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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014944
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】建物外装及び建物外装の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20230124BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20230124BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20230124BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230124BHJP
   E04G 23/03 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E04D3/00 M ETD
E04D3/00 D
E04D13/18
H02S20/23 Z
E04G23/02 H
E04G23/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119188
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】506430026
【氏名又は名称】株式会社トヨコー
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】豊澤 一晃
(72)【発明者】
【氏名】臼木 和臣
(72)【発明者】
【氏名】勝又 憲史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】河端 成昭
【テーマコード(参考)】
2E108
2E176
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN01
2E108BN05
2E108BN06
2E108CC02
2E108CC05
2E108DF03
2E108ER08
2E108FF08
2E108GG01
2E108GG15
2E108GG20
2E108KK01
2E108LL01
2E108NN07
2E176AA23
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】構造を簡素化する建物外装及び建物外装の施工方法を提供する。
【解決手段】建物躯体10に取り付けられた既設外装材20に取り付けられた支持部材40と、支持部材によって既設外装材との間に空間部Sを有する状態で取り付けられる新設外装材60と、空間部内に充填剤を充填して形成された充填剤層70とを備え、支持部材は、当該支持部材を挟んで配置される一対の充填剤層が分割されるよう区画する構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に取り付けられた既設外装材に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材によって前記既設外装材との間に間隔を有する状態で取り付けられる新設外装材と、
前記新設外装材と前記既設外装材との間に充填剤を充填して形成された充填剤層とを備え、
前記充填剤層は、前記支持部材によって仕切られた複数の領域に分割されていること
を特徴とする建物外装。
【請求項2】
前記新設外装材は複数の部材を接合して構成され、
前記支持部材は、前記複数の部材の接合部に沿って配置されること
を特徴とする請求項1に記載の建物外装。
【請求項3】
前記既設外装材は凹凸形状を有し、前記新設外装材は前記既設外装材の前記凹凸形状に沿うように形成された凹凸形状を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物外装。
【請求項4】
前記既設外装材から突出した突出部材を備え、
前記支持部材は前記突出部材を介して前記既設外装材に取り付けられること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の建物外装。
【請求項5】
前記既設外装材は、周期的な凹凸形状が形成された波型スレート材又は折板材であり、
前記突出部材は、前記凹凸形状の凸部から突出しかつ前記既設外装材を前記建物躯体に取り付ける締結部材であること
を特徴とする請求項4に記載の建物外装。
【請求項6】
前記新設外装材は、前記支持部材を貫通する前記締結部材を用いて前記支持部材に取り付けられること
を特徴とする請求項5に記載の建物外装。
【請求項7】
前記支持部材は、前記既設外装材の前記凸部に沿って延在すること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の建物外装。
【請求項8】
前記充填剤層の前記支持部材の長手方向における少なくとも一方の端部に、前記既設外装材の前記凹凸形状に沿った端面形状を有する充填剤漏出防止部材を設けたこと
を特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の建物外装。
【請求項9】
前記支持部材と前記既設外装材との間に挟持される弾性部材を備えること
を特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の建物外装。
【請求項10】
前記新設外装材は太陽光パネルを有すること
を特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の建物外装。
【請求項11】
前記充填剤は、未硬化時に流動性を有する発泡性樹脂材料であること
を特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の建物外装。
【請求項12】
建物躯体に取り付けられた既設外装材に支持部材を取り付け、
前記支持部材によって、新設外装材を前記既設外装材との間に空間部を有しかつ前記空間部が前記支持部材によって分割されるよう区画された状態で取り付け、
分割された前記空間部のそれぞれに充填剤を充填して充填剤層を形成すること
を特徴とする建物外装の施工方法。
【請求項13】
前記新設外装材を複数の部材を接合して構成し、
前記支持部材を前記複数の部材の接合部に沿って配置すること
を特徴とする請求項12に記載の建物外装の施工方法。
【請求項14】
前記既設外装材は凹凸形状を有し、前記新設外装材は前記既設外装材の前記凹凸形状に沿うように形成された凹凸形状を有すること
を特徴とする請求項12又は請求項13に記載の建物外装の施工方法。
【請求項15】
前記支持部材によって分割された複数の空間部に順次充填剤を充填すること
を特徴とする請求項12から請求項14までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【請求項16】
前記支持部材は、前記既設外装材から突出した突出部材を介して前記既設外装材に取り付けられること
を特徴とする請求項12から請求項15までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【請求項17】
前記既設外装材は、周期的な凹凸形状が形成された波型スレート材又は折板材であり、
前記突出部材は、前記凹凸形状の凸部から突出しかつ前記既設外装材を前記建物躯体に取り付ける締結部材であること
を特徴とする請求項16に記載の建物外装の施工方法。
【請求項18】
前記新設外装材は、前記支持部材を貫通する前記締結部材を用いて前記支持部材に取り付けられること
を特徴とする請求項17に記載の建物外装の施工方法。
【請求項19】
前記支持部材は、前記既設外装材の前記凸部に沿って延在すること
を特徴とする請求項17又は請求項18に記載の建物外装の施工方法。
【請求項20】
前記空間部に前記充填剤を充填する前に、前記空間部の前記支持部材の長手方向における少なくとも一方の端部に、前記既設外装材の前記凹凸形状に沿った端面形状を有する充填剤漏出防止部材を設けること
を特徴とする請求項17から請求項19までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【請求項21】
前記支持部材と前記既設外装材との間に挟持された状態で弾性部材を設けること
を特徴とする請求項12から請求項20までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【請求項22】
前記新設外装材に太陽光パネルを設けること
を特徴とする請求項12から請求項21までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【請求項23】
前記充填剤は、未硬化時に流動性を有する発泡性樹脂であること
を特徴とする請求項12から請求項22までのいずれか1項に記載の建物外装の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外装及び建物外装の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば波型スレートや折板を屋根材(葺き材)とする建物において、劣化あるいは損傷した屋根の補修や、外断熱を目的として、既設の外装材である屋根材を、新設外装材である新規の屋根材によって覆うカバー工法が知られている。
このようなカバー工法に関する技術として、例えば特許文献1には、既設折板屋根の上方に、新設折板屋根を支持する支持具、及び、新設折板屋根と既設折板屋根との間の空間を区画するスペーサ材を介して、新設折板屋根を既設折板屋根との間に間隔を有する状態で取り付け、新設折板屋根と既設折板屋根との間隔全体に注入発泡樹脂を充填することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平 1-142153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、新設屋根材と既設屋根材との間隔全体に発泡剤を充填する場合、このような現場発泡の樹脂材料は例えば注入後数十秒から数分程度で発泡、硬化が進むことから、例えば屋根全面にわたって比較的多量の樹脂材料を均一かつ欠陥なく注入することは困難であり、特に工場や倉庫などの大型の建物の場合には現実的ではない。
これに対し、引用文献1には、新設屋根材を支持する支持具とは別に、合成樹脂製の角柱状のスペーサ材を新設屋根材と既設屋根材との間に配置し、一度に充填剤を注入する領域を分割することが記載されている。
しかし、このように新設屋根材を支持する部材とは別にスペーサ材を設置した場合、建物外装の構造が複雑化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、構造を簡素化する建物外装及び建物外装の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る建物外装は、建物躯体に取り付けられた既設外装材に取り付けられた支持部材と、前記支持部材によって前記既設外装材との間に間隔を有する状態で取り付けられる新設外装材と、前記新設外装材と前記既設外装材との間に充填剤を充填して形成された充填剤層とを備え、前記充填剤層は、前記支持部材によって仕切られた複数の領域に分割されていることを特徴とする。
ここで、外装材とは、典型的には、建物外装が屋根である場合には屋根材であり、建物外装が壁である場合には壁材である。
これによれば、充填剤層が形成される領域の分割を、新設外装材を支持する支持部材によって行うことにより、新設外装材を支持する支持具とは別に、領域を分割するためのスペーサ材等を設置する従来技術に対して、建物外装の構造を簡素化することができる。
【0006】
本発明において、前記新設外装材は複数の部材を接合して構成され、前記支持部材は、前記複数の部材の接合部に沿って配置される構成とすることができる。
これによれば、新設外装材が複数の部材に分割されることにより、資材の準備や取扱いを容易化することができる。また、支持部材を複数の部材の接合部に沿って配置することにより、各部材の連結及び支持を簡単な構成により確実に行うことができる。
【0007】
本発明において、前記既設外装材は凹凸形状を有し、前記新設外装材は前記既設外装材の前記凹凸形状に沿うように形成された凹凸形状を有する構成とすることができる。
これによれば、既設外装材が凹凸形状を有する例えば波型スレート材や折板材である場合であっても、既設外装材と新設外装材との間隔を小さくして充填に必要な充填剤の量を抑制することができ、建物外装の軽量化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記既設外装材から突出した突出部材を備え、前記支持部材は前記突出部材を介して前記既設外装材に取り付けられる構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により適切に支持部材を既設外装材に取り付けることができる。
本発明において、前記既設外装材は、周期的な凹凸形状が形成された波型スレート材又は折板材であり、前記突出部材は、前記凹凸形状の凸部から突出しかつ前記既設外装材を前記建物躯体に取り付ける締結部材である構成とすることができる。
これによれば、既設外装材を建物躯体に取り付ける例えばフックボルト等の既設の締結部材を用いることにより、支持部材をより容易に既設外装材に取り付けることができる。
本発明において、前記新設外装材は、前記支持部材を貫通する前記締結部材を用いて前記支持部材に取り付けられる構成とすることができる。
これによれば、締結部材が支持部材を貫通するよう構成し、新設外装材及び支持部材を共締めすることにより、部品点数を低減して構造を簡素化することができる。
【0009】
本発明において、前記支持部材は、前記既設外装材の前記凸部に沿って延在する構成とすることができる。
これによれば、支持部材が既設外装材の凸部に沿って延在することにより、長手方向にわたって広範囲で新設外装材を支持する根太として機能し、簡単な構成により新設外装材の支持強度を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記充填剤層の前記支持部材の長手方向における少なくとも一方の端部に、前記既設外装材の前記凹凸形状に沿った端面形状を有する充填剤漏出防止部材を設けた構成とすることができる。
これによれば、既設外装材の凹凸形状に関わらず充填剤の漏出を防止し、施工品質を向上することができる。
【0011】
本発明において、前記支持部材と前記既設外装材との間に挟持される弾性部材を備える構成とすることができる。
これによれば、支持部材と既設外装材との間のシール性を良好として充填剤の漏出を防止し、施工品質をより向上することができる。
【0012】
本発明において、前記新設外装材は太陽光パネルを有する構成とすることができる。
これによれば、支持部材及び新設外装材を利用して太陽光パネルを簡単な構造により建物外装に取り付けることができる。
【0013】
本発明において、前記充填剤は、未硬化時に流動性を有する発泡性樹脂材料である構成とすることができる。
これによれば、充填剤層に良好な断熱性を持たせることが可能であり、さらに建物外装の補強効果も得ることができる。
【0014】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る建物外装の施工方法は、建物躯体に取り付けられた既設外装材に支持部材を取り付け、前記支持部材によって、新設外装材を前記既設外装材との間に空間部を有しかつ前記空間部が前記支持部材によって分割されるよう区画された状態で取り付け、分割された前記空間部のそれぞれに充填剤を充填して充填剤層を形成することを特徴とする。
本発明において、前記新設外装材を複数の部材を接合して構成し、前記支持部材を前記複数の部材の接合部に沿って配置する構成とすることができる。
本発明において、前記既設外装材は凹凸形状を有し、前記新設外装材は前記既設外装材の前記凹凸形状に沿うように形成された凹凸形状を有する構成とすることができる。
本発明において、前記支持部材によって分割された複数の空間部に順次充填剤を充填する構成とすることができる。
【0015】
本発明において、前記支持部材は、前記既設外装材から突出した突出部材を介して前記既設外装材に取り付けられる構成とすることができる。
本発明において、前記既設外装材は、周期的な凹凸形状が形成された波型スレート材又は折板材であり、前記突出部材は、前記凹凸形状の凸部から突出しかつ前記既設外装材を前記建物躯体に取り付ける締結部材である構成とすることができる。
本発明において、前記新設外装材は、前記支持部材を貫通する前記締結部材を用いて前記支持部材に取り付けられる構成とすることができる。
本発明において、前記支持部材は、前記既設外装材の前記凸部に沿って延在する構成とすることができる。
本発明において、前記空間部に前記充填剤を充填する前に、前記空間部の前記支持部材の長手方向における少なくとも一方の端部に、前記既設外装材の前記凹凸形状に沿った端面形状を有する充填剤漏出防止部材を設ける構成とすることができる。
本発明において、前記支持部材と前記既設外装材との間に挟持された状態で弾性部材を設ける構成とすることができる。
本発明において、前記新設外装材に太陽光パネルを設ける構成とすることができる。
本発明において、前記充填剤は、未硬化時に流動性を有する発泡性樹脂である構成とすることができる。
【0016】
上述した建物外装の施工方法に係る各発明においても、建物の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、構造を簡素化する建物外装及び建物外装の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した建物外装の施工方法の第1実施形態において施工対象となる屋根の施工前の状態を示す模式的断面図である。
図2図1の屋根に支持部材を取り付けた状態を示す図である。
図3図2の屋根に捨て型枠材を取り付けた状態を示す図である。
図4図3の屋根に充填剤を充填した状態(第1実施形態の建物外装)を示す図である。
図5】第1実施形態の建物外装の施工方法における充填剤の注入方法の一例を模式的に示す図である。
図6】第1実施形態の建物外装においてスレートの流れ方向における充填剤層の端部に設けられる封止部材の模式的外観斜視図である。
図7】本発明を適用した建物外装の第2実施形態である屋根の模式的断面図である。
図8】本発明を適用した建物外装の第3実施形態である屋根の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した建物外装及び建物外装の施工方法の第1実施形態について説明する。
第1実施形態において、一例として建物は例えば鉄骨ラーメン構造の躯体を有し、工場や倉庫等に用いられる大型建物である。
また、建物外装は一例として、波型スレートを屋根材として葺いた屋根である。
【0020】
図1は、本発明を適用した建物外装の施工方法の第1実施形態において施工対象となる屋根の施工前の状態を示す模式的断面図である。
屋根1は、母屋10、スレート20、フックボルト30を有して構成されている。
母屋10は、建物の躯体上部に設けられ、屋根材であるスレート20が取り付けられる基部となる部材である。
母屋10として、例えば、鋼製のC型チャンネル材を用いることができる。
母屋10は、例えば、図示しない棟及び軒の長手方向と平行に配置されている。
母屋10は、複数本が屋根の流れ方向に分散して平行に配列される。
母屋10の側面部における高さ方向の中間部には、母屋10の長手方向に沿った溝部11が形成されている。
溝部11は、フックボルト30の下端部(フック部)が係止される部分である。
【0021】
本実施形態の既設外装材であるスレート20は、母屋10の上に取り付けられる屋根材(屋根葺き材)である。
スレート20は、例えば、主原料のセメントと補強繊維とを加圧成型して形成されている。
スレート20は、一例として、上方から見たときに突条状に突出した凸部21と、上方から見たときに溝状に凹んだ凹部22とを、所定のピッチで繰り返し配列した断面形状を有する波型スレートである。
一部の凸部21の頂部には、フックボルト30が挿入されるボルト穴23が設けられている。
例えば、図1の例では、3本の凸部21に対して1本に、ボルト穴23が周期的に設けられている。
【0022】
フックボルト30は、スレート20を母屋10に締結する機械的締結手段である。
フックボルト30は、例えば、鋼製の線材の下端部をフック状に曲げ加工するとともに、上半部にネジ加工をして形成されている。
フックボルト30の下端部は、母屋10の溝部11に引掛けられた(係合した)状態となっている。
フックボルト30の上部は、ボルト穴23を介してスレート20の上面側へ突出している。
フックボルト30のネジ部には、ナット31が締結される。
ナット31は、ワッシャ32を介してスレート20の上面部に取り付けられる。
【0023】
以下、第1実施形態の建物外装の施工方法について説明する。
先ず、上述した屋根1において、フックボルト30のナット31、ワッシャ32の上から、支持部材40を取り付ける。
図2は、図1の屋根に支持部材を取り付けた状態を示す図である。
支持部材40は、スレート20において、フックボルト30が取り付けられる凸部21の長手方向に沿って配置される長尺の根太状の部材である。
支持部材40は、例えば、アルミニウム系合金などの金属系材料や、樹脂系材料、防水防腐処理を施した木系材料などによって形成することができる。
【0024】
支持部材40は、例えば、本体部41、シール部材収容部42、突出部43、ボルト穴44等を一体に形成して構成されている。
支持部材40を長手方向と直交する平面で切って見た横断面形状(あるいは端面形状)において、本体部41は、例えば矩形状に形成されている。
本体部41の下面部は、シール部材50を挟持した状態で、スレート20の表面と間隔を隔てて対向して配置される。
本体部41の上面部には、後述する捨て型枠材60の端縁部が載置される。
本体部41の側面部は、支持部材40を挟んだ両側の空間部にそれぞれ充填剤を注入する際に、一方の空間部から他方の空間部へ充填剤が漏出しないよう堰き止める機能を有する。
【0025】
シール部材収容部42は、本体部41の下面部を、矩形断面の溝状に凹ませて形成されている。
スレート20へ支持部材40を取り付けた際、シール部材収容部42には、シール部材50が圧縮された状態で収容される
【0026】
突出部43は、本体部41の上面部の幅方向における中央部を段状に上方に張り出させて形成された部分である。
突出部43は、支持部材40の長手方向に沿って、支持部材40の全長にわたって延在する。
ボルト穴44は、フックボルト30が挿入される穴であって、本体部41の下面から突出部43の上面まで貫通して形成されている。
【0027】
シール部材50は、支持部材40の下部とスレート20の上面部との間を水密状態でシールするものである。
シール部材50は、例えばブチル系ゴムなどの弾性を有する材料によって、支持部材40の長手方向に沿って延在する長尺部材として形成されている。
シール部材50は、支持部材40のシール部材収容部42の内部に、フックボルト30の長手方向に圧縮された状態で保持される。
シール部材50の下面部は、シール部材50自体の弾性力によって、スレート20の上面部に密着している。
【0028】
次に、支持部材40を介して、屋根1に捨て型枠材60を取り付ける。
図3は、図2の屋根に捨て型枠材を取り付けた状態を示す図である。
第1実施形態においては、捨て型枠材60は、充填剤を充填し硬化させた後に残置される、いわゆる捨て型枠であり、施工後における新設屋根材(新設外装材・葺き材)として機能するものである。
【0029】
本実施形態の新設外装材である捨て型枠材60は、例えば、アルミニウム、亜鉛、シリコンの合金をメッキした鋼板によって構成することができる。
捨て型枠材60は、例えば、平坦なプレート状に形成されるとともに、間隔を隔てて隣り合った一対の支持部材40の間にわたして設けられる。
すなわち、捨て型枠材60は、分割された複数の部材を接合して構成され、支持部材40は、複数の部材の接合部に沿って配置されている。
捨て型枠材60の端縁部は、支持部材40の本体部41の上面部であって、突出部43が設けられた領域以外の領域に載置される。
支持部材40の突出部43は、隣接して設置された一対の捨て型枠材60の端縁に挟まれた状態となる。
【0030】
なお、突出部43の本体部41からの突出高さは、例えば捨て型枠材60の厚さと同等とすることができる。
これにより、突出部43の上面部と、捨て型枠材60の上面部とは、ほぼ同一平面上に配置されることになる。
ここで、スレート20の凸部21と凹部22とのピッチ(繰り返し周期)、及び、フックボルト30が設けられる間隔が既知である場合には、予め所定の寸法の捨て型枠材60を準備することにより、現場で捨て型枠材60の幅などを調整(トリミング)することは不要となる。
支持部材40の突出部43の上面部は、一対の捨て型枠材60に挟まれた状態で、屋根1の流れ方向に沿って目地状に屋根1の上部に露出するが、突出部43の上面には例えば防水や補強のため塗装を施したり、図示しないカバーを被せてもよい。
【0031】
捨て型枠材60は、フックボルト30にネジ結合されるナット33、及び、ナット33と捨て型枠材60との間に挟持されるワッシャ34を用いて、支持部材40に取り付けられる。
捨て型枠材60の下面とスレート20の上面との間には、空間部Sが形成される。
屋根1には、支持部材40によって仕切られた複数の空間部S(図3に示す空間部S1,S2,S3・・)が、棟木及び軒先の延在方向に複数配列して構成される。
【0032】
次に、捨て型枠材60とスレート20との間の空間部Sに、未硬化状態では流動性を有する充填剤を注入し、硬化させて、充填剤層70を形成する。
図4は、図3の屋根に充填剤を充填した状態(第1実施形態の建物外装)を示す図である。
充填剤として、例えば、硬化前の状態では流動性を有する発泡性樹脂材料を用いることができる。
例えば、充填剤として、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、又は、これらの混合物等の樹脂製発泡剤を用いることができる。
例えば、主剤としてポリオール、ポリピレングリコール(PPG)を主成分とする樹脂を用いることができる。
【0033】
また、フェノール系樹脂、又は、ノボラック系熱可塑性樹脂を主成分としたフェノール系樹脂の主剤、又は、それらの混合物を主剤として用いることもできる。
これらの主剤に対し、イソシアネート等の架橋剤を、混合比略1:1で混合して発泡させ、充填剤、添加剤等を加えて充填剤とする。
イソシアネートはノンフロン発泡剤の一種であり、水との反応により二酸化炭素ガスを発生し、材料を発泡させる機能を有する。
この充填剤が屋根1の空間部S内に注入されると、直ちに発泡を開始して、例えば数十秒程度で、当該空間部S内に、充填剤層70が形成される。
なお、空間部S内に、充填剤の注入に先立ち、例えば防水性、耐火性、補強性、耐ショック性などの機能性を有するシート状の部材を設置し、このシート状の部材を充填剤層70の内部に埋設させた構成としてもよい。
【0034】
第1実施形態においては、支持部材40によって相互に区画された複数の空間部Sが軒方向に沿って形成される。
充填剤の注入は、各空間部S(S1,S2,S3・・)に順次行うことができる。
また、捨て型枠材60が、屋根1の流れ方向にわたって複数の部材に分割される場合には、例えば、軒側(下方側)から捨て型枠材60を設置して空間部S内に充填剤を注入し、その後より上方の捨て型枠材60の設置、充填剤の充填を順次繰り返すようにしてもよい。
【0035】
また、充填剤の注入は、例えば、屋根1の流れ方向における上方側に設けられた注入口から行い、屋根の流れ方向に沿って、充填剤が自重で軒側へ流下するようにしてもよい。
また、屋根の流れ方向に沿った寸法が比較的大きい場合には、チューブTを空間部Sの内部に挿入した状態で、チューブTの先端部から充填剤を注入するとともに、空間部Sの下部から充填剤層70が形成された領域が上方へ進展するのに応じて、チューブTを上方へ引き抜く構成とすることができる。
図5は、第1実施形態の建物外装の施工方法における充填剤の注入方法の一例を模式的に示す図である。
図5(a)、図5(b)は、施工中のチューブT及び充填剤層70の状態を、時系列で順次示している。
空間部Sの下端部には、充填剤を堰き止める機能を有する封止部材80が設けられる。
封止部材80について、以下詳細に説明する。
【0036】
第1実施形態において、充填剤層70が形成される空間部Sのスレート20の流れ方向に沿った両端部には、充填剤の漏出を防止(シール)するため、以下説明する封止部材が設けられる。
図6は、スレートの流れ方向における充填剤層の端部に設けられる封止部材の模式的外観斜視図である。
封止部材80は、例えば、弾性を有する樹脂系材料などによって一体に形成された充填剤漏出防止部材であって、下面部81、上面部82、側面部83、端面部84等を有する。
【0037】
下面部81は、スレート20の上面部と当接する部分である。
下面部81は、スレート20の凸部21、凹部22の形状に適合し、充填剤が漏出しないよう実質的に密着するよう凹凸面として形成されている。
上面部82は、捨て型枠材60の下面部と当接する部分である。
上面部82は、捨て型枠材60の下面部と、充填剤が漏出しないよう実質的に密着する平面状に形成されている。
側面部83は、下面部81の側縁部と上面部82の側縁部との間にわたして設けられた平面状の部分である。
側面部83は、封止部材80の使用時に、例えば、屋根1の流れ方向と直交する平面に沿って配置される構成とすることができる。
側面部83における一方側の面は、充填剤を充填する際に充填剤を堰き止める機能を有し、充填剤が硬化して充填剤層70を形成した後は、充填剤層70と当接する。
端面部84は、封止部材80の使用時に、軒方向の両端部にそれぞれ設けられた平面部である。
封止部材80の両端部に設けられた端面部84は、それぞれ間隔を隔てて対向する支持部材40の本体部41における側面と当接し、これらの間から充填剤が漏出することを防止する機能を有する。
【0038】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)充填剤層70が支持部材40によって仕切られた複数の領域に分割されていることから、施工対象となる屋根1の大きさに対して小さく分割された領域(空間部S1、S2・・)毎に、充填剤の注入を順次行うことが可能となり、各回の注入において取り扱う充填剤を少量として、注入作業を容易化するとともに、充填すべき範囲に良好に充填剤が回らずに欠陥が生ずることを防止できる。
また、空間部S1,S2・・の分割を、捨て型枠材60を支持する支持部材40によって行うことにより、例えば新設屋根材を支持する支持具とは別にスペーサ材等を設置する技術に対して資材の準備や施工を簡素化するとともに、屋根1の軽量化を図ることができる。
さらに、空間部S1,S2・・の内部に、他の部材(一例として屋根材を支持するための支持具等)が介在する必要がなく、充填剤の流れを阻害することがないため、充填剤の充填状態を良好として施工品質を向上することができる。
(2)新設外装材が複数の捨て型枠材60に分割された構成とすることにより、個々の捨て型枠材60をコンパクトにして資材の準備や取扱いを容易化することができる。また、支持部材40を各捨て型枠材60の接合部に沿って配置することにより、捨て型枠材60の連結及び支持を簡単な構成により確実に行うことができる。
(3)スレート20から上方に突出し、スレート20を建物躯体である母屋10に取り付ける既設の締結部材であるフックボルト30を用いて、支持部材40をスレート20に取り付けることにより、簡単な構成により適切に支持部材40をスレート20に取り付けることができる。
(4)支持部材40を貫通し上方に突出したフックボルト30を用いて捨て型枠材60を支持部材40に共締めし、取り付けることにより、部品点数を低減して構造を簡素化することができる。
(5)支持部材40がスレート20の凸部21に沿って延在することにより、長手方向にわたって広範囲で捨て型枠材60を支持する根太として機能し、簡単な構成により捨て型枠材60の支持強度を高めることができる。
(6)充填剤層70の支持部材40の長手方向における端部に、スレート20の凹凸形状に沿った下面部21の形状を有する封止部材80を設けたことにより、スレート20の凹凸形状に関わらず充填剤の漏出を防止し、施工品質を向上することができる。
(7)支持部材40とスレート20との間に挟持され、弾性体からなるシール部材50を備えることにより、支持部材40とスレート20との間のシール性を良好として充填剤の漏出を防止し、施工品質をより向上することができる。
(8)充填剤層70を未硬化時に流動性を有する発泡性樹脂材料によって形成することにより、充填剤層70に良好な断熱性を持たせることが可能であり、さらに屋根1の補強効果も得ることができる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した建物外装及び建物外装の施工方法の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
第2実施形態においては、第1実施形態と同様に、捨て型枠材60が充填剤層70の形成後に残置されるいわゆる捨て枠式の構成である。
図7は、第2実施形態の建物外装である屋根の模式的断面図である。
第2実施形態においては、捨て型枠材60を、スレート20と同じ周期で凸部61と凹部62とが繰り返し入れるした波型状に形成したことを特徴とする。
凸部61は、スレート20の凸部21の上方に配置されている。
凹部62は、スレート20の凹部22の上方に配置されている。
第2実施形態において、捨て型枠材60として、例えばスレート20と同様の波型スレートを用いることができる。
【0040】
上述した第2実施形態においては、捨て型枠材60をスレート20と同様の周期の凹凸形状を有する波型に形成し、その凹凸形状をスレート20の凹凸形状に沿うように(凸部21,61、凹部22,62が屋根1の主平面の法線方向に重なるように)配置したことにより、スレート20が波型の凹凸を有する場合であっても、スレート20と捨て型枠材60との間の空間部の容積を小さくすることができる。
これにより、充填剤の注入量を抑制することができ、充填剤の準備や注入に要する工程を簡素化し、かつ、充填剤の材料費を低減するとともに、屋根1の軽量化を図ることができる。
【0041】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した建物外装及び建物外装の施工方法の第3実施形態について説明する。
第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、捨て型枠材60が充填剤層70の形成後に残置されるいわゆる捨て枠式の構成である。
図8は、第2実施形態の建物外装である屋根の模式的断面図である。
第3実施形態の屋根においては、捨て型枠材60の上面部に、太陽光パネル110が設けられている。
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、支持部材40及び捨て型枠材60を利用して太陽光パネル110を簡単な構造により建物外装に取り付けることができる。
【0042】
(変形例)
本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)建物外装及び建物外装の施工方法の構成は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。
例えば、各実施形態における建物外装は既設の屋根材として波型スレートが葺かれた屋根であるが、これに限らず、例えば折板などの波型スレート以外の屋根材を有する屋根や、壁など屋根以外の外装であってもよい。また、建物の種類、用途や躯体の構成も特に限定されない。
(2)各実施形態では、支持部材及び新設外装材の固定に既設のフックボルトを用いているが、既設のフックボルトに劣化が生じていたり、長さが不足する場合には、新規のフックボルトに交換してから本発明の施工方法を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 屋根 10 母屋
11 溝部 20 スレート
21 凸部 22 凹部
23 ボルト穴
30 フックボルト 31 ナット
32 ワッシャ 33 ナット
34 ワッシャ 40 支持部材
41 本体部 42 シール部材収容部
43 突出部 44 ボルト穴
50 シール部材 60 捨て型枠材
70 充填剤層 80 封止部材
81 下面部 82 上面部
83 側面部 84 端面部
110 太陽光パネル
S(S1,S2,S3・・) 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8