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特開2023-14933野菜含有組成物のためのフコースの利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014933
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】野菜含有組成物のためのフコースの利用
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230124BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20230124BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230124BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20230124BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230124BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20230124BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/10 A
A23L2/00 B
A23L2/02 E
A23L2/52 101
A23L19/00 A
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119168
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭世
(72)【発明者】
【氏名】長島 英里子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】久保村 大樹
【テーマコード(参考)】
4B016
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG05
4B016LG16
4B016LK08
4B047LB03
4B047LE06
4B047LF01
4B047LF07
4B047LG22
4B047LG42
4B047LP01
4B047LP07
4B117LC02
4B117LG08
4B117LG09
4B117LG18
4B117LG22
4B117LK12
(57)【要約】
【課題】野菜含有組成物の呈味や飲みやすさを改善する技術を提供する。
【解決手段】フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の呈味改善用組成物である。また、フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の飲みやすさ改善用組成物である。前記野菜含有組成物は、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、及びニンジンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有するものであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の呈味改善用組成物。
【請求項2】
フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の飲みやすさ改善用組成物。
【請求項3】
野菜含有組成物にフコースを含有させる、前記野菜含有組成物の呈味改善方法。
【請求項4】
野菜含有組成物にフコースを含有させる、前記野菜含有組成物の飲みやすさ改善方法。
【請求項5】
フコースの使用であって、野菜含有組成物の呈味改善のための該使用。
【請求項6】
フコースの使用であって、野菜含有組成物の飲みやすさ改善のための該使用。
【請求項7】
フコースを含有する野菜含有組成物であって、前記野菜含有組成物は、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、及びニンジンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有するものである、該野菜含有組成物。
【請求項8】
フコースを添加する工程を有する野菜含有組成物の製造方法であって、前記野菜含有組成物は、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、及びニンジンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有するものである、該野菜含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜飲料等の野菜含有組成物に関し、より詳細には、野菜含有組成物の呈味や飲みやすさの改善のために用いられる組成物及びその方法、野菜含有組成物の呈味や飲みやすさの改善のためのフコースの使用、並びにフコースを含有する野菜含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康意識の高まりから、野菜に含まれる食物繊維やミネラルなどの栄養素を野菜飲料等の形態で手軽に摂取することが好まれている。また、甘味など余計な呈味成分を付与しない、野菜のそのまま呈味を味わうことを志向する消費者も少なくない。一方で野菜には、苦味、青臭さ、渋味、エグ味等の特有の呈味があり、野菜含有組成物には飲食のしやすさに欠けるという問題があった。
【0003】
野菜含有組成物の呈味を改善する方法に関しては、例えば、特許文献1には、野菜汁に茶の熱水抽出液を添加し、タンニン濃度を150~1500ppmとしたことを特徴とする野菜ジュースが開示されており、野菜汁に茶の熱水抽出液を添加し、タンニン濃度を150~1500ppmとするときは、野菜特有の不良香味を除去し、あと味の爽やかな野菜ジュースが得られるものとされている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、カルボキシル基を有する水溶性酸性多糖類を含有する飲料が開示されており、当該水溶性酸性多糖類により、野菜汁、果汁、茶抽出物等の青臭や苦味、渋味、収斂味等の呈味が改善されるものとされている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、野菜汁及び/又は果汁と、発酵豆乳とを含有することを特徴とする容器詰飲料が開示されており、当該発酵豆乳により、野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等を抑制することができるものとされている。
【0006】
また、例えば、特許文献4には、飲料全体に対しストレート換算で50%以上の野菜汁と、0.001重量%以上0.005重量%未満のスクラロースとを含有し、飲料全体における糖質の割合が8g/100mL以下である低糖質野菜飲料が開示されており、当該スクラロース含有低糖質野菜飲料は、野菜汁特有の不快臭(青臭さ)や野菜汁を加熱した際に生じる不快な加熱臭を緩和でき、低糖質野菜飲料で顕著に感じられる後味の悪さを改善することができるものとされている。
【0007】
また、例えば、特許文献5には、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分を含有する、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物が開示されており、当該糖カルボン酸を用いることで、素材の風味を活かしつつ、フレッシュ感の向上、えぐみの低減等により、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-300224号公報
【特許文献2】特開2003-116496号公報
【特許文献3】特開2008-43280号公報
【特許文献4】特開2010-46047号公報
【特許文献5】特開2017-158500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、野菜飲料等の野菜含有組成物に関し、その呈味を改善するための各種の成分について知られていたが、利用するものの利便性のためには、更なる素材の開発が望まれていた。
【0010】
よって、本発明の目的は、種々の野菜に対して有効で、それら野菜を含有する組成物の呈味や飲みやすさを改善することができる素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意研究したところ、フコースに、野菜含有組成物の呈味や飲みやすさを改善する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の呈味改善用組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明の第2の観点によれば、本発明は、フコースを有効成分として含有する、野菜含有組成物の飲みやすさ改善用組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明の第3の観点によれば、本発明は、野菜含有組成物にフコースを含有させる、前記野菜含有組成物の呈味改善方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明の第4の観点によれば、本発明は、野菜含有組成物にフコースを含有させる、前記野菜含有組成物の飲みやすさ改善方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明の第5の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、野菜含有組成物の呈味改善のための該使用を提供するものである。
【0017】
また、本発明の第6の観点によれば、本発明は、フコースの使用であって、野菜含有組成物の飲みやすさ改善のための該使用を提供するものである。
【0018】
また、本発明の第7の観点によれば、本発明は、フコースを含有する野菜含有組成物であって、前記野菜含有組成物は、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、及びニンジンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有するものである、該野菜含有組成物を提供するものである。
【0019】
また、本発明の第8の観点によれば、本発明は、フコースを添加する工程を有する野菜含有組成物の製造方法であって、前記野菜含有組成物は、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、及びニンジンからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有するものである、該野菜含有組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フコースを利用して、野菜を含有する組成物の呈味や飲みやすさを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、野菜を含有せしめてなる野菜含有組成物に、その呈味や飲みやすさを改善するためにフコースを適用するものである。
【0022】
上記野菜としては、特に限定されないが、例えば、大麦若葉、桑葉、抹茶、ハトムギ若葉、明日葉、ケール、ホウレンソウ、ゴーヤ、モロヘイヤ、ヨモギ、モリンガ、クマザサ、スピルリナ、クロレラ、長命草、トマト、ニンジンなどが挙げられる。また、野菜として、1種類を含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0023】
本発明が適用される野菜含有組成物としては、飲食可能であればよく、その形態に特に制限はない。例えば、野菜の葉、実、根、花、蕾等の可食部を、搾汁器、磨砕器、ミキサー等にかけて、搾汁したり、擂りおろしたりして、あるいは、必要に応じて、ブリーチングや加熱処理を施したり、ろ過装置、遠心分離装置等にかけて不溶物を除いたりして、飲食可能に調製された野菜汁の形態であってよい。また、野菜を飲食可能にピュレ状や粉末状に調製したものや野菜を配合してなる粉末飲料、スープ、ドレッシング、ソース、錠剤(タブレット)、サプリメントなどの形態であってもよい。あるいは、野菜の一次的処理物を更に飲食品等に配合・加工等してなる、キャンディ、チョコレート、チューインガム、ビスケット、クッキー、米菓、スナック、豆菓子・ドライフルーツ、珍味、生菓子、半生菓子、焼菓子、デザート類、シリアル類、ゼリー、ジャム、スプレッド、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、パン、総菜、漬物などの形態であってもよい。更には、野菜含有組成物は、直接飲食に用いるための形態だけでなく、調味用や調理用等に用いるためのものであってもよい。
【0024】
ただし、野菜含有組成物は、当該組成物に含有せしめる野菜に由来する成分が一定以上を占める該組成物の形態でフコースが適用されることが好ましく、例えば、当該野菜由来の成分が乾燥物換算で10~100質量%を占める組成物の形態でフコースが適用されることがより好ましい。上記野菜含有組成物に含有せしめる野菜に由来する成分の該組成物中に占める割合は、乾燥物換算で20~100質量%であってよく、30~100質量%であってよく、40~100質量%であってよく、50~100質量%であってよく、60~100質量%であってよく、70~100質量%であってよく、80~100質量%であってよく、90~100質量%であってよい。そのような野菜含有組成物には野菜由来の成分に起因した呈味の問題が生じやすく、これにフコースを含有せしめるようにして、当該野菜含有組成物に対する呈味や飲みやすさの改善効果を発揮させることができる。
【0025】
本発明が適用される野菜含有組成物としては、飲料の形態であってもよく、例えば、トマトジュース、ニンジンジュース、野菜ミックスジュース、野菜・果実ミックスジュース、青汁、清涼飲料水、粉末飲料、ティーバッグ形状飲料などが挙げられる。そのような飲料の形態の場合には野菜由来の成分に起因した呈味の問題が生じやすく、これにフコースを含有せしめるようにして、当該野菜含有組成物に対する呈味や飲みやすさの改善効果を更に効果的に発揮させることができる。
【0026】
本発明が適用される野菜含有組成物において、当該成物中のフコースの含有量としては、呈味や飲みやすさを改善するための有効量であればよく、適宜調整すればよいが、典型的に、例えば、当該組成物中に含まれる野菜由来成分の100質量部に対するフコース量として0.0001~1000質量部であることができ、0.0005~1000質量部であることができ、0.0005~500質量部であることができ、0.001~500質量部であることができ、0.001~200質量部であることができ、0.01~200質量部であることができ、0.01~100質量部であることができ、0.1~100質量部であることができ、0.1~50質量部であることができる。
【0027】
なお、フコース量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定が可能である。
【0028】
本発明において、呈味や飲みやすさを改善するのに有効量でフコースを含有せしめたかどうかは、野菜含有組成物中にフコースを含有せしめたほうが、フコースを含有せしめない場合に比べて、その野菜含有組成物の呈味や飲みやすさが改善しているかどうかについて官能評価を行うことなどによって、適宜判定することができる。また、そのような官能評価によってフコースの有効量を予め決定しておき、野菜含有組成物の調製や加工等の際に、その量を添加するなどによって、呈味や飲みやすさの改善された野菜含有組成物を調製することができる。なお、本明細書において「呈味の改善」とは、例えば、野菜に特有の青臭さや異味、不快な先味の刺激、苦味、渋味、エグ味などを抑制したり、軽さやすっきり感を向上したり、飲料にしたときの飲みやすさを改善したりすることを含む。
【0029】
本発明に用いられるフコースとしては、特に制限はないが、飲食品等の形態に適したものとしては、天然物原料から調製されたものを用いることが好ましい。例えば、本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法により、アスコフィラムノドサムやモズク等の海藻から抽出して得られるフコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解物からは、フコースを効率的に調製することができるので、そのような方法により調製されたものを用いることが好ましい。
【0030】
以下には、フコースの調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明に用いられるフコースは、以下に例示する調製方法によるものに限定されるものではない。
【0031】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の抽出方法
原料の海藻としては、褐藻類が好ましく、特にアスコフィラムノドサム、オキナワモズクが好ましく用いられる。原料の海藻からフコースを構成糖の一部とする多糖類を抽出する方法としては、原料に、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、又は、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液を、pH1~5、原料濃度が乾燥物として0.1~10重量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。好ましくは、原料に、塩酸を、pH2~5、原料濃度が乾燥物として3~8.5重量%となるように加え、70~90℃にて1~3時間抽出する。更に好ましくは、ミキサーなどで原料を粉砕してから抽出を行う。
【0032】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類から低分子画分を除去する方法
上記手段により得られた抽出液を濾過した後、マンニトール等の低分子物質を除去する。その手段や条件等に特に制限はないが、例えば、公知の方法に準じた限外濾過などによる手段であれば、得られた抽出液をそのままその手段に供することが可能であり、工業的な量産化生産にも適しているので好ましい。より詳細には、その分子量分画の手段が、少なくともマンニトールを透過することが可能な限外濾過膜を用いるものであることが好ましい。更により詳細には、その分子量分画の手段が、分画分子量200~200,000の限外濾過膜を用いるものであることが好ましく、分画分子量500~30,000の限外濾過膜を用いるものであることがより好ましい。
【0033】
・フコースを構成糖の一部とする多糖類の加水分解
上記のようにして得られたフコースを構成糖の一部とする多糖類を原料として、加水分解を行う。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸を、pH0.1~5、抽出物の乾燥物換算濃度が0.1~25質量%となるように加え、10~100℃にて0~24時間撹拌して加水分解する方法が挙げられる。好ましくは、抽出物に、塩酸を、pH0.1~3、抽出物の乾燥物換算濃度が3~6質量%となるように加え、50~70℃にて1~5時間撹拌して加水分解する。
【0034】
反応終了後、速やかに反応液を冷却し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤によりpH7~8に中和する。この中和液を活性炭脱色、濾過、電気透析装置による脱塩することにより、フコース含有加水分解物を得ることができる。
【0035】
・フコースの分画・精製
上記加水分解物からフコースに富む画分を分離し回収する。その手段や条件等に特に制限はない。例えば、公知の方法に準じた限外濾過、脱塩、イオン交換、電気泳動、分子排斥クロマトグラフィー、モレキュラーシーブなどによる手段が挙げられる。この分離・回収により、残存するアルギン酸等の不純物が除かれて、高純度のフコースが得られる。例えば、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で10質量%以上含有する、より典型的には20質量%以上含有する、更により典型的には30質量%以上含有する、特に典型的には40質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。さらに、公知の方法に準じた結晶化、煎糖化、遠心分離、クロマトグラフィー分離等の手段により、フコースを高度に精製することができる。これにより、典型的にはフコースを乾燥物換算濃度で90質量%以上含有する、より典型的には95質量%以上含有する、更により典型的には98質量%以上含有する、特に典型的には99質量%以上含有するフコース含有組成物を得ることができる。
【0036】
本発明においては、フコースとして海藻由来組成物を用いる場合には、フコースを乾燥物当たり80質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが好ましく、85質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることがより好ましく、90質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが更により好ましく、95質量%以上含有する海藻由来組成物を用いることが最も好ましい。この場合、その海藻由来組成物のフコース以外の糖類の含有量は、乾燥物当たり0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以上10質量%以下であることが更により好ましく、0.001質量%以上5質量%以下であることが特に好ましく、0.001質量%以上3質量%以下であることが最も好ましい。
【実施例0037】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
<試験例1>
野菜含有組成物の呈味や飲みやすさについて、フコースによる改善効果を調べた。
【0039】
[フコース]
本出願人によるWO2018/180727号公報に開示した方法で得られた、海藻由来のフコース結晶品(純度93.5%、焼津水産化学工業株式会社)を使用した。
【0040】
[官能評価]
表1には、各試験例に共通の評価基準を示す。具体的には、各種濃度となるようにフコースを添加した試料を、よく訓練された5名以上の評価者に摂取してもらい、それぞれフコースを添加しないブランクと比較したときの変化度合を評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
<試験例1>
市販のトマトジュースやにんじんジュースにフコースを含有せしめて、その呈味や飲みやすさに関してフコースによる改善効果を調べた。具体的には、フコースを0.001、0.01、0.1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときのトマトジュースの「先味の刺激」及び「飲みやすさ」について、又はにんじんジュースの「軽さ、すっきり感」及び「飲みやすさ」について、上記表1に示した基準により評価した。
【0043】
【表2】
【0044】
その結果、表2に示されるように、トマトジュースにフコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、そのジュースの先味の刺激が低減し、飲みやすさが改善した。また、にんじんジュースにフコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、そのジュースの軽さ、すっきり感が向上し、飲みやすさが改善した。なお、2w/v%程度のフコース濃度はジュースの甘味の強さに影響を与えない濃度であった。
【0045】
<試験例2>
表3に示す各種の野菜粉末を1w/v%濃度で調整した水溶液に対し、フコースを0.001、0.01、0.1、1、又は2w/v%の濃度になるように添加したときの、それぞれの野菜粉末含有水溶液の呈味の変化度合と飲みやすさについて、上記表1に示した基準により評価した。
【0046】
【表3】
【0047】
その結果、表3に示されるように、各種の野菜粉末を1w/v%濃度で調整した水溶液にフコースを0.001w/v%程度以上含有せしめることで、その野菜粉末含有水溶液の呈味や飲みやすさが改善することが明らかとなった。