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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149408
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20231005BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20231005BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/06
B60W30/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057960
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】南口 昌弘
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA57
3D241DA03Z
3D241DA19Z
3D241DA28Z
3D241DC49Z
(57)【要約】
【課題】四輪駆動(4WD)走行が推奨される状況下において、運転者に二輪駆動(2WD)走行から4WD走行への移行を促すことができるようにする。
【解決手段】2WD走行と4WD走行とを運転者が任意に切り替え可能な車両の制御に係り、2WD走行時に、車両の駆動輪に走行のための駆動力を伝達する回転軸の回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、悪路を走行していると判定したならば4WD走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する車両の制御装置を構成した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪駆動走行と四輪駆動走行とを運転者が任意に切り替え可能な車両の制御に係り、
二輪駆動走行時に、車両の駆動輪に走行のための駆動力を伝達する回転軸の回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、
悪路を走行していると判定したならば四輪駆動走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する車両の制御装置。
【請求項2】
二輪駆動走行時に、動力源として車両に搭載された内燃機関のクランクシャフトの回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、
悪路を走行していると判定したならば四輪駆動走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する請求項1記載の車両の制御装置
【請求項3】
運転者が二輪駆動走行と四輪駆動走行とを手動で切り替え可能な車両の制御に係り、
二輪駆動走行時に、車両の駆動輪に走行のための駆動力を伝達する回転軸の回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、
悪路を走行していると判定したならば四輪駆動走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪駆動(2-Wheel Drive)走行と四輪駆動(4-Wheel Drive)とを運転者が任意に切り替え可能な車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者が2WD走行と4WD走行とを手動で切り替えることができる、いわゆるパートタイム4WDシステムが公知である。典型的には、動力源となる内燃機関及び変速機にトランスファを接続し、トランスファから前後にプロペラシャフトを伸ばして前後の車軸に連結する。2WD走行では、トランスファにおいて変速機と一方のプロペラシャフトとを接続しつつ、変速機と他方のプロペラシャフトとの間は切り離す。4WD走行では、変速機と他方のプロペラシャフトとを接続する(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-160585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
4WD走行が推奨されるような悪路を2WD走行している状況下にあっても、車両の運転者にその旨を報知するような機能が現存していない。このため、運転者が2WD走行を続けることとなり、車両の駆動輪が路面を適切に捉えることができず、不必要に走行性能の悪化を招くことが懸念される。
【0005】
以上の問題に着目してなされた本発明は、4WD走行が推奨される状況下において、運転者に2WD走行から4WD走行への移行を促すことができるようにすることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、2WD走行と4WD走行とを運転者が任意に切り替え可能な車両の制御に係り、2WD走行時に、車両の駆動輪に走行のための駆動力を伝達する回転軸の回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、悪路を走行していると判定したならば4WD走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する車両の制御装置を構成した。
【0007】
より具体的には、2WD走行時に、動力源として車両に搭載された内燃機関のクランクシャフトの回転速度の変動に基づき、現在悪路を走行しているか否かを判定し、悪路を走行していると判定したならば4WD走行に切り替えることを推奨する旨を運転者に報知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、4WD走行が推奨される状況下において、運転者に2WD走行から4WD走行への移行を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の構成を示す図。
図2】同実施形態の車両の駆動系の構成を示す図。
図3】同実施形態の車両の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
図4】同実施形態の車両の制御装置による悪路走行判定の手法を説明するためのタイミング図。
図5】同実施形態の車両の制御装置による失火判定の手法を説明するためのタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、車両用内燃機関100の概要を示す。内燃機関100は、例えば火花点火式の4ストロークレシプロエンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒エンジン。図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気バルブよりも上流、各気筒1に連なる吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を起こすものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0011】
吸気を気筒1に供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配設している。
【0012】
排気を気筒1から排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配設している。加えて、排気ターボ過給機5のタービン52を迂回する排気バイパス通路43、及びこのバイパス通路43の入口を開閉するバイパス弁であるウェイストゲートバルブ44を付設してある。
【0013】
排気ターボ過給機5は、排気タービン52とコンプレッサのインペラ51とをシャフト53を介して同軸で連結し連動するように構成したものである。タービン52及びインペラ51は、排気通路4を流れる排気のエネルギを利用して回転駆動される。その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸気通路3を流れる吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込むことができる。
【0014】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)に接続している。
【0015】
図2に、車両の駆動系の一例を示す。この駆動系は、運転者が2WD走行と4WD走行とを手動で切り替えることができる、いわゆるパートタイム4WDシステムを実現する。
【0016】
内燃機関100のクランクシャフトには、変速機200を連結している。変速機200は、例えばトルクコンバータ及び自動変速機(有段変速機または無段変速機)を備える既知のものである。内燃機関100が出力する回転駆動力(エンジントルク)は、変速機200により変速(減速)された上で、アウトプットシャフト201に伝達される。
【0017】
アウトプットシャフト201には、トランスファ300を連結している。トランスファ300は、回転駆動力をリアプロペラシャフト6及び/またはフロントプロペラシャフト7に分配する役割を担う。
【0018】
クラッチ301を締結せず(係合させず)切断している(解放している)ときには、アウトプットシャフト201とスプロケット302とが切り離されて連動せず、アウトプットシャフト201からリアプロペラシャフト6にのみ回転駆動力が伝達される。フロントプロペラシャフト7には、回転駆動力が伝達されない。リアプロペラシャフト6に入力された回転駆動力は、デファレンシャルギア400を介して左右の後輪92に伝達され、それら後輪92を駆動輪として回転させる。前輪91は、回転駆動されず、単に転動する。つまり、車両が2WD走行する。
【0019】
対して、クラッチ301を締結する(係合させる)と、アウトプットシャフト201とスプロケット302とが接続されて連動し、アウトプットシャフト201からリアプロペラシャフト6、フロントプロペラシャフト7の双方に回転駆動力が伝達されるようになる。即ち、スプロケット302及びスプロケット303に巻き掛けたチェーン304が、回転駆動力をスプロケット303に、ひいてはこれに固結したフロントプロペラシャフト7に供与する。フロントプロペラシャフト7に入力された回転駆動力は、デファレンシャルギア500を介して左右の前輪91に伝達され、それら前輪91を駆動輪として回転させる。同時に、リアプロペラシャフト6に入力された回転駆動力が、デファレンシャルギア400を介して左右の後輪92に伝達され、後輪92を駆動輪として回転させる。結果、車両が4WD走行する。
【0020】
因みに、左右の前輪91を支持する車軸上に、クラッチ8を介設している。
【0021】
本実施形態の車両の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
【0022】
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、内燃機関100の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号d、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33またはサージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、気筒1を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号f、吸気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、気筒1から排出され排気通路4を流れるガスの空燃比を検出する空燃比センサ(リニアA/FセンサまたはO2センサ)から出力される空燃比信号h、車両の運転者が2WD走行と4WD走行とを切り替えるために手動操作するスイッチ、ボタン、レバー等から与えられる信号p等が入力される。
【0023】
ECU0の出力インタフェースからは、火花点火装置のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l、ウェイストゲートバルブ44に対して開度操作信号m、クラッチ301を断接切替する流体を制御するバルブに対して制御信号n、クラッチ8を断接切替する流体を制御するバルブに対して制御信号o等を出力する。
【0024】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関100の運転を制御する。ECU0は、内燃機関100の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、h、pを入力インタフェースを介して取得し、気筒1に吸入される空気量に見合った要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する火花点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)、車両を2WDで走行させるか4WDで走行させるか等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、n、oを出力インタフェースを介して印加する。
【0025】
しかして、図3に示すように、本実施形態のECU0は、車両の運転者が2WDを選択して走行している最中に(ステップS1)、現在悪路を走行しているか否かを判定し(ステップS2)、悪路を走行していると判定したならば、2WD走行から4WD走行に切り替えることを推奨する旨を、車両の運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様にて報知する(ステップS3)。
【0026】
ステップS2にて、ECU0は、クランク角信号bを参照して、車両が現在悪路を走行しているか否かの判定を行う。周知の通り、クランク角センサは、内燃機関100のクランクシャフトの軸端部に固結したロータの回転角度をセンシングするものである。ロータには予め、クランクシャフトの回転方向に沿った所定角度(典型的には、10°CA(クランク角度))毎に、歯または突起が形成されている。クランク角センサは、ロータの外周に臨んでおり、個々の歯または突起が当該センサの近傍を通過することを検知し、その都度クランク角信号としてパルス信号を発信する。ECU0は、このパルスをクランク角信号bとして受信する。
【0027】
ECU0は、クランク角信号bに基づき、クランクシャフトの回転速度を常時監視している。より具体的には、クランク角信号bのパルス列を参照し、クランクシャフトが所定のクランク角度、典型的には30°CA回転するのに要した時間を反復的に計測している。また、それとともに、今回計測された所要時間から前回計測された所要時間を減算することで、30°CA毎の回転速度の低下量の指標となる、30°CAの所要時間の変化量を得る。30°CAの所要時間の変化量が正値であることは、クランクシャフトの回転速度が低下(減速)傾向にあることを意味し、負値であることは、クランクシャフトの回転速度が上昇(加速)傾向にあることを意味する。
【0028】
クランクシャフトの30°CAあたりの回転速度、または30°CA毎の所要時間は、恒常的に一定ではない。回転速度は、各気筒1の膨脹行程において最も速くなり、ある気筒1の膨脹行程と次の気筒1の膨脹行程との中間、三気筒エンジンであれば各気筒1の圧縮上死点付近で最も遅くなる。それ故、図4及び図5に例示するように、30°CA毎の所要時間の時系列は、各気筒1が膨脹行程を迎える周期で脈動する。
【0029】
図4は、車両が悪路を走行しているときの、30°CAの所要時間の時系列の例である。悪路を走行しているときには、連続する複数の気筒1の膨張行程において、30°CAの所要時間が延長されてゆく、即ちクランクシャフトの回転速度が低下してゆく。ECU0は、所定数の連続する膨張行程において30°CAの所要時間が長くなっていっている(または、連続する所定数の30°CAの極大値が逓増している)ことを条件として、車両が悪路を走行中であると判定する。
【0030】
なお、30°CAの所要時間は、気筒1の燃焼室内での燃料の燃焼が不安定化し、または失火が起こったときにも延長される。図5は、失火が起こったときの、30°CAの所要時間の時系列の例である。尤も、失火は、ある特定の一つの気筒1の膨張行程で起こることはあっても、連続する複数の気筒1の膨張行程で続いて起こる(相異なる気筒1に跨がって連発する)ことは稀である。よって、ECU0では、悪路走行による30°CAの所要時間の延長と、失火による30°CAの所要時間の延長とを切り分けることができる。
【0031】
車両が悪路を走行していると判定したECU0は、ステップS3にて、2WD走行から4WD走行に切り替えることを推奨する旨を、運転者に報知する。例えば、コックピット内の所定のランプを点灯または点滅させたり、ディスプレイの画面にメッセージを表示したり、音声を出力したりする。そのために、必要な装置に向けて制御信号qを出力する。
【0032】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、2WD走行中の内燃機関100のクランクシャフトの回転速度の変動に基づき、現在車両が悪路を走行しているか否かを判定していた。が、2WD走行中の変速機200のアウトプットシャフト201やプロペラシャフト6の回転速度をセンシングし、その回転速度の変動(シャフト201、6が所定角度回転するのに要した時間を反復的に計測し、その時系列)に基づいて車両が悪路を走行しているか否かを判定することも当然に考えられる。
【0033】
その他、各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
0…制御装置(ECU)
100…内燃機関
92…駆動輪
b…クランク角信号
p…運転者が操作するスイッチ等から与えられる信号
q…運転者に対する報知を実行するための信号
図1
図2
図3
図4
図5