(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149445
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】角型缶製造方法および角型缶製造装置
(51)【国際特許分類】
B21D 24/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B21D24/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058021
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】塚田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大堀 圭
(72)【発明者】
【氏名】長船 達矢
(72)【発明者】
【氏名】小川 庸介
(72)【発明者】
【氏名】中川 高則
(72)【発明者】
【氏名】大貫 隆司
(72)【発明者】
【氏名】花田 諒介
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA10
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA02
4E137CA09
4E137CA26
4E137DA13
4E137DA15
4E137EA02
4E137GA02
4E137GA16
4E137GB10
4E137GB18
4E137HA06
4E137HA07
4E137HA08
(57)【要約】
【課題】製造コストを増大させることなく、長辺壁の肉厚に不均一が生じることを抑制する角型缶製造方法および角型缶製造装置を提供すること。
【解決手段】中間成形品の筒状部予定部に絞りしごき加工を施す絞りしごき工程を含み、ダイおよびパンチは、ダイ加工貫通孔41a内にパンチを無負荷状態で挿入した状態で、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向中央部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W1が、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向両端部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W2よりも狭くなるように形成されている角型缶製造方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と一対の長辺壁および一対の短辺壁を有した角型筒状部とを備えた角型缶を製造する角型缶製造方法であって、
前記角型缶製造方法は、ダイに形成されたダイ加工貫通孔のダイ加工内周面と前記ダイ加工貫通孔に挿入されるパンチに形成されたパンチ加工外周面との間隙で、中間成形品の筒状部予定部に絞りしごき加工を施す絞りしごき工程を含み、
前記ダイ加工内周面は、前記中間成形品の長辺壁予定部に加工を施すダイ長辺壁加工部を有し、
前記パンチ加工外周面は、前記長辺壁予定部に加工を施すパンチ長辺壁加工部を有し、
前記ダイおよび前記パンチは、前記ダイ加工貫通孔内に前記パンチを無負荷状態で挿入した状態で、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向両端部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする角型缶製造方法。
【請求項2】
前記パンチ長辺壁加工部は、前記パンチ長辺壁加工部のうち最も短辺方向外側に位置する加工頂部と、前記加工頂部の長辺方向両側に形成されて長辺方向外側に向かうに従って短辺方向内側に寄るように傾斜した傾斜部とを有し、その長辺方向中央部が短辺方向外側に膨れた全体形状を備えていることを特徴とする請求項1に記載の角型缶製造方法。
【請求項3】
前記加工頂部は、断面視した場合に、長辺方向に沿って直線状に延びる部位であることを特徴とする請求項2に記載の角型缶製造方法。
【請求項4】
前記ダイ加工内周面は、前記中間成形品の短辺壁予定部に加工を施すダイ短辺壁加工部を有し、
前記パンチ加工外周面は、前記短辺壁予定部に加工を施すパンチ短辺壁加工部を有し、
前記ダイおよび前記パンチは、前記ダイ加工貫通孔内に前記パンチを無負荷状態で挿入した状態で、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、前記パンチ短辺壁加工部と前記ダイ短辺壁加工部との間の長辺方向間隔よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の角型缶製造方法。
【請求項5】
底壁と一対の長辺壁および一対の短辺壁を有した角型筒状部とを備えた角型缶を製造する角型缶製造装置であって、
前記角型缶製造装置は、ダイに形成されたダイ加工貫通孔のダイ加工内周面と前記ダイ加工貫通孔に挿入されるパンチに形成されたパンチ加工外周面との間隙で、中間成形品の筒状部予定部に絞りしごき加工を施す絞りしごきユニットを備え、
前記ダイ加工内周面は、前記中間成形品の長辺壁予定部に加工を施すダイ長辺壁加工部を有し、
前記パンチ加工外周面は、前記長辺壁予定部に加工を施すパンチ長辺壁加工部を有し、
前記ダイおよび前記パンチは、前記ダイ加工貫通孔内に前記パンチを無負荷状態で挿入した状態で、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向両端部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする角型缶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角型缶を形成する角型缶製造方法および角型缶製造装置に関し、特に、リチウムイオン電池のケースとして用いられる角形缶の角型缶製造方法および角型缶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底壁および角型筒状部を備えた金属製の角型缶の製造方法として、ブランクに対して複数回の絞り加工または絞りしごき加工を施すことで、角型缶を製造することが知られており(例えば、特許文献1を参照)、また、このような絞り加工または絞りしごき加工の最終工程として実施される絞りしごき加工において、最終成形品の角型筒状部の外寸や内寸等の形状を考慮して、略矩形状の断面形状で形成されたパンチ加工外周面を備えたパンチ、および、同様に略矩形状の断面形状で形成されたダイ加工貫通孔を備えたダイを用いることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このように成形される角型缶において、本出願人は、製造する角型缶の角型筒状部の扁平率(短辺方向寸法に対する長辺方向寸法の比率)が高い場合に、角型筒状部の長辺壁に肉厚の不均一が生じることを確認した。
【0005】
高度な形状精度を要求されるリチウムイオン電池のケース等に角型缶を用いる場合等、角型缶の使用用途によっては、このような角型筒状部の肉厚の不均一を許容できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、製造コストを増大させることなく、長辺壁の肉厚に不均一が生じることを抑制する角型缶製造方法および角型缶製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の角型缶製造方法は、底壁と一対の長辺壁および一対の短辺壁を有した角型筒状部とを備えた角型缶を製造する角型缶製造方法であって、前記角型缶製造方法は、ダイに形成されたダイ加工貫通孔のダイ加工内周面と前記ダイ加工貫通孔に挿入されるパンチに形成されたパンチ加工外周面との間隙で、中間成形品の筒状部予定部に絞りしごき加工を施す絞りしごき工程を含み、前記ダイ加工内周面は、前記中間成形品の長辺壁予定部に加工を施すダイ長辺壁加工部を有し、前記パンチ加工外周面は、前記長辺壁予定部に加工を施すパンチ長辺壁加工部を有し、前記ダイおよび前記パンチは、前記ダイ加工貫通孔内に前記パンチを無負荷状態で挿入した状態で、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向両端部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔よりも狭くなるように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明の角型缶製造装置は、底壁と一対の長辺壁および一対の短辺壁を有した角型筒状部とを備えた角型缶を製造する角型缶製造装置であって、前記角型缶製造装置は、ダイに形成されたダイ加工貫通孔のダイ加工内周面と前記ダイ加工貫通孔に挿入されるパンチに形成されたパンチ加工外周面との間隙で、中間成形品の筒状部予定部に絞りしごき加工を施す絞りしごきユニットを備え、前記ダイ加工内周面は、前記中間成形品の長辺壁予定部に加工を施すダイ長辺壁加工部を有し、前記パンチ加工外周面は、前記長辺壁予定部に加工を施すパンチ長辺壁加工部を有し、前記ダイおよび前記パンチは、前記ダイ加工貫通孔内に前記パンチを無負荷状態で挿入した状態で、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、前記パンチ長辺壁加工部の長辺方向両端部と前記ダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔よりも狭くなるように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダイ加工貫通孔内にパンチを無負荷状態で挿入した状態で、パンチ長辺壁加工部の長辺方向中央部とダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔が、パンチ長辺壁加工部の長辺方向両端部とダイ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔よりも狭くなるように、ダイおよびパンチを形成することにより、簡素な構成で、製造コストを増大させることなく、成形される角型缶の長辺壁の肉厚に不均一(偏り)が生じることを抑制できる。
すなわち、ダイ加工貫通孔の扁平率(短辺方向寸法に対する長辺方向寸法の比率)が高い場合、絞りしごき加工時に、成形反力によってダイ長辺壁加工部の長辺方向中央部が短辺方向外側に向けて寄るようにダイ長辺壁加工部に撓みが生じる場合があるが、本発明では、当該ダイ長辺壁加工部の撓みを考慮して、ダイ長辺壁加工部とパンチ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔を設定することにより、成形反力に起因してダイ長辺壁加工部に撓みが生じる絞りしごき加工時において、長辺方向両端部におけるダイ長辺壁加工部とパンチ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔と、長辺方向中央部におけるダイ長辺壁加工部とパンチ長辺壁加工部との間の短辺方向間隔との間の寸法差を小さくすることが可能であるため、成形される角型缶の長辺壁の肉厚分布をより均一に近づけることができる。
また、本発明では、製造コストの増大を招くことになる、ダイの金型材質を超硬合金等のヤング率の高い材質に変更する等のダイ長辺壁加工部の撓み自体を抑制する対策を施す必要がないため、製造コストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る角型缶製造方法の最終成形品である角型缶を示す説明図。
【
図6】絞りしごきユニットのダイ加工貫通孔内にパンチを無負荷状態で挿入した状態および変形例を示す説明図。
【
図7】絞りしごき加工時におけるダイおよびパンチの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態である角型缶製造方法および角型缶製造装置10について、図面に基づいて説明する。
[角型缶60(最終成形品)]
【0011】
まず、角型缶製造方法および角型缶製造装置10によって製造される最終成形品である角型缶60は、アルミニウム等の金属から成り、本実施形態では、リチウムイオン電池のケースとして用いられるものであり、
図1に示すように、平板状(または略平板状)の底壁61と、角型筒状部65とを備えている。
【0012】
底壁61は、
図1に示すように、その外縁に、一対の底長辺部62と一対の底短辺部63とを有した略四角形状(または四角形状)に形成されている。
底長辺部62は、長辺方向に沿って直線状(または略直線状)に延びる部位である。
底短辺部63は、底長辺部62との間で90°の角度を成すように、短辺方向に沿って直線状(または略直線状)に延びる部位である。
底長辺部62と底短辺部63との間には、底長辺部62と底短辺部63とを滑らかに繋ぐ外周側に凸状に湾曲した底湾曲角部64が形成されている。本実施形態では、各底湾曲角部64は、同じ単一R(単一の曲率半径)で湾曲して形成されている。
【0013】
角型筒状部65は、
図1に示すように、短辺方向に対向して配置される一対の長辺壁66と、長辺方向に対向して配置される一対の短辺壁67とを有している。
各長辺壁66は、
図1に示すように、底長辺部62から上方に向けて立ち上がるように形成された平板状(または略平板状)の部位であり、一対の長辺壁66は、互いに平行に形成されている。
各短辺壁67は、
図1に示すように、長辺壁66との間で90°の角度を成すように、底短辺部63から上方に向けて立ち上がるように形成された平板状(または略平板状)の部位であり、一対の短辺壁67は、互いに平行に形成されている。
長辺壁66と短辺壁67との間には、底湾曲角部64から上方に向けて立ち上がるように形成され、長辺壁66と短辺壁67とを滑らかに繋ぐ外周側に凸状に湾曲したR形状の角部壁68が形成されている。本実施形態では、各角部壁68は、同じ単一R(単一の曲率半径)で湾曲して形成されている。
[角型缶製造方法]
【0014】
角型缶製造方法は、角型缶60を製造するものであり、
図2、3に示すように、ブランク60Aを用意するブランク用意工程と、ブランク60Aの所定箇所にコイニング加工を施すコイニング工程と、コイニング工程を経たブランク60Aに対して1回目の絞り加工を施す第1絞り工程と、第1絞り工程を経たカップ状の第1中間成形品60Bに対して2回目の絞り加工を施す第2絞り工程と、第2絞り工程によって得られた第2中間成形品60Cに対して絞りしごき加工を施す絞りしごき工程と、絞りしごき工程によって得られた第3中間成形品60Dの形状を矯正する形状矯正工程とを有している。
【0015】
以下に、角型缶製造方法の各工程について、具体的に説明する。
【0016】
まず、ブランク用意工程は、
図2(a)に示すように、アルミニウム等の金属製の帯板に打ち抜き加工を施すことで金属板としてのブランク60Aを形成するものである。
【0017】
コイニング工程は、
図2(b)に示すように、ブランク60Aの所定箇所に、板厚方向にプレスを施すことにより、板厚を薄くするコイニング加工を施すものである。
本実施形態では、ブランク60Aの底壁予定部(最終成形品である角型缶60の状態で底壁61となる部位)に、板厚方向にプレスを施すことにより、板厚を薄くするコイニング加工を施す。
【0018】
第1絞り工程は、
図2(c)に示すように、コイニング工程を経たブランク60Aに対して、絞り加工を施すことでカップ状の第1中間成形品60Bを形成するものである。
具体的には、第1絞り工程では、ブランク60Aに皺が形成されることを抑制するしわ押さえとして機能するブランクホルダ23によってブランク60Aを上側から押さえた状態で、ダイ21に形成されたダイ加工貫通孔21a内にパンチ22によって上方からブランク60Aを押し込む(引き込む)ことで、ブランク60Aを塑性変形させてカップ状の第1中間成形品60Bを形成する。
【0019】
第2絞り工程は、
図3(d)に示すように、第1絞り工程によって得られた第1中間成形品60Bに対して、2回目の絞り加工を施すことで第2中間成形品60Cを形成するものである。
具体的には、第2絞り工程では、第2中間成形品60Cに皺が形成されることを抑制するしわ押さえとして機能するブランクホルダ33によって第1中間成形品60Bを上側(内側)から押さえた状態で、ダイ31に形成されたダイ加工貫通孔31a内にパンチ32によって第1中間成形品60Bを押し込む(引き込む)ことで、第1中間成形品60Bを塑性変形させて第2中間成形品60Cを形成する。
なお、この絞り加工時には、ダイ加工貫通孔31a内に、パンチ32および第1中間成形品60B(の一部)のみが挿入され、ブランクホルダ33は挿入されない。
【0020】
絞りしごき工程は、
図3(e)に示すように、ダイ41に形成されたダイ加工貫通孔41aとダイ加工貫通孔41aに挿入されるパンチ42との間隙で、主に第2中間成形品60Cの筒状部予定部65C(最終成形品の状態で角型筒状部65となる部位)に絞りしごき加工を施して、第3中間成形品60Dを形成するものである。
なお、絞りしごき工程では、第2中間成形品60Cの底壁予定部61C(最終成形品の状態で底壁61となる部位)の一部にも、絞りしごき加工が施される。
【0021】
具体的には、絞りしごき工程では、
図5に示すように、第3中間成形品60Dに皺が形成されることを抑制するしわ押さえとして機能するブランクホルダ43によって第2中間成形品60Cを上側(内側)から押さえた状態で、ダイ41に対してパンチ42を相対的に移動させる(本実施形態では、固定状態で設けられたダイ41に対してパンチ42およびブランクホルダ43を移動させる)ことで、パンチ42によってダイ加工貫通孔41a内に第2中間成形品60Cを押し込み(引き込み)、ダイ加工貫通孔41aのダイ加工内周面41bとパンチ42のパンチ加工外周面42aとの間隙で、第2中間成形品60Cを塑性変形させて第3中間成形品60Dを形成する。
なお、上記の絞りしごき加工時には、ダイ加工貫通孔41a内に、パンチ42および第2中間成形品60C(の一部)のみが挿入され、ブランクホルダ43は挿入されない。
【0022】
絞りしごき工程で用いられるダイ41は、
図4や
図5に示すように、絞りしごき加工時におけるパンチ移動方向(本実施形態では、上下方向)に貫通して形成されるダイ加工貫通孔41aを有している。
ダイ加工貫通孔41aは、
図4や
図5に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に平行な面として形成されたダイ加工内周面41bと、ダイ加工内周面41bのパンチ移動方向(上下方向)の手前側(上方側)に形成されたテーパ加工面41fとを有している。
ダイ加工内周面41bは、
図4~
図6に示すように、第2中間成形品60Cの長辺壁予定部66C(最終成形品の状態で長辺壁66となる部位)に加工を施す一対のダイ長辺壁加工部41cと、第2中間成形品60Cの短辺壁予定部67C(最終成形品の状態で短辺壁67となる部位)に加工を施す一対のダイ短辺壁加工部41dとを有している。
各ダイ長辺壁加工部41cは、
図4や
図6(a)に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合(ダイ41をパンチ移動方向に垂直な面で切って断面視した場合)に、長辺方向に沿って直線状に延びるように形成されている。
各ダイ短辺壁加工部41dは、
図4や
図6(a)に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合(ダイ41をパンチ移動方向に垂直な面で切って断面視した場合)に、短辺方向に沿って直線状に延びるように形成されている。
また、ダイ長辺壁加工部41cとダイ短辺壁加工部41dとの間には、
図4や
図6(a)に示すように、ダイ長辺壁加工部41cとダイ短辺壁加工部41dとを滑らかに繋ぐ外周側に凸状に湾曲した湾曲角部41eが形成されている。この湾曲角部41eは、第2中間成形品60Cの角部壁予定部68C(最終成形品の状態で角型筒状部65の角部壁68となる部分)付近に加工を施す部位として機能する。本実施形態では、各湾曲角部41eは、同じ単一R(単一の曲率半径)で湾曲して形成されている。
テーパ加工面41fは、
図4や
図5に示すように、パンチ移動方向(上下方向)の奥側(下方側)に向かうに従って、縮径する(長辺方向および短辺方向における幅が狭くなる)ように傾斜して形成されている。
【0023】
絞りしごき工程で用いられるパンチ42は、
図4~
図6に示すように、絞りしごき加工時にダイ加工貫通孔41aの内側面に対向する外周面として、パンチ移動方向(上下方向)に平行な面として形成されたパンチ加工外周面42aを有している。
パンチ加工外周面42aは、
図4や
図6(a)に示すように、ダイ長辺壁加工部41cと協働して第2中間成形品60Cの長辺壁予定部66Cに加工を施す一対のパンチ長辺壁加工部42bと、ダイ短辺壁加工部41dと協働して第2中間成形品60Cの短辺壁予定部67Cに加工を施す一対のパンチ短辺壁加工部42cとを有している。
【0024】
各パンチ長辺壁加工部42bは、
図6(a)に示すように、パンチ長辺壁加工部42bのうち最も短辺方向外側に位置する加工頂部42b-1と、加工頂部42b-1の長辺方向両側に形成されて長辺方向外側に向かうに従って短辺方向内側に寄るように傾斜した傾斜部42b-2とを有し、その長辺方向中央部がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れた全体形状を有している。
加工頂部42b-1は、
図6(a)に示すように、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向中央(または長辺方向中央付近)に形成され、本実施形態では、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合(パンチ42をパンチ移動方向に垂直な面で切って断面視した場合)に、長辺方向に沿って直線状に延びる部位として形成されている。
なお、加工頂部42b-1を、断面視した場合に直線状に延びる部位として形成した場合、
図6(b)に示す変形例のように、加工頂部42b-1を断面視した場合に点状に形成した場合と比較して、絞りしごき加工時に、成形反力に起因してダイ長辺壁加工部41cに生じる撓みの量を低減させることができる。
傾斜部42b-2は、
図1に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合(パンチ42をパンチ移動方向に垂直な面で切って断面視した場合)に、直線状に延びる部位として形成されている。
【0025】
各パンチ短辺壁加工部42cは、
図6(a)に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合(パンチ42をパンチ移動方向に垂直な面で切って断面視した場合)に、短辺方向に沿って直線状に延びるように形成されている。
【0026】
また、パンチ長辺壁加工部42bとパンチ短辺壁加工部42cとの間には、パンチ長辺壁加工部42bとパンチ短辺壁加工部42cとを滑らかに繋ぐ外周側に凸状に湾曲した湾曲角部42dが形成されている。湾曲角部42dは、ダイ41の湾曲角部41eと協働して、第2中間成形品60Cの角部壁予定部68C付近に加工を施す部位として機能する。本実施形態では、各湾曲角部42dは、同じ単一R(単一の曲率半径)で湾曲して形成されている。
【0027】
なお、絞りしごき加工時には、ダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間隙に第2中間成形品60Cを押し込む(引き込む)ことで、主に第2中間成形品60Cの長辺壁予定部66Cに対して板厚を薄くするしごき加工が施されるとともに、ダイ短辺壁加工部41dとパンチ短辺壁加工部42cとの間隙に第2中間成形品60Cを押し込む(引き込む)ことで、主に第2中間成形品60Cの角部壁予定部68C(および短辺壁予定部67C)付近に対してしぼり加工が施される。
【0028】
ここで、本実施形態のように、ダイ加工貫通孔41aの扁平率(短辺方向寸法に対する長辺方向寸法の比率)が高い場合、
図7(a)に示すように、絞りしごき加工時に、成形反力によってダイ長辺壁加工部41cの長辺方向中央部が短辺方向外側に向けて寄るようにダイ長辺壁加工部41cに撓みが生じ、その結果、
図6(a)に示すように、ダイ加工貫通孔41a内にパンチ42を無負荷状態で挿入した状態と比較して、ダイ長辺壁加工部41cの長辺方向中央部における、ダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間の短辺方向間隔W1が広がることになる。
そのため、
図7(b)に示すように、ダイ長辺壁加工部41cおよびパンチ長辺壁加工部42bを長辺方向に沿って直線状に延びるように形成した場合等、ダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間の短辺方向間隔W1、W2が一定になるように設定した場合、絞りしごき加工を施された長辺壁予定部66Cの肉厚が、長辺方向中央部が厚く長辺方向両端部側に向かうに従って薄くなり、長辺壁予定部66Cの均一な肉厚分布を実現できないことになる。
これに対して、本実施形態では、
図6(a)に示すように、ダイ長辺壁加工部41cおよびパンチ長辺壁加工部42bは、ダイ加工貫通孔41a内にパンチ42を無負荷状態で挿入した状態(言い替えると、ダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間に第2中間成形品60Cが介在されておらず、ダイ41およびパンチ42に成形反力がかかっていない状態)で、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向中央部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W1が、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向両端部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W2よりも狭くなるようになっている。
これにより、成形反力に起因してダイ長辺壁加工部41cに撓みが生じる絞りしごき加工時において、長辺方向両端部におけるダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間の短辺方向間隔W2と、長辺方向中央部のダイ長辺壁加工部41cとパンチ長辺壁加工部42bとの間の短辺方向間隔W1との間の寸法差を小さくすることが可能であるため、成形される長辺壁予定部66Cの肉厚分布をより均一に近づけることができる。
【0029】
また、ダイ41およびパンチ42は、
図6(a)に示すように、ダイ加工貫通孔41a内にパンチ42を無負荷状態で挿入した状態で、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向中央部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W1が、パンチ短辺壁加工部42cとダイ短辺壁加工部41dとの間の長辺方向間隔W3よりも狭くなるように形成されている。
【0030】
なお、ダイ加工内周面41bおよびパンチ加工外周面42aは、
図6(a)等に示すように、パンチ移動方向(上下方向)に見た場合に、それぞれ、長辺方向に線対称であるとともに短辺方向に線対称に形成されている。
また、絞りしごき加工時には、長辺方向におけるパンチ42を挟んで両側の、ダイ長辺壁加工部41cおよびパンチ長辺壁加工部42bの長辺方向間隔W1、W2が同じであり、短辺方向におけるパンチ42を挟んで両側の、ダイ短辺壁加工部41dおよびパンチ短辺壁加工部42cの間隔W3が同じであるように、ダイ加工貫通孔41a内にパンチ42が挿入される。
【0031】
形状矯正工程は、
図3(f)に示すように、絞りしごき工程によって得られた第3中間成形品60Dの一対の長辺壁予定部66D(最終成形品の状態で長辺壁66となる部位)間の短辺方向間隔を拡げる(拡幅加工を施す)とともに、第3中間成形品60Dの底壁予定部61D(最終成形品の状態で底壁61となる部位)を平坦化させる(平坦な状態に近づける、平坦化加工を施す)ことで、第4中間成形品60Eを形成するものである。
【0032】
形状矯正工程では、
図9に示すように、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入した状態で、ダイ51に対して形状矯正パンチ52を相対的に移動させて(本実施形態では、固定状態で設けられたダイ51に対して形状矯正パンチ52を移動させて)、ダイ加工貫通孔51a内に形状矯正パンチ52によって第3中間成形品60Dを押し込む(引き込む)とともに、第3中間成形品60Dの底壁予定部61Dを形状矯正パンチ52と底壁押圧部材53とで挟み込む一工程で、上記の拡幅加工および平坦化加工を施す。
【0033】
以下に、形状矯正工程の各加工について、具体的に説明する。
【0034】
まず、拡幅加工は、
図8や
図9に示すように、外側サポート部材54によって支持された状態の第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入することにより、第3中間成形品60D内に挿入された形状矯正パンチ52の短辺壁側押さえ部52bによって一対の短辺壁予定部67Dが互いに近づくことを規制しつつ、第3中間成形品60D内に挿入された形状矯正パンチ52の長辺壁押圧部52cによって各長辺壁予定部66D(の特に長手方向中央部付近)を短辺方向外側に向けて押すことで、一対の長辺壁予定部66D間(特に長辺壁予定部66Dの長辺方向中央部間)の短辺方向間隔をくさび状に押し拡げるものである。
この拡幅加工によって、
図10に示すような、各長辺壁166の長辺方向中央部が短辺方向内側に向けて凹む所謂キャニング現象が生じた場合であっても、形状を補正することができる。
【0035】
短辺壁側押さえ部52bは、
図9に示すように、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態で、第3中間成形品60Dの開口部側において、各長辺壁予定部66Dの長辺方向の両側部分および各短辺壁予定部67D(最終成形品の状態で短辺壁67となる部位)を内側から押さえるように配置される。
これにより、短辺壁側押さえ部52bは、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態で、一対の長辺壁予定部66Dの長辺方向の両側部分が互いに近づくことを押さえる(規制する)とともに、一対の短辺壁予定部67Dが互いに近づくことを押さえる(規制する)機能を発揮する。
なお、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態で、一対の長辺壁予定部66Dの長辺方向の両側部分間の間隔を短辺方向にくさび状に押し拡げるように、短辺壁側押さえ部52bを設計してもよく、また、一対の短辺壁予定部67D間の間隔を長辺方向にくさび状に押し拡げるように、短辺壁側押さえ部52bを設計してもよい。
短辺壁側押さえ部52bは、
図9に示すように、パンチ移動方向(上下方向)における奥側(下側)に、奥側に向かうに従って長辺方向の内側に寄るように傾斜したテーパ部を有しており、これにより、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入し易くなる。
また、本実施形態では、短辺壁側押さえ部52bは、パンチ本体52aとは別体に形成されパンチ本体52aに固定状態で取り付けられる別の部材から構成されており、これにより、短辺壁側押さえ部52bによる長辺壁予定部66Dおよび短辺壁予定部67Dの押圧の程度を容易に調整することができる。しかしながら、短辺壁側押さえ部52bをパンチ本体52aに一体に形成してもよい。
【0036】
長辺壁押圧部52cは、
図9に示すように、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態で、第3中間成形品60Dの開口部側において、各長辺壁予定部66Dの長辺方向の中央部分を内側から押すように配置される。
これにより、長辺壁押圧部52cは、一対の長辺壁予定部66D間の短辺方向間隔を押し拡げる機能を発揮する。
長辺壁押圧部52cは、
図9に示すように、その長辺方向中央部がその長辺方向両端部よりも短辺方向外側に膨れて位置した押圧面を有している。
また、長辺壁押圧部52cは、
図9に示すように、パンチ移動方向(上下方向)における奥側(下側)に、奥側に向かうに従って短辺方向の内側に寄るように傾斜したテーパ部を有しており、これにより、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入し易くなる。
また、本実施形態では、長辺壁押圧部52cは、パンチ本体52aとは別体に形成されパンチ本体52aに固定状態で取り付けられる別の部材から構成されており、これにより、長辺壁押圧部52cによる長辺壁予定部66Dの押圧の程度を容易に調整することができる。しかしながら、長辺壁押圧部52cをパンチ本体52aに一体に形成してもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、
図9に示すように、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態で、短辺壁側押さえ部52bや長辺壁押圧部52cが、第3中間成形品60Dの開口部側(開口部付近)に対応する位置に配置されるものとして説明したが、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52が挿入された状態での第3中間成形品60Dに対する短辺壁側押さえ部52bや長辺壁押圧部52cの配置は上記に限定されず、例えば、形状矯正パンチ52が挿入された状態で、第3中間成形品60Dのパンチ移動方向(上下方向)における中央付近に対応する位置に短辺壁側押さえ部52bや長辺壁押圧部52cが配置されるようにしてもよい。
また、短辺壁側押さえ部52bや長辺壁押圧部52cの数量についても、
図8や
図9に示したものに限定されず、例えば、
図8や
図9に示したものに加えて、形状矯正パンチ52が挿入された状態で、第3中間成形品60Dのパンチ移動方向(上下方向)における中央付近に対応する位置に配置される短辺壁側押さえ部52bや長辺壁押圧部52cを追加で設けてもよい。
【0038】
外側サポート部材54は、
図9に示すように、拡幅加工時に、第3中間成形品60Dのフランジ部69Dを下側から支持し、第3中間成形品60Dの開口部側(開口部付近)において、各長辺壁予定部66Dの長辺方向の両側部分を外側から押さえるように配置される。
これにより、外側サポート部材54は、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入する時に、第3中間成形品60Dを支持するとともに、各長辺壁予定部66Dの長辺方向の両側部分が短辺方向外側に広がることを押さえる(規制する)機能を発揮する。
【0039】
なお、実施形態に応じて、外側サポート部材54に代えて、または、外側サポート部材54に追加して、任意の位置で第3中間成形品60Dを外側から支える他のサポート部材を設けてもよい。
【0040】
平坦化加工は、形状矯正パンチ52を移動させることで、第3中間成形品60D内に挿入された形状矯正パンチ52の底壁押圧部52dと底壁予定部61Dの外側面側に配置された底壁押圧部材53とによって底壁予定部61Dを挟み込むとともに、形状矯正パンチ52によってダイ加工貫通孔51a内に第3中間成形品60D(の底壁予定部61Dおよび底壁予定部61D付近の筒状部予定部65Dの一部分)を押し込む(引き込む)ことで、ダイ51に形成されたダイ加工貫通孔51aのダイ加工内周面とダイ加工貫通孔51aに挿入される形状矯正パンチ52のパンチ加工外周面との間隙で、第3中間成形品60Dの筒状部予定部65Dと底壁予定部61Dとの間の接続部(湾曲角部)付近(
図9に示す領域R)にその周方向全域に亘って絞りしごき加工を施すことで、底壁予定部61Dを平坦化させるものである。
【0041】
底壁予定部61Dを挟み込む、形状矯正パンチ52の底壁押圧部52dの押圧面と底壁押圧部材53の押圧面とは、それぞれ平坦状に形成されている。
なお、形状矯正パンチ52の底壁押圧部52dは、パンチ本体52aと一体に形成されているが、パンチ本体52aとは別体に形成された別の部材から底壁押圧部52dを構成してもよい。
また、底壁押圧部材53は、エアシリンダ(図示しない)によって支持されており、平坦化加工時に、パンチ(第3中間成形品60D)によって下方に押された場合に、パンチ(第3中間成形品60D)とともに下方に移動しつつ、形状矯正パンチ52との間で底壁予定部61Dを挟み込んで底壁予定部61Dに適度なプレス(圧力)を加えるようになっている。なお、上述した平坦化加工時には、エアシリンダ(図示しない)によってパンチ(第3中間成形品60D)が底壁押圧部材53に衝突した際の衝撃が緩和される。
【0042】
なお、上述した第1、2絞り工程および絞りしごき工程では、底壁押圧部材53(およびエアシリンダ)に相当する、底壁予定部の外側(下側)を支える設備は使用しておらず、すなわち、下方に移動するパンチとで底壁予定部61Dを挟み込むための設備は使用していない。
【0043】
上述したような本実施形態の形状矯正工程では、第3中間成形品60D内に形状矯正パンチ52を挿入した後に、ダイ51および底壁押圧部材53側に向けて形状矯正パンチ52を移動させる一工程(一動作)で筒状部予定部65Dの形状矯正(拡幅加工)および底壁予定部61Dの形状矯正(平坦化加工)をまとめて行うことが可能であるため、製造負担の増大を抑えつつ、角型缶60の形状精度を向上させることができる。
また、絞り加工または絞りしごき加工において、中間成形品の底壁予定部をパンチと底壁予定部の外側に設置された部材とで挟み込む構成とすることで、底壁に外側への膨れが生じることを抑制することも考えられるが、このような構成とした場合、絞り加工または絞りしごき加工ではパンチのストローク量を大きく設計する必要があり、底壁予定部の外側(下側)に設置された部材についてもパンチの移動に追従して移動させる構造とする必要があるため、装置コストの増大および製造速度の低下を招くことになる。これに対して、本発明では、このような構造とする必要がなく、底壁押圧部材53のストローク量が短くて済み、装置コストの増大および製造速度の低下を回避することができる。
【0044】
また、角型缶製造方法は、上記工程以外にも、形状矯正工程によって得られた第4中間成形品60Eの、フランジ部等の開口部付近の不要部分を切り落とすトリミング加工工程や、洗浄工程等の各種工程を含んでいる。
[角型缶製造装置10]
【0045】
次に、角型缶製造装置10について、以下に説明する。
【0046】
角型缶製造装置10は、
図2、3に示すように、第1絞り工程を実施するための第1絞りユニット20と、第2絞り工程を実施するための第1絞りユニット20と、絞りしごき工程を実施するための絞りしごきユニット40と、形状矯正工程を実施するための形状矯正ユニット50とを備えている。
【0047】
第1、2絞りユニット20、30および絞りしごきユニット40は、
図2、3に示すように、ダイ21、31、41と、パンチ22、23、24と、ブランクホルダ23、33、43と、パンチ等の各部を駆動するアクチュエータやモーター等から成る駆動手段や支持部材等の各種周辺設備とを備えている。
また、形状矯正ユニット50は、
図4に示すように、ダイ51と、形状矯正パンチ52と、底壁押圧部材53と、外側サポート部材54と、パンチ等の各部を駆動するアクチュエータやモーター等から成る駆動手段や支持部材等の各種周辺設備とを備えている。
これら各部の具体的な構成や機能については、上述した通りである。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて角型缶製造方法および角型缶製造装置10を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、絞りしごき加工の前に2回の絞り加工(または絞りしごき加工)を行うものとして説明したが、絞りしごき加工の前に実施される絞り加工(または絞りしごき加工)の回数については、1回や3回以上であってよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、ダイ長辺壁加工部41cを長辺方向に沿って直線状に延びるように形成するとともに、パンチ長辺壁加工部42bを、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れて位置した全体形状を有するように形成することにより、ダイ加工貫通孔41a内にパンチ42を無負荷状態で挿入した状態で、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向中央部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W1が、パンチ長辺壁加工部42bの長辺方向両端部とダイ長辺壁加工部41cとの間の短辺方向間隔W2よりも狭くなるようにしたものとして説明した。
しかしながら、長辺壁加工部41c、42bの具体的態様については上記に限定されず、上記状態で間隔W1が間隔W2よりも狭くなるものであれば、如何なるものでもよく、例えば、パンチ長辺壁加工部42bを、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れて位置した全体形状を有するように形成した場合に、ダイ長辺壁加工部41cを、長辺方向に沿って直線状に延びる形状以外の形状(例えば、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れて位置した全体形状や、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向内側に膨れて位置した全体形状)で形成してもよい。
また、ダイ長辺壁加工部41cを、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向内側に膨れて位置した全体形状を有するように形成することにより、上記状態で間隔W1が間隔W2よりも狭くなるようにしてもよく、この場合、パンチ長辺壁加工部42bの形状としては、例えば、長辺方向に沿って直線状に延びる形状や、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れて位置した全体形状や、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向内側に膨れて位置した全体形状等、様々な形状が考えられる。
【0051】
また、パンチ長辺壁加工部42bを、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向外側に膨れて位置した全体形状を有したものとして形成する場合、パンチ長辺壁加工部42bの具体的態様は、上述した実施形態のものに限定されない。
例えば、
図6(a)に示す例では、加工頂部42b-1が、断面視した場合に長辺方向に沿って直線状に延びる部位として形成されているが、
図6(b)に示す変形例のように、加工頂部42b-1は、断面視した場合に点状の部位であってもよい。
また、
図6(a)に示す例では、傾斜部42b-2が、断面視した場合に直線状に延びる部位として形成されているが、
図6(b)に示す変形例のように、傾斜部42b-2が、断面視した場合に曲線状に延びる部位であってもよく、また、断面視した場合に1つ以上の直線および1つ以上の曲線を組み合わせて成る部位として傾斜部42b-2を形成してもよい。
なお、
図6(b)に示す変形例では、パンチ長辺壁加工部42bが、その長辺方向中央がその長辺方向両端部よりも短辺方向外側に膨れて位置するようにその全体が短辺方向外側に凸状に湾曲した所謂鼓形状で形成されている。
【0052】
また、同様に、ダイ長辺壁加工部41cを、(ダイ長辺壁加工部41cのうち最も短辺方向内側に位置する)加工頂部と(当該加工頂部の長辺方向両側に形成されて長辺方向外側に向かうに従って短辺方向外側に寄るように傾斜した)傾斜部とを有し、その長辺方向中央がその長辺方向両端側よりも短辺方向内側に膨れて位置した全体形状を有したものとして形成する場合、ダイ長辺壁加工部41cの前記加工頂部を、断面視した場合に長辺方向に沿って直線状に延びる部位として形成してもよく、また、断面視した場合に点状の部位として形成してもよい。
また、ダイ長辺壁加工部41cの前記傾斜部を、断面視した場合に直線状に延びる部位として形成してもよく、また、断面視した場合に曲線状に延びる部位として形成してもよく、また、断面視した場合に1つ以上の直線および1つ以上の曲線を組み合わせて成る部位として形成してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、ダイ短辺壁加工部41d、および、パンチ短辺壁加工部42cが、長辺方向に沿って直線状に延びるように形成されているものとして説明したが、それ以外の形状(例えばパンチ移動方向に見た場合に湾曲した形状)でこれら加工部を形成してもよい。
また、上述した実施形態では、ダイ加工内周面41bおよびパンチ加工外周面42aがパンチ移動方向(上下方向)に平行な面として形成された形成されているものとして説明したが、ダイ加工内周面41bおよびパンチ加工外周面42aの具体的態様はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
10 ・・・ 角型缶製造装置
20 ・・・ 第1絞りユニット
21 ・・・ ダイ
21a ・・・ ダイ加工貫通孔
22 ・・・ パンチ
23 ・・・ ブランクホルダ
30 ・・・ 第2絞りユニット
31 ・・・ ダイ
31a ・・・ ダイ加工貫通孔
32 ・・・ パンチ
33 ・・・ ブランクホルダ
40 ・・・ 絞りしごきユニット
41 ・・・ ダイ
41a ・・・ ダイ加工貫通孔
41b ・・・ ダイ加工内周面
41c ・・・ ダイ長辺壁加工部
41d ・・・ ダイ短辺壁加工部
41e ・・・ 湾曲角部
41f ・・・ テーパ加工面
42 ・・・ パンチ
42a ・・・ パンチ加工外周面
42b ・・・ パンチ長辺壁加工部
42b-1 ・・・ 加工頂部
42b-2 ・・・ 傾斜部
42c ・・・ パンチ短辺壁加工部
42d ・・・ 湾曲角部
43 ・・・ ブランクホルダ
50 ・・・ 形状矯正ユニット
51 ・・・ ダイ
51a ・・・ ダイ加工貫通孔
52 ・・・ 形状矯正パンチ
52a ・・・ パンチ本体
52b ・・・ 短辺壁側押さえ部
52c ・・・ 長辺壁押圧部
52d ・・・ 底壁押圧部
53 ・・・ 底壁押圧部材
54 ・・・ 外側サポート部材
60 ・・・ 角型缶(最終成形品)
61 ・・・ 底壁
62 ・・・ 底長辺部
63 ・・・ 底短辺部
64 ・・・ 底湾曲角部
65 ・・・ 角型筒状部
66 ・・・ 長辺壁
67 ・・・ 短辺壁
68 ・・・ 角部壁
60A ・・・ ブランク
60B ・・・ 第1中間成形品
60C ・・・ 第2中間成形品
61C ・・・ 底壁予定部
65C ・・・ 筒状部予定部
66C ・・・ 長辺壁予定部
67C ・・・ 短辺壁予定部
68C ・・・ 角部壁予定部
60D ・・・ 第3中間成形品
61D ・・・ 底壁予定部
65D ・・・ 筒状部予定部
66D ・・・ 長辺壁予定部
67D ・・・ 短辺壁予定部
69D ・・・ フランジ部
60E ・・・ 第4中間成形品