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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149467
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/60 20060101AFI20231005BHJP
   A01D 41/127 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01F12/60
A01D41/127 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058057
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大地
(72)【発明者】
【氏名】石田 健之
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396KE02
2B396KE03
2B396KE04
2B396LA03
2B396LG09
2B396LG12
2B396LP03
2B396LP08
2B396LP12
2B396LP15
2B396LR02
2B396LR13
2B396MA02
2B396MA07
2B396MC07
2B396MC13
2B396MJ11
2B396PA02
2B396PA12
2B396PC01
2B396PC07
2B396PC12
2B396QA24
2B396QA29
2B396QC04
2B396QC05
2B396QE02
2B396QE31
(57)【要約】
【課題】グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整可能なコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、穀粒を貯留するグレンタンク9と、グレンタンク9内に穀粒を吐出口76から吐出する揚穀吐出部70と、グレンタンク9内の水平方向Xの複数の位置P1,P2においてグレンタンク9内に貯留された穀粒の連続的な堆積高さを検知する検知部80と、吐出口76から吐出された穀粒の送り方向を変更可能な案内板85と、検知部80の検知結果に基づいて、案内板85を制御するECUと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留するグレンタンクと、
前記グレンタンク内に穀粒を吐出口から吐出する吐出部と、
前記グレンタンク内の水平方向の複数の位置において前記グレンタンク内に貯留された穀粒の連続的な堆積高さを検知する検知部と、
前記吐出口から吐出された穀粒の送り方向を変更可能な案内部材と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記案内部材を制御する制御部と、を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀粒を貯留するグレンタンクと、
前記グレンタンク内に穀粒を吐出口から吐出する吐出部と、
前記グレンタンク内に貯留された穀粒を撮像する撮像部と、
前記吐出口から吐出された穀粒の送り方向を変更可能な案内部材と、
前記撮像部が撮像した画像データに基づいて、前記案内部材を制御する制御部と、を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記制御部は、前記案内部材の姿勢又は動作パターンを制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御部は、前記グレンタンク内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように前記案内部材を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記制御部は、前記グレンタンク内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように前記案内部材を制御する第1制御モードと、水平方向において前記グレンタンク内の第1位置よりも前記吐出口から遠い第2位置に優先的に穀粒が堆積するよう前記案内部材を制御する第2制御モードと、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレンタンクを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、刈取られた穀稈を脱穀し、脱穀された穀粒をグレンタンクに貯留する。従来、特許文献1に示すように、グレンタンク内に高さ方向に間隔をあけて配置された複数のリミットスイッチにより、グレンタンク内に貯留された穀粒の堆積高さを検出し、検出した穀粒の堆積高さに基づいてグレンタンク内の穀粒の貯留量を求めるコンバインが提案されている。グレンタンク内の穀粒の貯留量を求める際には、できるだけ均平であることが望ましい。そこで、特許文献1に示すコンバインでは、グレンタンク内に堆積した穀粒の表層を均すために、水平方向に延びる直管などの均平体を備える回転軸をグレンタンク内に配置し、回転軸が回転することで均平体が穀粒の山を崩すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-58166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グレンタンク内に貯留される穀粒において水平方向の各位置に要求される適正な堆積高さは、例えばグレンタンク内に貯留されている穀粒の量や穀粒の種類など、状況によって異なる。特許文献1に記載の均平体で均すだけでは様々な状況に対応しきれないこともあり、改良が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整可能なコンバインを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンバイン(1)は、穀粒を貯留するグレンタンク(9)と、
前記グレンタンク(9)内に穀粒を吐出口(76)から吐出する吐出部(70)と、
前記グレンタンク(9)内の水平方向の複数の位置において前記グレンタンク(9)内に貯留された穀粒の連続的な堆積高さを検知する検知部(80)と、
前記吐出口(76)から吐出された穀粒の送り方向を変更可能な案内部材(85)と、
前記検知部(80)の検知結果に基づいて、前記案内部材(85)を制御する制御部(100)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンバイン(1)は、穀粒を貯留するグレンタンク(9)と、
前記グレンタンク(9)内に穀粒を吐出口(76)から吐出する吐出部(70)と、
前記グレンタンク(9)内に貯留された穀粒を撮像する撮像部(83)と、
前記吐出口(76)から吐出された穀粒の送り方向を変更可能な案内部材(85)と、
前記撮像部(83)が撮像した画像データ(300)に基づいて、前記案内部材(85)を制御する制御部(100)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0008】
例えば、図6図9(a)及び図9(b)を参照して、前記制御部(100)は、前記案内部材(85)の姿勢又は動作パターンを制御する。
【0009】
また、例えば、図4及び図6を参照して、前記制御部(100)は、前記グレンタンク(9)内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように前記案内部材(9)を制御する。
【0010】
また、例えば、図4図6及び図11を参照して、前記制御部(100)は、前記グレンタンク(9)内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように前記案内部材を制御する第1制御モードと、水平方向において前記グレンタンク(9)内の第1位置(A1)よりも前記吐出口(76)から遠い第2位置(A2)に優先的に穀粒が堆積するよう前記案内部材(85)を制御する第2制御モードと、を有する。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、案内部材の姿勢又は動作パターンを制御することにより、グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて効率よく調整することができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によると、グレンタンク内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように案内部材を制御することにより、グレンタンク内に貯留される穀粒の表層を略均平にすることができる。
【0016】
請求項5に係る本発明によると、第1制御モードにおいては、グレンタンク内に貯留される穀粒の表層を略均平にすることができ、第2制御モードにおいては、グレンタンク内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りが調整され、グレンタンク内の穀粒の充填率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施の形態に係るコンバインを示す斜視図。
図2】脱穀装置を示す左側面図。
図3】脱穀装置及びグレンタンクを示す横断面図。
図4】グレンタンクの内部構造を示す右側面図。
図5】グレンタンクの内部構造を示す平面図。
図6】コンバインの制御系を示すブロック図。
図7】(a)及び(b)は表示画面を示す説明図。
図8】ECUの制御処理を示すフローチャート。
図9】(a)及び(b)は案内板の制御を説明するための模式図。
図10】撮像画像の模式図。
図11】第2の実施形態に係るECUの制御処理を示すフローチャート。
図12】(a)及び(b)は変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るコンバイン1を示す斜視図である。図2は、脱穀装置7を示す左側面図である。図3は、脱穀装置7及びグレンタンク9を示す横断面図である。図4は、グレンタンク9の内部構造を示す右側面図である。図5は、グレンタンク9の内部構造を示す平面図である。コンバイン1は、稲、麦又は大豆等の穀粒を収穫する、例えば自脱型のコンバインである。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1は、クローラ走行装置2により支持され、不図示のエンジンを搭載した機体3を有しており、該機体3の前方には、穀稈を刈取ってフィードチェン5(図2)に受け渡す刈取部6が昇降自在かつ左右方向に開閉自在に設けられている。上記機体3の一側方には、上記刈取部6及びフィードチェン5で刈取・搬送された穀稈を脱穀処理及び選別処理する脱穀装置7が設けられており、他側方には、作業者が運転操作を行う運転操作部8が設けられている。
【0020】
上記運転操作部8の後方には、上記脱穀装置7で脱穀・選別された穀粒を貯留するグレンタンク9が配置されており、該グレンタンク9の後方には、該グレンタンク9内に貯蔵された穀粒を機外に排出する昇降及び回動自在の排出オーガ10が設けられている。上記脱穀装置7で脱穀が終わった排藁は、該脱穀装置7の後部に配置されたカッター装置14で切断され、機体3後方の刈取跡地に拡散排出可能である。
【0021】
エンジンと刈取部6との間には不図示の刈取クラッチが設けられ、エンジンと脱穀装置7との間には不図示の脱穀クラッチが設けられている。刈取クラッチ及び脱穀クラッチの断接により、刈取部6及び脱穀装置7の停止と駆動が切り換えられる。
【0022】
上記刈取部6は、圃場の穀稈を分草する回動自在のデバイダ13と、該デバイダ13の後方で分草された穀稈を引き起こす引起装置15と、引起された穀稈を刈取るレシプロ式の不図示の刈刃と、刈取った穀稈を搬送してフィードチェン5に受け渡す不図示の穀稈搬送装置と、穀稈の扱ぎ深さを調節する不図示の扱深搬送体と、を有する。
【0023】
上記運転操作部8は、運転席21と、上記運転席21の前方に配置され、ボタン操作で脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入切して、エンジンから上記脱穀装置7又は刈取部6への動力をそれぞれ入切し得るパワークラッチスイッチ26と、タッチパネル式の液晶モニタ30と、を有している。
【0024】
パワークラッチスイッチ26は、刈取部6及び脱穀装置7の駆動状態を切り換えるモーメンタリ式のシーソースイッチである。刈取部6及び脱穀装置7の駆動状態としては、刈取部6及び脱穀装置7の両方が駆動停止された停止状態と、刈取部6が駆動停止され且つ脱穀装置7が駆動された脱穀状態と、刈取部6及び脱穀装置7の両方が駆動された刈取状態との3つがある。脱穀クラッチ及び刈取クラッチの両方を切断させることによって停止状態に遷移し、脱穀クラッチを接続させ且つ刈取クラッチを切断させることによって脱穀状態に遷移し、脱穀クラッチ及び刈取クラッチの両方を接続状態とすることによって刈取状態に遷移する。
【0025】
図2及び図3に示すように、脱穀装置7は、刈取部6に刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部35と、脱穀部35の真下に配置される選別部36と、脱穀部35及び選別部36の後方に配置される排藁処理部37と、を有しており、刈取部6(図1参照)によって刈り取られた穀稈は、フィードチェン5及び挟持レールによって後方に搬送され、穀稈の穂先側が脱穀部35に進入して脱穀される。該脱穀部35で脱穀された穀粒及び脱穀の際に発生する切れ藁等の夾雑物からなる処理物は、脱穀部35から上記選別部36に漏下し、該選別部36において揺動選別及び風選別されて、穀粒のみがグレンタンク9に貯留される。上記フィードチェン5の終端部には、排藁搬送装置39が連設されており、上記脱穀部35にて脱穀された後の排藁は、排藁処理部37へ搬送されて、該排藁処理部37で切断又は結束処理される。
【0026】
より詳しく説明すると、上記脱穀部35は、機体前後方向に沿って延設された扱室40を有しており、上記扱室40は、機体前後方向である搬送方向に長い円筒形状からなる扱胴41を回転自在に支持している。該扱胴41は、その中途部において前後に分割して構成されており、これら2つの扱胴41a,41bは、その外周面に多数の扱歯41c,…が取付けられ、かつ前方側の扱胴41aと後方側の扱胴41bとを異なる回転速度で駆動可能に構成されている。
【0027】
扱室40の上部には、多数の送塵ガイド42が配置されており、これら送塵ガイド42の角度を任意に変えることで、扱室40内の藁屑や穀粒等の滞留時間を制御することができる。上記扱室40の下方には、扱胴41に沿って、複数の孔が明いた受網43が配置されており、受網43からは、脱穀された穀粒及び切れ屑などの夾雑物が漏下物として上記選別部36へと漏下する。なお、扱室40の後方に、処理胴を回転自在に支持する処理室を更に設け、扱室40で脱穀処理しきれなかった処理物を処理室内で処理するように構成してもよい。
【0028】
選別部36は、上記受網43の下方に配設された揺動選別体45と、該揺動選別体45の前部下方側から後部上方側に向かって選別風を送風する唐箕ファン46及び送風ファン47と、排塵ファン48と、を有している。上記揺動選別体45は、上下三段構造となっており、上段のフィードパン49、チャフシーブ50、ストローラック51と、中段のチャフシーブ52、ストローラック53と、下段のグレンシーブ55と、からなり、これらが連続して設けられて、前後に揺動されることで処理物が篩選別される。上記チャフシーブ50,52は、前後方向に所定間隔を存して並設される複数のフィンによって構成されており、チャフシーブ52のフィンは開閉自在に構成されている。チャフシーブ52の上方には、フラグ及びポテンショメータ等からなる不図示の層厚センサが設けられており、処理物によって押圧されて揺動するフラグの開度を層厚センサによって検知することで、チャフシーブ52上の処理物の層厚を検知することができる。
【0029】
上記フィードパン49は、波板状の移送板であって、上記受網43から漏下する処理物を受け止めて後方移送する。後方移送されたこれら処理物を揺動選別体45で篩選別すると共に、上記唐箕ファン46及び送風ファン47によって起風された選別風によって風選別し、所定の目合の金網部材からなるグレンシーブ55を通過した穀粒は、一番物として一番ラセン56に落下する。上記揺動選別体45の終端部まで移送された処理物は、ストローラック51,チャフシーブ52及びストローラック53を介して二番ラセン57に落下する。また、上記ストローラック53にて落下規制された長藁及び排塵は、その終端まで移送され、排塵ファン48によって機外に排出される。
【0030】
図4及び図5に示すように、グレンタンク9の上部には、吐出部の一例である揚穀吐出部70を介して揚穀筒58が接続されている。揚穀吐出部70は、揚穀筒58の上端に設けられている。揚穀筒58及び揚穀吐出部70の内部には、回転体61が配置されている。回転体61は、揚穀筒58の内部に配置された一番縦ラセン59と、揚穀吐出部70の内部に配置された跳ね出し板60とを含む。一番縦ラセン59は、揚穀筒58の中心と略一致する回転軸61aを中心に回転する。跳ね出し板60は、一番縦ラセン59の上端に設けられ、一番縦ラセン59と一体に回転軸61aを中心に回転する。上記一番ラセン56に落下した一番物である穀粒は、一番ラセン56によって一番縦ラセン59に供給され、一番縦ラセン59によって揚送される。一番縦ラセン59によって揚穀筒58内を揚送された穀粒は、跳ね出し板60により、揚穀吐出部70からグレンタンク9内に広範囲に飛散され、グレンタンク9内に貯留される。上記二番ラセン57に落下した二番物は、二番縦ラセンによって揚送された後、再度、揺動選別体45に放出される。なお、二番物を扱室40に放出するように構成してもよい。
【0031】
揚穀吐出部70は、跳ね出し板60を覆う箱状の筐体を含む。揚穀筒58と一番縦ラセン59とにより揚上搬送された穀粒は、揚穀吐出部70の内部に搬入され、跳ね出し板60の回転により飛散されて揚穀吐出部70に案内され、吐出口76からグレンタンク9の内部に吐出される。
【0032】
グレンタンク9の内側の最深部には前後方向に沿うように排出螺旋18が回転自在に設けられている。該排出螺旋18の回転により、グレンタンク9の最深部に貯留された穀粒はグレンタンク9の後部へ向けて搬送され、グレンタンク9の下部後方からグレンタンク9の外部に搬出され、穀粒を揚送する縦搬送螺旋19を備える排出オーガ10によって機外へ排出される。
【0033】
グレンタンク9には、グレンタンク9内の水平方向Xの複数の位置P1,P2においてグレンタンク9内に貯留された穀粒Gの堆積高さを検知する複数の測距センサ81,82が配置されている。測距センサ81,82を含んで検知部80が構成されている。各測距センサ81,82は、例えばTOF(time of flight)センサであり、高さ方向Zにおいて連続的な穀粒Gの堆積高さを検知することができる。測距センサの数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよく、穀粒の収量の計測に求められる精度に応じて決めればよい。数を多くするほど、穀粒の収量を計測する際の精度が向上する。
【0034】
各測距センサ81,82は、穀粒Gが所定高さに達したかどうかをリミットスイッチなどのオンオフで検知するものではなく、穀粒Gの堆積高さを定量的な値で検知する。各測距センサ81,82は、所定周期で測定した堆積高さに関する情報(データ)を、電子制御ユニットであるECU100(図6)へ送信する。
【0035】
測距センサ81,82は、グレンタンク9の上部を構成する天板90に、水平方向Xに間隔をあけて固定されている。測距センサ81は、水平方向Xの位置P1における高さ方向Zの穀粒Gの堆積高さを検知する。測距センサ82は、水平方向Xの位置P2における高さ方向Zの穀粒Gの堆積高さを検知する。高さ方向Zは、上下方向でもあり、鉛直方向でもある。
【0036】
ここで、測距センサ81,82は光を出射してから光を受光するまでの時間を測定するものであるが、その測定時間は距離、即ち堆積高さに換算することが可能であるため、測距センサ81,82は穀粒Gの堆積高さを検知していることになる。よって、測距センサ81は位置P1における穀粒Gの堆積高さを検知可能であり、測距センサ82は位置P2における穀粒Gの堆積高さを検知可能である。位置P1と位置P2は、水平方向X、具体的には排出螺旋18の軸方向、即ち機体3の前後方向に間隔をあけた位置であり、高さ方向Zに視て、排出螺旋18と重なる位置である。
【0037】
また、グレンタンク9には、グレンタンク9内に貯留された穀粒Gを撮像するカメラ83が配置されている。カメラ83は、撮像部の一例であり、デジタルカメラである。カメラ83は、本第1の実施の形態では単眼カメラであるが、複眼カメラ(例えば3Dカメラ)であってもよい。カメラ83は、グレンタンク9の天板90に配置され、グレンタンク9の内部を撮像可能である。具体的には、カメラ83の画角(撮像エリア)が、グレンタンク9に貯留された穀粒Gの表層と、グレンタンク9の内側壁とを含むように天板90に配置されている。
【0038】
グレンタンク9内には、案内部材の一例である案内板85が複数設けられている。各案内板85は、グレンタンク9の天板90に互いに間隔をあけて回動可能に配置されている。案内板85は、平板状であるが、この形状に限定されるものではなく、穀粒を案内しやすい形状であればどのような形状であってもよい。
【0039】
複数の案内板85は駆動部の一例である案内板モータ96(図6)に駆動されることで回動する。案内板モータ96は、電動モータである。本第1の実施の形態では、複数の案内板85は、案内板モータ96で連動して駆動されるように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば各案内板85に個別に電動モータを設け、各案内板85を個別に駆動可能に構成してもよい。また、案内板85の個数は、複数に限定されるものではなく、1つであってもよい。
【0040】
案内板85は、吐出口76から吐出される穀粒が衝突し得る位置に配置される。案内板85が回動されることよって案内板85の姿勢が変更されることにより、案内板85に対する穀粒の入射角度及び反射角度が変更される。このような構成により、案内板85は、吐出口76から吐出された穀粒の送り方向を変更可能である。
【0041】
次に、コンバイン1の制御系について説明する。図6に示すECU100は、機体3全体を制御するものである。ECU100は制御部の一例である。ECU100の入力ポートには、パワークラッチスイッチ26、穀粒排出スイッチ91、測距センサ81,82、カメラ83、水分センサ93が接続されている。ECU100の出力ポートには、パワークラッチモータ94、穀粒排出クラッチモータ95、及び案内板モータ96が接続されている。また、ECU100の入出力ポートには、タッチパネル式の液晶モニタ30が接続されている。
【0042】
ECU100は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータで構成されている。ECU100は、プロセッサの一例である不図示のCPU、記憶デバイスの一例である不図示のROMやRAM、入出力インタフェースの一例である不図示のI/Oを備える。記憶デバイスには、プロセッサに演算処理を行わせるプログラムや演算処理に用いる各種のパラメータが格納されている。また、記憶デバイスには、センサによって取得された検知データ(センサ値)や画像データなどの各種のデータが格納可能となっている。また、ECU100は、I/Oを介して、データを外部機器に送信したり、外部機器からデータを受信したりすることができる。
【0043】
パワークラッチスイッチ26は、オペレータの操作に応じて、エンジンから脱穀装置7又は刈取部6への動力をそれぞれ断続する断続指令をパワークラッチモータ94へ出力するスイッチである。パワークラッチモータ94は、パワークラッチスイッチ26の断続指令に応じて脱穀クラッチと刈取クラッチを断続させる電動モータである。
【0044】
穀粒排出スイッチ91は、穀粒排出クラッチモータ95へ断続指令を出力するスイッチである。穀粒排出クラッチモータ95は、穀粒排出スイッチ91の断続指令に応じて不図示の穀粒排出クラッチを断続させる電動モータである。穀粒排出クラッチが接続状態となると、排出螺旋18及び縦搬送螺旋19等がエンジンの動力によって回転駆動され、グレンタンク9内の穀粒が排出オーガ10を介して機外に排出される。
【0045】
測距センサ81,82は、上述したように、グレンタンク9内に貯留された穀粒のそれぞれの位置P1,P2における堆積高さを検知するセンサであり、堆積高さに応じた検知データ(検知信号)を所定周期でECU100へ出力する。
【0046】
カメラ83は、上述したように、グレンタンク9内を撮像する撮像装置であり、画像データを所定周期でECU100へ出力する。カメラ83は、グレンタンク9内の穀粒の堆積状態を検知するのに用いられる。即ち、ECU100は、グレンタンク9内を撮像して得られた画像データに基づいて、水平方向Xの複数の位置の堆積高さを求めることができる。
【0047】
水分センサ93は、グレンタンク9内に設けられ、グレンタンク9内に放出される穀粒の水分率をサンプリングして検知する。
【0048】
案内板モータ96は、上述したように、案内板85を駆動する電動モータであり、ECU100によって駆動制御される。液晶モニタ30は、上述したように、タッチパネル式の液晶モニタである。
【0049】
ECU100は、グレンタンク9内に貯留する穀粒の貯留量(収量)を算出する場合、次のようなステップを踏む。先ず、エンジンが始動して電源が供給されると、ECU100は、初期化を行った後、パワークラッチスイッチ26の指令に基づきパワークラッチモータ94を作動させて脱穀装置7、或いは刈取部6及び脱穀装置7を駆動する。
【0050】
また、ECU100は、脱穀装置7を駆動すると同時に、案内板モータ96を制御することで、案内板85を制御する。さらに、ECU100は、電源が供給されている間、グレンタンク9内に貯留する穀粒の堆積高さを、複数の測距センサ81,82、又はカメラ83を用いて測定する。
【0051】
そして、ECU100は、グレンタンク9内に貯留する穀粒の堆積高さに基づいて穀粒の貯留量(収量)を算出する。例えば、ECU100は、堆積高さのデータと、堆積高さのデータに対応付けされた穀粒の貯留量(収量)のデータとで構成されたテーブルデータを参照して、検知した堆積高さに対応する貯留量(収量)を決定する。テーブルデータは、予め記憶デバイスに記憶させておけばよい。このテーブルデータを参照することによって、穀粒の貯留量(収量)を取得することができる。このテーブルデータは、グレンタンク9内に穀粒を堆積させて得られる実測値に基づいて作成することもでき、このように実測値を用いれば収穫する作物に応じた正確な貯留量(収量)を得ることができる。
【0052】
ECU100は、水分センサ93から取得される穀粒の水分率のデータと、予め記憶デバイスに記憶させておいた穀粒の比重データと、前述の穀粒の貯留量のデータと、を使用して、グレンタンク9内に貯留する穀粒の重量を算出する。なお、穀粒の比重は、作物や品種等によって異なるため、実測した比重を使用してもよく、この場合、さらに正確な穀粒の重量を求めることができる。
【0053】
さらに、ECU100は、穀粒の重量と水分率に基づき、穀粒の乾燥重量を算出してもよい。例えば、稲籾であれば15パーセントに乾燥させた際の乾燥重量を算出することができる。また、ECU100は、収穫作業の開始後の穀粒排出時間や休憩時間を除いた実刈取作業時間や、グレンタンク9内の穀粒を機外に排出した後からの実刈取作業時間を算出してもよく、また、その間の穀粒の総貯留量から単位時間当たりの穀粒の収穫量を求めてもよく、さらに、グレンタンク9の貯留可能な最大容積から現在の貯留量を差し引いた空き容積から満杯となる予測時間を求めてもよい。そして、ECU100は、これらの取得した情報を、液晶モニタ30にリアルタイムで表示してもよい。
【0054】
また、ECU100は、圃場当たりの総収穫量や作業時間等を、記憶デバイスに記憶させてもよい。このような情報は、今後の作業管理に用いることができる。また、リアルタイムキネマティック(RTK:Real Time Kinematic)による全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等を採用して作業軌跡を取得するものであれば、圃場における各領域の収穫量等をマップとして纏めることができ、精密農業を行う上で役立たせることができる。さらに、ECU100と携帯通信端末とを近距離通信させて、また、携帯通信端末と乾燥施設や管理センターとを遠距離通信させて情報のやり取りを行えば、乾燥機の空き状態やトラックの配車手配をシステム化することができる。
【0055】
一方、図7(a)及び図7(b)は、液晶モニタ30に表示される表示画面31,32を示す説明図である。図7(a)は、通常の表示画面31である。パワークラッチスイッチ26によって刈取部6及び脱穀装置7にエンジン動力が伝達された状態で、図7(a)に示す表示画面31において、オペレータに測定ボタン311が操作されると、ECU100は、液晶モニタ30の表示を、図7(a)に示す表示画面31から図7(b)に示す表示画面32に遷移させる。表示画面32は、測定結果、即ちグレンタンク9内の穀粒の貯留量(収量)を示す収量の情報(数値)、及び穀粒の水分率の情報(数値)を表示する表示画面である。ECU100は、測定した穀粒の収量の情報(数値)を表示画面32に表示する。
【0056】
作物選択ボタン321は、オペレータが穀粒(作物)の種類を選択するボタンである。例えば、作物選択ボタン321が操作される度に、選択される穀粒の種類が切り替えられる。図7(b)の例では、「稲」、「小麦」、「大麦」の3種類の穀粒が選択可能であり、作物選択ボタン321が操作される度に「稲」、「小麦」、「大麦」の各ランプの点灯状態が遷移する。そして、ECU100は、水分センサ93からの出力電圧に基づく水分率の値を作物に合わせて調整して表示画面32に表示する。なお、2つ以上の穀粒が選択可能であればよく、穀粒の種類はこれらに限定されるものでない。
【0057】
なお、液晶モニタ30がタッチパネル式の入力表示デバイスである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば液晶モニタ30の代わりに、表示デバイスと、入力デバイス(例えばスイッチやボタン)とがECU100に接続されてもよい。
【0058】
ここで、グレンタンク9内に貯留される穀粒において水平方向Xの各位置に要求される適正な堆積高さは、例えばグレンタンク9内に貯留されている穀粒の量や穀粒の種類など、状況によって異なる。そこで、本第1の実施の形態では、ECU100は、検知部80が出力した検知部80の検知結果に基づいて案内板85を制御する。以下、図8に示す制御処理のフローチャートを参照しながら具体的に説明する。図8に示すECU100の制御処理は、所定周期で繰り返し実行される。
【0059】
ステップS101において、ECU100は、収穫作業中かどうかを判断する。収穫作業中であるかどうかは、刈取部6及び脱穀装置7が駆動状態であるかどうかで判断可能である。即ち、刈取部6及び脱穀装置7が駆動状態であれば、収穫作業中であり、そうでなければ収穫作業中ではない。
【0060】
収穫作業中でなければ(S101:NO)、ECU100は、制御処理を終了する。収穫作業中であれば(S101:YES)、ECU100は、ステップS102の処理に移行する。ステップS102において、ECU100は、各センサ81,82,93からセンサ値(検知結果)を読み込み、かつ作物選択ボタン321の選択結果を読み込む。
【0061】
次に、ステップS103において、ECU100は、測距センサ81,82の検知結果に基づいて、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏り度合いを算出する。ここで、穀粒の偏り度合いとは、例えば水平方向Xの複数の位置における穀粒の堆積高さの分散、標準偏差、又は穀粒高さの最大値と最小値との差分などの指標であり、数値化して表現される。偏り度合いの数値が高いほど、偏りが大きいことを示す。
【0062】
本第1の実施の形態の例では、穀粒の偏り度合いとは、2つの位置P1,P2における穀粒の堆積高さを検知するため、位置P1における穀粒の堆積高さと、位置P2における穀粒の堆積高さとの差分である。
【0063】
次に、ステップS104において、ECU100は、穀粒の偏り度合いに基づき、案内板85を制御する制御目標を決定する。制御目標とは、案内板85の姿勢又は動作パターンである。案内板85の姿勢とは、案内板85の固定角度である。また、案内板85の動作パターンとは、案内板85の揺動範囲、案内板85の揺動スピード(周期)、インチングの移動量などである。案内板85の揺動範囲は、案内板85の揺動端の位置及び揺動量で設定することができる。揺動範囲を変更する際には、揺動端の位置及び揺動量の少なくとも一方を変更すればよい。
【0064】
次に、ステップS105において、ECU100は、決定した制御目標に基づいて案内板85を制御する。図9(a)及び図9(b)は、案内板85の制御を説明するための模式図である。
【0065】
制御目標の初期状態において、案内板85が第1姿勢P10に設定される場合を例に説明する。図9(a)に示すように、ECU100は、偏り度合いに応じて、案内板85の制御目標を、第1姿勢P10から第2姿勢P20に変更する。例えば、第1姿勢P10をデフォルト姿勢とし、ECU100は、偏り度合いが設定範囲を超えたら第2姿勢P20に変更し、偏り度合いが設定範囲内になったら第1姿勢P10に戻すように案内板85を制御する。このように、ECU100は、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏りが小さくなるように案内板85を制御する。これにより、グレンタンク9内の穀粒を略均平にすることができる。
【0066】
また、制御目標の初期状態において、案内板85が第1揺動範囲R10に設定される場合を例に説明する。図9(b)に示すように、ECU100は、偏り度合いに応じて、案内板85の制御目標を、第1揺動範囲R10から第2揺動範囲R20に変更する。このように、ECU100は、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏りが小さくなるように案内板85を制御する。これにより、グレンタンク9内の穀粒を略均平にすることができる。
【0067】
いずれにおいても、ECU100は、求めた偏り度合いに基づき、堆積高さが相対的に低い位置に穀粒が優先的に送られるように、案内板85を制御する。このように、ECU100は、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように制御目標を決定し、決定した制御目標で案内板85を制御する。
【0068】
以上の制御動作により、収穫作業中においてグレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さが略均平に制御されるので、穀粒の収量を精度よく求めることが可能となる。
【0069】
以上、検知部80(測距センサ81,82)を用いて案内板85を制御する場合について説明したが、カメラ83を用いて案内板85を制御することも好適である。本第1の実施の形態では、案内板85の制御に、検知部80及びカメラ83のいずれか一方を選択的に用いる。以下、カメラ83を用いた案内板85の制御について説明する。
【0070】
図10は、カメラ83の撮像により得らえた撮像画像(画像データ)300の模式図である。ステップS102において、ECU100は、カメラ83から撮像画像(画像データ)300を取得する。撮像画像300には、グレンタンク9に相当するグレンタンク画像9Aと、吐出口76に相当する吐出口画像76Aと、グレンタンク9内に貯留された穀粒Gの表層に相当する穀粒画像GAと、が含まれる。グレンタンク9内には、複数の位置に例えば目盛りなどの目印が付与されている。なお、グレンタンク9内の色を、穀粒とは異なる色にしてもよい。ECU100は、撮像画像300を解析することにより穀粒画像GAとグレンタンク画像9Aとの境界位置を判別し、境界位置に基づき、水平方向におけるグレンタンク内の複数の位置の堆積高さを求める。次に、ECU100は、ステップS103において偏り度合いを算出し、ステップS104において制御目標を決定し、ステップS105において案内板85を制御する。
【0071】
このように、ECU100は、撮像画像(画像データ)300に基づいて案内板85を制御する。よって、カメラ83を用いた場合であっても、収穫作業中においてグレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さが略均平に制御することができ、穀粒の収量を精度よく求めることが可能となる。また、オペレータは、穀粒の収量の情報(数値)を、図7(b)に示す表示画面32で確認することができる。
【0072】
なお、カメラ83が3Dカメラである場合には、撮像画像(撮像データ)から、堆積している穀粒の凹凸の高さや分布を求めてよい。また、撮像画像から直接収量を計算してもよい。
【0073】
また、上記の制御目標は、作物に応じて異ならせてもよい。即ち、ステップS104において、制御目標を作物に応じて決定してもよい。また、グレンタンク9内の穀粒を略均平にする制御に限らず、堆積高さが各位置で異なっても、各位置での穀粒の堆積高さの変化量が所定範囲内に収まるように制御してもよい。
【0074】
以上、第1の実施の形態によると、測距センサ81,82により、グレンタンク9内の水平方向Xの位置P1,P2における穀粒の連続的な堆積高さを検知することができる。そして、ECU100は、測距センサ81,82の検知結果に基づいて案内板85を制御するので、条件(穀粒の種類や貯まり具合)に関わらず、グレンタンク9内の穀粒の貯まり方を、目標とする状態に調整することができる。これにより、グレンタンク9内における穀粒の充填率を上げることができ、収量の検出精度を向上させることができ、また収穫作業時に機体3のバランスを安定化させることができる。このように、グレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整することができる。
【0075】
また、堆積高さの検知にカメラ83を用いる場合においても、グレンタンク9内の穀粒の貯まり方を、目標とする状態に調整することができる。これにより、グレンタンク9内における穀粒の充填率を上げることができ、収量の検出精度を向上させることができ、また収穫作業時に機体3のバランスを安定化させることができる。このように、グレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて調整することができる。
【0076】
また、ECU100が案内板85の姿勢又は動作パターンを制御するようにしたので、吐出口76から吐出された穀粒が案内板85に衝突して跳ね返る方向が調整される。これにより、グレンタンク9内において目標とする方向に穀粒が案内されやすくなり、グレンタンク9内の穀粒の貯まり方を、目標とする状態に調整することができる。よって、グレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さの偏りを状況に応じて効率よく調整することができる。
【0077】
また、ECU100がグレンタンク9内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように案内板85を制御することで、グレンタンク9内に貯留される穀粒の表層を略均平にすることができる。これにより、収量の検出精度を向上させることができ、また収穫作業時に機体3のバランスを安定化させることができる。
【0078】
<第2の実施の形態>
次いで、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、グレンタンク内に貯留された穀粒が満杯に近いかどうかで案内部材の制御モードを切り替える。第2の実施の形態のコンバインの構成については、第1の実施の形態と同様であるため、図示および説明を省略する。
【0079】
図11は、第2の実施の形態に係るECU100の制御処理のフローチャートである。図11に示すECU100の制御処理は、所定周期で繰り返し実行される。
【0080】
ステップS201において、ECU100は、収穫作業中かどうかを判断する。ステップS201の処理は、ステップS101の処理と同様である。
【0081】
収穫作業中でなければ(S201:NO)、ECU100は、制御処理を終了する。収穫作業中であれば(S201:YES)、ECU100は、ステップS202の処理に移行する。ステップS202において、ECU100は、各センサ81,82,93からセンサ値(検知結果)を読み込み、かつ作物選択ボタン321の選択結果を読み込む。ステップS202の処理は、ステップS102の処理と同様である。
【0082】
次に、ステップS203において、ECU100は、グレンタンク9内が穀粒で満杯に近いかどうかを判断する。グレンタンク9内が穀粒で満杯に近いかどうかは、測距センサ81,82の検知結果に基づいて判断することができる。または、カメラ83で撮像した画像データを解析して判断することもできる。または、グレンタンク9内に配置された不図示のリミットスイッチで判断することもできる。例えば、ECU100は、グレンタンク9内の穀粒の堆積高さが所定値に達したことにより、グレンタンク9内が穀粒で満杯に近いと判断する。
【0083】
グレンタンク9内が穀粒で満杯に近い状態でなければ(S203:NO)、ECU100は、均平を重視する第1制御モードを選択する(S204)。グレンタンク9内が穀粒で満杯に近い状態であれば(S203:YES)、ECU100は、穀粒の充填率を重視する第2制御モードを選択する(S205)。
【0084】
図2を参照しながら説明すると、第1制御モードは、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏り度合いが設定範囲内となるように案内板85を制御する制御モードである。第2制御モードは、水平方向Xにおいてグレンタンク9内の第1位置A1よりも吐出口76から遠い第2位置A2に優先的に穀粒が堆積するよう案内板85を制御する制御モードである。即ち、グレンタンク9内に堆積する穀粒の堆積高さが、吐出口76付近に到達した場合、均平を重視する制御をやめて、図2中、グレンタンク9の左側、即ち吐出口76と反対側の位置A2に穀粒が溜まるように制御を変更する。これにより、グレンタンク9内における穀粒の充填率を向上させることができる。
【0085】
次に、ステップS206において、ECU100は、測距センサ81,82の検知結果に基づいて、グレンタンク9内に貯留された穀粒の偏り度合いを算出する。ステップS206の処理は、ステップS103の処理と同様である。
【0086】
次に、ステップS207において、ECU100は、穀粒の偏り度合いに基づき、案内板85を制御する制御目標を決定する。具体的には、ECU100は、算出した偏り度合いと、選択した制御モードと、オペレータに選択された作物の種類と、堆積高さと、に基づいて、制御目標を決定する。
【0087】
次に、ステップS208において、ECU100は、決定した制御目標に基づいて案内板85を制御する。ステップS208の処理は、ステップS105の処理と同様である。
【0088】
このように、グレンタンク9内の穀粒が満杯に近い状態になるまでは、グレンタンク9内に供給される穀粒は、略均平となるようにグレンタンク9内に堆積していく。よって、穀粒の収量の検出精度が向上し、また機体3のバランスが安定化される。図7(b)の表示画面32に切り替えが行われていれば、ECU100は、収量の情報を表示画面32に表示する。よって、オペレータは、穀粒の収量の情報(数値)を表示画面32で確認することができる。
【0089】
そして、グレンタンク9内の穀粒が満杯に近い状態となると、例えば吐出口76付近の穀粒が満杯に近い状態になると、吐出口76から吐出される穀粒が遠くの位置A2に優先的に供給されるようになる。位置A2に穀粒を充填することで、位置A2より先に位置A1に穀粒の山が形成されるのを防止でき、吐出口76から位置A2に供給しようとする穀粒が途中で遮蔽されるのを低減することができる。よって、グレンタンク9内の穀粒の充填率が向上する。
【0090】
また、状況に応じて第1制御モード及び第2制御モードのいずれか一方が選択的に実行されるので、第1制御モードにおいては、グレンタンク9内に貯留される穀粒の表層を略均平にすることができ、第2制御モードにおいては、グレンタンク9内に貯留される穀粒の堆積高さの偏り具合が調整され、グレンタンク9内の穀粒の充填率を向上させることができる。
【0091】
以上、測距センサ81,82を用いて案内板85を制御する場合について説明したが、カメラ83を用いて案内板85を制御する場合についても同様である。
【0092】
以上、実施の形態について説明したが、上記の例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0093】
[変形例]
図12(a)及び図12(b)は変形例の説明図である。案内板の数は複数に限定されるものではなく、図12(a)に示すように、グレンタンク9内に配置される案内板85は、1つであってもよい。
【0094】
また、グレンタンク9内に配置される案内板85の配置位置は、天板90に限定されるものではない。図12(b)に示すように、吐出口76付近の側壁板90Aに案内板85A,85Bが配置されてもよい。案内板85Aは、水平方向に穀粒を案内する案内部材であり、案内板85Bは、上下方向に穀粒を案内する案内部材である。
【0095】
以上の説明では、コンバイン1が、検知部80(複数の測距センサ81,82)及びカメラ83の両方を備え、いずれか一方を選択的に使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知部80及びカメラ83のいずれか一方を備える場合についても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 コンバイン
9 グレンタンク
70 揚穀吐出部(吐出部)
76 吐出口
80 検知部
83 カメラ(撮像部)
85 案内板(案内部材)
100 ECU(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12