(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149427
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、その製造方法、およびハニカム成形体の形状調整方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/20 20060101AFI20231005BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20231005BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20231005BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20231005BHJP
B28B 3/26 20060101ALI20231005BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B28B3/20 E
B01J35/04 301B
B01J35/04 301N
B01J37/00 D
B01J35/02 G
B28B3/26 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057996
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】的場 守昭
(72)【発明者】
【氏名】徳田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広則
【テーマコード(参考)】
3G091
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB01
3G091AB14
3G091BA02
3G091BA39
3G091CA04
3G091GA06
3G091GB10X
3G091GB13X
3G091GB16X
3G091GB17X
4G054AA05
4G054AB09
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4G169AA01
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4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA13
4G169CA14
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4G169EA19
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB16X
4G169EB16Y
4G169FA01
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB67
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体の製造方法および該構造体を提供する。
【解決手段】中央部の隔壁の厚みと外周部の隔壁の厚みとが異なるハニカム構造部を備えるハニカム構造体の製造方法であって、厚み方向に延びる複数の裏孔65aが形成された成形材料の導入部65と、前記裏孔に連通するスリット66aが形成され、前記導入部を通過した前記成形材料をハニカム成形体に成形する成形部66とを有する板状の口金本体60の前記導入部側に、前記裏孔と連通する複数の流通孔70aが形成されたバックプレート70を配設した状態で、前記バックプレート側から成形材料を導入して押出し成形する工程を含み、前記バックプレートの前記複数の流通孔の孔径は面内において段階的に変化し、この孔径が相対的に大きい流通孔が並設される第一領域71と孔径が相対的に小さい流通孔が並設される第二領域72とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカム構造体は、外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、
前記成形工程は、厚み方向に延びる複数の裏孔が形成された前記成形材料の導入部と、前記裏孔に連通するスリットが形成され、前記導入部を通過した前記成形材料を前記ハニカム成形体に成形する成形部とを有する板状の口金本体の前記導入部側に、前記裏孔と連通する複数の流通孔が形成されたバックプレートを配設した状態で、前記バックプレート側から前記成形材料を導入して押し出す工程を含み、
前記バックプレートの前記複数の流通孔の孔径は面内において段階的に変化し、孔径が相対的に大きい流通孔が並設される第一領域と孔径が相対的に小さい流通孔が並設される第二領域とを有する、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記成形材料を押出し速度10mm/秒~40mm/秒で3秒間~25秒間押し出したときの、前記口金本体の前記成形部の面内における押出し量のバラツキは2mm以下である、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記成形部にはスリット幅の異なるスリットが形成され、前記成形部の中央部に位置するスリットのスリット幅は、前記成形部の外周部に位置するスリットのスリット幅よりも大きい、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第一領域は前記バックプレートの外周部に位置し、前記第二領域は前記バックプレートの中央部に位置する、請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム成形体の形状調整方法であって、
前記ハニカム成形体は、前記ハニカム成形体の延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、
前記形状調整方法は、厚み方向に延びる複数の裏孔が形成された成形材料の導入部と、前記裏孔に連通するスリットが形成され、前記導入部を通過した前記成形材料を前記ハニカム成形体に成形する成形部とを有する板状の口金本体の前記導入部側に、前記裏孔と連通する複数の流通孔が形成されたバックプレートを配設した状態で、前記バックプレート側から前記成形材料を導入して押し出す工程を含み、
前記バックプレートの前記複数の流通孔の孔径は面内において段階的に変化し、孔径が相対的に大きい流通孔が並設される第一領域と孔径が相対的に小さい流通孔が並設される第二領域とを有する、
ハニカム成形体の形状調整方法。
【請求項6】
第一端面から第二端面まで延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面における前記セルのセルピッチは1.0mm以上1.2mm以下であり、前記セルピッチのバラツキは0.1mm以下である、
ハニカム構造体。
【請求項7】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面における前記外周壁の厚みは0.1mm以上0.5mm以下であり、前記外周壁の厚みのバラツキは0.2mm以下である、請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向の曲がり度は1mm以下である、請求項6または7に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面の真円度は1mm以下である、請求項6から8のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記電極層の厚みは0.1mm以上0.5mm以下であり、前記電極層の厚みのバラツキは0.092mm以下である、請求項6から9のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記ハニカム構造部の前記中央部の隔壁の厚みに対する前記外周部の隔壁の厚みの比は、0.6以上0.9以下である、請求項6から10のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、その製造方法、およびハニカム成形体の形状調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に、担体に触媒を担持させた触媒担体が用いられている。処理の際、エンジン始動時に触媒温度が低いと、触媒が所定の温度まで昇温されず、排ガスが十分に浄化されないという問題がある。このような問題を解決するために、導電性を有する担体に通電して担体を発熱させることにより、担体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)を用いた排ガス処理装置の開発が進んでいる。このような担体として、特許文献1には、セラミック製のハニカム構造部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ハニカム構造部を発熱させるため、その側面には電極層が配設される。例えば、ハニカム構造部の通電発熱特性を向上させるため、配設される電極層の厚みはより均一であることが求められる。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によるハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を有するハニカム構造体の製造方法であって、前記ハニカム構造体は、外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、前記成形工程は、厚み方向に延びる複数の裏孔が形成された前記成形材料の導入部と、前記裏孔に連通するスリットが形成され、前記導入部を通過した前記成形材料を前記ハニカム成形体に成形する成形部とを有する板状の口金本体の前記導入部側に、前記裏孔と連通する複数の流通孔が形成されたバックプレートを配設した状態で、前記バックプレート側から前記成形材料を導入して押し出す工程を含み、前記バックプレートの前記複数の流通孔の孔径は面内において段階的に変化し、孔径が相対的に大きい流通孔が並設される第一領域と孔径が相対的に小さい流通孔が並設される第二領域とを有する。
1つの実施形態においては、上記成形材料を押出し速度10mm/秒~40mm/秒で3秒間~25秒間押し出したときの、上記口金本体の上記成形部の面内における押出し量のバラツキは2mm以下である。
1つの実施形態においては、上記成形部にはスリット幅の異なるスリットが形成され、上記成形部の中央部に位置するスリットのスリット幅は、上記成形部の外周部に位置するスリットのスリット幅よりも大きい。
1つの実施形態においては、上記第一領域は上記バックプレートの外周部に位置し、上記第二領域は上記バックプレートの中央部に位置する。
【0007】
本発明の別の実施形態によるハニカム成形体の形状調整方法は、外周壁と前記外周壁の内側に配設される隔壁とを有するハニカム成形体の形状調整方法であって、前記ハニカム成形体は、前記ハニカム成形体の延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、前記形状調整方法は、厚み方向に延びる複数の裏孔が形成された成形材料の導入部と、前記裏孔に連通するスリットが形成され、前記導入部を通過した前記成形材料を前記ハニカム成形体に成形する成形部とを有する板状の口金本体の前記導入部側に、前記裏孔と連通する複数の流通孔が形成されたバックプレートを配設した状態で、前記バックプレート側から前記成形材料を導入して押し出す工程を含み、前記バックプレートの前記複数の流通孔の孔径は面内において段階的に変化し、孔径が相対的に大きい流通孔が並設される第一領域と孔径が相対的に小さい流通孔が並設される第二領域とを有する。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態によるハニカム構造体は、第一端面から第二端面まで延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と、外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設される一対の電極層と、を備え、前記ハニカム構造部は、前記セルの延びる方向に直交する面において、中央部および前記中央部を囲む外周部を有し、前記中央部の前記隔壁の厚みと前記外周部の前記隔壁の厚みとは異なり、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面における前記セルのセルピッチは1.0mm以上1.2mm以下であり、前記セルピッチのバラツキは0.1mm以下である。
1つの実施形態においては、上記ハニカム構造部の上記セルの延びる方向に直交する面における上記外周壁の厚みは0.1mm以上0.5mm以下であり、上記外周壁の厚みのバラツキは0.2mm以下である。
1つの実施形態においては、上記ハニカム構造部の上記セルの延びる方向の曲がり度は1mm以下である。
1つの実施形態においては、上記ハニカム構造部の上記セルの延びる方向に直交する面の真円度は1mm以下である。
1つの実施形態においては、上記電極層の厚みは0.1mm以上0.5mm以下であり、上記電極層の厚みのバラツキは0.092mm以下である。
1つの実施形態においては、上記ハニカム構造部の上記中央部の隔壁の厚みに対する上記外周部の隔壁の厚みの比は、0.6以上0.9以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の製造方法に用いられる口金の各部の概略の構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】バックプレートを用いずに口金本体から成形材料を押し出したときの口金本体の出口の様子の一例を示す図である。
【
図7】バックプレートを用いて口金本体から成形材料を押し出したときの口金本体の出口の様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
A.ハニカム構造体
図1は本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の概略の構成を示す斜視図であり、
図2および
図3は
図1に示すハニカム構造体の断面図である。ハニカム構造体30は、ハニカム構造部10と、ハニカム構造部10の側面に配設され、ハニカム構造部10を介して互いに対向する一対の電極層20、20と、を備える。
【0013】
ハニカム構造部10は、第一端面10aから第二端面10bまで(長さ方向に)延びて流体の流路となり得る複数のセル12を区画形成する隔壁14と、外周に位置して隔壁14を囲む外周壁16とを有する。外周壁16は、長さ方向に延びる。複数のセル12はそれぞれ、長さ方向に延びる空間とされる。長さ方向に垂直な各セル12の断面形状は、図示例では略正六角形であるが、他の多角形(例えば、三角形、四角形、五角形)、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。長さ方向に垂直な外周壁16の断面形状は、代表的には円形であるが、多角形や楕円形であってもよい。
【0014】
隔壁14の厚みは、例えば、触媒担体としての利用の観点から、好ましくは310μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは230μm以下である。一方、隔壁14の厚みは、例えば、強度の観点から、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは130μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。
【0015】
セル12の延びる方向(ハニカム構造部10の中心軸)に直交する面において、ハニカム構造部10は、中央部31および中央部31を囲む外周部32を有し、中央部31の隔壁14の厚みと外周部32の隔壁14の厚みとは異なる。具体的には、中央部31に位置する隔壁14の厚みT1と外周部32に位置する隔壁14の厚みT2とは異なる。隔壁厚みT1とT2との大小関係は、特に限定されないが、例えば、隔壁厚みT1は隔壁厚みT2よりも大きい。隔壁厚みT1に対する隔壁厚みT2の比(T2/T1)は、例えば0.6以上0.9以下であり、0.8以下であってもよい。このような関係によれば、ハニカム構造部10に電圧を印加してから短時間で中央部31まで昇温させることができる。なお、本明細書において、「直交する面」には、「直交する断面」も含まれ得る。
【0016】
中央部31と外周部32とは、隣接して配置されていてもよいし、離間して配置されていてもよい。図示例では、中央部31と外周部32との間に中間部33が配置されている。上記隔壁厚みT1とT2と中間部33に位置する隔壁14の厚みT3との大小関係は、特に限定されないが、隔壁厚みT1は隔壁厚みT3よりも大きく、隔壁厚みT3は隔壁厚みT2よりも大きいことが好ましい。隔壁厚みT1に対する隔壁厚みT3の比(T3/T1)は、例えば0.7以上0.95以下である。
【0017】
セル12の延びる方向に直交する面における単位面積当たりのセル12の数は、例えば50セル/cm2~150セル/cm2であり、好ましくは75セル/cm2~150セル/cm2である。
【0018】
セル12の延びる方向に直交する面におけるセル12のセルピッチPは、例えば1.0mm以上1.2mm以下であり、好ましくは1.06mm以上1.16mm以下であり、より好ましくは1.1mm以上1.12mm以下である。ここで、セルピッチPは、
図4に示すように、対向する略平行な隔壁14の厚み方向における中央部14a間の距離である。
【0019】
セルピッチPのバラツキ(セル12の延びる方向に直交する面の面内におけるバラツキ)は、例えば0.1mm以下であり、好ましくは0.07mm以下であり、より好ましくは0.05mm以下である。中央部31と外周部32とで隔壁厚みTが異なるハニカム構造部においてこのようなセルピッチのバラツキを満足することにより、後述の外周壁の厚みのバラツキ、曲がり度、真円度を良好に達成し得、厚みの均一性に優れた電極層を備えるハニカム構造体を得ることができる。なお、セルピッチのバラツキは、各直径方向に沿って、一定の間隔をあけてセルピッチをCNC画像測定システム(例えば、ニコン社製のNEXIVシリーズ)により計70か所以上120か所以下測定し、得られた測定値とその平均値との差の絶対値である。ここで、「各直径方向」とは、セルの断面形状が四角形の場合はX方向およびY方向の二方向を意味し、セルの断面形状が六角形の場合は三方向(一組の対向する隔壁に対し直交する方向)を意味する。
【0020】
外周壁16の厚みは、例えば、強度の観点から、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上であり、さらに好ましくは0.2mm以上である。一方、外周壁16の厚みは、例えば1mm以下であり、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.45mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以下である。外周壁の厚みのバラツキ(セル12の延びる方向に直交する面の面内におけるバラツキ)は、0.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mm以下である。なお、外周壁の厚みのバラツキは、一定の間隔をあけて(中心角で45°おきに)、外周壁の厚みをデジタルマイクロスコープにより8か所測定して得られた測定値とその平均値との差の絶対値である。
【0021】
ハニカム構造部10(外周壁16)のセル12の延びる方向の曲がり度は、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.9mm以下である。ハニカム構造部10(外周壁16)のセル12の延びる方向に直交する面の真円度は、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.9mm以下である。曲がり度および真円度は、例えば、光ゲージ曲がり測定(レーザー変位計を用いた測定)により得ることができる。具体的には、ハニカム構造部10の長さ方向の上端部、中央部および下端部の3点について外周形状を測定し、得られた測定データを、基準の外周形状に対してベストフィット処理(基準値からのずれ量を最小とする処理)し、基準値との差の絶対値を求めることにより曲がり度および真円度(単位:mm)を得ることができる。
【0022】
一対の電極層20、20は、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで配設され、それぞれ、ハニカム構造部10のセル12の延びる方向に延びる帯状に形成されている。図示しないが、一対の電極層20、20にはそれぞれ金属製の端子が設けられ、一方の端子は電源のプラス極に接続され、他方の端子は電源のマイナス極に接続され得る。
【0023】
電極層20の厚みは、例えば0.05mm以上であり、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。電極層20の厚みのバラツキは、0.092mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.046mm以下である。なお、電極層の厚みのバラツキ(mm)は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する複数の断面における電極層の厚みを、電極層が設けられたハニカム構造体のサイズをレーザー測長機により各断面において4点以上測定し、得られた測定値の最大値と最小値の差である。本発明の実施形態によるハニカム構造部によれば、このような厚みの均一性が達成され、得られるハニカム構造体の通電発熱性を確保し、通電発熱ムラが抑制され、均一にハニカム構造体を加熱し得る。
【0024】
電極層20の厚みのバラツキは、35%以下であることが好ましく、より好ましくは32%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。電極層20の厚みのバラツキの下限については、特に制限は無いが、例えば、20%以上であってもよく、25%以上であってもよい。なお、電極層の厚みのバラツキ(%)は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する複数の断面における電極層の厚みを、光学顕微鏡により各断面において4点以上測定し、それぞれの測定値とこれらの平均値との差の絶対値を平均値で除することにより算出することができる。本発明の実施形態によるハニカム構造部によれば、このような厚みの均一性が達成され、得られるハニカム構造体の通電発熱性を確保し、通電発熱ムラが抑制され、均一にハニカム構造体を加熱し得る。
【0025】
電極層20の形成範囲は特に限定されないが、一対の電極層20、20は、それぞれ、セル12の延びる方向に直交する面における円弧の中心角θで、例えば80°以上180°未満の範囲で形成され、好ましくは95°~105°の範囲で形成される。
【0026】
ハニカム構造部10の25℃における電気抵抗率は、好ましくは0.1Ωcm~200Ωcmである。電極層20の25℃における電気抵抗率は、好ましくは0.1Ωcm~100Ωcmであり、より好ましくは0.1Ωcm~50Ωcmである。
【0027】
ハニカム構造部10は、代表的には、多孔質体で構成される。ハニカム構造部10は、セラミック原料を含む材料により形成される。代表的には、炭化珪素を含む材料により形成される。好ましくは、珪素-炭化珪素複合材料を主成分とする(例えば、95質量%以上含む)材料により形成される。珪素-炭化珪素複合材料は、複数の炭化珪素粒子が、金属珪素によって結合された材料であり得る。ハニカム構造部が、珪素-炭化珪素複合材料で形成される場合、ハニカム構造部に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~35質量%であることがさらに好ましい。このような材質によれば、上記電気抵抗率を良好に達成し得る。
【0028】
代表的には、電極層20の体積抵抗率をハニカム構造部10の体積抵抗率より低くする。このような関係によれば、電極層20に優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセル12の延びる方向および周方向に広がりやすくなる。電極層20の体積抵抗率は、ハニカム構造部10の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることがさらに好ましい。一方で、両者の体積抵抗率の差が大きくなりすぎると、対向する電極層20の端部間に電流が集中してハニカム構造部10の発熱に偏りが生じるおそれがある。電極層20の体積抵抗率は、ハニカム構造部10の体積抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることがさらに好ましい。ここで、電極層20の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値である。
【0029】
電極層20の材質としては、例えば、導電性セラミックス、金属、または、金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を用いることができる。金属としては、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、SiもしくはTiの単体金属、または、これらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、例えば、炭化珪素(SiC);珪化タンタル(TaSi2)、珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素との複合材、上記金属珪化物と金属珪素と炭化珪素との複合材が挙げられる。また、金属と導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、熱膨張低減の観点から、上記の一種または二種以上の金属に、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素、窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種または二種以上添加した複合材が挙げられる。これの中でも、例えば、ハニカム構造部10と同時に焼成し得、製造工程の簡素化に資する観点から、金属珪化物と金属珪素と炭化珪素との複合材が好ましく用いられる。
【0030】
ハニカム構造体30を触媒担体として使用する場合、隔壁14には触媒が担持され、セル12を通過する排ガス中のCO、NOx、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。
【0031】
B.製造方法
上記ハニカム構造体(ハニカム構造部)は、代表的には、セラミック原料を含む成形材料を押出し成形してハニカム成形体を得る成形工程と、ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体(ハニカム構造部)を得る焼成工程と、を有する方法により製造され得る。
【0032】
上述のとおり、成形材料は、セラミック原料を含む。成形材料に含まれ得る他の原料としては、例えば、バインダー、分散媒、添加剤が挙げられる。
【0033】
上記成形工程において、ハニカム構造部の隔壁に対応するスリットが形成された口金から成形材料を押し出して、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を得る。
【0034】
図5は、本発明の1つの実施形態に係るハニカム構造体の製造方法に用いられる口金の各部の概略の構成を模式的に示す断面図である。
図5において、矢印Aは成形材料の押出し方向である。板状の口金50は、口金本体60およびバックプレート70から構成される。
【0035】
口金本体60は、厚み方向に延びる成形材料を導入するための複数の裏孔65aが形成された成形材料の導入部65と、裏孔65aに連通するスリット66aが形成され、導入部65を通過した成形材料をハニカム成形体に成形する成形部66とを有する。バックプレート70は、裏孔65aと連通する複数の流通孔70aが形成されており、バックプレート70側から成形材料を導入して押し出すことにより、流通孔70aを通り、導入部65の裏孔65aから導入された成形材料を、成形部66のスリット66aを通してハニカム成形体を得る。なお、
図5においては、便宜上、口金本体60とバックプレート70とを離した状態で記載しているが、押出し時には、これらは互いに接触した状態とされ得る。
【0036】
スリット66aはハニカム構造部10の隔壁14と相補的な形状を有する。具体的には、
図1に示すハニカム構造部10は、略正六角形のセル12を多数有し、隔壁14は格子状のパターンを有するが、このようなハニカム構造部を製造する場合、隔壁の格子状のパターンと相補的な形状(格子状)のスリットが形成された口金本体が用いられる。裏孔65aは、格子状等のスリット66aが交差する位置に対応して設けられることが好ましい。
【0037】
図1から
図3に示すハニカム構造部10を得る場合、成形部66の中央部61に位置するスリット66aのスリット幅は、成形部66の外周部62に位置するスリット66aのスリット幅よりも大きい。また、成形部66において、中央部61と外周部62との間の中間部63に位置するスリット66aのスリット幅は、中央部61に位置するスリット66aのスリット幅よりも小さく、外周部62に位置するスリット66aのスリット幅よりも大きい。
【0038】
バックプレート70の複数の流通孔70aの孔径は面内において段階的に変化する。具体的には、バックプレート70は、孔径が相対的に大きい流通孔70aが並設される第一領域71と孔径が相対的に小さい流通孔70aが並設される第二領域72とを有する。図示例では、第一領域71は、バックプレート70の外周部に形成され、その少なくとも一部が成形部66の外周部62と対向するように配置されている。第二領域72は、バックプレート70の中央部に形成され、その少なくとも一部が成形部66の中央部61と対向するように配置されている。また、バックプレート70において、第一領域71と第二領域72との間の第三領域73に並設される流通孔70aの孔径は、例えば、第一領域71の流通孔70aの孔径よりも小さく、第二領域72の流通孔70aの孔径よりも大きい。そして、第三領域73は、その少なくとも一部が成形部66の中間部63に対向するように配置されている。第一領域71の孔径D1に対する第二領域72の孔径D2の比(D2/D1)は、例えば0.70以上0.94以下であり、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下である。また、第一領域71の孔径D1に対する第三領域73の孔径Dの比(D3/D1)は、例えば0.75以上1以下である。
【0039】
第一領域71に形成される複数の流通孔70aの孔径は略同一であり、第二領域72に形成される複数の流通孔70aの孔径は略同一である。また、第三領域73に形成される複数の流通孔70aの孔径は略同一である。ここで略同一とは、複数の流通孔の孔径が、その平均値に対して±5%の範囲内であることをいう。また、孔径は、その流通孔の、バックプレートの表面に平行な断面形状において、最長となる径をいう。例えば、円形の場合は直径であり、楕円形の場合は長径であり、多角形の場合は対角線である。
【0040】
成形材料を押出し速度10mm/秒~40mm/秒で3秒間~25秒間押し出したときの、口金本体60の成形部66の面内における押出し量のバラツキは2mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。バックプレート70を用いずに、口金本体60から成形材料を所定速度で所定時間押し出したときの口金本体60(成形部66)の出口の様子の一例を
図6に示す。
図6に示すように、成形部66から押し出された成形材料M(ハニカム成形体の端面部分)の押出し量は、スリット幅の大きい中央部61において多くなり、スリット幅の小さい外周部62において少なくなる傾向にある。押出し量のバラツキは、最も多く押し出された箇所の押出し量と最も少なく押し出された箇所の押出し量との差であり、
図6に示す例では、矢印Bで示される。バックプレート70を用いることにより、成形部66の面内における押出し量を均一化してバラツキを抑制することができる。具体的には、
図7に示すように、成形部66から押し出された成形材料Mの押出し量を、中央部61と外周部62とで同程度にすることができる。
【0041】
押出し量のバラツキを抑制して得たハニカム構造部は、上記セルピッチのバラツキを良好に達成し得、上記外周壁の厚みのバラツキ、曲がり度、真円度を良好に達成し得る。また、押出し量のバラツキを抑制することにより、歩留りが格段に向上し得る。
【0042】
別の実施形態においては、予め、バックプレートを用いずに成形材料を口金本体から押し出して、押出し量のバラツキを確認後、押出し量の少ない箇所に対応して上記第一領域が形成され、押出し量の多い箇所に対応して上記第二領域が形成されたバックプレートを用いて、ハニカム成形体の形状を調整する。
【0043】
さらに別の実施形態においては、例えば、所定の方向に曲がったハニカム成形体を得ることを目的として、選択的に口金本体からの押出し量の多い箇所を形成すべく、当該箇所に対応して上記第一領域が形成され、その他の箇所に上記第二領域が形成されたバックプレートを用いて、ハニカム成形体の形状を調整する。
【0044】
上記ハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得る。ハニカム成形体の乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、50℃~120℃とすることが好ましい。
【0045】
上記ハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体(ハニカム構造部)を得る。焼成条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。焼成温度は、例えば1350℃~1500℃である。焼成時間は、例えば20時間~80時間である。焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0046】
ハニカム乾燥体を焼成処理に供する前に、ハニカム乾燥体を仮焼してもよい。仮焼温度は、例えば、ハニカム乾燥体に含まれる有機物の燃焼温度に応じて決定され得る。仮焼温度は、例えば200℃~1000℃である。仮焼時間は、例えば10時間~100時間である。なお、仮焼と焼成とは連続的に行ってもよい。具体的には、焼成の昇温過程において、仮焼を行ってもよい。
【0047】
上記電極層は、代表的には、電極層形成材料を塗布して得られる塗布層を焼成することにより形成される。電極層形成材料は、任意の適切なタイミングで塗布され得る。代表的には、電極層形成材料は上記ハニカム乾燥体に塗布される。なお、電極層形成材料はハニカム焼成体に(上記焼成工程の途中に)塗布されてもよい。電極層形成材料の塗布方法としては、好ましくは印刷法が採用される。例えば、ハニカム乾燥体の側面に開口部が形成された製版を配置し、製版の上からペースト状の電極層形成材料をスキージで押圧して塗布する。このような方法によれば、塗布面(曲面である側面)に対し、良好に電極層を形成することができる。加えて、得られるハニカム構造部は上記セルピッチのバラツキを良好に達成し得、上記外周壁の厚みのバラツキ、曲がり度、真円度を良好に達成し得ることから、電極層形成材料の塗布面の均一性が高く、厚みの均一性に優れた電極層を形成することができる。
【実施例0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(口金本体)
図5に示すような口金本体(口金本体60)を準備した。具体的には、裏孔を形成した導入部の厚みを19mm~21mm±0.1mmとし、裏孔の直径を0.85mm~0.90mm±0.1mmとし、裏孔のピッチを1.18mm~1.20mm±0.050mmとした。また、スリットが形成された成形部の厚みを2.20mm±0.1mmとし、中央部のスリットの幅を0.330mm±0.010mmとし、外周部のスリットの幅を0.280mm±0.010mmとし、中間部のスリットの幅を0.310mm±0.010mmとし、格子形状の交点に裏孔が位置するように格子状のスリットを形成した。裏孔はドリル加工で形成し、スリットは研削加工で形成した。
【0050】
(バックプレート)
図5に示すようなバックプレート(バックプレート70)を準備した。具体的には、外周形状が円形で厚み2.00mm±0.17mmの板状の部材(バックプレート用板状部材)に、ドリル加工で流通孔を多数形成し、メッシュ状のバックプレートを準備した。中心を含む中央部(円形の領域)の流通孔の孔径を0.60mmとし、中間部(ドーナツ状の領域)の流通孔の孔径を0.65mmとし、外周部(ドーナツ状の領域)の流通孔の孔径を0.85mmとした。
【0051】
(口金)
次に、得られた口金本体の導入部側に、バックプレートをピン嵌め合いにより取り付けて口金を得た。
【0052】
(成形材料)
篩に通した炭化珪素粉末と金属珪素粉末とを70:30の質量比で混合し、原料粉末を得た。得られた原料粉末に、バインダー、添加剤および水を添加し、これらを混合して湿粉(混合物)を得た。得られた湿紛を混練し、坏土を得た。
【0053】
(ハニカム成形体)
上記坏土を、上記口金を装着した押出し成形機により、押出し速度20mm/秒の条件で押し出し、長さ180mmの円筒状のハニカム成形体を得た。その後、ハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム乾燥体を得た。
【0054】
(電極層形成材料)
平均粒子径が6μmの金属珪素(Si)粉末、平均粒子径が35μmの炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリンおよび水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成材料を調製した。Si粉末およびSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、Si粉末およびSiC粉末の合計を100質量部としたときに、配合量は、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。
【0055】
(電極層)
印刷法により、
図1に示すような電極層が得られるように、上記電極層形成材料を上記ハニカム乾燥体の側面に塗布した(一方の電極層の中心角90°)。具体的には、ハニカム乾燥体の外周面に開口部が形成された製版を配置し、製版の上から上記電極層形成材料をスキージで押圧することで塗布した。
【0056】
(焼成)
ハニカム乾燥体に塗布された電極層形成材料を乾燥させた後、アルゴン雰囲気下で焼成し、さらに、大気雰囲気下で焼成し、ハニカム構造体を得た。
【0057】
[実施例2]
バックプレートとして、下記に示すバックプレートAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム成形体およびハニカム構造体を得た。
(バックプレートAの作製)
上記バックプレート用板状部材に、ドリル加工で流通孔を形成した。左側半分の半円の領域において、中央部の流通孔の孔径を0.70mmとし、中間部の流通孔の孔径を0.75mmとし、外周部の流通孔の孔径を0.85mmとし、右側半分の半円の領域において、中央部の流通孔の孔径を0.60mmとし、中間部の流通孔の孔径を0.65mmとし、外周部の流通孔の孔径を0.75mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてバックプレートを作製した。
【0058】
[実施例3]
バックプレートとして、下記に示すバックプレートBを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム成形体およびハニカム構造体を得た。
(バックプレートBの作製)
上記バックプレート用板状部材に、ドリル加工で流通孔を形成した。中心から径方向外方に向けて5つの領域を設定し、中心を含む一番内側の領域(円形の領域)の流通孔の孔径を0.60mmとし、内側から2番目、3番目、4番目および5番目の領域(いずれもドーナツ状の領域)の流通孔の孔径を、それぞれ、0.65mm、0.70mm、0.75mm、0.80mmと外方に向けて段階的に大きく設定したこと以外は実施例1と同様にしてバックプレートを作製した。
【0059】
[比較例1]
バックプレートを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム成形体およびハニカム構造体を得た。
【0060】
[比較例2]
バックプレートとして、下記に示すバックプレートCを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム成形体およびハニカム構造体を得た。
(バックプレートCの作製)
上記バックプレート用板状部材に、ドリル加工で流通孔を形成した。面内において形成される多数の流通孔の孔径を実質的に変化させることなく(中央部、中間部および外周部において)、孔径0.75mmの流通孔を形成したこと以外は実施例1と同様にしてバックプレートを作製した。
【0061】
<評価>
実施例および比較例について、押出し量のバラツキ、曲がり度、真円度、セルピッチのバラツキ、外周壁の厚みのバラツキ、電極層の厚みのバラツキおよび発熱ムラを評価した。評価方法は下記のとおりである。評価結果を表1にまとめる。
【0062】
1.押出し量のバラツキ
上記坏土を、上記口金を装着した押出し成形機により、押出し速度20mm/秒の条件で押出し長さが5.0cm~10.0cmとなるまで押し出し、押出し部を切断して測定用成形体を得た。得られた測定用成形体を長さ方向に沿って縦半分に切断し、
図6に示すように、最も多く押し出された箇所の押出し長さと最も少なく押し出された箇所の押出し長さとの差(高低差、凸度)を測定した。
2.曲がり度および真円度
レーザー変位計(レーザーセンサー、Micro-Epsilon社製)を用いて得られたハニカム構造部の曲がり度および真円度を評価した。具体的には、得られたハニカム乾燥体の長さ方向の上端部(先端から6mmの部位)、下端部(終端から6mmの部位)および中央部(上端部と下端部との中間)の3点について外周形状を測定した。得られた測定データを、基準の外周形状に対してベストフィット処理を行い、基準値との差の絶対値を求めた。
なお、ハニカム焼成体(ハニカム構造部)の真円度および曲がり度は、ハニカム乾燥体の真円度および曲がり度と同程度(具体的には、ハニカム乾燥体の真円度および曲がり度に対して最大でも0.05mm大きくなる程度)であった。
3.セルピッチのバラツキ
CNC画像測定システム(ニコン社製、「NEXIV」)により得られたハニカム構造部のセルピッチを測定し、セルピッチのバラツキを評価した。具体的には、断面形状が六角形のセルの三方向(一組の対向する隔壁に対し直交する方向)において、それぞれ、71か所測定し、得られた測定値とその平均値との差の絶対値を求めた。
4.外周壁の厚みのバラツキ
得られたハニカム構造部について、中心角で45°おきに、外周壁の厚みをデジタルマイクロスコープ(サンコー株式会社製、「Dino-Lite」)により8か所測定し、得られた測定値とその平均値との差の絶対値を求め、外周壁の厚みのバラツキを評価した。
5.電極層の厚みのバラツキ
得られたハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する複数(先端と終端を含み、所定の間隔をあけた5か所)の断面における電極層の厚みを、レーザー測長機により各断面の周方向において等間隔に6点(計30か所)測定し、得られた測定値の最大値と最小値の差を求め、電極層の厚みのバラツキを評価した。
6.発熱ムラ
得られたハニカム構造体の所定の間隔をあけた(長さ方向に)4ヶ所に、それぞれ、1.5kwの電力を直流で20秒間流した後、ハニカム構造体の温度をサーモカメラにて長さ方向から測定し、最も温度が高い部位の温度と最も温度が低い部位の温度との差を算出することにより、発熱ムラを評価した。
【0063】
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
10 ハニカム構造部、12 セル、14 隔壁、16 外周壁、20 電極層、30 ハニカム構造体、31 中央部、32 外周部、33 中間部、50 口金、60 口金本体、65 導入部、65a 裏孔、66 成形部、66a スリット、70 バックプレート、70a 流通孔。