(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149517
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】音出力装置及び音出力方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20231005BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231005BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G10K11/175
H04R3/00 310
G10K15/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058131
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA02
5D220AA12
5D220AB06
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】車室内の機器が再生した音を、車両の搭乗者が聞き取りやすくなる音出力装置及び音出力方法を提供する。
【解決手段】音出力装置2は、車両1に搭載された第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する音出力装置2であって、処理部22を備える。そして、処理部22は、第1音源31が出力する第1音を調節し、車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力する第2音を調節し、目標位置に音像定位させる第1音を第1音源31に出力させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された第1音源が出力する第1音と、前記車両に搭載された第2音源が出力する第2音とを合成して出力する音出力装置であって、
処理部を備え、
前記処理部は、
前記第1音源が出力する前記第1音を調節し、
前記車両の走行状態に応じて前記第2音源が出力する前記第2音を調節し、
目標位置に音像定位させる前記第1音を前記第1音源に出力させる
音出力装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記車両内の対象騒音をマスクすることが可能な前記第1音を前記第1音源に出力させる
請求項1に記載の音出力装置。
【請求項3】
前記第1音源は、前記車両に複数搭載されている
請求項1又は2に記載の音出力装置。
【請求項4】
前記処理部は、複数の前記第1音源のうちの前記目標位置に最も近い第1音源に前記第1音を出力させる
請求項3に記載の音出力装置。
【請求項5】
前記処理部は、
複数の前記第1音源のそれぞれが出力する前記第1音の音量を調節し、
調節した前記第1音を複数の前記第1音源のそれぞれに出力させる
請求項3又は4に記載の音出力装置。
【請求項6】
前記処理部は、
複数の前記第1音源のそれぞれが前記第1音を出力するタイミングを調節し、
複数の前記第1音源のうちの前記目標位置に最も近い第1音源から出力する前記第1音を、他の1以上の前記第1音源のそれぞれから出力する前記第1音よりも早く出力させる
請求項3~5のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項7】
前記処理部は、搭乗者の正中線前方の前記目標位置に音像定位させるように、音量を調節した前記第1音を複数の前記第1音源のそれぞれに出力させる
請求項3~6のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項8】
前記処理部は、搭乗者の正中線前方の前記目標位置に音像定位させるように、位相を調節した前記第1音を複数の前記第1音源のそれぞれに出力させる
請求項3~6のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記第1音において音響伝達特性を畳み込む処理をすることで、前記目標位置に音像定位させる前記第1音を前記第1音源に出力させる
請求項3~8のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項10】
前記第1音源は、前記車両内の対象騒音をマスクすることが可能なように予め調節された前記第1音を出力する
請求項1~9のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項11】
前記処理部は、さらに、前記目標位置に音像定位させない前記第1音を前記第1音源に出力させる
請求項1に記載の音出力装置。
【請求項12】
複数の前記第1音源は、第1-1音源と、第1-2音源とを含み、
前記処理部は、前記第1-1音源が出力する前記第1音と、前記第1-2音源が出力する前記第1音とを逆位相に調節する
請求項11に記載の音出力装置。
【請求項13】
前記第1音源は、前記車両の車室内で反射した音である反射音に付加するように前記第1音を出力する
請求項11に記載の音出力装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記車両の走行状態に依存せずに前記第1音源が出力する前記第1音を調節する
請求項1~13のいずれか1項に記載の音出力装置。
【請求項15】
車両に搭載された第1音源が出力する第1音と、前記車両に搭載された第2音源が出力する第2音とを合成して出力する音出力方法であって、
前記車両の走行状態に依存せずに前記第1音源が出力する前記第1音を調節し、
前記車両の走行状態に応じて前記第2音源が出力する前記第2音を調節し、
目標位置に音像定位させる前記第1音を前記第1音源に出力させる
音出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音出力装置及び音出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車等の車両のマスキング音を生成する音生成システムが開示されている。音生成システムのプロセッサは、合成音の第1の周波数範囲の音特性を変調させて、変調合成音部分を生成し、同時に、第1の周波数範囲より低い合成音の第2の周波数範囲の音特性を維持して、無変調合成音部分を生成し、第1の周波数範囲の変調合成音部分及び第2の周波数範囲の無変調合成音部分の両方を含む組合せ合成音を、スピーカを介して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の音生成システムでは、例えば電気自動車のエンジン音のような走行状況に応じて変化する騒音をマスクするということについて、何ら対策はなされていないため、車室内の機器が再生する音を、車両の搭乗者が聞き取りづらくなるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、車室内の機器が再生した音を、車両の搭乗者が聞き取りやすくなる音出力装置及び音出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る表示装置は、車両に搭載された第1音源が出力する第1音と、前記車両に搭載された第2音源が出力する第2音とを合成して出力する音出力装置であって、処理部を備え、前記処理部は、前記第1音源が出力する前記第1音を調節し、前記車両の走行状態に応じて前記第2音源が出力する前記第2音を調節し、目標位置に音像定位させる前記第1音を前記第1音源に出力させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の音出力装置及び音出力方法によれば、車室内の機器が再生した音を、車両の搭乗者が聞き取りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態における音出力装置を搭載した車両を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における音出力装置を搭載した車両を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態における音出力装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態における音出力装置の処理動作を示す別のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態における音出力装置の処理動作を示すさらに別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0010】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0012】
また、以下の実施の形態において、略同一等の表現を用いている。例えば、略同一は、完全に同一であることを意味するだけでなく、実質的に同一である、すなわち数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略同一は、本開示による効果を奏し得る範囲において同一という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0013】
(実施の形態)
<構成>
[車両1]
まず、音出力装置2の構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0014】
図1は、実施の形態における音出力装置2を搭載した車両1を示す模式図である。
図2は、実施の形態における音出力装置2を搭載した車両1を示すブロック図である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、音出力装置2は、車両1に搭載されている。車両1には、車載オーディオシステム等が搭載されている。車載オーディオシステムは、ラジオ、音楽プレーヤ、カーナビゲーションシステム、車室内に配置されている複数の音源等を含んでいる。本実施の形態では、複数の音源の一例として、第1音源31及び第2音源32が車両1に搭載されている。本実施の形態では、第1音源31及び第2音源32を総称して単に音源と呼ぶことがある。また、第1音源31及び第2音源32の構成については後述する。
【0016】
また、車両1には、収音検知部、車速センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキセンサ、トルクセンサ、加速度センサ、回転数センサ、舵角センサ、GPS(Global Positioning System)センサ等のセンサ11が搭載されている。収音検知部は、対象騒音の音量、周波数、音程等の対象騒音を示す情報を取得することができる。また、車速センサは、車両1の走行速度を示す情報を取得することができる。また、アクセルペダルセンサは、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を示す情報を取得することができる。また、ブレーキセンサは、車両1のブレーキ開度を示す情報を取得することができる。また、トルクセンサは、車両1のエンジン、あるいはモータのトルクを示す情報を取得することができる。また、加速度センサは、車両1の加速度を示す情報を取得することができる。また、回転数センサは、車両1のエンジン、モータ、あるいはドライブシャフト等の回転体の回転数を示す情報を取得することができる。また、舵角センサは、車両1の右左折におけるステアリングの舵角の大きさを示す情報を取得することができる。また、GPSセンサは、車両1の現在位置を示す情報を取得することができる。これらのセンサ11は、取得したこれらの情報を取得部21に出力する。
【0017】
[音出力装置2]
音出力装置2は、車両1が駆動する際に発生する対象騒音をマスキングすることができる。音出力装置2は、車両1に搭載された第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力することで、車両1の駆動に起因する対象騒音をマスキングすることができる。例えば、音出力装置2は、車両1の駆動に応じて第1音と第2音とを合成した合成音を複数の音源から出力させることで、対象騒音をマスキングすることができる。また、音出力装置2は、ラジオ、音楽プレーヤ、カーナビゲーションシステム、及び/又は、搭乗者が所持している携帯端末等の起動に応じて、複数の音源から第1音と第2音とを合成した合成音を出力させることで、対象騒音をマスキングすることもできる。これにより、音出力装置2は、車室内に存在する搭乗者に対して対象騒音を認識しにくくすることができる。
【0018】
ここで、対象騒音とは、予め設定した車両1の駆動に伴う音であり、電動モータ及び内燃機関の駆動音、ギアのきしみ音、ドライブシャフト、ターボチャージャー(タービン)等の回転体によるノイズ、ブレーキ音、車両1の走行によって生じる走行音、加速音、車両1の振動音、タイヤのスリップ音、風切り音等といったノイズ音、またエアコン等の空調による風の吹き出し音である。また、搭乗者とは、車両1を運転する運転者、運転者以外の乗車者を含む。
【0019】
音出力装置2は、取得部21と、処理部22と、記憶部23とを備えている。なお、音出力装置2は、構成要素として少なくとも処理部22を備えていればよく、取得部21及び記憶部23は、必須の構成要素ではない。取得部21及び記憶部23のうちの一以上は、選択的に音出力装置2の構成要素に含まれていてもよい。
【0020】
[取得部21]
取得部21は、車両1に搭載されているそれぞれのセンサ11から情報を取得する車両用インタフェースである。
【0021】
また、取得部21は、対象騒音の音量、周波数、音程等の対象騒音を示す情報を収音検知部から取得したり、車速センサから車両1の走行速度を示す情報を取得したり、アクセルペダルセンサからアクセル開度を示す情報を取得したり、ブレーキセンサから車両1のブレーキ開度を示す情報を取得したり、トルクセンサからトルクを示す情報を取得したり、加速度センサから加速度を示す情報を取得したり、舵角センサからステアリングの舵角の大きさを示す情報を取得したり、GPSセンサから車両1の現在位置を示す情報を取得したりする。取得部21は、それぞれのセンサ11から取得したこれらの情報を処理部22に出力する。
【0022】
例えば、これらの情報は車両1に設置された車両内ネットワーク内に流れ居り、取得部21は、車両内ネットワークに接続してこれらの情報を取得することもある。車両内ネットワークとは、例えば乗用車等の車両1では、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay等がある。
【0023】
[処理部22]
処理部22は、複数の第1音源31のそれぞれが出力する第1音を調節する。具体的には、処理部22は、車両1が駆動を開始すると、車両1の走行状態に依存せずに、取得部21から取得した対象騒音を示す情報に基づいて、第1音源31が出力するための第1音を調節する。ここで、第1音は、車両1内の対象騒音をマスクするための音であり、例えば、ラジオ、音楽プレーヤ、カーナビゲーションシステム、車室内に配置されている複数の音源から出力される音である。また、調節とは、音量の調節、音程の調節、音の位相、出力のタイミング等を含む。つまり、処理部22は、取得部21から取得した対象騒音を示す情報に基づいて、対象騒音をマスクするように、複数の第1音源31のそれぞれに出力させるための第1音を調節する。一例を挙げると、処理部22は、対象騒音の音量が第1音よりも大きくなれば、対象騒音の音量をマスクするように、第1音の音量を大きくする。これにより、処理部22が調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させることで、車両1内の対象騒音が変化しても、変化に応じて対象騒音をマスクすることができる。
【0024】
また、処理部22は、取得部21から取得した上述の情報に基づいて車両1の走行状態を推定する。例えば、処理部22は、車両1の走行状態として、車両1の走行速度、車両1の加速度、車両1の右左折、電動モータ及び内燃機関の出力、アクセル開度、ブレーキ開度、タイヤのスリップ等を推定する。処理部22は、推定した車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力する第2音を調節する。つまり、処理部22は、車両1の走行状態に依存して、複数の第2音源32のそれぞれが出力するための第2音を調節する。ここで、第2音は、第1音よりも周波数の小さい音である。第2音は、例えば、ラジオ、音楽プレーヤ、カーナビゲーションシステム、車室内に配置されている複数の音源から出力される音であってもよい。そして、処理部22は、第2音を複数の第2音源32のそれぞれに出力させるために、調節した第2音を複数の第2音源32のそれぞれに出力させる。
【0025】
このように、処理部22が第1音と第2音とを調節することで、車両1に搭載された第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とが合成されて出力される。
【0026】
また、処理部22は、調節した第1音を少なくとも1以上の第1音源31に出力させる場合、目標位置に音像定位させることができる。さらに、処理部22は、第1音の種類によっては、目標位置に音像定位させないように、第1音を調節して少なくとも1以上の第1音源31に出力させる場合がある。
【0027】
目標位置に音像定位させる場合の第1音には、例えば、アクティブサウンドコントロールを実行する際に用いられる予め記憶部23に記憶されている疑似音、ラジオ、音楽プレーヤ、カーナビゲーションシステム、及び/又は、搭乗者が所持している携帯端末等からの音楽、注意喚起等を示す単発的な報知音等が含まれている。
【0028】
目標位置に音像定位させる第1音は、搭乗者が聞こえてくる音の出力方向を認識する必要性の高い音である。一例を示すと、注意喚起等を示す単発的な報知音では、搭乗者の注意を向けたい方向に音像定位させることで、搭乗者は、感覚的に音像定位させられた方向に注意を向けることができる。具体的には、車両1の右側から別の車が接近した場合に、処理部22が搭乗者の右後ろ側に音像定位させた第1音を第1音源31から出力させることで、搭乗者は、感覚的に音像定位させられた右後ろ側に注意を向けることができる。このとき、第1音が発せられたときは、対象騒音がマスクされている。
【0029】
目標位置に音像定位させない場合の第1音には、例えば、ホワイトノイズ、有色雑音(ピンクノイズ)及びM系列等のランダムノイズ、風の音及び水のせせらぎ等を録音又は模擬した環境音、コンテンツで予め音像定位させないことが決定されている音等が含まれていてもよい。ここで、環境音は、音像定位させる目的外の音である。また、コンテンツで予め音像定位させないことが決定されている音は、対象騒音をマスクすることができる広帯域の音であり、例えば、サラウンドスピーカから出力される音、所定の雰囲気を表現した音等である。目標位置に音像定位させない第1音は、目標位置に音像定位させる第1音よりも、搭乗者が聞こえてくる音の出力方向を認識させる必要性の低い音である。
【0030】
そこで、処理部22は、第1音の種類に応じて目標位置に音像定位させるか、させないかを判定する。
【0031】
まずは、処理部22が目標位置に音像定位させると判定した場合について説明する。
【0032】
この場合、処理部22は、第1音を第1音源31に出力させるために、第1音を調節することで目標位置に音像定位させることができる。目標位置は、予め設定された位置であるが、例えば、車室内において搭乗者の正中線前方の位置を目標位置として設定してもよい。具体的には、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させるように、第1音の音量を調節し、調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させてもよい。具体的には、処理部22は、搭乗者の両耳間の音量差を合わせるように、第1音を調整する処理を行うことで、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させてもよい。
【0033】
また、処理部22は、第1音を複数の第1音源31に出力させるために、複数の第1音源31のそれぞれが出力する第1音の音量を調節することで、目標位置に音像定位させることができる。例えば、車両1の前方のインストルメントパネルの左右両側に配置されている2つの第1音源31が存在する場合、音像定位には、同じ音量であれば、車両1の幅方向の中央部に定位し、左右の第1音源31のうちの一方の音量が大きければ、音量の大きい方に寄って定位するという特性がある。この特性を生かして、処理部22は、左右の第1音源31のそれぞれが出力する第1音の音量を調節し、目標位置に音像定位させることができる。なお、左右の第1音源31に限定されず、車両1の前後に配置されている第1音源31においても、パニングによって、車両1の前後に配置されている第1音源31の間に音像定位させることができる。
【0034】
また、処理部22は、目標位置に音像定位させる場合、複数の第1音源31のうちの目標位置に最も近い第1音源31に第1音を出力させてもよい。車室内における座標空間情報と、座標空間情報上に配置されている複数の第1音源31のそれぞれの位置情報と、座標空間情報上の目標位置を示す情報とが記憶部23に記憶されている。処理部22は、記憶部23の座標空間情報、目標位置を示す情報及び複数の第1音源31のそれぞれの位置情報に基づいて、目標位置に最も近い位置に配置されている第1音源31を抽出することができる。処理部22は、抽出した第1音源31に、調節した第1音を出力させてもよい。この場合、処理部22は、抽出されない第1音源31からは第1音を出力させなくてもよい。
【0035】
また、処理部22は、目標位置に音像定位させる場合、複数の第1音源31のそれぞれが第1音を出力するタイミングを調節してもよい。この場合、処理部22は、複数の第1音源31のうちの目標位置に最も近い第1音源31から出力する第1音を、他の1以上の第1音源31のそれぞれから出力する第1音よりも早く出力させてもよい。具体的には、処理部22は、座標空間情報、目標位置を示す情報及び複数の第1音源31のそれぞれの位置情報に基づいて、目標位置に最も近い第1音源31を抽出し、抽出した第1音源31に対して第1音を最も早く出力させてもよい。処理部22は、抽出した第1音源31が第1音を出力させた後に、他の1以上の第1音源31のそれぞれから第1音を出力させてもよい。これにより、処理部22は、最も近い第1音源31と他の1以上の第1音源31とがそれぞれ出力する第1音のタイミングをずらす(時間差を設ける)ことで、第1音の位相を調節することができる。
【0036】
また、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させるように、位相を調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させてもよい。つまり、処理部22は、搭乗者の両耳間の位相差を合わせるように、第1音を調整する処理を行うことで、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させることができる。
【0037】
また、処理部22は、第1音において音響伝達特性を畳み込む処理をすることで、目標位置に音像定位させる第1音を第1音源31に出力させてもよい。具体的には、処理部22は、音像定位させた目標位置から搭乗者の耳の位置までの音響伝達特性を畳み込み、かつ、第1音源31から耳の位置までの音響伝達特性の逆特性を畳み込むことで、音像定位させたい位置に定位させる第1音を第1音源31に出力させる。例えば、カーナビゲーションが音声を出力する場合、第1音源31がカーナビゲーションのモニタから離れた位置に配置されているときであっても、目標位置を当該モニタに設定することができる。この場合、モニタの近傍に音像定位されるため、搭乗者は、モニタから音が聞こえるように感じ、第1音源31から直接的に第1音が聞こえるように感じない。
【0038】
次に、処理部22が目標位置に音像定位させないと判定した場合について説明する。
【0039】
この場合、処理部22は、さらに、目標位置に音像定位させない第1音を第1音源31に出力させることができる。目標位置に音像定位させない場合、複数の第1音源31は、例えば、第1-1音源31aと、第1-2音源31bとを含んでいてもよい。この場合、処理部22は、第1-1音源31aが出力する第1音と、第1-2音源31bが出力する第1音とを逆位相に調節してもよい。第1-1音源31aが出力する第1音と第1-2音源31bが出力する第1音とが車室内に広がるため、搭乗者は、定位位置が判り難くなる。
【0040】
また、目標位置に音像定位させない場合、第1音源31は、車両1の車室内で反射した音である反射音に付加するように第1音を出力してもよい。つまり、車室内の反射音は、音像定位していないため、第1音源31が第1音を付加しても、目標位置に音像定位させないようにすることができる。
【0041】
[記憶部23]
記憶部23は、アクティブサウンドコントロールを実行する際に用いられる疑似音を示す情報を記憶している。具体的には、記憶部23は、車両1の加速度の大きさ、車両1の速度の大きさ、アクセル開度の大きさ、車両1の右左折におけるステアリングの舵角の大きさ、ブレーキ開度の大きさ、電動モータ及び内燃機関の駆動量、タイヤのスリップ量等のそれぞれに応じた疑似音を示す情報を記憶している。
【0042】
擬似音は、例えば、エンジン車のエンジン音を録音して音源データとして取得し、その音源データを再生装置でループ再生しながら、走行状態に応じて再生音の特性を変更して、実際に運転している状況のエンジン音を模した音である。
【0043】
また、実際に自動車等の車両の走行音とは全く関連のない音源データを用いる場合もありうる。例えば、楽器の演奏音又はシンセサイザー等で合成して生成した音源等もありうる。複数の音源データを組み合わせて再生し、走行状況に応じて再生音の特性を変更することで、その車両のイメージ又はコンセプトに合わせて、通常の自動車の走行音とは異なる擬似的な走行音を提供することができる。
【0044】
あるいは、疑似音として、ランダムノイズ(ホワイトノイズ、ピンクノイズ等)、正弦波、三角波等の信号、又はこれらの組み合わせた走行音を提供しても良い。
【0045】
また、記憶部23は、車両1の車室内における座標空間情報、座標空間情報上に配置されている複数の第1音源31のそれぞれの位置情報、及び、座標空間情報上の目標位置を示す情報等を記憶している。
【0046】
また、記憶部23は、車両1の走行速度、車両1の加速度、アクセル開度、ブレーキ開度、舵角等の車両に関する情報である車両情報の大きさに対する、擬似音の音量、音程、位相、周波数特性等の調節量を記憶している。例えば、車両情報と調節量とは、テーブルの形式で関連付けられており、処理部22は車両情報からテーブル引きして調整量を決定する。この時、車両情報がテーブルに載っていない、テーブル値の間の値を取っている場合は、補間処理等によって調節量を決定する。
【0047】
また、記憶部23は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等である。
【0048】
[第1音源31]
第1音源31は、車両1内の対象騒音をマスクすることが可能なように予め調節された第1音を出力する。つまり、第1音源31は、対象騒音をマスクさせるように処理部22に調節された第1音を出力する。これにより、第1音源31は、予め調節された第1音を出力することで、車両1内の対象騒音をマスクすることができる。
【0049】
第1音源31は、スピーカ等の音響装置であり、例えば、車両1の車室内に点在して配置されている。例えば、第1音源31は、
図1では、車両1のダッシュボードの中央部分、車両1の前方のインストルメントパネルの左右両側、車両1後方のリアシェルフの左右両側等に配置されている。
【0050】
[第2音源32]
第2音源32は、車両1の走行状態に応じて調節された第2音を出力する。つまり、第2音源32は、処理部22に調節された第2音を出力する。
【0051】
第2音源32は、スピーカ等の音響装置であり、車両1の車室内に点在して配置されている。第2音源も、例えば、
図1では、車両1のダッシュボードの中央部分、車両1の前方のインストルメントパネルの左右両側、車両1後方のリアシェルフの左右両側等に配置されている。
【0052】
<処理動作>
次に、本実施の形態に係る音出力装置2及び音出力方法の処理動作について説明する。
【0053】
(動作例1)
動作例1について、
図3を用いて説明する。
【0054】
図3は、実施の形態における音出力装置2の処理動作を示すフローチャートである。
【0055】
まず、
図3に示すように、取得部21は、対象騒音を取得する(S11)。具体的には、取得部21は、対象騒音をマスクするために、車室内の対象騒音の音量を取得する。取得部21は、マイク等の収音検知部であってもよく、対象騒音を取得した収音検知部が出力した対象騒音を示す情報を取得する車両用インタフェースであってもよい。取得部21は、取得した対象騒音を示す情報を処理部22に出力する。
【0056】
次に、処理部22は、目標位置に音像定位させるか、させないかを判定する(S12)。例えば、処理部22は、目標位置に音像定位させる場合の第1音に該当するか否かを判定することで、目標位置に音像定位させるか、させないかを判定する。
【0057】
処理部22は、目標位置に音像定位させることを判定した場合(S12でYES)、目標位置に音像定位させ、対象騒音を示す情報に基づいて対象騒音をマスクするように第1音を調節する(S13)。
【0058】
具体的には、処理部22は、車室内において搭乗者の正中線前方の位置を目標位置として音像定位させて対象騒音をマスクするように第1音を調節してもよい。また、処理部22は、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように、第1音の音量を調節してもよい。また、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように、第1音の位相を調節してもよい。また、処理部22は、第1音において音響伝達特性を畳み込む処理をすることで、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように第1音源31が出力するための第1音を調節してもよい。
【0059】
また、処理部22は、車両1の走行状態に応じて第2音を調節する(S14)。具体的には、処理部22は、取得部21が各センサ11から取得した情報に基づいて、車両1の走行状態を推定する。処理部22は、推定した車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力するための第2音を調節する。
【0060】
このとき、処理部22は、記憶部23に記憶されている各車両情報に対する調節量のテーブルから、音量、音程、位相等の調節量を決定する。
【0061】
次に、処理部22は、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように調節した第1音を第1音源31に出力し、調節した第2音を第2音源32に出力する。これにより、音出力装置2は、第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する(S15)。第1音源31が出力した第1音は、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするため、車両1の搭乗者は、車室内の機器が再生した音を聞き取ることができる。そして、音出力装置2は、
図3のフローチャートの処理動作を終了する。
【0062】
ステップS12の処理の説明に戻る。
【0063】
処理部22は、目標位置に音像定位させないことを判定した場合(S12でNO)、音像定位させずに対象騒音をマスクするように第1音を調節する(S16)。
【0064】
具体的には、処理部22は、車室内において搭乗者が聞こえてくる音の出力方向を認識し難いように、音像定位させずに対象騒音をマスクするように第1音を調節してもよい。また、第1音源31は、対象騒音をマスクして、車両1の車室内の反射音に付加するように第1音を出力してもよい。
【0065】
また、処理部22は、車両1の走行状態に応じて第2音を調節する(S17)。具体的には、処理部22は、取得部21が各センサ11から取得した情報に基づいて、車両1の走行状態を推定する。処理部22は、推定した車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力するための第2音を調節する。
【0066】
次に、処理部22は、音像定位させずに対象騒音をマスクするように調節した第1音を第1音源31に出力し、調節した第2音を第2音源32に出力する。これにより、音出力装置2は、第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する(S18)。第1音源31が出力した第1音は、音像定位させずに対象騒音をマスクするため、車両1の搭乗者は、車室内の機器が再生した音を聞き取ることができる。そして、音出力装置2は、
図3のフローチャートの処理動作を終了する。
【0067】
(動作例2)
動作例2について、
図4を用いて説明する。動作例1の
図3と同様の動作については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0068】
図4は、実施の形態における音出力装置2の処理動作を示す別のフローチャートである。
【0069】
まず、
図4に示すように、ステップS11、S12の処理動作を経て、処理部22は、目標位置に音像定位させることを判定した場合(S12でYES)、目標位置に最も近い位置に配置されている第1音源31を抽出する(S21)。
【0070】
次に、処理部22は、抽出した第1音源31が第1音を出力するために、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように第1音を調節する(S13)。
【0071】
また、ステップS13において、処理部22は、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように、複数の第1音源31のそれぞれが第1音を出力するタイミングを調節してもよい。この場合、処理部22は、複数の第1音源31のうちの目標位置に最も近い第1音源31から出力する第1音を、他の1以上の第1音源31のそれぞれから出力する第1音よりも早く出力させてもよい。また、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように、第1音の位相を調節してもよい。
【0072】
ステップS14の処理動作を経て、処理部22は、目標位置に音像定位させて対象騒音をマスクするように調節した第1音を抽出した第1音源31に出力し、かつ、調節した第2音を第2音源32に出力する。これにより、音出力装置2は、抽出した第1音源31だけが出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する(S15)。そして、音出力装置2は、
図4のフローチャートの処理動作を終了する。
【0073】
ステップS12の処理の説明に戻る。
【0074】
処理部22が目標位置に音像定位させないことを判定した場合(S12でNO)、ステップS16~S18の処理動作を経て、音出力装置2は、
図4のフローチャートの処理動作を終了する。
【0075】
(動作例3)
動作例3について、
図5を用いて説明する。動作例1の
図3と同様の動作については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0076】
図5は、実施の形態における音出力装置2の処理動作を示すさらに別のフローチャートである。
【0077】
本動作例では、上述の動作例1、2のように、取得部21が車室内の対象騒音の音量を取得しなくてもよい。また、記憶部23には、車両情報に基づいて第1音である擬似音の音量、音程、位相、周波数特性等の調整量を決定するためのテーブルが予め格納されていてもよい。このようなテーブルは、車両1の走行実験等によって、対象騒音の音量、対象騒音の周波数、車両1の走行速度、車両1の加速度、アクセル開度、ブレーキ開度、舵角等の車両情報の条件を予め調べておくことで、作成されていてもよい。
【0078】
まず、処理部22は、車両情報を取得部21から取得する(S31)。例えば、車両情報は、取得部21がセンサ11から取得することができる。
【0079】
次に、処理部22は、テーブルを用いて、取得した車両情報つまり車両1の走行状態に応じて、対象騒音をマスクできる第1音の調整量を決定する(S32)。これにより、処理部22は、車両情報に応じた第1音の調整量を決定することで、対象騒音をマスクするように第1音を調節することができる。
【0080】
また、処理部22は、車両1の走行状態に応じて第2音の調整量を決定する(S33)。これにより、処理部22は、車両1の走行状態に応じて第2音を調節することができる。
【0081】
ステップS33の処理動作を経て、処理部22は、対象騒音をマスクするように調節した第1音を抽出した第1音源31に出力し、かつ、調節した第2音を第2音源32に出力する。これにより、音出力装置2は、第1音源31が出力する第1音と、第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する(S15)。そして、音出力装置2は、
図5のフローチャートの処理動作を終了する。
【0082】
<作用効果>
次に、本実施の形態における音出力装置2及び音出力方法の作用効果について説明する。
【0083】
上述したように、本実施の形態における音出力装置2は、車両1に搭載された第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する音出力装置2であって、処理部22を備える。そして、処理部22は、第1音源31が出力する第1音を調節し、車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力する第2音を調節し、目標位置に音像定位させる第1音を第1音源31に出力させる。
【0084】
これによれば、処理部22が第1音を調節すれば、第1音源31が調節された第1音を出力することで、第1音を目標位置に音像定位させることができる。このため、車両1の搭乗者は、第1音の出力方向を認識することができるため、違和感を覚えずに第1音を聞くことができる。
【0085】
したがって、音出力装置2は、車室内の機器が再生した音を、車両1の搭乗者が聞き取りやすくなる。
【0086】
また、本実施の形態における音出力方法は、車両1に搭載された第1音源31が出力する第1音と、車両1に搭載された第2音源32が出力する第2音とを合成して出力する音出力方法であって、車両1の走行状態に依存せずに第1音源31が出力する第1音を調節し、車両1の走行状態に応じて第2音源32が出力する第2音を調節し、目標位置に音像定位させる第1音を第1音源31に出力させる。
【0087】
この音出力方法においても、上述と同様の作用効果を奏する。
【0088】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、車両1内の対象騒音をマスクすることが可能な第1音を第1音源31に出力させる。
【0089】
これによれば、出力した第1音によって車両1内の対象騒音をマスクすることができるため、対象騒音の影響が抑制される。このため、車両1の搭乗者は、対象騒音をさほど感じずに音を聞き取ることができる。
【0090】
また、本実施の形態における音出力装置2において、第1音源31は、車両1に複数搭載されている。
【0091】
これによれば、車室内における所望の位置を目標位置として音像定位させることができるようになる。
【0092】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、複数の第1音源31のうちの目標位置に最も近い第1音源31に第1音を出力させる。
【0093】
これによれば、目標位置に第1音を音像定位させやすくなるため、車両1の搭乗者は、第1音の出力方向を認識することができる。このため、搭乗者は、違和感を覚えずに第1音を聞くことができる。
【0094】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、複数の第1音源31のそれぞれが出力する第1音の音量を調節し、調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させる。
【0095】
これによれば、第1音の音量を調節するだけで、容易に目標位置を変更することができる。
【0096】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、複数の第1音源31のそれぞれが第1音を出力するタイミングを調節し、複数の第1音源31のうちの目標位置に最も近い第1音源31から出力する第1音を、他の1以上の第1音源31のそれぞれから出力する第1音よりも早く出力させる。
【0097】
これによれば、目標位置に最も近い第1音源31から出力する第1音のタイミングを他の1以上の第1音源31が出力する第1音のタイミングよりもずらすことで、複数の第1音源31のそれぞれが出力する第1音の位相を調節することができる。
【0098】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させるように、音量を調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させる。
【0099】
これによれば、搭乗者の前方に音像定位させることができる。このため、搭乗者における両耳間の音量差が最小になるようにすることができるため、搭乗者は、第1音によって現実的な臨場感を覚え、より違和感を覚え難くなる。
【0100】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、搭乗者の正中線前方の目標位置に音像定位させるように、位相を調節した第1音を複数の第1音源31のそれぞれに出力させる。
【0101】
これによれば、搭乗者の前方に音像定位させることができる。このため、搭乗者における両耳間の位相差が最小になるようにすることができるため、搭乗者は、第1音によって現実的な臨場感を覚え、違和感を覚え難くなる。
【0102】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、第1音において音響伝達特性を畳み込む処理をすることで、目標位置に音像定位させる第1音を第1音源31に出力させる。
【0103】
これによれば、第1音源31から搭乗者の耳までの音響伝達特性を消し、音像定位させた位置から搭乗者の耳までを畳み込むことで、第1音源31が出力した音を音像定位させた位置から聞こえるようにすることができる。
【0104】
また、本実施の形態における音出力装置2において、第1音源31は、車両1内の対象騒音をマスクすることが可能なように予め調節された第1音を出力する。
【0105】
これによれば、第1音源31が予め調節された第1音を出力するだけで、車両1内の対象騒音をマスクすることができる。
【0106】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、さらに、目標位置に音像定位させない第1音を第1音源31に出力させる。
【0107】
これによれば、対象騒音をマスクしつつ、音像定位させない第1音を出力することもできる。その結果、搭乗者に第1音の出力方向を認識し難くすることができる。
【0108】
また、本実施の形態における音出力装置2において、複数の第1音源31は、第1-1音源31aと、第1-2音源31bとを含む。そして、処理部22は、第1-1音源31aが出力する第1音と、第1-2音源31bが出力する第1音とを逆位相に調節する。
【0109】
これによれば、定位位置が搭乗者に認識し難いように第1音を車室内に広げることができる。
【0110】
また、本実施の形態における音出力装置2において、第1音源31は、車両1の車室内で反射した音である反射音に付加するように第1音を出力する。
【0111】
これによれば、定位位置が搭乗者に認識し難いように第1音を車室内に広げることができる。
【0112】
また、本実施の形態における音出力装置2において、処理部22は、車両1の走行状態に依存せずに第1音源31が出力する第1音を調節する。
【0113】
これによれば、車両1の走行状態に依存しない対象騒音をマスクすることができるため、車両1の搭乗者は、対象騒音を感じずに音が聞き取りやすくなる。
【0114】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態等に限定されるものではない。
【0115】
例えば、本実施の形態における音出力装置は、複数の第1音源と、複数の第2音源とをさらに構成要素として備えていてもよい。また、音出力装置と、複数の第1音源と、複数の第2音源とは、音出力システムとして構成されていてもよい。
【0116】
また、本実施の形態における音出力装置に含まれるそれぞれの処理部等は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0117】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0118】
なお、上記実施の形態において、それぞれの構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、それぞれの構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。それぞれの構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0119】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0120】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0121】
また、フローチャートにおけるそれぞれのステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0122】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつくそれぞれの種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、車両の音響システム、音生成システム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 車両
2 音出力装置
22 処理部
31 第1音源
31a 第1-1音源
31b 第1-2音源
32 第2音源