(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014930
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】呈味改善用組成物、呈味改善方法、フコースの使用、及びポリフェノール及びフコースを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230124BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20230124BHJP
A23G 1/40 20060101ALN20230124BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20230124BHJP
A23F 5/28 20060101ALN20230124BHJP
A23L 11/00 20210101ALN20230124BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/00 B
A23G1/40
A23F3/16
A23F5/28
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119165
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭世
(72)【発明者】
【氏名】長島 英里子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】久保村 大樹
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
4B027
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GL10
4B020LB18
4B020LC02
4B020LG05
4B020LK05
4B027FB08
4B027FB22
4B027FC02
4B027FK04
4B027FK09
4B027FK10
4B047LB08
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG22
4B117LC03
4B117LG07
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK11
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】ポリフェノールによる呈味を改善する技術を提供する。
【解決手段】フコースを有効成分として含有する、ポリフェノール含有組成物の呈味改善用組成物である。また、ポリフェノール含有組成物にフコースを含有させる、ポリフェノール含有組成物の呈味改善方法である。前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコースを有効成分として含有する、ポリフェノール含有組成物の呈味改善用組成物。
【請求項2】
前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものである、請求項1記載の呈味改善用組成物。
【請求項3】
ポリフェノール含有組成物にフコースを含有させる、前記ポリフェノール含有組成物の呈味改善方法。
【請求項4】
前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものである、請求項3記載の呈味改善方法。
【請求項5】
フコースの使用であって、ポリフェノール含有組成物の呈味改善のための該使用。
【請求項6】
前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものである、請求項5記載の使用。
【請求項7】
ポリフェノール及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記ポリフェノールの1質量部に対して0.001~150質量部である、該組成物。
【請求項8】
前記組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物である、請求項7又は8記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善用組成物、呈味改善方法、フコースの使用、及びポリフェノール及びフコースを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の樹皮や表皮、種子等に含まれるポリフェノールは、フェノール性ヒドロキシ基を分子内に複数有する化合物の総称であり、一般に色調、苦味、渋味などの要因となる化合物である。例えば、原料にポリフェノールを含んでなるココア、チョコレート、紅茶、豆乳、コーヒー等では、苦味、渋味、雑味など、それら飲食品の基調となる呈味を決定していることも多く、その独特の呈味を苦手とする消費者も少なくなかった。
【0003】
ポリフェノールによる呈味を改善する方法に関しては、例えば、特許文献1には、重合度5~10の分岐糖類またはその還元物を含んでなる、食品用風味改善剤または製剤用マスキング剤が開示されており、当該分岐糖類はポリフェノール類に起因する苦味および/または渋味を効果的に低減することから、ポリフェノール類含有食品に添加することで、食品本来の風味を損なわずに風味を改善することができるものとされている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、飲料又は食品の苦味若しくは渋味の抑制剤であって、カゼインホスホペプチド又はセリシンを有効成分とすることを特徴とする苦渋味抑制剤が開示されており、当該苦渋味抑制剤を紅茶葉抽出液、緑茶葉抽出液等に添加することにより、それらの苦渋味を抑制することができるものとされている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、ポリフェノールを含有する果実酒または果実飲料に、D-アミノ酸またはその塩を含有させることを特徴とする、ポリフェノールを含有する果実酒または果実飲料の味質改良方法が開示されており、当該方法により、果実酒または果実飲料中のポリフェノールによる渋味または苦味を低減して味質をまろやかにすることができるものとされている。
【0006】
また、例えば、特許文献4には、アドバンテームを含有することを特徴とする、ポリフェノールの苦味及び/又は渋味がマスキングされたポリフェノール含有飲食品が開示されており、アドバンテームを含有・添加することにより、ポリフェノール含有飲食品の本来の風味やおいしさを損ねることなく、ポリフェノール含有飲食品におけるポリフェノールの苦味や渋味をマスキングして、飲用しやすくできるものとされている。
【0007】
また、例えば、特許文献5には、アンゲリカ酸エステルの少なくとも1種を有効成分として含有する苦味抑制剤が開示されており、ローマンカミツレ由来のエステルにより、コーヒー、茶、カカオ等の食材に由来する苦味を抑制することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-83248号公報
【特許文献2】特開2012-217442号公報
【特許文献3】特開2014-124171号公報
【特許文献4】特開2016-77292号公報
【特許文献5】特開2018-191581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ポリフェノールの呈味を改善する各種の成分について知られていたが、利用するものの利便性のためには、更なる素材の開発が望まれていた。
【0010】
よって、本発明の目的は、種々のポリフェノールに対して有効で、それらポリフェノールを含有する組成物の呈味を改善することができる素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意研究したところ、フコースに、ポリフェノールを含有する組成物の呈味を改善する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、ポリフェノール含有組成物の呈味改善用組成物を提供するものである。
【0013】
上記呈味改善用組成物においては、前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第2の観点によれば、本発明は、ポリフェノール含有組成物にフコースを含有させる、前記ポリフェノール含有組成物の呈味改善方法を提供するものである。
【0015】
上記呈味改善方法においては、前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の第3の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、ポリフェノール含有組成物の呈味改善のための該使用を提供するものである。
【0017】
上記フコースの使用においては、前記ポリフェノール含有組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第4の観点によれば、本発明は、ポリフェノール及びフコースを含有する組成物であって、前記フコースの含有量が、前記ポリフェノールの1質量部に対して0.001~150質量部である、該組成物を提供するものである。
【0019】
上記組成物において該組成物は、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、及びジンゲロールからなる群から選択される1種又は2種以上のポリフェノールを含有するものであることが好ましい。
【0020】
上記組成物において該組成物は、飲食用又は飲食物原料用の組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フコースを利用して、ポリフェノールを含有する組成物の呈味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ポリフェノールを含有する組成物に、その呈味を改善するためにフコースを含有せしめるものである。
【0023】
上記ポリフェノールとしては、例えば、カカオポリフェノール、テアフラビン、イソフラボン、クロロゲン酸、カテキン、クルクミン、アントシアニン、ショウガオール、ジンゲロールなどが挙げられる。また、上記ポリフェノールを含有する組成物の形態としては、例えば、飲食品、サプリメント、ポリフェノールの含有量を高めた製剤、医薬品などが挙げられる。ポリフェノール含有組成物の形態としては、更に、飲食品等の組成物の形態の調製や加工等の際にその原料の一部として添加するものとして用いられる、飲食物原料用の組成物であってもよい。なお、ポリフェノールとして、1種類を含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0024】
本発明が適用される飲食品としては、特に限定されないが、例えば、ココア飲料、チョコレート、紅茶飲料、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、豆乳飲料、醤油、味噌、豆腐、高野豆腐、納豆、おから、湯葉、きなこ、煮豆、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、テンペ、枝豆加工品、葛の花加工品、コーヒー飲料、ぶどう加工品、ブルーベリー加工品、クランベリー加工品、ボイセンベリー加工品、カシス加工品、ハスカップ加工品、ブラックベリー加工品、プルーン加工品、ビルベリー加工品、アサイー加工品、ラズベリー加工品、イチゴ加工品、ムラサキキャベツ加工品、黒豆加工品、黒豆加工品、黒ゴマ加工品、ムラサキイモ加工品、紅芋加工品、赤紫蘇加工品、小豆加工品、紫タマネギ加工品、生姜加工品などが挙げられる。また、上記飲食品を配合したキャンディ、チョコレート、チューインガム、ビスケット、クッキー、米菓、スナック、豆菓子・ドライフルーツ、珍味、生菓子、半生菓子、焼菓子、デザート類、シリアル類、ゼリー、ジャム、スプレッド、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、パン、スープ、ソース、ドレッシング、総菜、漬物、清涼飲料水、粉末飲料、ティーバッグ形状飲料などが挙げられる。
【0025】
ポリフェノール含有組成物中のフコースの含有量としては、呈味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、組成物中に含まれるポリフェノールの1質量部に対して0.001~150質量部であることができ、0.001~100質量部であることができ、0.002~100質量部であることができ、0.003~100質量部であることができ、0.003~67質量部であることができ、0.003~50質量部であることができ、0.005~50質量部であることができ、0.005~34質量部であることができる。
【0026】
なお、ポリフェノール量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やフォーリン試薬(フェノール試薬)を用いる吸光光度法などの方法で測定が可能である。また、フコース量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定が可能である。
【0027】
本発明において、呈味を改善するのに有効量でフコースを含有せしめたかどうかは、ポリフェノールを含有する飲食品等組成物中にフコースを含有せしめたほうが、フコースを含有せしめない場合に比べて、その飲食品等組成物の呈味が改善しているかどうかについて官能評価を行うことなどによって、適宜判定することができる。また、そのような官能評価によって、呈味を改善するためのフコースの有効量を予め決定しておき、飲食品等組成物の調製や加工等の際に、その量を添加するなどによって、呈味の改善されたポリフェノール含有組成物を調製することができる。なお、本明細書において「呈味の改善」とは、例えば、ポリフェノールに特有の苦味、渋味、酸味、収斂味、辛味、雑味などを抑制したり、独特な刺激味を抑制したり、軽さやすっきり感を向上したり、飲料にしたときの飲みやすさを改善したりすることを含む。
【0028】
本発明に用いられるフコースとしては、特に制限はないが、飲食品等の形態に適したものとしては、天然物原料から調製されたものを用いることが好ましい。例えば、本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法により、アスコフィラムノドサムやモズク等の海藻から抽出して得られるフコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解物からは、フコースを効率的に調製することができるので、そのような方法により調製されたものを用いることが好ましい。
【0029】
以下には、フコースの調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明に用いられるフコースは、以下に例示する調製方法によるものに限定されるものではない。
【0030】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の抽出方法
原料の海藻としては、褐藻類が好ましく、特にアスコフィラムノドサム、オキナワモズクが好ましく用いられる。原料の海藻からフコースを構成糖の一部とする多糖類を抽出する方法としては、原料に、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、又は、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液を、pH1~5、原料濃度が乾燥物として0.1~10重量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。好ましくは、原料に、塩酸を、pH2~5、原料濃度が乾燥物として3~8.5重量%となるように加え、70~90℃にて1~3時間抽出する。更に好ましくは、ミキサーなどで原料を粉砕してから抽出を行う。
【0031】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類から低分子画分を除去する方法
上記手段により得られた抽出液を濾過した後、マンニトール等の低分子物質を除去する。その手段や条件等に特に制限はないが、例えば、公知の方法に準じた限外濾過などによる手段であれば、得られた抽出液をそのままその手段に供することが可能であり、工業的な量産化生産にも適しているので好ましい。より詳細には、その分子量分画の手段が、少なくともマンニトールを透過することが可能な限外濾過膜を用いるものであることが好ましい。更により詳細には、その分子量分画の手段が、分画分子量200~200,000の限外濾過膜を用いるものであることが好ましく、分画分子量500~30,000の限外濾過膜を用いるものであることがより好ましい。
【0032】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解
上記のようにして得られたフコースを構成糖の一部とする多糖類を原料として、加水分解を行う。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸を、pH0.1~5、抽出物の乾燥物換算濃度が0.1~25質量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して加水分解する方法が挙げられる。好ましくは、抽出物に、塩酸を、pH0.1~3、抽出物の乾燥物換算濃度が3~6質量%となるように加え、50~70℃にて1~5時間撹拌して加水分解する。
【0033】
反応終了後、速やかに反応液を冷却し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤によりpH7~8に中和する。この中和液を活性炭脱色、濾過、電気透析装置による脱塩することにより、フコース含有加水分解物を得ることができる。
【0034】
・フコースの分画・精製
上記加水分解物からフコースに富む画分を分離し回収する。その手段や条件等に特に制限はない。例えば、公知の方法に準じた限外濾過、脱塩、イオン交換、電気泳動、分子排斥クロマトグラフィー、モレキュラーシーブなどによる手段が挙げられる。この分離・回収により、残存するアルギン酸等の不純物が除かれて、高純度のフコースが得られる。例えば、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で10質量%以上含有する、より典型的には20質量%以上含有する、更により典型的には30質量%以上含有する、特に典型的には40質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。さらに、公知の方法に準じた結晶化、煎糖化、遠心分離、クロマトグラフィー分離等の手段により、フコースを高度に精製することができる。これにより、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で90質量%以上含有する、より典型的には95質量%以上含有する、更により典型的には98質量%以上含有する、特に典型的には99質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。
【0035】
本発明においては、フコースとして海藻由来組成物を用いる場合には、フコースを乾燥物当たり80質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが好ましく、85質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることがより好ましく、90質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが更により好ましく、95質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが最も好ましい。この場合、その海藻由来組成物のフコース以外の糖類の含有量は、乾燥物当たり0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上10質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以上5質量%以下であることが特に好ましく、0.001質量%以上3質量%以下であることが最も好ましい。
【実施例0036】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
[ポリフェノール含有組成物]
表1に示すとおり、各種ポリフェノールを含有する組成物を準備した。
【0038】
【0039】
[フコース]
本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法で得られた、海藻由来のフコース結晶品(純度93.5%、焼津水産化学工業株式会社)を使用した。
【0040】
[官能評価]
各種濃度となるようにフコースを添加した試料を、よく訓練された5名以上の評価者に摂取してもらい、それぞれフコースを添加しないブランクと比較したときの変化度合を評価した。表2には、各試験例に共通の評価基準を示す。
【0041】
【0042】
<試験例1>
試料1のココア含有水溶液(5w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「苦味・雑味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0043】
【0044】
その結果、表3に示されるように、ココア含有水溶液(5w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.006質量部程度以上含有せしめることで、ココア含有水溶液の苦味や雑味が低減して、飲みやすさが改善した。
【0045】
<試験例2>
試料2のチョコレートについて、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.1又は1w/w%の濃度になるように添加したときの「刺激味(酸味、苦味)」及び「甘味の質」及び「美味しさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0046】
【0047】
その結果、表4に示されるように、チョコレートに含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.078質量部程度以上含有せしめることで、チョコレートの刺激味(酸味、苦味)が低減し、甘味の質や美味しさが改善した。なお、試験に用いたチョコレートにはおよそ50w/w%の砂糖が含有され、1w/w%のフコースは甘味の強さに影響しない濃度であった。
【0048】
<試験例3>
試料3の紅茶について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「苦味・渋味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0049】
【0050】
その結果、表5に示されるように、紅茶に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.017質量部程度以上含有せしめることで、紅茶の苦味・渋味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0051】
<試験例4>
試料4の豆乳について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「収斂味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0052】
【0053】
その結果、表6に示されるように、豆乳に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.033質量部程度以上含有せしめることで、豆乳の収斂味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0054】
<試験例5>
試料5のインスタントコーヒー含有水溶液(1.3w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「苦味・渋味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0055】
【0056】
その結果、表7に示されるように、インスタントコーヒー含有水溶液(1.3w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.003質量部程度以上含有せしめることで、インスタントコーヒー含有水溶液の苦味・渋味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0057】
<試験例6>
試料6のカテキン製剤含有水溶液(1w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「苦味・渋味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0058】
【0059】
その結果、表8に示されるように、カテキン製剤含有水溶液(1w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.011質量部程度以上含有せしめることで、カテキン製剤含有水溶液の苦味・渋味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0060】
<試験例7>
試料7のクルクミン製剤含有水溶液(2w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「独特の風味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0061】
【0062】
その結果、表9に示されるように、クルクミン製剤含有水溶液(2w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.003質量部程度以上含有せしめることで、クルクミン製剤含有水溶液の独特の風味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0063】
<試験例8>
試料8のアントシアニン製剤含有水溶液(1w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「先味の苦味・渋味」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0064】
【0065】
その結果、表10に示されるように、アントシアニン製剤含有水溶液(1w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.003質量部程度以上含有せしめることで、アントシアニン製剤含有水溶液の先味の苦味・渋味を抑えて、飲みやすさが改善した。
【0066】
<試験例9>
試料9の生姜粉末含有水溶液(1w/v%)について、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「辛味刺激」及び「飲みやすさ」について、上記表2に示した基準により評価した。
【0067】
【0068】
その結果、表11に示されるように、生姜粉末含有水溶液(1w/v%)に含有するポリフェノールの1質量部に対してフコースを0.071質量部程度以上含有せしめることで、生姜粉末含有水溶液の辛味刺激を抑えて、飲みやすさが改善した。