(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149442
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】複合板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/14 20060101AFI20231005BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20231005BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231005BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20231005BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B37/14 Z
B32B15/08 Z
B32B27/16 101
B32B27/20 A
B29C63/02
B41J2/01 123
B41J2/01 129
B41J2/01 121
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058018
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 凌佑
【テーマコード(参考)】
2C056
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
2C056FB04
2C056HA42
2C056HA44
4F100AB01A
4F100AB03
4F100AB04
4F100AB10
4F100AB18
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
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4F100CA13
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4F100DE01
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100EH61
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4F100JB14
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4F211AD03
4F211AD08
4F211AR06
4F211SA07
4F211SC06
4F211SD01
4F211SJ13
4F211SN06
4F211SN09
4F211SN10
4F211SP01
4F211SP05
(57)【要約】
【課題】金属板の表面に、印刷用の下地層を形成し、この下地層に印刷模様を付与した上でラミネートフィルムを貼り付けた場合であっても、複合板の反りを低減することができる複合板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属板21の表面に、紫外線硬化型の樹脂からなる下地用インク粒子22dを均一に堆積させた後、紫外線を照射することで下地用インク粒子22dを硬化させることにより、金属板21の表面に印刷用の下地層22を形成し、下地層22に、印刷用インク粒子24aを硬化させることにより、所定の印刷模様24Aを付与する印刷工程S3と、印刷模様24Aが付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層25を介して、熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルム26を、下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付与された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる金属板に印刷模様が付与された複合板の製造方法であって、
前記金属板の表面に、紫外線硬化型の樹脂からなる下地用インク粒子を均一に堆積させた後、紫外線を照射することで前記下地用インク粒子を硬化させることにより、前記金属板の表面に印刷用の下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層に、紫外線硬化型の樹脂からなる印刷用インク粒子を付着させた後、紫外線を照射することで前記印刷用インク粒子を硬化させることにより、所定の印刷模様を付与する印刷工程と、
前記印刷模様が付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層を介して、熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルムを、前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、前記印刷模様が付与された前記下地層に対して熱圧しながら、前記印刷模様が付与された前記下地層に前記ラミネートフィルムを貼り付けて、前記金属板の表面にラミネート加工を行うラミネート加工工程と、を含むことを特徴とする複合板の製造方法。
【請求項2】
前記ラミネート加工工程において、前記金属板の裏面を、前記ラミネートフィルムの熱圧温度に応じた加熱温度に加熱しながら、前記ラミネート加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の複合板の製造方法。
【請求項3】
前記下地用インク粒子の樹脂と、前記印刷用インク粒子の樹脂とは、同種の樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合板の製造方法。
【請求項4】
前記印刷工程において、前記印刷用インク粒子により複数の凸条が一方向に沿って形成された前記印刷模様を付与し、
前記ラミネート加工工程において、前記印刷模様が付与された前記凸条が延在する方向に沿って、前記下地層の一端側から前記下地層の他端側に向かって、前記ラミネートフィルムを熱圧しながら、前記ラミネートフィルムを貼り付けることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の複合板の製造方法。
【請求項5】
前記印刷工程において、前記印刷模様からなる印刷層を形成し、
前記ラミネート加工工程において、前記ラミネートフィルムに形成された前記粘着層の厚さが、前記印刷層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の複合板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材となる金属板に印刷模様が付与された複合板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、たとえば、特許文献1には、以下に示すような複合板の製造方法が開示されている。この製造方法では、まず、木質ボードの表面の一部が露出するように、紫外線により硬化した第1樹脂からなるインク層を形成する。次に、インク層が形成された木質ボードの表面を覆うように、第1樹脂とは異なる第2樹脂を主剤とした可視光線を透過する表面保護層を、熱圧成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す複合板の製造方法を利用して、複合板の基材に金属板を用いた場合、金属板に印刷模様を付与する場合には、印刷模様を鮮明にするために下地層を形成することがある。この下地層として、樹脂シートを貼り付けた場合には、ラミネートフィルムを貼り付けるときの熱により、下地層となる樹脂シートも膨張(延伸)し、その後、収縮する。この下地層が膨張(延伸)した状態で、ラミネートフィルムが貼り付けられると、ラミネートフィルムにより下地層が拘束されるため、下地層が収縮しようとすると、金属板に曲げ応力が発生することがある。この結果、複合板の反りが発生し易くなり、複合板に僅かに反りが発生すると、ラミネートフィルムの表面の意匠性が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属板の表面に、印刷用の下地層を形成し、この下地層に印刷模様を付与した上でラミネートフィルムを貼り付けた場合であっても、複合板の反りを低減することができる複合板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る複合板の製造方法は、基材となる金属板に印刷模様が付与された複合板の製造方法であって、前記金属板の表面に、紫外線硬化型の樹脂からなる下地用インク粒子を均一に堆積させた後、紫外線を照射することで前記下地用インク粒子を硬化させることにより、前記金属板の表面に印刷用の下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層に、紫外線硬化型の樹脂からなる印刷用インク粒子を付着させた後、紫外線を照射することで前記印刷用インク粒子を硬化させることにより、所定の印刷模様を付与する印刷工程と、前記印刷模様が付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層を介して、熱可塑性樹脂からなるラミネートフィルムを、前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、前記印刷模様が付与された前記下地層に対して熱圧しながら、前記印刷模様が付与された前記下地層に前記ラミネートフィルムを貼り付けて、前記金属板の表面にラミネート加工を行うラミネート加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ラミネート加工工程において、前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様が付与された下地層に対してラミネートフィルムを熱圧する。これより、ラミネートフィルムに形成された表面状態(シボ、平滑面などの状態)を保持しながら、ラミネートフィルムの可撓性を高めた状態で、金属板の表面にラミネート加工を行うことができる。このような結果、ラミネート加工時に、下地層(または印刷層)と、ラミネートフィルムとの間に、空気が噛み込むことを抑えることができ、複合板の表面のシルバリングを抑えることができる。
【0008】
さらに、本発明では、下地層形成工程において、紫外線を照射することで下地用インク粒子を硬化させることにより、金属板の表面に印刷用の下地層を形成するので、下地層は、樹脂シートからなる下地層に比べてポーラスであり、緩衝材の如く作用する。このような結果、ラミネートフィルムを貼り付けるときの熱により、下地層は膨張(延伸)し難く、緩衝材として作用する下地層が僅かに収縮しようとするとしても、金属板に曲げ応力が発生し難くなる。このような結果、複合板の反りを抑えることができる。
【0009】
ここで、打ち抜き加工、プレス加工などの機械加工を施すことにより得られた金属板において、機械加工の部分に残留応力が存在する場合、ラミネート加工工程において、金属板を加熱すると、この残留応力が開放され、金属板が僅かに変形することがある。したがって、このような場合には、金属板の裏面を非加熱として、ラミネートフィルムを熱圧によりラミネート加工しても、下地層は、ポーラスであり、熱伝導性が低いので、金属板が加熱され難い。このため、ラミネート加工の熱により、金属板に曲げ応力が発生し難い。
【0010】
ただし、このような残留応力の影響がほとんどない場合には、より好ましい態様としては、前記ラミネート加工工程において、前記金属板の裏面を、前記ラミネートフィルムの熱圧温度に応じた加熱温度に加熱しながら、前記ラミネート加工を行う。
【0011】
この態様によれば、下地層は、樹脂材料からなるため、金属板の金属材料よりも、線膨張係数が大きいので、ラミネート加工の際に、下地層は熱により伸び易いが、この態様では、ラミネート加工の際に、裏面からの加熱により金属板も加熱されて、わずかに伸びるため、下地層の伸びに追従させることができる。これにより、下地層と金属板の熱膨張差を低減し、金属板に曲げ応力が作用することを抑えることができる。
【0012】
ここで、前記下地用インク粒子の樹脂と、前記印刷用インク粒子の樹脂とは、異種の樹脂でもよいが、より好ましい態様としては、前記下地用インク粒子の樹脂と、前記印刷用インク粒子の樹脂とは、同種の樹脂からなる。
【0013】
前記下地用インク粒子の樹脂と、前記印刷用インク粒子の樹脂とは、どちらも同種の樹脂からなるため、ラミネート加工時の熱により、下地用インク粒子の樹脂からなる下地層の膨張・収縮に、印刷用インク粒子の樹脂からなる印刷層が追従する。したがって、ラミネート加工時においても、付与した印刷模様は変化し難く、印刷工程における印刷模様を保持することができる。
【0014】
より好ましい態様としては、前記印刷工程において、前記印刷用インク粒子により複数の凸条が一方向に沿って形成された前記印刷模様を付与し、前記ラミネート加工工程において、前記印刷模様が付与された前記凸条が延在する方向に沿って、前記下地層の一端側から前記下地層の他端側に向かって、前記ラミネートフィルムを熱圧しながら、前記ラミネートフィルムを貼り付ける。
【0015】
この態様によれば、凸条同士の間に粘着剤を押し込まれ、かつ凸条に沿って空気を逃がしながら、下地層の一端側から下地層の他端側に向かって、ラミネートフィルムを熱圧することができる。このため、空気の噛み込みを抑えつつ、印刷模様を覆うようにラミネートフィルムを下地層に貼り付けることができる。
【0016】
より好ましい態様としては、前記印刷工程において、前記印刷模様からなる印刷層を形成し、前記ラミネート加工工程において、前記ラミネートフィルムに形成された前記粘着層の厚さが、前記印刷層の厚さよりも厚い。
【0017】
この態様によれば、印刷層の厚さに対して、ラミネート加工前の粘着層の厚さを厚くすることにより、粘着層に印刷層を埋設することができ、ラミネートフィルムと印刷層との間に空気が噛み込むことを抑えることができる。さらに、熱圧後にラミネートフィルムの温度が低下しても、粘着層がラミネートフィルムに均一に形成されているため、粘着層によるラミネートフィルムの収縮を吸収することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属板の表面に、印刷用の下地層を形成し、この下地層に印刷模様を付与した上でラミネートフィルムを貼り付けた場合であっても、複合板の反りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る製造方法で製造された複合板の模式的斜視図であり、(b)は、裏面側から視た斜視図であり、(c)は、(a)の複合板の要部断面図である。
【
図2】本実施形態に係る複合板の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図3】
図2に示す、下地層形成工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、下地層形成工程後の金属板の断面図である。
【
図4】
図2に示す、印刷工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、印刷層形成工程後の金属板の断面図である。
【
図5】
図2に示す、ラミネート加工工程を説明するための斜視図であり、(a)は、ラミネート加工時の金属板の模式的斜視図であり、(b)は、(a)の要部斜視図である。
【
図6】(a)は、ラミネート加工工程前の状態を説明するための断面図であり、(b)は、ラミネート加工工程後の状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る製造方法で製造された複合板の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る製造方法で製造された複合板の模式的斜視図であり、
図1(b)は、裏面側から視た斜視図であり、
図1(c)は、
図1(a)の複合板の要部断面図である。なお、
図1(c)等では、便宜上、ラミネートフィルムの厚さ26の方が、粘着層25の厚さよりも薄く描かれているが、ラミネートフィルムの厚さの方が厚い。
【0021】
1.複合板10について
図1(a)~(c)に示すように、複合板10は、印刷模様24Aが付与されており、複合板10の基材となる金属板21を備えている。金属板21は、後述するように、たとえば、ステンレス鋼板、亜鉛または錫などのめっき鋼板、アルミニウム板などからなる。金属板21の一方の表面には、下地層22、印刷層24、粘着層25、および、ラミネートフィルム26で構成される装飾層28が形成されており、その他方の表面は、露出している。
【0022】
下地層22は、紫外線硬化型の樹脂からなる下地用インク粒子22dを均一に堆積させた後、紫外線を照射することで下地用インク粒子22dを硬化させることにより、金属板21の表面に形成された層である。印刷層24は、金属板21の表面を、下地用インク粒子22dで均一に覆うように、形成されている。
【0023】
下地層22の表面には、紫外線により硬化した樹脂により、印刷模様24Aが付与されている。具体的には、印刷模様24Aは、上述した紫外線硬化型樹脂からなる印刷層24により形成されている。
図1(c)に示すように、印刷層24は、下地層22の表面の一部が露出するように、印刷用インク粒子24aを堆積されることにより、形成されていてもよく、下地層22の全体を覆ってもよい。本実施形態の如く、木目状の印刷模様24Aが付与されており、一方向に沿って(木目模様に沿って)、印刷用インク粒子24aにより、後述する複数の凸条24bが形成されていてもよい(たとえば、
図5(b)参照)。
【0024】
印刷層24が形成された下地層22には、粘着剤からなる粘着層25を介して、ラミネートフィルム26が貼り付けられている。具体的には、印刷層24が下地層22の一部を覆っている場合、印刷層24および下地層22の表面に、粘着層25を介してラミネートフィルム26が貼り付けられる。一方、印刷層24が下地層22の全体を覆っている場合には、印刷層24の表面に、粘着層25を介してラミネートフィルム26が貼り付けられる。ラミネートフィルム26は、熱可塑性樹脂からなり、ラミネートフィルム26および粘着層25は、可視光線が透過可能な樹脂材料からなる。
【0025】
本実施形態では、ラミネートフィルム26は、下地層22及び印刷層24に対して、硬質であることが好ましい。ここで、硬質とは、その表面における硬さ(ショア硬さまたはビッカース硬さ)が硬いことをいう。より好ましくは、ラミネートフィルム26を構成する熱可塑性樹脂のヤング率(縦弾性係数)は、下地層22及び印刷層24を構成する熱可塑性樹脂のヤング率(縦弾性係数)よりも、大きい。これにより、複合板10の表面の凹みまたは傷の発生等を防止することができるとともに、軟質である下地層22及び印刷層24とを、複合板10の表面から作用する衝撃に対するクッション材として作用させることができる。なお、後述するように、ラミネートフィルム26と印刷層24との間に、所定の厚さを有した粘着層25が形成されていれば、クッション性を高めることができる。
【0026】
2.複合板10の製造方法について
以下に、
図1等で説明した複合板10の製造方法について、
図2~
図6を参照しながら、説明する。
図2は、本実施形態に係る複合板の製造方法を説明するためのフロー図である。
図3は、
図2に示す、下地層形成工程を説明するための要部図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、下地層形成工程後の複合板の断面図である。
【0027】
2-1.準備工程S1について
まず、本実施形態では、
図3(a)に示すように、金属板21を準備する。金属板21が、複合板10の基材として作用するのであれば、その厚さは特に限定されないが、たとえば、0.15mm~3.0mmであることが好ましく、より好ましくは、0.5mm~2.0mmである。ここで、金属板21は、ステンレス鋼板、錫めっき鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板などを挙げることができる。以下の製造方法において、有効である。
【0028】
2-2.下地層形成工程S2について
準備工程S1で準備した金属板21に対して、下地層形成工程S2を行う。具体的には、
図3(a)および
図3(b)に示すように、金属板21の表面に、紫外線硬化型の樹脂からなる下地用インク粒子22dを均一に堆積させた後、紫外線を照射することで下地用インク粒子22dを硬化させることにより、金属板21の表面に印刷用の下地層22を形成する。
【0029】
下地層22の印刷はインクジェットプリンタを用いて行われる。本実施形態では、インクジェットプリンタのインクは、反応性オリゴマーまたは反応性モノマーに光重合開始剤が添加された紫外線硬化型樹脂と、着色剤とを少なくとも含む。たとえば、白色の着色剤を、紫外線硬化型樹脂に個別に含有したインクを準備し、このインクを用いて、無地の下地層22を印刷する。ただし、後述する印刷模様24Aの印刷と同様に、複数のインクを用いて、下地層22を印刷してもよい。
【0030】
図4(a)に示すように、インクジェットプリンタ40は、ヘッド41と照射装置42とを備えており、金属板21を搬送方向Lに搬送する搬送装置(図示せず)をさらに備えている。ただし、ヘッド41および照射装置42が、金属板21の全面を走査しながら、下地層22および後述する印刷層24を印刷する場合には、搬送装置を省略してもよい。
【0031】
本実施形態では、ヘッド41は、一般的な印刷に用いられるインクを収容し、下地層22が無地となるようにインク(下地用インク粒子22d)を噴射する。照射装置42は、下地層22に付着した樹脂粒子を硬化させる紫外線を照射する。ヘッド41と照射装置42とは、搬送方向Lと直交する方向Sに往復動する。
【0032】
これにより、搬送された金属板21の下地層22に対して、所定の印刷模様24Aを印刷し、印刷模様24Aを形成する紫外線硬化型樹脂を、硬化させることができる。なお、本実施形態では、ヘッド41と照射装置42とを個別に設けたが、たとえば、これらを一体的に構成してもよい。
【0033】
ここで、下地用インク粒子22dの紫外線硬化型樹脂(組成物)は、紫外線硬化型樹脂組成物は、紫外線硬化型モノマー・オリゴマー(アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート)、光重合開始剤、光増感剤、添加剤等を含み、着色料として、染料または顔料がさらに含有されている。紫外線硬化型モノマー・オリゴマーは、ラジカル重合型およびカチオン重合型のいずれであってもよい。下地層22の厚さは、特に限定されるものではなく、金属板21の厚さよりも薄く、たとえば、0.01~0.1mm程度であることが好ましい。
【0034】
2-3.印刷工程S3について
次に、印刷工程S3について、
図4を参照しながら、説明する。
図4は、
図2に示す、印刷工程を説明するための要部図であり、
図4(a)は、その斜視図であり、
図4(b)は、印刷層形成工程後の金属板の断面図である。
【0035】
印刷工程S3では、下地層22に、紫外線硬化型の樹脂からなる印刷用インク粒子24aを付着させた後、紫外線を照射することで印刷用インク粒子24aを硬化させることにより、所定の印刷模様を付与する。下地層22に印刷模様24Aを付与するので、金属板21に印刷模様を付与する場合に比べて、安定した模様を付与することができる。本実施形態では、印刷工程S3において、印刷用インク粒子24aにより複数の凸条24bが一方向に沿って形成された印刷模様24Aを付与する。本実施形態では、インクジェット印刷により、下地層22の表面から露出するように、印刷模様24Aからなる印刷層24を形成してもよい。
【0036】
本実施形態では、印刷模様24Aとして、木目模様の印刷層24を形成する。このような木目模様の印刷層24を形成する際に、木目の模様のうち、木材の導管の模様に沿って、印刷層24を含む表面に筋状の凸部が形成され、木目模様の質感を得ることができる。このようにして、この印刷層24を含む部分には、筋状の凸部が、複数の凸条24bが木目模様(導管が延在する方向)に沿って、形成される。このような印刷は、下地層22の印刷で説明したように、実施することができる。
【0037】
具体的には、印刷層24の木目模様は、柾目などの木材の表面を画像として撮影し、撮影した画像に応じた模様(木材の表面模様)を、印刷することで得ることができる。木材の木目模様の印刷は、下地層22の印刷と同様に、インクジェットプリンタを用いて行われる。本実施形態では、インクジェットプリンタのインクは、反応性オリゴマーまたは反応性モノマーに光重合開始剤が添加された紫外線硬化型樹脂と、着色剤とを少なくとも含む。たとえばイエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの4色の着色剤を、紫外線硬化型樹脂に個別に含有した4種のインクを準備し、これらのインクを用いて、下地層22の表面に印刷層24を形成することで木目模様を印刷する。
【0038】
図4(a)に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンタ40は、下地層22と同じ装置を用いる。本実施形態では、ヘッド41は、一般的な印刷に用いられるインクを収容し、上述した画像に基づいて印刷すべき木目模様に合わせて各インク(印刷用インク粒子24a)を個別に噴射する。照射装置42は、下地層22に付着した樹脂粒子を硬化させる紫外線を照射する。ヘッド41と照射装置42とは、搬送方向Lと直交する方向Sに往復動する。
【0039】
これにより、搬送された金属板21の下地層22に対して、木目模様の印刷模様24Aを印刷し、印刷模様24Aを形成する紫外線硬化型樹脂を、硬化させることができる。ここで、下地用インク粒子22dの樹脂と、印刷用インク粒子24aの樹脂とは、同種の樹脂からなる。たとえば、硬化前の樹脂が、アクリレートを含み、硬化後の樹脂が、アクリル樹脂となる場合には、下地用インク粒子22dの樹脂と、印刷用インク粒子24aの樹脂とは、アクリレートである。
【0040】
下地用インク粒子22dの樹脂と、印刷用インク粒子24aの樹脂とは、どちらも同種の樹脂からなるため、下地層22と印刷層24との密着性が高まるばかりでなく、後述するラミネート加工時の熱により、下地用インク粒子22dの樹脂からなる下地層22の膨張・収縮に、印刷用インク粒子24aの樹脂からなる印刷層24が追従する。したがって、ラミネート加工時においても、付与した印刷模様24Aは変化し難く、印刷工程における印刷模様24Aを保持することができる。
【0041】
2-4.ラミネート加工工程S4について
次に、ラミネート加工工程S4について、
図5および
図6を参照しながら、説明する。
図5は、
図2に示す、ラミネート加工工程S4を説明するための斜視図であり、
図5(a)は、ラミネート加工時の金属板の模式的斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の要部斜視図である。
図6(a)は、ラミネート加工工程前の状態を説明するための断面図であり、
図6(b)は、ラミネート加工工程後の状態を説明するための断面図である。
【0042】
ラミネート加工工程S4では、印刷模様24Aが付与された表面を覆うように、粘着剤により形成された粘着層25を介して、印刷模様24Aが付与された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付けて、金属板21の表面にラミネート加工を行う。
【0043】
ラミネートフィルム26は、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、可視光線が透過可能なフィルムである。ラミネート加工時には、熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様24Aが付与された下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付与された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。たとえば、ラミネートフィルム26の熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニルである場合には、熱圧時の温度は、ポリ塩化ビニルの軟化点は、65℃~85℃程度であるため、これよりも低い40℃程度である。
【0044】
このようにして、ラミネート加工工程S4において、第2の熱可塑性樹脂の軟化点よりも低い温度で、印刷模様24Aが付与された下地層22に対してラミネートフィルム26を熱圧するので、ラミネートフィルム26に形成された表面状態(シボ、平滑面などの状態)を保持しながら、ラミネートフィルム26の可撓性を高めた状態で、金属板21の表面にラミネート加工を行うことができる。このような結果、ラミネート加工時に、下地層22(または印刷層24)と、ラミネートフィルム26との間に、空気が噛み込むことを抑えることができ、複合板10の表面のシルバリングを抑えることができる。
【0045】
下地層形成工程S2において、紫外線を照射することで下地用インク粒子22dを硬化させることにより、金属板21の表面に印刷用の下地層22を形成するので、下地層22は、樹脂シートからなる下地層に比べてポーラスであり、緩衝材の如く作用する。このような結果、ラミネートフィルム26を貼り付けるときの熱により、下地層22は膨張(延伸)し難く、緩衝材として作用する下地層22が僅かに収縮しようとするとしても、金属板21に曲げ応力が発生し難くなる。このような結果、複合板10の反りを抑えることができる。
【0046】
ラミネート加工工程S4の際には、印刷模様24Aが付与された下地層22に対して熱圧しながら、印刷模様24Aが付与された下地層22にラミネートフィルム26を貼り付ける。この際、金属板21の裏面21aを、ラミネートフィルム26の熱圧温度に応じた加熱温度に加熱しながら、ラミネート加工を行う。ここで、加熱温度は、熱圧温度と同じであることが好ましい。
【0047】
これにより、下地層22は、樹脂材料からなるため、金属板21の金属材料よりも、線膨張係数が大きいので、ラミネート加工の際に、下地層22は熱により伸び易いが、この態様では、ラミネート加工の際に、裏面からの加熱により金属板21も加熱され、わずかに伸びるため、下地層22の伸びに追従させることができる。これにより、下地層22と金属板21の熱膨張差を低減し、金属板21に曲げ応力が作用することを抑えることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、ラミネート加工工程S4で、印刷模様24Aが付与された凸条24bが延在する方向に沿って、下地層22の一端22a側から下地層22の他端22b側に向かって、熱圧ローラ(加熱されたローラ)30で押圧しながら転動させる。このようにして、熱圧ローラ30で、ラミネートフィルム26を熱圧しながら、ラミネートフィルム26を貼り付ける。
【0049】
本実施形態では、
図5(b)の矢印方向に、凸条24bに沿って空気Aを逃がしながら、下地層22の一端22a側から下地層22の他端22b側に向かって、ラミネートフィルム26を熱圧することができる。この結果、空気の噛み込みを抑えつつ、ラミネートフィルム26を下地層22に貼り付けることができる。
【0050】
粘着層25を構成する粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの粘着剤を挙げることができる。
【0051】
ここで、ラミネートフィルム26の厚さは、特に限定されないが、たとえば、30~350μmmの範囲にあり(たとえば、厚さ100μm)、さらに、印刷層24の厚さよりも、粘着層25の厚さが厚いことが好ましい。たとえば、印刷層24の厚さは、10~30μmであり、粘着層25の厚さは、35μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以下である。なお、印刷層24により、下地層22の全体が覆われている場合には、金属板21の厚さ方向において、印刷層24の最も低い位置と、印刷層24の最も高い位置との差(高低差)よりも、粘着層25の厚さが厚いことが好ましい。
【0052】
本実施形態では、
図6(a)および
図6(b)に示すように、印刷層24の厚さT1に対して、ラミネート加工前の粘着層25の厚さT2を厚くすることにより、ラミネート加工後の粘着層25に印刷層24を埋設することができる。これにより、ラミネートフィルム26と印刷層24との間に空気が噛み込むことを抑えることができる。
【0053】
これに加えて、熱圧後にラミネートフィルム26の温度が低下しても、粘着層25が印刷層24の凸条24bに分断されることなくラミネートフィルム26に均一に形成されているため、粘着層25によるラミネートフィルム26の収縮を吸収することができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10:複合板、21:金属板、22:下地層、22d:下地用インク粒子、24:印刷層、24A:印刷模様、24a:印刷用インク粒子、24b:凸条、25:粘着層、26:ラミネートフィルム