(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149249
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20231005BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L33/48
G02B5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057724
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健一
【テーマコード(参考)】
2H148
5F142
【Fターム(参考)】
2H148GA01
2H148GA04
2H148GA18
2H148GA22
2H148GA23
2H148GA51
2H148GA61
5F142AA22
5F142BA32
5F142CD13
5F142CD18
5F142DB02
5F142DB20
5F142GA31
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】特定波長より長波長側の光出力の減衰を抑制しながら特定波長より短波長側の光をカットすることができる光半導体装置を提供する。
【解決手段】光半導体装置100は、パッケージ基板1と、その上面に、光取り出し側の面である出射面21が上面となるように配置された発光素子2と、パッケージ基板1との間に閉鎖空間Sを形成し、発光素子2を覆う透明蓋3と、透明蓋3の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長が特定波長としてのλ
1である第一光干渉フィルタ41と、透明蓋3の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長がλ
2(ただし、λ
1<λ
2)である第二光干渉フィルタ42と、を備え、第一光干渉フィルタ41は、上下方向視において出射面21の中央部と重複する位置を含む第一領域R
1に配置され、第二光干渉フィルタ42は、上下方向視において第一領域R
1の外側に隣接する第二領域R
2に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ基板と、
前記パッケージ基板の上面に、光取り出し側の面である出射面が上面となるように配置された発光素子と、
前記パッケージ基板との間に閉鎖空間を形成し、前記発光素子を覆う透明蓋と、
前記透明蓋の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長が特定波長としてのλ1である第一光干渉フィルタと、
前記透明蓋の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長がλ2(ただし、λ1<λ2)である第二光干渉フィルタと、を備え、
前記第一光干渉フィルタは、上下方向視において前記出射面の中央部と重複する位置を含む第一領域に配置され、
前記第二光干渉フィルタは、上下方向視において前記第一領域の外側に隣接する第二領域に配置されている光半導体装置。
【請求項2】
前記出射面は平面状に形成されており、前記出射面の垂線方向が上下方向と重複しており、
前記出射面の外周から透明蓋に向かう垂線に対する、前記出射面の真上から離れる方向に斜めに向かう光線の傾斜角度をθとした場合、
前記第二光干渉フィルタにおいて、透過率50%となる波長がλ1となる入射角をα2とした場合の第二領域の内周は(α2-5°)≦θ≦α2の範囲内であり、前記第二領域の内周は前記第一領域の外周である請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
5°≦α2≦40°である請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記第二光干渉フィルタの内周は、前記第二領域の内周であり、
前記第一光干渉フィルタの外周が、前記第二領域の範囲内にあり、
前記傾斜角度の方向視において、前記第一光干渉フィルタと前記第二光干渉フィルタの一部が重なっている請求項2又は3に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記第一光干渉フィルタが前記透明蓋の前記発光素子に対向する側の面上に配置され、前記第二光干渉フィルタが前記透明蓋の前記発光素子に対向する側の面と反対側の面上に配置されている請求項1から4の何れか一項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記透明蓋の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長がλ3(ただし、λ2<λ3)である第三光干渉フィルタを備え、
前記第三光干渉フィルタは、上下方向視における前記第二領域の外側に隣接する第三領域に配置されている請求項1から5の何れか一項に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記出射面は平面状に形成されており、前記出射面の垂線方向が上下方向と重複しており、
前記出射面の外周から透明蓋に向かう垂線に対する、前記出射面の真上から離れる方向に斜めに向かう光線の傾斜角度をθとした場合、
前記第三光干渉フィルタにおいて、透過率50%となる波長がλ1となる入射角をα3(ただし、α3>α2)とした場合の、前記第三領域の内周は(α3-5°)≦θ≦α3の範囲内であり、前記第三領域の内周は前記第二領域の外周である請求項6に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記第三光干渉フィルタの内周は、前記第三領域の内周であり、
前記第二光干渉フィルタの外周が、前記第二領域の外側にある前記第三領域の範囲内にあり、
前記傾斜角度の方向視において、前記第二光干渉フィルタと前記第三光干渉フィルタの一部が重なっている請求項7に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記λ1が前記発光素子の発光中心波長より3nm以上10nm以下短い波長である請求項1から8の何れか一項に記載の光半導体装置。
【請求項10】
前記発光素子は、発光中心波長が300nm以上350nm以下の紫外LEDである請求項1から9の何れか一項に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に照射して種々の治療を行う紫外線として、300~340nmの波長の光源が使用される場合がある。従来、それらの光源としては水銀ランプやエキシマライトなどが使用されてきた。
【0003】
近年、300~340nmの波長の光源としての水銀ランプやエキシマライトを紫外LEDへの置き換えたいという要望が高まっている。
【0004】
特許文献1には、光半導体チップをパッケージに封入してなる光半導体素子としての紫外線発光素子が記載されている。この紫外線発光素子は、金属ベース(パッケージ)上に載置された紫外線発光チップと、金属ベースに接合されていると共に紫外線発光チップの側方を囲むように配置された略円筒状の金属キャップ(パッケージ)と、金属キャップの開口を封止するガラス窓(パッケージ)と、絶縁材によって絶縁されつつ金属ベースを貫通し、かつ導電性ワイヤを介して紫外線発光チップと接続されたリードとにより構成されている。ガラス窓の外面には、二酸化ケイ素などの低屈折率膜と、二酸化ハフニウムなどの高屈折率膜とを組み合わせて積層し、可視光線および赤外線をカットして紫外線のみを透過させるように構成された、光学機能性膜としての紫外線透過フィルタ膜が、真空蒸着法によって形成されている。紫外線発光チップから発光した光は、この紫外線透過フィルタ膜を通過することによって、可視光線及び赤外線がカットされて外部に出光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水銀ランプやエキシマライトの発光スペクトルに比べると、紫外LEDの発光スペクトルの半値幅は広い。例えば、紫外LEDの最大強度の波長であるピーク波長を308nmとした場合、エキシマライト(波長308nm、XeCl)における300nm未満の発光強度がピーク波長の発光強度の約10%であるのに対し、紫外LEDでは、300nm未満の発光強度がピーク波長の発光強度の約30%といった具合に、300nm未満の発光強度がエキシマライトよりも強くなる傾向にある。300nm未満の光は人体に悪影響が生じる場合があるため、紫外LEDへの置き換えにおいては、300nm未満の短い波長域をカットする必要がある。
【0007】
また、水銀ランプやエキシマライトは、形状が直管状などであって線光源であり、その直管の表面に対し均一に垂直方向の光が放射される構造であるため、特定波長以下の光をカットするには、単一の光カットフィルタを直管からの光放射方向に対して配置すればよかった。しかし、LEDチップを内蔵する光半導体装置からの配光は、水銀ランプやエキシマライトとは異なり、LEDチップを内蔵するSMDなどの出射面が平坦な光半導体装置の配光は広く、垂直方向から±60°程度の角度範囲にわたり光が放射される場合がある。
【0008】
特定波長以下の光をカットするフィルタ、すなわちハイパスフィルタとしては、単膜あるいは多層膜として構成される誘電体薄膜などを用いた光干渉性を利用するフィルタや、材料に起因する吸収現象などを利用するフィルタがある。光干渉性を利用するフィルタ(以下、光干渉フィルタと称する場合がある)は透過率が90%となる波長と透過率が10%となる波長との波長差を小さくすることができるため、LEDチップの波長プロファイルにおける特定波長よりも短波長側をカットしつつ、特定波長よりも長波長側の光出力の減衰を抑制したい場合に有効である。しかし、光干渉フィルタは、フィルタへの光の入射角度によってフィルタ内での光路長が変わるため、観測角度(入射角度)によっては特定波長以下の波長を有効にカットできないという問題がある。
【0009】
そのため、例えばLEDチップのような点光源を内蔵した光半導体装置において、特定波長より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながら特定波長より短波長側の光をカットすることができる光半導体装置の提供が望まれる。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、特定波長より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながら特定波長より短波長側の光をカットすることができる光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、特定波長より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながら、特定波長より短波長側の光をカットすることができるように、透明蓋の表面に配置する光干渉フィルタを、発光素子の光の出射面からの位置関係に応じて、光干渉フィルタの特性を変えて複数配置することに着目して検討を行った。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る光半導体装置は、
パッケージ基板と、
前記パッケージ基板の上面に、光取り出し側の面である出射面が上面となるように配置された発光素子と、
前記パッケージ基板との間に閉鎖空間を形成し、前記発光素子を覆う透明蓋と、
前記透明蓋の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長が特定波長としてのλ1である第一光干渉フィルタと、
前記透明蓋の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長がλ2(ただし、λ1<λ2)である第二光干渉フィルタと、を備え、
前記第一光干渉フィルタは、上下方向視において前記出射面の中央部と重複する位置を含む第一領域に配置され、
前記第二光干渉フィルタは、上下方向視における前記第一領域の外側に隣接する第二領域に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ1より短波長側の光をカットすることができる光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】第一実施形態に係る光半導体装置の上面図である。
【
図2】第一実施形態に係る光半導体装置の断面図である。
【
図3】第一光干渉フィルタの透過スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図4】第二光干渉フィルタの透過スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図5】第一実施形態の変形例に係る光半導体装置の断面図である。
【
図6】第二実施形態に係る光半導体装置の上面図である。
【
図7】第二実施形態の変形例に係る光半導体装置の断面図である。
【
図8】第三実施形態に係る光半導体装置の断面図である。
【
図10】実施例1に係る光半導体装置の発光スペクトルのグラフである。
【
図11】実施例1に係る光半導体装置の配光分布特性のグラフである。
【
図12】実施例2に係る光半導体装置の発光スペクトルのグラフである。
【
図13】実施例2に係る光半導体装置の配光分布特性のグラフである。
【
図14】比較例1に係る光半導体装置の発光スペクトルのグラフである。
【
図15】比較例1に係る光半導体装置の配光分布特性のグラフである。
【
図16】比較例2に係る光半導体装置の発光スペクトルのグラフである。
【
図17】比較例2に係る光半導体装置の配光分布特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る光半導体装置について説明する。
【0016】
(第一実施形態)
(概要の説明)
図1Aには、本実施形態に係る光半導体装置100の上面図を示している。
図2には、光半導体装置100の断面(
図1AのII-II矢視断面)を示している。
【0017】
まず、光半導体装置100の概要を説明する。光半導体装置100は、
図2に示すように、パッケージ基板1と、パッケージ基板1の上面(
図2における底面11)に、光取り出し側の面である出射面21が上面となるように配置された発光素子2と、パッケージ基板1との間に閉鎖空間Sを形成し、発光素子2を覆う透明蓋3と、透明蓋3の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長が特定波長としてのλ
1である第一光干渉フィルタ41と、透明蓋3の表面に配置され、入射角0度で透過率50%となる波長がλ
2(ただし、λ
1<λ
2)である第二光干渉フィルタ42と、を備えている。本実施形態の光干渉フィルタはすべて、光干渉式ハイパスフィルタである。
【0018】
以下では、
図2における、光半導体装置100において、パッケージ基板1から見て透明蓋3の側を上、透明蓋3から見てパッケージ基板1の側を下と称し、上側の面を上面、下側の面を下面と称し、
図2以降の図及び他の実施形態等でもこれを基準に説明を行う。例えば、透明蓋3の発光素子側の面を下面と称し、透明蓋3の発光素子側と反対の面を上面と称す。また、透明蓋3の表面とは透明蓋3の上面及び下面の両面またはいずれかの面をいう。
図2の上から透明蓋3の厚み方向に俯瞰した上面図が
図1Aである。
図1Bは、
図2における透明蓋3における第一領域(図内のR
1)及び第二領域(図内のR
2)についての透明蓋3の厚み方向に俯瞰した説明図である。
【0019】
本実施形態における上下方向視とは、透明蓋3を透明蓋3の厚み方向に俯瞰する場合であって、透明蓋3の上面を上から見る視点(以下、上面視ともいう)と、透明蓋3の下面を下から見る視点との両方を表す言葉とする。なお、上下方向視において、本実施形態で「外側」とは
図1Bに示す中央部Pから離れる側をいい、「内側」とは中央部P側をいう。同様に「外周」とは当該領域または範囲の中央部Pから遠い側の端部をいい、「内周」とは当該領域または範囲の中央部P側の端部をいう。
【0020】
図1Bでは、第一領域R
1が上面視において出射面21の中央部Pと重複する位置を含むことを示している。そして、第二領域R
2は第一領域R
1の外側に隣接しており、第二領域R
2は第一領域R
1と重ならない環状形状を有している。第一領域R
1の外周と第二領域R
2の内周とは一致している。上面視を上下方向視としても同様である。
【0021】
図2では、第一光干渉フィルタ41は第一領域R
1における透明蓋3の表面(上面)に配置されていることを示している。第二光干渉フィルタ42は、第二領域R
2における透明蓋3の表面(上面)に配置されており、第一領域R
1には配置されない。すなわち、
図1Aにおける第二光干渉フィルタ42の内周と、
図1Bにおける第二領域R
2の内周とは位置が一致している。
【0022】
本実施形態において、第一光干渉フィルタ41が第一領域R1に配置されるとは、第一光干渉フィルタ41と第一領域R1との範囲が一致する場合と、第一光干渉フィルタ41が第一領域R1及び第一領域R1の外側に延在する領域の双方に配置される場合の両方を含むことを意味するものとする。第二光干渉フィルタ42が第二領域R2に配置されるとは、第二光干渉フィルタ42と第二領域R2との範囲が一致する場合と、第二光干渉フィルタ42が第二領域R2及び第二領域R2の外側に延在する領域の双方に配置される場合の両方を含むことを意味するものとする。ただし、第二光干渉フィルタ42が第二領域R2よりも内側の領域に配置されることは無いものとする。
【0023】
また、
図2に示すように、第一領域R
1と第二領域R
2は透明蓋3における立体的な領域を示しており、出射面21の外周から出射される光が透明蓋3を透過するときの経路(光路)によって区切られる。
【0024】
図2に示すように、出射面21の外周を起点に透明蓋3へ向かって出射面21の真上から離れる方向に斜めに放射された光線の光路の、出射面21の外周から透明蓋3に向かう垂線に対する角度を傾斜角度θとする。傾斜角度θは、中央部Pから離れる方向を正、中央部Pに近づく方向を負とする。
図2では、傾斜角度θが30°に対応する放射された光の光路をθ
30の符号で示した仮想線で図示している。
【0025】
なお、
図2は概略図であるため、出射面21から出射した光が光半導体装置100から取り出される光の光路を直線で示しているが、厳密には、透明蓋3に垂直以外の角度で入射した場合の光路は、透明蓋3、第一光干渉フィルタ41及び第二光干渉フィルタ42のそれぞれの厚さ及び屈折率に依存して、閉鎖空間S、透明蓋3、第一光干渉フィルタ41または第二光干渉フィルタ42、及び光半導体装置100の外部空間のそれぞれの境界面においてスネルの法則に従って屈折するため、折れ線のような光路をとり、実際の光路は直線からずれる。光干渉フィルタの配置位置を設計する際には、このずれ量を考慮してもよく、簡略化して無視してもよい。本実施形態の説明においては、ずれ量を無視した直線とする。
【0026】
上下方向視における、第二領域R
2の、中央部P側(内周)の形状(すなわち第一領域R
1の外周形状)と、中央部Pとは反対側(外周)の形状は、四角形や長方形や多角形や円形などの形状を選択可能であるが、後述するように特定の最適角を有する光干渉フィルタを出射面21の外周からの傾斜角度θにより定める領域によって配置を決める場合において、出射面21の形状と相似する形(
図1B)、または、出射面21の外周から一定の距離(となるように角部に曲率半径)を有する形(
図1C)とすることが好ましい。
図1Bと
図1Cとで形状が異なる角部における本発明の効果の差は小さいため、
図2のII-II矢視断面に基づいて行われる出射面21の外周からの傾斜角度θによる領域範囲の説明は、いずれの場合にも適用されるものとする。また、
図1Cにおける第二領域R
2の角部のように、領域の外周と透明蓋3の外周との間に他の領域が無い場合があるが、その場合は、当該領域の外周を透明蓋3の外周に合わせるような変形も可能である。
【0027】
なお、第一光干渉フィルタ41及び第二光干渉フィルタ42は、それぞれ
図3、
図4に示すように、所定の条件下で所定の波長以下の光を遮蔽し、所定の波長以上の光を透過させるハイパスフィルタである。
【0028】
光半導体装置100では、発光素子2の出射面21から出射した光を透明蓋3を介して外部に放射する。この際、出射面21から出射した光は、第一光干渉フィルタ41又は第二光干渉フィルタ42によって、特定波長としてのλ1より短波長側の光がカットされる。
【0029】
光半導体装置100は、特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ1より短波長側の光をカットすることができる。
【0030】
(各部の説明)
以下、光半導体装置100の各部について詳細を説明する。光半導体装置100の断面図である
図2に示すように、光半導体装置100は、パッケージ基板1と、発光素子2と、透明蓋3と、透明蓋3の表面に配置された光干渉フィルタとを備えており、光干渉フィルタとして、第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42とを含む。光半導体装置100は、
図2に示すように、一例として
図1AのII-II矢視断面が左右対称であるが、出射面21の中央部Pが光半導体装置100のほぼ中心に位置するのであれば左右非対称であっても構わない。その他、光半導体装置100は、図示しない電極などを備えている。
【0031】
図2に示す発光素子2は、例えばLEDチップである。LEDチップは、要求される波長域に応じて選択すればよい。発光素子2は、好ましくは紫外LEDである。発光素子2は、例えば300nm以上350nm以下の間に発光中心波長を有する。発光素子2の出射面21は平面状に形成されている。上面視における出射面21の形状は、光半導体装置100の用途、機能又は製造上の都合に応じて、四角形や長方形や多角形や円形など、任意の形状を選択可能である。本実施形態では、一例として、発光素子2が上面視で正方形である場合を示している(
図1A参照)。
【0032】
パッケージ基板1は、発光素子2を載置して固定する座となる部分である。パッケージ基板1は、発光素子2をマウントするために適したものであれば良いが、特に、放熱性を有していることが好ましい。パッケージ基板1の形成に適した材料としては、AlNやAl-SiC、Mg-SiCなどのセラミックス、Al、Mo、Cu、Cu-W、Cu-Mo、コバールなどの金属が例示される。パッケージ基板1を形成する材料は、好ましくはAlN焼成体である。
【0033】
パッケージ基板1は、パッケージ基板1と透明蓋3とを接合することで形成される閉鎖空間S内に発光素子2を配置できるように、透明蓋3を設置することができる形状であれば良く、例えば平板状や凹部を有する形状に形成されてよい。
図2では、パッケージ基板1が、凹部を有する形状の一例として有底筒状に形成されて、その断面が角張ったU字状形状である場合を示している。パッケージ基板1の筒内部の底面11(パッケージ基板1の上面)は、平面状に形成されている。底面11上には、発光素子2が、光取り出し側の面である出射面21が上面となるように載置されている。パッケージ基板1の筒部13の上端部には、後述する透明蓋3が載置されている。
【0034】
透明蓋3は、発光素子2の光を透過する材料で形成されている。透明蓋3は、例えば平板状に形成される。透明蓋3の形成に用いられる材料の一例は、ガラス(ソーダ石灰ガラス)、石英及びサファイアなどの金属酸化物である。透明蓋3は、好ましくは、合成石英(屈折率:1.49)、溶融石英(屈折率:1.49)、サファイア(屈折率:1.80)である。
【0035】
透明蓋3は、パッケージ基板1との間に閉鎖空間Sを形成し、発光素子2を上方から覆うように配置される。すなわち、透明蓋3は、上面視で発光素子2を完全に包含するように配置される。発光素子2は、上面視でパッケージ基板1の底面11と透明蓋3との間に位置する状態で、閉鎖空間Sに封入される。なお、透明蓋3は、発光素子2との間に閉鎖空間Sを有しており、透明蓋3と発光素子2とは接しない。
【0036】
透明蓋3は、
図2に示すように、パッケージ基板1が凹部を有する形状である場合は、例えば板状としてよい。パッケージ基板1が板状である場合は、透明蓋3を、凹部を有する形状、例えば、有底筒状の蓋としても良い。
【0037】
上面視における透明蓋3の発光素子2と重複する範囲は、平面状、且つ、上面及び下面が発光素子2の出射面21と平行とされる。
【0038】
後述するように、透明蓋3の表面には第一光干渉フィルタ41及び第二光干渉フィルタ42が配置されるが、透明蓋3の第一光干渉フィルタ41及び第二光干渉フィルタ42が配置される範囲の表面は平面状とされる。第一光干渉フィルタ41及び第二光干渉フィルタ42を配置するのに差し支えない範囲であれば、透明蓋3の表面の表面粗さは任意である。
【0039】
透明蓋3は、例えば接着層9を介してパッケージ基板1に接合される。接着層9は、接合材により形成されてよい。接合材の選択や接着層9の形成方法は任意であるが、例えば、パッケージ基板1や透明蓋3の接合すべき部分にそれぞれ金属層を形成した後に、これら金属層同士を圧着してもよいし、各種の半田や、樹脂系の接着剤を使用してもよい。接着層9は、好ましくは、AuSn半田である。
【0040】
図2に示す光半導体装置100の透明蓋3と発光素子2の出射面21との配置関係の場合、出射面21からの光が透明蓋3を介して光半導体装置100の外部に取り出し可能な光は、透明蓋3に対して垂直方向から60°程度の角度範囲にわたって放射される。
【0041】
光干渉フィルタは、光干渉性を利用した光カットフィルタである。光干渉フィルタは、屈折率が異なる2種以上(例えば2種または3種)の誘電体層の積層体である。光干渉フィルタにおいて、屈折率が異なる2種以上の層を繰り返して積層することが好ましく、繰り返し数としては3ペア以上100ペア以下の範囲とすることが好ましい。この範囲であれば、ペア数が多いほど、或いは屈折率差が大きいほど、特定波長としてのλ1近傍における透過率変化の急峻性を良好にすることができる。本実施形態における光干渉フィルタは、所定の入射角における所定の波長以下(短波長側)の透過率を50%以下とするハイパスフィルタである。なお、光干渉フィルタの透過率の波長依存性(透過スペクトル)は、分光光度計(例えば、日本分光(株)製V-650)を用いて測定することができる。この測定に当たっては、光干渉フィルタを透明蓋3表面に形成して、又はこれに代えて、石英ガラス基板もしくはサファイア基板表面に形成して測定してよい。
【0042】
光干渉フィルタが2種の層からなる場合、第一の層の材料としては、例えばSiO2(屈折率:1.46)が選択される。第二の層の材料としては、例えばTiO2(屈折率:2.26)、HfO2(屈折率:1.95)、Sc2O3(屈折率:1.96)が選択される。光干渉フィルタが3種の層からなる場合、第三の層の材料として例えばAl2O3(n=1.71)やMgO(n=1.74)を選択しても良い。4種以上からなる場合、例示した材料から適宜選択すれば良い。これらの層は、真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの公知の方法で成膜可能である。フォトリソグラフィを用いて所定の範囲に光干渉フィルタを形成する。
【0043】
光干渉フィルタは、使用する層の材料、各層の厚さ及びペア数を設定することよって、その特性、すなわち透過スペクトルを決定することができる。本実施形態では、以下、光干渉フィルタがSiO2の層とTiO2の層を有する場合を例示して説明する。
【0044】
以下の説明では、特定波長としてのλ1が305nmである場合を例示して説明する。なお、λ1は、発光出力はできるだけ維持したい発光素子2の発光中心波長(本実施形態では、一例として310nmの場合を説明。)と、カットしたい(発光出力をゼロに近づけたい)波長域の中での最大波長(例えば300nm)との間の範囲内(例えば300nm以上310nm以下)において、カットしたい波長域の光出力を低減できるように設定したものである。発光素子2が、発光中心波長が300nm以上350nm以下の紫外LEDである場合、その波長プロファイルにおける波長半値幅(FWHM)は、発光中心波長の短波長側で4~8nm程度あることと、光干渉フィルタのλ1近傍の急峻特性を考慮して、λ1は、当該発光中心波長より3nm以上10nm以下短い波長であることが好ましい。
【0045】
図2に示す光半導体装置100の透明蓋3と発光素子2の出射面21との配置関係の場合において、透明蓋3の上下方向視において発光素子2の出射面21と重複する領域では、出射面21から放射されて透明蓋3に入射する光の入射角は0°近傍の成分が支配的である。このため、この領域には入射角0°近傍に適した光干渉フィルタを配置する。一方、発光素子2の出射面21の外周から上下方向視において外側へ放射され透明蓋3に入射する光の入射角は0°よりも大きい成分が支配的となる。そのような領域には入射角の大きい光に適した光干渉フィルタを配置する。
【0046】
光干渉フィルタの、フィルタへの入射角が0°以上60°以下の範囲における5°毎の透過スペクトルの一例を
図3に示す。なお、
図3において、縦軸の「フィルタ透過率」は、光干渉フィルタの光の透過率である。以下では、光干渉フィルタにおいて、透過率50%となる波長がλ
1となる入射角を最適角と称する。最適角の角度をαとする。
【0047】
図3の光干渉フィルタでは、横軸の波長がλ
1(305nm)のときに縦軸のフィルタ透過率が50%となるのが入射角が0°のときであるため、
図3の光干渉フィルタの最適角はα=0°である。このような光干渉フィルタを、第一光干渉フィルタ41として透明蓋3の上下方向視において発光素子2の出射面21と重複する領域に配置する。第一光干渉フィルタ41では、入射角が最適角α=0°から大きくなるにつれて、透過率が50%以下となる波長域が短波長側にシフトする。
【0048】
また、
図4の光干渉フィルタでは、横軸の波長がλ
1(305nm)のときに縦軸のフィルタ透過率が50%となるのが入射角が30°のときであるため、
図4の光干渉フィルタの最適角はα=30°である。また、入射角が0°において透過率が50%となる波長λ
2は317nmであり、λ
2>λ
1である。このように
図3に比べて最適角の大きい光干渉フィルタを第二光干渉フィルタ42として透明蓋3の上下方向視において発光素子2の出射面21からの傾斜角度が0°よりも大きい外側の領域に配置する。第二光干渉フィルタ42では、入射角が最適角α=30°から大きくなるにつれて、透過率が50%以下となる波長域が短波長側にシフトし、入射角が最適角α=30°から小さくなるにつれて、透過率が50%以下となる波長域が長波長側にシフトする。
【0049】
図3に示す透過率特性を有する光干渉フィルタを、例えば透明蓋3の上面の全面に形成した場合を考える。発光素子2の外周からの傾斜角度θが大きくなるにつれて、透明蓋3の上面に設けられたフィルタへの入射角が大きくなるため、λ
1以下の波長帯の光を効果的にカットすることができず、λ
1以下の波長帯の光が光半導体装置100の外へ放射されてしまう。例えば、最適角+35°(
図3における入射角35°)の傾斜角度θではカットしたい波長域の最大波長(300nm)の透過率は100%に近く、最適角+15°(
図3における入射角15°)の傾斜角度θではカットしたい波長域の最大波長(300nm)の透過率は10%未満である。
【0050】
また、
図4に示す透過率特性を有する光干渉フィルタを、例えば透明蓋3の上面の全面に形成した場合を考える。発光素子2の外周からの傾斜角度θが最適角(α=30°)付近及び30°以上の範囲ではλ
1以下の波長帯の光を効果的にカットすることができる。しかし、発光素子2の出射面21と重複する領域のように、最適角よりも傾斜角度θが小さい領域では、発光素子2の発光中心波長310nmを含むλ
1(305nm)より長波長光の透過率が低く、発光出力が低下してしまう。とくに、最適角-5°(
図4における入射角25°)よりも小さい傾斜角度θでは発光中心波長310nmの透過率が大きく低下してしまう。
【0051】
そこで、最適角が異なる光干渉フィルタを用意し、傾斜角度を用いて光干渉フィルタを設ける領域を決め、最適角の異なる光干渉フィルタを各領域に設ける。最適角-5°よりも傾斜角度が小さい領域には、その最適角以上の最適角を有する光干渉フィルタを配置しないことによって、λ1以上の波長帯の光の減衰を抑制することができる。
【0052】
以下ではN枚(Nは自然数)の光干渉フィルタを用いる場合を考える。内側に配置する光干渉フィルタから外側に離れる順番に番号を自然数n(n=1~N)で付けるものとし、その番号を付して第n光干渉フィルタと呼称するものとする。第n光干渉フィルタが配置される領域を第n領域Rnとする。第n領域Rnは、nの値が大きいほど外側に存在し、各領域は重ならない。
【0053】
第n光干渉フィルタの最適角をαnとすると、α1<α2<・・・<αNのようにnの値が大きいほど最適角の角度は大きくなるものとする。N=2の場合は、0°≦α1≦20°、20°≦α2≦40°とすることが好ましい。また、N≧3の場合はα1~αNを光半導体装置100の配光角の半値(例えば60°)をNで割った角度による等間隔とすることが好ましいが、等間隔でなくとも良い。例えば、第1光干渉フィルタの最適角をα1=0°とするとき、N=3の場合は、α1=0°、α2=20°、α3=40°とすることが好ましく、N=6の場合は、α1=0°、α2=10°、α3=20°、α4=30°、α5=40°、α6=50°とすることが好ましい。
【0054】
第一領域R1、第二領域R2など第n領域Rnの範囲を決める境界線は、第n光干渉フィルタの最適角αnと傾斜角度θによって規定される。第n領域とは発光素子2の出射面21から放射された光が厚さを有する透明蓋3の下面から上面に抜けるまでの立体的な領域を意味する。以下の説明では、第一領域R1、第二領域R2などの各領域の外周又は内周の位置を出射面21の外周からの傾斜角度θを用いて、外周の位置はθoutとし、内周の位置はθinとして説明する。また、例えば、第一領域R1の外周の位置をθout(R1)、第二領域R2の内周の位置をθin(R2)等と称して説明する。
【0055】
第一領域R1の外周及び第二領域以降の第n領域Rn(n=2~N)の内周θin(Rn)と外周θout(Rn)は、第n光干渉フィルタの最適角αnを用いて以下のように説明でき、n=Nからn=1へ降順にしたがって、θout(Rn)(ただしn=1~N)、θin(Rn)(ただしn=2~N)を順次決めればよい。
・第一領域R1は上下方向視において出射面21の中央部Pと重複する位置を含む。
・第n領域Rnの外周θout(Rn)
αn-5°<θout(Rn)=θin(Rn+1) n=1の場合
αn<θout(Rn)=θin(Rn+1) n=2~N-1の場合
αn<θout(Rn)≦αn+35° n=Nの場合
好ましくはαn<θout(Rn)≦αn+15° n=Nの場合
・nが2~Nのときの第n領域Rnの内周θin(Rn)
αn-5°≦θin(Rn)≦αn ・・・・(式1)
好ましくはαn-1°≦θin(Rn)≦αn
【0056】
第n領域Rnと第n光干渉フィルタとの関係性は以下のとおりである。
・第n光干渉フィルタは第n領域Rnを含むように設ける。
・nが2~Nのとき、第n光干渉フィルタの内周と第n領域の内周とを一致させる。
・nが1~Nのとき、第n光干渉フィルタの外周は第n領域の外周と一致させるか、または超える位置まで延在可能である。
【0057】
第n光干渉フィルタの外周は、最大で透明蓋3の外周とする任意の位置まで延在することができる。
【0058】
例えば、nが奇数と偶数の光干渉フィルタを透明蓋3の同一面上に配置する場合には第n光干渉フィルタの外周は第n+1光干渉フィルタの内周と一致させても良いし、第n+1光干渉フィルタの内周を超えて第n+1領域内にあってもよい。nが奇数と偶数の光干渉フィルタを透明蓋3の異なる面上に配置する場合には第n光干渉フィルタの外周は第n+1領域内にあってよく、第n+2光干渉フィルタの内周と一致させても良いし、更に第n+2光干渉フィルタの内周を超えて第n+2領域内にあってもよい。すなわち、各光干渉フィルタの内周を当該光干渉フィルタが設けられる領域よりも内側にある他の領域に配置させることは許容されない。一方、各光干渉フィルタの外周を当該光干渉フィルタが設けられる領域よりも外側にある他の領域に配置させることは許容される。ただし、
図3や
図4のように光干渉フィルタは光を透過する波長域においても常に100%の透過率を有しているわけではないため、λ
1より長波長域での意図しない出力の減衰は僅かにある。その僅かな出力の減衰も減らす目的では、第n光干渉フィルタの外周はα
n+35°以内とすることが好ましく、α
n+15°以内とすることがより好ましい。上下方向視における第n光干渉フィルタの外周は、上下方向視における第n領域R
nの外周形状に対応させた形状としてよい。
【0059】
(第一実施形態)
以下、N=2の場合であり、第一光干渉フィルタ41と、第二光干渉フィルタ42として、上記の
図3(α
1=0°)と
図4(α
2=30°)の光干渉フィルタをそれぞれ用いた場合について、第一実施形態として説明する。
図1A、
図2に示すように、第一実施形態において第一光干渉フィルタ41と、第二光干渉フィルタ42とが、共に、透明蓋3の上面に設置される。
【0060】
図2において、第二光干渉フィルタ42(α
2=30°)を設ける第二領域R
2の内周θin(R
2)は30°とする。また、第一光干渉フィルタ41(α
1=0°)を設ける第一領域R
1の外周θout(R
1)は、第二領域R
2の内周と一致させる。第二領域R
2の外周θout(R
2)は、N=2で第二領域R
2より外側の領域が無いため特に限定されないが、例えばα
2=30°であることから、30°<θout(R
2)≦30°+35°の範囲から選択でき、例えば60°とすることができる。
【0061】
第一光干渉フィルタ41は、発光素子2の出射面21からの垂直方向の光、すなわち入射角0度の光に対して効率的にλ1以下の光をカットするため、第一領域R
1を含む範囲の領域に必ず配置する。第一領域R
1には、第二光干渉フィルタ42などの第一光干渉フィルタ41以外の配置は許容されない。第一光干渉フィルタ41の外周は、第一領域R
1の外側に隣接する第二領域R
2や更にその外側に延在してよい。
図2では、第一光干渉フィルタ41の外周が出射面21の外周から傾斜角度θ=30°となる位置に位置しており、第二光干渉フィルタ42が第二領域R
2に配置されており、第二光干渉フィルタ42の内周が出射面21の外周から傾斜角度θ=30°となる位置に位置している場合を例示している。第一光干渉フィルタ41に対して大きく傾斜して(例えば、入射角30°)入射するλ1以下の光は、仮に第一光干渉フィルタ41を用いた場合であっても十分にカットできず透過してしまう。そこで、出射面21からの光が大きく傾斜して透明蓋3に入射する領域、すなわち出射面21の外周から傾斜角度θ=30°以上となる領域を第二領域R
2とし、第二領域R
2に最適角30°の第二光干渉フィルタ42を配置することで、効率的にλ
1より短波長側の光をカットしつつ、λ
1より長波長側の光の出力の減衰を抑制し、これにより、λ
1より長波長側の光を効率的に光半導体装置100の外部に放射可能とするのである。なお、最適角30°の第二光干渉フィルタ42を、透明蓋3への傾斜角度θが最適角30°より明らかに小さくなる位置(例えば最適角α
2より5°を超えて小さい25°未満となる傾斜角度θの範囲)に配置すると、減衰させたくないλ
1より長波長側の出力が大きく減衰してしまうため好ましくない。
【0062】
このように、第一光干渉フィルタ41を透明蓋3に対して垂直に近い角度で入射する垂直光用の光干渉フィルタとして用い、第一光干渉フィルタ41とは別に、第二光干渉フィルタ42を、透明蓋3に対して垂直から傾斜した角度で入射する斜光用の光干渉フィルタとして用いる。すなわち、最適角と同等以上(少なくとも最適角-5°以上)の傾斜角度θの領域には、その最適角を有する光干渉フィルタを配置する。これにより、λ1より長波長側の光を効率的に光半導体装置100の外部に取り出しつつ、λ1より短波長側の光を適切にカットすることができるのである。
【0063】
(第一実施形態の変形例1)
上記第一実施形態では、光干渉フィルタが共に透明蓋3の上面に設置されている場合を
図2の通り図示して説明したが、
図5の断面図(
図2と同様の断面を示す)に示すように、光干渉フィルタが透明蓋3の下面に配置されてもよい。第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42とが透明蓋3の下面に配置されてもよいし、一方が透明蓋3の下面に配置され、他方が透明蓋3の上面に配置されてもよい。
【0064】
図5では、第一光干渉フィルタ41が透明蓋3の下面に配置され、第二光干渉フィルタ42が透明蓋3の上面に配置されている場合の変形例を示している。このように第一光干渉フィルタ41が透明蓋3の下面に配置されるようにすることで、第一光干渉フィルタ41を発光素子2に近い側に配置して、第一光干渉フィルタ41に対して垂直に近い入射角の光を効率よくフィルタすること出来る。また、透明蓋3に入射したあとの光路を考慮しないで済むため光干渉フィルタの配置位置の設計が容易になる。
【0065】
また、最適角が異なる光干渉フィルタ(変形例1では、第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42)を透明蓋3における同じ面に形成する場合よりも、それぞれの光干渉フィルタが担う傾斜角度θの範囲を広くして、特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を適切に抑制することができる。また、それぞれの光干渉フィルタの透明蓋3への取り付けが容易となり、光半導体装置100の製造が容易になる。
【0066】
図5では、第一実施形態と同様に第二光干渉フィルタ42の最適角α
2は30°とし、第二領域の内周はθin(R
2)=30°である場合を示している。第二光干渉フィルタ42の内周は上記の第二領域R
2の内周と一致している。そして、第一光干渉フィルタ41の外周が第二領域R
2へ延在しており、第一光干渉フィルタ41の外周が出射面21の外周からθ=35°となる位置に位置している場合を例示している。
【0067】
図5では、傾斜角度θ=30°以上θ=35°以下の範囲において、第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42とが重なっている。すなわち、第一光干渉フィルタ41の外周は、傾斜角度θの方向視において第二光干渉フィルタ42の範囲内にある場合を示している。このように所定の傾斜角度θの方向視において光干渉フィルタ同士を重複させることで、光干渉フィルタ形成時における光干渉フィルタの配置位置の誤差の許容範囲幅を拡大しつつ、出射面21から放射される光に対する第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42との隙間をなくし、特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ
1より短波長側の光をカットする性能の低下を回避することができる。なお、本実施形態における第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42の最適角及び配置位置の関係により、最適角が小さい光干渉フィルタ(第一光干渉フィルタ41)を透過したλ
1より長波長側の光が最適角の大きい光干渉フィルタ(第二光干渉フィルタ42)を透過する際に大きくカットされることはない。
【0068】
(第二実施形態)
第二実施形態では、
図6に示すように、光半導体装置100が、光干渉フィルタとして、更に第三光干渉フィルタ43を含む点で異なり、その他は第一実施形態の変形例1と同様である。以下では、N=3の場合における最適角の選択など、主に第一実施形態の変形例1との相違点について説明する。
【0069】
本実施形態において、第三光干渉フィルタ43は、入射角0度で透過率50%となる波長λ3は、λ2<λ3とされる。第三光干渉フィルタ43の最適角α3の好ましい範囲は、光干渉フィルタとして第一光干渉フィルタ41、第二光干渉フィルタ42、及び第三光干渉フィルタ43の三種を用いる場合は、40°≦α3≦60°である。
【0070】
光干渉フィルタとして第一光干渉フィルタ41、第二光干渉フィルタ42、及び第三光干渉フィルタ43の三種を用いる場合、第二光干渉フィルタ42の最適角α2は、第一実施形態のごとく光干渉フィルタとして第一光干渉フィルタ41と第二光干渉フィルタ42との二種のみの場合に比べて、小さく設定することが好ましい。また、最適角α1、最適角α2及び最適角α3の間隔が概ね等間隔となるように設定されるとよい。本実施形態において、最適角α1、α2、α3は一例として0°、20°、40°としてよい。
【0071】
第三領域R3は、第三光干渉フィルタ43が必ず配置される領域である。すなわち、第三光干渉フィルタ43が配置される領域は、透明蓋3の上面と重複する第三領域R3を包含する。第三領域R3の外周はα3<θout(R3)≦α3+35°とする範囲が好ましく、内周はα3-5°<θin(R3)≦α3とすることができ、最適角α3が40°である第三光干渉フィルタ43を用いる場合における、第三領域R3の汎用的な範囲として、θが40°以上65°以下の範囲を例示できる。本実施形態では、例えば、外周θout(R3)は60°、内周θin(R3)は40°である。第三領域R3はその内側に位置する第二領域R2を囲う環状の領域である。
【0072】
第二領域R2の外周は、第三領域R3の内周と一致し、θout(R2)=θin(R3)である。第二領域R2の内周は、第三領域R3の内周と同様に、α2-5°<θin(R2)≦α2とすることができる。本実施形態では、例えば、内周θin(R2)は20°、外周θout(R2)は40°である。第二領域R2はその内側に位置する第一領域R1を囲う環状の領域である。
【0073】
第一領域R1の外周は第二領域R2の内周と一致し、θout(R1)=θin(R2)である。本実施形態では、例えば、外周θout(R1)は20°である。
【0074】
第一光干渉フィルタ41は、第一領域R
1を包含するように配置する。第一光干渉フィルタ41の外周は、第一領域R
1の外周を超えて、その外側に位置する第二領域R
2や更にその外側に位置する第三領域R
3へ延在させても良い。
図6では、一例として傾斜角度θ=35°となる位置に位置しており、第一光干渉フィルタ41の外周は第二領域内にあり、第一光干渉フィルタ41は第一領域R
1から第二領域R
2にかけて延在している場合を例示している。
【0075】
第二光干渉フィルタ42は、第二領域R
2を包含するように配置する。第二光干渉フィルタ42の内周と第二領域R
2の内周とは位置を一致させ、第二光干渉フィルタ42の第一領域R
1への配置は許容しない。一方、第二光干渉フィルタ42の外周は、第二領域R
2の外周を超えて、その外側に位置する第三領域R
3へ延在させても良い。
図6では、第二光干渉フィルタ42の内周は、第二領域R
2と第一領域R
1との境界に位置し、第二光干渉フィルタ42の外周は、第二領域R
2から第三領域R
3にかけて延在している場合を例示している。
【0076】
第三光干渉フィルタ43は、第三領域R3を包含するように配置する。第三光干渉フィルタ43の内周と第三領域R3の内周とは位置を一致させ、第三光干渉フィルタ43の第二領域R2への配置は許容しない。一方、第三領域R3には、第一光干渉フィルタ41及び/又は第二光干渉フィルタ42の配置が許容される。
【0077】
図6では、本実施形態の一例として、第三領域R
3の内周の位置及び第二領域R
2の外周がθin(R
3)=θout(R
2)=40°、第二領域R
2の内周の位置及び第一領域R
1の外周がθin(R
2)=θout(R
1)=20°、第一光干渉フィルタ41は透明蓋3の下面に設けられ、その外周がθ=35°まで延在し、第二光干渉フィルタ42及び第三光干渉フィルタ43は透明蓋3の上面に設けられ、第二光干渉フィルタ42の外周がθ=45°まで、第三光干渉フィルタ43の外周が透明蓋3の外周まで、それぞれ延在している場合を示している。
【0078】
上下方向視において、第三領域R
3などの第二領域R
2よりも外側の領域の形状は、上述する
図1Bや
図1Cにて例示される第二領域R
2の形状と相似することが好ましい。第三光干渉フィルタ43は、第三領域R
3の形状に対応させた形状としてよい。
【0079】
図6では、第三光干渉フィルタ43の内周部である内側の端部は、第二光干渉フィルタ42の外周である外側の端部と上下方向において重複しており、第二光干渉フィルタ42の上面側に配置されている。このようにすることで、光干渉フィルタの成膜やパターン形成が行いやすくなり製造しやすくなるため好ましい。
【0080】
本実施形態のごとく、最適角の異なる三種以上(本実施形態では三種)の光干渉フィルタを、出射面21の中央部と重複する領域から外側にかけて、最適角が小さい光干渉フィルタから最適角が大きい光干渉フィルタの順に配置することで、λ1より短波長側の光を更に良くカットしつつ、λ1より長波長側の光の出力の減衰を適切に抑制し、これにより、λ1より長波長側の光をより効率的に光半導体装置100の外部に放射可能とすることができるのである。
【0081】
(第二実施形態の変形例)
図7には、上記第二実施形態に対して第一領域R
1の範囲、第三光干渉フィルタ43の透明蓋3における配置及び第二光干渉フィルタ42の設置範囲などの変形例を示している。
【0082】
本変形例では、第一光干渉フィルタ41は、最適角α1が0°、第二光干渉フィルタ42は、最適角α2が20°、第三光干渉フィルタ43は、最適角α3が40°である。
【0083】
第三領域R3の内周及び第二領域R2の外周はθ=40°であり、第二領域R2の内周及び第一領域R1の外周はθ=20°である。
【0084】
第一光干渉フィルタ41は第一領域R1を含むように透明蓋3の下面に配置され、第一光干渉フィルタ41の外周は、θ=35°となる位置に位置している。
【0085】
第二光干渉フィルタ42は第二領域R2を含むように透明蓋3の上面に配置され、第二光干渉フィルタ42の内周は第二領域R2の内周と一致しており、θ=20°となる位置に位置している。第二光干渉フィルタ42の外周はθ=55°となる位置まで延在している。
【0086】
第三光干渉フィルタ43は第三領域R3を含むように透明蓋3の下面に配置され、第三光干渉フィルタ43の内周は第三領域R3の内周と一致しており、θ=40°となる位置に位置している。第三光干渉フィルタ43の外周は、θ=60°を超える位置に位置し、閉鎖空間Sに面する透明蓋3の外周ギリギリまで延在している。
【0087】
光干渉フィルタへの光の入射角がその光干渉フィルタの最適角よりも大きい場合、λ1より長い波長がカットされる恐れが無い。このため、λ1より長い波長の光の出力を維持する観点では、光干渉フィルタを配置する範囲は、本変形例のごとく、そのフィルタの最適角以上となる傾斜角度の範囲であれば制限されない。
【0088】
また、本変形例では、傾斜角度40°≦θ≦55°の範囲において、第三光干渉フィルタ43を透過した光が第二光干渉フィルタ42に入射することになる。このように、最適角が大きい光干渉フィルタを透明蓋3の下面に設け、最適角が小さい光干渉フィルタを、その最適角を大きく超えた傾斜角度の範囲まで透明蓋3の上面に設けた場合、最適角が大きい光干渉フィルタを透過した光が最適角が小さい光干渉フィルタへ入射することになる。その最適角を大きく超えた傾斜角度の範囲に設けた光干渉フィルタに対しては、最適角よりも大きな角度で光が入射するため、λ1より長い波長の光がカットされる恐れが無い。したがって、最適角の大きい光干渉フィルタ(第三光干渉フィルタ43)を透過したλ1より長波長側の光が、最適角が小さい光干渉フィルタ(第二光干渉フィルタ42)を透過する際に大きくカットされることはない。
【0089】
(第三実施形態)
図8には、第二実施形態の変形例から更に、最適角の異なる六種の光干渉フィルタを配置した場合を例示している。この場合、入射角0度で透過率50%となる波長であるλ
1からλ
6は、λ
1<λ
2<λ
3<λ
4<λ
5<λ
6とされる。第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46の最適角α
1からα
6は、α
1<α
2<α
3<α
4<α
5<α
6とされる。第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46の最適角α
1からα
6の値の一例は、この順に、0°、10°、20°、30°、40°、50°である。
【0090】
第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46が配置される第一領域R1~第六領域R6についても第二実施形態で説明した第一領域R1~第三領域R3の関係と同様に定められる。第一領域R1から第六領域R6はそれぞれ重複しない領域であり、第一領域R1から外側に向けて、隣接してこの順に配置されている。第一領域R1から第六領域R6には、第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46がそれぞれ必ず配置される。第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46が配置される領域は、透明蓋3の表面と重複する第一領域R1から第六領域R6をそれぞれ包含する。第二領域R2から第六領域R6の内周と、第二光干渉フィルタ42から第六光干渉フィルタ46の内周は一致する。一例として、第二領域R2から第六領域R6の内周の位置θinは、それぞれ、最適角α2からα6の値である10°、20°、30°、40°、50°と一致する。そして、第一、第三、第五光干渉フィルタは透明蓋3の下面に配置され、第二、第四、第六光干渉フィルタは透明蓋3の上面に配置されている。そして、第一から第五光干渉フィルタの外周は、それぞれ第二領域R2から第六領域R6の範囲内に位置している。
【0091】
(実施例)
以下では、比較例と対比しつつ、本実施形態に係る実施例を説明する。
【0092】
(実施例1)
図7に例示したような、三つの光干渉フィルタを備えた光半導体装置100を、以下のように構成し、実施例1に係る光半導体装置とした。以下の説明において、寸法に関する記載は、
図7に示す断面における値である。
【0093】
透明蓋3は、平板状の石英ガラス製とし、板の厚みは0.5mmとした。発光素子2には厚み0.44mmの紫外LEDチップ(1mm×1mm)を採用し、出射面21からから透明蓋3の下面までの距離は0.135mmとした。発光素子2の発光中心波長は310nmである。パッケージ基板1はAINセラミックス製とし、発光素子2の側面からパッケージ基板1の凹部における内側側面までの距離は0.65mmとした。透明蓋3とパッケージ基板1との接着層9の幅は、0.6mmとした。
【0094】
カットしたい波長域の最大波長は300nmと定め、特定波長としてのλ1は305nmとした。
【0095】
第一光干渉フィルタ41は、最適角α1は0°とし、厚み1.977μm(40ペア)とした。第一光干渉フィルタ41は、その外周がθ=30°の位置、すなわち、上面視において、出射面21の外周から外側に、0.078mm離れる位置の範囲にわたる領域に配置した。
【0096】
第二光干渉フィルタ42は、最適角α2は20°とし、厚み1.623μm(40ペア)とした。第二光干渉フィルタ42は、その外周が20°≦θ≦55°の範囲、すなわち、上面視において、出射面21の外周から外側に、0.349mm以上1.237mm以下の範囲にわたる領域に配置した。
【0097】
第三光干渉フィルタ43は、最適角α3は40°とし、厚み2.098μm(41ペア)とした。第三光干渉フィルタ43は、出射面21の外周から40°≦θの範囲、すなわち、上面視において、出射面21の外周から外側に、0.113mm以上0.65mm以下の範囲にわたる領域に配置した。
【0098】
第一光干渉フィルタ41、第二光干渉フィルタ42及び第三光干渉フィルタ43の各層の屈折率及び膜厚のデータを表1に示す。SiO2膜(屈折率:1.46)、TiO2膜(屈折率:2.26)はスパッタリング法によって各膜厚となるように成膜し、フォトリソグラフィ及びリフトオフ法を用いて所定範囲に形成した。
【0099】
【0100】
実施例1に係る光半導体装置の発光スペクトルと配光分布特性とを測定した。
【0101】
発光スペクトルは、積分球を用いて全光束の測定とし、分光器を用いて行なった。配光分布特性は、以下のようにして計測することができる。
図9には、本実施形態に係る光半導体装置100の配光分布特性の測定方法の説明図を示している。光半導体装置100から100mm離れた位置に、ファイバープローブAを配置して、そのファイバープローブAの先端の位置の観測角度を変えることによって、光半導体装置100から放射される光の観測角度依存性としての配光分布特性を測定することができる。ファイバープローブAの受光直径は例えば3.9mmとすることができ、ファイバープローブAの他端を分光器(例えばオーシャンオプティクス製QE65 Pro)に繋いで、発光スペクトルを測定することができる。本実施例では、光半導体装置100を固定し、ファイバープローブAを-60°から60°まで5°毎に回転させて、配光分布特性を測定した。配光分布特性の測定は、200nm以上400nm以下の波長を対象とし、得られたデータから200nm~305nmの値を抽出した。
【0102】
実施例1に係る光半導体装置の発光スペクトルを
図10に、配光分布特性を
図11に示す。
図10では、実施例1に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した発光スペクトルを併せて示している。同様に、
図11には、実施例1に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した配光分布特性を示している。
【0103】
(実施例2)
実施例2に係る光半導体装置は、実施例1と光干渉フィルタの種類の数と配置を変更し、その他は同じとした。実施例2に係る光半導体装置は、
図8に示す光半導体装置100に倣って最適角の異なる六種の光干渉フィルタを備えるように構成した。第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46の最適角は、この順に、0°、10°、20°、30°、40°、50°とした。第一光干渉フィルタ41は、θ≦15°となる範囲にわたり配置し、第二光干渉フィルタ42から第六光干渉フィルタ46は、それぞれこの順に、10°≦θ≦25°、20°≦θ≦35°、30°≦θ≦45°、40°≦θ≦55°、50°≦θの範囲に配置した。第一光干渉フィルタ41から第六光干渉フィルタ46の厚み及びペア数はそれぞれ、1.977μm(40ペア)、1.526μm(40ペア)、1.623μm(40ペア)、1.668μm(40ペア)、2.098μm(41ペア)、2.130μm(41ペア)である。なお、実施例2における第一光干渉フィルタ41、第三光干渉フィルタ43、第五光干渉フィルタ45は、実施例1における第一光干渉フィルタ41、第二光干渉フィルタ42、第三光干渉フィルタ43と同じである。
【0104】
実施例2における第二光干渉フィルタ42、第四光干渉フィルタ44及び第六光干渉フィルタ46のペア各層の屈折率及び膜厚のデータを表2に示す。SiO2膜(屈折率:1.46)、TiO2膜(屈折率:2.26)はスパッタリング法によって各膜厚となるように成膜し、フォトリソグラフィ及びリフトオフ法を用いて所定範囲に形成した。
【0105】
【0106】
実施例2に係る光半導体装置の発光スペクトルを
図12に、配光分布特性を
図13に示す。
図12では、実施例2に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した発光スペクトルを併せて示している。同様に、
図13には、実施例2に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した配光分布特性を併せて示している。
【0107】
(比較例)
比較例に係る光半導体装置は、実施例と異なり光干渉フィルタを一種のみ用い、その他は同じとした。比較例に係る光半導体装置は、
図7に示す光半導体装置100から第二光干渉フィルタ42及び第三光干渉フィルタ43を除去し、第一光干渉フィルタ41と同じく所定の最適角の光干渉フィルタを透明蓋3の下面の全面に配置して構成した。
【0108】
光干渉フィルタは、最適角は0°(実施例2の第一光干渉フィルタ41と同じ)又は30°(実施例2の第四光干渉フィルタ44と同じ)とした。以下、最適角が0°の光干渉フィルタを用いた光半導体装置を比較例1、最適角が30°の光干渉フィルタを用いた光半導体装置を比較例2と称する。
【0109】
比較例1と比較例2とに係る光半導体装置の発光スペクトルそれぞれを
図14と
図16とに、配光分布特性をそれぞれ
図15と
図17とに示す。
図14と
図16とでは、実施例1に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した発光スペクトルを併せて示している。同様に、
図15と
図17には、実施例1に係る光半導体装置から全ての光干渉フィルタを除去した状態で計測した配光分布特性を併せて示している。
【0110】
図10から
図17に示す結果より、実施例及び比較例について、以下のように考えられる。
【0111】
光干渉フィルタを備えていない場合及び比較例に比べて、実施例1、2は、特定波長としてのλ1(305nm)以下の出力が低下しており、300nm以下の発光出力がゼロに近いことが分かる。これに対し、発光ピーク波長(310nm)付近の発光出力は維持できている。すなわち、特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ1より短波長側の光をカットしている。
【0112】
図10、12、14及び16に示されるように、光干渉フィルタを備えていない場合及び比較例に比べて、実施例1、2は、特定波長としてのλ
1(305nm)以下の出力が低下しており、300nm以下の発光出力がゼロに近いことが分かる。これに対し、発光ピーク波長(310nm)付近の発光出力は維持できている。すなわち、特定波長としてのλ
1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ
1より短波長側の光をカットしている。
【0113】
実施例1、2の第一光干渉フィルタと同特性で配置範囲の異なる光干渉フィルタを採用した比較例1(
図15参照)との比較でみると、実施例1、2(
図11、
図13参照)では配光角[°]の絶対値が大きい位置でも短波長側の光をカットすることができており、305nm以下の波長のカット率が大きい。
【0114】
従って、最適角が順次異なる2種以上の光干渉フィルタを採用することで、特定波長としてのλ1より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながらλ1より短波長側の光をより効果的にカットすることができる光半導体装置を提供することができることがわかる。
【0115】
実施例1、2間の比較では、三種の各光干渉フィルタの最適角を20°ずつ大きくした実施例1(
図11参照)に比べて、六種の各光干渉フィルタの最適角を10°ずつ大きくした実施例2(
図13参照)の方が、305nm以下の波長のカット率効果が大きい。
【0116】
従って、採用する光干渉フィルタの種類を増やして、それぞれの光干渉フィルタに入射する光の入射角(角度θ)に合わせてこれら光干渉フィルタを配置することで、波長λ1(305nm)以下の波長のカット効果を大きくすることができる。特定波長より長波長側の光の出力の減衰を抑制しながら特定波長より短波長側の光を良くカットすることができる。
【0117】
なお、比較例2は、実施例1,2と比べて、最適角の大きすぎる光干渉フィルタが上下方向視において発光素子と重複させて配置されているため、
図16に示すように、光干渉フィルタを備えていない場合に比べて特定波長としてのλ
1(305nm)以下の出力の低下は行えているが、同時に305nm以上の発光強度も60%以下まで低下している。これは、比較例2で用いた最適角が30°の光干渉フィルタの透過スペクトルが
図4に示すように、光が光干渉フィルタへ30°未満の角度で入射した場合、特定波長としてのλ
1より長い波長帯の光がカットされる特性を有しており、実施例1,2と比べて、最適角の大きすぎる光干渉フィルタが上下方向視において発光素子と重複させて配置されているためである。すなわち、特定波長としてのλ
1より長波長側の光出力の減衰を抑制できていない。比較例2は、
図17に示すように、配光角(入射角)が0°から45°程度までは305nm以下の波長の光をカットする効果を奏するものの、
図16に示すように特定波長としてのλ
1より長波長側の光の出力を大きく減衰してしまうため実用的でない。
【0118】
以上のようにして、光半導体装置を提供することができる。
【0119】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、光半導体装置に適用できる。
【符号の説明】
【0121】
1 :パッケージ基板
100 :光半導体装置
11 :底面
13 :筒部
2 :発光素子
21 :出射面
3 :透明蓋
41 :第一光干渉フィルタ
42 :第二光干渉フィルタ
43 :第三光干渉フィルタ
44 :第四光干渉フィルタ
45 :第五光干渉フィルタ
46 :第六光干渉フィルタ
9 :接着層
A :ファイバープローブ
P :中央部
R1 :第一領域
R2 :第二領域
R3 :第三領域
R4 :第四領域
R5 :第五領域
R6 :第六領域
S :閉鎖空間