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特開2023-149292リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法及び放電終止電圧予測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149292
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法及び放電終止電圧予測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/385 20190101AFI20231005BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20231005BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20231005BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20231005BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20231005BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/382
G01R31/392
G01R31/367
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057785
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】加味根 丈主
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA29
2G216BA61
2G216BA71
2G216CB11
5H030AA10
5H030AS08
5H030AS11
5H030AS14
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】
リチウムイオン二次電池の性能を推定する方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を入力する情報入力段階と、充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいて、測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定する性能推定段階と、を備える、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を入力する情報入力段階と、
前記充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいて、前記測定規格で定義される前記放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定する性能推定段階と、
を備える、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項2】
前記充放電量は、充放電容量、及び、充放電時間に関する情報のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項3】
前記性能推定段階で推定された前記性能に基づいて、前記測定規格に対応する測定を行った際のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測する予測段階をさらに備える、
請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項4】
前記予測段階は、
前記性能推定段階で推定された性能における、前記充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによる前記リチウムイオン二次電池への負荷と、前記測定規格で定義される測定による前記リチウムイオン二次電池への負荷との相違の影響を補正する放電終止電圧補正段階をさらに含む、
請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項5】
前記放電終止電圧補正段階は、
前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値と、
前記測定規格で定義される充電率の上限値及び下限値の差分の値のうち、前記充電率に従う前記充電-放電サイクルのサイクル数が最も多く規定される前記差分の値と、の大きさの比に応じた、第1補正係数を算出する第1補正係数算出段階と、
前記第1補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る第1補正段階と、をさらに有する、
請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項6】
前記放電終止電圧補正段階は、
追加の充電-放電サイクルで測定した際の測定対象となる前記リチウムイオン二次電池の充放電容量を測定する追加充放電容量測定段階と、
測定した前記充放電容量に基づいて、前記追加の充電-放電サイクルにおける容量維持率である追加充放電容量維持率を算出する追加充放電容量維持率算出段階と、
前記測定規格で定義される、充電-放電サイクルを繰り返した際のサイクル数及び充放電容量維持率の記録を含む前記リチウムイオン二次電池の充放電参照情報と、前記追加充放電容量維持率とを比較して、前記追加充放電容量維持率に相当するサイクル数である充放電参照サイクル数を算出する充放電参照サイクル数算出段階と、
前記追加の充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記充放電参照サイクル数に基づいて算出した第2補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る第2補正段階と、をさらに有する、
請求項4又は5に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項7】
前記放電終止電圧補正段階は、
前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、及び充放電速度の少なくとも一つを含む学習情報を入力して、前記充電-放電サイクルのサイクル数及び前記放電終止電圧の関係を表す回帰直線の傾きを出力する複数の予測モデルを学習する学習段階と、
前記予測モデルが、予測したい充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、ならびに充放電速度の少なくとも一つを含む新規予測情報の入力を受けて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る第3補正段階と、をさらに有する、
請求項4から6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項8】
前記予測段階は、
前記放電終止電圧から、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数を予測する寿命予測段階をさらに含む、
請求項3から7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項9】
前記充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記サイクル数に対応する予測した前記放電終止電圧との関係を、2以上の軸からなるグラフにプロットして出力する出力段階をさらに備える、
請求項8に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法。
【請求項10】
命令を有するコンピュータプログラムであって、
前記命令は、プロセッサ又はプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサ又は前記プログラム可能回路に、
請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法を含む動作を実行させる、
コンピュータプログラム。
【請求項11】
充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を入力する入力部と、
前記充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいて、前記測定規格で定義される前記放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定する性能推定部と、
を備える、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項12】
前記充放電量は、充放電容量、及び、充放電時間に関する情報のうちの少なくとも1つを含む、
請求項11に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項13】
前記性能推定部で推定された前記性能に基づいて、前記測定規格に対応する測定を行った際のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測する予測部をさらに備える、
請求項11又は12に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項14】
前記予測部は、さらに、
前記性能推定部で推定された性能における、前記充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによる前記リチウムイオン二次電池への負荷と、前記測定規格で定義される測定による前記リチウムイオン二次電池への負荷との相違の影響を補正する、
請求項13に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項15】
前記予測部は、さらに、
前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値と、
前記測定規格で定義される充電率の上限値及び下限値の差分の値のうち、前記充電率に従う前記充電-放電サイクルのサイクル数が最も多く規定される前記差分の値と、の大きさの比に応じた、第1補正係数を算出し、
前記第1補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る、
請求項14に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項16】
前記予測部は、さらに、
追加の充電-放電サイクルで測定した際の測定対象となる前記リチウムイオン二次電池の充放電容量の入力に基づいて、前記追加の充電-放電サイクルにおける容量維持率である追加充放電容量維持率を算出し、
前記測定規格で定義される、充電-放電サイクルを繰り返した際のサイクル数及び充放電容量維持率の記録を含む前記リチウムイオン二次電池の充放電参照情報と、前記追加充放電容量維持率とを比較して、前記追加充放電容量維持率に相当するサイクル数である充放電参照サイクル数を算出し、
前記追加の充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記充放電参照サイクル数に基づいて算出した第2補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る、
請求項14又は15に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項17】
前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、及び充放電速度の少なくとも一つを含む学習情報を入力して、前記充電-放電サイクルのサイクル数及び前記放電終止電圧の関係を表す回帰直線の傾きを出力する複数の予測モデルを学習する機械学習部をさらに有し、
前記予測部は、さらに、前記予測モデルを用いて、予測したい充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、ならびに充放電速度の少なくとも一つを含む新規予測情報の入力を受けて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る、
請求項14から16のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項18】
前記予測部は、さらに、
前記放電終止電圧から、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数を予測する、
請求項13から17のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【請求項19】
前記充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記サイクル数に対応する予測した前記放電終止電圧との関係を、2以上の軸からなるグラフにプロットして出力する提示部をさらに備える、
請求項18に記載のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法及び放電終止電圧予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノートパソコン等のIT機器の電源として広く用いられており、最近では、電気自動車の電源、蓄電システム等にも用いられる。特許文献1には、鉛蓄電池の寿命推定方法及び電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2010/001605号公報
【発明の概要】
【0004】
情報入力段階及び/又は性能推定段階を備えるリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測方法を提供する。前記情報入力段階では、充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を入力してよい。前記性能推定段階では、前記測定規格で定義される前記放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定してよい。当該推定は、前記充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいてよい。
【0005】
前記充放電量は、充放電容量、及び、充放電時間に関する情報のうちの少なくとも1つを含んでよい。放電終止電圧予測方法は、前記測定規格に対応する測定を行った際のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測する予測段階をさらに備えてよい。当該予測段階は、前記性能推定段階で推定された前記性能に基づいてよい。
【0006】
前記予測段階は、前記性能推定段階で推定された性能における、前記充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによる前記リチウムイオン二次電池への負荷と、前記測定規格で定義される測定による前記リチウムイオン二次電池への負荷との相違の影響を補正する放電終止電圧補正段階をさらに含んでよい。
【0007】
前記放電終止電圧補正段階は、第1補正係数を算出する第1補正係数算出段階を有してよい。第1補正係数の算出は、前記測定規格で定義される充電率の上限値及び下限値の差分の値のうち、前記充電率に従う前記充電-放電サイクルのサイクル数が最も多く規定される前記差分の値と、の大きさの比に応じて行われてよい。前記放電終止電圧補正段階は、前記第1補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る第1補正段階と、をさらに有してよい。
【0008】
前記放電終止電圧補正段階は、追加充放電容量測定段階を有してよい。前記追加充放電容量測定段階は、追加の充電-放電サイクルで測定した際の測定対象となる前記リチウムイオン二次電池の充放電容量を測定する段階であってよい。前記放電終止電圧補正段階は、前記追加の充電-放電サイクルにおける容量維持率である追加充放電容量維持率を算出する追加充放電容量維持率算出段階を更に有してよい。前記追加充放電容量維持率算出段階は、測定した前記充放電容量に基づいて行われてよい。前記放電終止電圧補正段階は、前記測定規格で定義される、充電-放電サイクルを繰り返した際のサイクル数及び充放電容量維持率の記録を含む前記リチウムイオン二次電池の充放電参照情報と、前記追加充放電容量維持率とを比較して、前記追加充放電容量維持率に相当するサイクル数である充放電参照サイクル数を算出する充放電参照サイクル数算出段階を更に有してよい。前記放電終止電圧補正段階は、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る第2補正段階を更に有してよい。前記第2補正段階は、前記追加の充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記充放電参照サイクル数に基づいて算出した第2補正係数を用いて行われてよい。
【0009】
前記放電終止電圧補正段階は、学習段階をさらに有してよい。前記学習段階は、前記充電-放電サイクルのサイクル数及び前記放電終止電圧の関係を表す回帰直線の傾きを出力する複数の予測モデルを学習する段階であってよい。前記学習段階は、前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、及び充放電速度の少なくとも一つを含む学習情報を入力して行われてよい。前記放電終止電圧補正段階は、第3補正段階を更に有してよい。前記第3補正段階は、前記予測モデルが、予測したい充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、ならびに充放電速度の少なくとも一つを含む新規予測情報の入力を受けて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得る段階であってよい。
【0010】
前記予測段階は、寿命予測段階をさらに含んでよい。前記寿命予測段階は、前記放電終止電圧から、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数を予測する段階であってよい。
【0011】
放電終止電圧予測方法は、出力段階をさらに備えてよい。前記出力段階は、前記充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記サイクル数に対応する予測した前記放電終止電圧との関係を、2以上の軸からなるグラフにプロットして出力する段階であってよい。
【0012】
命令を有するコンピュータプログラムを提供する。前記命令は、プロセッサ又はプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサ又は前記プログラム可能回路に、リチウムイオン二次電池の前記放電終止電圧予測方法を含む動作を実行させてよい。
【0013】
入力部、及び/又は性能推定部を備えるリチウムイオン二次電池の放電終止電圧予測装置を提供する。前記入力部は、充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を入力してよい。前記性能推定部は、前記充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいて、前記測定規格で定義される前記放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定してよい。
【0014】
前記充放電量は、充放電容量、及び、充放電時間に関する情報のうちの少なくとも1つを含んでよい。放電終止電圧予測装置は、前記性能推定部で推定された前記性能に基づいて、前記測定規格に対応する測定を行った際のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測する予測部をさらに備えてよい。前記予測部は、前記性能推定部で推定された性能における、前記充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによる前記リチウムイオン二次電池への負荷と、前記測定規格で定義される測定による前記リチウムイオン二次電池への負荷との相違の影響を補正してよい。
【0015】
前記予測部は、前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値と、前記測定規格で定義される充電率の上限値及び下限値の差分の値のうち、前記充電率に従う前記充電-放電サイクルのサイクル数が最も多く規定される前記差分の値と、の大きさの比に応じた、第1補正係数を算出してよい。前記予測部は、前記第1補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得てよい。
【0016】
前記予測部は、追加の充電-放電サイクルで測定した際の測定対象となる前記リチウムイオン二次電池の充放電容量の入力に基づいて、前記追加の充電-放電サイクルにおける容量維持率である追加充放電容量維持率を算出してよい。前記予測部は、前記測定規格で定義される、充電-放電サイクルを繰り返した際のサイクル数及び充放電容量維持率の記録を含む前記リチウムイオン二次電池の充放電参照情報と、前記追加充放電容量維持率とを比較して、前記追加充放電容量維持率に相当するサイクル数である充放電参照サイクル数を算出してよい。前記予測部は、前記追加の充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記充放電参照サイクル数に基づいて算出した第2補正係数を用いて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得てよい。
【0017】
放電終止電圧予測装置は、機械学習部をさらに有してよい。前記機械学習部は、前記充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、及び充放電速度の少なくとも一つを含む学習情報を入力して、前記充電-放電サイクルのサイクル数及び前記放電終止電圧の関係を表す回帰直線の傾きを出力する複数の予測モデルを学習してよい。前記予測部は、前記予測モデルを用いて、予測したい充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、ならびに充放電速度の少なくとも一つを含む新規予測情報の入力を受けて、推定した前記性能を補正して放電終止電圧を得てよい。
【0018】
前記予測部は、さらに、前記放電終止電圧から、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数を予測してよい。放電終止電圧予測装置は、さらに提示部を有してよい。前記提示部は、前記充電-放電サイクルのサイクル数、及び前記サイクル数に対応する予測した前記放電終止電圧との関係を、2以上の軸からなるグラフにプロットして出力してよい。
【0019】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の放電終止電圧予測装置の構成の一例を示す。
図2】リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法として用いられる充電-放電サイクルの一例を示す。
図3】鉛蓄電池の耐久性の評価方法として用いられる充電-放電サイクルの一例を示す。
図4】本実施形態の放電終止電圧予測方法の処理フローの一例を示す。
図5】本実施形態における、S200の、リチウムイオン二次電池の性能を推定及び予測するフローの一例を示す。
図6】本実施形態における、S210及びS220の一例を示す。
図7】本実施形態における、S300の、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するフローの一例を示す。
図8】本実施形態における、S400の、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧に基づいて、許容サイクル数を予測するフローを説明する図である。
図9】本実施形態の放電終止電圧予測装置において、装置の出力部に表示されるグラフの一例を示す。
図10】本実施形態の放電終止電圧予測装置において、装置の出力部に表示されるグラフの一例を示す。
図11】本実施形態における、S300の、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するフローの一例を示す。
図12】本実施形態における、S322の、充放電参照情報を参照して、追加充放電容量維持率に相当する充放電参照サイクル数を算出するフローを説明する図である。
図13】本実施形態における、S300の、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するフローの一例を示す。
図14】本実施形態の放電終止電圧予測装置において、装置の出力部に表示されるグラフの一例を示す。
図15】本実施形態における、放電終止電圧に基づいて、許容サイクル数を予測するフローの変形例を示す。
図16】コンピュータのハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本実施形態の放電終止電圧予測装置100の一例を示す。リチウムイオン二次電池の耐久性は、充電-放電サイクル試験(「サイクル試験」ということがある)を行った後の容量維持率により評価されていた。一方で、鉛蓄電池の耐久性は、リチウムイオン二次電池とは異なるサイクル試験における放電終止電圧及び放電終止電圧が許容以下に至るサイクル数等により評価されていた。このように、両者の電池の評価基準が異なっていた。
【0023】
このため、従来は前者の評価結果(例えば、容量維持率)が得られても、後者の評価指標(例えば、放電終止電圧)でどの程度の耐久性を有するかを判断することができなかった。放電終止電圧予測装置100は、従来のリチウムイオン二次電池のサイクル試験の結果に対応する充放電測定情報を用いて、放電終止電圧を推定することができる。
【0024】
放電終止電圧予測装置100は、リチウムイオン二次電池のサイクル試験における充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含む充放電測定情報に基づいて、リチウムイオン二次電池の耐久性を予測する。例えば、放電終止電圧予測装置100は、鉛蓄電池のサイクル試験を行った場合の耐久性(放電終止電圧、及び/又は、寿命等)を充放電測定情報に基づき予測する。
【0025】
放電終止電圧予測装置100は、予測した性能を可視化して、2以上の軸からなるグラフ領域上にプロットして出力してよい。放電終止電圧予測装置100は、入力部180、記憶部190、出力部195、及び演算部200を備える。
【0026】
入力部180は、演算部200に必要な情報及び/又は指示を入力する。入力部180は、リチウムイオン二次電池の充放電測定情報、測定規格情報、電解液の組成及び含有量等の情報を演算部200に入力してよい。
【0027】
リチウムイオン二次電池の充放電測定情報は、リチウムイオン二次電池に対してサイクル試験等の充放電を行いながら測定を行った記録である。充放電測定情報は、充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧値の記録を含むものであってよい。例えば、充放電量は、充放電容量(「放電容量」ということがある)、及び、充放電時間に関する情報のうちの少なくとも1つを含む。また充放電測定情報は、電池の直列数、測定温度、電池温度等の記録を含んでいても良い。充放電測定情報に含まれる充電-放電サイクルと、測定規格情報に含まれる充電-放電サイクルは異なるものであってよい。
【0028】
測定規格情報は、予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する情報を含んでよい。一例として、測定規格情報は、鉛蓄電池の放電終止電圧の測定規格に係るものである。入力部180は、演算部200に接続されたキーボード又はマウス等の入力機器であってよいが、これらに限らない。
【0029】
記憶部190は、リチウムイオン二次電池の充放電測定情報、予測した性能、可視化した結果、及び/又は性能の予測に用いる予測モデル等を格納する。記憶部190は、メモリ又はハードディスク等の記憶装置であってよい。記憶部190は、演算部200からの呼び出しを受け、格納された充放電測定情報等を演算部200に随時提供してよい。
【0030】
演算部200は、入力部180、記憶部190、及び出力部195と接続され、入力部180から取得したリチウムイオン二次電池の充放電測定情報に基づいて、リチウムイオン二次電池の性能を推定する。演算部200は、性能推定部300、予測部400、機械学習部500、モデル精度測定部550、及び提示部600を有する。演算部200は、コンピュータである。
【0031】
性能推定部300は、リチウムイオン二次電池の性能を推定する。性能推定部300は、入力された充放電測定情報、及び測定規格情報に基づいて、測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池の性能を推定してよい。
【0032】
例えば、測定規格情報により「測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態」が「充電率50%」であることが示される場合、性能推定部300は、リチウムイオン二次電池のサイクル試験における充電率50%の状態のときの電圧の値を、当該性能として推定してよい。性能推定部300が性能を推定する方法の詳細については後述する。性能推定部300は、推定した性能を予測部400に出力する。
【0033】
予測部400は、性能推定部300が推定したリチウムイオン二次電池の性能に基づいて、測定規格に対応する測定を行った際のリチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測する。予測部400は、性能推定部300が推定したリチウムイオン二次電池の性能を補正することで、放電終止電圧を予測してよい。
【0034】
予測部400は、性能推定部300が推定したリチウムイオン二次電池の性能において、充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによるリチウムイオン二次電池への負荷と、測定規格で定義される測定によるリチウムイオン二次電池への負荷との相違の影響を補正して、放電終止電圧を予測してよい。予測部400が行う補正の詳細については後述する。
【0035】
予測部400は、機械学習部500、及び/又はモデル精度測定部550から入力を受けた予測モデルを用いて、放電終止電圧を予測してもよい。予測モデルを用いて放電終止電圧を予測する方法の詳細については後述する。
【0036】
予測部400は、予測した放電終止電圧から、リチウムイオン二次電池の寿命を予測してよい。リチウムイオン二次電池の寿命は、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数であってよい。予測部400が許容サイクル数を予測する方法の詳細については後述する。予測部400は、予測したリチウムイオン二次電池の放電終止電圧、及び/又は許容サイクル数を、記憶部190、及び/又は提示部600に出力する。
【0037】
機械学習部500は、入力部180、及び/又は記憶部190から入力を受けた学習情報から、予測部400の予測に用いることができる1つ又は複数の予測モデルを学習する。機械学習部500が予測モデルを学習する方法の詳細については後述する。機械学習部500は、学習した予測モデルを記憶部190、予測部400、及び/又はモデル精度測定部550に出力する。
【0038】
モデル精度測定部550は、機械学習部500が学習した1つ又は複数の異なる種類の予測モデルの精度を測定する。モデル精度測定部550が予測モデルの精度を測定する方法の詳細は後述する。
【0039】
モデル精度測定部550は、機械学習部500が学習した複数の予測モデルのうち、最も精度がよい予測モデルを選択してよい。予測モデル精度測定部550は、最も精度がよい予測モデルを、記憶部190、及び/又は予測部400に出力してよい。
【0040】
提示部600は、予測部400が予測した性能について、可視化を行う。可視化は、グラフ形式、及び/又は表形式に表すものであってよい。一例として、可視化は、充電-放電サイクルのサイクル数、及びサイクル数に対応する予測した放電終止電圧との関係を、2以上の軸からなるグラフ領域上にプロットするものであってよい。可視化の方法の詳細については後述する。提示部600は、可視化したグラフ形式及び/又は表形式を、出力部195に出力する。
【0041】
出力部195は、演算部200の処理結果を出力する。出力部195は、処理結果である、リチウムイオン二次電池の性能を推定した結果、予測した放電終止電圧、及び/又は、許容サイクル数を出力してよい。出力部195は、提示部600が可視化したグラフ形式及び/又は表形式を出力してよい。出力部195は、演算部200に接続されたモニター等の出力機器であってよいが、これに限らない。
【0042】
図1に示した放電終止電圧予測装置100は、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法で得られた充放電測定情報から、異なる充電-放電サイクルの測定規格情報(例えば、鉛蓄電池の耐久性の評価方法)に基づく性能を推定できる。これにより、放電終止電圧予測装置100は、リチウムイオン二次電池の性能を、鉛蓄電池の性能基準に基づいて評価することができる。
【0043】
図2は、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法として用いられるサイクル試験の一例である。図2のグラフにおいて、横軸は時間、縦軸はリチウムイオン二次電池の充電率を示す。まず、リチウムイオン二次電池において、完全放電状態(充電率0%)から完全充電状態(充電率100%)まで充電を行い、その後、完全充電状態から完全放電状態まで放電を行う。
【0044】
これを1サイクルとして、あらかじめ定められたサイクル数だけ充電-放電サイクルを繰り返す。サイクル数は、規格により定められたものであってよい。規格により定められたサイクル数は、100サイクル、300サイクル、又は500サイクル等であってよいが、これらに限らない。
【0045】
このとき、リチウムイオン二次電池の充電速度、及び/又は放電速度は、特に制限なく定めることができる。充電速度及び放電速度は、一定であってよい。例えば、リチウムイオン二次電池は、完全充電状態から1時間で完全放電状態に至る一定の速度で放電を行ってよいが、これに限らない。完全充電状態から1時間で完全放電状態に至る速度を1Cということがある。
【0046】
サイクル試験において、電圧の値を指標とすることにより充電率の値を定義してよい。例えば、電池の出力が予め定められた電圧(例えば3.5V)に達したときに完全充電状態(100%)の基準とし、例えば、電池の出力が予め定められた電圧(例えば2.5V)に達した(又は下回った)ときに完全放電状態(0%)の基準としてよい。0%及び100%の間の充電率の値の定義には、完全放電状態から完全充電状態までの充電に要する容量(ここでは全容量と呼ぶことがある)を基準とすることにより、任意の充電率を定義してよい。例えば、充電率50%の状態を定義する場合には、充電率100%の状態から全容量の50%を放電した状態、又は、充電率0%の状態から全容量の50%を充電した状態と定義してよい。例えば、充電率67.5%の状態を定義する場合には、充電率50%の状態から全容量の17.5%を充電した状態と定義してよい。なお、0%および100%の間の充電率の値は、電圧によって定義されなくても良い。
【0047】
リチウムイオン二次電池の性能の従来の評価は、図2に示すような0~100%のサイクルを所定回数繰り返したサイクル試験後に測定した容量維持率により行われる。ここで、サイクル試験において、電池の出力電圧は、時間ごとに記録されていてよい。電流の値を一定にして充放電することで、時間は充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電容量に対応する。すなわち、充放電時間×電流が充放電容量となる。
【0048】
図3は、鉛蓄電池の耐久性の評価方法として用いられる充電-放電サイクルの一例である。図3のグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は鉛蓄電池の充電率を示す。まず、ステップ1として、鉛蓄電池において、完全放電状態から完全充電状態まで充電を行い、その後、完全充電状態から完全放電状態まで放電を行う。次に、完全放電状態から完全充電状態まで充電を行う。
【0049】
次に、ステップ2として、完全充電状態から予め定められた第1充電率の状態になるまで放電する。第1充電率は「測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態」であり、例えば充電率50%である。その後、第1充電率の状態から予め定められた第2充電率(例えば67.5%)の状態になるまで充電する。その後、第1充電率の状態と、第2充電率の状態との間で充電-放電サイクルを、あらかじめ定めたサイクル数繰り返す。
【0050】
サイクル数は、規格により定められたものであってよい。規格により定められたサイクル数は85サイクルであってよいが、これに限らない。ステップ2において、充電率50%及び67.5%は一例であり、これら以外の充電率と充電率の間で充電-放電サイクルをあらかじめ定めたサイクル数繰り返してもよい。
【0051】
次に、ステップ3として、第1充電率の状態から完全充電状態になるまで充電し、その後、完全放電状態まで放電し、また完全充電状態になるまで充電する。このときの完全充電状態の充放電容量を記録し、ステップ2に戻り、ステップ2の操作を繰り返す。ステップ2で、放電終止電圧があらかじめ定められた電圧(「許容下限電圧」ともいう。例えば、10V、又は10.5V)に至ったときに、充電-放電サイクルを終了する。鉛蓄電池の耐久性の評価においては、サイクル数が多いステップ2による電池の劣化が比較的大きい。
【0052】
鉛蓄電池の耐久性の評価方法において、ステップ2の充電-放電サイクルのそれぞれのサイクルごとに、放電を行った後の電圧の値である放電終止電圧の値が記録されてよい。例えば、ステップ2の各サイクルにおいて、第1充電率(例えば50%)の状態のときの電圧の値が、放電終止電圧であるとして記録されてよい。鉛蓄電池の耐久性の評価方法は、放電終止電圧を指標としてよい。
【0053】
電流の値を一定にすることで、充放電時間と電圧の値との間に線形的な関係が認められる。このことを利用して、完全充電状態から完全放電状態に至るまでの放電時間の2分の1だけ経過した時刻における電圧の値を、充電率50%の状態のときの電圧の値としてよい。例えば、充放電容量10mAhの電池で、充電率100%の状態から10mAの電流で30分間放電した状態を、充電率50%の状態とする。同様に、完全充電状態から完全放電状態に至るまでの放電時間の32.5%放電した時刻での電圧の値を、充電率67.5%の状態のときの電圧の値としてよい。
【0054】
このようにリチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法では、充電率が0%の状態と100%の状態との充電-放電サイクルを繰り返す。一方、鉛蓄電池の耐久性の評価方法では、充電率が50%の状態と67.5%の状態との充電-放電サイクルを繰り返す。このため、両者の評価方法において、充電-放電サイクルの各サイクルにおける充電率の状態が異なるため、電池に与える負荷が異なっていた。
【0055】
リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法では、サイクル試験後の容量維持率を指標とするのに対し、鉛蓄電池の耐久性の評価方法の上記の例では、充電率50%の状態のときの電圧の値、つまり放電終止電圧を指標とする。つまり、両者の評価方法において、指標となるものが異なる。このため、リチウムイオン二次電池と鉛蓄電池とで、耐久性を単純に比較することが難しかった。
【0056】
放電終止電圧予測装置100は、図2に示す充電-放電サイクルに係る充放電測定情報に基づいて、図3に示す充電-放電サイクルに係る耐久性を予測することができる。したがって、本願発明に係る放電終止電圧予測方法は、リチウムイオン二次電池の耐久性を、鉛蓄電池の耐久性に換算して性能を予測できる。
【0057】
図4は、本実施形態の放電終止電圧予測方法の処理フローの一例である。放電終止電圧予測装置100は、図4のS100からS600の処理を行うことにより、リチウムイオン二次電池の性能について推定した値、及び/又は予測した放電終止電圧の値を生成する。なお、説明の便宜上、S100からS600の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で一部のステップを省略して実行されるものであってもよい。
【0058】
S100は、情報入力段階にあたる。まず、S100において、性能推定部300は、入力部180からリチウムイオン二次電池の充放電測定情報を取得する。充放電測定情報は、充電-放電サイクルを繰り返した際の充放電量、及び電圧の値の記録を含んでよい。充放電量は、充放電容量、及び/又は充放電時間に関する情報を含んでよい。一例として、性能推定部300は、充放電測定情報として、充放電時間ごとの電圧の値を取得する。
【0059】
充放電測定情報は、リチウムイオン二次電池のサイクル試験の放電速度を含んでよい。例えば、1時間で充電率が100%から0%になる放電速度であれば測定規格情報として1Cを含んでよく、20時間で充電率が100%から0%になる放電速度であれば測定規格情報として0.05Cを含んでよい。性能推定部300が充放電測定情報を取得した後で、性能推定部300は処理をS200に進める。
【0060】
次に、S200は、性能推定段階にあたる。S200において、性能推定部300は、取得した充放電測定情報、及び予測対象となる放電終止電圧の測定規格に関する測定規格情報に基づいて、測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態におけるリチウムイオン二次電池(Lithium Ion Battery;LIBともいう)の性能を推定する。
【0061】
測定規格情報は、放電終止電圧を測定するサイクル試験の少なくとも一部のサイクル(例えば、放電終止電圧を測定するサイクル)の充電率の差、及び/又は、放電終止電圧を測定する際の充電率(例えば、上述した第1充電率)に係る情報を含んでよい。例えば、測定規格情報は、図3のステップ2のサイクルの充電率の差である「17.5%(67.5%-50%)」及び「50%」の情報を含んでよい。
【0062】
これに代えて、測定規格情報は、放電終止電圧を測定するサイクル試験の少なくとも一部のサイクル(例えば、放電終止電圧を測定するサイクル)を規定する充電率(例えば、上述した第1充電率及び第2充電率)を含んでよい。例えば、測定規格情報は、図3のステップ2に含まれる「50%」及び「67.5%」を含んでよい。
【0063】
測定規格情報は、放電終止電圧を測定するサイクル試験の放電速度を含んでよい。例えば、1時間で充電率が100%から0%になる放電速度であれば測定規格情報として1Cを含んでよく、20時間で充電率が100%から0%になる放電速度であれば測定規格情報として0.05Cを含んでよい。
【0064】
測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態は、鉛蓄電池の耐久性の評価方法として用いられる測定規格で定められる放電時の電池状態であってよい。一例として、測定規格で定義される放電終止電圧の測定時の電池状態は、第1充電率(例えば充電率50%)の電池の状態である。
【0065】
性能推定部300は、充放電測定情報から、第1充電率(例えば充電率50%)のときの電圧の値を推定してよい。S200において、リチウムイオン二次電池の性能を推定するステップは、図5に示すように、S210からS220のステップを含む。
【0066】
図5は、リチウムイオン二次電池の性能を推定するステップの一例である。
【0067】
まず、S210において、性能推定部300は、充放電測定情報から、充電-放電サイクルの各サイクルの充放電時間を算出する。性能推定部300は、完全充電状態(充電率100%)から完全放電状態(充電率0%)に至るまでの放電時間を、各サイクルについて算出してよい。
【0068】
次に、S220において、性能推定部300は、算出した放電時間に基づいて、リチウムイオン二次電池の性能として、第1充電率(例えば充電率50%)の状態における電圧の値を推定する。
【0069】
図6は、図5のS210及びS220の一例を示す。例えば、S210において、性能推定部300は、充放電測定情報から、充電-放電サイクルの充電時間に対応するT1を取得する。ここで、T1の半分である(1/2)T1は第1充電率(例えば充電率50%)の状態に対応する。
【0070】
S220において、性能推定部300は、(1/2)T1に対応する時間における電圧値である[X]Vを充放電測定情報から特定する。もし、充放電測定情報に(1/2)T1に対応する時間における電圧の記録がない場合には、周囲の時刻(例えば(1/2)T1の直前及び直後)の電圧の記録から内挿及び/又は外挿することにより、(1/2)T1に対応する時間における電圧を、性能推定部300は算出してよい。性能推定部300は、同様にT2とT3の間における充電率50%の電圧値、T4とT5の間における充電率50%の電圧値…と、全てのサイクルの充電率50%の電圧値を推定してもよく、一部のサイクルの充電率50%の電圧値のみを推定してもよい。
【0071】
性能推定部300が算出する性能は、充電率50%時の電圧に限らず他の充電率の状態の電圧でもよい。例えば、第1充電率は60%であってもよく、この場合、性能推定部300は、充電率60%の状態における電圧を算出してよい。この場合、性能推定部300は、放電開始から0.4T1時間後の状態を、充電率60%の状態であると判断してよい。このように、性能推定部300は、算出した放電時間に基づいて、あらかじめ定められた充電率の状態における電圧の値を算出してよい。
【0072】
性能推定部300は、推定した性能を、記憶部190、出力部195、予測部400、及び/又は提示部600に出力してよい。性能推定部300は、性能を出力した後で、処理をS300に進める。なお、放電終止電圧予測装置100は、推定した性能をそのまま予測した放電終止電圧として用いてもよいが、更に精度を高める場合には後述する予測段階等を実行してよい。
【0073】
次に、S300は、予測段階にあたる。S300において、予測部400は、推定したリチウムイオン二次電池の性能に基づいて、測定規格に対応する測定を行った際の放電終止電圧を予測する。予測部400は、性能推定部300が推定した性能における、充放電測定情報に係る充電-放電サイクルによるリチウムイオン二次電池への負荷と、測定規格で定義される測定によるリチウムイオン二次電池への負荷との相違(以下、単に「負荷の相違」とも言う)の影響を補正することで、放電終止電圧を予測してよい。
【0074】
負荷の相違の影響を補正することで、リチウムイオン二次電池の測定規格に対応する測定を行った際の放電終止電圧をより正確に予想することができる。この、負荷の相違の影響を補正するステップを、放電終止電圧補正段階ともいい、後述する第1補正段階、第2補正段階、及び第3補正段階を含んでよい。
【0075】
ここで負荷の相違とは、充放電の総量の差、又は、実際の電池の劣化(例えば容量維持率の低下)に基づくものであって良い。例えば、負荷の相違は、充放電測定情報に係る充電-放電サイクルにおける総充電量及び総放電量の和と、測定規格で定義される測定による充電-放電サイクルにおける総充電量及び総放電量の和との相違であってよい。
【0076】
S300において、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するステップは、図7図11又は図13に示すように、それぞれS310からS313のステップ、S320からS324、又はS330からS337のステップを含む。S300のステップは、S310からS313のステップ、S320からS324のステップ、又はS330からS337のうち、いずれか一つのステップのみを行ってもよいし、いずれか2つ以上のステップを並列して行ってもよい。
【0077】
図7は、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するステップの一例である。図7では、充電-放電サイクルの充放電量の差に基づいて放電終止電圧を予測する例を説明する。
【0078】
まず、S310において、予測部400は、充放電測定情報の充電-放電サイクルの充電率の上限値及び下限値の差分の値を算出する。これにより算出した差分の値を、第1差分という。例えば、図2の例のように、充電-放電サイクルが、完全充電状態(充電率100%)と完全放電状態(充電率0%)とをサイクルする場合、100%と0%との差である100%を、第1差分の値としてよい。
【0079】
次に、S311において、予測部400は、測定規格で定義される充電率の上限値(例えば上述した第2充電率)及び下限値(例えば上述した第1充電率)の差分の値を算出する。これにより算出した差分の値を、第2差分という。第2差分は、測定規格で定義される充電率の上限値及び下限値の差分の値のうち、その充電率に従う充電-放電サイクルの回数が最も多く規定される充電率の差分の値であってよい。
【0080】
図3の例では、充放電サイクルの充電率の上限値及び下限値がそれぞれ100%及び0%のサイクル(ステップ1)と、67.5%(第2充電率)及び50%(第1充電率)のサイクル(ステップ2)とが存在する。図3の例では、充放電サイクルの充電率の上限値及び下限値が、67.5%及び50%のサイクル数(ステップ2)の方が、100%及び0%のサイクル数(ステップ1)と比較して多い。この場合、第2差分として、67.5%(第2充電率)と50%(第1充電率)との差である17.5%を、第2差分の値としてよい。
【0081】
次に、S312において、予測部400は、第1差分の値と第2差分の値との大きさの比に応じた値を算出する。これにより算出した値を、第1補正係数という。第1差分が100%であり、第2差分が17.5%である場合、第1補正係数の値は、17.5/100としてよく、約6分の1と算出してよい。この、S310からS312のステップを、第1補正係数算出段階ともいう。
【0082】
次に、S313は、第1補正段階にあたる。S313において、予測部400は、算出した第1補正係数の値に基づいて、性能推定部300から取得した、S200のステップで推定した性能を補正して放電終止電圧を得る。
【0083】
第1差分の値は、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法として用いられる充電-放電サイクルの充電率に由来する値である。第2差分の値は、鉛蓄電池の耐久性の評価方法として用いられる充電-放電サイクルの充電率に由来する値である。そのため、第1補正係数の値が約6分の1であるということは、鉛蓄電池の耐久性の評価方法における1サイクルあたりの負荷は、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法における負荷の約6分の1であることを示している。
【0084】
つまり、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法により得られたリチウムイオン二次電池の寿命よりも、鉛蓄電池の耐久性の評価方法により予測されるリチウムイオン二次電池の寿命は、負荷の値(約6分の1)の逆数である約6倍長いと推定される。
【0085】
例えば、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法に基づく測定で、リチウムイオン二次電池が500回のサイクル数で放電終止電圧の下限値に達する、つまり寿命に達すると推定される場合、これは鉛蓄電池の耐久性の評価方法に換算すれば、約6倍の約63000回のサイクルで寿命に達すると予測される。このように、予測部400は、2つの耐久性の評価方法が異なる場合にも、その負荷の違いを考慮して、推定した性能を補正して、放電終止電圧を得ることができる。
【0086】
例えば、充放電測定情報において100サイクル目の電圧が3.0Vである場合、予測部400は、100サイクルを第1補正係数(例えば1/6)で除した600サイクルの放電終止電圧を3.0Vとして予測する。このように予測部400は、放電終止電圧が得られるサイクル数を、充放電測定情報に係るサイクル数を第1補正係数で除した数に応じて補正することにより、S200で推定した性能を補正する。予測部400は、放電終止電圧の値を記憶部190、及び/又は提示部600に出力し、処理をS400に進めてよい。
【0087】
次に、S400は、寿命予測段階にあたる。S400において、予測部400は、補正した放電終止電圧に基づいて、あらかじめ定められた許容下限電圧に達する充電-放電サイクルのサイクル数である許容サイクル数を予測する。二次電池の放電終止電圧が許容下限電圧に至ると、二次電池は急速に劣化するため、許容サイクル数は寿命の目安となるものである。予測部400は、許容サイクル数を予測するために、補正した放電終止電圧に対して、任意の直列数を掛け合わせることで、さらに補正した放電終止電圧を算出してよい。例えば、補正された放電終止電圧が3.0V、直列数が4の場合、さらに補正した放電終止電圧は12Vである。
【0088】
図8は、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧から許容サイクル数を予測するフローを説明する図である。図8のグラフにおいて、横軸はサイクル数、縦軸は放電終止電圧である。予測部400は、S300で得られたサイクル数ごとの放電終止電圧に基づいて、回帰直線845を算出してよい。例えば、予測部400は、最小二乗法を用いてサイクル数ごとの放電終止電圧のプロット(図中に示す丸印のプロット)から回帰直線を算出してよい。予測部400は、他の回帰手法を用いて回帰直線を算出してもよい。
【0089】
次に、予測部400は、許容下限電圧の値856(例えば、10V、又は10.5V)を与える許容サイクル数Cpを算出する。許容サイクル数Cpは、回帰直線845と放電終止電圧が交差する点に対応するサイクル数である。許容サイクル数Cpは、リチウムイオン二次電池の寿命と考えてよい。予測部400は、充電-放電サイクルにおいて、予測した各サイクルの放電終止電圧、回帰直線の傾き、及び許容サイクル数Cpを提示部600に出力した後で、予測部400は処理をS500に進める。
【0090】
次に、S500において、提示部600は、性能推定部300、及び/又は予測部400から取得した、推定又は予測した各サイクルの放電終止電圧、回帰直線の傾き、及び許容サイクル数Cpの可視化を行う。可視化は、グラフ形式、及び/又は表形式を作成するものであってよい。可視化は、放電終止電圧及びサイクル数を、2以上の軸からなるグラフ領域上にプロットするものであってよい。一例として、提示部600は、各サイクルの放電終止電圧、回帰直線の傾き、及び許容サイクル数Cpとの関係を表す、図8に示すグラフを出力部195に出力してよい。
【0091】
図9は、提示部600が作成したグラフの一例である。図9のグラフ850において、横軸はサイクル数、縦軸は放電終止電圧である。提示部600は、リチウムイオン二次電池の異なる電解液組成について、S200又はS300で得られた各サイクルの放電終止電圧の値をプロットしてよい。例えば、プロット857はS300で得られた電解液組成Aを有するリチウムイオン二次電池の各サイクルの放電終止電圧に対応し、直線851はプロット857から得られた回帰直線を表す。同様にプロット858、及び859はS300で得られた電解液組成B、及びCを有するリチウムイオン二次電池の各サイクルの放電終止電圧に対応し、直線852、853はプロット858、859のそれぞれから得られた回帰直線を表す。
【0092】
図9のグラフから、3つの電解液組成のうち、直線851を与える電解液組成Aが、より傾きが小さく、そのため、3つの電解液組成のうちで最も大きい許容サイクル数Cpを与える。このように、本願発明に係る放電終止電圧予測方法は、異なる電解液組成のリチウムイオン二次電池において、それらの性能を比較することができる。つまり、本願発明は、異なる電解液組成のリチウムイオン二次電池において、それぞれの許容サイクル数Cp、つまり寿命を予測することができる。
【0093】
提示部600は、直線851~853及びプロット857~859ごとに色を変えて出力してよい。例えば、提示部600は、ユーザから入力部180を介して色についての指定を入力して、直線及び/又はプロットの色を適宜変更することができてよい。このようにすることで、ユーザが、電解液の種類ごとのプロットを判別することが容易になる。
【0094】
図10は、提示部600が作成したグラフの他の一例である。図10のグラフ860において、横軸はサイクル数、縦軸は放電終止電圧である。プロット865は、S300で得られた特定の電解液組成を有するリチウムイオン二次電池の各サイクルの放電終止電圧に対応し、直線861はプロット865から得られた回帰直線を表す。
【0095】
ここで、プロット864は、S200で得られた特定の電解液組成を有するリチウムイオン二次電池の各サイクルの放電終止電圧に対応する。つまり、プロット864は、第1補正係数等(例えば、後述する第2補正係数であってもよい)でサイクル数が補正される前の状態における電圧を意味する。直線862はプロット864から得られた回帰直線を表す。直線862に係る回帰直線は、直線861と同様に予測部400が作成してよい。
【0096】
図10のグラフ860によれば、第1補正係数等で補正した直線862の方が、補正していない直線861よりも傾きが小さい。そのため、直線862により予測される許容サイクル数Cpの方が、直線861により予想されるものより大きい。つまり、直線861による寿命予想(サイクルCp)は、より手堅い予想として活用することができる。提示部600は、直線861及び直線862で囲まれる領域(図10のグレーの領域)を、各サイクルの放電終止電圧の予測範囲として出力してよい。
【0097】
提示部600は、許容サイクル数Cpを出力してよい。例えば、予測部400は、直線861と許容下限電圧の値856を表す直線との交点となる下限サイクル数、及び、直線862と許容下限電圧の値856を表す直線との交点となる上限サイクル数を算出し、提示部600が上限サイクル数及び/又は下限サイクル数を出力してよい。また、予測部400は、上限サイクル数及び下限サイクル数の平均値を出力してよい。
【0098】
次に、S600において、提示部600は、可視化した情報(例えば、グラフ形式、及び/又は表形式)を、出力部195に出力する。提示部600は、図8から図10、及び図14に示すグラフの少なくとも1つを出力部195に提示してよい。提示部600は、図9のグラフを出力する場合、直線851、直線852及び直線853のそれぞれについて、異なる色を用いて出力してよい。図10又は図14の直線や領域についても同様であってよい。S500及びS600のステップを、出力段階ともいう。
【0099】
提示部600は、横軸、縦軸に加えて、第三の軸を設定して、空間座標系のグラフ領域として出力してよい。提示部600は、サイクル数、放電終止電圧、及び放電容量をそれぞれ横軸、縦軸、高さ軸にとって、空間座標系のグラフとして出力してもよい。この場合、提示部600は、ユーザから、入力部180を介してグラフ、及び/又は表の表示形式についての入力を受けて、グラフ、及び/又は表の表示形式を適宜変更することができてよい。
【0100】
提示部600は、ユーザがマウスオーバーした直線851について、直線851に対応する充放電測定情報、及び/又は予測値を表示してよい。提示部600は、直線851に対応する充電-放電サイクルの測定温度、各サイクルの電圧値、放電時間、放電容量、放電速度、リチウムイオン二次電池の直列数、回帰直線の傾き、許容サイクルCpのうちの少なくとも1つを出力部195に表示してよい。
【0101】
以上に示したように、本実施形態の放電終止電圧予測方法によれば、リチウムイオン二次電池の耐久性を、鉛蓄電池の耐久性に換算して、放電終止電圧、及び/又は許容サイクル数、つまり、寿命を予測することができる。
【0102】
次に、本実施形態の変形例を示す。
[第1変形例]
第1変形例では、図7で説明した第1補正係数に代えて、容量維持率の比較に基づいて算出した第2補正係数を用いる。
【0103】
図11は、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するステップの他の一例である。第1変形例では、図7のフローに代えて図11に示すフローを行ってよい。
【0104】
S320は、追加充放電容量測定段階にあたる。まず、S320において、予測部400は、追加充放電容量測定情報を取得する。追加充放電容量測定情報は、追加の充電-放電サイクルで測定した際の、測定対象となるリチウムイオン二次電池の充放電容量に関する情報を含んでよい。予測部400は、追加充放電容量測定情報を入力部180から取得してよいし、記憶部190に格納してある追加充放電容量測定情報を随時呼び出してもよい。
【0105】
追加の充電-放電サイクルは、充放電測定情報における充電-放電サイクルの後に、追加で1サイクル行われるものであってよい。追加の充電-放電サイクルは、測定規格情報における測定規格と同じ放電速度(例えば、0.05C)で行われるものであってよい。これに代えて、充放電測定情報における充電-放電サイクルと同じ放電速度(例えば、1C)で行われるものであってよい。
【0106】
ここで、予測部400は、追加の充電-放電サイクルとして行った1サイクルが、充放電測定情報の開始時の充電-放電サイクルから数えて何サイクル目であるかを算出し、これをC1とする。充放電測定情報において充電-放電サイクルを100サイクル行い、その後、追加の充電-放電サイクルを1サイクル行った場合、追加の充電-放電サイクルは101サイクル目にあたるため、予測部400は、C1が101(サイクル)であると算出してよい。
【0107】
この場合、予測部400は、101サイクル目の電池の充放電容量に関する情報を取得してよい。充放電容量に関する情報は、充放電容量、又は、充放電容量を間接的に示す情報であってもよい。
【0108】
次に、S321は、追加充放電容量維持率算出段階にあたる。S321において、予測部400は、S320において取得した充放電容量(例えば101サイクル目の充放電容量)と、初期の放電容量(例えば1サイクル目の充放電容量)に基づいて、追加の充電-放電サイクルにおける容量維持率である追加充放電容量維持率Rを算出する。
【0109】
一例として、予測部400は、充電-放電サイクルの1サイクル目の放電容量の値をX1とし、101サイクルの充電-放電サイクルにおける放電容量の値をX2として、追加の充電-放電サイクルにおける追加充放電容量維持率Rを、X2/X1により算出する。充電-放電サイクルを繰り返すと、放電容量は低下することが知られているので、追加充放電容量維持率Rの値は、100%未満になる。
【0110】
次に、S322は、充放電参照サイクル数算出段階にあたる。S322において、予測部400は、充放電参照情報を参照して、鉛蓄電池の測定規格の測定において、追加充放電容量維持率Rに相当する容量維持率となるサイクル数(「充放電参照サイクル数」ということがある)を算出する。ここで、充放電参照情報は、測定規格で定義される、充電-放電サイクルを繰り返した際のサイクル数及び充放電容量維持率の記録を含んでよい。
【0111】
充放電参照情報は、鉛蓄電池の測定規格で定義される、充電-放電サイクルのサイクル数ごとのリチウムイオン二次電池の充放電容量維持率の記録を含んでよい。一例として、充放電参照情報は、リチウムイオン二次電池において、充放電サイクルの充電率の上限値及び下限値が、67.5%及び50%のサイクル数を繰り返した際の充放電容量維持率の情報を含む。
【0112】
充放電参照情報は、予め測定されて記憶部190に記憶されていてよい。例えば、電解液の組成及び/又はリチウム塩の種類を、リチウムイオン二次電池の充電-放電サイクルの条件と同一した上で、充電率50~67.5%のサイクルの充放電サイクルを繰り返しながら、サイクルごとの容量維持率を測定・記録したものを、充放電参照情報として記憶部190に記録しておいてよい。
【0113】
充放電参照情報に係る試験の条件は、リチウムイオン二次電池の充電-放電サイクルの条件と同一でなくても十分近似していればよい。例えば、リチウム塩の濃度が近い(充電-放電サイクルを行ったリチウムイオン二次電池の電解液のリチウム塩の濃度の±10%程度の範囲に入る)ものであればよい。
【0114】
予測部400は、充放電参照情報を、記憶部190から随時呼び出してよいし、入力部180から都度入力を受けてもよい。リチウムイオン二次電池の電解液の組成、リチウム塩の種類、リチウム塩の濃度等が同一、又は近いリチウムイオン二次電池の充放電参照情報を用いることで、精度の高い推定が可能となる。
【0115】
次に、予測部400は、充放電参照情報と追加充放電容量維持率Rとを比較して、追加充放電容量維持率Rの値に相当する、充放電参照情報のサイクル数(「充放電参照サイクル数」ということがある)を算出する。
【0116】
図12は、充放電参照情報の一例である。図12のグラフにおいて、横軸はサイクル数、縦軸は充放電容量維持率Rを示す。予測部400は、追加充放電参照情報において、S321で算出した追加充放電容量維持率Rの値に相当する追加充放電参照情報のサイクル数である充放電参照サイクル数を算出する。予測部400は、算出した充放電参照サイクル数をC2とする。一例として、C2の値は、500(サイクル)である。
【0117】
次に、S323において、予測部400は、追加の充電-放電サイクルのサイクル数であるC1と、充放電参照サイクル数であるC2との大きさの比に応じた値を算出する。これにより算出した値を、第2補正係数という。C1が101(サイクル)であり、C2が500(サイクル)である場合、第2補正係数の値は、101/500としてよく、約5分の1と算出してよい。
【0118】
次に、S324において、予測部400は、算出した第2補正係数の値に基づいて、S200のステップで推定した性能を補正して放電終止電圧を得る。このS323及びS324のステップを、第2補正段階ともいう。第2補正係数による補正は、S313で説明した第1補正係数による補正と同様に行ってよい。
【0119】
C1は充電率0~100%のサイクルを行って容量維持率Rとなったサイクル数である一方で、C2は充電率50~67.5%のサイクルを行って容量維持率Rとなったサイクル数である。前者のサイクルの方がサイクル1回あたりの電池への負荷は大きいので、C2の数値はC1よりも大きくなる。
【0120】
第2補正係数の値が約5分の1ということは、規格情報で定義される評価方法における負荷は、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法における負荷の約5分の1であることを示している。つまり、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法により予想されるリチウムイオン二次電池のサイクル寿命を約5倍(1/5の逆数)にすれば、規格情報で定義される評価方法におけるサイクル寿命を予想できると考えられる。
【0121】
例えば、リチウムイオン二次電池の耐久性の評価方法に基づく測定で、リチウムイオン二次電池が1万回のサイクル数で放電終止電圧の下限値に達する、つまり寿命に達すると推定される場合、これは鉛蓄電池の耐久性の評価方法に換算すれば、約5倍の約5万回で寿命に達すると予測される。
【0122】
例えば、充放電測定情報において100サイクル目の電圧が3.0Vである場合、予測部400は、100サイクルを第2補正係数(例えば1/5)で除した500サイクルの放電終止電圧を3.0Vとして予測する。 このように予測部400は、放電終止電圧が得られるサイクル数を、充放電測定情報に係るサイクル数を第2補正係数で除した数に応じて補正することにより、S200で推定した性能を補正する。
【0123】
このように、本変形例によれば、性能推定部300は、2つの耐久性の評価方法が異なる場合にも、追加の充電-放電サイクルの測定情報を用い、その負荷の違いを考慮して、推定した性能を補正して放電終止電圧を得ることができる。予測部400は、放電終止電圧の値を記憶部190、及び/又は提示部600に出力し、処理をS400に進めてよい。
【0124】
[第2変形例]
第2変形例では、図7で説明した第1補正係数に代えて、機械学習に基づく補正を行う。本変形例では、機械学習部500が、充電-放電サイクルのサイクル数及び放電終止電圧との関係を表す回帰直線の傾きを出力する複数の予測モデルを学習する。
【0125】
図13は、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧を予測するステップの他の一例である。第2変形例では、図7のフローに代えて図13に示すフローを行ってよい。
【0126】
まず、S330において、機械学習部500は、入力部180又は記憶部190から、学習モデルの学習に用いる学習情報を取得する。学習情報は、充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、温度、及び充放電速度の少なくとも一つを含んでよい。
【0127】
一例として、学習情報は、(充電-放電サイクルの充電率の上限値及び下限値の差分の値、充電-放電サイクルを行った温度条件、充電-放電サイクルの放電速度、充電-放電サイクルの各サイクルの放電終止電圧、充電-放電サイクルのサイクル数及び各サイクルの放電終止電圧との関係を表す回帰直線の傾き)に関する情報のセットを複数セット(例えば、100セット)含む。学習情報に含まれる各セットの具体的な例として、([充電率の上限値と下限値との差分の値100%]、[測定温度50度]、[放電速度1C]、[直列数4]、[1サイクル目の放電終止電圧12.5V、・・・・100サイクル目の放電終止電圧12.2V]、「回帰直線の傾き0.03])が挙げられる。
【0128】
次に、S331において、機械学習部500は、学習情報の複数セットを、訓練セットとテストセットに分割する。機械学習部500は、学習情報の100セットを90セットと10セットに分割し、90セットを訓練セットとし、10セットをテストセットとしてよい。
【0129】
次に、S332において、機械学習部500は、訓練セットを用いて、複数の予測モデルを学習する。機械学習部500は、S331で生成した訓練セットの情報を入力して、充電-放電サイクルの各サイクルの放電終止電圧の予測値、及び/又は、サイクル数と予測した放電終止電圧との関係を表す回帰直線の傾きの予測値を生成する予測モデルを学習する。S330からS332のステップを、学習段階ともいう。
【0130】
予測モデルが予測する予測値は、学習情報の各セットの実測値に対応するものとなる。例えば、セットの実測値として、([1サイクル目の放電終止電圧の実測値、・・・・100サイクル目の放電終止電圧の実測値]、[回帰直線の傾きの実測値])が含まれる場合、予測値は([1サイクル目の放電終止電圧の予測値、・・・・100サイクル目の放電終止電圧の予測値]、[回帰直線の傾きの予測値])となる。回帰直線の傾きは、サイクル数、及び充電-放電サイクルの各サイクルの放電終止電圧の予測値から、最小二乗法を用いて算出することができる。
【0131】
機械学習部500は、従来知られた機械学習の手法により複数の予測モデルを学習してよい。機械学習部500は、線形回帰分析を用いて複数の予測モデル(例えば、「予測モデルA」及び「予測モデルB」ともいう)を学習してよい。一例として、線形回帰分析の手法は、サポートベクター回帰(Support Vector Regression;SVR)である。
【0132】
機械学習部500は、同一の手法において、複数の異なるハイパーパラメータを設定して、各予測値を学習する複数の予測モデルを学習してよい。一例として機械学習部500は、2種類のハイパーパラメータを設定して、回帰直線の傾きを予測するために2種類の予測モデルを学習してよい。
【0133】
予測モデルのハイパーパラメータは、予測モデルの設定にあたるものである。予測モデルのハイパーパラメータは、正則化係数、不感度係数、カーネル関数等のうちの1つ又は複数であってよいが、これらに限られない。
【0134】
次に、S333において、機械学習部500は、S331で分割されたテストセットを用いて、複数の予測モデルの精度を測定する。モデル精度測定部550は、テストセットの情報を、機械学習部500から取得した複数の予測モデルに入力する。予測モデルは、各サイクルの放電終止電圧の予測値、及び/又は回帰直線の傾きの予測値を生成してよい。予測値は、テストセットに含まれる各サイクルの放電終止電圧の実測値、及び/又は回帰直線の傾きの実測値に対応する。
【0135】
機械学習部500は、予測モデルA及び予測モデルBに基づき、回帰直線の傾きをそれぞれ1つずつ予測してよい。機械学習部500は、生成した予測値及び実測値をモデル精度測定部550に送る。
【0136】
次に、モデル精度測定部550は、機械学習部500から取得した予測値、及び、テストセットに含まれる実測値を用いて、予測モデルの精度を測定する。モデル精度測定部550は、複数の予測モデルごとの精度をそれぞれ測定してよい。精度は、予測値と実測値との誤差により測定されてよい。誤差は、二乗平均平方根誤差(RMSE;Root Mean Squared Error)、平均平方誤差、又は平均絶対誤差等であってよいが、これらに限られない。
【0137】
次に、S334において、モデル精度測定部550は、複数の異なる種類の予測モデルの精度を測定した結果に基づいて、最も誤差の小さい予測モデルを、最も精度がよい(すなわち、最も精度が高い)予測モデルとして決定する。モデル精度測定部550は、予測値と実測値から算出される誤差の二乗の和を計算し、誤差の二乗の和が最小となるモデルを、最も精度がよい予測モデルとして決定してよい。モデル精度測定部550は、最も精度がよい予測モデル、又は、誤差の二乗の和があらかじめ定められた値よりも小さなモデルのうちの1つ又は複数を、予測部400に出力してよい。
【0138】
例えば、モデル精度測定部550が、予測モデルA及び予測モデルBのうち予測モデルAの方を精度が高いと判断する場合、モデル精度測定部550は、適切な予測モデルとして予測モデルAを予測部400に出力する。予測部400に出力された予測モデルは、S335以降のステップで用いられてよい。予測モデルがすぐにS335以降のステップで用いられない場合は、モデル精度測定部550は、予測モデルを記憶部190に格納し、S335以降のステップを行う際に、予測部400が記憶部190に格納された予測モデルを随時呼び出して使用してもよい。
【0139】
次に、S335において、予測部400は、入力部180又は記憶部190から、予測したい充電-放電サイクルに係る新規予測情報を取得する。新規予測情報は、予測したい充電-放電サイクルにおける充電率の上限値及び下限値の差分の値、充電-放電サイクルを行う温度条件、及び充電-放電サイクルの放電速度のうちの少なくとも1つの値を含んでよい。
【0140】
次に、S336において、予測部400は、モデル精度測定部550から取得した予測モデルを用いて、新規予測情報から、予測したい充電-放電サイクルに係る各サイクルの放電終止電圧、及び/又は回帰直線の傾きを予測する。予測部400は、S335で取得した予測モデルに加えて/代えて、記憶部190から呼び出した予測モデルを用いて放電終止電圧、及び/又は回帰直線の傾きの予測値を生成してもよいし、ユーザから入力部180を介して取得した予測モデルを用いて予測値を生成してもよいし、データベースを検索して得られた予測モデルを用いて予測値を生成してもよい。
【0141】
次に、S337において、予測部400は、予測した回帰直線の傾きに基づいて、推定した性能を補正して放電終止電圧を得る。予測部400は、1回目のサイクルにおける放電終止電圧の値と、予測した回帰直線の傾きから、2回目以降のサイクルにおける放電終止電圧を得てよい。予測部400は、1回目のサイクルにおける放電終止電圧のプロットを通り、予測した傾きを与える直線を引くことで、2回目以降のサイクルにおける放電終止電圧を得てよい。S336及びS337のステップを、第3補正段階ともいう。
【0142】
機械学習部500がより多くの予測モデルを学習することで、予測部400は、より高い精度の予測モデルを用いて、放電終止電圧、及び/又は回帰直線の傾きをより高い精度で予測することができる。放電終止電圧を補正した後で、予測部400は、補正した放電終止電圧の値を記憶部190、及び/又は提示部600に出力してよい。
【0143】
予測モデルにより、放電終止電圧、及び/又は回帰直線の傾きを予測するためには、予測したいリチウムイオン二次電池と同じ電解液組成、及び同じ電池構成のリチウムイオン二次電池に係る学習情報を用いて学習する必要がある。しかし、機械学習部500が、さらに電解液組成、及び/又は電池構成も学習データに含めて予測モデルを学習することで、異なる電解液組成、及び/又は異なる電池構成を有するリチウムイオン二次電池についても、放電終止電圧、及び/又は回帰直線の傾きを予測してよい。
【0144】
図14は、第2変形例において、提示部600が作成したグラフの他の一例である。図14のグラフ870において、横軸はサイクル数、縦軸は放電終止電圧である。図14において、直線873は、S336のステップで算出した回帰直線である。図14のグラフ870から、実測値に基づいて算出した回帰直線である直線861、及び補正を行って算出した回帰直線である直線862に比べて、直線873の方が傾きはより小さく、そのため、許容サイクルCpの値はより大きいことが明らかである。
【0145】
このように、機械学習部500により予測モデルを学習し、予測モデルを用いた予測を行うことで、充電-放電サイクルの充電率の上限値及び下限値、測定温度、充電速度等の負荷に与える因子に基づいて、より精度の高い許容サイクルCpを算出することができる。
【0146】
このように本変形例によれば、機械学習を用いることで、高精度の放電終止電圧、及び/又は許容サイクル数の予測ができる。
【0147】
図4に示す本実施形態では、S300のステップは、S310からS313のステップ、S320からS324のステップ、又はS330からS337のいずれか一つのステップのみを行ってもよいし、いずれか2つ以上のステップを並列して行ってもよい。図15に示す第一変形例では、これら3つのステップを並列して行い、予測部400がそれぞれのステップで算出された許容サイクル数を比較する。
【0148】
[第3変形例]
本変形例において、S400とS500の間において図15に示すフローが実行されてよい。図15は、放電終止電圧から許容サイクル数を予測するフローを示す。
【0149】
まず、S450において、予測部400は、S313、S324、及びS337で得られた放電終止電圧の値に基づいて、それぞれの許容サイクル数Cpを算出する。許容サイクル数Cpの算出は、S400のステップと同様の処理により行ってよい。予測部400は、算出されたそれぞれの許容サイクル数Cpを比較する。
【0150】
次に、S451において、予測部400は、それぞれの許容サイクル数Cpを比較した結果、これらのCpのうち最も小さいCpの値を、許容サイクル数であると判断してよい。性能推定部300は、これらのCpの値を提示部600に出力してよい。Cpの値の入力を受けた提示部600は、これらのCpの値をグラフ形式、及び/又は表形式に表してよい。
【0151】
このように、性能推定部300が、3つのステップで算出した許容サイクル数Cpを比較し、最も小さいCpの値を許容サイクル数であると判断して出力することで、ユーザはリチウムイオン二次電池の寿命として最も安全な許容サイクル数を採用することができる。
【0152】
図16は、演算部200として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部を備える。
【0153】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。表示装置2080には、演算部200の内部で生成される様々な情報(例えば、予測値等)を、表示することができる。
【0154】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、有線又は無線によりネットワークを介して他の装置と通信する。また、通信インターフェイスは、通信を行うハードウェアとして機能する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD-ROMドライブ2060は、CD-ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0155】
入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続するとともに、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0156】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0157】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を演算部200として機能させるプログラムは、性能推定モジュールと、予測モジュールと、機械学習モジュールと、モデル精度測定モジュールと、提示モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、性能推定部300、予測部400、機械学習部500、モデル精度測定部550、及び提示部600としてそれぞれ機能させてよい。
【0158】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段であるコンピュータ1900を、性能推定部300、予測部400、機械学習部500、モデル精度測定部550、及び提示部600として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の演算部200が構築される。
【0159】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD-ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0160】
CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060(CD-ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイル又はデータベース等の中から、全部又は必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020及び外部記憶装置等をメモリ、記録部、又は記憶装置等と総称する。
【0161】
ここで、記憶装置等は、演算部200の情報処理に必要な情報、例えば、充放電測定情報等を必要に応じて記憶し、演算部200の各コンポーネントに必要に応じて供給する。
【0162】
本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0163】
CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数又は定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすか否かを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、又はサブルーチンを呼び出す。
【0164】
CPU2000は、記憶装置内のファイル又はデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0165】
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095の他に、DVD又はCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
【0166】
本開示において、演算部200が、プロセッサとしてCPU2000を有する構成を示したがプロセッサの種類は特に限定されない。例えば、プロセッサとして、GPU、ASIA,FPGA等を適宜使用することができる。また、本開示において、演算部200が、補助記憶装置としてハードディスクドライブ2040を有する構成を示したが、補助記憶装置の種類は特に限定されない。例えば、ハードディスクドライブ2040に代えて、又は、ハードディスクドライブ2040とともに、ソリッドステートドライブ等の他の記憶装置を用いてもよい。
【0167】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0168】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0169】
100 放電終止電圧予測装置
180 入力部
190 記憶部
195 出力部
200 演算部
300 性能推定部
400 予測部
500 機械学習部
550 モデル精度測定部
600 提示部
845 回帰直線
850 グラフ
851 直線
852 直線
853 直線
856 許容下限電圧の値
857 プロット
858 プロット
859 プロット
860 グラフ
861 直線
862 直線
864 プロット
865 プロット
870 グラフ
873 直線
1900 コンピュータ
2000 CPU
2010 ROM
2020 RAM
2030 通信インターフェイス
2040 ハードディスクドライブ
2050 フレキシブルディスク・ドライブ
2060 CD-ROMドライブ
2070 入出力チップ
2075 グラフィック・コントローラ
2080 表示装置
2082 ホスト・コントローラ
2084 入出力コントローラ
2090 フレキシブルディスク
2095 CD-ROM
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