(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149221
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】圃場水管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20231005BHJP
A01G 25/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
A01G25/00 501F
A01G25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057669
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 正
(72)【発明者】
【氏名】竹村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
(57)【要約】
【課題】圃場における用水の水位の調整を自動化した圃場水管理システムを提供する。
【解決手段】圃場水管理システム1は、圃場の水位を検出し、検出結果を送る第1水位センサ70と、用水を導く開口が形成された流入管と、検出結果に基づいて、流入管の開口を開閉し、用水を圃場に供給する自動給水栓と、圃場内の余剰の用水を排出する水位調整部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の水位を検出し、検出結果を送る第1水位センサと、
用水を導く開口が形成された流入管と、
前記検出結果に基づいて、前記流入管の前記開口を開閉し、前記用水を前記圃場に供給する自動給水栓と、
前記圃場内の余剰の前記用水を排出する水位調整部と、
を備える、圃場水管理システム。
【請求項2】
前記用水を、前記圃場に埋設された暗渠パイプに供給する地下水供給部を備える、請求項1に記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記地下水供給部内の水位を検出する第2水位センサを備える、請求項2に記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記用水を、前記圃場上に供給する地上水供給部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
前記流入管の前記開口、及び前記水位調整部の少なくとも一部が内部に設けられた枡本体を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の圃場水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田(圃場)における用水の管理に、圃場水管理システムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の圃場水管理システムは、流入管と、用水弁と、水位調整部と、を備えている。
流入管内に、用水が流れ込む。用水弁は、流入管の上端面よりも上方に配置される。用水弁には、用水弁用操作ロッドが取付けられている。作業者が用水弁用操作ロッドを操作して用水弁を上下にスライドさせることにより、流入管の上端面が開閉する。
流入管から流れ込んだ用水は、水田に供給される。水位調整部は、水田の用水の水位が所定値になるように、用水を供給したり排出したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者による、水田における用水の水位の調整には、多大な労力を要する。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、圃場における用水の水位の調整を自動化した圃場水管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の圃場水管理システムは、圃場の水位を検出し、検出結果を送る第1水位センサと、用水を導く開口が形成された流入管と、前記検出結果に基づいて、前記流入管の前記開口を開閉し、前記用水を前記圃場に供給する自動給水栓と、前記圃場内の余剰の前記用水を排出する水位調整部と、を備えることを特徴としている。
ここで言う圃場には、水田及び畑を含む。
この発明では、第1水位センサによる圃場の水位の検出結果に基づいて、自動給水栓が流入管の開口を開閉し、用水を圃場に供給する。さらに、水位調整部は、圃場内の余剰の用水を排出する。従って、圃場における用水の水位の調整を自動化することができる。
【0006】
また、前記圃場水管理システムにおいて、前記用水を、前記圃場に埋設された暗渠パイプに供給する地下水供給部を備えてもよい。
この発明では、地下水供給部により、暗渠パイプを介して用水を圃場に供給することができる。
【0007】
また、前記圃場水管理システムにおいて、前記地下水供給部内の水位を検出する第2水位センサを備えてもよい。
この発明では、第2水位センサが検出した地下水供給部内の水位に基づいて、例えば、自動給水栓が流入管の開口を開閉し、用水を圃場に供給することができる。
【0008】
また、前記圃場水管理システムにおいて、前記用水を、前記圃場上に供給する地上水供給部を備えてもよい。
この発明では、地上水供給部により、用水を圃場上に供給することができる。
【0009】
また、前記圃場水管理システムにおいて、前記流入管の前記開口、及び前記水位調整部の少なくとも一部が内部に設けられた枡本体を備えてもよい。
この発明では、用水を枡本体内に導いた後で用水を圃場に供給するとともに、枡本体により流入管及び水位調整部を一体化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圃場水管理システムでは、圃場における用水の水位の調整を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態の圃場水管理システムが用いられる水田の一部を透過した斜視図である。
【
図2】同圃場水管理システムにおける枡ユニットの断面図である。
【
図3】同枡ユニットにおける栓制御ユニットのブロック図である。
【
図4】同圃場水管理システムの第2水位センサの側面図である。
【
図5】同第2水位センサを側面視した断面図である。
【
図7】同枡ユニットに接続される配管を説明する平面図である。
【
図8】用水が供給されたときの枡ユニットの状態を説明する断面図である。
【
図9】水田内の余剰の用水を排出する方法を説明する斜視図である。
【
図10】圃場が畑として用いられる場合の一例を説明する断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の圃場水管理システムが用いられる水田の断面図である。
【
図12】同圃場水管理システムにおける枡ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る圃場水管理システムの第1実施形態を、
図1から
図10を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の圃場水管理システム1は、圃場である水田200に施工されて用いられる。圃場水管理システム1は、水田200における用水の管理に用いられる。なお、
図1では、後述する枡ユニット10に接続される地下灌漑接続管98、接続管102,103等の構成を簡略化して示している。
水田200の周囲は、複数の農道201により囲われている。なお、
図1では、複数の農道201のうちの一部のみを示す。例えば、水田200は、農道201に沿う第1方向Xにおいて、複数の耕作区202に分割されている。各耕作区202は、水平面に沿うとともに第1方向Xに直交する第2方向Yに沿って延びている。
【0013】
圃場水管理システム1は、枡ユニット10と、第1水位センサ70と、暗渠パイプユニット95と、を備える。
枡ユニット10は、水田200と農道201との境界に配置されている。
図2に示すように、枡ユニット10は、枡本体11と、流入管12と、自動給水栓13と、地下水供給部14と、地上水供給部15と、水位調整部16と、第2水位センサ17と、を有する。
枡本体11は、本体部20と、仕切り21と、蓋部22と、を有する。
例えば、本体部20は、上方が開口する中空の直方体状である。本体部20は、平面視における本体部20の長辺が第1方向Xに沿うように配置されている。
【0014】
本体部20の側面には、貫通孔20a,20b,20c,20dが形成されている。貫通孔20aは、本体部20における第1方向Xの第1側X1(以下では、単に第1側X1と言う)に配置された側面における下部に形成されている。貫通孔20bは、本体部20における第1方向Xにおける第1側X1とは反対の第2側X2(以下では、単に第2側X2と言う)に配置された側面における下部に形成されている。
貫通孔20c,20dは、本体部20における第2方向Yの第1側(農道201に対する水田200側)Y1(
図1参照。以下では、単に第1側Y1と言う)に配置された側面に形成されている。貫通孔20cは、この側面における下部に形成されている。
貫通孔20dは、この側面における貫通孔20cよりも上方に形成されている。本体部20の貫通孔20dは、水田200の田面(水田200における後述する作土層206の上面)206aよりも上方に位置している。
【0015】
仕切り21は、板状に形成され、本体部20内を第1方向Xに仕切る。仕切り21には、第1方向Xに貫通する貫通孔21aが形成されている。
例えば、蓋部22は、メッシュ状である。蓋部22は、本体部20の開口を塞ぐ。使用者は、蓋部22を通して本体部20内を視認できる。
【0016】
流入管12は、第1直管25と、エルボ管26と、第2直管27と、吐出管28と、を有する。
第1直管25は、水平面に沿って延びている。第1直管25は、側面の貫通孔20aを通り、この側面に固定されている。この側面と第1直管25とは、水密に保持されている。
エルボ管26は、第1直管25における本体部20内に配置された端部に接続されている。第2直管27は、エルボ管26から上方に向かって延びている。
吐出管28は、第2直管27の上端部に固定されている。吐出管28の内径は、第2直管27の内径よりも小さい。吐出管28の上端に形成された開口28aは、枡本体11内に用水を導く。
【0017】
自動給水栓13は、流入管12の第2直管27の上端部に固定されている。
図2及び
図3に示すように、自動給水栓13は、栓ユニット31と、栓制御ユニット32と、カップ33と、を有する。
図2に示すように、栓ユニット31は、止水栓ボール36と、軸部37と、を有する。
止水栓ボール36は、第2直管27における吐出管28よりも下方の部分内に配置されている。止水栓ボール36の外径は、吐出管28の内径よりも大きい。
軸部37は、棒状に形成され、上下方向に延びている。軸部37は、吐出管28内を通っている。軸部37の下端部は、止水栓ボール36に固定されている。
図2では、止水栓ボール36は、吐出管28よりも下方から吐出管28に接触し、流入管12内を用水が流れるのを防止している。このとき、流入管12は、用水が内部を流れない閉状態となる。
【0018】
図3に示すように、栓制御ユニット32は、ケース40と、栓駆動部41と、センサ対応通信部42と、電源部43と、栓制御部44と、記憶部45と、操作パネル46と、を有する。
ケース40は、図示はしないが、ケース本体と、扉と、を有する。ケース本体は、中空の直方体状である。ケース本体には、開口が形成されている。扉は、ケース本体の開口を塞いでこの開口を閉じた状態にしたり、ケース本体の開口から離間してこの開口を開いた状態にしたりすることができる。
ケース40は、枡本体11内において、流入管12の第2直管27よりも上方に配置されている(
図2参照)。
【0019】
栓駆動部41は、栓ユニット31の軸部37を上下方向に移動させる。例えば、栓駆動部41は、モータ41aと、機構部(不図示)と、を有する。例えば、機構部には、公知のラック・アンド・ピニオン機構が用いられる。
閉状態である流入管12に対して、栓駆動部41により吐出管28に対して止水栓ボール36を下方に移動させる。このとき、止水栓ボール36は吐出管28から下方に離間し、流入管12内を用水が流れることができる。このとき、流入管12は、用水が内部を流れる開状態となる。
【0020】
本実施形態では、センサ対応通信部42は、有線通信により、第1水位センサ70及び第2水位センサ17との間で情報の送受信を行う。なお、センサ対応通信部42は、無線通信により、第1水位センサ70及び第2水位センサ17との間で情報の送受信を行ってもよい。
電源部43は、栓駆動部41のモータ41a、センサ対応通信部42、栓制御部44、記憶部45、及び操作パネル46にそれぞれ電力を供給する。
【0021】
栓制御部44は、栓駆動部41のモータ41a、センサ対応通信部42、記憶部45、及び操作パネル46に接続されている。栓制御部44は、栓駆動部41のモータ41a、及びセンサ対応通信部42を制御する。
記憶部45は、栓制御部44が利用する各種の情報を記憶する。
操作パネル46では、圃場水管理システム1に関する各種設定や、流入管12を閉状態又は開状態に切替える操作が行われる。操作パネル46は、ケース40内に配置されている。例えば、ケース40の扉を操作してケース本体の開口を開いた後で、操作パネル46が操作される。
栓制御部44は、第2水位センサ17の後述する検出結果、及び第1水位センサ70の後述する検出結果に基づいて、流入管12の開口28aを開閉する(流入管12を開状態にしたり閉状態にしたりする)。そして、栓制御部44は、用水を水田200に供給する。
【0022】
図2に示すように、カップ33は、円板状である。カップ33の内径は、下方に向かうに従い漸次、大きくなる。カップ33は、栓制御ユニット32のケース40の下面に固定されている。カップ33は、流入管12の第2直管27よりも上方に離間している。
【0023】
地下水供給部14は、用水を、水田200に埋設された後述する暗渠パイプユニット95(暗渠パイプ96)に供給する。地下水供給部14は、第1直管49と、エルボ管50と、第2直管51と、を有する。
第1直管49は、水平面に沿って延びている。第1直管49は、側面の貫通孔20cを通り、この側面に固定されている。この側面と第1直管49とは、水密に保持されている。
エルボ管50は、第1直管49における本体部20内に配置された端部に接続されている。第2直管51は、エルボ管50から上方に向かって延びている。なお、第2直管51は、エルボ管50に着脱可能であってもよい。
【0024】
本体部20の貫通孔20dには、堰板54が取付けられている。例えば、堰板54は、貫通孔20dに対して上下方向に移動可能である。本体部20の貫通孔20d及び堰板54で、地上水供給部15を構成する。枡本体11の貫通孔20dが堰板54で塞がれていない開状態のときに、地上水供給部15は、枡本体11の貫通孔20dを通して、枡本体11内の用水を、水田200上に供給する。一方で、枡本体11の貫通孔20dが堰板54で塞がれている閉状態のときに、地上水供給部15は、用水を、水田200上に供給しない。
水位調整部16は、水田200内の余剰の用水を排出する。水位調整部16は、第1直管57と、連結継手58と、第2直管59と、水位調整管60と、を有する。
第1直管57は、水平面に沿って延びている。第1直管57は、側面の貫通孔20bを通り、この側面に固定されている。この側面と第1直管57とは、水密に保持されている。
【0025】
連結継手58は、T字状に形成され、3つの接続管58a,58b,58cを有する。接続管58a,58bは、水平面に沿って延びている。接続管58cは、上方に向かって延びている。
接続管58aは、第1直管57における本体部20内に配置された端部に接続されている。第2直管59は、連結継手58の接続管58cから上方に向かって延びている。
水位調整管60は、上下方向に沿って延びるとともに、第2直管59内に配置されている。水位調整管60は、第2直管59に対して上下方向に移動できる。すなわち、水位調整部16では、水位調整管60の上端の位置を、作業者が手動で調整できる。なお、水位調整部が、水位調整管60を上下方向に移動させる駆動モータ、及び駆動モータを制御する高さ制御部等を備えることにより、水位調整管60の上端の位置を自動的に調整可能であってもよい。
【0026】
前記地下水供給部14の第2直管51を、水位調整部16の第2直管59及び水位調整管60のように構成し、作業者が地下水供給部14の第2直管51の上端の位置を手動で調整できるように構成してもよい。
連結継手58の接続管58bは、開閉弁63により塞がれている。開閉弁63には、上下方向に沿って延びる操作ロッド64の下端部が固定されている。作業者が操作ロッド64を上下方向に移動させると、開閉弁63により接続管58bを閉じたり、開いたりすることができる。
【0027】
例えば、第2水位センサ17には、公知のフロート式のセンサが用いられる。この例では、第2水位センサ17は、地下水供給部14の第2直管51内に配置されている。第2水位センサ17は、地下水供給部14内の水位(水田200の地下水位)を検出する。第2水位センサ17と自動給水栓13の栓制御部44とは、図示しない配線で接続されている。水位センサ17は、水位の検出結果を、この配線を介して栓制御部44に送る。
なお、第2水位センサ17を配置する位置は、水田200の地下水位を検出できる位置であれば限定されず、第2水位センサ17は枡本体11の外部に配置されてもよい。
以上説明したように、枡本体11内の内部には、流入管12の開口28a、自動給水栓13、地下水供給部14、及び水位調整部16の一部が設けられている。なお、枡本体11内の内部に、水位調整部16の全体が設けられていてもよい。
【0028】
圃場水管理システム1では、流入管12、自動給水栓13、地下水供給部14、地上水供給部15、及び水位調整部16を有する枡ユニット10は、
図1に示すように、用水の管理の対象となる水田200に対する第2方向Yにおける第1側Y1とは反対側の第2側Y2(以下では、単に第2側Y2と言う)の端部に配置されている。
【0029】
第1水位センサ70の構成は、水田200の水位を検出し、検出結果を送ることが可能なセンサであれば、限定されない。
図4及び
図5に示すように、第1水位センサ70は、センサガイド71と、水位センサ72と、センサマウント73と、収容カバー74と、を有する。
図5に示すように、センサガイド71は、棒状である。センサガイド71には、目盛り71aが形成されている。センサガイド71は、上下方向に沿って延び、センサガイド71の下端部は、水田200の田面206aに差し込まれている。
例えば、水位センサ72には、公知のフロート式のセンサが用いられる。水位センサ72の外面には、基準位置72aが示されている。水位センサ72内には、図示しないスイッチ回路が内蔵されている。例えば、液面の位置が基準位置72aよりも下方にあるときには、スイッチ回路はOFF状態になり、液面の位置が基準位置72aよりも上方にあるときには、スイッチ回路はON状態になる。
水位センサ72には、リード線72bの第1端部が接続されている。
【0030】
センサマウント73は、マウント本体77と、係合部78と、止めネジ79と、を有する。
マウント本体77は、角筒状に形成されている。マウント本体77には、図示しない雌ネジ部が形成されている。マウント本体77内には、センサガイド71が配置されている。
係合部78は、側面視でL字状を呈し、マウント本体77に固定されている。係合部78には、水位センサ72がネジ等により着脱可能に固定されている。
止めネジ79は、マウント本体77の雌ネジ部に嵌め合う。止めネジ79がセンサガイド71をマウント本体77に押し付けることにより、センサガイド71にマウント本体77が固定される。
【0031】
図4及び
図5に示すように、収容カバー74は、収容パイプ82と、蓋83と、を有する。
収容パイプ82は、円筒状に形成されている。収容パイプ82の軸線C方向の第1端部は、外径が小さい差込み部82aである。収容パイプ82における軸線C方向の第1端部とは反対の第2端部82bには、切欠き82cが形成されている。
収容パイプ82の側面には、収容パイプ82の内外を連通する連通孔82dが複数形成されている。
収容パイプ82は、上下方向に沿って延び、センサガイド71、水位センサ72、及びセンサマウント73を覆っている。収容パイプ82の下端部は、水田200の田面206aに差し込まれている。
【0032】
蓋83は、蓋本体85と、周壁部86と、を有する。
蓋本体85は、円板状である。蓋本体85は、収容パイプ82の上端に、収容パイプ82の上方から接している。周壁部86は、蓋本体85の外周縁から下方に向かって突出する。周壁部86は、収容パイプ82の上端部を径方向外側から覆う。
切欠き82cには、リード線89が通されている。リード線89は、符号を省略したコネクタを介して、リード線72bにおける第1端部とは反対の第2端部に接続されている。リード線89は、自動給水栓13の栓制御部44に接続されている。
第1水位センサ70の水位センサ72は、水田200の水位を検出し、検出結果を栓制御部44に送る。
【0033】
ここで、水田200の構造について、
図6を用いて説明する。例えば、水田200は、作土層(作土層土壌)206と、下層土207と、基層208と、を備える。
作土層206、下層土207、及び基層208は、上方から下方に向かって、この順で配置されている。
作土層206は、作土により形成された、表層が埋没した層である。作土層206の上面が、田面206aである。下層土207は、作土層206からの溶脱物質の集積層である。作土層206及び下層土207で、土壌を構成する。基層208は、下層土207を下方から支持する層で、土壌構造がほとんど見られない層である。
この例では、作土層206よりも上方に、表面水W1がある。
水田200における作土層206及び下層土207には、稲215が植えられている。
【0034】
図1及び
図6に示すように、暗渠パイプユニット95は、複数の暗渠パイプ96と、暗渠集合パイプ97と、を有する。
図1に示すように、例えば、複数の暗渠パイプ96には、暗渠パイプ96の内外にそれぞれ達する複数の透孔96aが形成されている。複数の暗渠パイプ96は、第2方向Yに沿ってそれぞれ延びている。例えば、複数の暗渠パイプ96は、水田200における下層土207に埋設されている。複数の暗渠パイプ96は、水勾配を有さず、水平面に沿って配置される。
暗渠集合パイプ97には、暗渠集合パイプ97の内外にそれぞれ達する複数の透孔97aが形成されていることが好ましい。暗渠集合パイプ97は、第1方向Xに沿って延びている。暗渠集合パイプ97は、複数の暗渠パイプ96における第2側Y2の端部に接続されている。
図7に示すように、暗渠集合パイプ97は、地下灌漑接続管98を介して、枡ユニット10における地下水供給部14の第1直管49に接続されている。
【0035】
図1及び
図7に示すように、水田200に対する第2側Y2の農道201には、用水管100及び排水管101が埋設されている。用水管100は、用水を供給するための管である。排水管101は、水田200における余剰の用水を排水として排出するための管である。
用水管100及び排水管101は、第1方向Xに沿ってそれぞれ延びている。
用水管100は、用水接続管102を介して、枡ユニット10における流入管12の第1直管25に接続されている。排水管101は、排水接続管103を介して、枡ユニット10における水位調整部16の第1直管57に接続されている。
地下灌漑接続管98と排水接続管103とは、水閘(水門)105aが設けられた接続管105により接続されている。
【0036】
次に、以上のように構成された圃場水管理システム1の動作について説明する。第1水位センサ70及び第2水位センサ17は、定期的に検出結果を栓制御部44に送る。予め、流入管12は開状態であり、地上水供給部15は開状態であると仮定する。
図2に示すように、水田200に表面水W1は無い(水田200の地下水の水位は、田面206aよりも下方に位置している。)と仮定する。水閘105aは、閉状態である。
まず、水田200に用水を供給する場合について説明する。
【0037】
用水は、用水管100、用水接続管102を通り、さらに流入管12の開口28aを通して、
図8に示すように枡本体11内に流れ込む。枡本体11内に流れ込んだ用水W3は、枡本体11内での用水W3の水位に応じて、例えば、地上水供給部15における枡本体11の貫通孔20dを通して、枡本体11外部に流れ出る。流れ出た用水W3は、水田200上に供給され、表面水W1となる。
【0038】
また、枡本体11内において、地下水供給部14の第2直管51内に流れ込んだ用水W3は、地下灌漑接続管98、暗渠パイプユニット95の暗渠集合パイプ97、複数の暗渠パイプ96内を、
図1中における矢印A1のように流れる。この際に、用水W3は、暗渠集合パイプ97の複数の透孔97a及び暗渠パイプ96の複数の透孔96aを通して、水田200の下層土207に供給される。これにより、水田200の作土層206上に表面水W1が生じる。
例えば、自動給水栓13の栓制御部44は、第1水位センサ70の検出結果に基づいて、水田200における表面水W1の水位が、所望の高さになったことを検出する。栓制御部44が流入管12を閉状態にすると、地上水供給部15及び地下水供給部14による水田200への用水W3の供給が止まる。
このとき、使用者は、地上水供給部15を閉状態にしてもよい。
以上のようにして、水田200に用水W3が供給される。
【0039】
次に、水田200に雨が降る等して表面水W1の水位が高くなり、水田200内の余剰の用水を排出する場合について説明する。予め、流入管12は閉状態であり、地上水供給部15は閉状態であると仮定する。
図9に示すように、水田200の下層土207内の用水W3は、排水として、複数の透孔97aを通して暗渠集合パイプ97内に流れ込んだり、複数の透孔96aを通して暗渠パイプ96内に流れ込んだりする。流れ込んだ排水は、複数の暗渠パイプ96及び暗渠集合パイプ97内を、矢印A2のように流れる。
矢印A2のように流れた排水は、地下灌漑接続管98、地下水供給部14を通して、枡本体11内に流れ込む。この排水は、さらに、地上水供給部15の水位調整管60の上端から、水位調整管60内に流れ込む。そして、排水接続管103を通して排水管101に排出される。
以上のようにして、水田200内の余剰の用水W3が排出される。
【0040】
図10には、圃場が畑220として用いられる場合の一例を示す。畑220には、表面水W1は無く、畑220の地下水の水位は、田面(表面)206aよりも下方に位置している。畑220における作土層206及び下層土207には、野菜221が植えられている。
自動給水栓13の栓制御部44は、第2水位センサ17の検出結果に基づいて、流入管12の開状態及び閉状態を切り替え、地下水供給部14を通して畑220に用水W3を供給する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の圃場水管理システム1では、第1水位センサ70による水田200の水位の検出結果に基づいて、自動給水栓13が流入管12の開口28aを開閉し、用水W3を水田200に供給する。さらに、水位調整部16は、水田200内の余剰の用水W3を排出する。従って、水田200における用水W3の水位の調整を自動化することができる。
【0042】
圃場水管理システム1は、地下水供給部14を備える。このため、地下水供給部14により、暗渠パイプ96を介して用水W3を水田200に供給することができる。
圃場水管理システム1は、第2水位センサ17を備える。これにより、第2水位センサ17が検出した地下水供給部14内の水位に基づいて、自動給水栓13が流入管12の開口28aを開閉し、用水W3を水田200に供給することができる。
【0043】
圃場水管理システム1は、地上水供給部15を備える。このため、地上水供給部15により、用水W3を水田200上に供給することができる。
圃場水管理システム1は、枡本体11を備える。用水W3を枡本体11内に導いた後で用水W3を水田200に供給するとともに、対象となる水田200に対する第2側Y2の端部において、枡本体11により流入管12及び水位調整部16を一体化することができる。
【0044】
第1実施形態の圃場水管理システム1では、後述する第2実施形態の圃場水管理システム2に比べて、用水管100及び排水管101を埋設するための農道201の幅(第2方向Yの長さ)を狭くすることができる。
なお、本実施形態の圃場水管理システム1は、枡本体11、地下水供給部14、地上水供給部15、及び第2水位センサ17の少なくとも1つを備えなくてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図11及び
図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11に示すように、本実施形態の圃場水管理システム2では、枡ユニット110及び水位調整部16が、用水W3の管理の対象となる水田200を第2方向Yに挟むように配置されている。なお、
図11では、圃場水管理システム2の構成の一部を簡略化して示している。
具体的には、枡ユニット110が、水田200に対する第2側Y2に配置され、水位調整部16が、水田200に対する、第1側Y1に配置されている。
【0046】
水位調整部16は、水田200の第1側Y1の端部において、枡本体内に配置されてもよいし、連結継手58の接続管58bが、開閉弁63により塞がれていてもよい。
水田200に対する第2側Y2の農道201には、用水管100が埋設されている。水田200に対する第1側Y1の農道201には、排水溝101Aが設けられている。
【0047】
図12に示すように、枡ユニット110は、第1実施形態の枡ユニット10に対して、仕切り21、水位調整部16、開閉弁63、及び操作ロッド64を備えていない。
以上のように構成された圃場水管理システム2によっても、水田200における用水W3の水位の調整を自動化することができる。
【0048】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1,2 圃場水管理システム
12 流入管
13 自動給水栓
14 地下水供給部
15 地上水供給部
16 水位調整部
17 第2水位センサ
28a 開口
70 第1水位センサ
85 蓋本体
96 暗渠パイプ
200 水田(圃場)
W3 用水