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特開2023-149391生分解性ポリエステル溶液およびその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149391
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル溶液およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/104 20140101AFI20231005BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09D11/104
C09J167/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057936
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】田中 滋
(72)【発明者】
【氏名】指輪 仁之
(72)【発明者】
【氏名】大倉 徹雄
【テーマコード(参考)】
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
4J039BA35
4J039BC12
4J039BC16
4J039BC20
4J039BC31
4J039BE01
4J039BE12
4J039FA07
4J039GA34
4J040ED001
4J040HB04
4J040HB14
4J040HB18
4J040HB30
4J040KA23
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA11
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
(57)【要約】
【課題】ポリヒドロキシアルカノエート樹脂に良好な溶解性を示す非ハロゲン系有機溶媒を含み、環境負荷が少なく、二次加工性に優れる生分解性ポリエステル溶液を提供すること。
【解決手段】ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体と非ハロゲン系有機溶媒とを含む生分解性ポリエステル溶液であり、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が16mol%未満であり、
前記非ハロゲン系有機溶媒が、炭素数が3~6の有機溶媒の群から選ばれる少なくとも1種である、生分解性ポリエステル溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体と非ハロゲン系有機溶媒とを含む生分解性ポリエステル溶液であり、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が16mol%未満であり、
前記非ハロゲン系有機溶媒が、炭素数が3~6の有機溶媒の群から選ばれる少なくとも1種である、生分解性ポリエステル溶液。
【請求項2】
前記非ハロゲン系有機溶媒が、沸点が60℃以上の有機溶媒である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体に由来する不溶分を実質的に含まない、請求項1または請求項2に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項4】
前記有機溶媒が、脂肪族エーテル系溶媒、脂肪族エステル系溶媒および脂肪族ケトン系溶媒の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項5】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンの群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項6】
前記生分解性ポリエステル溶液中の前記共重合体の固形分濃度が0.01~15重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項7】
前記共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が10mol%以上16%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液を含む、生分解性接着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液と顔料および/または染料とを含む、生分解性インク。
【請求項10】
基材と、前記基材の表面の少なくとも1部に樹脂層とを含む被覆材であって、
前記樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液を前記基材に塗布して形成された、被覆材。
【請求項11】
生分解性基材と、前記生分解性基材の少なくとも片面に樹脂層とを含む生分解性積層体であって、
前記樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液を前記生分解性基材に塗布して形成された、生分解性積層体。
【請求項12】
前記生分解性基材が、紙または生分解性ポリエステルである、請求項11に記載の生分解性積層体。
【請求項13】
生分解性基材と、樹脂層とを含む、生分解性積層体の製造方法であって、
前記生分解性基材の少なくとも片面に請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル溶液を塗付して前記樹脂層を形成する、塗布工程を含む、生分解性積層体の製造方法。
【請求項14】
前記生分解性基材が、紙または生分解性ポリエステルである、請求項13に記載の生分解性積層体の製造方法。











































【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリエステル溶液およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による埋立て処分場の不足や環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。近年、上記廃棄物に由来したマイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。
【0003】
ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂は、優れた海水分解性を有しているため、廃棄されたプラスチックが引き起こす環境問題を解決し得る材料として注目されている。ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂を二次加工する際には、接着剤、インク、コーティング剤等(「二次加工用部材」とも称する。)が使用されることがあるが、上記環境問題の観点からは、二次加工用部材も海水分解性を有していることが求められる。
海水分解性を有する二次加工用部材の例として、例えば、特許文献1には、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を作製し、得られた溶液からフィルムを製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-62343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶液は、ハロゲン系溶媒が用いられており、ハロゲン系溶媒の使用は、系外への漏洩した場合に環境を汚染することが懸念されるため、厳しい管理下で使用する必要があり、環境への配慮から非ハロゲン系溶媒の使用が求められていた。
また、ハロゲン系の溶媒は揮発性の高い溶媒が多く、2次加工中に溶媒が急激に蒸発し、結露などによる2次加工品の外観不良を生じやすい傾向があり、湿度や温度を厳密に管理する等の設備的な工夫が必要であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂に良好な溶解性を示す非ハロゲン系有機溶媒を含み、環境負荷が少なく、二次加工性に優れる生分解性ポリエステル溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する。)の平均含有比率が特定の範囲にあるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体(以下、「PHBH」と称する。)を、特定の非ハロゲン系有機溶媒に溶解させることにより、当該PHBHを含む生分解性ポリエステル溶液が、環境負荷が少なく二次加工性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体と非ハロゲン系有機溶媒とを含む生分解性ポリエステル溶液であり、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が16mol%未満であり、
前記非ハロゲン系有機溶媒が、炭素数が3~6の有機溶媒の群から選ばれる少なくとも1種である、生分解性ポリエステル溶液に関する。
好ましくは、前記非ハロゲン系有機溶媒が、沸点が60℃以上の有機溶媒である。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体に由来する不溶分を実質的に含まない。
好ましくは、前記有機溶媒が、脂肪族エーテル系溶媒、脂肪族エステル系溶媒および脂肪族ケトン系溶媒の群から選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、の群から選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記生分解性ポリエステル溶液中の前記共重合体の固形分濃度が0.01~15重量%である。
好ましくは、前記共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が10mol%以上16%未満である。
また本発明は、前記生分解性ポリエステル溶液を含む、生分解性接着剤に関する。
また本発明は、前記生分解性ポリエステル溶液と顔料および/または染料とを含む、生分解性インクに関する。
また本発明は、基材と、前記基材の表面の少なくとも1部に樹脂層とを含む被覆材であって、前記樹脂層が、前記生分解性ポリエステル溶液を前記基材に塗布して形成された、被覆材に関する。
さらに本発明は、生分解性基材と、前記生分解性基材の少なくとも片面に樹脂層とを含む生分解性積層体であって、前記樹脂層が、前記生分解性ポリエステル溶液を前記生分解性基材に塗布して形成された、生分解性積層体に関する。好ましくは、前記生分解性基材が、紙または生分解性ポリエステルである。
また本発明は、生分解性基材と、樹脂層とを含む、生分解性積層体の製造方法であって、前記生分解性基材の少なくとも片面に前記生分解性ポリエステル溶液を塗付して前記樹脂層を形成する、塗布工程を含む、生分解性積層体の製造方法に関する。好ましくは、
前記生分解性基材が、紙または生分解性ポリエステルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によればポリヒドロキシアルカノエート樹脂に良好な溶解性を示す非ハロゲン系有機溶媒を含み、環境負荷が少なく二次加工性に優れる生分解性ポリエステル溶液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
本発明の一実施形態に係る生分解性ポリエステル溶液(以下、「本生分解性ポリエステル溶液」と称する。)は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体と非ハロゲン系有機溶媒とを含む生分解性ポリエステル溶液であり、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体中の3-ヒドロキシヘキサノエートの平均含有比率が16mol%未満であり、前記非ハロゲン系有機溶媒が、炭素数が3~6の有機溶媒の群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
本発明者らは、海水分解性を有する樹脂としてPHBHに着目し、当該PHBHを含むポリエステル溶液に関する技術について検討したところ、PHBHは、一般に有機溶媒には難溶であるものの、クロロホルム等のハロゲン系有機溶媒に対してはわずかに溶解することを見出した。しかし、ハロゲン系有機溶媒は、作業環境上、ヒトの健康に対して害を生じるという問題があるだけでなく、揮発性が比較的高く、コーティング等の2次加工の際、コーティング中に溶媒が早く揮発することにより、空気中の水分がコーティング膜の表面に結露したり、共重合体由来の固形分が析出したりするなどにより2次加工品の外観や特性を悪化させてしまう等の課題があった。
【0013】
そこで、本発明者らが、さらに検討を進めたところ、特定の非ハロゲン系有機溶媒がPHBHを溶解でき、得られたPHBH含有溶液は、含まれる有機溶媒の特性により、上記のような2次加工の際の課題が発生しにくいことを見出した。さらに、HH比率が16mol%未満のPHBHを用いており、溶媒を乾燥により除去した後の結晶性(固化性)も良好なことから2次加工後(例えば、積層体)の加工性も優れることも見出した。
【0014】
〔2.生分解性ポリエステル溶液〕
(PHBH)
PHBHは、3-ヒドロキシブチレート(「3HB」とも称する。)および3HHを繰り返し単位とする共重合体である。
【0015】
本発明の一実施形態において、PHBHは、微生物から産生する方法または化学合成法のいずれの方法によって得られてもよく、特に限定されない。中でも、微生物から産生する方法により得られるPHBHが、微粒子である点で好ましい。
【0016】
PHBHを産生する微生物としては、細胞内にPHBHを蓄積し得る微生物であれば特に限定されないが、例えば、Alcaligenes lipolytica、Alcaligenes eutrophus、Alcaligenes latus等のアルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)等の菌が挙げられる。中でも、PHBHの生産性の点で、特に、アエロモナス・キャビエ等の菌株が好ましく、PHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(受託番号FERM BP-6038(平成8年8月12日に寄託された原寄託(FERM P-15786)より移管)(平成9年8月7日、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6))(J.Bacteriol., 179, 4821-4830頁(1997))がより好ましい。また、アエロモナス属の微生物であるアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)からPHBHを得る方法は、例えば、特開平5-93049号公報に開示されている。なお、これらの微生物は、適切な条件下で培養して、菌体内にPHBHを蓄積させて用いられる。
【0017】
培養に用いる炭素源および培養条件は、例えば、特開平5-93049号公報、特開2001-340078号公報等に記載の方法に従い得るが、これらに限定されない。
【0018】
上記の方法で得られた微生物産生PHBHは、ランダム共重合体である。3HHの含有比率(組成)の調整は、例えば、菌体の選択、原料となる炭素源の選択、異なる3HH組成のPHBHのブレンド、3HBホモポリマーのブレンド等により行われ得る。例えば、菌体により産生されたPHBHをそのまま使用する方法、PHBH中の3HHの平均含有比率が本発明における所定の範囲となるように複数の菌体により産生されたPHBHを混合する方法等が挙げられる。
【0019】
PHBH中の3HHの平均含有比率は、16mol%未満であり、好ましくは、14mol%以下であり、より好ましくは、12mol%以下である。PHBH中の3HHの平均含有比率が16mol%未満であると非ハロゲン系有機溶媒への溶解性と、2次加工時あるいは2次加工品をさらに加工する際の固化性とのバランス性に優れるという効果を奏する。16mol以上であると、溶媒への溶解性は優れるものの、固化が遅くなったり、タック性が残る傾向がある。
【0020】
PHBH中の3HHの平均含有比率の下限は、特に限定されないが、溶解性の点で、1mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましく、10mol%以上が特に好ましい。なお、PHBHを構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法により求めることができる。平均含有比率とは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位のモル比を意味し、PHBHが2種以上のPHBHの混合物である場合、混合物全体に含まれる各モノマー単位のモル比を意味する。
【0021】
本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液中のPHBHの重量平均分子量(g/mol)は、例えば、10~300万であり、好ましくは、15~250万であり、より好ましくは、20~230万であり、特に好ましくは、30~210万である。PHBHの重量平均分子量が5万以上であると良好な接着強度が発現する効果を奏する。PHBHの重量平均分子量が300万以下であると非ハロゲン系有機溶媒に短時間で溶解するとの効果を奏する。なお、本生分解性ポリエステル溶液中のPHBHの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
【0022】
尚、本生分解性ポリエステル溶液は、二次加工品として透明な塗膜やフィルムを得ることができれば、共重合体の不溶分を含んでいてもよいが、二次加工後の塗膜やフィルム等の外観がより優れる点から、実質的に不溶分を含まないことが好ましい。本発明において、実質的に不溶分を含まないとは、例えば、目視で共重合体由来の固形分が観察されない状態を指す。
【0023】
(有機溶媒)
本明細書において、炭素数が3~6の「非ハロゲン系有機溶媒」は、PHBHを良好に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、脂肪族エーテル系溶媒、脂肪族エステル系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、芳香族系溶媒などが挙げられる。
尚、脂肪族エーテルとしては、溶解性の点で脂肪族環状エーテルを好ましく用いることができる。
【0024】
PHBHとの良好な溶解性および速い乾燥速度を有する等2次加工時の作業性の観点から、好ましくは、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン等の脂肪族環状エーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の脂肪族エステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒が使用される。特に好ましくは、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランが使用される。上記有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明に係る非ハロゲン系の有機溶媒の沸点は、加熱などにより溶媒が留去できれば特に限定されないが、二次加工時の作業性(揮発性)の点で60℃以上であることが好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。非ハロゲン系有機溶媒の沸点の上限は、特に限定されないが、加熱により乾燥させやすい点で、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が特に好ましい。
尚、本発明に係る非ハロゲン系有機溶媒の炭素数は、3~6であるが、揮発性と乾燥性、溶解性のバランスから炭素数が4又は5の有機溶媒が特に好ましい。非ハロゲン系有機溶媒の炭素数が3未満であると、揮発性が高すぎため、例えば、2次加工としてコーティングする際に、結露によりコーティング表面の外観が悪くなったり、コーティング装置内でPHBHが析出しコーティングが安定しない等の傾向がある。本発明に係る非ハロゲン系有機溶媒の炭素数が6を超える有機溶媒では乾燥性やPHBHの溶解性が低下する傾向がある。
【0026】
(生分解性ポリエステル溶液)
本明細書において、「生分解性ポリエステル溶液」とは、土壌中および/または海水中で微生物により分解され得るポリエステルを含む溶液を意味する。本生分解性ポリエステル溶液は、生分解性ポリエステルとして、少なくとも、PHBHを含む。
【0027】
本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液中のPHBHの固形分濃度は、2次加工時の作業性の点で、例えば、0.01~15重量%が好ましく、0.015~10重量%がより好ましく、0.02~5重量%が特に好ましく、0.025~2.5重量%がさらに好ましい。PHBHの固形分濃度が0.01~15重量%の範囲であると、加工に適した粘度を有する効果を奏する。尚、本生分解性ポリエステル溶液中のPHBHの固形分濃度は、60℃における固形分濃度であり実施例に記載の方法で測定される。
【0028】
本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液は、本発明の効果を奏する範囲で、PHBH以外の生分解性樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の添加量は、本生分解性ポリエステル溶液の生分解性を担保するために、PHBH100重量部に対して30重量以下が好ましい。
【0029】
また、本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機充填剤、もみがら、木粉、新聞紙等の古紙、各種デンプン、セルロース等の有機充填剤、顔料、染料等の着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、粘着付与剤、フィラー、薬剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、添加剤の固形分濃度は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0030】
〔2.用途〕
本生分解性ポリエステル溶液は、上述の通り、非ハロゲン系有機溶媒への良好な溶解性を示し、かつ、二次加工性に優れるため、種々の用途に適用できる。そのような用途としては、特に限定されないが、例えば、接着剤、粘着剤、インク、コーティング剤、バインダー等が挙げられる。以下、代表例として、接着剤、インクについて詳述する。
【0031】
(生分解性接着剤)
本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液を含む生分解性接着剤(以下、「本生分解性接着剤」と称する。)を提供する。本生分解性接着剤は、非ハロゲン系有機溶媒への良好な溶解性を示し、かつ、優れた二次加工性を有するため、作業環境上、ヒトの健康に対して問題が少なく、従来の接着剤に比して有用である。
【0032】
本生分解性接着剤中のPHBHの固形分濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01~15重量%が好ましく、0.015~10重量%がより好ましく、0.02~5重量%が特に好ましく、0.025~2.5重量%がさらに好ましい。PHBHの固形分濃度が0.01~15重量%の範囲であると、接着剤として塗布する際に適した粘度を有する効果を奏する。
【0033】
本発明の一実施形態において、本生分解性接着剤は、その生分解性を損なわない範囲であれば、通常の接着剤に添加し得る種々の物質を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、着色剤、フィラー、可塑剤、増量剤、樹脂類等が挙げられる。添加剤は、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、添加剤の固形分濃度は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0034】
(生分解性インク)
本発明の一実施形態において、本生分解性ポリエステル溶液と顔料および/または染料とを含む生分解性インク(以下、「本生分解性インク」と称する。)を提供する。本生分解性インクは、非ハロゲン系有機溶媒への良好な溶解性を示し、かつ、短時間のエイジングでも十分な接着強度を有する生分解性ポリエステル溶液を含むため、作業環境上、ヒトの健康に対して問題が少なく、従来のインクに比して有用である。
【0035】
本生分解性インク中のPHBHの固形分濃度は、特に限定されないが、えば、0.01~15重量%が好ましく、0.015~10重量%がより好ましく、0.02~5重量%が特に好ましく、0.025~2.5重量%がさらに好ましい。PHBHの固形分濃度が0.01~15重量%の範囲であると、インクとして塗布する際に適した粘度となる効果を奏する。
【0036】
本生分解性インクに含まれる顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、カーボンブラック、アルミニウム粉、雲母、チタン粉等が挙げられる。これらは1種でも2種以上でも用いることができる。
また、本生分解性インクに含まれる染料としては、特に限定されないが、例えば、染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、直接染料、反応性染料、分散染料、含金属染料などが挙げられる。尚、顔料や染料などの色材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる
【0037】
本生分解性インク中の顔料および/または染料の固形分濃度(顔料/染料重量と溶媒重量の和に対する、顔料/染料の重量%)は、特に限定されないが、例えば、0.1~20重量%であり、好ましくは、0.2~15重量%であり、より好ましくは、0.3~10重量%である。顔料および/または染料の固形分濃度が0.1重量%以上であれば、良好な着色効果を奏する。顔料および/または染料の固形分濃度が20重量%以下であれば、塗布する際に適した粘度となる効果を奏する。
【0038】
本発明の一実施形態において、本生分解性インクは、上記の顔料および/または染料以外に、生分解性を損なわない範囲で、通常のインクに添加し得る種々の物質を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、耐摩擦剤、防カビ剤、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、光沢剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、添加剤の固形分濃度は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0039】
(被覆材)
本発明の一実施形態において、基材表面の少なくとも1部に、本生分解性エステル溶液を塗布(コーティング)して基材表面の1部に生分解性ポリエステル樹脂層を形成した被覆材を提供することができる。コーティングする方法としては、溶液の溶媒を除去して生分解性ポリエステル樹脂層が形成できれば特に限定されないが、例えば、浸漬法、ブラシを用いた塗布法、スプレーコート法、各種のコータを用いた塗布法などを用いることができる。また、本生分解性ポリエスエステル溶液を基材にかけ流して塗布することもできる。前記基材の形状としては、特に限定されないが、平面状、球状等であってもよい。
【0040】
(生分解性積層体)
本発明の一実施形態において、上述の被覆材の一形態として、生分解性基材の少なくともに片面に本生分解性ポリエステル溶液を塗布して形成された樹脂層を含む生分解性積層体(以下、「本生分解性積層体」と称する。)を提供する。生分解性ポリエステル溶液を生分解性基材に塗布することにより、簡便に生分解性基材に生分解性ポリエステル溶液に含まれる樹脂の特性(例えば、接着性)を付与することができる。
生分解性基材としては、生分解性を有しかつ形態保持性を有していれば特に限定されないが、例えば、紙(主成分がセルロース)、セロハン、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ポリグリコール酸、プルラン、生分解性ポリエステルまたはこれらの基材にアルミ、シリカ等の無機物を蒸着したもの等が挙げられる。中でも耐熱性に優れ、生分解性に優れる点から、紙または生分解性ポリエステルが好ましい。紙の種類は、特に限定されず、カップ原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。
【0041】
生分解性ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート(PBS)系樹脂、ポリカプロラクトン(PCL)系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂等の脂肪族ポリエステル樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)系樹脂、ポリブチレンセバケートテレフタレート系樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート系樹脂等の脂肪族芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0042】
生分解性基材の種類は、本積層体の用途に応じて適宜選択することができる。生分解性基材には、必要に応じて、耐水剤、撥水剤、無機物等を添加してもよく、酸素バリア層コーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよい。
本生分解性積層体は、例えば、基材層の片面または両面に、本生分解性ポリエステル溶液を塗付し、必要に応じて更に乾燥して製造することができる。そのような方法としては、公知の手法を適宜実施でき、特に限定されない。
【0043】
本発明の一実施形態において、積層体の製造方法(「本積層体の製造方法」とも称する。)は、基材層の片面または両面に本生分解性ポリエステル溶液を塗付する工程を含み、更に前記塗付後の生分解性ポリエステル溶液を乾燥する工程、を含むことができる。
本発明の一実施形態において、本積層体の製造方法は、以下の工程を含んでいてもよい:(a)本溶液の製造工程、(b)基材層の繰り出し工程、(c)前記溶液の前記基材層への塗布工程、および(d)乾燥工程を含み、また(C)の塗布工程にかえて、基材を溶液に浸漬して基材表面に溶液を付着させる浸漬工程を含むことができる。
【0044】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
〔原料樹脂〕
X131A:カネカ製、カネカ生分解性ポリマーGreen Planet(登録商標) X131A 〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ヒドロキシヘキサノエート単位含有比率(HH比)=6mol、Mw=58万〕
151C:カネカ製、カネカ生分解性ポリマーGreen Planet(登録商標) 151C 〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ヒドロキシヘキサノエート単位含有比率(HH比)=11mol、Mw=61万〕
【0047】
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における評価を、以下の方法で行った。
【0048】
(固形分濃度)
実質的に飽和状態の固形分濃度を測定は、以下の通り測定した。
PHBH樹脂(樹脂重量A0(g))を各種有機溶媒(溶媒重量S0(g))に投入した後60℃に加熱した。加熱後、直ちにPTFE製フィルター(孔径:0.22μm)でろ過し、生分解性ポリエステル溶液としてPHBH溶液(溶液重量S1(g))を得た。得られたPHBH溶液を、熱風オーブンで溶媒を除去し、溶解していたPHBH樹脂の固形分(溶解樹脂重量A1(g))を得た。固形分濃度を下記式にて算出した。
固形分濃度(%)=溶解樹脂重量A1(g)/溶液重量S1(g))×100
【0049】
(接着性)
生分解性ポリエステル溶液を、未晒しクラフト紙(目付量:150g/m)へ4ミルのアプリケーターで塗布し塗布層(樹脂層)を形成した。次いで、同クラフト紙で塗布層を挟み込み、重量2kgのローラーを用いて貼合した。その後、60℃のオーブンで1時間加熱乾燥したものをサンプル(積層体)とした。
得られたサンプルを幅15mmに切り出し、樹脂層の両面のクラフト紙を手で把持し剥離し接着性を評価した。
<評価>
○:剥離面全体に紙の凝集破壊が観察された。
△:剥離面の一部に紙の凝集破壊が観察された。
×:剥離面に紙の凝集破壊が観察されなかった。
【0050】
(インク評価)
乾燥後のサンプルの生分解性インク滴下部分を指で押さえて、インク特性を評価した。
<評価>
○:良好(インクが指側に転写せず、紙上に定着)
△:やや良好(一部にインクが指側に転写する部分があった。)
×:不適(インクが指側に転写する)。
【0051】
〔実施例1〕
(接着剤の調製)
溶媒としてアセトンを用い、樹脂原料としてX131Aを添加し、上述の固形分濃度測定方法に従い生分解性ポリエステル溶液を調製し、固形分濃度を測定した。
但し、得られた生分解性ポリエステル溶液をPTFE製フィルターでろ過後、得られた溶液は、アセトンが一部揮発したため、やや白濁したものであった。
作製した溶液を接着剤溶液として、未晒しクラフト紙(目付量:150g/m)へ4ミルのアプリケーターで塗布した。次いで、同クラフト紙で塗布層を挟み込み、重量2kgのローラーを用いて貼合した。その後、60℃のオーブンで1時間加熱乾燥したものをサンプルとし、接着性を評価した。接着性は、概ね良好であったが、溶液の調整時に析出した樹脂分によりクラフト紙との接着が不十分な部分があり、一部、紙の凝集破壊が観察されなかった。生分解性ポリエステル溶液の固形分濃度および接着性の評価結果を表1に示す。
【0052】
(インクの調製)
溶媒としてアセトンを用い、樹脂原料としてX131Aを添加し、上述の固形分濃度測定方法に従い生分解性ポリエステル溶液を調製した。次いで、顔料として酸化チタン粉を2部添加した。その後、60℃のオーブンで6時間加熱し、ホモジナイザーを用いて顔料を分散させ生分解性インクを作製した。
黒い紙上に、インク溶液をスポイトで2ml滴下し、60℃/1時間乾燥したものをサンプルとし、インク特性を評価した。インク特性は、概ね良好であったが、溶液の調整時に析出した樹脂分により一部にインクが指側に転写する部分があった。インク特性の評価結果を表1に示す。
【0053】
〔実施例2〕
(接着剤の調製)
溶媒として1,3-ジオキソランを用い、樹脂原料としてX131Aを添加し、上述の固形分濃度測定方法に従い生分解性ポリエステル溶液を調製し、固形分濃度を測定した。
作製した溶液を接着剤溶液として、未晒紙クラフト紙(目付量:150g/m)へ4ミルのアプリケーターで塗布した。次いで、同クラフト紙で塗布層を挟み込み、重量2kgのローラーを用いて貼合した。その後、60℃のオーブンで1時間加熱乾燥したものをサンプルとし、接着性を評価した。生分解性ポリエステル溶液の固形分濃度および接着性の評価結果を表1に示す。
【0054】
(インクの調製)
溶媒として1,3-ジオキソランを用い、樹脂原料としてX131Aを添加し、上述の固形分濃度測定方法に従い生分解性ポリエステル溶液を調製した。次いで、顔料として酸化チタン粉を2部添加した。その後、60℃のオーブンで6時間加熱し、ホモジナイザーを用いて顔料を分散させ生分解性インクを作製した。
黒い紙上に、インク溶液をスポイトで2ml滴下し、60℃/1時間乾燥したものをサンプルとし、インク特性を評価した。インク特性の評価結果を表1に示す。
【0055】
〔実施例3~14〕
表1にしめした原料樹脂、有機溶媒を使用した以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリエステル溶液の固形分濃度、接着性、インク特性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0056】
〔比較例1〕
溶媒として塩化メチレンを用い、樹脂原料として151Cを添加し、上述の固形分濃度測定方法に従い生分解性ポリエステル溶液の調製を試みたが、PTFE製フィルターでのろ過時に溶媒の揮発性が高いため、器具等に固形分が析出するなど、10%~15wt%の範囲で数値がばらつき正確に濃度が測定できた生分解性ポリエステル溶液を得ることが出来なかった。
接着性、インク特性についても操作中に溶媒が揮発するため、適切な評価は実施できなかった。
〔比較例2〕
溶媒としてキシレンを用い、樹脂原料としてX131Aを用いた以外は、実施例1と同様にして生分解性ポリエステル溶液を調整し、得られた生分解性ポリエステル溶液の固形分濃度を測定した。次いで、実施例1同様に接着性、インク特性について評価したが、乾燥が不十分であり、いずれも×であった。
〔比較例3〕
溶媒としてキシレンを用い、樹脂原料として151Cを用いた以外は、実施例1と同様にして生分解性ポリエステル溶液を調整し、得られた生分解性ポリエステル溶液の固形分濃度を測定した。次いで、実施例1同様に接着性、インク特性について評価したが、乾燥が不十分であり、いずれも×であった。
【表1】
【0057】
〔結果〕
表1より、実施例では、非ハロゲン系有機溶媒を用いた生分解性ポリエステル溶液を得ることができた。また、実施例で製造した生分解性ポリエステル溶液を含む生分解性接着剤は、接着性が優れていることが示された。さらに、実施例で製造した生分解性ポリエステル溶液を含む生分解性インクは、良好なインク特性を有することが示された。
一方、比較例では、生分解性ポリエステル樹脂の溶液が調整出来ない、あるいは、接着性、インク特性が不十分であることがわかる。
【0058】
以上より、非ハロゲン系有機溶媒を含む、本発明の生分解性ポリエステル溶液は、環境負荷が少ない、二次加工性に優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の生分解性ポリエステル溶液は、塗料、接着剤、インク、繊維加工、シート・フィルム加工、紙加工等を含む種々の分野において、好適に利用することができる。