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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149290
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】内照式看板用シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20231005BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20231005BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20231005BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231005BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B5/24
B32B7/12
B32B7/02
D03D1/00 Z
D03D15/283
G09F13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057781
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104412
【氏名又は名称】カンボウプラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】中村 文明
(72)【発明者】
【氏名】勝茂 浩二
(72)【発明者】
【氏名】荒井 軍次
【テーマコード(参考)】
4F100
4L048
5C096
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK15
4F100AK15C
4F100AK15D
4F100AK25
4F100AK25C
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG11
4F100DG11A
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100GB07
4F100JL11
4F100JL11B
4L048AA20
4L048AB07
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA15
4L048DA24
5C096AA01
5C096BA01
5C096BB39
5C096CC06
5C096CF02
5C096FA02
5C096FA09
(57)【要約】
【課題】光透過性に優れ、糸目や糸筋が立たず、各層どうしの接着性にも優れる、積層構造の内照式看板用シートを得る。
【解決手段】繊度が100~350デニールのマルチフィラメント糸である経糸と緯糸とによって構成された基布と、基布の少なくとも1面に設けられた接着層と、接着層に積層された光拡散性樹脂層とを有したシート材料である。接着層は、基布側の第1層と光拡散性樹脂層側の第2層とを有する。第1層はウレタン系樹脂を含む。第2層と光拡散性樹脂層との質量比が、(第2層):(光拡散性樹脂層)=1:3~1:10である。下記数式によって計算した基布のカバーファクター(CF)が1000~3500である。
カバーファクター(CF)=NW×DW0.5+NF×DF0.5
但し、NW:経糸密度(本/インチ)
DW:経糸繊度(デニール)
NF:緯糸密度(本/インチ)
DF:緯糸繊度(デニール)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれも繊度が100~350デニールのマルチフィラメント糸である経糸と緯糸とによって構成された基布と、
前記基布の少なくとも1面に設けられた接着層と、
前記接着層に積層された光拡散性樹脂層とを有したシート材料にて形成され、
前記接着層は基布側の第1層と光拡散性樹脂層側の第2層とを有し、
前記第1層はウレタン系樹脂を含み、
前記第2層と光拡散性樹脂層との質量比が、(第2層):(光拡散性樹脂層)=1:3~1:10であり、
下記数式によって計算した基布のカバーファクター(CF)が1000~3500の範囲であることを特徴とする内照式看板用シート。
カバーファクター(CF)=NW×DW0.5+NF×DF0.5
但し、NW:経糸密度(本/インチ)
DW:経糸繊度(デニール)
NF:緯糸密度(本/インチ)
DF:緯糸繊度(デニール)
【請求項2】
接着層の第2層と光拡散性樹脂層とが同系統の樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1記載の内照式看板用シート。
【請求項3】
接着層の第2層と光拡散性樹脂層とが、いずれも塩化ビニル樹脂組成物により形成されていることを特徴とする請求項2記載の内照式看板用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内照式看板用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
内照式看板は、表示材の背面に設置された光源による透過光によって表示内容を見せる、バックライト形式の看板である。内照式看板の表示材に使用される材料としては、アクリル樹脂板や膜材料(フレキシブルフェイスシート(FFシート))等がある。最近では、インクジェット印刷適性、耐久性、防炎性の面から、膜材料の使用が増えている。
【0003】
これまでの内照式看板は、光源としての複数本の蛍光灯が堅牢な構造の箱状体に内蔵されている構造が多かった。これに対し最近では、光源として、長寿命で省エネルギーという観点から、LEDランプが提案されている。LEDランプを用いた光源は、上記した省電力、長寿命という特徴を有するが、従来使用されてきた蛍光灯と比較して、光の指向性や輝度がより強い。このため、LEDランプを用いた内照式看板において、表示材に従来の膜材料を使用すると、この膜材料に使用している基布によっては、この基布の糸目や織組織の陰影が看板表面に浮き出てしまうことが指摘されている。
【0004】
そのため、内照式看板用シート(FFシート)の要求特性として、光透過性を十分確保しつつ、光源や基布の糸目が透けて見えることが防止された、より強い光拡散性を備えていることが求められている。
【0005】
マルチフィラメント糸条を編織要素とする布帛を基布として、この基布の1面以上にエラストマー組成物により形成された光拡散性被覆層を有し、前記光拡散性被覆層がアンカー層及びトップ層との積層構造を成している光拡散透過性膜材が既に提案されている(特許文献1)。他の材料として、塩化ビニル系樹脂基材層の少なくとも片面に、該基材層より表面硬度の大きい塩化ビニル系樹脂表皮層が接合されているものが、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-197614号公報
【特許文献2】特開平7-191619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の光拡散透過性膜材は、基布に使用するガラスファイバーのマルチフィラメントが67.5tex(675デシテックス)と太繊度であることから、糸筋が目立ちやすい。このため、特許文献1に記載の光拡散透過性膜材は、光透過性に優れ、しかも糸目や糸筋が立たない内照式看板用シート、というものではない。またガラス繊維を使用していることから、合成繊維を使用した場合に比べて一般に高価になるという欠点も有している。
【0008】
そこで本発明は、光透過性に優れ、糸目や糸筋が目立たず、各層どうしの接着性にも優れる、積層構造の内照式看板用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明の内照式看板用シートは、
いずれも繊度が100~350デニールのマルチフィラメント糸である経糸と緯糸とによって構成された基布と、
前記基布の少なくとも1面に設けられた接着層と、
前記接着層に積層された光拡散性樹脂層とを有したシート材料にて形成され、
前記接着層は基布側の第1層と光拡散性樹脂層側の第2層とを有し、
前記第1層はウレタン系樹脂を含み、
前記第2層と光拡散性樹脂層との質量比が、(第2層):(光拡散性樹脂層)=1:3~1:10であり、
下記数式によって計算した基布のカバーファクター(CF)が1000~3500の範囲であることを特徴とする。
カバーファクター(CF)=NW×DW0.5+NF×DF0.5
但し、NW:経糸密度(本/インチ)
DW:経糸繊度(デニール)
NF:緯糸密度(本/インチ)
DF:緯糸繊度(デニール)
【0010】
本発明の内照式看板用シートによると、接着層の第2層と光拡散性樹脂層とが同系統の樹脂により形成されていることが好適である。そして、その場合に、接着層の第2層と光拡散性樹脂層とが、いずれも塩化ビニル樹脂組成物により形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基布は、いずれも繊度が100~350デニールのマルチフィラメント糸である経糸と緯糸とによって構成されているとともに、カバーファクター(CF)が1000~3500の範囲であるため、内照式看板の光源に光の指向性や輝度が強いLEDランプを使用した場合であっても、基布の糸筋や織目の陰影が看板表面に浮き出てしまうことがないという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の内照式看板用シートは、基布と接着層と光拡散性樹脂層とがこの順に積層されたものである。接着層は、基布の少なくとも1面に設けられる。つまり、接着層は、基布の片面に積層されるか、または基布の両面にそれぞれ積層される。
【0013】
基布について説明する。
【0014】
基布には織布が用いられる。織布を構成する繊維としては合成繊維が用いられる。具体的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維などが挙げられる。
【0015】
基布に用いられる織布は、織構造上、嵩高とならず表面凹凸の少ない形態であるという理由によって、平織であることが好適である。そして基布を構成する経糸と緯糸とは、いずれも、繊度が100~350デニール(111~389デシテックス)のマルチフィラメント糸であることが必要である。なぜなら、繊度が100デニール未満だと、繊度が低すぎて、基布の引裂強度が低くなり、また350デニールを超えると、繊度が高すぎて、内照式看板用シートとしたときに糸筋が目立ちやすくなるためである。このため、基布を構成する経糸と緯糸との繊度は、いずれも150~300デニールの範囲であることがより好ましい。
【0016】
基布は、下記式(1)によって計算したカバーファクター(CF)が1000~3500の範囲であることが必要である。
カバーファクター(CF)=NW×DW0.5+NF×DF0.5 (1)
但し、NW:経糸密度(本/インチ)
DW:経糸繊度(デニール)
NF:緯糸密度(本/インチ)
DF:緯糸繊度(デニール)
【0017】
経糸と緯糸との密度は、基布の1インチすなわち25.4mmあたりに存在する経糸および緯糸の本数によって表される。上記のカバーファクターが1000未満であると、基布における空隙部が多くなって、光拡散性が悪くなり、また糸目も目立つ。反対にカバーファクターが3500を超えると、基布の風合いが硬くなる。このため、カバーファクターが1100~2500の範囲であることがより好ましい。
【0018】
基布は、内照式看板用シートのカット断面からの雨水侵入防止効果(吸水防止性)を得る目的で、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、パラフィン系化合物から選ばれた1種以上の撥水性成分を用いて吸水防止処理することが好ましい。
【0019】
光拡散性樹脂層について説明する。
【0020】
光拡散性樹脂層は、この樹脂層を透過する光を拡散させるためのもので、たとえば熱可塑性樹脂組成物中に酸化チタン顔料が含まれていることで、良好な光拡散性を発揮することができる。
【0021】
光拡散性樹脂層は上記のように熱可塑性樹脂によって構成されていることが好ましい。具体的な樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、これらの任意の混合物などを挙げることができる。なかでも、汎用性の観点から、塩化ビニル樹脂組成物によって構成されていることが好ましい。
【0022】
接着層について説明する。
【0023】
接着層は、基布と光拡散性樹脂層との間に介在されて、これら基布と光拡散性樹脂層とを互いに接着させるためのものである。接着層は、基布側の第1層と光拡散性樹脂層側の第2層とを有した構成である。
【0024】
第1層は、基布と第1層との接着性に優れた材料にて構成される。そして上述のように基布の繊維を吸水防止処理する場合には、基布と第1層との接着性と、基布の吸水防止性とを共に得るために、基布と第1層との接着性に優れた材料と、撥水剤を混合した処理溶液で基布を処理する。このために、接着層の第1層は、ウレタン系樹脂を含んでいることが必要である。
【0025】
接着層の第2層は、光拡散性樹脂層との接着性に優れた材料にて構成される。このため第2層は、光拡散性樹脂層と同系統の樹脂により形成されていることが好ましい。ここで、同系統の樹脂とは、樹脂の構成成分や化学構造の大部分が共通し、物性などが近似する樹脂を意味する。これにより両者間の接着力が向上する。たとえば、上述のように光拡散性樹脂層が塩化ビニル樹脂組成物によって構成されている場合には、接着層の第2層も塩化ビニル樹脂組成物によって構成されていることが好適である。
【0026】
接着層の第2層は、光拡散性樹脂層との接着性に優れた液状の熱可塑性樹脂組成物に、第1層が形成された基布を浸漬させ、この第1層が形成された基布に同樹脂組成物を含浸させて、形成することができる。
【0027】
また接着層の第2層は、液状の熱可塑性樹脂組成物を用いたディッピングやコーティングにより得られる含浸被覆によって形成される。液状の熱可塑性樹脂としては、エマルジョン樹脂、デイスパージョン樹脂などの水分散形態、熱可塑性樹脂を有機溶媒中に可溶化した塗料形態、及び塩化ビニル樹脂ペーストゾルなどの使用が好ましい。
【0028】
液状の熱可塑性樹脂組成物を用いることによって、この樹脂組成物を、第1層が形成された基布の細部まで含浸させることができる。
【0029】
接着層の第1層と第2層との接着性は、基布と第1層との接着性や、光拡散性樹脂層と第2層との接着性よりも強力である。これら第1層と第2層とがともに接着層だからである。
【0030】
接着層の第2層と光拡散性樹脂層とは、両者の質量比が、(第2層):(光拡散性樹脂層)=1:3~1:10であることが必要である。両者の質量比がこの範囲であることにより、適度の質量を有したうえで両者間の良好な接着性を得ることができる。この範囲よりも光拡散性樹脂層の質量比が低い場合は、得られる内照式看板用シートの質量が過大になる、すなわち得られる内照式看板用シートが必要以上に重くなってしまう。反対にこの範囲よりも光拡散性樹脂層の質量比が高い場合は、接着層の第2層の質量比が過小となって、第2層と光拡散性樹脂層との接着性が悪くなる。
【0031】
次に添加剤について説明する。
【0032】
基布と接着層と光拡散性樹脂層とには、本発明の効果を阻害しない範囲で、それぞれ適量の各種の添加剤を含ませることができる。本発明においては、添加剤として、可塑剤および、または酸化チタン顔料を含ませることが好ましい。
【0033】
可塑剤は、接着層の第2層と、光拡散性樹脂層とに含まれていることが好ましい。そして接着層の第2層と光拡散性樹脂層とがいずれも塩化ビニル樹脂組成物により形成されている場合には、可塑剤は、塩化ビニル樹脂を加工しやすいように柔軟化させるものであることが好ましい。このような可塑剤としては、ポリ塩化ビニルフィルムの分野において通常使用されるものを用いることができ、たとえば、DOP、DINP等のフタル酸可塑剤のほか、脱フタル酸可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ポリエステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸トリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油やエポキシ樹脂等エポキシ系可塑剤等が挙げられる。なかでも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ポリエステル系可塑剤を用いることが、より好ましい。1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ポリエステル系可塑剤を用いることにより、光拡散性樹脂層の表面にマーキングフィルムを貼着したときの、可塑剤のブリードアウトによる接着力の低下を抑制することができる。
【0034】
酸化チタン顔料を添加することについて説明する。光拡散性樹脂層に酸化チタン顔料を含有させ、かつ接着層の第2層には酸化チタン顔料を含有させないことで、光拡散効果と光透過性効果とを、いずれも良好に発現させることができる。
【0035】
本発明の内照式看板用シートは、可視光透過率(JIS Z 8722)が25~50%であることが好ましく、30~45%であることがさらに好ましい。これにより、本発明の内照式看板用シートは、良好な光拡散透過性を有するシートとすることができる。可視光透過率が25%未満だと、光源の輝度に対する照度が低くなり照明効果が非効率となる。一方、可視光透過率が50%を越えると、光源のランプイメージが目立ちやすくなることがある。
【0036】
次に防汚層について説明する。
【0037】
光拡散性樹脂層の表面に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/塩化ビニル共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、などの塗料からなる防汚層が形成されていてもよい。
【0038】
これらの防汚層は、溶剤に可溶な樹脂溶液、または樹脂を水系分散媒に分散したエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法で塗布したうえで、乾燥する事によって、形成することができる。
【実施例0039】
以下の実施例、比較例における各種物性の測定方法、評価方法は、それぞれ下記のとおりとした。
【0040】
[可視光透過率]
実施例、比較例の内照式看板用シートの可視光透過率を、分光側色計CM-3600d(コニカミノルタ社製)を使用し、JIS Z 8722 条件gに従って測定した。
【0041】
[糸筋]
縦110cm、横170cmのフレームに、レール式展張金具を用いて、実施例、比較例の内照式看板用シートを展張した。そして、シート表面から距離50cmの位置で、糸筋が目立つか目立たないかを目視観察した。
【0042】
ここにいう糸筋とは、内照式看板用シートを展張したときに経糸及び緯糸が緊張されて筋状(凸状)の外観が見えることをいう。糸筋が目立つと、外観が見苦しくなり、インクジェット印刷のムラや、マーキングフィルムの接着が悪くなる問題がある。
【0043】
[糸目]
実施例、比較例の内照式看板用シートを用いて、全光束100ルーメンの白色LEDランプを覆い、そのときのLEDランプとシートとの距離を10cmとした。LEDランプを点灯状態として、内照式看板用シートの表面から距離50cmの位置で、糸目が目立つか目立たないか目視観察した。
【0044】
ここにいう糸目とは、内照式看板用シートの背面に設置された光源からの光が内照式看板用シートを透過したとき、経糸および緯糸の部分と空隙の部分とにおける透過率の差により筋状の透過ムラが見えることをいう。糸目が目立つと外観が見苦しくなる。
【0045】
[接着性]
スコット型試験機(安田精機製作所社製)を用いて、JIS K 6404-4:2015に準拠した方法で測定した。詳細には、19.6N荷重を掛けて200回のもみ試験を行い、接着層および光拡散性被覆層と基布との剥離などの異常の有無を目視確認した。そして、剥離などの異常がない場合は接着性が良いと評価し、剥離などの異常がある場合は接着性が悪いと評価した。
【0046】
(実施例1)
ポリエステル繊維からなる繊度250デニール(278デシテックス)のマルチフィラメント糸を経糸および緯糸に用いた平織物(織密度;経糸52本/インチ、緯糸48本/インチ、カバーファクター;1581、質量;107g/m)を、基布として用いた。
【0047】
この基布をフッ素系撥水剤3質量%、ウレタン系樹脂エマルジョン7質量%を含む水系処理溶液に浸漬させて、同処理液を含浸させ、その後にマングルで絞り、180℃×1分間加熱した。これにより、基布の両面に、ウレタン系樹脂を含む、接着層の第1層を形成した。第1層の目付は、13g/mであった。
【0048】
次に、基布の表面に形成された接着層の第1層の表面に接着層の第2層を形成するため、ペースト塩化ビニル樹脂100質量部と、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを主成分とする可塑剤100質量部と、その他の通常用いられる適量の添加剤とを含む(但し酸化チタン顔料は含まない)樹脂加工液に、第1層が形成された基布を浸漬させて、同樹脂加工液を含浸させた。そして、160℃×1分加熱し、基布の両面に形成された各第1層の表面に、接着層の第2層をそれぞれ形成した。第2層の目付は、基布の両面合計で固形分が50g/mとなるよう調整した。
【0049】
さらに、接着層の各第2層の表面に光拡散性樹脂層をそれぞれ形成した。まず、ストレート塩化ビニル樹脂100質量部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを主成分とする可塑剤48質量部、酸化チタン顔料0.8質量部と、その他の通常用いられる適量の添加剤とを含む原料をヘンシェルミキサーで混合し、得られた混合物を混練することによって、光拡散樹脂組成物を準備した。次に、接着層のそれぞれの第2層の表面に、光拡散樹脂組成物からなる、厚さ0.13mmのカレンダー成型フィルムをそれぞれ熱圧着した。
【0050】
以上によって、厚さ0.40mm、質量496g/mのシートを得た。光拡散樹脂層の目付は、両面で326g/mであった。また、接着層の第2層と光拡散性樹脂層との質量比は、(第2層):(光拡散性樹脂層)=1:6.52であった。
【0051】
そして両側の光拡散性樹脂層の表面のそれぞれにアクリル系樹脂塗料をグラビアロールにより塗工し、120℃×1分加熱して、防汚層を形成した。これにより、最終的に、厚さ0.40mm、質量500g/mのシートを得た。
【0052】
得られたシートの特性を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
(比較例1)
実施例1と比べて、接着層の第2層を設けず、接着層の第1層の両面に対し、光拡散性樹脂層として、実施例1にて使用した光拡散性樹脂組成物と同じものを厚さ0.14mmのカレンダー成型フィルムにして熱圧着した点を相違させた。熱圧着された光拡散性樹脂組成物の目付は366g/mであった。そして、それ以外は実施例1と同じとして、厚さ0.39mm、質量486g/mのシートを得た。このシートにおけるそれぞれの光拡散性樹脂層の表面に実施例1と同様の防汚層を積層して、厚さ0.39mm、質量490g/mのシートを得た。
【0055】
得られたシートの特性を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
ポリエステル繊維からなる、繊度500デニール(556デシテックス)のマルチフィラメント糸を経糸および緯糸に用いた平織物(織密度;経糸21本/インチ、緯糸19本/インチ、カバーファクター;898、質量;93g/m)を、基布として用いた。
【0057】
この基布をフッ素系撥水剤1質量%を含む水系処理溶液に浸漬させて、同処理液を含浸させ、その後にマングルで絞り、180℃×1分加熱した。これにより、基布の両面に、ウレタン樹脂を含まない目付1g/mの接着層を形成した。
【0058】
次に、上述のウレタン樹脂を含まないそれぞれの層の表面に、実施例1にて使用した光拡散性樹脂組成物と同じものを、厚さ0.23mmのカレンダー成型フィルムとして、熱圧着によるブリッジ貼り合わせすることで、目付602g/mの光拡散性樹脂層を形成した。これによって、厚さ0.56mm、質量696g/mのシートを得た。このシートの両面の光拡散性樹脂層の表面に実施例1と同様に防汚層をそれぞれ積層した。それによって、厚さ0.56mm、質量700g/mのシートを得た。
【0059】
得られたシートの特性を表1に示す。
【0060】
表1に示すように、実施例1のシートは、接着性が良く、また糸目、糸筋が目立たないものであった。可視光透過率も良好であった。
【0061】
これに対し、比較例1のシートは、接着層の第2層がないため、接着性が悪く、可視光透過率も実施例1と比べて若干低くなった。可視光透過率は接着層の第2層の厚みと光拡散性樹脂層の厚みとが影響していと考えられ、比較例1のシートは第2層がなく光拡散性樹脂層のみなので、可視光透過率が若干低くなっていると考えられる。
【0062】
比較例2のシートは、接着層がないので接着性が悪く、粗目の太繊度の糸を用いたため糸目、糸筋が目立った。また粗目の太繊度の糸を用いたことで厚みが大きいため、可視光透過率も低くなった。