(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149308
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20231005BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20231005BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231005BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01J23/80 M
B01J37/16
B01J37/08
C01B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057814
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山中 俊幸
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DC01
4G140DC02
4G140DC05
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA21C
4G169BA26C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB16C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD12C
4G169BE08C
4G169CB81
4G169CC07
4G169DA06
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB43
4G169FB57
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】優れた炭化水素分解性能を有し、取扱いが簡便であり、かつ経済的な12CaO・7Al
2O
3化合物を用いた触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化水素を直接分解するための触媒の製造方法であって、(A)鉄化合物と12CaO・7Al
2O
3化合物とを溶媒中に分散させた後、該溶媒を除去することによって、鉄化合物を12CaO・7Al
2O
3化合物に担持する工程と、(B)前記鉄化合物を担持した12CaO・7Al
2O
3化合物を酸化雰囲気中で熱処理することによって、酸化鉄として12CaO・7Al
2O
3化合物に担持された状態とする工程と、(C)工程(B)後、12CaO・7Al
2O
3化合物を還元雰囲気中で熱処理することによって、金属鉄として12CaO・7Al
2O
3化合物に担持された状態とする工程とを、具備することを特徴とする触媒の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を直接分解するための触媒の製造方法であって、
(A)鉄化合物と12CaO・7Al2O3化合物とを溶媒中に分散させた後、該溶媒を除去することによって、鉄化合物を12CaO・7Al2O3化合物に担持する工程と、
(B)前記鉄化合物を担持した12CaO・7Al2O3化合物を酸化雰囲気中で熱処理することによって、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態とする工程と、
(C)工程(B)後、12CaO・7Al2O3化合物を還元雰囲気中で熱処理することによって、金属鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態とする工程とを、
具備することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項2】
前記鉄化合物が、鉄の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩及び錯体の群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記鉄化合物が、鉄のオキシカルボン酸塩又はオキシカルボン酸アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
金属鉄換算の担持量が、12CaO・7Al2O3化合物100質量部に対して、1~40質量部である請求項1~3いずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
酸化雰囲気中で熱処理され、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態を経ることを特徴とする、炭化水素直接分解用の鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12CaO・7Al2O3化合物を使用する触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特異な結晶構造を有する12CaO・7Al2O3化合物は、その結晶構造内に酸素イオンラジカルを高濃度に含むことが知られており、酸化触媒、イオン伝導体などの用途に有用であることが提案されている(特許文献1、2、3)。また、アンモニアを合成するための安定で高性能な触媒として利用できること、さらに水素が製造できることが提案されている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-3218号公報
【特許文献2】特開2003-128415号公報
【特許文献3】特開2004-238222号公報
【特許文献4】国際公開第2012/077658号
【特許文献5】特開2018-143941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献5においては、炭化水素を直接分解して水素を製造するために好適な12CaO・7Al2O3化合物粒子含有担体に遷移金属が担持した触媒が提案されている。ここで遷移金属として用いられているのは、金属ナノ粒子、特にNiナノ粒子である。しかしながら、金属ナノ粒子はその取扱いが難しく、またコストも高いという課題がある。本発明の課題は、優れた炭化水素分解性能を有し、取扱いが簡便であり、かつ経済的な12CaO・7Al2O3化合物を用いた触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、12CaO・7Al2O3化合物を用いた触媒の製造方法を鋭意検討した結果、上記課題を解決し得る製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕炭化水素を直接分解するための触媒の製造方法であって、
(A)鉄化合物と12CaO・7Al2O3化合物とを溶媒中に分散させた後、該溶媒を除去することによって、鉄化合物を12CaO・7Al2O3化合物に担持する工程と、
(B)前記鉄化合物を担持した12CaO・7Al2O3化合物を酸化雰囲気中で熱処理することによって、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態とする工程と、
(C)工程(B)後、12CaO・7Al2O3化合物を還元雰囲気中で熱処理することによって、金属鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態とする工程とを、
具備することを特徴とする触媒の製造方法。
〔2〕前記鉄化合物が、鉄の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩及び錯体の群から選ばれる1種以上であることを特徴とする〔1〕の触媒の製造方法。
〔3〕前記鉄化合物が、鉄のオキシカルボン酸塩又はオキシカルボン酸アンモニウム塩であることを特徴とする〔1〕の触媒の製造方法。
〔4〕金属鉄換算の担持量が、12CaO・7Al2O3化合物100質量部に対して、1~40質量部である〔1〕~〔3〕いずれか一に記載の触媒の製造方法。
〔5〕酸化雰囲気中で熱処理され、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態を経ることを特徴とする、炭化水素直接分解用の鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法を用いれば、優れた炭化水素分解性能を有し、取扱いが簡便であり、かつ経済的な12CaO・7Al2O3化合物を用いた触媒を得ることができる。この触媒を使用して炭化水素を直接分解することによって、効率的に水素を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、12CaO・7Al2O3化合物を用いる触媒の製造方法である。具体的には、12CaO・7Al2O3化合物に鉄化合物を担持した鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒の製造方法である。以下、詳しく説明する。
【0010】
<12CaO・7Al2O3化合物の作製>
12CaO・7Al2O3化合物は、カルシウム化合物及びアルミニウム化合物の混合物を、酸化雰囲気中で加熱することにより製造することができる。原料として用いるカルシウム化合物としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。酸化アルミニウムの結晶構造はα型、γ型のいずれでもよい。原料の混合比率は、酸化物換算のモル比〔(CaO)/(Al2O3)〕で、1.5以上1.9以下が好ましく、1.6以上1.8以下がより好ましく、1.6以上1.7以下がさらに好ましい。
【0011】
カルシウム化合物及びアルミニウム化合物の混合物の加熱は、酸素雰囲気中で行なわれることが好ましい。酸素雰囲気としては、酸素濃度が2%以上であることが好ましく、2%以上80%以下がより好ましく、10%以上30%以下がさらに好ましい。酸素濃度が約21%の大気中は好適である。
【0012】
加熱条件は、最高温度を12CaO・7Al2O3の溶融温度である1400℃以上とすることが好ましく、1400以上2500℃以下とするのがより好ましく、1400℃以上1800℃以下とするのがさらに好ましい。加熱時間は特に限定されるものではないが、原料の混合物の溶け残りがないよう、所定の時間をかけて溶融することが好ましい。例えば、アーク式電気炉で溶融する場合は5分程度保持することが好ましい。また、一般の電気炉で加熱する場合は1400℃以上の温度で1時間以上維持するのが好ましい。1400℃以上で加熱することにより、原料化合物が溶融して12CaO・7Al2O3化合物が生成するので、冷却して固化物とし、得られた固化物を粉砕すれば12CaO・7Al2O3化合物の粉末が得られる。冷却条件は、特に制限されないが、溶融後の温度が1200℃以下となるまでは降温速度50℃/時間以上600℃/時間以下が好ましい。
【0013】
生成した12CaO・7Al2O3化合物は、結晶質およびガラス質のいずれでもよい。12CaO・7Al2O3化合物の純度は50%以上でその他のカルシウムアルミネート化合物を含んでもよいが、触媒担体として効果的に性能を発揮するためには、12CaO・7Al2O3化合物の純度が80%以上であることが好ましい。
【0014】
12CaO・7Al2O3化合物の粉末度は、触媒活性の観点から、BET比表面積で1m2/g以上であることが好ましく、2m2/g以上であることがより好ましい。粉砕方法としては、乾式粉砕あるいは湿式粉砕いずれの方法でもよいが、微粉砕する場合は、有機溶媒を用いた湿式粉砕が好ましい。例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等による粉砕方法が挙げられる。
【0015】
<触媒の製造方法>
(A)鉄化合物の担持工程
金属鉄の前駆体となる鉄化合物と、12CaO・7Al2O3化合物とを溶媒中に分散させ、その後、該溶媒を除去することによって、12CaO・7Al2O3化合物の粒子表面に担持させる。具体的には、鉄化合物を分散させた溶媒を準備し、この溶媒中に12CaO・7Al2O3化合物の粉末を添加し、溶媒中に溶解もしくは分散させ、浸漬させる。浸漬時間は5~60分が好ましい。その後、溶媒を除去することによって、鉄化合物が担持された12CaO・7Al2O3化合物が得られる。
【0016】
溶媒としては、水及び有機溶媒を使用することができる。但し、水を使用する場合は、12CaO・7Al2O3化合物の水和に留意する必要がある。12CaO・7Al2O3化合物粒子表面等、一部の水和による水和物の生成は許容されるものの、多量の水和物生成は触媒性能を低下させる要因となるため好ましくない。水を使用する場合は、鉄化合物が分散した水溶液を準備したうえで、12CaO・7Al2O3化合物を浸漬させた後、速やかに水を蒸発除去することが好ましい。なお、水を使用する場合は、12CaO・7Al2O3化合物の水和を抑制するための効果を有するセメント用の遅延剤を添加することも好ましい。遅延剤としては、クエン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸及びその塩、糖類等が挙げられる。
【0017】
鉄化合物としては、溶媒に可溶性のものが好ましいが、溶媒中に安定した分散状態を確保できるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、鉄の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩及び錯体の群から選ばれる1種以上が挙げられる。特に、12CaO・7Al2O3化合物粒子の安定性の観点から強酸性を示さない鉄の有機酸塩が好ましい。例えば、酢酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。中でも、クエン酸塩、酒石酸等のオキシカルボン酸塩、又はオキシカルボン酸アンモニウム塩が好ましい。これらの鉄化合物は12CaO・7Al2O3化合物に対し遅延剤として作用することで12CaO・7Al2O3化合物の過剰な水和を抑制する効果を有する点からも好ましい。
【0018】
溶媒中で浸漬処理後、使用した溶媒は、吸引ろ過等により分離され、あるいは溶媒の沸点以上の温度で蒸発除去され、鉄化合物が担持された12CaO・7Al2O3化合物の乾燥粉末(乾固物)が得られる。12CaO・7Al2O3化合物に対する鉄の担持量としては、金属鉄換算で0.1~40質量%となるように調製されることが好ましく、1~20質量%がより好ましい。
【0019】
(B)酸化雰囲気中での熱処理工程
次に、鉄化合物が担持された12CaO・7Al2O3化合物は、酸化雰囲気中で熱処理される。ここで酸化雰囲気とは、酸素、オゾン等の酸化性ガスを含む雰囲気をいう。酸化性ガスの濃度としては、少なくとも1%以上であり、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。約21%の酸素を含む大気は好適である。熱処理温度は、400~700℃が好ましく、500~600℃がより好ましい。本工程により、使用した鉄化合物中の無機酸、有機酸、結晶水等の成分が分解除去され、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態となる。また、水溶液中で処理された場合、12CaO・7Al2O3化合物の粒子表面が水和し、カルシウムアルミネート水和物が一部形成される可能性があるが、この熱処理工程によって水和物は分解され結晶水が除去される。
【0020】
(C)還元雰囲気中での熱処理工程
工程(B)の後に、酸化鉄の状態で担持された12CaO・7Al2O3化合物を還元雰囲気中で熱処理を行う。ここで還元雰囲気とは、水素、一酸化炭素等の還元性ガスを含む雰囲気をいう。還元性ガスの濃度としては、少なくとも10%以上であり、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。水素ガス雰囲気が特に好ましい。還元処理温度は、500~800℃が好ましく、600~700℃がより好ましい。これによって、酸化鉄は還元され、金属鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態となる。
【0021】
本発明の触媒を用いれば、炭化水素を直接分解して水素を製造することができる。反応は、メタンガスの場合を例にとれば、CH4→C+2H2となる。従って、水素とともに生成するのはカーボンであり、原則CO2やCOは副生しない。
【0022】
炭化水素としては、飽和炭化水素が好ましく、炭素数1~4の飽和炭化水素がより好ましい。炭化水素の反応温度は、400℃以上が好ましく、高転化率を維持するためには600℃以上がより好ましい。また反応温度の上限は1000℃で十分である。
【0023】
水素の製造方法としては、例えば、
図1に示すようなガス流通触媒反応管を用いて炭化水素から水素を製造することができる。すなわち、触媒を設置した反応管中で炭化水素(メタンガス等)を流通し、触媒と反応させて水素を生成させた後、回収することができる。反応管はヒーター等により400℃以上に加熱される。
【0024】
<鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒>
本発明の製造方法によれば、炭化水素分解性能に優れる炭化水素直接分解用の鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒が得られる。本触媒は、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態を経ることを特徴とする。そのメカニズムの詳細は不明であるが、酸化雰囲気中での熱処理工程を行い、酸化鉄として12CaO・7Al2O3化合物に担持された状態を経た鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒において、特に反応初期の炭化水素分解性能に優れる触媒が得られることが判明した。400℃以上の不活性ガス雰囲気や還元雰囲気中で熱処理した場合でも、鉄化合物中の無機酸、有機酸、結晶水等の成分を分解除去することは可能だが、酸化雰囲気中での熱処理工程を実施せずに、還元雰囲気で熱処理された場合、反応初期の炭化水素分解性能は低くなった。さらに、アルミナを触媒担体とした場合より、12CaO・7Al2O3化合物を使用した場合の方が本手法の効果が顕著であることが分かった。これは、12CaO・7Al2O3化合物の特異な結晶構造中に存在するケージ内の「フリー酸素」が関与している可能性が示唆される。
【0025】
本発明の炭化水素直接分解用の鉄-12CaO・7Al2O3化合物触媒を用いることによって、炭化水素から直接分解により水素を効率よく製造することができる。併せて、水素と共に生成する副生炭素(ナノオーダーのカーボン)も得ることができる。
【実施例0026】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0027】
<12CaO・7Al2O3化合物の作製>
酸化カルシウムとα型酸化アルミニウムがモル比[CaO]/[Al2O3]=1.63となる混合粉末を大気雰囲気中でアーク式電気炉によって溶解させた後室温まで自然冷却し冷却固化物を得た。得られた固化物は、粉末X線回折により12CaO・7Al2O3を主相とする回折パターンが確認された。得られた固化物をジェットミルにて粉砕し、12CaO・7Al2O3化合物粉末を得た。粉体のBET比表面積が2.3m2/gであった。比表面積測定には窒素ガス吸着測定装置(マイクロトラックベル(株)製BELsorp MAX)を用いBET比表面積として算出した。
【0028】
<触媒の作製>
作製した12CaO・7Al2O3化合物を触媒担体とし、鉄を担持した触媒を作製した。以下に、各種鉄化合物を使用した実施例および比較例を示す。
【0029】
(実施例1)
クエン酸鉄アンモニウムを鉄化合物として、触媒を作製した。
溶媒として水を使用し、クエン酸鉄アンモニウム(試薬)を水中に溶解させた水溶液を作製した。この水溶液中に、前記12CaO・7Al
2O
3化合物粉末を60分間浸漬させ、浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、クエン酸鉄アンモニウムは、金属鉄換算で12CaO・7Al
2O
3化合物に対して5質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、クエン酸鉄アンモニウム中のクエン酸及びアンモニウムを分解除去し、酸化鉄の状態とした。さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持された12CaO・7Al
2O
3化合物の触媒を得た。
図1の模式構成図に示すガス流通触媒反応管を用い、メタンの直接分解による水素の生成状況を調べた。反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、窒素ガス流通雰囲気で700℃まで昇温した後、80mL/minの流速でメタンガスを流し、水素生成特性をガスクロマトグラフィーにて計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、60.2%であった。
【0030】
(実施例2)
酸化鉄を鉄化合物として、触媒を作製した。
溶媒として水を使用し、酸化鉄(III)(試薬)を水中に分散させた分散液を作製した。この水溶液中に、前記12CaO・7Al2O3化合物粉末を60分間浸漬させ、浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、酸化鉄は、金属鉄換算で12CaO・7Al2O3化合物に対して10質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持された12CaO・7Al2O3化合物の触媒を得た。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、42.8%であった。
【0031】
(実施例3)
クエン酸鉄アンモニウムを鉄化合物として、触媒を作製した。
溶媒としてヘキサン(試薬)を使用し、クエン酸鉄アンモニウム(試薬)をヘキサン中に分散させた分散液を作製した。この溶媒中に、前記12CaO・7Al2O3化合物粉末を60分間浸漬させ、浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、クエン酸鉄アンモニウムは、金属鉄換算で12CaO・7Al2O3に対して10質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、クエン酸鉄アンモニウム中のクエン酸及びアンモニウムを分解除去し、酸化鉄の状態とした。さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持された12CaO・7Al2O3化合物の触媒を得た。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、60.0%であった。
【0032】
(実施例4)
クエン酸鉄アンモニウムを、金属鉄換算で12CaO・7Al2O3化合物に対して3質量%となるように調製した以外は、実施例3と同様に12CaO・7Al2O3化合物の触媒を作製した。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例3と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、27.6%であった。
【0033】
(実施例5)
鉄ポルフィリン錯体を鉄化合物として、触媒を作製した。
溶媒としてアセトン(試薬)を使用し、鉄ポルフィリン錯体(試薬)をアセトン中に分散させた溶媒を作製した。この溶媒中に、前記12CaO・7Al2O3化合物粉末を60分間浸漬させ、浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、鉄ポルフィリン錯体は、金属鉄換算で12CaO・7Al2O3化合物に対して10質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持された12CaO・7Al2O3化合物の触媒を得た。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、30.7%であった。
【0034】
(実施例6)
酸化鉄を鉄化合物として、触媒を作製した。
溶媒としてアセトン(試薬)を使用し、酸化鉄(III)(試薬)をアセトン中に分散させた溶媒を作製した。この溶媒中に、前記12CaO・7Al2O3化合物粉末を60分間浸漬させ、浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、酸化鉄は、金属鉄換算で12CaO・7Al2O3化合物に対して10質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持された12CaO・7Al2O3化合物の触媒を得た。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、46.2%であった。
【0035】
(比較例1)
大気中500℃で加熱処理を実施しないこと以外は、実施例1と同様にして金属鉄が担持された12CaO・7Al2O3化合物の触媒を作製した。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、15.3%であった。
【0036】
(比較例2)
触媒担体として、アルミナを使用して試験を実施した。鉄化合物としては、クエン酸鉄アンモニウムを使用して触媒を作製した。
溶媒として水を使用し、クエン酸鉄アンモニウム(試薬)を水中に分散させた水溶液を作製した。この水溶液中に、アルミナ粉末(試薬:α型酸化アルミニウム)を60分間浸漬後吸引ろ過にて粉末を回収後50℃で乾燥を行い、乾固物を得た。なお、クエン酸鉄アンモニウムは、金属鉄換算でアルミナに対して10質量%となるように調製した。
次に、前記乾固物を大気中500℃で加熱処理し、クエン酸鉄アンモニウム中のクエン酸及びアンモニウムを分解除去し、酸化鉄の状態とした。さらに、水素雰囲気中600℃で加熱処理し、金属鉄が担持されたアルミナの触媒を得た。
ガス流通触媒反応管内に作製した触媒を2.5g設置し、実施例1と同様にして、水素生成特性を計測した。その結果、メタン流通20分後の水素生成濃度は、22.1%であった。