(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149256
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】RFIC素子付き包装容器用のブランク板、包装容器、RFIC素子付き包装容器用のブランク板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20231005BHJP
B65D 5/42 20060101ALI20231005BHJP
B31B 50/81 20170101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D25/20 P
B65D5/42 Z
B31B50/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057733
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】國弘 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】近 禅
(72)【発明者】
【氏名】篠原 貴之
【テーマコード(参考)】
3E060
3E062
3E075
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB05
3E060BA08
3E062AA01
3E062BA07
3E062BB06
3E062BB09
3E062DA08
3E075AA12
3E075BA04
3E075BB08
3E075CA01
3E075DB16
3E075DD02
3E075DD45
3E075DE01
3E075GA05
(57)【要約】
【課題】本開示では、RFIC素子が外部から視認しにくく包装容器に備えられるので、外部の美粧デザインを損なわれず、かつ内容物とRFIC素子が干渉せず、RFIC素子が損傷しにくいRFIC素子付き包装容器用のブランク板を提供する。
【解決手段】本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、前記包装容器1の胴部が筒状に貼り合わされる胴貼り部111を備え、前記胴貼り部111にはRFIC素子150とアンテナ導電部123とを備え、前記胴貼り部111には素子収納凹部112が設けられており、前記RFIC素子150は、前記素子収納凹部112に収められている。前記アンテナ導電部123は、互いに電気的に分離された第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bを備え、前記素子収納凹部112の内部にRFIC素子150が配置される。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のブランク板が立体的に組み上げられる包装容器用のRFIC素子付きブランク板において、
前記包装容器の胴部が筒状に貼り合わされる胴貼り部を備え、
前記胴貼り部にはRFIC素子とアンテナ導電部とを備え、
前記胴貼り部には素子収納凹部が設けられており、
前記RFIC素子は、前記素子収納凹部に収められており、
前記アンテナ導電部は、互いに電気的に分離された第一アンテナ導電部及び第二アンテナ導電部を備え、
前記第一アンテナ導電部と前記第二アンテナ導電部とが接近して配置されている位置に、前記第一アンテナ導電部と前記第二アンテナ導電部とが直接或いは容量的に結合されるRFIC素子が配置される包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項2】
表面側から見て、前記素子収納凹部に存在する一対の底面部の縁辺の幅W1が、RFIC素子の底面部の幅W2より0.5mm以上3mm以下の範囲で大きい請求項1に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項3】
前記素子収納凹部の深さD1が、前記RFIC素子の高さD2と比較して、下限が高さD2より0.1mm小さい値で、上限が高さD2より1mm大きい値である請求項1または2に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項4】
前記アンテナ導電部が、前記胴貼り部と、前記胴貼り部の隣接するパネルとを跨ぐように設けられる請求項1から3までのいずれか一項に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項5】
前記アンテナ導電部の厚さが15nm以上100nm以下である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項6】
前記RFIC素子は、インピーダンス整合回路を含むRFIC素子である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項7】
前記アンテナ導電部の領域において、
前記ブランク板の層構成は、少なくとも、
基材層と、
前記基材層の一方の面に積層された接着層と、
前記アンテナ導電部とが、
この順番で積層されている請求項1から6のいずれか一項に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板が組み立てられた包装容器。
【請求項9】
請求項7に記載の包装容器用のRFIC素子付きブランク板の製造方法であって、
前記基材層に前記接着層を印刷する接着層印刷工程と、
剥離シートに剥離層を介して積層された前記アンテナ導電部を、前記接着層に積層するアンテナ導電部積層工程と、
前記接着層を硬化又は乾燥させる工程と、
前記剥離シートを剥離する剥離工程と、
上記の各工程にて作製された積層シートを、所定の形状に打ち抜く打ち抜き工程と、
前記打ち抜き工程にて作製されたブランク板に、素子収納凹部を設ける工程と、
前記素子収納凹部に、RFIC素子を配置する工程とを、備える包装容器用のRFIC素子付きブランク板の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の包装容器用のブランク板の製造方法であって、
剥離シートに剥離層を介して積層された前記アンテナ導電部と前記接着層を、前記基材層に積層するアンテナ導電部積層工程と、
前記剥離シートを剥離する剥離工程と、
上記の各工程にて作製された積層シートを、所定の形状に打ち抜く打ち抜き工程と、
前記打ち抜き工程にて作製されたブランク板に、素子収納凹部を設ける工程と、
前記素子収納凹部に、RFIC素子を配置する工程とを、備える包装容器用のRFIC素子付きブランク板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIC素子付き包装容器用のブランク板、包装容器、RFIC素子付き包装容器用のブランク板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を用いた非接触の近距離通信として、RFID(radio frequency identifier)技術を利用したICタグが用いられている。例えば、種々の物品や物品の包装容器にICタグが貼付された状態で、当該物品が輸送や販売等の流通に供される。この場合、必要に応じて当該物品を外部機器(リーダライタ)にかざすことにより、ICタグのRFIC素子に記録された物品情報を非接触通信により読み出すことや、当該RFIC素子に種々の情報を書き込むことができる。これにより、効率的な物流管理が可能となる。
【0003】
従来、包装容器においてRFID技術を利用する場合には、先に述べたように包装容器にICタグを貼付していた。
また、製造コストの低減を目的として、RFIC素子及びアンテナパターンをパッケージ用板紙に直接設ける形態が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているように、RFIC素子をパッケージに貼付する場合、パッケージのパネルに貼付しており、外部から視認しやすい位置にRFIC素子が存在しており、美粧デザインの支障となることがあった。あるいは、パッケージの内面にRFIC素子を設ける場合は、内容物をパッケージに挿入する際に、内容物とRFIC素子が干渉して、RFIC素子が損傷する惧れがあった。
【0006】
本開示では、RFIC素子が、外部から視認しにくい手段にて、包装容器に備えられるので、外部の美粧デザインを損なわない、RFIC素子付き包装容器用のブランク板、包装容器を提供する。また、内面にもRFIC素子が突出しないので、内容物とRFIC素子が干渉しないので、RFIC素子が損傷しにくいRFIC素子付き包装容器用のブランク板、包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、下記に示す解決手段により、前記課題を解決することができる。
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
少なくとも1枚のブランク板100が立体的に組み上げられる包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170において、
前記包装容器1の胴部が筒状に貼り合わされる胴貼り部111を備え、
前記胴貼り部111にはRFIC素子150とアンテナ導電部123とを備え、
前記胴貼り部111には素子収納凹部112が設けられており、
前記RFIC素子150は、前記素子収納凹部112に収められており、
前記アンテナ導電部123は、互いに電気的に分離された第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bを備え、
前記第一アンテナ導電部123aと前記第二アンテナ導電部123bとが接近して配置されている位置に、前記第一アンテナ導電部123aと前記第二アンテナ導電部123bとが直接或いは容量的に結合されるRFIC素子150が配置される。
【0008】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
表面側から見て、前記素子収納凹部112に存在する一対の底面部の縁辺112aの幅W1が、RFIC素子150の底面部の幅W2より0.5mm以上3mm以下の範囲で大きくてもよい。
【0009】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
前記素子収納凹部112の深さD1が、前記RFIC素子150の高さD2と比較して、下限が高さD2より0.1mm小さい値で、上限が高さD2より1mm大きい値であってもよい。
【0010】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
前記アンテナ導電部123が、前記胴貼り部111と、前記胴貼り部111の隣接するパネルとを跨ぐように設けられてもよい。
【0011】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
前記アンテナ導電部123の厚さが15nm以上100nm以下であってもよい。
【0012】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
前記RFIC素子150は、インピーダンス整合回路を含むRFIC素子150であってもよい。
【0013】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170は、
前記アンテナ導電部123の領域において、
前記ブランク板100の層構成は、少なくとも、
基材層121と、
前記基材層121の一方の面に積層された接着層122と、
前記アンテナ導電部123とが、
この順番で積層されていてもよい。
【0014】
本開示の包装容器1は、
上記のいずれかに開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170が組み立てられてもよい。
【0015】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170の製造方法は、
前記基材層121に前記接着層122を印刷する接着層印刷工程と、
剥離シート131に剥離層124を介して積層された前記アンテナ導電部123を、前記接着層122に積層するアンテナ導電部積層工程と、
前記接着層122を硬化又は乾燥させる工程と、
前記剥離シート131を剥離する剥離工程と、
上記の各工程にて作製された積層シートを、所定の形状に打ち抜く打ち抜き工程と、 前記打ち抜き工程にて作製されたブランク板100に、素子収納凹部112を設ける工程と、
前記素子収納凹部112に、RFIC素子150を配置する工程とを、備えていてもよい。
【0016】
本開示の包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170の製造方法は、
剥離シート131に剥離層124を介して積層された前記アンテナ導電部123と前記接着層122を、前記基材層121に積層するアンテナ導電部積層工程と、
前記剥離シート131を剥離する剥離工程と、
上記の各工程にて作製された積層シートを、所定の形状に打ち抜く打ち抜き工程と、 前記打ち抜き工程にて作製されたブランク板100に、素子収納凹部112を設ける工程と、
前記素子収納凹部112に、RFIC素子150を配置する工程とを、備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記の本開示により、RFIC素子150が外部から視認されにくい手段にて、包装容器1に備えられるので、包装容器1の外側の美粧デザインが損なわれない、包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170、包装容器1を提供できる。また、包装容器1の内面にはRFIC素子150が露出しないので、内容物とRFIC素子150が干渉しない。そのため、RFIC素子150が損傷しにくい包装容器1用のRFIC素子付きブランク板170、包装容器1を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態の包装容器1を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態の包装容器1を組み立てるためのRFIC素子付きブランク板170である。
【
図3B】
図3Aに記載の断面位置B-Bで切断した断面図である。
【
図4】第一実施形態の包装容器1を組み立てるためのブランク板100である。
【
図6】素子収納凹部112が加工された凹部加工ブランク板160の素子収納凹部112近傍の拡大図である。
【
図7A】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7B】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7C】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7D】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7E】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7F】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【
図7G】ブランク板100の積層シートの製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面等を参照して説明する。
【0020】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態の包装容器1を示す斜視図である。
図2は、第一実施形態の包装容器1を組み立てるためのRFIC素子付きブランク板170の展開図である。
図2は、直サック形状の一例であるが、他にも逆サック,シールエンド,オートボトム,ロックボトム形状等でもよい。
図2の展開図は、包装容器1の表面側を見た状態で示している。なお、
図2等の展開図において山折りされる折線は、一点鎖線で示した。また、「山折り」とは、
図2の展開図のように表面側から見た折り方の向きであるものとする。
RFIC素子150が備わらず、かつ後述する素子収納凹部112が加工されていないブランク板100を、
図4に示す。
【0021】
また、以下の説明中において、
図1に記載された矢印で示した前後、左右、上下の向きを用いて説明を行うが、包装容器1の使用時における向きをこの向きに限定するものではない。
図1及び
図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0022】
包装容器1は、各種商品等を収容して店頭等に陳列等されて販売される外箱として用いることができ、後述するRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)素子150が直接実装されて、RFIDデバイスとしての機能も備えている。
図2に示すように、包装容器1は、1枚のシート状のRFIC素子付きブランク板170により構成されている。ブランク板100の層構成については後述する。
包装容器1は、正面パネル101と、背面パネル103と、上面パネル105aと、下面パネル106aと、左側面パネル104と、右側面パネル102とを備えた略直方体形状の箱形状に構成されている。この箱の内部が商品等を収納する収納部となる。
【0023】
正面パネル101は、包装容器1の前側に設けられている。
正面パネル101の右辺には、山折りされる折線L1を介して右側面パネル102が連設されている。
なお、以下の説明において、「連設」とは、
図2に示すRFIC素子付きブランク板170、または
図4に示すブランク板100のように、折線を介して各部が繋がって配置されていることを示している。
ブランク板100の形状の説明に使用される前後左右は、
図1に記載された方向指示の目安に基づく。そのため、
図4に記載の左側面パネル104では、右と左の呼称が逆となっている。
正面パネル101の左辺には、山折りされる折線L2を介して左側面パネル104が連設されている。
正面パネル101の上辺には、山折りされる折線L11を介して上蓋部105が連設されている。
正面パネル101の下辺には、山折りされる折線L12を介して下蓋部106が連接されている。
【0024】
右側面パネル102の上辺には、山折りされる折線L13を介して右上フラップ部107が連設されている。右上フラップ部107は、上蓋部105が閉じられる際に上面パネル105aとともに閉じられ、上蓋部105の内側へ折り込まれる。
右側面パネル102の下辺には、山折りされる折線L14を介して右下フラップ部108が連設されている。右下フラップ部108は、下蓋部106が閉じられる際に下面パネル106aとともに閉じられ、下蓋部106の内側へ折り込まれる。
右側面パネル102の内面には、後述の胴貼り部111の外面が糊付けされる。
【0025】
左側面パネル104の前辺には、山折りされる折線L2を介して正面パネル101が連設されている。
左側面パネル104の上辺には、山折りされる折線L15を介して左上フラップ部109が連設されている。左上フラップ部109は、開口部を開閉可能に塞ぐ上蓋部105が閉じられる際に上面パネル105aとともに閉じられ、上蓋部105の内側へ折り込まれる。
左側面パネル104の下辺には、山折りされる折線L16を介して左下フラップ部110が連設されている。左下フラップ部110は、開口部を開閉可能に塞ぐ下蓋部106が閉じられる際に下面パネル106aとともに閉じられ、下蓋部106の内側へ折り込まれる。
左側面パネル104の後辺には、山折りされる折線L3を介して背面パネル103が連設されている。
【0026】
背面パネル103の左辺には、山折りされる折線L3を介して左側面パネル104が連設されている。
背面パネル103の右辺には、山折りされる折線L4を介して胴貼り部111が連設されている。
【0027】
上蓋部105は、上面パネル105aと、上差込片105bとを備えている。
上面パネル105aは、山折りされる折線L11を介して正面パネル101と連設されており、上差込片105bは、山折りされる折線L17を介して上面パネル105aと連接されている。上差込片105bが包装容器1の内側へ差し込まれることにより、上面パネル105aが包装容器1の上側の開口部を閉じる。
【0028】
下蓋部106は、下面パネル106aと、下差込片106bとを備えている。
下面パネル106aは、山折りされる折線L12を介して背面パネル103と連設されており、下差込片106bは、山折りされる折線L18を介して下面パネル106aと連接されている。下差込片106bが包装容器1の内側へ差し込まれることにより、下面パネル106aが包装容器1の下側の開口部を閉じる。
【0029】
胴貼り部111は、山折りされる折線L4を介して背面パネル103と連設されている。また、胴貼り部111の外面は右側面パネル102の内面に糊付けされる。
この胴貼り部111の外面が右側面パネル102の内面に糊付けされることにより、包装容器1の箱形状が構成される。
【0030】
本実施形態の包装容器1用のブランク板100は、胴貼り部111にのみアンテナ導電部123が設けられている。アンテナ導電部123は、互いに電気的に分離された第一アンテナ導電部123aと、第二アンテナ導電部123bとを有している。本実施形態の包装容器1では、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとの間に間隙部126が設けられ、間隙部126の形状は略2mmの幅の直線にて構成している。
【0031】
本実施形態の包装容器1は、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bが、胴貼り部111にのみに設けられる構成としたので、包装容器1が形成された後には、アンテナ導電部123の存在を利用者に気づかれることがない。さらに、後述する第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとを跨ぐ位置に配置されるRFIC素子150も、胴貼り部111にのみ設けられる構成としたので、RFIC素子150の存在を利用者に気づかれることがない。
したがって、外部からはアンテナ導電部123とRFIC素子150は視認されないので、美粧デザインを有する外観を損ねない。
【0032】
本実施形態では、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとの面積は異なっている。なお、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとの面積は同じでもよく、その場合は、間隙部126とRFIC素子150とは、胴貼り部111の上下方向の略中央部に位置してもよい。
【0033】
なお、図示はしないが、アンテナ特性を向上させるために、アンテナ導電部123の面積が増加してもよい。すなわち、アンテナ導電部123は、胴貼り部111に隣接するパネルに拡大されてもよい。この場合は、アンテナ導電部123は外部から視認される位置に存在することになる。
アンテナ導電部123は金属光沢を有しているので、その金属光沢を利用した意匠デザインとしてもよい。または、アンテナ導電部123を隠蔽する隠蔽層を設けてもよく、隠蔽層の上(表面側)に、図柄、文字等を設けてもよい。
【0034】
また、上述したように、第一アンテナ導電部123aと、第二アンテナ導電部123bとは、ブランク板100の状態では電気的に完全に分離されて設けられている。
一方、RFIC素子付きブランク板170及び包装容器1の状態では、RFIC素子150が第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとの双方に直接或いは容量的に結合する形態で実装されている。ここで、直接的に結合するとは、RFIC素子に設けられた導電性を有する端子部と、第一アンテナ導電部123a或いは第二アンテナ導電部123bとが直接的に接触している状態を示す。また、容量的に結合するとは、RFIC素子150に設けられた導電性を有する端子部と第一アンテナ導電部123a或いは第二アンテナ導電部123bとが、導電性を持たない誘電体薄膜を介して結合している状態を示す。
【0035】
包装容器1の状態では、第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bは、外部のリーダライタとの無線通信のためのアンテナとして機能する。
また、RFIC素子150にインピーダンス整合回路をさらに含むことにより、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとにより形成されるアンテナが、リーダライタが発する電力を効率よく捕集できるようになる。
【0036】
図3Aは、
図2に記載されたA部の拡大図である。胴貼り部111の上部に、第一アンテナ導電部123aが設けられており、その下側には間隙部126を介して第二アンテナ導電部123bが設けられている。間隙部126は、直線状のスリットである。第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとを跨いで、RFIC素子150が設けられる。
また、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bとを跨いで、素子収納凹部112が設けられており、RFIC素子150は素子収納凹部112の内部に収納される。
【0037】
素子収納凹部112は、ブランク板100の外面から見て凹形状となっており、内側には凸形状となっている。
素子収納凹部112には、第一アンテナ導電部123aの第一端子部123cと、第二アンテナ導電部123bの第二端子部123dと、間隙部126と都が存在している。RFIC素子150は、素子収納凹部112に存在する第一端子部123cと第二端子部123dとに接続される。
【0038】
図3Bは、
図3Aに記載の断面位置B-Bでの切断面端面図である。
ブランク板100の胴貼り部111には、外側から見て凹形状となっている素子収納凹部112が設けられている。素子収納凹部112は、平面視で略矩形状であり、断面は逆台形状である。その一対の底面部の縁辺112a同士の幅を底面部の幅W1とし、上部の縁辺112b同士の幅を上部の幅W2とする。また、RFIC素子150の対向する側面の幅をRFIC素子150の幅W3とする。
【0039】
底面部の幅W1は、RFIC素子150の幅W3よりも0.5mm以上大きくてもよい。そのようにすることにより、素子収納凹部112の底面部とRFIC素子150の底面部とが密着しやすくなるので、それらの接合が安定する。
素子収納凹部112の底面部の幅W1は、RFIC素子150の幅W3に3mm加えた大きさよりも、小さくてもよい。そのようにすることにより、底面部の幅W1が大き過ぎなくなり、素子収納凹部112の領域が適切な大きさとなり、胴貼り部111と右側面パネル102との接合領域を適切に確保できる。また、素子収納凹部112を加工する際に、加工に要する力が適切な大きさで済むので、素子収納凹部112を加工しやすくなる。
【0040】
上記の説明は、RFIC素子150の形状が略矩形状の場合である。RFIC素子150がその他の形状の場合は、素子収納凹部112とRFIC素子150の中心を合わせて、かつそれらの周辺部の隙間を略均一となるように配置した場合は、その隙間は0.25mm以上、1mm以下であってもよい。
【0041】
素子収納凹部112の深さD1は、RFIC素子150の高さD2より0.1mm浅くてもよい。そのようにすることにより、RFIC素子150の上面が胴貼り部111の外面より突出を抑えることができるので、胴貼り部111と右側面パネル102との接合が安定する。なお、0.1mmのRFIC素子150の突出は、ブランク板100の厚みが薄くなることや、湾曲等の変形で吸収ことができる。より望ましくは、素子収納凹部112の深さD1は、RFIC素子150の高さD2より大きいことが望ましく、胴貼り部111と右側面パネル102との接合がさらに、安定する。
また、素子収納凹部112の深さD1は、RFIC素子150の高さD2に1mm加えた値よりも小さくてもよい。そのようにすることにより、素子収納凹部112の深さD1が、必要以上に深く加工されることがないので、素子収納凹部112の領域のブランク板100に損傷(亀裂)が生じにくくなる。よい望ましくは、素子収納凹部112の深さD1は、RFIC素子150の高さD2に0.2mm加えた値よりも
小さくてもよい。そのようにすることで、延伸性の劣るブランク板100でも、素子収納凹部112が形成されやすい。上記に示された各数値は、範囲としてはその値を含むものとする。
【0042】
素子収納凹部112の上部の幅W2は、底面部の幅W1よりも0.5mm大きくてもよい。このようにすることで、RFIC素子150をブランク板100に接合する際に、素子収納凹部112に挿入しやすくなる。そのため、RFIC素子150をブランク板100に装着することが容易になり、RFIC素子150の装着不良の低減、RFIC素子付きブランク板170の製造速度(能力)の向上が期待できる。
素子収納凹部112の上部の幅W2は、底面部の幅W1に2mm加えた大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、素子収納凹部112の領域が適切な大きさとなり、胴貼り部111と右側面パネル102との接合領域を適切に確保できる。また、素子収納凹部112を加工する際に、加工に要する力が適切な大きさで済むので、素子収納凹部112を加工しやすくなる。
【0043】
素子収納凹部112の側面112cと胴貼り部111とがなす角度θは、80°以下であってもよい。このようにすることで、素子収納凹部112の凹形状を加工する際に、ブランク板100の当該領域が円滑に延伸するので、ブランク板100に損傷(亀裂)が生じにくい。
また、素子収納凹部112の側面112cと胴貼り部111とがなす角度θは、30°以上であってもよい。このようにすることで、素子収納凹部112の領域が適切な大きさとなり、胴貼り部111と右側面パネル102との接合領域を適切に確保できる。また、素子収納凹部112を加工する際に、加工に要する力が適切な大きさで済むので、素子収納凹部112を加工しやすくなる。
【0044】
素子収納凹部112は、以下の手順で形成られる。まずは、所定の形状を備えた、凸形状の突起を有するオス型と、凹形状のくぼみを有するメス型を準備する。メス型は、貫通した孔であってもよい。
ブランク板100の所定の位置に、上記のオス型とメス型を所定の場所に位置させてから、オス型とメス型とでブランク板100を挟み込みことで、素子収納凹部112が形成される。
【0045】
まず、ブランク板100の材料となる積層シートを準備する。ここで、ブランク板100がその外形状に打ち抜かれる前に、素子収納凹部112が形成されてもよく、ブランク板100が打ち抜かれてから、素子収納凹部112が形成されてもよい。打ち抜き工程と、素子収納凹部112の形成工程を別々とすることで、それぞれに適した加工条件(例示、加工時間、加工温度、加工推力など)を選ぶことができる。
【0046】
上記のオス型とメス型は(特にオス型は)加温されてもよく、打ち抜き工程で使用される抜型は、加温されずに常温でもよい。
あるいは、ブランク板100の打ち抜きと同時に、素子収納凹部112が形成されてもよい。この場合は、打ち抜き工程と素子収納凹部112の形成を同一の工程で実施できるので、工程数を減らすことができる。
【0047】
図3Bを参照にして、ブランク板100の積層シートの層構成について説明する。
図3Bは、アンテナ導電部123は備えており、素子収納凹部112は備えていない箇所である。
図3Bの上方が表面側である。
【0048】
ブランク板100のアンテナ導電部123の領域は、基材層121と、接着層122と、アンテナ導電部123と、剥離層124とがこの順番で積層されている。なお、「この順番で積層」とは、積層されている順番のみを示しているものであり、直接重ねられて積層されている形態に限らず、間に他の層が積層されて各層が同じ順番で積層されているブランク板100も含む意味で用いている。したがって、例えば、基材層121と接着層122との間に印刷層、平滑層、表面保護層等が設けられてもよい。
【0049】
基材層121は、例えば、コートボール紙、カード紙等の板紙を用いることができる。なお、包装容器1に使用可能な紙材料は、上記に限らず、商品等の内容物を収納しても形状を維持できる材料であれば、どのような紙材料を選択してもよい。また、基材層121は、紙材料に限らず、樹脂製のシート状の材料等を用いてもよい。
基材層121に紙基材層を用いる際は、紙基材層の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下、又は、紙基材層の坪量(単位面積当たりの重量)は、100g/m2以上700g/m2以下であることが、カートン形状を保持する上で望ましい。
【0050】
ここで、基材層121の表面側(包装容器1に組み立てられた時の表面側であって、接着層122等が積層される側)の面は、平滑であることが、アンテナ導電部123におけるピンホールやクラックの発生を抑制するために望ましい。より具体的には、紙基材層の場合は、その表側の面は、接着層122等が積層される前の状態において平滑度(JIS P 8155)が20秒以上であってもよく、さらに40秒以上であってもよい。
【0051】
接着層122は、基材層121の表面側の面に部分的に積層されており、ニス又はヒートシール剤で形成される。ニスとしては、例えば、東洋インキ株式会社製 FD IF セッチャクザイ1を用いることができ、ヒートシール剤としては、例えば、東洋インキ株式会社製 PETHP65接着ワニスを用いることができる。
接着層122の厚さは、1μm以上50μm以下であることが、電気特性、及び箔転写適性上望ましい。
【0052】
アンテナ導電部123は、接着層122が設けられている領域に積層されている。アンテナ導電部123は、例えば、金、銀、アルミニウム、錫、胴、真鍮、鉄、及びその合金等の導電性を有した金属箔により構成される。アンテナ導電部123は、後述する導電体層積層工程によって転写されることによって形成される転写箔であり、金属蒸着等により形成された金属箔である。
【0053】
先に説明したように、アンテナ導電部123は、互いに電気的に分離された第一アンテナ導電部123aと、第二アンテナ導電部123bとを有している。
また、第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bが接近して配置されている位置にあって、第一アンテナ導電部123aをアンテナとしてRFIC素子150を接続する第一端子部123cが設けられている。同様に、第二アンテナ導電部123bをアンテナとしてRFIC素子150を接続する第二端子部123dが設けられている。
【0054】
アンテナ導電部123の厚さは、15nm以上100nm以下であることが、電気特性、及び箔転写適性の点において望ましい。また、アンテナ導電部123の厚さを15nm以上50nm以下とすることにより、UV光の透過率を増加させ、接着層122にUV照射により硬化するUV硬化樹脂を採用でき、加熱を伴わずにアンテナ導電部123と基材層121を接着することができ、さらに好適である。
【0055】
本実施形態では、第一端子部123cと第二端子部123dとは、胴貼り部111に設けられている。これにより、包装容器1の形態となったときに、外側から見てRFIC素子150が露出せず、外装の美粧デザインを損なわない。
【0056】
剥離層124は、アンテナ導電部123が設けられている領域においてアンテナ導電部123の上に積層されており、剥離性を備えている。後述する剥離工程において、剥離シート131を剥離しやすくするために、転写シート130の状態において、剥離層124は剥離シート131とアンテナ導電部123との間に積層されている。剥離層124は、メタアクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂等を用いて形成することができる。剥離層124の厚さは、10μm以下であることが、電気特性上望ましい。また、0.1μm以上であると、剥離層124が部分的に欠落することがなく、安定した層を形成できる。剥離層124が設けられていることにより、アンテナ導電部123を転写によって製造することが可能となる。
【0057】
次に、本実施形態のブランク板100の接着層122に接着性ニスを使用した場合の製造方法を説明する。
先ず、ブランク板100の製造方法を説明する。
図7Aから
図7Gは、ブランク板100の製造工程を示す図である。
図5は、アンテナ導電部123の積層が完了した状態を示しており、
図5に記載の断面位置G-Gでの断面図は
図7Gである。なお、
図7Aから
図7Fは、
図7Gに至る前段の図面であり、
図5に記載の断面位置G-Gで切断される断面図である。
【0058】
アンテナ導電部123の形状と、接着層122の形状は、略同形状である。したがって、第一接着層領域122aと第一アンテナ導電部123aとは、略同形状であり、第二接着層領域122bと第二アンテナ導電部123bとは、略同形状である。
【0059】
なお、実際には、ブランク板100の製造工程では、長尺の基材層121の原反を用いて凸版2等や、長尺の転写シート130等を用いて連続的に製造を行うが、ここでは理解を容易にするために、平板状に示した図を用いて説明する。
【0060】
最初に基材層121の一方の面に接着層122を形成する接着剤を印刷する(
図7A~
図7C)(接着層印刷工程)。より具体的には、樹脂製の凸版2を用いたフレキソ印刷によって基材層121の一方の面に接着層122を形成する接着剤を印刷する。接着剤としては、UV硬化型ニスを用いてもよい。本実施形態では、接着剤としては、東洋インキ株式会社製 FD IF セッチャクザイ1を用いた。
【0061】
フレキソ印刷は、凸版印刷の一種であり、
図7A、
図7Bに示すように凸版2に未硬化の接着剤が載せられ、この接着剤が基材層121の表面に押圧される。このとき、凸版2のエッジ部分では、後述するマージナルゾーン122mが形成される。凸版2を基材層121から離した後であっても、マージナルゾーン122mは残存する。
図7B、
図7Cに示す例では、第一接着層領域122aと第二接着層領域122bとが対向している部分の端部にマージナルゾーン122mが形成されている。
【0062】
次に、接着層122を形成する接着剤が未硬化の状態のまま、アンテナ導電部123が接着層122に積層される、導電体層積層工程を行う。具体的には、剥離シート131と、剥離層124と、アンテナ導電部123とがこの順番で積層された転写シート130を用意する。そして、転写シート130がアンテナ導電部123と接着層122とが接触する向きで積層される(
図7D)。
【0063】
アンテナ導電部123と接着層122とが接触している状態で、接着層122を硬化させる工程を行う(
図7E)。本実施形態では、接着層122にUV硬化型ニスを用いているので、紫外線を転写シート130側から照射する。紫外線は、転写シート130を透過して接着層122へ到達して、接着層122を硬化させる。なお、本実施形態では、接着層122が紫外線で硬化する例を説明したが、接着層122が乾燥する形態や、重合する形態、EBで硬化する形態等であってもよい。
【0064】
接着層122が硬化した後、剥離シート131を剥離する剥離工程を行う(
図7F)。このとき、アンテナ導電部123は、接着層122に接着されているので、基材層121側に残る。また、アンテナ導電部123は、剥離層124を介して剥離シート131と積層されており、剥離層124とアンテナ導電部123との接合力の方が、剥離層124と剥離シート131との接合力よりも強いことから、アンテナ導電部123の上に剥離層124が残る(
図7G)。
剥離工程を行うことにより、アンテナ導電部123が、第一接着層領域122aと第二接着層領域122bとが対向している部分(マージナルゾーン122m)の端部でちぎれて第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bが形成される。
【0065】
本実施形態では、上記のようにフレキソ印刷を用いて接着層122(第一接着層領域122a及び第二接着層領域122b)を形成し、その上にアンテナ導電部123を転写することにより、アンテナ導電部123(第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123b)を形成した。この製造方法によって、本実施形態では、アンテナ導電部123において、そのアンテナ特性を良好にすることができる。
【0066】
本実施形態では、第一アンテナ導電部123a及び第二アンテナ導電部123bにより形成されるアンテナは、細長い溝状の間隙部126を形成するスリット構造を有する。このアンテナのスリット(間隙部126)に略平行な方向を平行方向とし、スリットに略直交する方向を直交方向としたときに、平行方向に沿うマージナルゾーンの幅は、直交方向に沿うマージナルゾーンの幅よりも小さくなっている。これは、平行方向に沿って接着層を印刷することにより生じる特徴である。
【0067】
スリットに沿う平行方向のマージナルゾーンの幅が、スリットに直交する直交方向の幅より小さくなることにより、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bが部分的に近接しにくくなる。この結果、第一アンテナ導電部123aと第二アンテナ導電部123bの間に形成される不要な寄生容量が減少し、アンテナ特性をさらに改善できる。
また、上述のマージナルゾーンの幅とは、本来は凸版2の形状に対する形成されたアンテナ導電部123との寸法差を示すが、簡易的にはアンテナ導電部123の縁部のラインエッジラフネス(うねりの幅)をもって代用できる。
【0068】
上述した転写方法は、コールドスタンプとも呼ばれており、加熱を行わずに転写を行う。コールドスタンプとは異なる転写方法として、加熱を伴うホットスタンプがあり、どちらの方式でも選択が可能である。しかし、ホットスタンプでは、加工時の熱と圧力により、アンテナ導電部123に微細なクラックが形成され、抵抗値変化により読み取り精度を損なう虞れがあるため、コールドスタンプの方がより望ましい。
【0069】
また、コールドスタンプであっても、接着層122の印刷にフレキソ印刷を用いていることが、アンテナ導電部123のアンテナ特性が良好であるために重要である。コールドスタンプの印刷としては、フレキソ印刷の他に、例えば、オフセット印刷やインクジェット印刷等の方法がある。しかし、オフセット印刷やインクジェット印刷等の他の印刷方法によって接着層122の印刷を行うと、接着層122が均一かつ安定して広い面積に塗布することができない。そのため、転写されたアンテナ導電部123には、微細なピンホールが多数存在し、また、ピンホールを繋ぐような微細なひび割れ(クラック)が多数生じる。ピンホールやひび割れの存在により、アンテナを形成するアンテナ導電部123の抵抗値が変化してしまい、アンテナとしての所望の特性を満たすことができなくなる。また、フレキソ印刷に続いて行われる導電体層積層工程では、加圧力を小さくすることができるので、アンテナ導電部123へダメージを与える虞れが低くなる。よって、接着層122の印刷にはフレキソ印刷を用いることが望ましい。
【0070】
接着層122の印刷にフレキソ印刷を用いた場合は、外周部の一部にマージナルゾーン122mが形成される。マージナルゾーン122mは、凸版印刷を行うことにより発生する特徴的な領域である。マージナルゾーン122mは、接着層122の他の領域よりも僅かに(例えば、1μm~2μm程度)厚さが厚く盛り上がっている。また、マージナルゾーン122mの内側部分は、
図5Gに示すように若干厚さが薄く形成されている場合が多い。このマージナルゾーン122mは、ブランク板100及び包装容器1の完成後であっても、マージナルゾーン122mの上のアンテナ導電部123及び剥離層124にもマージナルゾーン122mの形状に略沿って転写されることもあり、ルーペ等を用いて観察することにより、容易にマージナルゾーン122mの存在を確認できる。
【0071】
図4は、素子収納凹部112が加工される前のブランク板100を示す図である。
図5は、ブランク板100の胴貼り部111の上部の拡大図であり、また素子収納凹部112は設けられておらず、第一アンテナ導電部123aと、第二アンテナ導電部123bが設けられている。第一アンテナ導電部123aにおいて、第二アンテナ導電部123bの側には、第一端子部123cが設けられている。また、第二アンテナ導電部123bにおいて、第二アンテナ導電部123bの側には、第二端子部123dが設けられている。第一端子部123cと第二端子部123dの間には、間隙部126が設けられ、当該領域にはアンテナ導電部123が存在しない。
【0072】
ブランク板100が完成した後に、素子収納凹部112が形成される。予めに準備した凸形状を有するオス型と、凹形状を有するメス型にて、ブランク板100の胴貼り部111の所定の箇所を挟み込み、素子収納凹部112が形成され、凹部加工ブランク板160が作製される。
素子収納凹部112の縦方法の略中央部には、横断する間隙部126が存在し、さらに間隙部126の両側に対向して、第一アンテナ導電部123aの第一端子部123cと、第二アンテナ導電部123bの第二端子部123dとが存在する。
【0073】
次に、RFIC素子150の端子部が、第一端子部123cと、第二端子部123dとに導電性接着剤等を用いて接続、かつ固定を行うことにより、RFIC素子付きブランク板170が完成する。なお、本実施形態では、RFIC素子150は、インピーダンス整合回路を含んでいる。
【0074】
最後に、各折線を所定の位置で折り曲げて胴貼り部111を右側面パネル102の内面に糊付けて組み立て、上蓋部105及び下蓋部106を閉じると、
図1に示したような包装容器1が完成する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ特性が良好なアンテナを備えるRFIC素子付きブランク板170、包装容器1を提供することができる。
また、上述した製造方法によれば、従来からある印刷装置を利用して、RFIC素子付きブランク板170、包装容器1を安価に安定して製造することができる。
また、包装容器1に直接にRFIC素子150が実装されているので、包装容器とは別にICタグを用意したり、ICタグを包装容器に貼付したりする工程が不要である。
さらに、RFIC素子150を包装容器1から分離することが困難であることから、製品流通時や店頭陳列時にICタグが脱落してしまったり、悪意のある第三者が貼り換えたり、偽造する惧れが少ない。
【0076】
また、RFIC素子150が外部から視認されにくい手段にて、包装容器1に備えられるので、包装容器1の外側の美粧デザインを損なわれない。
さらに、包装容器1の内面にはRFIC素子150が露出しないので、内容物とRFIC素子150が干渉しない。そのため、RFIC素子150が損傷しにくい。
【0077】
上記に説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0078】
実施形態において、直方体形状の包装容器を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、三角柱形状や五角柱形状等の他の多角形を底面とする多角柱状の包装容器であってもよい。また、円柱形状や楕円柱形状等の他の柱状の包装容器であってもよい。また、包装容器の形状は、上記に限らず、四角推形状や円錐形状等のより複雑な形状であってもよく、シート状の基材を組み立てて構成できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0079】
本実施形態では、ブランク板100の積層シートとしては、基材層121を基材層とした包装容器であってもよい。ここで包装容器とは、容器の総重量に対して紙の重量が、50%以上の包装容器をいう。また、紙を含むが、紙の重量が50%未満の紙を含む包装容器であってもよい。
また、基材層が紙以外の例えば合成樹脂シートの単層もしくは複層のシートであり、さらに、紙感の意匠性を与えるために、薄紙を積層してもよい。また、ブランク板100の積層シートには、紙を含まなくてもよい。
【0080】
本開示は以上に説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0081】
1 包装容器
100 ブランク板
101 正面パネル
102 右側面パネル
103 背面パネル
104 左側面パネル
105 上蓋部
105a 上面パネル
105b 上差込片
106 下蓋部
106a 下面パネル
106b 下差込片
107 右上フラップ部
108 右下フラップ部
109 左上フラップ部
110 左下フラップ部
111 胴貼り部
112 素子収納凹部
112a 底面部の縁辺
112b 上部の縁辺
112c 側面
121 基材層
122 接着層
122a 第一接着層領域
122b 第二接着層領域
122m マージナルゾーン
123 アンテナ導電部
123a 第一アンテナ導電部
123b 第二アンテナ導電部
123c 第一端子部
123d 第二端子部
124 剥離層
126 間隙部
130 転写シート
131 剥離シート
150 RFIC素子
160 凹部加工ブランク板
170 RFIC素子付きブランク板
A 拡大部
B-B 断面位置
F 拡大部
G-G 断面位置
W1 素子収納凹部の底面の幅
W2 素子収納凹部の上面の幅
W3 RFIC素子の幅
D1 素子収納凹部の深さ
D2 RFIC素子の高さ
θ 胴貼り部の表面と素子収納凹部がなす角度