(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149425
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】防汚性能を有する合成皮革
(51)【国際特許分類】
D06N 3/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D06N3/14 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057994
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯永 英典
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA13
4F055CA16
4F055FA15
4F055FA21
4F055GA03
(57)【要約】
【課題】防汚性能が発揮される合成皮革であって、水跡が残りにくい合成皮革を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、表面処理層は、少なくとも水系ポリウレタン樹脂と、架橋剤と、親水性化合物を含有する組成物から形成され、親水性化合物はポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物を用いる。ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物の含有量は、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、50~100質量部であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、
表面処理層は、少なくとも水系ポリウレタン樹脂と、架橋剤と、親水性化合物を含有する組成物から形成されるものであって、親水性化合物がポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物であることを特徴とする防汚性能を有する合成皮革。
【請求項2】
水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物が50~100質量部含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の防汚性能を有する合成皮革。
【請求項3】
親水性化合物として、さらにエチレン‐アクリル酸共重合体を含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の防汚性能を有する合成皮革。
【請求項4】
親水性化合物として、さらにポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンをグラフト重合させた水溶性高分子を含有してなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防汚性能を有する合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革に関するものであり、特に防汚性能が発現する合成皮革に関するものである。
【0002】
合成皮革は、繊維布帛基材と合成樹脂からなる層を有してなるものであり、天然皮革に似せたものである。合成皮革は天然皮革と比べて軽量で取扱いやすいため、車輌用内装材、ソファーや椅子の座面などの家具用途、ジャケットやコートなどの衣料用途等、多岐にわたって使用されている。
【0003】
ところが、合成皮革の表面に汚れが付着すると、その汚れをきれいに拭き取ることは困難である。そのため、白やベージュなど淡色系の色調の合成皮革の場合、汚れが目立ってしまう問題があった。
【0004】
その対策として、合成皮革の表面に撥水性塗料をコーティングする方法や、合成皮革の表面に親水性塗料をコーティングする方法が挙げられる。
前者は、合成皮革に汚れを付着させにくくするものであるが、撥水性塗料は溶剤系が主流であるため、健康・環境被害の観点から好ましいものではない。
後者は、合成皮革に汚れが付着したとしても、容易に拭き取れるようにするものである(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、親水性塗料は水との親和性が高いため、親水性塗料をコーティングした合成皮革に水が付着した状態で放置されると、乾燥後に水跡が残りやすいという問題がある。ひとたび水跡が発現すると完全に消すことは難しく、見栄えが悪くなってしまう問題があった。
したがって、本発明は上記問題を解決し、防汚性能が発揮される合成皮革であって、特に水跡が残りにくい合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、防汚性能が発揮される合成皮革、特に水跡が残りにくい合成皮革を発明した。
【0008】
本発明は以下を要旨とする。
(1)少なくとも、繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層された合成皮革において、表面処理層は、少なくとも水系ポリウレタン樹脂と、架橋剤と、親水性化合物を含有する組成物から形成されるものであって、親水性化合物がポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物であることを特徴とする防汚性能を有する合成皮革。
(2)水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物が50~100質量部含有されてなることを特徴とする(1)に記載の防汚性能を有する合成皮革。
(3)親水性化合物として、さらにエチレン‐アクリル酸共重合体を含有してなることを特徴とする(1)または(2)に記載の防汚性能を有する合成皮革。
(4)親水性化合物として、さらにポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンをグラフト重合させた水溶性高分子を含有してなることを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の防汚性能を有する合成皮革。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、汚れが付着したとしても容易に拭き取り可能であり、水跡が残りにくいことから、車輌用内装材、ソファーや椅子の座面などの家具、衣料等、さまざまな用途に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の合成皮革は、少なくとも繊維布帛基材、樹脂層、表面処理層の順で積層されてなり、表面処理層は、少なくとも水系ポリウレタン樹脂と、架橋剤と、親水性化合物を含有する組成物から形成される。
なお、本明細書中において、水系ポリウレタン樹脂に対する架橋剤および親水性化合物の質量比は、すべて固形分比である。
【0011】
〔繊維布帛基材〕
繊維布帛基材は、編布、織布、不織布など、繊維を利用した布材であればいずれのものであってもよい。繊維布帛基材を形成する繊維は、特に限定されず、合成繊維、天然繊維などをあげることができる。合成繊維の材質としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ナイロンなどを例示することができるがこれらに限定されない。天然繊維の材質としては、綿、麻、レーヨンなどを例示することができる。
繊維布帛基材の厚みは特に限定されないが、合成皮革の機械的強度や風合い等を考慮すれば、当該厚みは、100μm以上2000μm以下であることが好ましく、300μm以上1000μm以下であることがより好ましい。繊維基材の目付けについても特に限定されないが、上記厚みと同様に、合成皮革の機械的強度や風合い等を考慮すれば、10g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上300g/m2以下であることがより好ましい。
【0012】
[樹脂層]
樹脂層は、少なくとも表皮層を有する層である。
樹脂層は、表面側から、表皮層、接着層の順で積層させたものであってもよく、表皮層と接着層との間に中間層を介在させてもよい。中間層は一層であっても、二層以上の多層構成であってもよい。
【0013】
表皮層を構成する樹脂は、合成皮革の樹脂層に用いられ得る樹脂であればいずれのものでも使用できるが、ポリウレタン系樹脂、または塩化ビニル系樹脂が好適である。
【0014】
上記ポリウレタン系樹脂としては、合成皮革の表皮層に用いられ得るものであればいずれも使用できるが、具体的には、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、ポリエステル/ポリエーテル共重合系ポリウレタン樹脂、ポリアミノ酸/ポリウレタン共重合樹脂、ポリカーボネートジオール成分と無黄変型ジイソシアネート成分及び低分子鎖伸長剤等を反応させて得られる無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。また、合成皮革としての諸物性を損なわない範囲であれば、上記のポリウレタン樹脂にポリ塩化ビニル樹脂や合成ゴムなどを混合しても差し支えない。
【0015】
上記塩化ビニル系樹脂としては、合成皮革の表皮層に用いられ得るものであればいずれも使用できるが、具体的には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、またはこれら樹脂のブレンド等が使用できる。
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸アクリロニトリル等が挙げられる
【0016】
表皮層を塩化ビニル系樹脂で構成する場合、天然皮革に似た柔軟性をより効果的に発揮させるために、塩化ビニル系樹脂と併せて可塑剤が配合される。可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)などに代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチルエステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるアジピン酸ポリエステル系可塑剤などの高分子系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0017】
表皮層の厚みは特に限定されないが、10μm以上500μm以下の厚みに形成することが好ましく、10μm以上400μm以下の厚みに形成することがより好ましい。
【0018】
中間層を構成する樹脂は、表皮層と同様に合成皮革の樹脂層に用いられ得るものであればいずれも使用できるが、ポリウレタン系樹脂、または塩化ビニル系樹脂が好適である。ポリウレタン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂の具体例は、上記表皮層と同様である。
また、中間層は、発泡層であっても非発泡層であってもよい。
中間層を発泡させる手段としては、機械攪拌による物理的発泡、発泡剤の添加による化学的発泡、中空微粒子の添加による擬似発泡などが挙げられる。
【0019】
接着層は、表皮層等の合成樹脂からなる層と繊維布帛基材との密着性を向上させるために設けられる層である。接着層を構成する樹脂は、表皮層や中間層と同様に、合成皮革の樹脂層に用いられ得る樹脂であればいずれのものでも使用できるが、ポリウレタン系樹脂、または塩化ビニル系樹脂が好適である。
また、接着層は、発泡層であっても非発泡層であってもよい。
接着層を発泡層とする手段としては、上記中間層を発泡層とする手段と同様である。
【0020】
上記表皮層、中間層、接着層を構成する樹脂組成物中には、各々の物性を阻害しない範囲で、顔料、フィラー、分散剤、消泡剤、艶消し剤、滑剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0021】
〔表面処理層〕
本発明の合成皮革の表面処理層は、少なくとも水系ポリウレタン樹脂と架橋剤と親水性化合物からなる組成物から形成されるものであり、親水性化合物はポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物である。
【0022】
水系ポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物等が挙げられるが、耐久性に優れることから、ポリカーボネート系ポリウレタンが好適である。
上記水系ポリウレタン樹脂は、単独で用いてもいいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
架橋剤は、カルボジイミド系化合物および/またはオキサゾリン系化合物であることが好ましい。カルボジイミド系化合物およびオキサゾリン系化合物はカルボキシル基と反応することから、表面処理層を形成する際に水系ポリウレタン樹脂および親水性化合物であるポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物と反応する。そのため、親水性化合物が表面処理層の樹脂骨格中に取り込まれ、脱落あるいは変性しにくくなり、長期にわたって防汚性が発揮されるのである。
架橋剤としては、イソシアネート化合物を併用してもよい。
イソシアネート化合物としては、水分散型多官能芳香族イソシアネート、水分散型多官能脂肪族イソシアネート、水分散型脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、水分散型ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
架橋剤の添加量は、上記の水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して5~80質量部の範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、上記の架橋剤に加えて、必要に応じてエポキシ化合物、アジリジン化合物などを併用してもよい。
【0025】
表面処理層は、親水性化合物として、ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物を含有する。
ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物は親水性が高いため、汚れが付着しても水拭きすれば簡単に汚れが落ちる効果がある。
親水性化合物を含んでなる表面処理層は、水に長時間接触すると、水が乾燥した後に水跡が残る傾向にある。しかしながら、ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物は、親水性を有するにもかかわらず、水跡が残りにくい。これは、側鎖が長くブリードしにくいためであると推察される。
【0026】
ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物は、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、50~100質量部の割合で添加されることが好ましい。50質量部未満であると、親水性が不十分となり、所望の防汚性能を付与できなくなる傾向にある。一方で、100質量部を超えると、水跡が発現しやすくなるとともに、耐熱性が悪化し、高温下での使用において変色する傾向にある。
【0027】
親水性化合物としては、上記ポリメタクリル酸アルキルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物に加えて、エチレン‐アクリル酸共重合体を用いてもよい。
エチレン-アクリル酸共重合体としては、エチレンの使用割合は70~95質量%、アクリル酸の使用割合は5~30質量%とすることが好ましい。
エチレン-アクリル酸共重合体は、中和されて水分散物として用いられる。中和剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等が挙げられるが、水酸化ナトリウムで中和されたナトリウム塩が好ましく用いられる。
エチレン‐アクリル酸共重合体を添加すると、表面処理層の耐光性が向上するため、長期に亘って防汚性能に優れた合成皮革を提供することが可能である。耐光性が向上する理由は定かではないが、オレフィン系の樹脂であるため樹脂そのものの光安定性が高く、架橋剤のカルボジイミド系化合物およびオキサゾリン系化合物と反応性を有するためであると推察する。
エチレン‐アクリル酸共重合体の添加量は、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、20~50質量部であることが好ましい。20質量部未満であると、耐光性が十分に発揮されない傾向にあり、50質量部を超えると、水跡が残りやすくなる傾向にある。
【0028】
さらに、親水性化合物として、ポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンをグラフトさせた水溶性高分子(以下、「PVA-PVPグラフトコポリマー」とする)を用いてもよい。PVA-PVPグラフトコポリマーは耐熱性に優れ、熱により劣化しにくいものである。そのため、PVA-PVPグラフトコポリマーが表面処理層中に含有されると、長期にわたって親水性が発揮される効果を奏する。
加えて、PVA-PVPグラフトコポリマーは、水酸基を有するポリビニルアルコールが基本骨格であるため、架橋剤のイソシアネート系化合物と反応し、表面処理層を形成する樹脂骨格中に組み込まれる。樹脂骨格中に組み込まれることにより、経時でのPVA-PVPグラフトコポリマーの脱落が抑制される。つまり、表面処理層中にPVA-PVPグラフトコポリマーが表面処理層に含まれることで、長期にわたって確実に親水性が発現することが可能となるのである。
PVA-PVPグラフトコポリマーの添加量は、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、5~30質量部であることが好ましい。5質量部未満であると、耐熱性が十分に発揮されない傾向にあり、30質量部を超えると、水跡が残りやすくなる傾向にある。
【0029】
表面処理層中には、必要に応じて顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、シリカなどの無機微粒子、有機フィラーなど公知の添加剤を添加してもよい。
【0030】
本発明の合成皮革の表面処理層は、表面処理層を形成する組成物を含有する塗工液を調製し、塗工液を樹脂層(表皮層)上に塗布して形成することができる。この塗工液を塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例えばグラビア法、リバース法など公知の方法により形成することができる。
また、樹脂層上に塗布後、例えば加熱オーブン内で乾燥して形成する方法が好ましい。乾燥における温度条件は、架橋剤の反応性の観点から80~150℃が好ましく、120~140℃がより好ましい。
【0031】
表面処理層と樹脂層との間に、密着性を向上させる為にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、樹脂からなる層であり、必要に応じて顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、シリカなどの無機微粒子、有機フィラーなど公知の添加剤を添加してもよい。
【0032】
以上、本発明の合成皮革について説明した。本発明は合成皮革として種々の用途に用いることができるが、特に車輌用内装材、家具用途、衣料用途に好適に使用される。
【実施例0033】
以下に本発明を実施例に基づいて、詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0034】
〔合成皮革ベースの作成〕
表皮層形成用樹脂組成物を、離型紙上にコンマコータにて塗布し、80℃から120℃まで徐々に温度を上げ、120℃到達後、5分間乾燥し、厚さ約15μm表皮層を得た。
次に、接着層形成用樹脂組成物を、離型紙上に形成した表皮層の上にコンマコータにて塗布し、120℃で乾燥し、厚さ約30μmの接着層を得た。
続いて、接着層に接着性が発現しているタイミングで、繊維布帛基材(丸編機にて150デニールのポリエステル糸から編み立てたポリエステル製生地)の貼り合わせを行った。
最後に、ロール状に巻き取りを行い、これを50℃、48時間かけて熟成させた後、離型紙を剥離して、表面側から、表皮層、接着層、繊維布帛基材の順で積層した合成皮革ベースを作成した。
なお、表皮層形成用樹脂組成物、接着層形成用樹脂組成物は以下のとおりである。
【0035】
〔表皮層形成用樹脂組成物〕
・主剤:ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(DIC(株)製「クリスボンNY335FT」) 100質量部
・溶剤:DMF 30質量部、酢酸エチル 10質量部
・白色顔料 10質量部
粘度を800 mPa・sec(液温25度に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0036】
〔接着層形成用樹脂組成物〕
・主剤:ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(DIC(株)製「クリスボンTA205FT 」) 100質量部
・架橋剤:イソシアネート系化合物(DIC(株)製「バーノックDN950」) 12質量部
・溶剤:DMF 30質量部、MEK 30質量部
・触媒:DIC(株)製「クリスボン アクセルT81‐E」:1質量部
粘度を800 mPa・sec(液温25℃に調整してB型粘度計にて測定)に調製した。
【0037】
実施例1~5、比較例1~2
上記合成皮革ベース上に表1に示す表面処理層形成用組成物をグラビアロールにて塗工し、オーブンで130℃加熱を行った後、これを50℃、48時間かけて熟成させ、塗膜厚さが約2μmの表面処理層を設けた合成皮革を得た。
【0038】
表1に示す原料の詳細は以下のとおりである。
・水系ポリウレタン樹脂:ダウケミカル社製、UD4
・架橋剤1:イソシアネート化合物、ランクセス社製、BI220
・架橋剤2:カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル社製、カルボジライトSV02
・親水性化合物1:ポリメタクリル酸ブチルとポリメタクリル酸とポリメタクリル酸エチレンオキシドの混合物、高松油脂株式会社製、SWX349R
・親水性化合物2:エチレン‐アクリル酸共重合体のナトリウム塩、住友精化株式会社製、ザイクセンN
・親水性化合物3:ポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンをグラフトさせた水溶性高分子、第一工業製薬株式会社製、ピッツコールV7154
・ヒンダードアミン系光安定剤:BASF社製、チヌビンT765
・紫外線吸収剤:BASF社製、チヌビンT751
・酸化防止剤1:BASF社製、イルガノックス1135
・酸化防止剤2:ADEKA株式会社製、アデカスタブ1500
なお、表1中の原料の数値の単位は「質量部」であり、すべて固形分量である。
【0039】
得られた合成皮革に対して、以下の要領で水跡確認試験、防汚性試験1~3を実施した。結果を表1に示す。
【0040】
〔水跡確認試験〕
得られた合成皮革を100mm×100mmに裁断した試験片上に、常温の純水を5mL滴下し、25℃、湿度30%の条件で静置、24時間経過後の試験片の外観を確認し、以下の基準で評価した。
◎・・・外観に異常なし
〇・・・一部に薄っすらとした水跡残りあり
×・・・はっきりとした環状の水跡残りあり
【0041】
〔防汚性試験1〕
各実施例、比較例で得られた合成皮革を直径150mmの円形に裁断した試験片に対して、「擦り付け」前と後の色差ΔEを測定した。
ここでいう「擦り付け」とは、先ず、試験片に対して、汚染布(EMPA#104号)を平面型摩耗試験機において荷重圧2MPaで1000回擦り付け、その後、汚染布を新しいものに取り換え、同じ作業を合計3回繰り返し、試験片を合計3000回擦り付ける。続いて、汚染布により汚れを擦り付けた試験片に対して、蒸留水を十分湿らせた白布を平面型摩耗試験機において荷重圧30kPaを掛けて10回擦り付けることをいう。
【0042】
〔防汚性試験2〕
各実施例、比較例で得られた合成皮革について、耐光性試験後に、上記防汚性試験1と同じ試験を行い、「擦り付け」前と後の色差ΔEを測定した。
なお、耐光性試験の条件は以下のとおりである。
耐光性試験:フェードメーターを用いて、ブラックパネル温度83℃で試験片に紫外線を400時間照射
【0043】
〔防汚性試験3〕
各実施例、比較例で得られた合成皮革について、耐熱性試験後に、上記防汚性試験1と同じ試験を行い、「擦り付け」前と後の色差ΔEを測定した。
なお、耐熱性試験の条件は以下のとおりである。
耐熱性試験:ギアオーブン内に試験片を置き、温度100℃にて600時間静置して、加熱処理
【0044】
【0045】
各実施例、比較例の結果から、実施例1~5の合成皮革は、防汚性能に優れ、かつ水跡残りがないことがわかる。