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  • 特開-ボイラー設備の排熱再利用装置 図1
  • 特開-ボイラー設備の排熱再利用装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149513
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ボイラー設備の排熱再利用装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20231005BHJP
   F23M 5/08 20060101ALI20231005BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   F22B 3/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F22B1/18 J
F23M5/08 A
F23J15/00 Z
F22B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058123
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】多田 淳
(72)【発明者】
【氏名】馬原 和俊
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA32
3K070DA77
(57)【要約】
【課題】熱風発生炉の水冷ジャケット構造を冷却する熱交換器を備えたボイラー設備の熱交換器から生じる排水を有効利用するボイラー設備の排熱再利用装置を提供する。
【解決手段】本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10は、壁面に水冷ジャケット構造114を設けた熱風発生炉110と、前記熱風発生炉110で発生した燃焼ガスと熱交換して一次蒸気を発生する廃熱ボイラー120と、熱交換後の排ガスを集塵する集塵機140と、前記水冷ジャケット構造114の冷却水と熱交換する熱交換器130を有するボイラー設備100の前記熱交換器130の排水を用いて二次蒸気を発生させるヒートポンプ20を備え、前記二次蒸気を前記集塵機140へ供給することを特徴としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に水冷ジャケット構造を設けた熱風発生炉と、前記熱風発生炉で発生した燃焼ガスと熱交換して一次蒸気を発生する廃熱ボイラーと、熱交換後の排ガスを集塵する集塵機と、前記水冷ジャケット構造の冷却水と熱交換する熱交換器を有するボイラー設備の前記熱交換器の排水を用いて二次蒸気を発生させるヒートポンプを備え、前記二次蒸気を前記集塵機へ供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたボイラー設備の排熱再利用装置であって、
前記二次蒸気を前記集塵機の煙突の外表面へ供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたボイラー設備の排熱再利用装置であって、
前記二次蒸気で前記熱交換器の地下水供給配管を温めることを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載されたボイラー設備の排熱再利用装置であって、
前記二次蒸気を前記集塵機の排ガスダクトの加熱に利用することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載されたボイラー設備の排熱再利用装置であって、
前記二次蒸気を二重管または保温チューブを巻き付けた配管で供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風発生炉の水冷ジャケット構造を冷却する熱交換器を備えたボイラー設備の排熱再利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ごみやプラスチックごみなどの廃棄物を固形燃料にしたRDF(Refuse Derived Fuel)、または紙や木、廃プラスチックから塩素分、発熱量が調整されたRPF(Refuse Paper&Plastic Fuel)などの廃棄物固形燃料は、蒸気発電、蒸気ボイラーなどの燃料に利用されている(例えば、特許文献1に開示)。
【0003】
図2は従来の蒸気ボイラー設備の説明図である。図示のようにボイラー設備100は熱風発生炉110(以下、燃焼炉ともいう)、廃熱ボイラー120、熱交換器130、集塵機140を備えている。昇温用バーナーで熱風発生炉110を加熱する。一次空気ファン112で熱風発生炉110の下方から炉内へ燃焼用空気を導入する。搬送コンベアで炉内へ固形燃料を供給して火格子(ストーカ)により固形燃料を攪拌及び搬送しながら燃焼すると燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは二次空気ファンで燃焼が促進されて炉内の上方出口に設置した廃熱ボイラー120へ送られる。燃焼ガスは廃熱ボイラー120内の水平方向に配置された煙道で給水と熱交換されて熱蒸気を発生させる。燃焼炉の壁面には水冷ジャケット構造114を形成してあり、所定温度に冷却する冷却水が流入している。水冷ジャケット構造114の冷却水は循環させており、熱交換器130で地下水と熱交換している。これにより炉本体が塩素の影響で低温腐食することを低減できる。また廃熱ボイラー120で熱回収された後の排ガスは集塵機140へ導入されて、ガス中のばいじんや反応生成物などをバグフィルタ142によって除去している。その後は誘引送風機で誘引されて煙突144から大気中に放出される。このとき一部は排ガスダクト146を経由して熱風発生炉110の一次空気ファン112へ送られて再利用されている。
【0004】
前述のように熱風発生炉110の水冷ジャケット構造114は冷却水を所定温度に保つために冷却水の循環配管に熱交換器130を設置している。この熱交換器130は外部の地下水を利用して冷却水と熱交換している。熱交換後の地下水は約55℃前後まで加熱された後、そのまま廃棄していた。
一方で、廃熱ボイラー120で発生した蒸気は製造物の乾燥などに利用している他にも集塵機140の集塵機能維持のために使用されている。これは集塵機140の本体の外表面を所定温度に加熱することにより、排ガス中の二酸化硫黄、塩化水素で腐食することを防止するためである。
本来ならば廃熱ボイラー120で発生した蒸気は、生産性を高めるために製造物の乾燥などに全て利用すべきである。しかし、集塵機能を維持して大気中に有害物質が放出されることを防止するために蒸気の一部を別の目的で使用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-218979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、熱風発生炉の水冷ジャケット構造を冷却する熱交換器を備えたボイラー設備の熱交換器から生じる排水を有効利用するボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。また蒸気ボイラーで発生した蒸気を有効活用するボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、壁面に水冷ジャケット構造を設けた熱風発生炉と、前記熱風発生炉で発生した燃焼ガスと熱交換して一次蒸気を発生する廃熱ボイラーと、熱交換後の排ガスを集塵する集塵機と、前記水冷ジャケット構造の冷却水と熱交換する熱交換器を有するボイラー設備の前記熱交換器の排水を用いて二次蒸気を発生させるヒートポンプを備え、前記二次蒸気を前記集塵機へ供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、熱交換器で発生した所定温度の熱水、すなわち排水から二次蒸気を発生させて集塵機の集塵機能の維持に再利用することができる。従って一次蒸気を本来の目的で有効利用して生産性を高めることができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記二次蒸気を前記集塵機の煙突の外表面へ供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、煙突内の腐食成分の結露を抑制できる。これにより煙突の腐食防止が実現できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記二次蒸気で前記熱交換器の地下水供給配管を温めることを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、冬季において熱交換器に供給する地下水が凍結することを防止できる。これにより年間を通じて熱交換器へ地下水を安定供給できる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし第3のいずれか1の手段において、前記二次蒸気を前記集塵機の排ガスダクトの加熱に利用することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、煙突から熱風発生炉の一次空気ファンへ供給される際の温度低下を防止して、燃焼効率を高く保つことができる。また結露を抑制して腐食防止を実現できる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1ないし第4のいずれか1の手段において、前記二次蒸気を二重管または保温チューブを巻き付けた配管で供給することを特徴とするボイラー設備の排熱再利用装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば、二次蒸気の温度を高く保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換器で発生した所定温度の熱水、すなわち排水から二次蒸気を発生させて集塵機の集塵機能の維持に再利用することができる。従って、一次蒸気を本来の目的で有効利用して生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のボイラー設備の排熱再利用装置の構成概略図である。
図2】従来のボイラー設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のボイラー設備の排熱再利用装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0015】
[ボイラー設備の排熱再利用装置10]
図1は、本発明のボイラー設備の排熱再利用装置の構成概略図である。図示のように本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10は、壁面に水冷ジャケット構造114を設けた熱風発生炉110と、前記熱風発生炉110で発生した燃焼ガスと熱交換して一次蒸気を発生する廃熱ボイラー120と、熱交換後の排ガスを集塵する集塵機140と、前記水冷ジャケット構造114の冷却水と熱交換する熱交換器130を有するボイラー設備100の前記熱交換器130の排水(熱水)を用いて二次蒸気を発生させるヒートポンプ20を備え、前記蒸気を前記集塵機140へ供給している。
【0016】
本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10は、熱風発生炉110、廃熱ボイラー120、熱交換器130、集塵機140を備えたボイラー設備100に設ける装置である。
ヒートポンプ20は、放熱側熱交換器22,受熱側熱交換器24と、絞り弁26と、コンプレッサ(圧縮機)28を備え、熱交換器130の排水を用いて二次蒸気を発生させている。ヒートポンプ20の内部には、ヒートポンプ媒体が循環流通する配管L1が形成され、受熱側熱交換器24の出口からコンプレッサ28、放熱側熱交換器22、絞り弁26、受熱側熱交換器24の入口の順に接続している。
【0017】
本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10は、熱交換器130とヒートポンプ20の間で熱交換した熱水を再利用する給水予熱部30を備えている。給水予熱部30は、地下水を二次蒸気にする前にあらかじめ予熱する熱交換器である。給水予熱部30と熱交換器130とヒートポンプの受熱側熱交換器24の間には、予熱媒体が循環流通する配管L2が形成され、給水予熱部30の出口からポンプ32、熱交換器130、ヒートポンプ20の受熱側熱交換器24、給水予熱部30の入口の順に接続している。
熱交換器130は、水冷ジャケット用循環水が循環流通する配管L3が形成され、熱交換器130の出口から水冷ジャケット構造114、ポンプ132、熱交換器130の入口の順に接続している。
本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10は、地下水を熱交換して二次蒸気にする過程で、ヒートポンプ媒体、予熱媒体、水冷ジャケット循環水を循環流通する構成であり、排水が生じない。
【0018】
(作用)
上記構成による本発明のボイラー設備の排熱再利用装置10の作用について、以下説明する。
ボイラー設備で一次蒸気を発生させる過程で水冷ジャケット構造114の水冷ジャケット循環水は加熱される(一例として80℃~90℃)。水冷ジャケット循環水は熱交換器130で予熱媒体と熱交換する。このとき予熱媒体は80℃に加熱される。予熱媒体はヒートポンプ20の受熱側熱交換器24で熱交換される。熱交換で冷却した(例えば70℃)予熱媒体は給水予熱部30で地下水(例えば20℃)と熱交換されてさらに冷却されて熱交換器130へ送られる。
予熱媒体と熱交換したヒートポンプ媒体はコンプレッサ28で断熱圧縮されて発熱する。また給水予熱部30で予熱された(例えば65℃)地下水は、放熱側熱交換器22で熱交換されて二次蒸気(例えば120℃)になり、ヒートポンプ媒体は放熱して高圧下で液化する。液化したヒートポンプ媒体は絞り弁26を通過すると圧力が低下する。ヒートポンプ媒体は断熱膨張して受熱側熱交換器24で予熱媒体から受熱し気化する。気化したヒートポンプ媒体はコンプレッサ28で再び圧縮され、以降を繰り返す。
【0019】
ヒートポンプ20で発生した二次蒸気は集塵機140へ供給する。具体的には集塵機140の外表面に配置した配管に二次蒸気を供給してフィルタ全体を所定温度に加温する。これにより腐食成分の結露を抑制して腐食を防止できる。
また、二次蒸気は集塵機140の煙突144へ供給する。具体的には煙突144の外表面に配置した配管に二次蒸気を供給して煙突本体を所定温度に加温する。これにより煙突内での腐食成分の結露を抑制して腐食を防止できる。
また、二次蒸気は熱交換器130の地下水供給配管へ供給する。具体的には供給配管を覆うチューブなどに供給して配管全体を加温する。これにより冬季において、地下水供給配管が凍結することを防止でき、年間を通じて地下水の安定した供給を実現できる。
【0020】
また、二次蒸気は集塵機140の排ガスダクト146へ供給する。具体的には排ガスダクトを覆うチューブなどで供給してダクト全体を加温する。これにより熱風発生炉110へ供給する際に温度低下を防止して燃焼効率を高く保つことができる。また結露を抑制して腐食を防止できる。
このような本発明により、熱交換器で発生した所定温度の熱水、すなわち排水から二次蒸気を発生させて集塵機の集塵機能の維持に再利用することができる。従って、一次蒸気を本来の目的で有効利用して生産性を高めることができる。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 ボイラー設備の排熱再利用装置
20 ヒートポンプ
22 放熱側熱交換器
24 受熱側熱交換器
26 絞り弁
28 コンプレッサ
30 給水予熱部
32 ポンプ
100 ボイラー設備
110 熱風発生炉
112 一次空気ファン
114 水冷ジャケット構造
120 廃熱ボイラー
130 熱交換器
132 ポンプ
140 集塵機
142 バグフィルタ
144 煙突
146 排ガスダクト
図1
図2