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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149354
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20231005BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057882
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 博典
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BE04
2B108EB01
(57)【要約】
【課題】磁気シール機構を組み込んだ魚釣用リールにおいて、強い衝撃や振動が加わっても、磁気シール機構の磁性流体が、その近傍に位置する一方向クラッチへ侵入することをより強固に防ぐ構造を提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、内輪21に配設される一方向クラッチ20と、内輪21の外表面との間の隙間に磁性流体によるシール膜を形成して一方向クラッチ20への異物の侵入を阻止する磁気シール機構50と、を有する。内輪21には、磁性流体が一方向クラッチ20へ侵入するのを阻止する円周溝21Aが形成され、円周溝には、Оリング21Bが取り付けられていることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に回り止めされて一体回転可能な内輪と、前記リール本体に回り止め固定された外輪と、前記内輪と外輪の間に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、を有する一方向クラッチと、
前記内輪の外表面との間の隙間に磁性流体によるシール膜を形成して前記一方向クラッチへの異物の侵入を阻止する磁気シール機構と、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記内輪には、前記磁性流体が前記一方向クラッチへ侵入するのを阻止する円周溝が形成されており、前記円周溝には、Оリングが取り付けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記円周溝は、前記磁気シール機構の磁性流体を保持するための極板と、前記一方向クラッチとの間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記Оリングは、前記円周溝に取り付けられた際、その最外径が、前記内輪の外径以上で、前記隙間の範囲内となる大きさであることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記円周溝は、取り付けられたОリングとの間で軸方向に隙間が生じる大きさに形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記円周溝の内面には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に回り止めされて一体回転可能な内輪と、前記リール本体に回り止め固定された外輪と、前記内輪と外輪の間に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、を有する一方向クラッチと、
前記内輪の外表面との間の隙間に磁性流体によるシール膜を形成して前記一方向クラッチへの異物の侵入を阻止する磁気シール機構と、
を有する魚釣用リールにおいて、
前記内輪には、前記磁性流体が前記一方向クラッチへ侵入するのを阻止する円周溝が形成されると共に、前記円周溝の内面には、凹凸が形成されていることを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸に設けられる一方向クラッチを防水、防塵する磁気シール機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、魚釣用リールであるスピニングリールには、ハンドルの回転操作でロータの釣糸巻き取り方向の回転を許容すると共に、ハンドルを逆回転させようとした際、ロータの逆回転を防止する逆転防止機構が組み込まれている。通常、逆転防止機構は、例えば、特許文献1に開示されているように、ピニオンギアに回り止め嵌合される内輪と、内輪の径方向外方に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、保持器の径方向外方に配設され、リール本体に対して回り止め固定された外輪とを備えた一方向クラッチ(軸受部材)で構成されている。
【0003】
また、前記特許文献1には、前記一方向クラッチの開口側に、磁気シール機構を配設して防水、防塵を図る構造が開示されている。磁気シール機構は、一方向クラッチの内輪(駆動軸)の外表面に隙間を介在して、磁石を取着したリング状の極板を配設し、前記隙間に磁性流体を充填することで、一方向クラッチ内に水分や埃等の異物が侵入しないようにする構造である。
【0004】
上記したような磁気シール機構は、例えば、リールの落下時、移動時、輸送時等に発生する強い衝撃や振動で、隙間に保持されている磁性流体が一方向クラッチ側に侵入する可能性は排除できない。そこで、上記した特許文献1には、磁性流体と一方向クラッチのグリスが交わらないように、磁性流体と一方向クラッチのとの間の駆動軸に溝を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-23965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、内輪に溝を形成するだけでは、リール本体に強い衝撃や振動が作用した際、磁性流体が一方向クラッチ側に侵入することを完全に防ぐことができない可能性がある。この場合、溝を深く形成することも考えられるが、内輪の強度の低下を招いてしまう。また、特許文献1には、内輪に段差を形成し、この段差を利用して溝をえぐるように形成することが開示されているが、このような構成においても、内輪の強度が十分に確保できないと共に、磁気シール機構の極板部分を組み込んだ後は、内輪を組み込むことができず、組み込み性が悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、磁気シール機構を組み込んだ魚釣用リールにおいて、強い衝撃や振動が加わっても、磁気シール機構の磁性流体が、その近傍に位置する一方向クラッチへ侵入することをより強固に防ぐ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸に回り止めされて一体回転可能な内輪と、前記リール本体に回り止め固定された外輪と、前記内輪と外輪の間に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、を有する一方向クラッチと、前記内輪の外表面との間の隙間に磁性流体によるシール膜を形成して前記一方向クラッチへの異物の侵入を阻止する磁気シール機構と、を有しており、前記内輪には、前記磁性流体が前記一方向クラッチへ侵入するのを阻止する円周溝が形成されており、前記円周溝には、Оリングが取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の魚釣用リールは、内輪に円周溝を形成したことで、リール本体に大きな衝撃や振動が加わっても、磁気シール機構の磁性流体が一方向クラッチ側に侵入することが阻止される。この場合、円周溝にОリングを取り付けたことで、流出する磁性流体と接触する表面積を増やすことが可能となり、その部分に磁性流体がまとわりつき易くなって、磁性流体の一方向クラッチ側への侵入を効果的に防止することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸に回り止めされて一体回転可能な内輪と、前記リール本体に回り止め固定された外輪と、前記内輪と外輪の間に配設され、複数の転がり部材を保持した保持器と、を有する一方向クラッチと、前記内輪の外表面との間の隙間に磁性流体によるシール膜を形成して前記一方向クラッチへの異物の侵入を阻止する磁気シール機構と、を有しており、前記内輪には、前記磁性流体が前記一方向クラッチへ侵入するのを阻止する円周溝が形成されると共に、前記円周溝の内面には、凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように、円周溝の内面に、凹凸を形成することでも、流出する磁性流体と接触する表面積を増やすことが可能となり、その部分に磁性流体がまとわりつき易くなって、磁性流体の一方向クラッチ側への侵入を効果的に防止することが可能となる。この場合、凹凸は、円周溝の内壁、及び/又は、底部に形成することが可能であり、例えば、エンボス状に加工したり、各種の粗面化処理等によって形成することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気シール機構を組み込んだ魚釣用リールにおいて、強い衝撃や振動が加わっても、磁気シール機構の磁性流体が、その近傍に位置する一方向クラッチに侵入しないようにした構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る魚釣リール(スピニングリール)の一実施形態を示す分解斜視図。
図2図1に示した魚釣用リールの主要部の軸方向断面図。
図3図2のA-A線に沿った断面図。
図4】一方向クラッチの固定状態を示す斜視図。
図5図4に示す一方向クラッチに防食プレートを配置した状態を示す斜視図。
図6図2の主要部(A1部分)の拡大図。
図7】(a)~(c)は、内輪に形成される円周溝の各種変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2は、本発明に係る魚釣用リールの第1の実施形態を示す図である(本実施形態では魚釣用リールとしてスピニングリールが示されている)。最初に、本実施形態のスピニングリールの全体構成の概略について説明する。なお、以下の説明において、前方及び後方は、図2で示す方向を意味する。
【0015】
スピニングリール(以下、リールと称する)1のリール本体2には、釣竿に装着されるリール脚2Aが一体形成されている。リール本体2の前方には、回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール(図示せず)とが配設されている。
【0016】
前記ロータ3は、スプールの周囲を回転する一対の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール5の基端部を取り付けたベール支持部材3bが釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。この場合、ベール5の一方の基端部は、ベール支持部材3bに一体的に設けられた釣糸案内部(ラインローラ)6に取り付けられている。
【0017】
前記リール本体2内には、ハンドル軸が軸受けを介して回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドルが取り付けられている。前記ハンドル軸には、ハンドルを回転操作した際、その駆動力を前記ロータ3に伝達してロータを回転駆動する駆動力伝達機構10が設けられている。
【0018】
駆動力伝達機構10は、公知のように、前記ハンドル軸に一体回転可能に装着された駆動ギアと、この駆動ギアに噛合するピニオン歯部を具備したピニオン11とを備えている。前記ピニオン11は、ハンドル軸と直交する前後方向に延出し、内部に軸方向に延在する空洞部11aが形成された回転駆動部(駆動軸)としての機能を有する。この場合、空洞部11aには、ハンドルを回転操作した際にスプールを前後動させる公知のオシレート機構と係合するスプール軸が挿通され、その先端に前記スプールが装着される。
【0019】
前記ピニオン11は、リール本体1に回転可能に支持されている。また、ピニオン11はスプール側に向けて延出しており、ピニオン11の先端部には前記ロータ3が一体回転可能に取り付けられている。ロータ3は、中心部分に形成されたボス部3Aの貫通孔がピニオン11の先端に外嵌され、ナット(図示せず)を締め付けることで固定される。また、前記ピニオン11上には、逆転防止装置を構成する一方向クラッチ20が配設されている。
【0020】
上記した構成により、ハンドルを巻き取り操作すると、駆動力伝達機構10を介してロータ3が回転駆動される共に、オシレート機構及びスプール軸を介してスプールが前後方向に往復動される。したがって、釣糸は、回転駆動されるロータ3の釣糸案内部6を介してスプールに均等に巻回されるようになる。
【0021】
次に、本実施形態の一方向クラッチ20について、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すように、リール本体2のスプール側には、略円板形状に形成された基部2Bが配設されており、基部2Bの表面部分には、円筒部2Cが軸方向に向けて形成されている。前記ピニオン11は、前記円筒部2Cの中心部分を貫いて回転可能に支持されており、その中間部に一方向クラッチ20が配設されている。
【0022】
前記ピニオン11は、ハンドルの回転操作によって駆動ギアを介して回転駆動され、前記一方向クラッチ20は、ピニオン11の中間部分に配設されて、ピニオン11の釣糸巻き取り方向の回転を許容すると共に逆回転を防止する。
前記一方向クラッチ20は、内輪21と、外輪27と、複数の転がり部材25を保持した保持器23とを有しており、更に、保持器23と共に一体化されるカバー部材23A(図5参照)を有している。これらの要素(一部の要素でも良い)は予めユニット化しておくことが可能である。
【0023】
前記内輪21は、ピニオン11に対して回り止めされており、ピニオン11と共に一体回転する駆動軸としての機能を有する。具体的には、ピニオン11の断面は、部分的に非円形部が形成された形状となっており、この部分に内輪21の非円形部を嵌合させることで、内輪21はピニオン11と共に一体回転する。また、前記内輪21は、軸方向に所定の長さを有しており、本実施形態では、軸方向に亘って同一径で、同一肉厚の円筒形状に形成されている。
【0024】
前記保持器23は、内輪21の径方向外方に配設されており、周方向に一定間隔おいて配設される保持部23aを備えている。各保持部23aには、付勢バネ24が配設されており、保持部間に配設される転がり部材25を周方向(図3では、反時計回り方向;逆回転方向)に付勢している。
【0025】
前記外輪27は、保持器23の径方向外方に配設され、略リング形状に形成されている。外輪27の内周面には、夫々の転がり部材25の回転を阻止する楔領域27aと、転がり部材25を自由に回転させるフリー領域27bが形成されている。前記保持器23に保持されている各転がり部材25は、付勢バネ24によって常時、楔領域側に付勢された状態となっている。また、本実施形態の外輪27の外周面27dには、以下の度当て27cが形成される部分を除いて円形状に形成されている。
【0026】
前記外輪27の一部には、径方向外方に突出するように突出片27cが設けられている。この突出片は、外輪27の回転を規制する度当てとしての機能を備えている(以下、度当て27cと称する)。度当て27cは、外輪27の外周面27dから径方向外方に突出するように一体形成されており、1個所以上設けられる。この場合、外輪には、大きなトルクが掛かって、1個所では応力が集中して偏り等が生じる可能性があるので、等間隔で2個以上形成することが好ましい。本実施形態では、180°間隔で中心軸Xを挟んで対向するように2個所設けられている。前記度当て27cは、周方向に一定の幅を有しており、周方向の両サイド27e,27fが回り止め機能を有する。
【0027】
前記リール本体2に突出形成された円筒部2Cには、その円周壁2aを径方向に貫通する切欠部2cが形成されている。この切欠部2cは、外輪27の前記度当て27cが嵌合できる程度に形成されており、この切欠部2cに度当て27cを嵌合し、前記露出側の表面27gを径方向に露出するように配設することで、外輪27は回り止め固定(回転が規制)される。
【0028】
前記切欠部2cは、円周壁2aに1個所以上形成されていれば良いが、本実施形態では、円周方向に等間隔で2箇所(180°間隔で軸心Xに対して対称となる2個所)形成されている。すなわち、切欠部については、外輪の度当てと同数設けておけば良い。
【0029】
前記度当て27cの外面は、円筒部2Cの切欠部2c部分で径方向に露出しており、指を当て付けて摘まむことが可能となっている。このため、度当てによって外輪27が摘まみ易くなり、一方向クラッチ20の着脱作業性の向上が図れるようになる。
【0030】
また、上記した構成では、円筒部2Cの円周壁2aの径(円周壁の外周面の径)と、前記外輪27の最外径(度当て27cの露出側の表面27g部分の径)が同一となるように構成されている。この場合、外輪27は、円周壁2a内に嵌合させて両者の間に隙間が生じるように構成されており、これにより回転性能を確保しつつガタ付きを防止し、径方向の小型化を図ることが可能となる。また、多少の隙間を持たせることで着脱操作を容易に行うことができる。
【0031】
上記したように構成された一方向クラッチ20は、ユニット化されて円筒部2C内に組み込まれる。この場合、図4に示した外輪27の表面部分には、図5に示すように、保持器23及び外輪27をカバーする蓋体(カバー部材)23Aが装着され、前記外輪27は、保持器23及びカバー部材23Aに挟持された状態となっている。また、蓋体23上には、電食防止プレート(防食プレート)28等を装着しても良い。
【0032】
この防食プレート28は、図1に示すように、リング形状の本体28aを備えると共に、前記度当て27cを挟持するように、一対の脚部28cを備えている。すなわち、脚部28cが、前記度当て27cと切欠部2cとの間に介在されることで、両部材間に電流が流れることが抑制され、リール本体の腐食を防止することが可能となる。また、一方向クラッチ20の軸方向の移動を規制するように、一方向クラッチ20に隣接して規制プレートを配設しても良い。
【0033】
上記した構成の一方向クラッチ20によれば、ハンドル(ロータ3)の釣糸繰出し方向の回転(逆回転)が防止される。
すなわち、ハンドルを釣糸巻き取り方向に回転操作してピニオン11が回転駆動される(図3の時計回り方向に回転駆動される)と、ピニオン11と共に内輪21も同方向に回転する。この際、保持器23に保持される転がり部材25は、外輪27のフリー領域27bに移動するので、内輪21の回転力が外輪27に伝達されずピニオン11と共にロータ3は支障なく回転することができる。
【0034】
これに対して、ピニオン11と共に内輪21が逆回転(ロータ3が釣糸繰出し方向に回転)しようとすると、保持器23に保持される転がり部材25は、反時計回る方向に転動すると共に付勢バネ24によって外輪27の楔領域27aに位置するため、内輪21の回転力が外輪27に伝達される。外輪27は度当て27cによって回転が規制されているため、これがストッパとなって、ピニオン11及びロータ3の逆回転が阻止される。
【0035】
そして、上記した構成では、リール本体側の円筒部2Cの円周壁2aに、径方向に貫通する切欠部2cを形成すると共に、ここに一方向クラッチ20の外輪27に形成された度当て27cを径方向に露出するように配設し、外輪27を回り止め固定している。
すなわち、外輪27を、従来のように、円筒部の内周面に形成した溝や突起等で回り止め固定しないため、円筒部2Cを可及的に小径化、更には、薄肉厚化することが可能となり、リール本体の小型化、及び、軽量化を図ることが可能となる。
【0036】
また、上記した一方向クラッチ20には、防水、防塵効果を高めるように、磁気シール機構50が隣接して配設されている。以下、磁気シール機構50の構成について、図1,2及び図6を参照して説明する。
この磁気シール機構50は、公知のように、駆動軸(内輪21)の外周面との間に微小隙間を介在して配設されるリング形状の極板(磁性板)51,52と、磁性板間に挟持されるリング状の磁石53とを備え、駆動軸と極板との間の隙間Gに磁性流体55を充填してシール膜を形成した構成となっている。
【0037】
前記極板51は、中央に、ピニオン11に回り止めされた内輪21が挿通する開口部が形成されたリング形状に形成されている。また、前記極板52は、同様に、内輪21が挿通する開口部が形成されたリング形状に形成されており、前記極板51よりも小径に形成されている。前記リング状の磁石53は、極板51,52に対して、挟持された状態で接着固定されている。
【0038】
このような極板51,52及び磁石53は、マグネットアッシー(magnet assy)としてユニット化されていても良く、前記リール本体の円筒部2Cに固定されていたり、後述する防水キャップ60に組み込まれていても良い。
【0039】
また、前記内輪21には、前記磁性流体55が磁気シール機構20へ侵入するのを阻止する円周溝21Aが形成されている。円周溝21Aは、一方向クラッチ20が配設される領域内、例えば、一方向クラッチの端部となる前記外輪27や保持器(カバー部材23A)と同一の平面内に形成しても良いが、図6に示すように、磁気シール機構50の磁性流体が保持されている部分の極板51と一方向クラッチ20との間に形成することが好ましい。
【0040】
このように、内輪21に円周溝21Aを形成したことで、リール本体に大きな衝撃や振動が加わって磁性流体55が一方向クラッチ20側に侵入しようとしても、円周溝21Aによって移動が制限され(円周溝内に磁性流体が保持される)、一方向クラッチ側に磁性流体が侵入することを阻止することができる。
【0041】
さらに、前記円周溝21Aには、ゴム等で形成されたОリング21Bが取り付けられている。
このOリング21Bは、磁気シール機構50から流出する磁性流体55と接触する表面積を増やすために設けられ、上記したように、円周溝21Aを、極板51と一方向クラッチ20との間に形成することで、Oリング21Bの装着が容易に行えるようになる。また、円周溝21A内にOリング21Bを取り付けることで、表面積が増加し、その増加した部分に磁性流体55がまとわりつき易くなって、磁性流体55の一方向クラッチ20側への侵入をより効果的に防止することが可能となる。さらに、Оリング21Bを取り付けることで、円周溝を深く形成する必要がなくなり、内輪21が強度低下することも防止することができる。
【0042】
前記Оリング21Bは、図6に示すように、円周溝21Aに取り付けられた際、その最外径Rが、内輪21の外径R1以上で、隙間G内に位置する範囲の大きさに形成することが好ましい。すなわち、Оリング21Bは、内輪21の外周面21aから突出しており、かつ、隙間Gを超えて極板51,53の開口端縁よりも高くならないものを用いるのが好ましい。
【0043】
このような構成によれば、Оリング21Bが壁となって、磁性流体55が一方向クラッチ側に移行し難くなる。また、上記した構成要素の組み立ては、ピニオン11に対して一方向クラッチ20、及び、磁気シール機構50を組み付けて、内輪21をピニオン11に嵌合させるので、Оリング21Bを取着した内輪21を磁気シール機構50の極板51,53の開口に通過させることができる。このため、組み立てが容易にできるようになり、極板を傷付けることも防止される。
【0044】
また、前記円周溝21Aは、取り付けられたОリング21Bとの間で、軸方向に隙間G1(遊度)が生じる大きさに形成されていることが好ましい。
このように、円周溝21AとОリング21Bとの間で、軸方向に多少の隙間G1が生じるように構成することで、より表面積が増え、流出する磁性流体55の保持量が多くなると共に、Оリング21Bに当たった磁性流体を円周溝21A内に保持し易くすることができる。
【0045】
なお、上記したOリング21Bは、円周溝21Aの内面に、例えば、図7に示すような凹凸を形成した場合、省略することも可能である。
図7(a)は、円周溝21Aの内面(内壁21c,21d及び底部21e)全てに粗面化された凹凸を形成した例を示している。また、図7(b)は、円周溝21Aの底部21eに凹凸(例えば筋目状の凹凸)を形成した例を示している。また、図7(c)は、円周溝21Aの内面(内壁21c,21d)に凹凸を形成した例を示している。
【0046】
このような凹凸の形成方法は特に限定されることはないが、例えば、切削加工等によって形成することが可能であり、このように、円周溝21Aの内面に凹凸を形成することで、流出する磁性流体55と接触する表面積が増え、凹凸部分に磁性流体がまとわりつき易くなって、磁性流体の一方向クラッチ側への侵入を効果的に防止することが可能となる。なお、このような凹凸が形成された円周溝21Aに、上記したОリング21Bを取り付けても良く、これにより、磁性流体が接触する表面積をさらに増やすことが可能となる。
【0047】
上記した実施形態において、図1に示すように、前記円筒部2Cと前記一方向クラッチ20を包み込むように、リール本体に防水キャップ60を設けても良い。この防水キャップ60は、一方向クラッチ20を包囲する円筒部61と、スプール側の開口を閉塞するカバー部62とを備えた形状となっており、カバー部62の内面に、前記磁気シール機構50の磁性板51を固定しても良い。
このように、一方向クラッチ20のスプール側に磁気シール機構50を配設すると共に、円筒部2Cと一方向クラッチ20を包み込むように、防水キャップ60を設けることで、一方向クラッチ20に水分や塵等の異物が浸入することが確実に防止され、耐久性を高めることが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、磁気シール機構50と一方向クラッチ(軸受部材)20との間の駆動軸の外周面に円周溝を形成し、ここにОリングを配設したり、円周溝内に凹凸を形成することに特徴がある。このため、上記した一方向クラッチ20や磁気シール機構50の構成については、特に限定されることはない。また、一方向クラッチ以外にも、各種の軸受部材、例えば、転がり式の軸受に対して、上記した構成を用いることも可能であり、スピニングリール以外の各種の魚釣用リール(両軸受けリール等)にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 魚釣用リール
2 リール本体
2C 円筒部
2c 切欠部
3 ロータ
20 一方向クラッチ
21 内輪(駆動軸)
21A 円周溝
21B Оリング
50 磁気シール機構
55 磁性流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7