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特開2023-14952芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014952
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 7/14 20060101AFI20230124BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C01B7/14 Z
B01J23/44 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021138421
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】502017364
【氏名又は名称】株式会社 環境浄化研究所
(71)【出願人】
【識別番号】390005681
【氏名又は名称】伊勢化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須郷 高信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴弘
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BC72A
4G169BC72B
(57)【要約】
【課題】 ヨード基を有する芳香族ヨウ素化合物から脱離・精製法により、より高ヨウ素回収率で回収できる技術を提供すること。
【解決手段】 芳香族ヨウ素化合物を白金族元素担持繊維触媒、アルカリ及び還元剤の存在下に常温常圧の穏和な条件で脱ヨウ素化した後、繊維状触媒を速やかに取出し、脱ヨウ素化済み液からヨウ素を分離回収する。触媒担体はアニオン交換繊維であり、反応系外に速やかに取出しが可能である。また、脱ヨウ素化済み液からのヨウ素の分離回収には、ヨウ素気化吸収法などの技術を利用することによって純度の高いヨウ素を高い回収率で回収できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヨウ素化合物を含む液を白金族元素担持触媒、還元剤及びアルカリの存在下で脱ヨウ素化する第1工程、脱ヨウ素化した液から触媒を分離する第2工程、脱離したヨウ素を脱ヨウ素化済み液から分離回収する第3工程、を含む芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【請求項2】
前記、第3工程はヨウ素気化吸収法、イオン交換樹脂吸着法、電気透析法、固液分離法から選択される少なくとも一つ以上である請求項1記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【請求項3】
前記、白金族元素はパラジウムである請求項1又は2記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【請求項4】
前記、白金族元素担持用の担体がアニオン交換体である請求項1~3記載のいずれか1に記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【請求項5】
前記、請求項4記載のアニオン交換体の形状が繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布又はそれらの切断体を含む成型体である請求項1~4記載のいずれか1に記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【請求項6】
前記、芳香族ヨウ素化合物は不飽和環状化合物に単結合で結合した1つまたは複数のヨード基を含む請求項1~5記載のいずれか1に記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は芳香族ヨウ素化合物からヨウ素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0001】
ヨウ素の生産量は、世界一位がチリで日本はこれ次いでおり、資源小国日本にとっては自給できる数少ない資源である。用途としては、X線造影剤が20%を超え一番多く、触媒、抗菌剤、偏光フィルムなどが続いている。ヨウ素は医療分野から工業分野まで幅広い領域で利用されているため、今後ますます使用量が増大すると予想される。
【0002】
チリでは,チリ硝石からヨウ素酸塩を溶出させ製造されるが、政情が必ずしも安定していないことや砂漠に存在しているなど安定供給には不安がある。日本では天然ガスの生産の際に,汲み上げられる地下かん水と呼ばれる塩水から生産される。かん水の汲み上げによる地盤沈下への配慮からくみ上げ量が制限されている。このような状況から,ヨウ素の急激な増産は難しく、リサイクルが急務となっている。特に、ヨウ素使用量が大きいX線造影剤やその製造プロセスからのヨウ素の回収が重要である。
【0003】
芳香族ヨウ素化合物の中で代表的な化合物であるヨウ素系造影剤は、いずれも図1の反応式の左側の一般式に示すような芳香族環にヨウ素が結合した基本構造をもつため、ヨウ素を回収するためには芳香族環からヨウ素を脱離し、分離する必要がある。
【0004】
公知技術としては、特許文献1には、造影剤含有液をpH0.5以下、好ましくは100℃以上で加熱する技術が開示されている(特許文献1、特開2020-522456)。
【0005】
特許文献2には、造影剤含有液にCu++または微粉末銅とアルカリ液を加えて加熱することに依り無機化合物とした後、これを酸化、抽出等に依りヨウ素を回収する方法が提案されている(特許文献2、EP0106934)。
【0006】
特許文献3には、造影剤中のヨウ素のヨウ化物イオンへの変換をアルカリ性高温条件での還流下、銅粉末、亜鉛粉末、鉄粉末などから選択される還元物質の存在下で実施している。その後、H-FeCl複合酸化剤を用いて、ヨウ化物イオンをヨウ素分子に変換し、有機溶媒で抽出精製する、という技術が開示されている(特許文献3、CN103508421)。
【0007】
しかしながら、これら公知技術はヨード基を有する芳香族環からヨウ素を脱離するのに、酸やアルカリなど薬液と銅などの金属を加え、100℃以上で加温する操作を行わねばならない。また、脱離したヨウ素を強い酸性条件下で分離回収している。耐熱・耐薬品性の反応容器が必要なうえ、環境負荷の大きい薬剤を用いる必要があった。更に、ヨウ化水素酸の気化による作業環境上の危険が伴う。したがって、これら公知の技術を採用するには安全性に配慮した化学プラントを設計し、運用する必要があり、コストに見合うヨウ素量が回収可能とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-522456
【特許文献2】EP0106934
【特許文献3】CN103508421
【発明が解決しようとする課題】
これまで芳香族ヨウ素化合物からヨウ素を回収するのにあたり、ヨード基を有する芳香環からヨウ素を脱離し、かつ脱離したヨウ素を共存成分から分離するため、高温で複雑な化学プラントを必要とし、環境負荷に与える影響が大きかった。従って、芳香族ヨウ素化合物から穏和な条件で脱ヨウ素化や脱ヨウ素化済みの液からヨウ素を分離回収できる技術を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次の特徴を有する芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法である。
(1)芳香族ヨウ素化合物を含む液を白金族元素担持触媒、還元剤及びアルカリの存在下で脱ヨウ素化する第1工程、脱ヨウ素化した液から触媒を分離する第2工程、脱離したヨウ素を脱ヨウ素化済み液から分離回収する第3工程、を含む芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
(2)前記、第3工程はヨウ素気化吸収法、イオン交換樹脂吸着法、電気透析、固液分離法から選択される少なくとも一つ以上である(1)項記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
(3)前記、白金族元素はパラジウムである(1)項又は(2)項記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
(4)前記、白金族元素担持用の担体がアニオン交換体である(1)項~(3)項記載のいずれか1に記載のヨウ素系造影剤からのヨウ素の回収方法
(5)前記、請求項4記載のアニオン交換体の形状が繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布又はそれらの切断体を含む成型体である(1)項~(4)項記載のいずれか1に記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
(6)前記、芳香族ヨウ素化合物は不飽和環状化合物に単結合で結合した1つまたは複数のヨード基を含む(1)項~(5)項記載のいずれか1に記載の芳香族ヨウ素化合物からのヨウ素の回収方法
【0010】
本発明における芳香族ヨウ素化合物は、ベンゼン環を有するヨウ素化合物、ナフタレンのような縮合環を有するヨウ素化合物、ピリジンなどのように複素環を有するヨウ素化合物を含み、結合しているヨウ素の数が1以上である化合物の総称である。
【0011】
本発明を簡単に説明するため、芳香族ヨウ素化合物の脱ヨウ素化には、触媒としてパラジウムをアニオン交換繊維に担持した触媒を使用し、アルカリと還元剤を加え室温で脱ヨウ素化反応を行い、脱離したヨウ素を分離回収する方法について説明する。
【0012】
芳香族ヨウ素化合物に対しては、パラジウム担持触媒、還元剤及びアルカリの存在下で反応させると、常温常圧下においても水素化脱ヨウ素反応が起こる。設備の簡素化や安全対策上重要であり、次工程での脱ヨウ素化済みの液からヨウ素の回収を円滑にかつ速やかに実施するためにも極めて重要である。
【0013】
脱ヨウ素化の反応式は図1のように考えられる。芳香族ヨウ素化合物として、ベンゼン環に3個のヨウ素が結合したトリヨードベンゼンを記載しているが、この範囲に限定されるわけではない。
【0014】
ここで、パラジウム触媒には均一系と不均一系とがあるが、不均一系触媒を使用する方が後の分離工程を考えると好ましい。パラジウム系不均一触媒としては活性炭上にパラジウムを担持させた触媒が市販されており、使用できる。しかしながら、活性炭は粒状でも粉化するため、反応後に触媒と脱ヨウ素化液との固液分離操作が必要となる。例えば、ろ過や沈降分離などの操作が必要となり、ヨウ素回収のための設備が増え、設置面積も大きくなる。パラジウム担持活性炭を改良し、粒状やペレット状に成型したものが市販されており、カラムに充填して充填塔方式で利用できる。活性炭微細孔への有機物の吸着などには注意する必要がある。
【0015】
アニオン交換体にパラジウムを担持したパラジウム担持触媒は好適に利用することができる。通常のイオン交換樹脂も利用できるが、繊維状のアニオン交換体は表面積が大きいことに加え、短繊維、撚糸、織布、不織布などの形状に成型加工が容易であり、パラジウムの担体として好ましい。短繊維であれば、アルカリと還元剤とを同時に加え、撹拌するなど操作も可能となる。脱ヨウ素液との分離も網で捕捉するなどの手段を採用することができる。従って、パラジウム系不均一触媒として、アニオン交換繊維にパラジウムを担持した触媒が好ましい。
【0016】
アニオン交換体にパラジウムを担持する方法は、アニオン交換体に塩化パラジウム[(PdCl2-]を吸着させた後、還元剤を用いてPd2+をPdに変換することによって、アニオン交換体上に担持させることができる。この反応過程でパラジウムは強固に保持され欠落することは少ない。塩化パラジウムはアニオン交換繊維表面ばかりでなく内部にもイオン交換によって吸着し、還元後のPdは高分子鎖による絡みつきが生じるからである。このため、触媒と脱ヨウ素化液との固液分離や取扱いが簡単であり、本発明に好ましい。
【0017】
ヨウ素系造影剤を脱ヨウ素化した液中にはヨウ化物イオンが存在している。これを回収するには液から触媒を取出し、純度によっては更に分離精製工程が必要となる。図2は本発明の造影剤からのヨウ素回収方法の一例をフロー図で示したものである。脱ヨウ素化工程から触媒分離の工程を経て脱離したヨウ素の分離回収工程まで全ての工程が常温常圧の穏和な条件で実施できる。数種類の工程が組み合わされたように見えるが、本発明では触媒の分離が速やかに実施できるため、主たる設備は脱ヨウ素化反応設備とヨウ素の分離回収設備である。
【0018】
アニオン交換繊維には種々の製法があるが、本発明のパラジウム触媒担体の製造方法として、既存の繊維に放射線を照射し、次にアニオン交換基を有するモノマーと接触させることによって、グラフト側鎖を成長させる放射線グラフト重合法が好ましい。既存の繊維を放射線グラフト重合法によって機能化する場合、撚糸の場合は図3のようにボビン形状で取扱うことができる。穴開きコア1に撚糸2を巻いた形状であり、取り扱いが簡単である。パラジウム担持触媒もボビン形状で製造され、次の成型加工に提供される。シート状の不織布の場合は、反物の反応となり、重合プロセスが異なるが、利用することができる。
【0019】
パラジウム触媒の回収方法は使用方法と形状に密接に関係している。短繊維の場合は、他の薬液とともに撹拌することが可能で、触媒と液との接触効率が高い。脱ヨウ素化液からのパラジウム触媒の分離は、脱ヨウ素化反応槽に付設するか又は脱ヨウ素化反応槽からヨウ素分離回収槽への配管の途中に、短繊維を捕捉できるメッシュの金網を設けてもよい。
【0020】
ボビンから撚糸を繰り出し、他の成型品へ加工できる。図4に示すワインドフィルター状や図5に示すモール状にも加工できる。ワインドフィルター状触媒は穴開きコア4に触媒撚糸3を巻き付けて成型できる。既存のハウジングに収納可能でポンプ循環による接触が実施できる。モール状触媒は触媒撚糸5を芯6の外側に放射状に突出させた構造の一種の組みひもである。脱ヨウ素化槽に懸架することで液との接触が可能となる。また、繊維の集合体をかごや袋に収納し、液と接触させることができる。穏和な条件で脱ヨウ素化反応を実施できる。
【0021】
脱ヨウ素化が終了し、パラジウム担持繊維を脱ヨウ素化液から取り出すことにより、速やかに次のヨウ素分離回収工程に移行することができる。触媒を取出した液には、芳香環を有する有機物、水酸化ナトリウムとヨウ化ナトリウム及び還元剤が残留している。この液の中からヨウ素を回収する方法として、いくつか考えられるが、ヨウ素気化吸収法、イオン交換樹脂吸着法、電気透析及び固液分離法から選択される方法が安全に純度の高いヨウ素が得られるため、好ましい。
【0022】
パラジウムは白金族元素に属する代表的な触媒であるが、他の白金族元素、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh),イリジウム(Ir),ルテニウム(Ru),オスミウム(Os)も利用することができる。還元剤としては、ヒドラジンの他、ギ酸や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)なども利用できる
【発明の効果】
本発明は脱ヨウ素化反応、触媒の分離、脱ヨウ素化液からのヨウ素回収を常温常圧で穏やかに実施でき、設備や環境対策も対応が易しい。また、得られるヨウ素の純度も高い。ヨウ素資源の再利用のために極めて有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】パラジウム担持繊維、還元剤及びアルカリ存在下でのヨウ素系造影剤の脱ヨウ素化反応
図2】造影剤からのヨウ素回収方法のフローを示す図
図3】撚糸の反応形態であるボビン
図4】ワインドフィルター状触媒
図5】モール状触媒
図6】放射線グラフト重合法によるパラジウム担持アニオン交換繊維の製造方法
図7】短繊維状触媒の使用方法(1例)
図8】ワインドフィルター状触媒の使用方法(1例)
図9】モール状触媒の使用方法(1例)
図10】ヨウ素気化吸収法の概念図
図11】イオン交換樹脂吸着法の概念図
図12】電気透析法の概念図
図13】固液分離法の概念図
図14】イオパミドールの化学構造
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、芳香族ヨウ素化合物として代表的なヨウ素系造影剤を対象に、放射線グラフト重合法を利用して製造したアニオン交換繊維にパラジウムを担持した触媒を用いて脱ヨウ素化を行い、さらに脱ヨウ素化液からヨウ素を回収する方法を例にとり、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0025】
放射線グラフト重合法を用いたパラジウム担持アニオン交換繊維の合成経路の一例を図6に示す。図6では、市販のポリオレフィン系繊維を基材としてガンマ線を照射し、次に三級アミンを有するジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を接触させて、基材からDMAEMAのグラフト側鎖を成長させる。この三級アミンを利用して塩化パラジウムを吸着させ、次にギ酸ナトリウムで還元し、Pdを繊維上に担持させる。
【0026】
放射線グラフト重合の特長の一つは、既存のさまざまな形状の高分子を利用できる点である。例えば、単繊維、単繊維の集合体である撚糸、単繊維をシート状に加工した織布や不織布、それらの切断短体、フィルムや多孔性フィルム、多孔性中空糸、粒子などいずれも利用可能であるが、本発明は繊維が好ましい。表面積が大きく、大きな反応速度が得られる点と、成型加工が容易で取扱いが簡単なためである。
【0027】
繊維材質としては、合成繊維、綿などの天然繊維セルロース系繊維、絹や羊毛など動物性繊維、若しくは再生繊維、またはそれらの混合繊維が挙げられる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれる。セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれる。この中でも、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系、ナイロンに代表されるポリアミド系、セルロース系などの繊維高分子が特に好ましい。これら材質の中で、耐放射線性、グラフト重合性、耐薬品性などを考慮しながら適宜決定できる。
【0028】
基材に照射する電離性放射線は、α線、β線、ガンマ線、電子線、中性子線、紫外線などが含まれるが、基材である繊維の表面から深い部分まで透過する能力を有するガンマ線及び電子線を用いることが好ましい。放射線の照射条件は、特に限定はないが、充分なグラフト効率を得るためには、脱酸素状態で、5~200kGy、特に15~100kGyとすることが好ましい。この際、酸素濃度は、必要とされる重合率でのグラフト重合が達成される濃度であればよく、好ましくは、酸素濃度1%以下、より好ましくは、酸素濃度100ppm以下である。図6ではガンマ線を用いている。
【0029】
繊維に電離性放射線を照射すると、繊維表面ならびに内部にラジカルが発生する。ここに、イオン交換基を有するモノマーか又はイオン交換基に転換可能なモノマーを接触させると、発生したラジカルを基点としてモノマーが重合する。グラフト重合は、放射線の照射のタイミングにより、前照射グラフト重合法と同時照射グラフト重合法とに分けられる。前照射グラフト重合法とは、あらかじめ基材に放射線を照射した後、基材とモノマーとを接触させる重合方法であり、単独重合物の生成量が少ないため一般的には分離材料の製造方法にふさわしい方法である。同時照射グラフト重合法とは、基材とモノマーとの共存下に放射線を照射するグラフト重合法である。本発明はどちらの照射方法をも採用できるが、単独重合物(ホモポリマー)生成量の少ない前照射グラフト重合法を用いることが本発明の用途である分離材料の製造方法としてより好ましい。図6では、前照射グラフト重合法によりグラフト重合した例を示している。
【0030】
グラフト重合の際、接触させるモノマーが液体である場合は液相グラフト重合法と呼び、気体である場合は気相グラフト重合法と呼ぶ。また、液相グラフト重合法においてエマルションモノマー溶液を用いる場合はエマルショングラフト重合法と呼ぶ。さらに、液相グラフト重合法と気相グラフト重合法の中間に位置づけられる含浸グラフト重合法がある。含浸グラフト重合法は、予め所定のグラフト率が得られるようモノマー量を計算し、必要量のモノマーを予め有機高分子成形体に浸み込ませておくグラフト重合法である。本発明ではいずれの方法を適用することが可能である。
【0031】
放射線照射によって、ラジカルを生成させた後、アニオン交換基を有するモノマーと接触させることにより、アニオン交換基を有するグラフト側鎖が成長する。このようにして繊維にアニオン交換基を導入することができる。アニオン交換基を有するモノマーとしてビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アリールアミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0032】
モノマー自体にはアニオン交換基を有していないが、二次反応でアニオン交換基に転換できるモノマーも利用でき、メタクリル酸グリシジル(GMA)、スチレン、クロロメチルスチレンなどがある。これらのモノマーをグラフト重合した後、例えばGMAの場合はジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンなど2級アミンを有するアミンを反応させることにより、3級アミノ基が導入できる。トリメチルアミンやトリエチルアミン又はそれらの塩、トリエチレンジアミンなどのようなポリアミンを反応させることにより4級アンモニウム基を導入することができ、本発明の白金族元素担持用担体として利用できる。
【0033】
アニオン交換繊維への塩化パラジウムの吸着、その後のギ酸ナトリウムによるPdへの還元はバッチ方式やカラム方式で可能である。白金族元素はクロロ錯体としてアニオンとなるため、アニオン交換繊維に容易に吸着できる。パラジウム以外の白金族元素も使用可能であるが、触媒性能や価格などを考慮し、パラジウムが好適に利用できる。還元剤としては、ヒドラジン(水和物や塩)の他、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤も使用できる。Pdの担持量はグラフト率や使用する塩化パラジウムの量によって容易に制御できるが、ヨウ素系造影剤の処理量や濃度、また分解処理条件によって適宜設定することができる。塩化パラジウムは高価な薬品であるため、アニオン交換基に相当する量を加える必要がない。析出させたPdの繊維からの脱落はほとんどない。
【0034】
ヨウ素系造影剤の脱ヨウ素化処理においては、ヨウ素系造影剤、還元剤、及びアルカリの混合液にPd担持繊維を加え、常温常圧で所定時間反応を行うことにより、脱ヨウ素化を実施できる。脱ヨウ素化が終了すれば、繊維を取り除くことで固液分離ができる。必要なPd担持触媒繊維量や処理条件は、処理対象であるヨウ素系造影剤の種類、量、処理条件等を勘案し、予め予備試験により決定することができる。
【0035】
基材繊維に放射線グラフト重合を行う場合は、撚糸や不織布などの形状で反応しやすく、その形状で触媒も製造できる。撚糸の場合は短繊維状、ワインドフィルター状、モール状の他にロープ状、不織布、織布などのシート状にも加工でき、触媒形状により、さまざまな使用方法が考えられる。
【0036】
カット繊維状触媒は充填塔に充填し流通方式で利用できるほか、図7に示す流動方式でも利用できる。流動方式では、脱ヨウ素化反応槽7に造影剤8が仕込まれ、薬液槽10からアルカリや還元剤と一緒にカット繊維状触媒9を投入し、所定時間撹拌後に繊維を捕捉できるメッシュの金網11でろ過することにより、脱ヨウ素化液との分離ができる。
【0037】
ワインドフィルター状触媒は、図8に示すように、既存のカートリッジフィルターのハウジング12に収納して利用される場合が多く、脱ヨウ素化反応槽7の循環ラインに設置することができる。もともとカートリッジフィルターはろ過機能を有しており、ろ過と触媒分解の両方の機能の複合化が可能となる。
【0038】
モール状触媒の使用方法としては、図9に示すように、モール状触媒13を造影剤8の液中に浸漬して使用するのに向いている。一定時間浸漬し、所定の処理が終了した時点で、モールの上端の懸架装置14を利用して巻き取るなどの方法により、容易に回収できる。
【0039】
触媒分離後の脱ヨウ素化済み液からヨウ素を分離回収する工程では、ヨウ素気化吸収法、イオン交換樹脂吸着法、電気透析法、固液分離法の1つまたは複数を選択することにより、純度の高いヨウ素を高い回収率で回収することができる。
【0040】
ヨウ素を分離回収する工程における適切な酸化剤は、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲンオキソ酸、塩素分子、亜硝酸塩、過酸化水素の1つまたは複数の混合物から1つ選択される。pH調整液は硫酸、塩酸、硝酸の1つまたは複数の混合物から1つ選択される。還元剤は亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩の1つまたは複数の混合物から選択される。いずれも有機物、金属元素を含まない無機化合物からなる。
【0041】
ヨウ素気化吸収法はブローアウト法とも呼ばれ、商業的にもかん水(地下海水)からのヨウ素回収に利用されている方法である。図10に示すように、脱ヨウ素化され、触媒が分離された分離液は分離液槽15に貯留され酸化剤16を加え、ヨウ化物イオンをヨウ素にした後、ヨウ素気化槽17に送られる。ここでは、送風機18からの空気を利用してバブリングや充填材19へシャワーするなどの方法により、ヨウ素を気化させる。気化されたヨウ素はヨウ素吸収槽20において、還元剤含有吸収液21により吸収させる方法で実用化されている。かん水とは液性がかなり異なるため、予め、小規模の予備実験等により脱ヨウ素化液からのヨウ素の気化条件等の最適化を行い、実施することができる。
【0042】
イオン交換樹脂吸着法は図11に示すように、分離液槽15に酸化剤を加え、三ヨウ化物イオン(I )となったイオンをイオン交換吸着塔22に送り、アニオン交換樹脂23に吸着させる。ここで、三ヨウ化物イオンが吸着され、有機物主体となった液は処理液槽24に貯留される。吸着後のアニオン交換樹脂23は還元剤を含む溶離液25でヨウ素を溶離し、ヨウ素溶離液槽26に貯留する。三ヨウ化物イオンの化学式はI・Iとも表記される場合があり、I (I・(I)やI (I・(I)の場合も存在している。したがって、イオン交換容量の何倍ものヨウ素を吸着させることができる。この技術もヨウ素メーカーで実用化している技術である。必要であれば、カラム実験を行い、アニオン交換樹脂の選定、流速、吸着容量、溶離条件などを最適化し、基本設計をすることができる。
【0043】
はイオン選択性が大きいため、酸化剤を加えないでIのままイオン交換樹脂に吸着させる方法も採用できる。この場合、溶離は還元剤ではなく、他の薬剤、例えば塩化ナトリウム溶液などを使用する必要がある。
【0044】
電気透析法は図12に示すように電気によってイオンを移動させるため、ヨウ素気化吸収法やイオン交換樹脂吸着法のように酸化剤や還元剤を利用する必要がない。通常の電気透析装置27は陽極28と陰極29の間にカチオン交換膜30とアニオン交換膜31が交互に設置され、脱塩室32と濃縮室33が交互に形成されている。図12は簡略化した電気透析装置の図であり、基本原理を説明するための図である。脱ヨウ素化され、触媒が分離された分離液は分離液槽15から脱塩室32に導入され、ヨウ化物イオンは陽極28に向かいアニオン交換膜31を透過し、ナトリウムイオンは陰極29に向かいカチオン交換膜30を透過する。透過した両イオンは濃縮室33において、再びヨウ化ナトリウムとなって、ヨウ素濃縮液槽34と濃縮室の間を循環し、ヨウ素回収槽35に回収される。脱ヨウ素化されたベンゼン環を有する有機物はイオン交換膜を透過できないため、脱塩室を通過し分離液に戻され、脱塩後廃液槽36に排出される。電気透析装置は小型の実験装置があるため、電気特性や最初に仕込む濃縮液の組成、有機物の影響など、予め予備実験により最適条件を検討しておくことができる。
【0045】
固相分離法は図13が示すように、脱ヨウ素化され、触媒が分離された分離液は晶析槽37に貯留され、pH調整液38を加え、pHを中性から弱酸性とする。酸化剤16を加え、所定時間攪拌することでヨウ化物イオンを固体ヨウ素として析出し泥漿が作製される。これを固液分離槽39で沈降分離や固液分離膜等を用いて固相と液相を分離する。固体ヨウ素は固体槽40、有機物や無機塩を含む水溶液は液体槽41で回収する。液相の分離が不十分な場合は、純水による固体ヨウ素洗浄や乾燥工程を加えて用いることができる。晶析プロセス条件や固液分離条件など、予め小規模の予備実験等により最適条件を検討しておくことができる。
【0046】
以上、本発明の造影剤からのヨウ素の回収方法を、主としてパラジウム担持アニオン交換繊維を触媒としたアルカリ還元剤での脱ヨウ素化、脱ヨウ素化した液からヨウ素の回収を、ヨウ素気化吸収法、イオン交換樹脂吸着法、電気透析法及び固液分離法から選択できることを説明した。処理は一貫して常温常圧の穏和な条件で進めることができ、得られるヨウ素は非常に純度が高い。
【実施例0047】
以下、芳香族ヨウ素化合物として、ベンゼン環にヨウ素3個が結合した代表的造影剤である、図14に示すイオパミドールを脱ヨウ素化の対象液として用い、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例0048】
〈パラジウム担持アニオン交換繊維の製造〉
【0049】
(1)弱塩基性アニオン交換繊維の製造
直径約25μmのポリエチレン繊維500gをチャック付ポリ袋で窒素置換した後、ガンマ線100kGyを照射した。この照射済み繊維を予め窒素バブリングを30分行ったジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10%水溶液に浸漬し、40℃で5時間反応した。反応後の繊維を取出し、40℃の純水で5回バッチ洗浄した。乾燥後の重量を測定したところ、重量増加率は58%、即ちグラフト率58%であった。この繊維は3級アミンを2.8mmol/g有する弱塩基性アニオン交換繊維であった。
【0050】
(2)Pdの担持
塩化パラジウム(PdCl)1.4gを1Mの塩酸に溶解し、全量1000mlとした。この液500mlに(1)で製造した弱塩基性アニオン交換繊維を浸漬し、1時間撹拌した。1時間経過後のアニオン交換繊維は黄色を呈し、液は透明となったため、塩化パラジウムイオン((PdCl2-)を吸着していた。次に、ギ酸ナトリウム2%水溶液に浸漬し、Pd2+をPdに還元担持した。還元することによって、繊維は黄色から黒色に変化した。Pd担持繊維は弱塩基性アニオン交換繊維に対し4.5%の重量増加率であった。
【0051】
(3)ヨウ素系造影剤の脱ヨウ素化実験1
ヨウ素系造影剤としてイオパミドール(イオパミロン370注)を用いた。この液は1mlにつき370mgのヨウ素を含有する。化学構造は図14のとおりで、ベンゼン環にヨウ素が3個結合している。イオパミドール1mlに1Mの水酸化ナトリウム20mlとヒドラジン(N・HO)1gを加え、さらに(2)で製造したパラジウム担持繊維0.3gを加え、25℃で2時間振とうした。この液のヨウ化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。この値から、ヨウ化物イオンは315mgであった。イオパミドールのヨウ素の約80%がヨウ化物イオンとして検出された。脱ヨウ素化反応を行う前のイオパミドールの液からはヨウ化物イオンが検出されなかった。したがって、ヨウ化物イオンはイオパミドールの脱ヨウ素化反応によって得られたものである。
【0052】
(4)ヨウ素の回収(イオン交換樹脂吸着法)
(3)と同様の実験を行い脱ヨウ素化済みの液300mlを作製した。この液を10%硫酸でpHを中性に調整し、強塩基性アニオン交換樹脂30mlをCl型で充填した直径20mmのガラスカラムにSV10で通液した。処理液中のヨウ化物イオン濃度を測定したところ、1mg/L以下であり、ほとんどがイオン交換樹脂に吸着されていた。このイオン交換樹脂吸着試験では酸化剤を使用せず、ヨウ化物イオンのまま吸着させたが、酸化剤でヨウ化物イオンを三ヨウ化物イオン(I )に変換させれば、さらにイオン選択性が大きくなるため、イオン交換樹脂でヨウ素が回収できることは明らかである。
【実施例0053】
(1)ヨウ素系造影剤の脱ヨウ素化実験2
ヨウ素系造影剤の量を実施例1より増やし、イオパミドール(イオパミロン370注)50mlに対し、水酸化ナトリウム1000mlとヒドラジン(N2H4・H2O)50gを加え、さらに(2)と同様の製法で製造したパラジウム担持繊維15g(パラジウム担持後の重量増加率は6.2%であった)を加え、25℃で3時間振とうした。この液のヨウ化物イオン濃度16700mg/Lより、イオパミドールのヨウ素約90%が脱ヨウ素化した。
【0054】
(2)ヨウ素の回収(電気透析法)
電気透析装置として、アストム株式会社製のマイクロアシライザーEX3Bを使用した。イオン交換膜としては、アストム株式会社製の強酸性カチオン交換膜(商品名:ネオセプタCSE)及び一価アニオン選択膜(商品名:ネオセプタCSE)を1ユニットとして使用し、10ユニットの2室法電気透析装置とした。有効膜面積は、550cmである。(1)の脱ヨウ素化液からパラジウム触媒をピンセットで取除き、電気透析装置の脱塩室に導入した。平均電流1.1A、電圧10Vの動作条件で電気透析を3時間行った。なお、濃縮室では、電解液として0.1MのNaClを700ml使用した。運転3時間後の濃縮室のヨウ化物イオンの測定から、16000mgのヨウ素が回収された。回収率は脱ヨウ素化した液に対し、約95%であった。
【比較例1】
【0055】
(1)ヨウ素系造影剤の脱ヨウ素化実験3
ヨウ素系造影剤としてイオパミドール(イオパミロン370注)を用いた。イオパミドール1mlに1Mの水酸化ナトリウム20mlとヒドラジン(N2H4・H2O)1gを加え、25℃で2時間振とうした。この液のヨウ化物イオンは16mgより、イオパミドールのヨウ素約4%が脱ヨウ素化した。
【0056】
(2)ヨウ素の回収(溶媒抽出法)
(1)と同様の実験を行い脱ヨウ素化済みの液10mlを作製した。この液を10%硫酸でpHを中性に調整し、酸化剤として0.5%-亜硝酸ナトリウム1mlを加えて、ヨウ化物イオンをヨウ素に変化させた。ヨウ素を有機層へ抽出するためにn-ヘキサン10mlを加えて2分間混合後、静置分離した。抽出後の水層を排出し、純水10mlと還元剤として5mMチオ硫酸ナトリウム1mlを加えて、2分間浸透しヨウ素を水層に逆抽出した。水層のヨウ化物イオンの測定から、回収率は脱ヨウ素化した液に対し、約65%であった。
【0057】
実施例1、2及び比較例1よりヨウ素脱離率、ヨウ素脱離液からの回収率及び総回収率を表1にまとめた。
【表1】
本発明によるヨウ素系造影剤からのヨウ素回収率が非常に高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は脱ヨウ素化反応、触媒の分離、脱ヨウ素化液からのヨウ素回収を常温常圧で穏やかに実施でき、設置面積や設備コストが小さい。また、環境対策も易しく、得られるヨウ素の純度も高いという利点もある。芳香族ヨウ素化合物は有機合成化学の材料から甲状腺ホルモンなどの医薬品まで幅広い用途に利用されている。特にX線造影剤の使用量は医療や産業の発達に伴いますます増加する。資源の乏しい日本において、数少ない自給可能な資源として、ヨウ素の再利用技術は極めて有効な技術である。
【符号の説明】
【0059】
1 穴開きコア(ボビン用)
2 撚糸
3 触媒撚糸(ワインドフィルター用)
4 穴開きコア(ワインドフィルター用)
5 触媒撚糸(モール用)
6 芯
7 脱ヨウ素化反応槽
8 造影剤
9 カット繊維状触媒
10 薬液槽
11 メッシュの金網
12 カートリッジフィルターのハウジング
13 モール状触媒
14 懸架装置
15 分離液槽
16 酸化剤
17 ヨウ素気化槽
18 送風機
19 充填剤
20 ヨウ素吸収槽
21 還元剤含有吸収液
22 イオン交換吸着塔
23 アニオン交換樹脂
24 処理液槽
25 還元剤を含む溶離液
26 ヨウ素溶離液槽
27 電気透析装置
28 陽極
29 陰極
30 カチオン交換膜
31 アニオン交換膜
32 脱塩室
33 濃縮室
34 ヨウ素濃縮液槽
35 ヨウ素回収槽
36 脱塩後廃液槽
37 晶析槽
38 pH調整液
39 固液分離槽
40 固体槽
41 液体槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14