(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149293
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20231005BHJP
F01P 3/12 20060101ALI20231005BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20231005BHJP
F02M 26/33 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
F01P7/16 503
F01P3/12
F01P3/20 F
F01P7/16 504A
F01P7/16 504Z
F02M26/33 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057786
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA05
3G062ED08
3G062GA06
3G062GA08
3G062GA21
(57)【要約】
【課題】ラジエタに流れる冷却水の温度が上昇している場合に冷却能力を向上できる内燃機関の冷却システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の冷却システムは、内燃機関の冷却水を冷却するラジエタに接続される第1通路と、前記ラジエタと異なる第1冷却装置に接続される第2通路と、前記第1通路の温度を検知する温度検知部と、前記第1通路、および前記第2通路に接続され、各通路の開度を制御することにより各通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、前記前記第2通路が開状態であるときに、前記温度検知部によって検知した温度が所定温度以上の場合、前記流量制御弁を移動させて前記第1通路を全開にしつつ前記第2通路を閉じる方向に前記流量制御弁を移動させる閉弁制御を実行する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却水を冷却するラジエタに接続される第1通路と、
前記ラジエタと異なる第1冷却装置に接続される第2通路と、
前記第1通路の温度を検知する温度検知部と、
前記第1通路、および前記第2通路に接続され、各通路の開度を制御することにより各通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、
前記前記第2通路が開状態であるときに、前記温度検知部によって検知した温度が所定温度以上の場合、前記流量制御弁を移動させて前記第1通路を全開にしつつ前記第2通路を閉じる方向に前記流量制御弁を移動させる閉弁制御を実行する制御装置と、
を備える、内燃機関の冷却システム。
【請求項2】
前記第2通路は、前記内燃機関の排気を循環する排気循環装置に流れる排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置に接続され、
前記制御装置は、前記排気循環装置に前記排気循環ガスが導入されている場合は、前記閉弁制御を禁止する、
請求項1に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項3】
前記ラジエタおよび前記第1冷却装置と異なる第2冷却装置と接続される第3通路をさらに備え、
前記2通路は、前記第3通路よりも通路径が大きい、
請求項1または2に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項4】
前記内燃機関に接続される変速装置を変速機冷却装置、および前記内燃機関に充填されるオイルを冷却するオイル冷却装置の少なくともいずれか一方に接続される第3通路をさらに備え、
前記第2通路は、前記内燃機関の排気を循環する排気循環装置に流れる排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置に接続され、
前記制御装置は、前記閉弁制御を実行する場合、前記流量制御弁を移動させて前記第2通路を開状態から閉状態にするとともに、前記第3通路は開状態を維持する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記内燃機関の回転数が所定回転数以上の場合に、冷却水温度によらず第1通路と、第2通路と、を開く圧抜制御を実行し、
前記圧抜制御を実行する場合は、前記閉弁制御を禁止する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関のシリンダヘッドおよび排気循環装置などの冷却が必要な部品に冷却水を供給する通路を備えた内燃機関の冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような内燃機関の冷却システムは、ラジエタに冷却水を供給する通路を有し、ラジエタによって冷却水が冷却される。特許文献1は、各通路の流量を制御する流量制御弁を有し、各通路に最適な流量の冷却水が流れるように流量制御弁を制御する内燃機関の冷却システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、アイドルストップ中に暖房性能が落ちないようにヒータへの冷却水量を増加する内燃機関の冷却システムを開示する。さらに特許文献1は、アイドルストップ中にシリンダヘッドを冷却しノッキングを抑制するために、シリンダヘッドの冷却通路は開いたままとする内燃機関の冷却システムを開示する。特許文献1は、ラジエタに流れる冷却水の温度が上昇している場合に対応できる内燃機関の冷却システムは、開示されていない。
【0005】
本開示の課題は、ラジエタに流れる冷却水の温度が上昇している場合に、冷却能力を向上できる内燃機関の冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の冷却システムは、内燃機関の冷却水を冷却するラジエタに接続される第1通路と、前記ラジエタと異なる第1冷却装置に接続される第2通路と、前記第1通路の温度を検知する温度検知部と、前記第1通路、および前記第2通路に接続され、各通路の開度を制御することにより各通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、前記前記第2通路が開状態であるときに、前記温度検知部によって検知した温度が所定温度以上の場合、前記流量制御弁を移動させて前記第1通路を全開にしつつ前記第2通路を閉じる方向に前記流量制御弁を移動させる閉弁制御を実行する制御装置と、を備える。
【0007】
この内燃機関の冷却システムによれば、冷却水の温度が所定温度以上の場合は、第2通路を閉じる。これによって、ラジエタに流れる冷却水の流量が増加し、冷却水温度を下げられる。この結果、冷却能力が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ラジエタに流れる冷却水の温度が上昇している場合に冷却能力を向上できる内燃機関の冷却システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御システムのシステム図。
【
図2】本開示の実施形態によるロータリバルブの回転角度に対する角通路の開口面積(開度)との関係の一例を示すグラフ。
【
図3】本開示の実施形態による制御装置の実行する制御手順を示すフローチャート。
【
図4】本開示の実施形態による圧抜制御時の実回転角度と目標回転角度の関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、冷却水が流れる方向を基準として、上流を上流と、下流を下流と、明細書に記す。
【0011】
図1に示すように、内燃機関2の冷却システム1は、内燃機関2の種々の装置を冷却する装置である。内燃機関2の冷却システム1は、流量制御弁(V)4と、バルブフィッチング(V/F)6と、ウォータポンプ(W/P)8と、シリンダブロック(C/B)10と、シリンダヘッド(C/H)12と、アウトレットフィッチング(O/F)14と、排気循環ガスクーラ(EGR/C:第1冷却装置の一例)16と、ヒータコア(H/C)18と、過給機(T/C)20と、スロットル(Th/B)22と、モータジェネレータ(M/G)24と、トランスミッションクーラ(TM/C:変速機冷却装置の一例)26と、エンジンオイルクーラ(ENG/C:第2冷却装置、およびオイル冷却装置の一例)28と、ラジエタ(RA)30と、ホットボトル(HB)32と、制御装置40と、を備える。本実施形態では、内燃機関2は、車両に搭載され、ピストン(図示せず)がクランクシャフトを回転させるレシプロ型の内燃機関2である。
【0012】
また、内燃機関2の冷却システム1は、冷却水を種々の装置に供給する複数の通路を備える。本実施形態では、主機冷却通路50と、ラジエタ通路(第1通路の一例)52と、排気循環ガスクーラ通路(第2通路の一例)54と、スロットル温水通路56と、エンジンオイルクーラ通路(第3通路の一例)58と、過給機冷却通路60と、を備える。
【0013】
流量制御弁4は、通路に流れる冷却水の量を調整する装置である。本実施形態では、ラジエタ通路52、排気循環ガスクーラ通路54、およびエンジンオイルクーラ通路58(以下明細書において各通路という場合もある)に流れる冷却水の量を調整する装置である。本実施形態では、流量制御弁4は、各通路から流量制御弁4に冷却水が入る入口の開度を可変することによって、各通路に流れる冷却水の流量を制御する。本実施形態では、流量制御弁4は、ロータリバルブ4aを有するロータリ式バルブである。流量制御弁4は、ロータリバルブ4aを回転させることによって各通路の入口の開口面積の大きさを変化させる。これによって、流量制御弁4は、各通路に流れる冷却水の流量を制御できる。流量制御弁4は、制御装置40と電気的に接続され、制御装置40によってバルブの回転角度が制御される。また、流量制御弁4は、ロータリバルブ4aの回転角度ωを検知する回転角センサ(図示せず)を有し、ロータリバルブ4aの回転角度ωを制御装置40に送信する。
【0014】
流量制御弁4は、冷却水が入る入口として、ロータリバルブ4aに直接接続される第1入口4bと、サーモスタット(T)5を介してロータリバルブ4aをバイパスし、バルブフィッチング6に接続される第2入口4cと、サーモスタット5の第2入口4cを開閉するサーモバルブ(図示なし)及びロータリバルブ4aをバイパスし、バルブフィッチング6に接続される第3入口4dと、を有する。サーモスタット5は、冷却水が所定の温度となるとパラフィンワックスが溶け第2入口4cを開弁する。所定の温度は、冷却水が沸騰し内燃機関2がオーバーヒートする可能性がある温度である。第3入口4dに供給される冷却水は、このパラフィンワックスを通過し、パラフィンワックスを溶かす。サーモスタット5は、第2入口4cを閉じる方向にサーモバルブを付勢するバネを有する。なお、サーモスタット5は、既存のサーモスタット5であればよく、より詳細な説明は省略する。
【0015】
バルブフィッチング6は、流量制御弁4の冷却水出口に取り付置けられる筒状部材である。バルブフィッチング6の下流には、冷却水を各通路に供給するウォータポンプ8が接続される。本実施形態では、ウォータポンプ8は、内燃機関2のクランクシャフトから駆動力を得てインペラが回転する機械式のポンプである。
【0016】
ウォータポンプ8の下流には、主機冷却通路50が接続される。主機冷却通路50は、シリンダブロック10のシリンダ(図示せず)の周囲に形成される第1ウォータジャケット(図示なし)、およびシリンダヘッドの排気ポート近傍に形成される第2ウォータジャケット(図示なし)を含む。主機冷却通路50は、第1ウォータジャケットおよび第2ウォータジャケットを冷却水が通過することによって、シリンダブロック10と、シリンダヘッド12を冷却する。
【0017】
アウトレットフィッチング14は、シリンダブロック10およびシリンダヘッド12を通過した冷却水を、各通路に分配する筒状部材である。本実施形態では、アウトレットフィッチング14は、シリンダヘッド12の第2ウォータジャケットの下流に取り付けられる。本実施形態では、アウトレットフィッチング14には、水温センサ(温度検知部の一例)15が設けられる。水温センサ15は、アウトレットフィッチング14を通過する冷却水の温度(水温WT)を検知する。言い換えると、水温センサ15は、冷却水が各通路に供給される前の冷却水温度を検知する。水温センサ15は、制御装置40と電気的に接続され、検知した水温WTを制御装置40に送信する。
【0018】
本実施形態の内燃機関2は、図示しない排気循環バルブを含む排気循環装置17を備え、内燃機関2の排気を吸気に導入する。排気循環バルブは、制御装置40によって電気的に接続され、排気循環バルブによって吸気に流れる排気の量が調整される。排気循環ガスクーラ(排気循環ガス冷却装置の一例)16は、排気循環装置17によって内燃機関2の排気から吸気に導入される排気循環ガス(
図1の破線参照)を、冷却水によって冷却する熱交換器である。ヒータコア18は、車両の室内に空調風を供給する空調装置(HVAC)19の熱交換器である。ヒータコア18は、冷却水から熱を吸収し、空調風を温める。空調装置19は、ブロアファン19aを含み、ブロアファン19aを回転させることによってヒータコア18で暖められた空調風を室内に供給する。空調装置19は、空調制御装置19bを含む。空調制御装置19bは図示しない通信線によって制御装置40と電気的に接続され、制御装置40から送信される情報を取得できる。制御装置40も同様に、空調制御装置19bからの送信される情報を取得できる。
【0019】
排気循環ガスクーラ16、およびヒータコア18は、アウトレットフィッチング14と接続される排気循環ガスクーラ通路54が接続され、冷却水が供給される。排気循環ガスクーラ通路54は、ゴムホース、および金属製のパイプなどによって形成される通路である。排気循環ガスクーラ通路54は、ヒータコア18の下流で流量制御弁4の第1入口4bに接続される第1排気循環ガスクーラ通路54aと、第3入口4dに接続される第2排気循環ガスクーラ通路54bと、に分岐する。第2排気循環ガスクーラ通路54bは、サーモスタット5の感温用の通路である。具体的には、冷却水が高温となった場合に第2排気循環ガスクーラ通路54bを流れる冷却水がパラフィンワックスを溶かし、パラフィンワックスが溶け第2入口4cが開通すると、ロータリバルブ4aの回転角度ωによらずラジエタ通路52に冷却水が供給される。
【0020】
過給機20は、内燃機関2の吸気を過給する装置である。過給機20は、排気循環ガスクーラ通路54の排気循環ガスクーラ16より上流から分岐した過給機冷却通路60が接続され、過給機20のタービン軸を冷却する。過給機冷却通路60は、ホットボトル32と接続される。
【0021】
スロットル22は、内燃機関2の吸気量を制御する装置である。モータジェネレータ24は、内燃機関2に接続され、発電と内燃機関2の始動とを行う回転電機である。スロットル22およびモータジェネレータ24は、アウトレットフィッチング14と接続されるスロットル温水通路56と接続される。スロットル温水通路56は、ラジエタ30を通過せずにバルブフィッチング6と接続される。スロットル温水通路56は、常時暖められた冷却水が流れることによって、スロットル22の凍結やモータジェネレータ24の凍結を防止する。
【0022】
トランスミッションクーラ26は、トランスミッション(変速装置の一例)に充填されるトランスミッションオイルと冷却水を熱交換し、トランスミッションオイルを昇温若しくは冷却する熱交換器である。エンジンオイルクーラ28は、内燃機関2に充填されるエンジンオイルと冷却水を熱交換し、エンジンオイルを昇温若しくは冷却する熱交換器である。
【0023】
トランスミッションクーラ26、およびエンジンオイルクーラ28は、スロットル温水通路56のスロットル22より上流から分岐するエンジンオイルクーラ通路58に接続され、冷却水が供給される。エンジンオイルクーラ通路58は、流量制御弁4の第1入口4bに接続される。
【0024】
ラジエタ30は、図示しない上部通路30aと、上部通路30aの下流に配置されるラジエタコア30bと、ラジエタコア30bの下流に配置される下部通路30cと、を有する。ラジエタコア30bは、複数のフィンを有し、冷却水と車両の外気とを熱交換し、冷却水を冷却するための熱交換器である。ラジエタ30の上部通路30aは、アウトレットフィッチング14に接続されるラジエタ通路52に接続される。ラジエタ30の下部通路30cは、流量制御弁4の第1入口4bに接続される第1ラジエタ通路52aと、第2入口4cに接続される第2ラジエタ通路52bと、に接続される。ラジエタ通路52は、第1ラジエタ通路52aと、第2ラジエタ通路52bと、に分岐する。また、ラジエタ通路52は、ラジエタ30の上流で過給機冷却通路60に接続される第3ラジエタ通路52cに分岐する。
【0025】
ホットボトル32は、冷却水を一時貯蔵するリザーバタンクとして機能するとともに、冷却水中のエア抜きを行うためのタンクである。ホットボトル32の上流は、過給機冷却通路60における、第3ラジエタ通路52cと過給機冷却通路60との連結部より下流に接続される。ホットボトル32の下流は、スロットル温水通路56のモータジェネレータ24より下流に接続される。ホットボトル32には、過給機20を通過した冷却水が供給される。
【0026】
制御装置40は、水温センサ15によって取得した水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、などに応じて流量制御弁4を制御し、冷却水の流量を制御する装置である。より具体的には、制御装置40は、水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、に応じて各通路の開度O、すなわちロータリバルブ4aの目標回転角度ωtを決定し、各通路に流す冷却水の流量を制御する。
【0027】
図2のグラフは、横軸にロータリバルブ4aの回転角度ωを示し、縦軸が開口面積(開度O)を示す。制御装置40は、水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、に応じて目標回転角度ωtを決定する。制御装置40は、目標回転角度ωtに向けてロータリバルブ4aを回転させる。ロータリバルブ4aが目標回転角度ωtとなると、各通路の開度Oが目標回転角度ωtに対応した値となり、各通路に流れる冷却水の流量が制御される。すなわち、目標回転角度ωtを決定することは、目標開度Otを決定することと同義である。制御装置40は、この間、流量制御弁4に設けられた回転角センサからロータリバルブ4aの実際の実回転角度ωrを取得し、実回転角度が追従しているか否か監視する。
【0028】
また、本実施形態の流量制御弁4は、ロータリバルブ4aの最小回転角度ωminの位置(本実施形態では例えば、
図2の―40度の位置)にロータリバルブ4aの回転を規制する第1ストッパ(規制部の一例)を有する。また、流量制御弁4は、最大回転角度ωmaxの位置(本実施形態では例えば
図2の210度の位置)に、ロータリバルブ4aの回転を規制する第2ストッパ(規制部の一例)を有する。制御装置40は、ロータリバルブ4aを第1ストッパから第2ストッパの区間で制御する。
【0029】
また、制御装置40は、排気循環ガスの導入割合を決定し、排気循環ガスの導入量が、吸気量に対して決定した導入割合となるように、排気循環弁の開度を制御する。制御装置40は、内燃機関2の運転領域ごとに排気循環ガスの導入割合を定めたマップに基づいて、排気循環ガスの導入割合を決定してもよい。
【0030】
このほか、制御装置40は、エアフロセンサ(図示なし)、およびアクセルポジションセンサ(図示なし)などのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、燃料噴射弁(図示なし)、排気循環弁(図示なし)、および過給機20の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。
【0031】
制御装置40は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置40は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0032】
次に、
図3のフローチャートを用いて、制御装置40が実行する制御手順について説明する。なお、制御装置40は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると制御動作を開始する。
【0033】
ステップS1では、制御装置40は、水温センサ15から水温WTを取得し、水温WTが所定温度WT1以上か否か判断する。所定温度WT1は、例えば内燃機関2がオーバーヒートする温度を基準に設定されればよい。例えば、冷却水が温度WT2で沸騰しオーバーヒートする場合、所定温度WT1は、温度WT2から10度程度低い値にすればよい。制御装置40は、水温WTが所定温度WT1以上であると判断すると(ステップS1 YES)、ステップS2に処理を進める。
【0034】
ステップS2では、制御装置40は、排気循環ガスが導入中か否か判断する。制御装置40は、排気循環ガスが導入中でないと判断した場合(ステップS2 NO)、ステップS3に処理を進める。
【0035】
ステップS3では、制御装置40は、第2通路が閉じる方向に流量制御弁4を移動させる閉弁制御を実行する。本実施形態では、第2通路を開状態から閉状態にするように流量制御弁4を移動させる。
図2に示すように、本実施形態では回転角度ωがB度(本実施形態では200度)以上の場合、排気循環ガスクーラ通路54の開口面積がゼロになる。
【0036】
ここで、排気循環ガスクーラ通路54は、エンジンオイルクーラ通路58よりも通路径である最大開口面積が大きい。このため、排気循環ガスクーラ通路54を閉鎖する方が、エンジンオイルクーラ通路58を閉鎖するよりも、より多くの冷却水をラジエタ通路52に流すことができる。また、内燃機関2が始動中は、内燃機関2に充填されるオイルを冷却することが好ましい。したがって、制御装置40は、ロータリバルブ4aの目標回転角度ωtをB度以上に決定する。制御装置40は、目標回転角度ωtと実回転角度ωrとの差に基づいて、ロータリバルブ4aの回転速度ωvを決定し、ロータリバルブ4aを目標回転角度ωtに向けて、回転速度ωvで回転移動させる。制御装置40は、閉弁制御を実行すると、ステップS4に処理を進める。
【0037】
ステップS4では、制御装置40は、内燃機関2の回転数Erが所定回転数Et以上か否か判断する。制御装置40は、内燃機関2の回転数Erが所定回転数Et未満であると判断した場合(ステップS4 NO)、ステップS5に処理を進める。
【0038】
ステップS5では、制御装置40は、水温センサ15から水温WTを取得し、水温WTが所定温度WT1未満に低下したか否か判断する。制御装置40は、水温WTが所定温度WT1未満に低下したと判断した場合(ステップS5 YES)、制御装置40は、ステップS6に処理を進める。
【0039】
ステップS6では制御装置40は、閉弁制御を終了し、ステップS1に処理を戻す。
【0040】
ステップS1において、制御装置40が、水温WTが所定温度WT1以上であると判断すると(ステップS1 NO)、制御装置40はステップS4に処理を進める。
【0041】
ステップS2において、制御装置40が、排気循環ガスが導入中であると判断した場合(ステップS2 YES)、制御装置40は、ステップS7に処理を進める。ステップS7では制御装置40は、閉弁制御を禁止する。
図2に示すように、閉弁制御を実行し、ロータリバルブ4aの回転角度がB度となると、排気循環ガスクーラ通路54の開口面積がゼロになる。このため、排気循環ガスクーラ通路54に流れる冷却水の流量がゼロになる。この結果、排気循環ガスが冷却されなくなる。このため、制御装置40は、排気循環ガスの導入中は、閉弁制御を禁止する。制御装置40は、閉弁制御を禁止するとステップS2に処理を進める。なお、閉弁制御は、閉弁制御の実行前に比べ排気循環ガスクーラ通路54の開口面積を小さくすればよく、排気循環ガスクーラ通路54の開口面積をゼロにする必要はない。この場合、排気循環ガスクーラ通路54に流れる冷却水の流量はゼロとはならないが、閉弁制御の実行前に比べ減少するため、排気循環ガスの導入中は、閉弁制御を禁止することが好ましい。
【0042】
なお、制御装置40は、空調装置19から暖房要求がある場合は閉弁制御を禁止してもよい。本実施形態では、空調装置19のヒータコア18が排気循環ガスクーラ通路54に接続されているため、閉弁制御を行うとヒータコア18に冷却水が流れず、暖房性能が低下する。よって、制御装置40は、暖房要求がある場合は閉弁制御を禁止して、ヒータコア18に冷却水を流すようにしてもよい。
【0043】
ステップS4において、制御装置40が、内燃機関2の回転数Erが所定回転数Et以上であると判断した場合(ステップS4 YES)、制御装置40は、ステップS8に処理を進める。ステップS8において、制御装置40は、閉弁制御を中止し、圧抜制御を実行し、前述したステップS5に処理を進める。
【0044】
本実施形態では、内燃機関2の回転数Erが上昇すると、クランクシャフトによって駆動されるウォータポンプ8の回転数も上昇する。このため、所定回転数Etは、ウォータポンプ8の回転上昇に伴って、各通路の圧力がホース抜け等の懸念があるような圧力にまで上昇するような内燃機関2の回転数Erに基づいて決定される。所定回転数Etは、例えば、内燃機関2の許容回転数に対して1000rpm低い回転数から許容回転数までの領域に設定されるレッドゾーン近辺の回転数であってもよい。また、所定回転数Etは、レッドゾーンよりもやや低い回転数であってもよい。
【0045】
図4の時刻t1に示すように、本実施形態では制御装置40は、内燃機関2の回転数Erが所定回転数Et以上の場合、圧抜制御が必要と判断し、圧抜制御のフラグを記録する。しかし、制御装置40は、例えばウォータポンプ8が電動ウォータポンプの場合、ウォータポンプ8の回転数を取得し、圧抜制御の要否を判断してもよい。また、制御装置40は、内燃機関2の回転数Erまたはウォータポンプ8の回転数に加えて、水温WTなどを加味して圧抜制御の要否を判断してもよい。
【0046】
図4の時刻t1から時刻t3に示すように、圧抜制御において制御装置40は、各通路の流量が最大となる第2目標回転角度ωt2を決定するとともに、第2目標回転角度ωt2よりも大きい開度の第3目標回転角度ωt3を決定する。
図2に示すように、本実施形態では、回転角度ωがA度の場合、ラジエタ通路52、排気循環ガスクーラ通路54、およびエンジンオイルクーラ通路58(各通路)の開口面積が最大となる。また、B度が最大回転角度ωmaxに近い。したがって、本実施形態では、制御装置40は、第2目標回転角度ωt2がA度として、第3目標回転角度ωt3がB度とする例を用いて説明する。
【0047】
制御装置40は、実回転角度ωrがA度を超えたか否か判断する。制御装置40は、実回転角度ωrがA度を超えた場合、目標回転角度ωtをB度からA度に切り替え、A度に向けてロータリバルブ4aを回転移動させる。制御装置40は、このようにロータリバルブ4aを制御することによって、各通路の開度が最大となる位置までロータリバルブ4aを迅速に移動させるとともに、ロータリバルブ4aの慣性力によって第2目標回転角度ωt2からずれてロータリバルブ4aが停止することを抑制している。この結果、制御装置40は、圧抜制御を迅速に実行できる。
【0048】
また、このように制御装置40が内燃機関2の回転数Erが所定回転数Et以上であると判断した場合、制御装置40は、閉弁制御を中止し、圧抜制御を閉弁制御に優先して実行する。
図3に示すように、制御装置40は、圧抜制御が終了するとステップS5に処理を進め閉弁制御を再開する。
【0049】
図4の時刻t4以降に示すように、制御装置40が閉弁制御を再開する場合、制御装置40は、ロータリバルブ4aを閉弁制御における目標回転角度ωtに変更し、ロータリバルブ4aを目標回転角度ωtに向けて移動させる。本実施形態では、制御装置40は、目標回転角度ωtを圧抜制御におけるA度からB度に変更する。
【0050】
以上説明した通り、本開示の内燃機関2の冷却システム1によれば、冷却水の温度が所定温度WT1以上の場合は、ラジエタ通路52を全開としつつ、排気循環ガスクーラ通路を閉じる。これによって、ラジエタに流れる冷却水の流量が増加し、水温WTを下げられる。この結果、冷却能力が向上する。なお、ラジエタ通路52がすでに全開であるにもかかわらず冷却水の温度が所定温度WT1以上となった場合は、ラジエタ通路52を全開に維持し、排気循環ガスクーラ通路を閉じる。ラジエタ通路52が全開の場合、ラジエタ通路52のみの開度制御では水温WTを下げることはできないが、排気循環ガスクーラ通路を閉じることでラジエタに流れる冷却水の流量を増加させ冷却能力を向上させることができる。
【0051】
また、排気循環ガスクーラ通路54は開口面積がエンジンオイルクーラ通路58よりも大きい。このため、排気循環ガスクーラ通路54を閉鎖することにより多くの冷却水をラジエタ通路52に供給できる。この結果、冷却性能がさらに向上する。さらに、エンジンオイルクーラ通路58には冷却水が流れるため、内燃機関2に充填されるオイルを冷却できる。この結果、内燃機関2のオーバーヒートを抑制できる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0053】
(a)上記実施形態では、流量制御弁4はロータリバルブ4aを例に用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。流量制御弁4は、例えば、各通路の流量をスライド式のバルブによって制御する流量制御弁4であってもよい。この場合、規制部は、スライド式のバルブの移動を規制するストッパであってもよい。また、流量制御弁4は各通路にそれぞれ設けられた複数の弁であってもよい。
【0054】
(b)上記実施形態では、制御装置40が
図2の各通路の開口面積とロータリバルブ4aの回転角度ωの関係を用いて、各通路に流れる冷却水の流量を制御する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。制御装置40は、例えば、流量を検知するセンサ等を用いて、流量制御弁4を制御してもよい。また、
図2の各通路の関口面積と、ロータリバルブ4aの回転角度ωは、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :冷却システム
2 :内燃機関
4 :流量制御弁
5 :サーモスタット
40 :制御装置
52 :ラジエタ通路
54 :排気循環ガスクーラ通路
O :開度
Ot :目標開度
ωr :実回転角度
ωt :目標回転角度
ωv :回転速度