(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014931
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】呈味改善用組成物、呈味改善方法、フコースの使用、及び甘味付与用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230124BHJP
【FI】
A23L27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119166
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭世
(72)【発明者】
【氏名】長島 英里子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】久保村 大樹
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG17
4B047LG20
4B047LG22
4B047LG32
(57)【要約】
【課題】高甘味度甘味料の呈味を改善する技術を提供する。
【解決手段】フコースを有効成分として含有する、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善用組成物である。また、高甘味度甘味料含有組成物にフコースを含有させる、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善方法である。また、高甘味度甘味料及びフコースを含有する甘味付与用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコースを有効成分として含有する、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善用組成物。
【請求項2】
前記高甘味度甘味料含有組成物は、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものである、請求項1記載の呈味改善用組成物。
【請求項3】
高甘味度甘味料含有組成物にフコースを含有させる、前記高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善方法。
【請求項4】
前記高甘味度甘味料含有組成物は、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものである、請求項3記載の呈味改善方法。
【請求項5】
フコースの使用であって、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善のための該使用。
【請求項6】
前記高甘味度甘味料含有組成物は、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものである、請求項5記載の使用。
【請求項7】
高甘味度甘味料及びフコースを含有する甘味付与用組成物。
【請求項8】
前記甘味付与用組成物は、前記高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上を含有するものである、請求項7記載の甘味付与用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善用組成物、呈味改善方法、フコースの使用、及び甘味付与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康意識の高まりから、糖類の過剰摂取やそれによる生活習慣病が懸念され、低カロリーの高甘味度甘味料を使用した飲食物が増加している。しかしながら、高甘味度甘味料を使用した飲食物は、不自然に後を引く甘さ、べたつくような甘さ、不快な苦み、エグ味、キレの悪い後味など特有の不快な異味があり、砂糖などと比較して呈味の質が劣るという側面があった。
【0003】
高甘味度甘味料の呈味改善に関しては、例えば、特許文献1,2には植物抽出物もしくは精油からなる高甘味度甘味料の呈味改善剤が開示されており、特許文献3にはドデセン酸からなる呈味改善剤が開示されており、特許文献4にはグルコサミン及びN-アセチルグルコサミンと甘味料を組み合わせる呈味改善方法が開示されており、特許文献5にはアドバンテームを有効成分として含有することを特徴とする高甘味度甘味料の味質改善剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-223104
【特許文献2】特開2011-30535
【特許文献3】特開2020-188702
【特許文献4】特開2015-142521
【特許文献5】特開2015-163066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、高甘味度甘味料の呈味改善について各種の方法が知られていたが、利用するものの利便性のためには、更なる素材の開発が望まれていた。
【0006】
よって、本発明の目的は、種々の高甘味度甘味料に対して有効で、それら高甘味度甘味料を含有する組成物の呈味を改善することができる素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究したところ、フコースには、高甘味度甘味料の呈味を改善する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善用組成物を提供するものである。
【0009】
上記呈味改善用組成物においては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の観点によれば、本発明は、高甘味度甘味料含有組成物にフコースを含有させる、前記高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善方法を提供するものである。
【0011】
上記呈味改善方法においては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の第3の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、高甘味度甘味料含有組成物の呈味改善のための該使用を提供するものである。
【0013】
上記フコースの使用においては、前記高甘味度甘味料含有組成物は、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第4の観点によれば、本発明は、高甘味度甘味料及びフコースを含有する甘味付与用組成物を提供するものである。
【0015】
上記甘味付与用組成物においては、前記高甘味度甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテームからなる群から選択される1種又は2種以上を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フコースを利用して、高甘味度甘味料を含有する組成物の呈味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、高甘味度甘味料を含有する組成物に、その呈味を改善するためにフコースを含有せしめるものである。
【0018】
上記高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア(ステビア抽出物、ステビオサイド、レバウディオサイドなど)、ネオテーム、アドバンテーム、アリテーム、モナチン、タウマチン、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、ラカンカ抽出物(モグロシド)、甘茶抽出物(フィロズルチン)、ソーマチン、モネリン、チクロ、ラグドゥネームなどが挙げられる。ただし、本発明が適用される高甘味度甘味料は、特にこれら種類に限定されるものではない。典型的に、例えば、砂糖と比べたときの甘味度が100倍以上の甘味度を有する高甘味度甘味料であってよい。ここで砂糖と比べたときの甘味度は、砂糖を10w/v%濃度で含有せしめた水溶液(これを甘味度1とする)に対して、官能評価において同程度の甘味を感じることができるまで被験甘味料を水溶液にしたときの希釈倍率(例えば100倍に薄められたとき甘味度100である)により評価することができる。
【0019】
上記高甘味度甘味料を含有する組成物の形態としては、特に制限はなく、例えば、飲食品、口腔衛生製品、医薬品、医薬部外品などが挙げられる。あるいは、飲食品等の組成物の形態の調製や加工等の際にその原料の一部として添加するものとして用いられる原料用の組成物の形態であってもよい。なお、高甘味度甘味料として、1種類を含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0020】
本発明が適用される飲食品としては、高甘味度甘味料を含有せしめてなるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ココア飲料、紅茶飲料、コーヒー飲料、果汁や野菜汁などを含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンクなどの清涼飲料水、酒類(チューハイ、甘酒)などの飲料全般、キャンディ、チョコレート、チューインガム、ビスケット、クッキー、米菓、スナック、豆菓子・ドライフルーツ、生菓子、半生菓子、焼菓子、デザート類、シリアル類、ゼリー、ジャム、スプレッド、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、パン、スウィートピクルス、ソーセージなどの畜肉加工品、蒲鉾などの練り製品、シロップ、スティックシュガーなどの甘味組成物、トマトケチャップ、焼肉のたれ、蒲焼のたれ、ソース、麺つゆなのどの調味料、レトルト食品、珍味類、漬物、惣菜などの農産物加工品などが挙げられる。また、ヒトを対象にしたものに限定されず、ペットフードや飼料も本発明の対象に含まれる。
【0021】
また、本発明が適用される口腔衛生製品としては、例えば、洗口液、口腔内清涼剤、歯磨剤等の形態のものが挙げられる。
【0022】
また、本発明が適用される医薬品・医薬部外品としては、例えば、錠剤、水剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等の形態のものが挙げられる。
【0023】
上記高甘味度甘味料を含有する組成物中に含有せしめるフコースの含有量としては、呈味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、組成物中に含まれる高甘味度甘味料1質量部に対して0.02~10000質量部であることができ、0.04~5000質量部であることができ、0.2~2500質量部であることができ、0.4~1250質量部であることができ、2~500質量部であることができる。あるいは、砂糖を10w/v%濃度で含有せしめた水溶液に換算した甘味を甘味度1とする基準を採用したとき、その甘味度1を呈する組成物の総質量当たりにフコースの量が0.001~2質量%であることができ、0.01~1質量%であることができ、0.1~1質量%であることができ、0.1~0.5質量%であることができ、0.1~0.2質量%であることができる。
【0024】
なお、フコース量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定が可能である。
【0025】
本発明において、上記高甘味度甘味料を含有する組成物中にフコースを含有せしめる方法について、特に制限はなく、その原料素材などとして適用すればよい。具体的には、例えば、他の原料素材に対する混和、練込、溶解、浸透、浸漬、散布、噴霧、注入などの方法が挙げられる。
【0026】
本発明において、呈味を改善するのに有効量でフコースを含有せしめたかどうかは、高甘味度甘味料を含有する飲食品等組成物中にフコースを含有せしめたほうが、フコースを含有せしめない場合に比べて、その飲食品等組成物の呈味が改善しているかどうかについて官能評価を行うことなどによって、適宜判定することができる。また、そのような官能評価によって、呈味を改善するためのフコースの有効量を予め決定しておき、飲食品等組成物の調製や加工等の際に、その量を添加するなどによって、呈味の改善された高甘味度甘味料含有組成物を調製することができる。なお、本明細書において、「呈味の改善」とは、例えば、高甘味度甘味料に特有のキレの悪い後味、不自然でべたつくような甘さ、不快な苦み、エグ味などを抑制したり、味のキレの良さやすっきり感を付与したり、砂糖などに近い自然な甘さに改善することを含む。
【0027】
一方、本発明は、別の観点では、高甘味度甘味料及びフコースを含有する甘味付与用組成物を提供するものである。この甘味付与用組成物によれば、高甘味度甘味料をフコースとともに飲食品等組成物に添加することができ、これにより飲食品等組成物に高甘味度甘味料による甘味を付与することができるとともに、その飲食品等組成物に含有せしめた高甘味度甘味料による呈味を改善することができる。ここで用いられる高甘味度甘味料としては、上述したものと同様のものを用いることができる。また、高甘味度甘味料として、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
上記甘味付与用組成物中の高甘味度甘味料の含有量としては、飲食品等組成物中に含有せしめたときに甘味を付与するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、甘味付与用組成物中に0.1~100質量%であることができ、1~90質量%であることができ、2~80質量%であることができ、5~70質量%であることができ、10~50質量%であることができる。あるいは、砂糖を10w/v%濃度で含有せしめた水溶液に換算した甘味を甘味度1とする基準を採用したとき、甘味付与用組成物の総量が甘味度0.01~100を付与する量であることができ、甘味度0.1~50を付与する量であることができ、甘味度1~10を付与する量であることができる。
【0029】
また、上記甘味付与用組成物中のフコースの含有量としては、飲食品等組成物中に含有せしめたときに呈味を改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、甘味付与用組成物中に含まれる高甘味度甘味料1質量部に対して0.02~10000質量部であることができ、0.02~5000質量部であることができ、0.04~5000質量部であることができ、0.04~2500質量部であることができ、0.04~1250質量部であることができる。あるいは、砂糖を10w/v%濃度で含有せしめた水溶液に換算した甘味を甘味度1とする基準を採用したとき、その甘味度1を呈する組成物の総質量当たりにフコースの量が0.0001~20質量%であることができ、0.0005~10質量%であることができ、0.001~5質量%であることができ、0.001~2質量%であることができ、0.001~1質量%であることができる。
【0030】
一方、上記甘味付与用組成物中には、本発明の目的を達成する限り、必要に応じて任意に、上記高甘味度甘味料及びフコース以外の他の成分を含んでもよい。例えば、香料、着色料、保存料、増粘剤、潤滑剤、酸化防止剤、発色剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、酸味料、調味料、栄養強化剤、果汁、乳製品等が挙げられる。
【0031】
また、上記甘味付与用組成物中には、本発明の目的を達成する限り、必要に応じて任意に、上記高甘味度甘味料以外の他の甘味料を含んでもよい。例えば、グルコース、砂糖、トレハロース、フルクトース、各種オリゴ糖、多糖類等の糖類、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、液糖等の糖シロップ組成物などが挙げられる。
【0032】
本発明により提供される甘味付与用組成物は、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状、シロップ状、ペースト状等の様々な形態とすることができ、その製造法は、特に限定されない。例えば、高甘味度甘味料とフコースを混合する方法、高甘味度甘味料と結合剤、賦形剤とフコースとを用いて常法により顆粒状、錠剤状にする方法、高甘味度甘味料を含む液糖にフコースを混合してシロップ状やペースト状にする方法などが挙げられる。
【0033】
本発明により提供される甘味付与用組成物を適用する対象としては、上述したフコースを適用し得る高甘味度甘味料含有組成物と同様に、特に制限はなく、例えば、飲食品、口腔衛生製品、医薬品、医薬部外品などが挙げられる。あるいは、飲食品等の組成物の形態の調製や加工等の際にその原料の一部として添加するものとして用いられる原料用の組成物の形態であってもよい。
【0034】
上記甘味付与用組成物を甘味付与対象品に適用する方法としては、上述したフコースを適用し得る高甘味度甘味料含有組成物に適用する場合と同様に、特に制限はなく、その甘味付与対象品の原料素材などとして適用すればよい。具体的には、例えば、他の原料素材に対する混和、練込、溶解、浸透、浸漬、散布、噴霧、注入などの方法が挙げられる。その場合、上記甘味付与用組成物によって付与される高甘味度甘味料の付与量としては、目的とする甘味に応じた量で適宜適用すればよく、このときフコースが予め調整された量で含有されているので、高甘味度甘味料による呈味を改善することができる。より詳細には、特有のキレの悪い後味、不自然でべたつくような甘さ、不快な苦み、エグ味などを抑制したり、味のキレの良さやすっきり感を付与したり、砂糖などに近い自然な甘さに改善することができる。
【0035】
本発明に用いられるフコースとしては、特に制限はないが、飲食品等の形態に適したものとしては、天然物原料から調製されたものを用いることが好ましい。例えば、本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法により、アスコフィラムノドサムやモズク等の海藻から抽出して得られるフコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解物からは、フコースを効率的に調製することができるので、そのような方法により調製されたものを用いることが好ましい。
【0036】
以下には、フコースの調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明に用いられるフコースは、以下に例示する調製方法によるものに限定されるものではない。
【0037】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の抽出方法
原料の海藻としては、褐藻類が好ましく、特にアスコフィラムノドサム、オキナワモズクが好ましく用いられる。原料の海藻からフコースを構成糖の一部とする多糖類を抽出する方法としては、原料に、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、又は、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液を、pH1~5、原料濃度が乾燥物として0.1~10重量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。好ましくは、原料に、塩酸を、pH2~5、原料濃度が乾燥物として3~8.5重量%となるように加え、70~90℃にて1~3時間抽出する。更に好ましくは、ミキサーなどで原料を粉砕してから抽出を行う。
【0038】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類から低分子画分を除去する方法
上記手段により得られた抽出液を濾過した後、マンニトール等の低分子物質を除去する。その手段や条件等に特に制限はないが、例えば、公知の方法に準じた限外濾過などによる手段であれば、得られた抽出液をそのままその手段に供することが可能であり、工業的な量産化生産にも適しているので好ましい。より詳細には、その分子量分画の手段が、少なくともマンニトールを透過することが可能な限外濾過膜を用いるものであることが好ましい。更により詳細には、その分子量分画の手段が、分画分子量200~200,000の限外濾過膜を用いるものであることが好ましく、分画分子量500~30,000の限外濾過膜を用いるものであることがより好ましい。
【0039】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解
上記のようにして得られたフコースを構成糖の一部とする多糖類を原料として、加水分解を行う。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸を、pH0.1~5、抽出物の乾燥物換算濃度が0.1~25質量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して加水分解する方法が挙げられる。好ましくは、抽出物に、塩酸を、pH0.1~3、抽出物の乾燥物換算濃度が3~6質量%となるように加え、50~70℃にて1~5時間撹拌して加水分解する。
【0040】
反応終了後、速やかに反応液を冷却し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤によりpH7~8に中和する。この中和液を活性炭脱色、濾過、電気透析装置による脱塩することにより、フコース含有加水分解物を得ることができる。
【0041】
・フコースの分画・精製
上記加水分解物からフコースに富む画分を分離し回収する。その手段や条件等に特に制限はない。例えば、公知の方法に準じた限外濾過、脱塩、イオン交換、電気泳動、分子排斥クロマトグラフィー、モレキュラーシーブなどによる手段が挙げられる。この分離・回収により、残存するアルギン酸等の不純物が除かれて、高純度のフコースが得られる。例えば、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で10質量%以上含有する、より典型的には20質量%以上含有する、更により典型的には30質量%以上含有する、特に典型的には40質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。さらに、公知の方法に準じた結晶化、煎糖化、遠心分離、クロマトグラフィー分離等の手段により、フコースを高度に精製することができる。これにより、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で90質量%以上含有する、より典型的には95質量%以上含有する、更により典型的には98質量%以上含有する、特に典型的には99質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。
【0042】
本発明においては、フコースとして海藻由来組成物を用いる場合には、フコースを乾燥物当たり80質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが好ましく、85質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることがより好ましく、90質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが更により好ましく、95質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが最も好ましい。この場合、その海藻由来組成物のフコース以外の糖類の含有量は、乾燥物当たり0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上10質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以上5質量%以下であることが特に好ましく、0.001質量%以上3質量%以下であることが最も好ましい。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
[高甘味度甘味料水溶液]
砂糖(上白糖)10w/v%溶液相当の甘味に調整した各種高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム、及びアドバンテーム)の溶液を作成した。
【0045】
[フコース]
本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法で得られた、海藻由来のフコース結晶品(純度93.5%、焼津水産化学工業株式会社)を使用した。
【0046】
[官能評価]
各種濃度となるようにフコースを添加した試料を、よく訓練された5名以上の評価者に摂取してもらい、それぞれフコースを添加しないブランクと比較したときの変化度合を評価した。表1には、各試験例に共通の評価基準を示す。
【0047】
【0048】
<試験例1>
スクラロース(使用製剤:商品名「サンスイート」三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、スクラロース含有水溶液(0.017w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「甘味料特有の後のびする嫌な甘味」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0049】
【0050】
その結果、表2に示されるように、スクラロース含有水溶液(0.017w/v%)にフコースを濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、甘味料特有の後のびする嫌な甘味が改善されて、飲みやすくなった。
【0051】
<試験例2>
アセスルファムカリウム(使用製剤:商品名「サネット」三菱商事ライフサイエンス株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、アセスルファムカリウム含有水溶液(0.05w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「軽さ、すっきり感」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0052】
【0053】
その結果、表3に示されるように、アセスルファムカリウム含有水溶液(0.05w/v%)にフコースを濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、軽さ、すっきり感が向上して、飲みやすくなった。
【0054】
<試験例3>
アスパルテーム(使用製剤:ツタヤ化成工業株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、アスパルテーム含有水溶液(0.05w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「ベタついた甘味」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0055】
【0056】
その結果、表4に示されるように、アスパルテーム含有水溶液(0.05w/v%)にフコースを濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、べたついた甘味が改善されて、飲みやすくなった。
【0057】
<試験例4>
ステビア(使用製剤:商品名「レバウディオJ-100」守田化学工業株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、ステビア含有水溶液(0.025w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「軽さ、すっきり感」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0058】
【0059】
その結果、表5に示されるように、ステビア含有水溶液(0.025w/v%)にフコース濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、軽さ、すっきり感が向上して、飲みやすくなった
【0060】
<試験例5>
ネオテーム(使用製剤:商品名「ミラスィー200」DSP五協フード&ケミカル株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、ネオテーム含有水溶液(0.0008w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「ベタついた甘味」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0061】
【0062】
その結果、表6に示されるように、ネオテーム含有水溶液(0.0008w/v%)にフコース濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、べたついた甘味が改善されて、飲みやすくなった。
【0063】
<試験例6>
アドバンテーム(使用製剤:商品名「スイートアップV-30」三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に対し、フコースによる呈味改善効果を調べた。具体的には、アドバンテーム含有水溶液(0.0002w/v%)にフコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの「軽さ、すっきり感」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0064】
【0065】
その結果、表7に示されるように、アドバンテーム含有水溶液(0.0002w/v%)にフコースを濃度0.001w/v%以上含有せしめることで、軽さ、すっきり感が向上して、飲みやすくなった。
【0066】
<製造例1>
表8に示す処方で原材料をよく混合して甘味付与用組成物を調製し、これをスティック包装して粉末スティックを製造した。
【0067】