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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149328
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】原子力発電所の通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H04B3/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057843
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 至彦
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊也
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀春
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046AA03
5K046AA09
5K046BA02
5K046BB05
5K046PS05
5K046PS31
(57)【要約】
【課題】原子力発電所において、既存の設備を利用できるとともに、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信が可能な通信システムを提供する。
【解決手段】本発明による、原子力発電所の通信システムは、原子力発電所に設置され、電力線通信の親機20と、電力線通信の子機30とを備える。親機20と子機30は、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアに設置されていて、原子力発電所の内部の電力線10に接続されて互いに接続されている。無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在しないエリアには、無線通信の機器が設置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所に設置され、
電力線通信の親機と、
前記電力線通信の子機と、
を備え、
前記親機と前記子機は、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアに設置されていて、前記原子力発電所の内部の電力線に接続されて互いに接続されており、
前記機器が存在しないエリアには、前記無線通信の機器が設置されている、
ことを特徴とする、原子力発電所の通信システム。
【請求項2】
前記電力線は、給電元の電源盤に接続されており、
前記親機は、前記給電元の電源盤に設置されている、
請求項1に記載の原子力発電所の通信システム。
【請求項3】
前記電力線は、給電先の電源盤に接続されており、
前記子機は、前記給電先の電源盤に設置されている、
請求項1に記載の原子力発電所の通信システム。
【請求項4】
前記親機は、前記原子力発電所が備えるサーバまたはネットワークに接続している、
請求項1に記載の原子力発電所の通信システム。
【請求項5】
前記給電元の電源盤は、作業用電源として設置された仮設電源盤である、
請求項2に記載の原子力発電所の通信システム。
【請求項6】
前記給電先の電源盤は、作業用電源として設置された仮設電源盤である、
請求項3に記載の原子力発電所の通信システム。
【請求項7】
原子力発電所に設置され、
電力線通信の親機と、
前記電力線通信の子機と、
を備え、
前記親機と前記子機の少なくとも一方は、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアの近傍エリアとして予め定められたエリアに設置されていて、前記原子力発電所の内部の電力線に接続されて互いに接続されており、
前記機器が存在しないエリアには、前記無線通信の機器が設置されている、
ことを特徴とする、原子力発電所の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所で利用される通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、設置された機器の状態や測定値などの大容量のデータを伝送し、保存することが期待されている。しかし、現在の原子力発電所では、主にページング(構内放送設備)、電話、及びPHSを用いて通信を行っており、大容量データを伝送可能な通信環境を備えていない。
【0003】
原子力発電所に適用可能な従来の通信システムの例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の通信システムでは、通信端末は、基地局の電磁波が受信できる場合に電磁波を送信し、基地局の電磁波が受信できない場合に電磁波を送信せず、基地局は、電磁波の影響を受けやすい機器から距離Lだけ離隔した位置に設置され、距離Lは、基地局の電磁波到達距離L1と通信端末の電磁波到達距離L2との和よりも大きいように構成されている。特許文献1の通信システムは、以上の構成により、電磁波の影響を受けやすい機器が存在する場所であってもこの機器に影響を与えることなく、無線通信の利便性( 例えば高速な無線データ通信) を確保する。
【0004】
また、特許文献2には、変電機器保護制御システムにおいて、通信手段の一部または全部を無線通信手段で構成することと、制御電源からの電力を供給する電力線を情報伝送路として併用することとが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-078040号公報
【特許文献2】特開2008-295298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、原子力発電所では大容量のデータを伝送することが求められているが、現在の原子力発電所では、大容量のデータを伝送可能な通信環境を備えていない。一般に、通信線(例えばLANケーブル)を用いた有線通信や、無線通信(例えば、無線LAN)では、大容量のデータを伝送可能である。
【0007】
原子力発電所において有線通信の設備を新たに設置しようとすると、使用する通信線や通信機器の物量が多く、これらを設置する作業も多大であり、多くのコストと工期が必要であるという課題がある。また、原子力発電所の内部には、通信線や通信機器を設置できないエリアが存在する可能性がある。一方、原子力発電所において無線通信の設備を設置しようとすると、原子力発電所内には無線通信によるノイズの影響を受ける可能性が高い機器が存在するため、安易に無線通信を利用できないという課題がある。
【0008】
このため、原子力発電所では、できるだけ既存の設備を利用できるとともに、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信が可能な通信システムが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、原子力発電所において、既存の設備を利用できるとともに、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信が可能な通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による、原子力発電所の通信システムは、原子力発電所に設置され、電力線通信の親機と、前記電力線通信の子機とを備える。前記親機と前記子機は、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアに設置されていて、前記原子力発電所の内部の電力線に接続されて互いに接続されている。前記機器が存在しないエリアには、前記無線通信の機器が設置されている。
【0011】
また、本発明による、原子力発電所の通信システムは、次のような構成を備えることもできる。原子力発電所に設置され、電力線通信の親機と、前記電力線通信の子機とを備える。前記親機と前記子機の少なくとも一方は、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアの近傍エリアとして予め定められたエリアに設置されていて、前記原子力発電所の内部の電力線に接続されて互いに接続されている。前記機器が存在しないエリアには、前記無線通信の機器が設置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、原子力発電所において、既存の設備を利用できるとともに、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信が可能な通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電力線通信(PLC)の概要を示す模式図である。
図2】原子力発電所における電力線の例を示す図である。
図3】本発明の実施例による通信システムが使用するPLCの構成の例を示す図である。
図4】本実施例による通信システムが使用するPLCにおいて、子機に接続される装置の例を示す図である。
図5】本実施例による通信システムにおいて、PLCを使用するエリアと無線通信を使用するエリアを定める手順を示すフローチャートの例である。
図6】本実施例による通信システムが使用する無線通信の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施例による、原子力発電所の通信システムを、図面を参照して説明する。なお、本明細書で参照する図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0015】
本実施例による、原子力発電所の通信システムは、原子力発電所の内部に設置される。本実施例による通信システムは、原子力発電所において、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在するエリアであって、既設の電力線が使用可能なエリアでは、電力線を通信回線として利用する電力線通信(Power-Line Communication、PLC)を使用し、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在しないエリアでは、無線通信を使用する。本実施例による通信システムでは、電力線通信と無線通信を使用するが、電力線通信と無線通信を使用できないエリアでは、有線通信などの他の通信手段を使用することもできる。
【0016】
初めに、電力線通信(以下、「PLC」と称する)について簡単に説明する。PLCは、100Vまたは200Vの電力線に高周波の通信用信号を伝送させることにより、電力線を通信ケーブルとして使用する技術である。PLCを利用すると、原子力発電所に設置されている既存の電力線を利用して、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信を行うことができる。
【0017】
図1は、電力線通信(PLC)の概要を示す模式図である。PLCは、100Vまたは200Vの電力線10と、PLCの親機20と、PLCの子機30で構成される。親機20と子機30は、電力線10のコンセント40に差し込まれて使用され、電力線10を使用して互いに信号を伝送する。親機20は、例えば、集線装置50を介して、サーバ51やネットワーク52などに接続可能である。子機30は、例えば、端末機器60に接続可能である。
【0018】
図2は、原子力発電所における電力線10の例を示す図である。原子力発電所では、電力線10は、例えば、100Vまたは200Vの電源線であり、100Vまたは200Vの給電元の電源盤11(例えば、分電盤)と、給電先の電源盤12(例えば、高電圧回路に使用するメタルクラッドや、低電圧回路に使用するパワーセンター)を接続する。
【0019】
本実施例では、原子力発電所に既設のこのような電力線10を通信回線として利用して、PLCを構成する。
【0020】
図3は、本実施例による通信システムが使用するPLCの構成の例を示す図である。本実施例による通信システムは、PLCの構成として、100Vまたは200Vの電力線10と、給電元の電源盤11と、給電先の電源盤12と、PLCの親機20と、PLCの子機30を備える。
【0021】
電力線10は、原子力発電所の内部の電源線であり、電源からの電力を供給するためのケーブルである。電力線10は、給電元の電源盤11と給電先の電源盤12に接続されている。本実施例では、電力線10に、原子力発電所に既設の電源線を使用することができる。
【0022】
給電元の電源盤11は、例えば100Vまたは200Vの分電盤であり、給電先の電源盤12に電力を供給する。
【0023】
給電先の電源盤12は、例えば、メタルクラッド、パワーセンター、及び機器や装置などを制御する制御盤である。
【0024】
PLCの親機20は、電力線10に接続されている。本実施例では、PLCの親機20は、給電元の電源盤11(例えば、分電盤)に設置されて、電力線10に接続されている。また、親機20は、図1に示したように、集線装置50に接続され、集線装置50を介して、原子力発電所が備える設備、例えばサーバ51やネットワーク52などに接続可能である。親機20が原子力発電所のサーバ51またはネットワーク52に接続すると、PLCにより原子力発電所のデータを伝送することができる。親機20には、PLCの既存の親機(マスター)を用いることができる。
【0025】
PLCの子機30は、電力線10に接続されており、電力線10を介して親機20に接続されている。本実施例では、PLCの子機30は、給電先の電源盤12(例えば、メタルクラッドやパワーセンター)に設置されて、電力線10に接続されている。子機30は、親機20から電力線10で伝送された原子力発電所のデータを受信し、受信したデータを端末機器60(図1)に送信することができる。子機30には、PLCの既存の子機(ターミナル)を用いることができる。
【0026】
図4は、本実施例による通信システムが使用するPLCにおいて、子機30に接続される装置の例を示す図である。
【0027】
子機30は、例えば、通信線61(例えば、LANケーブル)により集線装置50に接続可能であり、集線装置50を介して、無線通信または有線通信により端末機器60に接続可能である。子機30が無線通信により端末機器60に接続する場合には、集線装置50は、通信線61により無線通信のアクセスポイント63に接続し、アクセスポイント63は、無線通信により端末機器60に接続する。子機30が有線通信により端末機器60に接続する場合には、集線装置50は、通信線61により端末機器60に接続する。
【0028】
本実施例による通信システムが使用するPLCでは、給電元の電源盤11と給電先の電源盤12の少なくとも一方に、仮設電源盤を用いることができる。仮設電源盤とは、例えば工事現場で使用するための作業用電源として設置された仮設の電源盤である。
【0029】
例えば、建設現場において、建築物のコンクリートを打設した後は、コンクリートにより電波が遮蔽されて携帯電話などの無線通信が使用できず、データ通信が不可能なことがある。このような工事現場でも、設置された仮設電源盤にPLCの親機20とPLCの子機30の両方または一方を設置し、仮設電源盤に接続された電力線10を利用してPLCを構成することで、データ通信を可能にすることができる。
【0030】
以下では、本実施例による通信システムにおいて、PLCを使用するエリアと無線通信を使用するエリアを定める手順の例を説明する。
【0031】
図5は、本実施例による通信システムにおいて、電力線通信(PLC)を使用するエリアと無線通信を使用するエリアを定める手順を示すフローチャートの例である。図5のフローチャートに示す手順は、例えば、通信システムを設置する作業者が実行する。
【0032】
S510では、原子力発電所において通信システムを設置するエリアを1つ選択する。以下では、選択したエリアを対象エリアと呼ぶ。
【0033】
以下の手順は、対象エリアにPLCを使用するか無線通信を使用するかを定める手順である。
【0034】
S520では、対象エリア内に、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器(原子力発電所の機器)が存在するか否かを判断する。作業者は、例えば、機器に接続されている回路に流れる電流の大きさを基に、その機器が無線通信によるノイズの影響を受ける可能性があるか否かを判断することができる。例えば、機器に接続されている回路に流れる電流が予め任意に定めた閾値よりも小さいと、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性があると判断することができる。対象エリア内に、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が存在する場合は、S530に進み、この機器が存在しない場合は、S580に進む。
【0035】
S530では、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器が、無線通信で使用する周波数帯域において電波干渉を受けるか否かを判断する。作業者は、例えば、事前に行った試験の結果に基づいて、この機器が無線通信の電波干渉を受けるか否かを判断することができる。この機器が無線通信の電波干渉を受ける場合は、S540に進み、この機器が無線通信の電波干渉を受けない場合は、S580に進む。
【0036】
S540では、対象エリア内に電力線10が接続されている設備が存在するか否かを判断する。電力線10が接続されている設備は、例えば給電元の電源盤11または給電先の電源盤12である。電力線10が接続されている設備は、電力線10のコンセント40でもよい。対象エリア内に、電力線10が接続されている設備が存在する場合は、S570に進み、この設備が存在しない場合は、S550に進む。
【0037】
S550では、対象エリアの近傍エリアに電力線10が接続されている設備(例えば、給電元の電源盤11、給電先の電源盤12、またはコンセント40)が存在するか否かを判断する。近傍エリアとは、対象エリアの付近のエリアで予め定められたエリアであり、例えば対象エリアに隣接する部屋や通路である。近傍エリアに電力線10が接続されている設備が存在する場合は、S570に進み、この設備が存在しない場合は、S560に進む。
【0038】
S560では、対象エリアまたは近傍エリアに電力線10の設置が可能か否かを判断する。対象エリアまたは近傍エリアに電力線10の設置が可能な場合は、S570に進み、電力線10の設置が不可能な場合は、S590に進む。
【0039】
S570では、対象エリアにPLCを使用する。対象エリアは、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器(原子力発電所の機器)が存在するエリアであって、既設の電力線10が使用可能なエリアであるので、または近傍エリアが既設の電力線10が使用可能なエリアであるので、PLCを使用する。対象エリアと近傍エリアには、PLCの親機20と子機30のうち少なくとも一方が設置される。以下では、S540、S550、及びS560のそれぞれに対するS570での手順について説明する。
【0040】
S540で対象エリア内に電力線10が接続されている設備(例えば、給電元の電源盤11、給電先の電源盤12、またはコンセント40)が存在する場合には、この設備にPLCの親機20または子機30を設置する。
【0041】
S550で対象エリアの近傍エリアに電力線10が接続されている設備が存在する場合には、この設備にPLCの親機20または子機30を設置する。PLCの子機30には、対象エリアまたは近傍エリアに設置された集線装置50が接続される。集線装置50には、対象エリアに設置された端末機器60が接続される。この手順を踏まえて近傍エリアを改めて説明すると、近傍エリアとは、近傍エリアに通信機器(PLCの子機30と集線装置50の少なくとも一方)を設置したときに、対象エリアに設置された通信機器(集線装置50と端末機器60の少なくとも一方)と近傍エリアの通信機器とが通信線61で接続できるような位置にある領域のことである。
【0042】
S560で対象エリアに電力線10の設置が可能な場合には、対象エリアに電力線10を設置する。この電力線10の一端は、対象エリアに存在し、他端は、対象エリアの外部に存在する。電力線10の一端には、コンセント40を設け、コンセント40にPLCの親機20または子機30を設置する。電力線10の他端は、任意の既存の電力線10、または既存の電力線10に接続されている任意の給電元の電源盤11、給電先の電源盤12、またはコンセント40に接続する。
【0043】
S560で近傍エリアに電力線10の設置が可能な場合には、近傍エリアに電力線10を設置する。この電力線10の一端は、近傍エリアに存在し、他端は、近傍エリアの外部に存在する。電力線10の一端には、コンセント40を設け、コンセント40にPLCの親機20または子機30を設置する。PLCの子機30には、対象エリアまたは近傍エリアに設置された集線装置50が接続される。集線装置50には、対象エリアに設置された端末機器60が接続される。電力線10の他端は、任意の既存の電力線10、または既存の電力線10に接続されている任意の給電元の電源盤11、給電先の電源盤12、またはコンセント40に接続する。
【0044】
S580では、対象エリアに無線通信を使用する。対象エリアは、無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のある機器(原子力発電所の機器)が存在しないエリアであるので、無線通信を使用する。すなわち、対象エリアには、無線通信の機器、例えばアクセスポイント63を設置する。アクセスポイント63は、無線通信により端末機器60に接続される。無線通信には、大容量のデータ通信を行うことができるように、例えば高速大容量の無線通信を使用するのが好ましい。
【0045】
S590では、対象エリアで使用する通信手段を再検討する。対象エリアでは、PLCと無線通信が使用できないので、例えば有線通信などの他の通信手段を使用することを検討する。
【0046】
図6は、本実施例による通信システムが使用する無線通信の構成の例を示す図である。無線通信には、無線LANなどの従来の技術を使用することができる。
【0047】
本実施例による通信システムは、無線通信の機器として、集線装置50と、2台のアクセスポイント63を備える。集線装置50は、1台のアクセスポイント63と、原子力発電所が備える設備、例えばサーバ51やネットワーク52などに接続可能である。もう1台のアクセスポイント63は、無線通信または有線通信により端末機器60に接続可能である。集線装置50に接続されたアクセスポイント63は、集線装置50から伝送された原子力発電所のデータを、もう1台のアクセスポイント63に送信することができる。原子力発電所のデータを受信したアクセスポイント63は、受信したデータを端末機器60に送信することができる。
【0048】
本実施例による通信システムが使用するPLCでは、PLCの親機20と子機30は、例えば鉄製の容器であるPLC収納盤に収納して、電力線10に接続することができる。以下では、親機20と子機30がPLC収納盤に収納される場合について説明する。
【0049】
親機20が給電元の電源盤11に設置される場合や、子機30が給電先の電源盤12に設置される場合には、電源盤11、12は、PLC収納盤を収納可能であるのが好ましい。電源盤11、12がPLC収納盤を収納可能でない場合には、親機20と子機30を設置する場所にPLC収納盤を設置可能であるか否かを判断する。親機20と子機30を設置する場所にPLC収納盤を設置可能でない場合には、PLCを使用せず、例えば無線通信や有線通信などの他の通信手段を使用することを検討する。
【0050】
以上説明したように、本実施例による通信システムでは、原子力発電所の機器が無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のあるエリアであって、既設の電力線が使用可能なエリアでは、PLCを使用し、原子力発電所の機器が無線通信によるノイズの影響を受ける可能性のないエリアでは、無線通信を使用する。この構成により、本実施例による通信システムは、原子力発電所において、既存の設備を利用して、原子力発電所の機器にノイズの影響を与えずに、大容量のデータ通信を行うことができる。本実施例では、電力線10、給電元の電源盤11、及び給電先の電源盤12などの既存の設備を利用するので、通信システムを設置するときに、使用する通信線や機器などの物量の増加やこれらを設置する作業の増加を抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…電力線、11…給電元の電源盤、12…給電先の電源盤、20…PLCの親機、30…PLCの子機、40…コンセント、50…集線装置、51…サーバ、52…ネットワーク、60…端末機器、61…通信線、63…アクセスポイント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6