐震補強又は劣化補強として、コンクリート製橋脚10の四側面11とコンクリート製フーチング14の上面15に縦溝や傾斜孔を形成し、補強縦筋12を配筋し、補強コンクリートや接着剤を充填する方法である。この方法によれば、コンクリート製橋脚10の耐力が上昇するとしても靭性率は向上しない。また、補強部材を取り付けるための複雑で面倒な工事を必要とする。
【0008】
特許文献2に記載の発明は、軸方向の主筋18から傾斜部19に連続するくの字の曲がり部のはらみ出しを防止するのに、帯鉄筋20を用いたり、J字形の連結鋼材22を用いたり、C形パイプなどの抱持鋼材23を用いたりしているが、補強部材の追加と、複雑で面倒な補強工事を必要とするという課題が残されていた。
【0009】
特許文献3に記載の発明は、RC柱状構造物26の塑性ヒンジ部27を補修する方法であって、塑性ヒンジ部27の複数の軸方向鉄筋28と、これらの軸方向鉄筋28を取り外して交換可能に接続するための上下一対の複数対の機械式継手29と、RC橋脚26の中心軸に沿って埋設された管体である鋼管31を備え、さらに、RC橋脚26の塑性ヒンジ部27と一般部32との境界には、これらを区分けする仕切材として鋼板30が設置されているものであり、複雑、面倒で大掛かりな交換工事となる。
【0010】
本発明は、塑性ヒンジ部分の軸方向鉄筋に簡単な加工を施すだけで他の部材を用いることなく、目的の靭性率に向上させることを可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、
図1に示すように、
複数本の軸方向鉄筋41と、これらの軸方向鉄筋41の外側から所定間隔で囲んだ軸方向鉄筋41を拘束する部材42とからなるRC構造物40において、
前記軸方向鉄筋41は、前記RC構造物40の載荷方向の一方側に配置された引張鉄筋41aと、前記RC構造物40の載荷方向の他方側に配置された圧縮鉄筋41bとを具備し、
前記RC構造物40の塑性ヒンジ部46における前記引張鉄筋41aと前記圧縮鉄筋41bの一部を所定の曲率で内方に湾曲して内向き湾曲部47に形成して座屈を防止し靭性率を向上したことを特徴とする高靭性RC構造物である。
【0012】
請求項2記載の発明は、
前記引張鉄筋41aに作用する引張力Tと前記圧縮鉄筋41bに作用する圧縮力Cの中立軸位置N-N点でのポストピーク域において次の釣り合い構造式が成立するようにしたことを特徴とする高靭性RC構造物である。
T(σsy×As)=C(σsy×As)
ここで、σsy:鉄筋の降伏応力
As:鉄筋の全断面積
【0013】
請求項3記載の発明は、
前記内向き湾曲部47における曲率は、前記RC構造物40の水平変位時における前記RC構造物40が目標とする靭性率に到達した時点で前記軸方向鉄筋41の内向き湾曲部47が直線となるように設定したことを特徴とする高靭性RC構造物である。
【0014】
請求項4記載の発明は、
前記RC構造物40は、RC橋脚、PC橋脚等からなることを特徴とする高靭性RC構造物である。
【0015】
請求項5記載の発明は、
前記RC構造物40は、既存のRC構造物40の外周に巻き立てる工法における補強用RC構造物の軸方向鉄筋に内向き湾曲部を形成したことを特徴とする高靭性RC構造物である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、
複数本の軸方向鉄筋と、これらの軸方向鉄筋の外側から所定間隔で囲んだ軸方向鉄筋を拘束する部材とからなるRC構造物において、
前記軸方向鉄筋は、前記RC構造物の載荷方向の一方側に配置された引張鉄筋と、前記RC構造物の載荷方向の他方側に配置された圧縮鉄筋とを具備し、
前記RC構造物の塑性ヒンジ部における前記引張鉄筋と前記圧縮鉄筋の一部を所定の曲率で内方に湾曲して内向き湾曲部に形成して座屈を防止し靭性率を向上したので、軸方向鉄筋の一部に加工を施すだけで靭性率を従来不可能とされていた約4倍(靭性率40)程度、又はそれ以上に向上させることができる。しかも、従来のような面倒な補強工事や補強部材を用いることがなく、安価に目的を達成できる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、
前記引張鉄筋に作用する引張力Tと前記圧縮鉄筋に作用する圧縮力Cの中立軸位置N-N点でのポストピーク域において次の釣り合い構造式
T(σsy×As)=C(σsy×As)
ここで、σsy:鉄筋の降伏応力
As:鉄筋の全断面積
が成立するようにしたので、靭性低下を防止することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、
前記内向き湾曲部における曲率は、前記RC構造物の水平変位時における前記RC構造物が目標とする靭性率に到達した時点で前記軸方向鉄筋の内向き湾曲部が直線となるように設定したので、従来は不可能であった靭性率の設計時における確保、たとえば、目的の靭性率30、40などを予め容易に実現することができる。また、地震動のような交番の振動に対して靭性率を向上させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、
前記RC構造物は、RC橋脚、PC橋脚等からなるので、RC橋脚、PC橋脚などに広く応用することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、
前記RC構造物は、既存のRC構造物の外周に巻き立てる工法における補強用RC構造物の軸方向鉄筋に内向き湾曲部を形成したので、新設のRC構造物のみならず、既存のRC構造物の補強用RC構造物に本発明を応用して既存のRC構造物をより簡単、かつ確実に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による高靭性RC構造物40の一実施例を示す正面から見た断面図である。
【
図2】本発明によるRC構造物40が目標とする靭性率を得るための内向き湾曲部47を設定するための説明図である。
【
図3】
図1の塑性ヒンジ部46におけるA-A線断面図である。
【
図4】RC構造物40の作用を説明する図で、ポストピーク域の力の釣り合いを示す図である。
【
図5】(a)は、RC構造物40が角柱状のときの軸方向鉄筋41の内向き湾曲部47の説明図、(b)は、RC構造物40が円柱状のときの軸方向鉄筋41の内向き湾曲部47の説明図である。
【
図7】(a)(b)(c)は、従来の文献2の説明図である。
【
図8】(a)(b)は、従来の文献3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、
複数本の軸方向鉄筋41と、これらの軸方向鉄筋41の外側から所定間隔で囲んだ軸方向鉄筋を拘束する部材42とからなるRC構造物40において、
前記軸方向鉄筋41は、前記RC構造物40の載荷方向の一方側に配置された引張鉄筋41aと、前記RC構造物40の載荷方向の他方側に配置された圧縮鉄筋41bとを具備し、
前記RC構造物40の塑性ヒンジ部46における前記引張鉄筋41aと前記圧縮鉄筋41bの一部を所定の曲率で内方に湾曲して内向き湾曲部47に形成して座屈を防止し靭性率を向上したことを特徴とする。
【0023】
前記引張鉄筋41aに作用する引張力Tと前記圧縮鉄筋41bに作用する圧縮力Cの中立軸位置N-N点でのポストピーク域において次の釣り合い構造式
T(σsy×As)=C(σsy×As)
ここで、σsy:鉄筋の降伏応力
As:鉄筋の全断面積
が成立するようにした。
【0024】
前記内向き湾曲部47における曲率は、前記RC構造物40の水平変位時における前記RC構造物40が目標とする靭性率に到達した時点で前記軸方向鉄筋41の内向き湾曲部47が直線となるように設定する。
【0025】
前記RC構造物40は、RC橋脚、PC橋脚等からなる。
【0026】
前記RC構造物40は、既存のRC構造物40の外周に巻き立てる工法における補強用RC構造物の軸方向鉄筋に内向き湾曲部を形成する。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
図1、
図2及び
図3において、RC構造物40は、RC柱状構造物で、一例として以下、RC橋脚の場合について説明する。
このRC橋脚40は、複数本の軸方向鉄筋41を主筋とし、この軸方向鉄筋41の外周に所定間隔で前記軸方向鉄筋を拘束する部材としての帯鉄筋42を巻き付け、これらの鉄筋にコンクリート43を打設して構成されている。前記RC橋脚40の下部の基礎部分のフーチング44は、前記軸方向鉄筋41の下部にハの字形に延長した基礎鉄筋48にこの基礎鉄筋を拘束する部材としての帯鉄筋42が巻き付けられ、これらの鉄筋にコンクリート43を打設して構成されている。
前記軸方向鉄筋を拘束する部材は、前記帯鉄筋42に限られるものではなく、
図7(b)(c)に示すようなJ字形の連結鋼材やC形パイプなどの抱持鋼材、その他の部材とすることができる。
【0028】
このように構成された
図1の前記RC橋脚40において、このRC橋脚40の上方部に地震動等により水平力を受ける個所を載荷点45とすると、前記RC橋脚40の下部の前記フーチング44との結合部分付近は、地震エネルギーを吸収する塑性ヒンジ部46となる。
前記軸方向鉄筋41には、前記塑性ヒンジ部46において本発明による内向き湾曲部47を形成する。この内向き湾曲部47は、
図1に示すように、両側の前記塑性ヒンジ部46の軸方向鉄筋41にそれぞれ形成される。
【0029】
前記内向き湾曲部47は、次のようにして形成される。
図2において、前記軸方向鉄筋41に水平力がかかっていない状態を41o(鉛直)とし、このときの内向き湾曲部を47yとする。前記軸方向鉄筋41が水平力の大きさに応じて41xから41yと変化したものとする。41yに達したとき内向き湾曲部47yが略直線となり、目標とする靭性率(以下、設計靭性率という)、例えば従来の4倍(靭性率40)に到達するように、内向き湾曲部47yの曲率が設定される。
より詳しくは、鉛直線状の前記軸方向鉄筋41oと前記内向き湾曲部47yの一端部との接続点をBとし、前記内向き湾曲部47yの他端部と直線状の前記基礎鉄筋48yとの接続点をDとし、鉛直線状の前記軸方向鉄筋41oの延長線と直線状の前記基礎鉄筋48yの延長線との交点をOとしたとき、3角形BODに内接する曲率の円弧が目標とする靭性率(設計靭性率)の前記内向き湾曲部47yとなる。
このとき、内向き湾曲部47yは、点B、Dにおいて接線となるので、直線状の前記軸方向鉄筋41と前記内向き湾曲部47yの交点B及び前記内向き湾曲部47yと前記基礎鉄筋48yの交点Dは、円滑に連続している。
以上のようにして前記内向き湾曲部47yを設定することにより、軸方向鉄筋41yと内向き湾曲部47yと内向き湾曲部47yが
図2のように略一直線になった時点で、目標とする靭性率(設計靭性率)となる。前記内向き湾曲部47yが設定された状態で、軸方向鉄筋41が41yを超えてより大きな水平力がかかり、内向き湾曲部47が外側への曲率になると靭性率は急速に低下する。
【0030】
図2において、目標とする靭性率(以下、設計靭性率という)が前記例より小さい41xに達したときとき、例えば従来の2倍(靭性率20)に到達したものとすると、この靭性率20での内向き湾曲部47xの曲率が設定される。
より詳しくは、鉛直線状の前記軸方向鉄筋41oと前記内向き湾曲部47xの一端部との接続点をBとし、前記内向き湾曲部47xの他端部と直線状の前記基礎鉄筋48xとの接続点をCとし、直線状の前記軸方向鉄筋41の延長線と直線状の前記基礎鉄筋48xの延長線との交点をOとしたとき、3角形BOCに内接する曲率の円弧が目標とする靭性率(設計靭性率)の前記内向き湾曲部47xとなる。
このとき、内向き湾曲部47xは、点B、Cにおいて接線となるので、前記軸方向鉄筋41と前記内向き湾曲部47xの交点B及び前記内向き湾曲部47xと前記基礎鉄筋48xの交点Cは、段差なく円滑に連続している。
以上のようにして前記内向き湾曲部47xを設定することにより、軸方向鉄筋41xと内向き湾曲部47xと内向き湾曲部47xが
図2のように一直線になった時点で、目標とする靭性率(設計靭性率)となる。前記内向き湾曲部47xが設定された状態で、軸方向鉄筋41が41xを超えてより大きな水平力がかかり、内向き湾曲部47が外側への曲率になると靭性率は急速に低下する。
なお、
図2は、図面の記載の都合上、前記軸方向鉄筋41に水平力がかかっていない状態41oから水平力の大きさに応じて41x、41yと変化する角度を大きくあらわしているが、実際は、図示状態の数分の1から数10分の1である。
【0031】
図3における前記軸方向鉄筋41の一方側41aと他方側41bの両側に前記内向き湾曲部47を形成することで、
図4に示すポストピーク域における釣り合い構造式を成立させ、はらみ出しを防止する。
より詳しくは、
図3において、地震動の載荷点が図中左から右方向に水平力が加えられたものとすると、軸方向鉄筋41の図中左側の軸方向鉄筋41aは、引張鉄筋となり、図中右側の軸方向鉄筋41bは、圧縮鉄筋となる。
図4において、
引張鉄筋41aに作用する引張力T=σsy×Asとなり、
圧縮鉄筋41bに作用する圧縮力C=σsy×Asとなる。
ここで、σsy:鉄筋の降伏応力
As:鉄筋の全断面積である。
中立軸位置N-N点でのポストピーク域における釣り合い構造式は、
T(σsy×As)=C(σsy×As)となる。
【0032】
図3の場合とは逆に、地震動の載荷点45が図中右から左方向に水平力が加えられたものとすると、軸方向鉄筋41の一方側41bは、引張鉄筋となり、他方側41aは、圧縮鉄筋となる。
地震時には、交番の地震動が加えられるため、引張側と圧縮側は、交互に発生する。
【0033】
図3に示すように、水平力の作用するRC構造物40の側面が一定している場合には、水平力の方向に直交する方向の軸方向鉄筋41の引張側41aと圧縮側41bにのみ内向き湾曲部47を形成するようにする。
しかし、方向が一定していない地震動のように全方向の水平力に対応させるためには、RC橋脚40が
図5(a)に示すように、角柱状である場合には、すべての軸方向鉄筋41の内向き湾曲部47を、RC橋脚40のすべての軸方向鉄筋41の中心に向かって湾曲するように形成する。
また、RC構造物40が
図5(b)に示すように、円柱状である場合には、すべての軸方向鉄筋41に内向き湾曲部47を、RC構造物40のすべての軸方向鉄筋41の中心に向かって湾曲するように形成する。
【0034】
前記実施例では、本発明を新設のRC構造物40の製造に利用した場合について説明したが、これ以外にも下記の工法にも適用できる。
(1)既存のRC橋脚、その他のRC構造物の外周に、RCコンクリートを巻き立てて補強する際に、その補強用RCコンクリートの軸方向鉄筋41に本発明の内向き湾曲部47を形成して靭性率を向上させることができる。
(2)跨線橋、跨道橋、道路や鉄道の橋梁などのRC橋脚補強用としてRCコンクリートを打設するときに、軸方向鉄筋41の塑性ヒンジ部に本発明の内向き湾曲部47を形成して靭性率を向上させることができる。
(3)RCでPC(プレストレス)の中空煙突、RCでPC(プレストレス)のタワー、RCでPC(プレストレス)の電柱などの新設構造物や補強用構造物の軸方向鉄筋41に本発明の内向き湾曲部47を形成して靭性率を向上させることができる。
(4)円柱や円筒のRC構造物以外の角型のボックスカルバート角隅部分の軸方向鉄筋の靭性率向上用として本発明の内向き湾曲部を形成して靭性率を向上させることができる。
10…橋脚、11…側面、12…補強縦筋、13…傾斜曲げ部、14…フーチング、15…上面、16…入隅角部、17…補強コンクリート、18…主筋、19…傾斜部、20…帯鉄筋、21…鋼板、22…連結鋼材、23…抱持鋼材、24…上部構造物、25…フーチング、26…RC橋脚、27…塑性ヒンジ部、28…軸方向鉄筋、29…機械的継手、30…仕切り材、31…鋼管、32…一般部、40…RC構造物、41…軸方向鉄筋、42…帯鉄筋、43…コンクリート、44…フーチング、45…載荷点、46…塑性ヒンジ部、47…内向き湾曲部、48…基礎鉄筋。