(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149266
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】回転機械の冷却構造および冷却方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/18 20060101AFI20231005BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20231005BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
F01D25/18 B
F02C7/00 A
F01D25/18 E
F16H57/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057743
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】中村 智也
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AA21
3J063AA23
3J063XD03
3J063XH01
3J063XH12
3J063XH32
3J063XH34
3J063XJ03
(57)【要約】
【課題】効率的に潤滑油を冷却できるとともに、潤滑油の供給能を維持できる回転機械の冷却構造および回転機械を提供する。
【解決手段】冷却構造3は、潤滑油により潤滑される回転機構部2を備えるジェットエンジン1の冷却構造であって、低温流体を冷媒として潤滑油を冷却するとともに、潤滑油の過冷却抑制機能を有するものであり、低温流体が、液体水素、冷却された水素ガス、液化メタン、冷却されたメタンガス、液化天然ガス、冷却された天然ガス、液体アンモニア、または冷却されたアンモニアガスであり、低温流体が流れる冷却用配管10と、回転機構部2を循環する潤滑油が流れる潤滑油用配管11と、低温流体と潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体12とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油により潤滑される回転機構部を備える回転機械の冷却構造であって、
低温流体を冷媒として前記潤滑油を冷却するとともに、前記潤滑油の過冷却抑制機能を有する回転機械の冷却構造。
【請求項2】
前記低温流体が、液体水素、冷却された水素ガス、液化メタン、冷却されたメタンガス、液化天然ガス、冷却された天然ガス、液体アンモニア、または冷却されたアンモニアガスであることを特徴とする請求項1記載の回転機械の冷却構造。
【請求項3】
前記冷却構造は、前記低温流体が流れる冷却用配管と、前記回転機構部を循環する前記潤滑油が流れる潤滑油用配管と、前記低温流体と前記潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の回転機械の冷却構造。
【請求項4】
前記冷却構造は、前記伝熱媒体の温度に基づいて、前記低温流体または前記潤滑油の流量を調整する流量調整手段を有することを特徴とする請求項3記載の回転機械の冷却構造。
【請求項5】
前記冷却構造は、前記冷却用配管と前記潤滑油用配管とが内部に敷設されるハウジングを有し、
前記ハウジング内に、前記伝熱媒体として、空気、窒素、二酸化炭素、希ガス、水、クーラント液、油、およびイオン流体から選択される伝熱流体が充填されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の回転機械の冷却構造。
【請求項6】
前記冷却構造は、前記ハウジング内に前記伝熱流体を撹拌する撹拌手段を有することを特徴とする請求項5記載の回転機械の冷却構造。
【請求項7】
前記伝熱媒体は固体状であり、該伝熱媒体には、前記冷却用配管と前記潤滑油用配管がそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の回転機械の冷却構造。
【請求項8】
前記冷却構造は、前記伝熱媒体を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項3から請求項7までのいずれか1項記載の回転機械の冷却構造。
【請求項9】
潤滑油により潤滑される回転機構部と、潤滑油を冷却する冷却構造とを有する回転機械であって、
前記冷却構造が請求項1から請求項8までのいずれか1項記載の冷却構造であることを特徴とする回転機械。
【請求項10】
潤滑油により潤滑される回転機構部を備える回転機械の冷却方法であって、
低温流体を冷媒として前記潤滑油を冷却するとともに、前記潤滑油の過冷却を抑制することを特徴とする回転機械の冷却方法。
【請求項11】
前記冷却方法は、前記低温流体が流れる冷却用配管と、前記回転機構部を循環する前記潤滑油が流れる潤滑油用配管とを備える構造において、前記低温流体と前記潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体を用いて冷却することを特徴とする請求項10記載の回転機械の冷却方法。
【請求項12】
前記冷却方法は、前記伝熱媒体の温度に基づいて、前記低温流体または前記潤滑油の流量を調整することを特徴とする請求項11記載の回転機械の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の冷却構造および冷却方法に関する。特に、液体水素などの低温流体を燃焼、圧送するなどしてエネルギーを取り出す回転機械の冷却構造および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、航空機、船舶、火力発電所などでは化石燃料に由来する炭化水素系燃料を使用して種々の回転機械を稼働し、エネルギーを得ている。炭化水素系燃料を燃焼すると温室効果ガスと呼ばれる二酸化炭素が大気中に排出されることから、温暖化対策を目的に、従来の燃料よりも二酸化炭素を排出しにくい燃料として、水素、メタン、アンモニア、天然ガスなどへの転換が検討されている。
【0003】
回転機械は、軸受、歯車、およびシールなどの機構要素を有しており、円滑に作動させるために潤滑油が用いられる。この潤滑油は、燃料の燃焼による熱量や、機構要素そのものが摺動などして発生する熱量により温度が上昇する。潤滑油の温度上昇に伴う低粘度化や発火のおそれなどを防ぐため、潤滑油は適切に冷却される必要がある。
【0004】
ここで、炭化水素系燃料を使用するジェットエンジンについて説明する。従来のジェットエンジンは、例えば、潤滑油を貯留するタンクと、潤滑油の圧送用ポンプと、潤滑油の回収用ポンプと、空気や炭化水素系燃料で潤滑油を冷却する冷却器と、潤滑油の循環用配管とを有する。このようなジェットエンジンの場合、炭化水素系燃料の燃焼により発生する熱や、軸受、歯車、シールなどの機構要素同士の摩擦により発生する熱によって昇温された潤滑油は、空気や炭化水素系燃料によって冷却される。例えば、炭化水素系燃料の場合、飛行機が飛行する雰囲気近傍の温度であり、これによって潤滑油が適度に冷却される。
【0005】
一方、特許文献1には、低温流体(例えば、液化天然ガスや液体水素)を燃料とするジェットエンジンが開示されている。このジェットエンジンでは、タービンで駆動されるポンプによって、燃料がタンクより圧送される。燃料は主として燃焼器に圧送され、一部の燃料は分岐してエンジン内部の高温部を通過してエネルギーを得てガス化することで、上記タービンに動力を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、ジェットエンジンなどの回転機械において、温度が上昇した潤滑油を冷却する必要があるが、例えば、特許文献1のように、燃料として低温流体を用いた場合には、潤滑油の供給能を低下させるおそれがある。例えば、低温流体を熱交換器などで直接潤滑油の冷却に用いた場合、潤滑油が極端に冷やされることで高粘度になったり、配管中で凝固したりする(循環不良が発生する)おそれがあり、その結果、回転機械の運転にも影響する。特に、液体水素は-253℃以下と極めて低温であるため、このような事象の発生が懸念される。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率的に潤滑油を冷却できるとともに、潤滑油の供給能を維持できる回転機械の冷却構造および冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転機械の冷却構造は、潤滑油により潤滑される回転機構部を備える回転機械の冷却構造であって、低温流体を冷媒として上記潤滑油を冷却するとともに、上記潤滑油の過冷却抑制機能を有する。
【0010】
上記低温流体が、液体水素、冷却された水素ガス、液化メタン、冷却されたメタンガス、液化天然ガス、冷却された天然ガス、液体アンモニア、または冷却されたアンモニアガスであることを特徴とする。
【0011】
上記冷却構造は、上記低温流体が流れる冷却用配管と、上記回転機構部を循環する上記潤滑油が流れる潤滑油用配管と、上記低温流体と上記潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体とを有することを特徴とする。
【0012】
上記冷却構造は、上記伝熱媒体の温度に基づいて、上記低温流体または上記潤滑油の流量を調整する流量調整手段を有することを特徴とする。
【0013】
上記冷却構造は、上記冷却用配管と上記潤滑油用配管とが内部に敷設されるハウジングを有し、上記ハウジング内に、上記伝熱媒体として、空気、窒素、二酸化炭素、希ガス、水、クーラント液、油、およびイオン流体から選択される伝熱流体が充填されていることを特徴とする。
【0014】
上記冷却構造は、上記ハウジング内に上記伝熱流体を撹拌する撹拌手段を有することを特徴とする。
【0015】
上記伝熱媒体は固体状であり、該伝熱媒体には上記冷却用配管と上記潤滑油用配管がそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0016】
上記冷却構造は、上記伝熱媒体を加熱する加熱手段を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の回転機械は、潤滑油により潤滑される回転機構部と、潤滑油を冷却する冷却構造とを有する回転機械であって、上記冷却構造が本発明の冷却構造であることを特徴とする。
【0018】
本発明の回転機械の冷却方法は、潤滑油により潤滑される回転機構部を備える回転機械の冷却方法であって、低温流体を冷媒として上記潤滑油を冷却するとともに、上記潤滑油の過冷却を抑制することを特徴とする。
【0019】
上記冷却方法は、上記低温流体が流れる冷却用配管と、上記回転機構部を循環する上記潤滑油が流れる潤滑油用配管とを備える構造において、上記低温流体と上記潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体を用いて冷却することを特徴とする。
【0020】
上記冷却方法は、上記伝熱媒体の温度に基づいて、上記低温流体または上記潤滑油の流量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転機械の冷却構造は、低温流体(例えば、液体水素、液化メタン、液化天然ガス、液体アンモニアなど)を冷媒として潤滑油を冷却するとともに、潤滑油の過冷却抑制機能を有するので、効率的に潤滑油を冷却できるとともに、潤滑油の供給能を良好に維持できる。
【0022】
冷却構造は、低温流体が流れる冷却用配管と、回転機構部を循環する潤滑油が流れる潤滑油用配管と、低温流体と潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体とを有するので、伝熱媒体を介して潤滑油を間接的に冷却でき、過冷却を好適に抑制できる。その結果、潤滑油の凝固などを防止でき、潤滑油の供給能を一層維持しやすい。
【0023】
冷却構造は、伝熱媒体の温度に基づいて、低温流体または潤滑油の流量を調整する流量調整手段を有するので、過冷却を一層抑制できる。
【0024】
冷却構造は、冷却用配管と潤滑油用配管とが内部に敷設されるハウジングを有し、ハウジング内に、伝熱媒体として、空気、窒素、二酸化炭素、希ガス、水、クーラント液、油、およびイオン流体から選択される伝熱流体が充填され、さらに、ハウジング内に伝熱流体を撹拌する撹拌手段を有するので、過冷却を好適に抑制できる。
【0025】
伝熱媒体は固体状であり、該伝熱媒体には冷却用配管と潤滑油用配管がそれぞれ固定されているので、過冷却を好適に抑制できる。
【0026】
本発明の回転機械は、潤滑油により潤滑される回転機構部と、潤滑油を冷却する冷却構造とを有する回転機械であって、冷却構造が本発明の冷却構造であるので、潤滑油が循環しやすく、長期間安定して稼働できる。
【0027】
本発明の回転機械の冷却方法は、低温流体を冷媒として潤滑油を冷却するとともに、潤滑油の過冷却を抑制する方法であるので、効率的に潤滑油を冷却できるとともに、潤滑油の供給能を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明の冷却構造の第1実施形態の模式図である。
【
図3】本発明の冷却構造の第2実施形態の模式図である。
【
図4】本発明の冷却構造の第3実施形態の模式図である。
【
図5】本発明の冷却構造の第4実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の回転機械の一例であるジェットエンジンの一実施形態について、
図1に基づいて説明する。
図1はジェットエンジンの模式図である。
図1に示すように、ジェットエンジン1は、潤滑油により潤滑される回転機構部2と、潤滑油を冷却する冷却構造3とを有する。回転機構部2は、回転軸を支持する軸受や、回転力を伝達する多数のギアを有する(図示省略)。これらの軸受やギアは高温条件、かつ、非常に高速で稼働し大きな負担が掛かるため、潤滑油により潤滑される。この潤滑油は、回転機構部2などで発生する熱量により温度が上昇する。
【0030】
回転機構部2には、燃料である低温流体が、ポンプ5によってタンク4から送液され、一部は冷却構造3を経由して供給される。回転機構部2は、タービン6と、空気取り入れ口7の後方に設けられタービン6により駆動される圧縮機8と、タービン6を駆動する熱ガスを発生する燃焼器9とを有する。
【0031】
冷却構造3は、低温流体を冷媒として潤滑油を冷却するとともに、潤滑油の過冷却抑制機能を有する。
図1に示す冷却構造3は、低温流体が流れる冷却用配管10と、回転機構部2を循環する潤滑油が流れる潤滑油用配管11と、低温流体と潤滑油との間の熱交換を媒介する伝熱媒体12とを有する。冷却構造3において、低温流体は伝熱媒体12を冷却し、伝熱媒体12は潤滑油を冷却する。そのため、冷却構造3は、低温流体(特に、液体水素などの極低温流体)を潤滑油の冷却に直接用いる場合に比べて、潤滑油が奪われる熱量が比較的小さく、過冷却による潤滑油の過度な粘度上昇などを抑制しながら潤滑油を冷却できる。すなわち、低温流体によって潤滑油が過冷却されることによる潤滑油の循環不良を抑制でき、潤滑油の供給能に優れる。
【0032】
また、潤滑油を冷却する流体として炭化水素系の燃料を用いた場合よりも潤滑油の温度を下げることができるため、油膜厚さ増加による軸受寿命の延長や、より高速での回転が可能となる。なお、一つの回転機械に対する冷却構造の数や配置、配管の本数、配置、分岐位置、流れ方向などは、
図1に示した形態に限られない。また、冷却構造は、上記構造に限られず、潤滑油の過冷却を抑制しつつ、低温流体と潤滑油との間の熱交換が可能な構造であればよい。
【0033】
図1において、冷却構造3は、伝熱媒体12の温度に基づいて低温流体または潤滑油の流量を調整する流量調整手段(図示省略)を有していてもよい。例えば、伝熱媒体の温度が規定温度領域よりも低い場合、流量調整手段は、低温流体の流量を減らしたり、潤滑油の流量を増やしたりすることで、伝熱媒体の温度を規定温度領域内にすることができる。これにより、過冷却による潤滑油の過度な粘度上昇などを好適に抑制しながら潤滑油を冷却できる。一方、伝熱媒体の温度が規定温度領域よりも高い場合、流量調整手段は、低温流体の流量を増やしたり、潤滑油の流量を減らしたりすることで、伝熱媒体の温度を規定温度領域内にすることができる。これにより、潤滑油の過度な温度上昇に伴う低粘度化などを防止できる。
【0034】
また、冷却構造3は、伝熱媒体12を加熱する加熱手段(図示省略)を有していてもよい。この場合、伝熱媒体12の温度に基づいて加熱することが好ましい。加熱手段としては、例えば電気式のヒーターなどが用いられる。また、回転機械がガスタービンなどの場合、加熱手段として、タービン駆動ガスを抽気または導入する配管を用いてもよい。この場合、当該配管を伝熱媒体12に接触させることで、伝熱媒体12を加熱でき、また熱効率に優れる。
【0035】
低温流体は、冷媒として潤滑油を冷却する観点から、例えば、冷却された液体または気体から選択される。冷却された液体または気体としては、例えば、0℃以下であり、-30℃以下のものが好ましく、-100℃以下のものがより好ましく、-200℃以下のものがさらに好ましい。低温流体としては、例えば、液体水素(約-253℃)、冷却された水素ガス、液化メタン(約-162℃)、冷却されたメタンガス、液化天然ガス(約-160℃)、冷却された天然ガス、液体アンモニア(約-33℃)、または冷却されたアンモニアガスなどが挙げられる。これらは、燃料として用いる場合、従来の燃料である炭化水素系燃料よりも二酸化炭素を排出しにくいため、好ましい。なお、低温流体は、潤滑油の冷却が可能な流体であれば、回転機械の燃料でなくてもよい。
【0036】
以下に、本発明の冷却構造について、
図2~
図5を用いてより具体的に説明する。
【0037】
図2は、本発明の冷却構造の第1実施形態の模式図である。
図2に示すように、冷却構造23は、低温流体20aが流れる冷却用配管20と、潤滑油21aが流れる潤滑油用配管21と、冷却用配管20および潤滑油用配管21の少なくとも一部が内部に敷設されるハウジング24とを有する。また、ハウジング24の内部には、伝熱媒体22として、気体または液体の伝熱流体が充填されている。
【0038】
ここで、本明細書において、「伝熱流体」とは所定の熱伝導性を示す流体である。伝熱流体としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、希ガス、水、クーラント液、油、イオン流体などを用いることができる。伝熱媒体としては、化学的に不活性な流体が好ましく、気体がより好ましい。
【0039】
冷却構造23は、ハウジング24の内部に、伝熱流体を撹拌する撹拌手段として撹拌羽根(ファン)25を有する。なお、撹拌手段は、撹拌羽根25に限られず、伝熱流体を撹拌可能な構成であれば自由に選択できる。
【0040】
第1実施形態の冷却構造23は、低温流体20aが直接潤滑油21aを冷却するのではなく、これらの間に伝熱流体を介在させて低温流体20aによる冷却を和らげることで、潤滑油21aの過冷却を抑制している。つまり、潤滑油21aの温度が極端に低下することを抑制している。なお、上述したように、伝熱流体自体が極端に冷却された場合、低温流体20aや潤滑油21aの流量を調整することで伝熱流体を適正な温度に調整するようにしてもよい。
【0041】
図3は、本発明の冷却構造の第2実施形態の模式図である。
図3に示すように、冷却構造33は、冷却用配管30と、潤滑油用配管31と、固体状の伝熱媒体32とを有する。伝熱媒体32には、冷却用配管30と潤滑油用配管31がそれぞれ固定されている。つまり、
図3において、伝熱媒体32は冷却用配管30と潤滑油用配管31を機械的に結合する部品である。
【0042】
冷却構造33も、低温流体30aが直接潤滑油31aを冷却するのではなく、これらの間に伝熱媒体32を介在させて、低温流体30aによる冷却を和らげることで、潤滑油31aの過冷却を抑制している。なお、第2実施形態でも、低温流体30aや潤滑油31aの流量を調整可能にしてもよい。
【0043】
冷却用配管30および潤滑油用配管31は、例えば、伝熱媒体32の内部に埋設するように設けることが好ましい。また、冷却用配管30と潤滑油用配管31とは、所定の間隔を開けて配置することが好ましい。両配管の間に所定の間隔を開けることで、潤滑油31aの過冷却を抑制しやすくなる。
【0044】
伝熱媒体32の材質は、例えば、金属やセラミックなどから自由に選択できる。伝熱媒体32の材質は、熱伝導性、耐久性、加工性などの観点から金属が好ましく、鉄を主成分とした耐熱鋼、ニッケルやコバルトを主成分とした耐熱合金、ステンレスなどがより好ましい。伝熱媒体32の構造は、例えば、内部に空洞が無い中実構造でもよく、さらに多数のフィンを有する構造でもよい。なお、伝熱媒体32は、冷却用配管30、潤滑油用配管31と同種の素材でもよく、異種の素材でもよい。例えば、伝熱媒体32の素材(例えば金属)を、冷却用配管30および潤滑油用配管31の素材(例えば金属)よりも、熱伝導率が低いものを用いることができる。
【0045】
図4は、本発明の冷却構造の第3実施形態の模式図である。
図4に示すように、冷却構造43は、冷却用配管40と、それよりも細い潤滑油用配管41とを有する。第3実施形態の冷却構造43は、第1実施形態および第2実施形態とは異なり、伝熱媒体を有しておらず、潤滑油用配管41の一部が冷却用配管40の内部を通る構成になっている。
【0046】
第3実施形態の冷却構造43では、冷却用配管40が、冷却構造43よりも上流側(タンク側)で回転機械内部の高温部を経由するように配置されている。これにより、冷却構造43を流れる低温流体40aの温度が、タンク内での保管温度よりもある程度昇温された状態となることで、潤滑油41aの過冷却を抑制できる。この場合、低温流体40aは、潤滑油41aとの温度差が所定の範囲内となるように昇温されることが好ましい。なお、潤滑油41aが極端に冷却された場合、低温流体40aの流量を減らしたり、潤滑油41aの流量を増やしたりすることで潤滑油41aの温度を調整してもよい。
【0047】
図5は、本発明の冷却構造の第4実施形態の模式図である。
図5に示すように、冷却構造53は、冷却用配管50と、それよりも細い潤滑油用配管51とを有する。第4実施形態の冷却構造53は、第3実施形態と同様に、潤滑油用配管51の一部が冷却用配管50の内部を通る構成になっている。
【0048】
冷却構造53は、冷却用配管50の内部を流れる低温流体50aを加熱するための加熱手段52(例えばヒーター)が設けられる。これにより、冷却構造53を流れる低温流体50aの温度が、タンク内での保管温度よりもある程度昇温された状態となることで、潤滑油51aの過冷却を抑制できる。この場合、低温流体50aは、潤滑油51aとの温度差が所定の範囲内となるように昇温されることが好ましい。なお、潤滑油51aが極端に冷却された場合、低温流体50aの流量を減らしたり、加熱手段52の出力を上げたり、潤滑油51aの流量を増やしたりすることで潤滑油51aの温度を調整してもよい。なお、第4実施形態において、加熱手段の設置位置は特に限定されず、冷却用配管の周囲に設けてもよく、内部に設けて低温流体50aを直接加熱するようにしてもよい。
【0049】
本発明の回転機械は、低温流体を用いて潤滑油を冷却する上述の冷却構造を有する回転機械であればよい。回転機械としては、ジェットエンジン(飛行機用ガスタービン)に限られず、飛行機用以外のガスタービンであってもよく、ロケットエンジン、レシプロエンジンなどであってもよい。ジェットエンジンや、その他のガスタービンの場合、高速回転し、潤滑油が高温になりやすいため、低温流体を用いた冷却構造の適用に好適である。
【0050】
上述のように、本発明の冷却構造は、低温流体が、タンク内での貯蔵温度と同程度の温度のままで潤滑油を直接冷却するのではなく、低温流体を用いて間接的に、または外部からの熱で昇温された低温流体を用いて潤滑油を冷却することで、潤滑油を極端に冷却(過冷却)することなく、適度に冷却することができる。
【0051】
なお、上記
図1~
図5に示す回転機械の冷却構造は、本発明の回転機械の冷却方法を実現する一例に過ぎない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の回転機械の冷却構造は、低温流体を用いて効率的に潤滑油を冷却するとともに、潤滑油が過冷却されることによる不具合(潤滑油の供給能の低下など)を抑制できるので、例えば、低温流体を燃料に用いたジェットエンジン、その他のガスタービンなどの回転機械に好適である。
【符号の説明】
【0053】
1 ジェットエンジン(回転機械)
2 回転機構部
3 冷却構造
4 タンク
5 ポンプ
6 タービン
7 空気取り入れ口
8 圧縮機
9 燃焼器
10、20、30、40、50 冷却用配管
11、21、31、41、51 潤滑油用配管
12 伝熱媒体
22 伝熱媒体(伝熱流体)
23、33、43、53 冷却構造
24 ハウジング
25 撹拌羽根
32 伝熱媒体
52 加熱手段