(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149352
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20231005BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01K89/01 F
A01K89/015 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057880
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 博典
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BF17
2B108ED07
2B108EE01
(57)【要約】
【課題】一方向クラッチが配設される部分の腐食を防止すると共に、リール本体の小型化、軽量化が図れる魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、駆動軸11に配設され、内輪21と外輪27と複数の転がり部材を保持した保持器23とを有する一方向クラッチ20と、リール本体2に設けられ、一方向クラッチ20を収容する円筒部2Cと、を有する。外輪27に径方向外方に突出する度当て27cを設けるとともに、円筒部2Cの円周壁に、径方向に貫通し度当て27cが配設される切欠部2cを設け、度当て27cと切欠部2cとの間に介在される脚部を備えた防食プレート28を、一方向クラッチ20に対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、
前記リール本体に設けられ、前記一方向クラッチを収容する円筒部と、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記外輪に径方向外方に突出する度当てを設けるとともに、前記円筒部の円周壁に、径方向に貫通し前記度当てが配設される切欠部を設け、
前記度当てと前記切欠部との間に介在される脚部を備えた防食プレートを、前記一方向クラッチに対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記切欠部は、前記円周壁の周方向に等間隔で2箇所以上設けられるとともに、前記度当ては、前記切欠部と同数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記外輪は、前記円筒部の円周壁に対して隙間を介在して配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記外輪に径方向外方に突出する度当てを設けると共に、前記リール本体に、前記度当ての両側面の2点で当て付いて前記外輪の回転を規制する当接部を設け、
前記度当てと前記当接部の当て付く部分に介在される脚部を備えた防食プレートを、前記一方向クラッチに対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項5】
前記当接部は、前記度当ての最外径位置よりも径方向内側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記防食プレートは、アルマイト処理されたアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記外輪に径方向外方に突出する度当てを設けると共に、前記リール本体に、前記度当ての両側面の2点で当て付いて前記外輪の回転を規制する当接部を設け、
前記度当てと前記当接部の当て付く部分に介在される脚部を備えた防食プレートを、前記一方向クラッチに対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項8】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記外輪に、径方向外方に突出し、前記リール本体に対して回り止め機能を有する度当てを設け、
前記一方向クラッチの構成部材に、前記リール本体と外輪との間に配設される防食部材を設けたことを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、詳細には、駆動軸の逆回転を防止する一方向クラッチを組み込んだ魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、魚釣用リールであるスピニングリールには、ハンドルの回転操作でロータの釣糸巻き取り方向の回転を許容すると共に、ハンドルを逆回転させようとした際、ロータの逆回転を防止する逆転防止機構が組み込まれている。通常、逆転防止機構は、例えば、特許文献1に開示されているように、ピニオンギアに回り止め嵌合される内輪と、内輪の径方向外方に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、保持器の径方向外方に配設され、リール本体に対して回り止め固定された外輪とを備えた一方向クラッチで構成されている。
【0003】
前記一方向クラッチは、外輪部分をリール本体に形成した筒部に嵌合させる構成であることから、両者が接触状態となり、異種材料による電位差の相違によって腐食(電食)が発生し易いという問題がある。このため、特許文献1には、外輪とリール本体との間に、外輪部材を覆う略カップ状の保護カバーを配設した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した保護カバーは、外輪の径方向外方で、リール本体の筒部の内周面と外輪の外周面との間に介在する構造であるため、小型化、軽量化には限界があり、改良すべき余地がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、一方向クラッチを組み込んだ魚釣用リールにおいて、一方向クラッチが配設される部分の腐食を防止すると共に、リール本体の小型化、及び、軽量化が図れる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、前記リール本体に設けられ、前記一方向クラッチを収容する円筒部と、を有しており、前記外輪に径方向外方に突出する度当てを設けるとともに、前記円筒部の円周壁に、径方向に貫通し前記度当てが配設される切欠部を設け、前記度当てと前記切欠部との間に介在される脚部を備えた防食プレートを、前記一方向クラッチに対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする。
【0008】
上記した魚釣用リールによれば、リール本体に設けられる円筒部の円周壁に、径方向に貫通する切欠部を形成し、ここに外輪の度当てを径方向に露出するように配設して外輪を回り止め固定している。このように、一方向クラッチの外輪を、リール本体の円筒部の径方向内周側で回り止め固定しないことから、円筒部を可及的に小径化することが可能となり、リール本体の小型化、及び、軽量化を図ることが可能となる。また、リール本体の円筒部と一方向クラッチの外輪が異種材料であっても、両部材の接触個所(度当てと切欠部の接触個所)に防食プレートを配設するため、リール本体や一方向クラッチの腐食を防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸に配設され、内輪と外輪と複数の転がり部材を保持した保持器とを有する一方向クラッチと、を有しており、前記外輪に径方向外方に突出する度当てを設けると共に、前記リール本体に、前記度当ての両側面の2点で当て付いて前記外輪の回転を規制する当接部を設け、前記度当てと前記当接部の当て付く部分に介在される脚部を備えた防食プレートを、前記一方向クラッチに対して軸方向に重ねて配設したことを特徴とする。
【0010】
上記した魚釣用リールによれば、一方向クラッチの外輪に径方向に突出するように度当てを形成しており、リール本体に、度当ての側面の2点で当て付いて外輪の回転を規制する当接部を設けたことで、外輪を回り止め固定する部分の構造を簡略化することができ、これにより、リール本体の小型化、及び、軽量化を図ることが可能となる。また、リール本体の当接部と一方向クラッチの外輪が異種材料であっても、両部材の接触個所(2点で当て付く個所)に防食プレートを配設するため、リール本体や一方向クラッチの腐食を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る魚釣用リールによれば、一方向クラッチが配設される部分の腐食を防止すると共に、リール本体の小型化、及び、軽量化が図れる構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る魚釣リール(スピニングリール)の第1の実施形態を示す分解斜視図。
【
図2】
図1に示した魚釣用リールの主要部の軸方向断面図。
【
図5】
図4に示す一方向クラッチに配設される防食プレートの一形態例を示す斜視図。
【
図6】
図4に示す一方向クラッチに
図5に示す防食プレートを配置した状態を示す斜視図。
【
図7】本発明に係る魚釣用リールの第2の実施形態を示す分解斜視図。
【
図8】一方向クラッチの固定状態を示す斜視図。
図9は削除
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2は、本発明に係る魚釣用リールの第1の実施形態を示す図である(本実施形態では魚釣用リールとしてスピニングリールが示されている)。最初に、本実施形態のスピニングリールの全体構成の概略について説明する。なお、以下の説明において、前方及び後方は、
図2で示す方向を意味する。
【0014】
スピニングリール(以下、リールと称する)1のリール本体2には、釣竿に装着されるリール脚2Aが一体形成されている。リール本体2の前方には、回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール(図示せず)とが配設されている。
【0015】
前記ロータ3は、スプールの周囲を回転する一対の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール5の基端部を取り付けたベール支持部材3bが釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。この場合、ベール5の一方の基端部は、ベール支持部材3bに一体的に設けられた釣糸案内部(ラインローラ)6に取り付けられている。
【0016】
前記リール本体2内には、ハンドル軸が軸受けを介して回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドルが取り付けられている。前記ハンドル軸には、ハンドルを回転操作した際、その駆動力を前記ロータ3に伝達してロータを回転駆動する駆動力伝達機構10が設けられている。
【0017】
駆動力伝達機構10は、公知のように、前記ハンドル軸に一体回転可能に装着された駆動ギアと、この駆動ギアに噛合するピニオン歯部を具備したピニオン11とを備えている。前記ピニオン11は、ハンドル軸と直交する前後方向に延出し、内部に軸方向に延在する空洞部11aが形成された回転駆動部(駆動軸)としての機能を有する。この場合、空洞部11aには、ハンドルを回転操作した際にスプールを前後動させる公知のオシレート機構と係合するスプール軸が挿通され、その先端に前記スプールが装着される。
【0018】
前記ピニオン11は、リール本体1に回転可能に支持されている。また、ピニオン11はスプール側に向けて延出しており、ピニオン11の先端部には前記ロータ3が一体回転可能に取り付けられている。ロータ3は、中心部分に形成されたボス部3Aの貫通孔がピニオン11の先端に外嵌され、ナット(図示せず)を締め付けることで固定される。また、前記ピニオン11上には、逆転防止装置を構成する一方向クラッチ20が配設されている。
【0019】
上記した構成により、ハンドルを巻き取り操作すると、駆動力伝達機構10を介してロータ3が回転駆動される共に、オシレート機構及びスプール軸を介してスプールが前後方向に往復動される。したがって、釣糸は、回転駆動されるロータ3の釣糸案内部6を介してスプールに均等に巻回されるようになる。
【0020】
次に、本実施形態の一方向クラッチ20について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1に示すように、リール本体2のスプール側には、略円板形状に形成された基部2Bが配設されており、基部2Bの表面部分には、円筒部2Cが軸方向に向けて設けられている。前記ピニオン11は、前記円筒部2Cの中心部分を貫いて回転可能に支持されており、その中間部に一方向クラッチ20が配設されている。
【0021】
前記ピニオン11は、ハンドルの回転操作によって駆動ギアを介して回転駆動され、前記一方向クラッチ20は、ピニオン11の中間部分に配設されて、ピニオン11の釣糸巻き取り方向の回転を許容すると共に逆回転を防止する。
前記一方向クラッチ20は、内輪21と、外輪27と、複数の転がり部材25を保持した保持器23とを有しており、更に、保持器23と共に一体化されるカバー部材23Aを有している。これらの要素(一部の要素でも良い)は予めユニット化しておくことが可能である。
【0022】
前記内輪21は、ピニオン11に対して回り止めされており、ピニオン11と共に一体回転する駆動軸としての機能を有する。具体的には、ピニオン11の断面は、部分的に非円形部が形成された形状となっており、この部分に内輪21の非円形部を嵌合させることで、内輪21は、ピニオン11と共に一体回転可能となっている。
【0023】
前記保持器23は、内輪21の径方向外方に配設されており、周方向に一定間隔おいて配設される保持部23aを備えている。各保持部23aには、付勢バネ24が配設されており、保持部間に配設される転がり部材25を周方向(
図3では、反時計回り方向;逆回転方向)に付勢している。
【0024】
前記外輪27は、保持器23の径方向外方に配設され、略リング形状に形成されている。外輪27の内周面には、夫々の転がり部材25の回転を阻止する楔領域27aと、転がり部材25を自由に回転させるフリー領域27bが形成されている。前記保持器23に保持されている各転がり部材25は、付勢バネ24によって常時、楔領域側に付勢された状態となっている。また、外輪27の外周面27dは、以下の度当て27cが形成される部分を除いて円形状に形成されている。
【0025】
前記外輪27の一部には、径方向外方に突出するように突出片27cが設けられている。この突出片は、外輪27の回転を規制する度当てとしての機能を備えている(以下、度当て27cと称する)。度当て27cは、外輪27の外周面27dから径方向外方に突出するように一体形成されており、1個所以上設けられている。この場合、外輪には、大きなトルクが掛かって、1個所では応力が集中して偏り等が生じる可能性があるので、等間隔で2個以上形成することが好ましい。本実施形態では、180°間隔で中心軸Xを挟んで対向するように2個所設けられている。前記度当て27cは、周方向に一定の幅を有しており、周方向の両サイド27e,27fが回り止め機能を有する。
【0026】
前記リール本体2に突出形成された円筒部2Cには、その円周壁2aを径方向に貫通する切欠部2cが形成されている。この切欠部2cは、外輪27の前記度当て27cが嵌合できる程度に形成されており、この切欠部2cに度当て27cを嵌合し、前記露出側の表面27gを径方向に露出するように配設することで、外輪27は回り止め固定(回転が規制)される。
【0027】
前記切欠部2cは、円周壁2aに1個所以上形成されていれば良いが、本実施形態では、円周方向に等間隔で2箇所(180°間隔で軸心Xに対して対称となる2個所)形成されている。すなわち、切欠部については、外輪に形成される度当てと同数設けておけば良く、これにより、一方向クラッチがガタ付くことなく、安定して保持される。
【0028】
前記度当て27cの外面は、円筒部2Cの切欠部2c部分で径方向に露出しており、指を当て付けて摘まむことが可能となっている。このため、露出する度当てによって外輪27が摘まみ易くなり、一方向クラッチ20の着脱作業性の向上が図れるようになる。
【0029】
また、上記した構成では、円筒部2Cの円周壁2aの径(円周壁の外周面の径)と、前記外輪27の最外径(度当て27cの露出側の表面27g部分の径)が同一となるように構成されている。この場合、外輪27は、円周壁2a内に嵌合させて両者の間が非接触状態(隙間Sが生じる)となるように構成されている。すなわち、前記内輪21をセンタリングすると、外輪27と円周壁2aとの間で非接触状態が維持されて、両部材が導通しないようにしている。また、このように隙間Sが生じるように外輪27を配設することで、回転性能を確保しつつガタ付きを防止し、径方向の小型化を図ることができる。さらに、多少の隙間を持たせることで着脱操作を容易に行うことができる。
【0030】
更に、本実施形態では、外輪27の表面部分に、保持器23及び外輪27をカバーする蓋体(カバー部材)23Aが装着され、カバー部材23A上には、リング状に形成された電食防止プレート(防食プレート;防食部材とも称する)28が装着されるようになっている(
図5,
図6参照)。すなわち、前記外輪27は、保持器23及びカバー部材23Aに挟持された状態となっており、カバー部材23Aの外周側に防食プレート28が載置されている。
【0031】
一般的に、一方向クラッチの外輪は、リール本体の円筒部と接触するように配設される。通常、外輪は、SUSにニッケルメッキ等の耐食被膜を形成した構造であるため、リール本体側をアルマイト処理したADC12、或いは、高強度樹脂材のような非金属材料で構成すると、両者の間で腐食の問題は発生し難いが、リール本体をマグネシウム系の金属材料で形成すると、両者の間の電位差が大きくなって腐食(電食)が生じ易くなる。
【0032】
上記した構成では、外輪27とリール本体2(円筒部2C)との接触部分は、切欠部2cと、これに当て付く度当て27cの周方向両サイド27e,27fであることから、この部分を絶縁状態にすれば良い。本実施形態の防食プレート28は、一方向クラッチ20に重ねられるように、軸方向から着脱可能に構成されており、リール本体が大型化しないように、板状でリング形状に構成されている。
【0033】
図5は、防食プレートの一構成例を示す図である。
本実施形態の防食プレート28は、
図5及び
図6に示すように、カバー部材23Aの径方向外方に位置して、カバー部材23Aの表面部分に載置されるリング状の本体28aを有している。本体28aの直径方向の両側には、それぞれ径方向外方に突出する突片28bが形成されており、各突片28bの両側には、軸方向に垂下する脚部28cが一対設けられている。
【0034】
前記突片28bは、前記外輪27の度当て27cと略同一の形状に形成されており、脚部28cは、本体28aを軸方向から、外輪27の表面部分に載置した際、度当て27cの周方向両サイド27e,27fと、切欠部2cとの間に差し込まれるように構成されている。
【0035】
前記防食プレート28は、両部材との間に介在(一対の脚部28cが介在)されて、導通させないような絶縁材料で構成されたものであれば良い。例えば、リール本体(筒状部)がマグネシウムで構成されている場合、外輪との間で電位差が少ない材料、例えば、アルミ系材料(アルマイト処理されたアルミニウム合金)を用いることが好ましい。このような材料は、プレス成形等で容易に作成することができ、非磁性で構成されるので、以下のような磁気シール機構を配設しても、磁石に引き寄せられることはなく、アルマイト層を形成することで通電することもない。また、静強度試験を行ってもアルミがつぶれるが、表面にアルマイト層が残っているため、静強度試験後も通電しない結果が得られた。更に、形状がプレス成形で安定しているため、組み込みや取り外しが容易であると共に、回転性に影響を与えることもない。
勿論、防食プレートの構成材料については、外輪27とリール本体の材料に応じて適切な材料を選択すれば良く、その他の金属材料や樹脂材料等で構成することも可能である。
【0036】
また、一方向クラッチ20の軸方向の移動を規制するように、別途、一方向クラッチに隣接して規制プレート(図示せず)を配設しても良い。
【0037】
上記したように構成された一方向クラッチ20は、ユニット化されて円筒部2C内に組み込まれる。この場合、
図1及び
図2に示すように、一方向クラッチ20に対する防水、防塵効果を高めるように、磁気シール機構50を配設しても良い。
【0038】
この磁気シール機構50は、公知のように、駆動軸(内輪21)の外周面との間に微小隙間を介在して配設されるリング形状の磁性板(極板)51,52と、磁性板間に挟持されるリング状の磁石53とを備え、駆動軸と磁性板との間の隙間に磁性流体を充填した構成となっている(
図1、
図2参照)。
【0039】
また、本実施形態では、前記円筒部2Cと前記一方向クラッチ20を包み込むように、リール本体に防水キャップ60を設けている。この防水キャップ60は、一方向クラッチ20を包囲する円筒部61と、スプール側の開口を閉塞するカバー部62とを備えた形状となっており、カバー部62の内面に、前記磁気シール機構50の磁性板51が密着されている。
【0040】
上記した構成の一方向クラッチ20によれば、ハンドル(ロータ3)の釣糸繰出し方向の回転(逆回転)が防止される。
すなわち、ハンドルを釣糸巻き取り方向に回転操作してピニオン11が回転駆動される(
図3の時計回り方向に回転駆動される)と、ピニオン11と共に内輪21も同方向に回転する。この際、保持器23に保持される転がり部材25は、外輪27のフリー領域27bに移動するので、内輪21の回転力が外輪27に伝達されずピニオン11と共にロータ3は支障なく回転することができる。
【0041】
これに対して、ピニオン11と共に内輪21が逆回転(ロータ3が釣糸繰出し方向に回転)しようとすると、保持器23に保持される転がり部材25は、反時計回る方向に転動すると共に付勢バネ24によって外輪27の楔領域27aに位置するため、内輪21の回転力が外輪27に伝達される。外輪27は度当て27cによって回転が規制されているため、これがストッパとなって、ピニオン11及びロータ3の逆回転が阻止される。
【0042】
また、上記した構成では、リール本体側の円筒部2Cの円周壁2aに、径方向に貫通する切欠部2cを形成すると共に、ここに一方向クラッチ20の外輪27に形成された度当て27cを径方向に露出するように配設し、外輪27を回り止め固定している。
すなわち、外輪27を、従来のように、円筒部の内周面に形成した溝や突起等で回り止め固定しないため、円筒部2Cを可及的に小径化、更には、薄肉厚化することが可能となり、リール本体の小型化、及び、軽量化を図ることが可能となる。
【0043】
さらに、本実施形態では、上記した構成において、リング状の防食プレート28をカバー部材上に載置し、その脚部28cを、一方向クラッチの外輪27(度当て27c)と円筒部2Cの接触部(切欠部2c)の間に介在しているので、リール本体の腐食を防止することができる。この場合、防食プレート28は、円筒部2Cの開口部分に収容されるため、一方向クラッチ周辺の構造が複雑化することはなく、リール全体の小型化、軽量化が可能となる。
また、外輪27の度当て27cは、直径方向で対称に設けているため、容易に摘まむことができ、一方向クラッチの着脱操作が容易に行えるようになる。
【0044】
また、本実施形態では、一方向クラッチ20のスプール側に磁気シール機構50を配設すると共に、円筒部2Cと一方向クラッチ20を包み込むように、防水キャップ60を設けたため、水分や塵等の異物が浸入することが防止され、耐久性を高めることが可能となる。
【0045】
図7及び
図8は、本発明に係る魚釣用リールの第2の実施形態を示す図である。
本実施形態の一方向クラッチ20は、第1の実施形態と同様な構成であり、外輪27に180°間隔で度当て27cを形成している。また、本実施形態の一方向クラッチも、
図6に示した構成と同様、保持器23と共に外輪27を挟持するカバー部材23A、及び、カバー部材23A上に防食プレート28が装着されている。
【0046】
本実施形態では、リール本体2に、外輪27の度当て27cの側面が当て付いて外輪の回転を規制する当接部2Eを形成している。当接部2Eについては、第1の実施形態のように、円筒状に構成するのではなく、軸方向に突出して、度当て27cの側面が当て付いて回転を規制する構造であれば良い。このため、度当てを外輪に1つ設ける構成であれば、その両方向の回転を規制するように、度当ての周方向両側の2点で当て付くように設置すれば良い。
【0047】
なお、本実施形態では、度当て27cは、外輪27に180°間隔で2個所形成しているため、各度当ての周方向両側に当接部2Eが設けられており、それぞれ度当ての周方向両側の2点(当接部2Eの側面2E´)で当て付くように構成している。
【0048】
このような構成によれば、上記した第1の実施形態と同様、防食プレート28によってリール本体の腐食を防止することができると共に、切欠部を有する円筒部を設けなくても、一方向クラッチを回り止め固定することができ、さらに軽量化、小型化を図ることが可能となる。また、このような構成では、当接部の周囲にスペースが生じるため、一方向クラッチ20を容易に着脱することが可能となる。
【0049】
さらに、このような当接部2Eは、外輪27の度当て27cの最外径位置よりも径方向内側で、2点当接するように形成することが好ましい。
このような構成では、当接部2Eを薄肉厚化することができるので、より軽量化を図ることが可能となる。
【0050】
上記した実施形態の防食プレート28(
図5参照)は、一方向クラッチとは別の部材で構成されており、保持器23のカバー部材23Aの径方向外方に位置して、カバー部材23Aの表面部分に載置されるリング状に形成されていたが、一方向クラッチ20の構成部材に設けられた構成であっても良い。
【0051】
例えば、上記した一方向クラッチの構成部材である保持器23に、リール本体(切欠部2c)と、度当て27cの両サイド27e、27f(
図3参照)との間に介在される防食部を別体として取着した構成にしても良い。或いは、このような防食部を保持器に一体形成した構成であっても良い。また、同様な防食部を、保持器のカバー部材23A側に別体として取着した構成であっても良いし、カバー部材23Aに一体形成したものであっても良く、更には、保持器23及びカバー部材23Aの両方に防食部を設けた構成であっても良い。
【0052】
このように防食部材を、一方向クラッチの構成要素に設けることで、部品点数の削減が図れ、組み込み性を向上することが可能となる。
なお、このような防食部(防食部材)については、一方向クラッチとリール本体との間で電食が生じないように構成されていれば良く、その形状や材料については適宜、変形することが可能である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した構成の度当て27cについては、その形状については適宜、変形することが可能である。例えば、度当ての露出側の表面27gは、円筒部2Cの切欠部2c内において、円筒部2Cから径方向に突出していても良いし、突出しないようにしても良い。また、
図8に示す構成では、度当ての周方向両側で、当接部2Eに当て付くように構成したが、度当ての中央部分に、軸方向に沿って凹所を形成しておき、この凹所に嵌まり込むように当接部を形成しても良い。或いは、度当て27cの両サイドに当て付くように、断面コの字型で軸方向に延出する当接部をリール本体に設けても良い。また、防食プレート(防食部材)については、防食作用を有する部材を、一方向クラッチとリール本体との間に差し込むような構成であれば、その形状は適宜、変形することが可能である。
【0054】
また、上記した実施形態では、保持器23を固定状態にしてロータの逆回転を防止したが、リール本体の外部に突出する操作部材を設け、操作部材の操作で保持器を回動させることで転がり部材をフリー領域に位置させ、ロータの逆回転を許容するような構造であっても良い。
【0055】
さらに、本実施形態では、魚釣用リールとしてスピニングリールを例示したが、一方向クラッチが組み込まれる他のリール(両軸受け型リール)等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 スピニングリール(魚釣用リール)
2 リール本体
2C 円筒部
2c 切欠部
3 ロータ
20 一方向クラッチ
27 外輪
27c 度当て
28 防食プレート