(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149243
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20231005BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20231005BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20231005BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C02F3/28 A
C02F1/44 F
C02F3/12 A
C02F3/12 B
C02F3/12 S
B01D65/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057708
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】野口 真人
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
4D040
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
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4D040AA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、処理対象物に対して生物処理及び膜分離を行う処理において、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を行い、逆洗回数の低減を可能とする処理システム及び処理方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、生物処理槽と、生物処理槽で生じた処理液を膜分離する膜モジュールと、透過液を貯留する貯留槽と、膜モジュールから貯留槽へ供給される透過液の流量を調整する流量調整手段と、を備え、流量調整手段は、透過液の流量調整に係る操作量に基づく膜モジュールの閉塞状態の検知を併せて行い、この検知結果に基づき、貯留槽内の水を逆洗水として膜モジュールの逆洗を行う処理システム及び処理方法を提供する。本発明によれば、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数の低減が可能となる。これにより、処理システムとして得られる処理水(透過液)の回収率低下を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を生物処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽で生じた処理液を、前記生物処理槽外で膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、
前記透過液を貯留する貯留槽と、
前記膜モジュールから前記貯留槽へ供給される前記透過液の流量を調整する流量調整手段と、を備え、
前記流量調整手段は、前記透過液の流量調整に係る操作量に基づいて、前記膜モジュールの閉塞状態の検知を併せて行うものであり、
前記流量調整手段による検知結果に基づき、前記貯留槽内の水を逆洗水として前記膜モジュールの逆洗を行うことを特徴とする、処理システム。
【請求項2】
処理対象物を生物処理槽内で生物処理する生物処理工程と、
前記生物処理工程で生じた処理液を、前記生物処理槽外に設けた膜モジュールで膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜分離工程と、
前記透過液を貯留する貯留工程と、
前記膜分離工程から前記貯留工程へ供給される前記透過液の流量を調整する流量調整工程と、を備え、
前記流量調整工程は、前記透過液の流量調整に係る操作量に基づいて、前記膜モジュールの閉塞状態の検知を併せて行うものであり、
前記流量調整工程における検知結果に基づき、前記貯留工程の水を逆洗水として前記膜モジュールの逆洗を行うことを特徴とする、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を含有する処理対象物の処理に係る処理システム及び処理方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、生物処理と膜分離処理を組み合わせた膜分離生物処理に関する処理システム及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性廃液や有機性廃棄物等、有機物質を含有する処理対象物を処理する技術としては、好気性微生物や嫌気性微生物などの微生物を用いた生物処理が広く行われている。特に、メタン発酵処理は、処理対象物の減量とともに、発生するメタンをエネルギーとして利用できることから有用性の高い技術として注目されている。
【0003】
また、生物処理(メタン発酵処理)後の処理液に含まれる微生物を、処理液中から分離、回収する固液分離を行い、微生物を多く含む固体分(濃縮液)を再度生物処理に供することも行われている。生物処理後の処理液に対する固液分離処理としては、遠心分離装置による遠心分離、沈殿槽による沈降分離、脱水装置による脱水のほか、膜による膜分離(膜濾過)が知られており、特に、膜分離とメタン発酵処理の組み合わせ(膜分離メタン発酵処理)は広く知られている。
【0004】
ここで、膜分離メタン発酵処理は、メタン発酵処理後の処理液を膜分離に供するものである。そのため、メタン発酵処理に基づく固体分(メタン発酵汚泥)が膜表面や膜内部に付着して、膜分離における閉塞(ろ過膜の目詰まり)が生じ、膜分離における処理効率の低下が課題となる。
【0005】
例えば、特許文献1には、有機性排水を嫌気処理する発酵槽と、発酵槽外に設けられた槽外型膜分離装置を組み合わせた処理において、発酵槽の槽内水(処理液)を膜分離装置に供給して膜分離処理され、得られた透過液を処理水槽に送水する一方、濃縮液は発酵槽に返送することが記載されている。また、特許文献1には、処理水槽内の処理水(透過液)を膜分離装置の透過側に定期的に供給し、膜分離装置の逆洗を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、生物処理と膜分離を組み合わせた処理システムにおいて、膜分離処理後の処理水(透過液)を定期的に膜分離装置の逆洗に用いることで、膜分離装置の閉塞状態を解消することが記載されている。すなわち、特許文献1に記載される処理システムでは、膜分離装置の閉塞が生じていない場合においても、所定時間ごとに強制的に逆洗を行うことになる。
【0008】
一方、生物処理槽からの処理液の膜分離処理においては、処理液に含まれる固体分(SS)の性質や濃度等により、高い透過流束が得られにくい。特に、嫌気処理(メタン発酵)で得られるメタン発酵汚泥を含む処理液の膜分離処理では、好気処理で得られる活性汚泥を含む処理液の膜分離処理と比べ、透過流束が低くなることが知られている。したがって、膜分離処理における逆洗回数を増加させることは、処理水(透過液)の回収率の低下を招くという課題がある。
【0009】
したがって、本発明の課題は、有機物質を含有する処理対象物に対し、生物処理及び膜分離を行う処理において、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を行い、逆洗回数の低減を可能とする処理システム、及び、この処理システムを用いた処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、生物処理と膜分離を行う処理において、生物処理後の処理液に対し、膜モジュールによる膜分離処理で得られる濃縮液及び透過液のうち、透過液を貯留槽に貯留する際に、透過液の流量を調整することと併せて、透過液の流量調整に係る操作量から膜モジュールの閉塞状態を検知し、この検知結果に基づいて貯留槽内の水を用いた逆洗操作を行うことで、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数を低減できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の処理システム及び処理方法である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の処理システムは、処理対象物を生物処理する生物処理槽と、生物処理槽で生じた処理液を、生物処理槽外で膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜モジュールと、透過液を貯留する貯留槽と、膜モジュールから貯留槽へ供給される透過液の流量を調整する流量調整手段と、を備え、流量調整手段は、透過液の流量調整に係る操作量に基づいて、膜モジュールの閉塞状態の検知を併せて行うものであり、流量調整手段による検知結果に基づき、貯留槽内の水を逆洗水として膜モジュールの逆洗を行うことを特徴とする。
この処理システムによれば、処理対象物に対して生物処理と膜分離を行う処理システムにおいて、生物処理槽で生じた処理液を膜モジュールにより膜分離処理することで得られる濃縮液及び透過液のうち、透過液を貯留槽に貯留し、このとき透過液の流量を調整することと併せて、透過液の流量調整に係る操作量から膜モジュールの閉塞状態を検知し、この検知結果に基づいて貯留槽内の水を用いた逆洗操作を行うことで、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数を低減することができる。これにより、この処理システムとして得られる処理水(透過液)の回収率低下を抑制することが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の処理方法は、処理対象物を生物処理槽内で生物処理する生物処理工程と、生物処理工程で生じた処理液を、生物処理槽外に設けた膜モジュールで膜分離し、濃縮液と透過液を得る膜分離工程と、透過液を貯留する貯留工程と、膜分離工程から貯留工程へ供給される透過液の流量を調整する流量調整工程と、を備え、流量調整工程は、透過液の流量調整に係る操作量に基づいて、膜モジュールの閉塞状態の検知を併せて行うものであり、流量調整工程における検知結果に基づき、貯留工程の水を逆洗水として膜モジュールの逆洗を行うことを特徴とする。
この処理方法によれば、処理対象物に対して生物処理と膜分離を行う処理方法において、生物処理工程で生じた処理液を膜モジュールにより膜分離処理する膜分離工程を行うことで得られる濃縮液及び透過液のうち、透過液を貯留工程により貯留し、このときの透過液の流量を調整することと併せて、透過液の流量調整に係る操作量から膜モジュールの閉塞状態を検知し、この検知結果に基づいて貯留槽内の水を用いた逆洗操作を行うことで、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数を低減することが可能となる。これにより、この処理方法によって得られる処理水(透過液)の回収率低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機物質を含有する処理対象物に対し、生物処理及び膜分離を行う処理において、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を行い、逆洗回数の低減を可能とする処理システム、及び、この処理システムを用いた処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施態様における処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施態様における処理システムの構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の処理システム及び処理方法は、有機物質を含有する処理対象物の処理を行う処理システム及び処理方法である。また、本発明の処理システム及び処理方法は、生物処理と膜分離処理を組み合わせた処理システム及び処理方法である。
本発明における生物処理とは、好気処理、嫌気処理のいずれであってもよいが、処理過程で発生するバイオガスを回収し、エネルギーとして利用できることから、嫌気処理(メタン発酵)とすることが好ましい。
【0016】
本発明における処理対象物としては、例えば、生ごみ、食品廃棄物、草木、汚泥等の固体分を含む有機性排水のほか、家畜糞尿、余剰汚泥などの有機性廃液や有機性廃棄物が挙げられる。
特に、本発明における処理対象物としては、固体分が少なく、生物処理により分解されやすい有機物質を含む有機性排水や有機性廃液が好ましい。これにより、生物処理において、微生物濃度を高めることが容易になるとともに、処理液に含まれる固体分が少なくなるため、膜分離における膜モジュールの閉塞状態への進行を抑制することが可能となる。
また、本発明における処理対象物のうち、特に嫌気処理(メタン発酵)に適した処理対象物としては、例えば、食品工場や化学工場等から排出される有機性排水、高濃度廃液等が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類、グルコース類、グリセリン、酢酸等の有機酸、高級脂肪酸、界面活性剤、フェノール類等を含む有機性排水及び高濃度廃液等が挙げられる。
なお、本発明における処理対象物はこれに限定されるものではなく、生物処理が可能な有機物質を含むものであれば、本発明の処理対象物となる。
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る処理システム及び処理方法に係る実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る処理方法の説明については、本発明に係る処理システムの構成及び動作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する処理システムについては、本発明に係る処理システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様の処理方法は、以下の処理システムを用いた処理方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
また、以下の実施態様においては、生物処理として、主に嫌気処理(メタン発酵)について説明するが、これに限定されるものではない。
【0018】
〔第1の実施態様〕
[処理システム]
図1は、本発明の第1の実施態様に係る処理システムの構造を示す概略説明図である。
本発明の第1の実施態様に係る処理システム100Aは、処理対象物Sに対し、メタン発酵処理及び膜分離処理を行うものであり、
図1に示すように、ラインL1を介して供給される処理対象物Sをメタン発酵処理する生物処理槽1と、生物処理槽1で生じた処理液Wを膜分離し、濃縮液F1と透過液F2を得る膜モジュール2と、処理液Wを膜モジュール2に送液する送液路3と、濃縮液F1を生物処理槽1に返送する返送路4と、生物処理槽1内の汚泥を引き抜く汚泥引抜手段5と、透過液F2を貯留する貯留槽6と、貯留槽6に供給される透過液F2の流量を調整する流量調整手段7Aと、を備えている。
なお、一点鎖線で示された矢印は、制御又は入出力可能に接続されていることを示すものである。
【0019】
本実施態様に係る処理システム100Aは、
図1に示した構成以外の設備を設けるものとしてもよい。例えば、生物処理槽1の前段に、処理対象物Sの濃縮を行う濃縮槽、処理対象物Sの可溶化を行う可溶化槽、生物処理槽1に供給する処理対象物Sの供給量を調整するための調整槽などを設けるものとしてもよい。また、貯留槽6の後段に、透過液F2の処理を行う水処理設備を設けるものとしてもよい。また、生物処理槽1から発生するバイオガス(メタンガス)を、ラインL2を介して回収し、このバイオガスを利用するための脱硫装置及びガス貯留タンクを含むバイオガス利用設備を設けるものとしてもよい。
【0020】
図1に基づき、本実施態様における処理システム100Aによる処理対象物の処理について、概要を説明する。
まず、ラインL1を介して、処理対象物Sが生物処理槽1に供給される。そして、生物処理槽1内で処理対象物Sに対してメタン発酵処理が行われる。そして、生物処理槽1で処理された処理対象物Sは、処理液Wとなり、送液路3及び送液路3上に設けられた循環ポンプ31を介し、膜モジュール2側へ送液される。そして、処理液Wは、配管32a及び32bを介して接続された複数の膜モジュール2(膜モジュール2a~2c)を経由して膜分離され、濃縮液F1と透過液F2を得る。透過液F2は、配管32a~32cを介して回収され、更に配管61aを介して貯留槽6に貯留される。一方、濃縮液F1は返送路4を介して生物処理槽1に返送される。
以上が、本実施態様の処理システム100Aにおける処理対象物Sに対する処理に係る流れとなる。
なお、
図1には図示していないが、処理システム100Aにおいて、生物処理槽1の液位が低下しないように、透過液F2を生物処理槽1に返送するラインを設けるものとしてもよい。
【0021】
そして、本実施態様における処理システム100Aでは、膜モジュール2の閉塞状態を検知し、この検知結果に基づき逆洗操作を行うための手段を設けている。
【0022】
処理システム100Aによる処理を継続する中で、処理液Wに含まれる固体分(SS)が膜モジュール2表面や内部に付着して膜の閉塞が生じることで、処理効率が低下してくる。
このため、生物処理と膜分離を組み合わせた従来の処理システムでは、膜分離処理装置(膜モジュール)に対して定期的に逆洗水を供給し、逆洗操作を行っていた。
一方、生物処理と膜分離の組み合わせによる処理システムでは、生物処理槽からの処理液を膜分離処理する際、処理液に含まれる固体分(SS)の性質や濃度等により、高い透過流束が得ることが難しく、特に、嫌気処理(メタン発酵)で得られるメタン発酵汚泥を含む処理液の膜分離処理では、好気処理で得られる活性汚泥を含む処理液の膜分離処理と比べ、透過流束が低くなることが知られている。
このことから、処理システム100Aにおける膜モジュール2の逆洗回数を徒に増加させることは、膜モジュール2によって膜分離処理された水(透過液F2)の回収率の低下を招くことになる。
【0023】
そこで、本実施態様における処理システム100Aでは、膜モジュール2の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数を低減するとともに、透過液F2の回収率低下を抑制するための手段として、膜モジュール2から貯留槽6へ供給される透過液F2の流量を調整する流量調整手段7Aを設け、この流量調整手段7Aが、膜モジュール2の閉塞状態の検知を併せて行い、この検知結果に基づき、貯留槽6内の水を逆洗水W1として用いた逆洗操作を行うものを設けることが挙げられる。
【0024】
以下、本実施態様の処理システム100Aにおける各構成について説明する。
【0025】
(生物処理槽)
本実施態様における生物処理槽1は、処理対象物Sを嫌気性微生物(メタン菌等)によりメタン発酵処理する生物処理工程を行うための処理槽であり、嫌気性を維持するために密閉容器とすることが望ましく、それ以外の具体的な構造については特に限定されない。
生物処理槽1の構造としては、例えば、処理対象物Sに応じて適宜選択することが好ましい。より具体的には、液体成分を多く含む有機性排水や有機性廃液の嫌気性処理に利用される処理槽の構造や、固体成分を多く含む有機性廃棄物の嫌気性処理に利用される処理槽の構造等を適宜選択し、使用することができる。
なお、本実施態様における生物処理槽1としては、好気性微生物により好気処理を行う処理槽を用いるものとしてもよい。この場合、生物処理槽1内には、好気性を維持するために曝気装置などの付帯設備を設ける等、好気処理槽(好気反応槽)として公知の構造を用いることができる。
【0026】
本実施態様の処理システム100Aは、生物処理槽1で生じた処理液Wを膜モジュール2に供給して膜分離を行うものである。このため、生物処理槽1でグラニュールを利用したメタン発酵処理を行うと、生物処理槽1で生じる処理液Wに、グラニュール等、粒子径の大きな固体分が混入し、生物処理槽1の後段に配置された膜モジュール2の閉塞を進行させてしまうおそれがある。したがって、本実施態様における生物処理槽1は、完全混合型メタン発酵槽として公知の構造からなるものを用い、メタン発酵処理を行うことが好ましい。
【0027】
本実施態様における生物処理槽1は、内部を撹拌するために撹拌手段10を設けるものとすることが好ましい。
撹拌手段10の具体的な構成としては、例えば、
図1に示すように回転軸に設置された撹拌羽根11a及び駆動部11bを備える撹拌機11を設けることや、撹拌機11に代えて、生物処理槽1内の処理液Wを循環させる撹拌ポンプ及び循環配管を設けること等が挙げられる。
【0028】
なお、生物処理槽1の具体的な構造に係る一例としては、生物処理槽1の底部に傾斜を有することが好ましい。これにより、固形物残渣の回収を容易とするとともに、生物処理槽1底部における撹拌効率も向上する。
また、生物処理槽1に係るその他の構造に係る一例としては、例えば、撹拌手段10による撹拌効率を上げるための内部構造等をさらに備えるものなどが挙げられる。
【0029】
本実施態様における生物処理槽1で処理された処理対象物Sは、処理液Wとして、膜モジュール2へと送液される。
【0030】
(膜モジュール)
膜モジュール2は、生物処理槽1で生じた処理液Wに対し、膜による固液分離(膜分離)を行い、濃縮液F1と透過液F2とを得る膜分離工程を行うためのものである。
また、本実施態様における膜モジュール2の個数や、膜モジュール2の配置(配列)については特に限定されない。例えば、
図1に示すように、複数個の膜モジュール2a、2b、2cを直列に配置するものとし、膜モジュール2aを透過しなかった処理水Wを、配管32aを介して膜モジュール2bに供給し、更に膜モジュール2bを透過しなかった処理水Wを、配管32bを介して膜モジュール2cに供給できるように配置し、処理水Wを順次膜モジュール2に供給することで、処理液W中の固体分(メタン発酵汚泥)の濃縮率を高めるものとすることが挙げられる。
なお、膜モジュール2の配置(配列)に関する他の例としては、例えば、複数の膜モジュール2を並列につなぐ配列を形成するものや、複数の膜モジュール2を直列につないだものをユニット化し、このユニットを複数並列につなぐ配列を形成するものなどが挙げられる。
【0031】
また、
図1に示すように、全ての膜モジュール2による膜分離処理を経た処理液Wは、濃縮液F1として、返送路4を介し、生物処理槽1に返送される。
【0032】
ここで、膜モジュール2に送液される処理液Wは、生物処理槽1における嫌気性微生物(メタン菌等)を含んでいる。つまり、生物処理槽1から処理液Wを排出させ、膜モジュール2に送液することに伴い、嫌気性微生物(メタン菌等)も生物処理槽1から排出されてしまう。
一方、
図1に示すように、本実施態様における処理システム100Aでは、複数の膜モジュール2a、2b、2cを備え、送液路3、循環ポンプ31、配管32a及び32bを介し、各膜モジュール2に処理液Wを順次供給するとともに、返送路4を介して濃縮液F1として生物処理槽1に返送することで、生物処理槽1から流出した嫌気性微生物(メタン菌等)が、濃縮液F1として回収され、生物処理槽1に返送されることになる。これにより、生物処理槽1から嫌気性微生物が流出することを抑止し、生物処理槽1内の微生物濃度を維持することが可能となる。
【0033】
一方、透過液F2は、各膜モジュール2に設けられた配管33a~33c及び配管33a~33cが合流した配管61aを介して貯留槽6に貯留される。
【0034】
膜モジュール2としては、処理液Wの膜分離を行い、嫌気性微生物(メタン菌等)を多く含む固体分(メタン発酵汚泥)を含有する濃縮液F1と、固体分が除去された透過液F2を得ることができるものであればよい。
膜モジュール2の具体的な例としては、チューブラー型、中空糸型、浸漬型平膜等が挙げられる。本実施態様における膜モジュール2としては、
図1に示すように、生物処理槽1外に設けた槽外型と呼ばれるものを用いることが好ましい。また、膜モジュール2としてはチューブラー型を用いることが特に好ましい。チューブラー型は、膜面線速を高めて膜面近くに乱流を起こし、可逆的ファウリングを抑制するという、いわゆるクロスフロー方式による膜分離を行うことができる。このため、送液する処理液Wの物性としてSS濃度や粘度の高いものであっても、膜モジュール2の閉塞が生じにくいという利点を有する。
【0035】
本実施態様の膜モジュール2においては、各膜モジュール2(膜モジュール2a~2c)の処理液入口及び/又は濃縮液出口にそれぞれ圧力計を設け、処理システム100Aの円滑な運用に係る監視及び管理に用いるものとしてもよい。例えば、複数の膜モジュール2を配列した場合、膜モジュール2を設けた最上流側の処理液入口と最下流側の濃縮液出口の圧力差に係る情報が取得できるように圧力計を配置することが挙げられる。具体的には、
図1に示すように、一番上流側の膜モジュール2aにおける処理液入口に圧力計PI1を設け、一番下流側の膜モジュール2cにおける濃縮液出口に圧力計PI2を設けることが挙げられる。
【0036】
(送液路及び返送路)
送液路3は、生物処理槽1で生じた処理液Wを膜モジュール2に送液する送液工程を行う配管からなるものであり、返送路4は、膜モジュール2からの濃縮液F1を生物処理槽1に返送する返送工程を行う配管からなるものである。また、送液路3上に設けられた循環ポンプ31は、送液路3、配管32a及び32b、並びに返送路4によって形成される循環流路内に、処理液W(濃縮液F1)を通過させるためのものである。これにより、生物処理槽1から排出された処理液W中に含まれる嫌気性微生物(メタン菌等)は、濃縮液F1として生物処理槽1に返送されるため、生物処理槽1における嫌気性微生物の流出を抑制することが可能となる。
【0037】
(汚泥引抜手段)
汚泥引抜手段5は、生物処理槽1内の汚泥を引き抜く汚泥引き抜き工程を行うためのものである。
処理システム100Aにおいて、生物処理効率を高めるために微生物(メタン菌等)の濃度を高濃度とし、生物処理槽1での固体分(SS)の濃度が過剰となってしまうと、処理液Wに含まれる固体分の量が多くなるため、後段の膜分離処理としての膜モジュール2の閉塞が生じやすくなる。このため、汚泥引抜手段5を設け、生物処理槽1内の汚泥を引き抜くことで、生物処理槽1内の微生物濃度(SS濃度)の維持を行う。
【0038】
汚泥引抜手段5は、
図1に示すように、送液路3から分岐した配管51と、配管51上に設けられた引抜部52を備えるものが挙げられる。
引抜部52は、配管51を介した汚泥の引き抜きが可能なものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、
図1に示すように、配管51上に設けた流量調節用バルブと送液ポンプの組み合わせからなるもの等が挙げられる。
なお、汚泥引抜手段5については、作業者による手動操作やタイマーによる制御により、定期的に作動させるものとしてもよく、生物処理槽1内の微生物濃度維持に係る制御パラメータに基づき作動させるものとしてもよい。
【0039】
(貯留槽)
貯留槽6は、膜モジュール2からの透過液F2を、配管61aを介して貯留する貯留工程を行うための槽である。
貯留槽6は、透過液F2を貯留することができるものであればよく、槽の形状・材質や大きさについては特に限定されない。
【0040】
貯留槽6には、透過液F2が供給される配管61aのほかに、配管61b及び61cが接続される。
配管61bは、貯留された水を系外に排出するためのものであり、このとき排出される水については、他の水処理設備により更に処理が行われるものとしてもよい。
配管61cは、貯留槽6に貯留された水の一部を、逆洗水W1として各膜モジュール2(膜モジュール2a~2c)の透過側に供給するためのものであり、配管61c上には逆洗ポンプ62が設けられる。
【0041】
(流量調整手段)
流量調整手段7Aは、膜モジュール2から貯留槽6へ供給される透過液F2の流量を調整する流量調整工程を行うためのものであると同時に、膜モジュール2の閉塞状態を検知する検知工程を行うためのものである。
【0042】
本実施態様における処理システム100Aでは、処理対象物Sに対する処理を円滑に継続するためには、処理対象物Sとして導入した分を処理水(透過液F2)として系外に排出する必要がある。このため、流量調整手段7Aを設け、透過液F2の定量的な回収(貯留)を行うことで、膜モジュール2の閉塞を抑制し、処理水(透過液F2)の回収率低下を抑制することが可能となる。
【0043】
また、本実施態様における流量調整手段7Aは、膜モジュール2からの透過液F2の流量調整に係る操作量に係る情報から、膜モジュール2の閉塞状態の検知に係る機能を併せ持つものとする。これにより、膜モジュール2の逆洗が必要となるタイミングを迅速かつ的確に把握することが可能となる。
【0044】
さらに、本実施態様における流量調整手段7Aによる検知結果に基づき、配管61c上の逆洗ポンプ62を操作し、貯留槽6内の水を逆洗水W1として膜モジュール2に供給し、逆洗操作を行うものとする。これにより、膜モジュール2の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数を低減することが可能となる。
【0045】
本実施態様における流量調整手段7Aとしては、
図1に示すように、配管61a上に設けられた流量調整弁71と流量計72を備えるものが挙げられる。
流量調整弁71は、流量調整弁71の下流側に設けられる流量計72が示す値が一定となるように開度を調節することで、貯留槽6に供給される透過液F2の水量を一定にするものである。すなわち、本実施態様においては、流量調整弁71の開度が、流量調整に係る操作量に相当するものとなる。なお、流量調整弁71の開度調節は、作業者による手動操作を含むものとしてもよいが、流量計72の測定値に応じて流量調整弁71の開度が自動制御されることが好ましい。
このとき、膜モジュール2が閉塞状態になるに従い、膜モジュール2からの透過液F2の水量が減少するため、流量計72が示す値を一定に保持するためには、流量調整弁71の開度を大きくすることになる。つまり、本実施態様の流量調整手段7Aにおける流量調整に係る操作量である流量調整弁71の開度が一定値を超えた場合、膜モジュール2が閉塞状態にある、あるいは閉塞傾向にあることが検知される。
そして、膜モジュール2の閉塞状態に関する検知結果に基づき、配管61c上の逆洗ポンプ62を操作し、貯留槽6内の水を逆洗水W1として膜モジュール2に供給し、逆洗操作を行うものとする。
【0046】
ここで、流量調整弁71の開度に係る情報取得及び膜モジュール2の閉塞状態に関する検知に係る判断、並びに検知結果(判断結果)に基づく逆洗ポンプ62の作動については、作業者の手動による操作を含むものであってもよいが、情報(測定値)取得のためのデータ入出力機能を有し、膜モジュール2の閉塞状態の検知(判断)に係る演算や、逆洗ポンプ62に対する制御信号発信を行うためのプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置を用い、自動制御可能とすることが好ましい。これにより、処理システム100Aにおける逆洗操作を自動化することができ、処理システム100Aの安定した運用が容易となる。
【0047】
以上のように、本実施態様の処理システム100A及び処理方法によれば、処理対象物に対して生物処理と膜分離を行う処理において、生物処理槽で生じた処理液を膜モジュールにより膜分離処理することで得られる濃縮液及び透過液のうち、透過液を貯留槽に貯留し、このとき透過液の流量を調整することと併せて、透過液の流量から膜モジュールの閉塞状態を検知し、この検知結果に基づいて貯留槽内の水を用いた逆洗操作を行うことで、膜の閉塞状態に合わせた逆洗を可能とし、逆洗回数の低減が可能となる。これにより、この処理によって得られる処理水(透過液)の回収率低下を抑制することが可能となり、処理システムとしての安定した運用を継続させることが容易となる。
【0048】
〔第2の実施態様〕
図2は、本発明の第2の実施態様に係る処理システムの構造を示す概略説明図である。
本発明の第2の実施態様における処理システム100Bは、第1の実施態様における流量調整手段7Aに代えて、移送ポンプ73を備える流量調整手段7Bとするものである。なお、本実施態様における処理システム100Bの構成のうち、第1の実施態様の処理システム100Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0049】
本実施態様における流量調整手段7Bとしては、
図2に示すように、配管61a上に設けられた移送ポンプ73と流量計72を備えるものが挙げられる。
移送ポンプ73は、移送ポンプ73を駆動する駆動機構(インバータ)を有し(不図示)、移送ポンプ73の下流側に設けられる流量計72が示す値が一定となるように、移送ポンプ73の駆動機構の出力を調整することで、貯留槽6に供給される透過液F2の水量を一定にするものである。すなわち、本実施態様においては、移送ポンプ73の駆動機構の出力が、流量調整に係る操作量に相当するものとなる。より具体的には、移送ポンプ73の駆動機構の出力に係るパラメータである運転周波数値や電流値が、流量調整に係る操作量に相当する。なお、移送ポンプ73の駆動機構の出力調整は、作業者による手動操作を含むものとしてもよいが、流量計72の測定値に応じ、移送ポンプ73の駆動機構の出力に係るパラメータ値(運転周波数値または電流値)が自動制御されることが好ましい。
このとき、膜モジュール2が閉塞状態になるに従い、膜モジュール2からの透過液F2の水量が減少するため、流量計72が示す値を一定に保持するためには、移送ポンプ73の駆動機構の出力を高めることになる。つまり、本実施態様の流量調整手段7Bにおける流量調整に係る操作量である移送ポンプ73の駆動機構の出力に係るパラメータ値が一定値を超えた場合、膜モジュール2が閉塞状態にある、あるいは閉塞傾向にあることが検知される。
そして、膜モジュール2の閉塞状態に関する検知結果に基づき、配管61c上の逆洗ポンプ62を操作し、貯留槽6内の水を逆洗水W1として膜モジュール2に供給し、逆洗操作を行うものとする。
【0050】
ここで、本実施態様の流量調整手段7Bにおいて、移送ポンプ73の駆動機構の出力に係る情報取得及び膜モジュール2の閉塞状態に関する検知に係る判断、並びに検知結果(判断結果)に基づく逆洗ポンプ62の作動については、上述した流量調整手段7Aと同様に、作業者の手動による操作を含むものであってもよいが、情報(測定値)取得のためのデータ入出力機能を有し、膜モジュール2の閉塞状態の検知(判断)に係る演算や、逆洗ポンプ62に対する制御信号発信を行うためのプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置を用い、自動制御可能とすることが好ましい。これにより、処理システム100Bにおける逆洗操作を自動化することができ、処理システム100Bの安定した運用が容易となる。
【0051】
なお、上述した実施態様は処理システム及び処理方法の一例を示すものである。本発明に係る処理システム及び処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理システム及び処理方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の処理システム及び処理方法は、有機性廃液や有機性廃棄物等、有機物質を含有する処理対象物に対する処理に利用される。また、本発明の処理システム及び処理方法は、メタン発酵処理及び膜分離による膜分離メタン発酵処理に係る技術として、特に好適に利用される。
【符号の説明】
【0053】
100A,100B 処理システム、1 生物処理槽、10 撹拌手段、11 撹拌機、11a 撹拌羽根、11b 駆動部、2,2a,2b,2c 膜モジュール、3 送液路、31 循環ポンプ、32a,32b 配管、33a~33c 配管、4 返送路、5 汚泥引抜手段、51 配管、52 引抜部、6 貯留槽、61a~61c 配管、62 逆洗ポンプ、7A,7B 流量調整手段、71 流量調節弁、72 流量計、73 移送ポンプ、F1 濃縮液、F2 透過液、L1,L2 ライン、PI1,PI2 圧力計、S 処理対象物、W 処理液、W1 逆洗水