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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149525
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】洗掘防止工及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02B3/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058141
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】青木 健太
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】三浦 成久
(72)【発明者】
【氏名】村内 英司
(72)【発明者】
【氏名】道前 武尊
(72)【発明者】
【氏名】新 正行
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 文秀
(72)【発明者】
【氏名】南本 政司
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA05
2D118BA01
2D118BA14
2D118CA01
2D118CA03
2D118CA07
2D118DA06
2D118FB39
2D118GA24
2D118GA42
(57)【要約】
【課題】中詰め体間の隙間から土砂が吸い出されることを防止でき、且つ、施工が容易な洗掘防止工部材、洗掘防止工及びその構築方法の提供。
【解決手段】洗掘防止工3は、各袋詰め体4の下面に袋詰め体4の水底設置面より大きな吸出し防止用シート9が取り付けられ、隣り合う一方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の一端9aが水底面1に沿って他方の袋詰め体4下に敷設され、他方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の他端9bが一方の袋詰め体4の外面に被せられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体内に中詰め材を収容してなる袋詰め体を備え、水底に設置される洗掘防止工部材において、
前記袋詰め体の下面に取り付けられた該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを備えていることを特徴とする洗掘防止工部材。
【請求項2】
前記吸出し防止用シートは、シート状のシート体と、該シート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段とを備えている請求項1に記載の洗掘防止工部材。
【請求項3】
前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材である請求項2に記載の洗掘防止工部材。
【請求項4】
前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなる請求項2に記載の洗掘防止工部材。
【請求項5】
前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有する請求項1~4の何れか一に記載の洗掘防止工部材。
【請求項6】
前記袋詰め体の上面にさらに前記吸出し防止用シートが取り付けられている
請求項1~5の何れか一に記載の洗掘防止工部材。
【請求項7】
袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体が互いに隣接して水底に設置されてなる洗掘防止工において、
前記各袋詰め体の下面に該袋詰め体の水底設置面より大きな吸出し防止用シートが取り付けられ、
隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの他端が前記一方の袋詰め体の外面に被せられていることを特徴とする洗掘防止工。
【請求項8】
前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有する請求項7に記載の洗掘防止工。
【請求項9】
前記吸出し防止用シートは、水中において前記袋詰め体を吊った状態でシート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備えている請求項7又は8に記載の洗掘防止工。
【請求項10】
前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材によって構成され、該骨格材が前記シート体と重ね合わされている請求項9に記載の洗掘防止工。
【請求項11】
前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなる請求項9に記載の洗掘防止工。
【請求項12】
袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体を互いに隣接して水底に設置する洗掘防止工の構築方法において、
前記袋詰め体下に該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを取り付けておき、
前記袋詰め体の設置箇所を定めた後、
前記水底に設置済みの袋詰め体の吸出し防止用シートの一端上且つ前記設置済み袋詰め体と隣接する位置に新設する袋詰め体を下降させ、
前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの前記設置済み袋詰め体側を前記設置済み袋詰め体の外面に被せるとともに、他端側を水底面に敷設し、
隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートが前記一方の袋詰め体の外面に被せられてなる洗掘防止工を形成することを特徴とする洗掘防止工の構築方法。
【請求項13】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記吸出し防止用シートを剛性維持手段によって一定角度以上に撓ませない状態とし、該吸出し防止用シートが前記新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項12に記載の洗掘防止工の構築方法。
【請求項14】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部を捲り上げ用吊りワイヤによって 捲り上げ、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項12に記載の洗掘防止工の構築方法。
【請求項15】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、
前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部に浮体を取り付けておき、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項12に記載の洗掘防止工の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着床式洋上風力発電装置、ケーソン、橋脚等の水底部に設置される水中構造物の洗掘を防止する洗掘防止工部材、洗掘防止工及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底に設置された水中構造物の洗掘防止対策には、水中構造物の周囲の水底に袋体内に石材等の中詰め材を収容した複数の袋詰め体を互いに隣接させて設置し、波浪や水流によって土砂が洗い流されるのを防止するようにしたもの(以下、洗掘防止工という)が知られている。
【0003】
このような袋詰め体を使用した洗掘防止工では、水底の土砂の粒径が小さく、且つ、水底に作用する波や水流による外力が大きい場合、隣り合う袋詰め体間の隙間や袋体の網目を通して水底の土砂が吸い出されるおそれがあった。
【0004】
そこで、従来では、水底面上に粒径が数cmの石材からなるフィルター層を設け、このフィルター層上に中詰め体を設置するようにしたものが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、その他の吸い出し対策には、底面に布を取り付けた中詰め体を水底面に設置し、布によって土砂の吸い出しを抑制するようにしたものも開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-188438号公報
【特許文献2】特開WO2019-155612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如きフィルター層を設置する従来の技術では、フィルター層を追加で設ける必要があるので、その分の材料の追加や工数の増加に伴う追加費用が必要となり、全体の施工費用が嵩むという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に示す従来の技術では、一つ一つの袋詰め体に布を備えた場合、袋詰め体の外周に設けた固定手段で布と連結し、施工上隣り合う中詰め体の布同士を重ね合わせることができないので、隣り合う中詰め体間に隙間が生じ、その隙間から土砂が吸い出されることがあり、吸出し防止効果が十分ではないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、中詰め体間の隙間から土砂が吸い出されることを防止でき、且つ、施工が容易な洗掘防止工部材、洗掘防止工及びその構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、袋体内に中詰め材を収容してなる袋詰め体を備え、水底に設置される洗掘防止工部材において、前記袋詰め体の下面に取り付けられた該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを備えていることにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、シート状のシート体と、該シート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段とを備えていることにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材であることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなることにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有することにある。
【0015】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成に加え、前記袋詰め体の上面にさらに前記吸出し防止用シートが取り付けられていることにある。
【0016】
請求項7に記載の発明の特徴は、袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体が互いに隣接して水底に設置されてなる洗掘防止工において、前記各袋詰め体の下面に該袋詰め体の水底設置面より大きな吸出し防止用シートが取り付けられ、隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの他端が前記一方の袋詰め体の外面に被せられていることにある。
【0017】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項7の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有することにある。
【0018】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項7又は8の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、水中において前記袋詰め体を吊った状態でシート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備えていることにある。
【0019】
請求項10に記載の発明の特徴は、請求項9の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材によって構成され、該骨格材が前記シート体と重ね合わされていることにある。
【0020】
請求項11に記載の発明の特徴は、請求項9の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなることにある。
【0021】
請求項12に記載の発明の特徴は、袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体を互いに隣接して水底に設置する洗掘防止工の構築方法において、前記袋詰め体下に該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを取り付けておき、 前記袋詰め体の設置箇所を定めた後、前記水底に設置済みの袋詰め体の吸出し防止用シートの一端上且つ前記設置済み袋詰め体と隣接する位置に新設する袋詰め体を下降させ、 前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの前記設置済み袋詰め体側を前記設置済み袋詰め体の外面に被せるとともに、他端側を水底面に敷設し、隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートが前記一方の袋詰め体の外面に被せられてなる洗掘防止工を形成することにある。
【0022】
請求項13に記載の発明の特徴は、請求項12の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記吸出し防止用シートを剛性維持手段によって一定角度以上に撓ませない状態とし、該吸出し防止用シートが前記新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【0023】
請求項14に記載の発明の特徴は、請求項12の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部を捲り上げ用吊りワイヤによって 捲り上げ、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【0024】
請求項15に記載の発明の特徴は、請求項12の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部に浮体を取り付けておき、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る洗掘防止工部材は、請求項1に記載の構成を具備することによって、隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートが一方の袋詰め体の外面に被せられるようになっている。
【0026】
さらに、本発明において、請求項2乃至4に記載の構成を具備することによって、水中で袋詰め体を吊持ちして下降させる際、重量、水圧などによって吸出し防止用シートの端部が屈曲し、当該袋詰め体下に巻き込まれることを防止することができる。
【0027】
さらにまた、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、確実に隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートの他端が一方の袋詰め体の外面に被せられる長さを確保することができる。
【0028】
また、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、多重的に水底土砂の透過を制止し、より確実に吸出しを防止することができる。
【0029】
本発明に係る洗掘防止工は、請求項7に記載の特徴を具備することによって、隣り合う袋詰め体間の隙間から水底土砂が吸い出されることを防止する効果を得ることができる。
【0030】
また、本発明において、請求項8に記載の構成を具備することによって、確実に隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートの他端が一方の袋詰め体の外面に被せられる。
【0031】
さらに、本発明において、請求項9乃至11に記載の構成を具備することによって、水中において袋詰め体をクレーンによって吊り下ろす際、吸出し防止用シートの端部を当該袋詰め体下に巻き込まず、好適に隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートの他端が一方の袋詰め体の外面に被せられる。
【0032】
また、本発明において、請求項12に記載の構成を具備することによって、各袋詰め体間の隙間から土砂の吸出しを防止する効果を合わせ持つ状態で各袋詰め体を水底に設置することができる。
【0033】
さらに、本発明において、請求項13乃至15に記載の構成を具備することによって、水中で袋詰め体をクレーンで吊持ちして下降させる際、吸出し防止用シートの端部が当該袋詰め体下に巻き込まれることを防止することができ、効率よく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る洗掘防止工の一例を示す平面図である。
図2】同上の縦断面図である。
図3】(a)は同上の洗掘防止工に使用する本発明に係る洗掘防止工部材の一例を示す平面図、(b)は同正面図である。
図4図3中の吸出し防止用シートの一例を示す部分破断斜視図である。
図5】(a)~(d)は洗掘防止工部材の製作手順を説明するための断面図である。
図6】同上の洗掘防止工の構築方法の作業手順を説明するための正面図であって、(a)は最初の洗掘防止工部材の設置作業の状態、(b)は同新設する袋詰め体を下降させた際の状態、(c)は同新設する袋詰め体を設置した状態、(b)は同さらに袋詰め体を新設した状態を示す図である。
図7】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態を説明するための正面図である。
図8】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態の他の一例を説明するための正面図である。
図9】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態のさらに他の一例を説明するための正面図である。
図10】洗掘防止工部材を設置した際の中詰め材の充填率による違いを示すグラフであって、(a)は充填率50%、(b)は同60%、(c)は同70%である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明に係る洗掘防止工及び洗掘防止工部材の実施態様を図1図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水底面、符号2は水面である。
【0036】
洗掘防止工3は、袋詰め体4を有する複数の洗掘防止工部材5を備え、洗掘防止工部材5を水中構造物周辺の水底面1に設置し、袋詰め体4の荷重により水底面1を抑え込み、水底面1の土砂が波浪や水流によって洗い流されず、また、吸出し防止用シート9や袋詰め体4の内部を透過して水底土砂が吸い出されないようにしている。
【0037】
この洗掘防止工部材5は、図3(b)に示すように、袋体7内に中詰め材8,8…を収容してなる袋詰め体4と、袋詰め体4の下面に取り付けられた袋詰め体4の水底面1における設置面より大きな吸出し防止用シート9とを備えている。尚、袋詰め体4の水底面1における設置面の長さDは、2700mm~300mm程度が望ましく、吸出し防止用シート9は、袋詰め体4の下面に接着剤や合成繊維製糸又合成繊維製ロープの縫い付け等により固定、結束される(図示せず)。
【0038】
この洗掘防止工部材5は、例えば、図5に示す工程により製作する。
【0039】
先ず、図5(a)に示すように、地面等の作業面16上に吸出し防止用シート9を展開した状態で敷設し、その上に上下が開口した筒状の型枠17を設置(仮置き)する。
【0040】
次に、図5(b)に示すように、袋体7を中詰め材投入口(袋口)を開口させた状態で型枠17内に設置し、中詰め材投入口の縁部を型枠17の上縁で折り返し、外側に被せる。
【0041】
また、吸出し防止用シート9の所定の位置に結束用孔(図示せず)を開け、この結束用孔に合成繊維製の糸又はロープを通し、当該糸又はロープで袋体7底部の袋体7を構成する網材と吸出し防止用シート9とを縫い付けて結束する。尚、袋体7の底部と吸出し防止用シート9との結束は中央だけではなく、型枠17の内周に沿って結束するようにしてもよい。
【0042】
その後、図5(c)に示すように、袋体7内に中詰め材8,8…を所定量投入したら、袋体7の中詰め材投入口(開口部)を口縛りロープ又は留め具10で封鎖し、型枠17を上方に引き上げて解放する。
【0043】
型枠17から解放されると、図5(d)に示すように、中詰め材8の重量によって袋詰め体4が外側に広がって扁平状に変形し、洗掘防止工部材5が出来上がる。
【0044】
袋体7は、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド繊維等の合成繊維からなる網材によって袋状に形成され、袋の中詰め材投入口(開口部)を口縛りロープ又は留め具10で封鎖するようになっている。
【0045】
中詰め材8,8…は、直径100mm程度以上の袋体7の網目より大きな砕石等を使用し、袋体7内に50~70%の充填率で収容され、設置径D、高さHの丸袋状の袋詰め体4を成すようにしている。尚、袋詰め体4の水底設置面の形状は、中詰め材8の比重に関係なく充填率が同じであれば同様の形状となることから、中詰め材8を砕石以外、例えばブロック等によって構成してもよい。
【0046】
この袋詰め体4の下面には、吸出し防止用シート9が縫い付け等によって略水底面1における設置面と同じ又はそれよりもやや小さい面積で接するように取り付けられている。
【0047】
この吸出し防止用シート9は、図3(a)、図4に示すように、織布等からなるシート状のシート体11,11を備え、縦長さL及び横長さWが袋詰め体4の設置面の縦横長さ(本実施例ではそれぞれ設置径Dが対応)のそれぞれの1.4倍以上となる矩形シート状に形成され、四方の端部が袋詰め体4の外周よりも外側に張り出した状態になっている。
【0048】
尚、吸出し防止用シート9の強度や厚みは、耐摩耗性を考慮して設定することが望ましい。
【0049】
また、この吸出し防止用シート9は、水中において袋詰め体4を吊った状態でシート体11,11を一定角度(下向きに45度)以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備え、設置作業時に吸出し防止用シート9の端部が当該袋詰め体4下に巻き込まれないようにすることが望ましい。
【0050】
剛性形状維持手段は、例えば、図4に示すように、一定の剛性を有する網状の骨格材12によって構成され、重ね合わされたシート体11,11間に骨格材12が挿入され、シート体11,11の縁部を縫い付けることにより、シート体11,11間に骨格材12が重ね合わされた状態で内包されている。
【0051】
この骨格材12は、樹脂材又は金属材によって網状に形成され、水中において下降する際にシート体11,11の形状を維持できる程度の一定の剛性を有し、且つ、接触する袋詰め体4や水底面1に追随してその接触部に合わせて網状部分が変形できる程度の追随性を有するようになっている。
【0052】
尚、剛性形状維持手段の態様は、図4に示す実施例に限定されず、例えば、シート体11,11を複数枚重ね合わせるようにしてもよい。また、骨格材12の形状は、網状に限定されず、例えば、板状であってもよい。
【0053】
そして、このような洗掘防止工部材5を用いた洗掘防止工3は、隣り合う一方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の一端が水底面1に沿って他方の袋詰め体4下に敷設され、他方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の他端が一方の袋詰め体4の外面に被せられる。
【0054】
よって、この洗掘防止工3では、図2に示すように、隣り合う袋詰め体4,4間に露出する水底面1が隣り合う両袋詰め体4に跨って敷設される吸出し防止用シート9の一端9aによって被覆され、その上方の両袋詰め体4,4間の隙間が吸出し防止用シート9の他端9bによって覆われる二重構造を成している。
【0055】
次に、この洗掘防止工3の構築方法を図6図9に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0056】
先ず、図5に示す方法等によって、地上又は作業船上で袋詰め体4下に吸出し防止用シート9が取り付けられた複数の洗掘防止工部材5を製作しておき、洗掘防止工3を設置する水中構造物6付近の水域まで洗掘防止工部材5を運搬する。
【0057】
次に、袋詰め体4の設置箇所を定めた後、図6(a)、図7に示すように、最初の洗掘防止工部材5をクレーンで吊り持ちして水中で降下させ、所定の位置に載置する。
【0058】
洗掘防止工部材5の吊り持ちは、図7に示すように、袋詰め体4の上部に吊りワイヤ13の先端部を連結し、吊りワイヤ13を介して袋詰め体4を吊り持ちすることにより、袋詰め体4下に取り付けられた吸出し防止用シート9が共に吊り持ちされる。尚、吊りワイヤ13は、自動開閉フック(図示せず)等によって袋詰め体4が所定の位置に設置された後、開放されて取り外される。
【0059】
その際、袋詰め体4は、吊り上げられることによって、袋体7内で中詰め材8,8…が移動して袋体7が変形し、全体の扁平率が小さくなり、縦横長さaが設置面長さDよりも小さくなる。
【0060】
また、吸出し防止用シート9は、剛性形状維持手段によってシート体11,11が一定角度θ(下向きに45度)以上に撓ませないように維持され、水中での設置作業中吸出し防止用シート9の端部が吸出し防止用シート9の上部に位置する袋詰め体4の下側に巻き込まれないようになっている。
【0061】
そして、その状態で洗掘防止工部材5を着底させると、図6(b)に示すように、吸出し防止用シート9が展開した状態で水底面1に敷設されるとともに、吸出し防止用シート9を介して水底面1に袋詰め体4が載置され、吊りワイヤから開放されると、袋詰め体4の扁平率が復帰し、外向きに広がって設置面長さがDとなる。
【0062】
次に、水底面1に設置済みの洗掘防止工部材5(袋詰め体4)の吸出し防止用シート9の一端9a上且つ設置済み袋詰め体4と隣接する位置に次の洗掘防止工部材5をクレーンで吊り持ちして下降させる。
【0063】
その際、吸出し防止用シート9は、図6(b)、図7に示すように、剛性形状維持手段によってシート体11,11が一定角度(下向きに45度)以上に撓ませないように維持され、水中での設置作業中吸出し防止用シート9の端部9a,9bが袋詰め体4の下側に巻き込まれないようになっている。
【0064】
また、吊り上げられることによって、袋詰め体4の扁平率が変化し、縦横長さaが設置面長さDよりも小さくなっているので、その分、設置済みの洗掘防止工部材5の袋詰め体4と次の洗掘防止工部材5の袋詰め体4との間に若干の余裕が生じる。
【0065】
よって、この状態で水底面1に設置済みの袋詰め体4の一方と隣接する位置に洗掘防止工部材5を着底させると、図6(c)に示すように、吸出し防止用シート9が展開した状態から、吸出し防止用シート9の設置済み袋詰め体4側の端部9bが設置済み袋詰め体4の外面に接触するとともに、着底によって外向きに広がった袋詰め体4に押圧されて、設置済み袋詰め体4の外面に追随して変形して被せられた状態となり、その他の端部9a、即ち、設置済み袋詰め体4と接触しない部分は水底面1に敷設される。
【0066】
一方、設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9aは、展開した状態で水底面1に沿って敷設されているので、新設した袋詰め体4が着底によって外向きに広がって設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9a上に確実に載置され、新設した袋詰め体4の上載圧で吸出し防止用シート9の端部が確実に押さえられ、隣り合う袋詰め体4,4間に露出する水底面1が隣り合う両袋詰め体4に跨って敷設される吸出し防止用シート9の一端9a及び新設した袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9bによって二重に被覆される。
【0067】
その際、袋詰め体4の外側に張り出した吸出し防止用シート9の各端部9a、9bの長さは、略0.25Dであり、そのうち半分以上の長さである端側の0.15D程度の範囲に隣接する袋詰め体4が載置され、上載圧を受けるので吸出し防止用シート9の端部9aが安定した状態が維持される。
【0068】
尚、設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9aに作用する新設した袋詰め体4による上載圧は、中詰め材8,8…の充填率によって異なり、図10に記載のように解析した結果、充填率50%では最大圧の94%程度、同60%では最大圧の91%程度、同70%では最大圧の90%程度の上載圧が作用する。最大圧90%以上であれば海底地盤の不陸や将来的に地形変化が生じた場合であっても安定して載置しておくことができることから、充填率50~70%であれば、確実に吸出し防止用シート9の端部を確実に押さえることができる。
【0069】
そして、この洗掘防止工部材5の設置作業を繰り返すことにより、図6(d)に示すように、隣り合う一方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の一端9aが水底面1に沿って他方の袋詰め体4下に敷設され、他方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9bが一方の袋詰め体4の外面に被せられた状態に各洗掘防止工部材5が設置され、洗掘防止工3が形成される。
【0070】
尚、吸出し防止用シート9を袋詰め体4下に巻き込まずに水中で設置する方法は、上述の剛性形状維持手段を用いる場合に限定されず、例えば、図8に示すように、吸出し防止用シート9の縁部に一定の浮力を有する浮体14,14を取り付け、当該浮体14,14の浮力により吸出し防止用シート9の縁部を持ち上げるようにしてもよく、図9に示すように、吸出し防止用シート9の端部を吊りワイヤ13とは別個の捲り上げ用吊りワイヤ15,15によって捲り上げるようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施例では、吸出し防止用シート9を袋詰め体4の下面にだけ取り付けた場合について説明したが、吸出し防止用シート9を袋詰め体4の上下面に取り付けてもよい。
【0072】
また、吸出し防止用シート9の形状は、平面視矩形に限定されず、例えば、楕円形であってもよい。
【0073】
さらに、吸出し防止用シート9の端部9a又は9bが所定の長さ(例えば、長さ0.25D以上)を有していれば、袋詰め体4を吸出し防止用シート9の中央部に配置せず、吸出し防止用シート端部9a又は9bの何れか側に片寄せて配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 水底面
2 水面
3 洗掘防止工
4 袋詰め体
5 洗掘防止工部材
6 水中構造物
7 袋体
8 中詰め材
9 吸出し防止用シート
10 留め具
11 シート体
12 骨格材
13 吊りワイヤ
14 浮体
15 捲り上げ用吊りワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体が互いに隣接して水底に設置されてなる洗掘防止工において、
前記各袋詰め体の下面に該袋詰め体の水底設置面より大きな吸出し防止用シートが取り付けられ、
隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの他端が前記一方の袋詰め体の外面に被せられていることを特徴とする洗掘防止工。
【請求項2】
前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有する請求項1に記載の洗掘防止工。
【請求項3】
前記吸出し防止用シートは、水中において前記袋詰め体を吊った状態でシート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備えている請求項1又は2に記載の洗掘防止工。
【請求項4】
前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材によって構成され、該骨格材が前記シート体と重ね合わされている請求項3に記載の洗掘防止工。
【請求項5】
前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなる請求項3に記載の洗掘防止工。
【請求項6】
袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体を互いに隣接して水底に設置する洗掘防止工の構築方法において、
前記袋詰め体下に該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを取り付けておき、
前記袋詰め体の設置箇所を定めた後、
前記水底に設置済みの袋詰め体の吸出し防止用シートの一端上且つ前記設置済み袋詰め体と隣接する位置に新設する袋詰め体を下降させ、
前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの前記設置済み袋詰め体側を前記設置済み袋詰め体の外面に被せるとともに、他端側を水底面に敷設し、
隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートが前記一方の袋詰め体の外面に被せられてなる洗掘防止工を形成することを特徴とする洗掘防止工の構築方法。
【請求項7】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記吸出し防止用シートを剛性維持手段によって一定角度以上に撓ませない状態とし、該吸出し防止用シートが前記新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項6に記載の洗掘防止工の構築方法。
【請求項8】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部を捲り上げ用吊りワイヤによって捲り上げ、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項6に記載の洗掘防止工の構築方法。
【請求項9】
前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、
前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部に浮体を取り付けておき、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにした請求項6に記載の洗掘防止工の構築方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着床式洋上風力発電装置、ケーソン、橋脚等の水底部に設置される水中構造物の洗掘を防止する洗掘防止工及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底に設置された水中構造物の洗掘防止対策には、水中構造物の周囲の水底に袋体内に石材等の中詰め材を収容した複数の袋詰め体を互いに隣接させて設置し、波浪や水流によって土砂が洗い流されるのを防止するようにしたもの(以下、洗掘防止工という)が知られている。
【0003】
このような袋詰め体を使用した洗掘防止工では、水底の土砂の粒径が小さく、且つ、水底に作用する波や水流による外力が大きい場合、隣り合う袋詰め体間の隙間や袋体の網目を通して水底の土砂が吸い出されるおそれがあった。
【0004】
そこで、従来では、水底面上に粒径が数cmの石材からなるフィルター層を設け、このフィルター層上に中詰め体を設置するようにしたものが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、その他の吸い出し対策には、底面に布を取り付けた中詰め体を水底面に設置し、布によって土砂の吸い出しを抑制するようにしたものも開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-188438号公報
【特許文献2】特開WO2019-155612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如きフィルター層を設置する従来の技術では、フィルター層を追加で設ける必要があるので、その分の材料の追加や工数の増加に伴う追加費用が必要となり、全体の施工費用が嵩むという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に示す従来の技術では、一つ一つの袋詰め体に布を備えた場合、袋詰め体の外周に設けた固定手段で布と連結し、施工上隣り合う中詰め体の布同士を重ね合わせることができないので、隣り合う中詰め体間に隙間が生じ、その隙間から土砂が吸い出されることがあり、吸出し防止効果が十分ではないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、中詰め体間の隙間から土砂が吸い出されることを防止でき、且つ、施工が容易な洗掘防止工及びその構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体が互いに隣接して水底に設置されてなる洗掘防止工において、前記各袋詰め体の下面に該袋詰め体の水底設置面より大きな吸出し防止用シートが取り付けられ、隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートの他端が前記一方の袋詰め体の外面に被せられていることにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、前記水底設置面の縦横長さのそれぞれの1.4倍以上の縦横長さを有することにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記吸出し防止用シートは、水中において前記袋詰め体を吊った状態でシート体を一定角度以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備えていることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、一定の剛性を有する網状の骨格材によって構成され、該骨格材が前記シート体と重ね合わされていることにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記剛性形状維持手段は、複数の前記シート体が重ね合わされてなることにある。
【0015】
請求項6に記載の発明の特徴は、袋体内に中詰め材を収容してなる複数の袋詰め体を互いに隣接して水底に設置する洗掘防止工の構築方法において、前記袋詰め体下に該袋詰め体の水底設置面より大きい吸出し防止用シートを取り付けておき、 前記袋詰め体の設置箇所を定めた後、前記水底に設置済みの袋詰め体の吸出し防止用シートの一端上且つ前記設置済み袋詰め体と隣接する位置に新設する袋詰め体を下降させ、 前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの前記設置済み袋詰め体側を前記設置済み袋詰め体の外面に被せるとともに、他端側を水底面に敷設し、隣り合う一方の袋詰め体の前記吸出し防止用シ
ートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の前記吸出し防止用シートが前記一方の袋詰め体の外面に被せられてなる洗掘防止工を形成することにある。
【0016】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記吸出し防止用シートを剛性維持手段によって一定角度以上に撓ませない状態とし、該吸出し防止用シートが前記新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【0017】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部を捲り上げ用吊りワイヤによって 捲り上げ、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【0018】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記新設する袋詰め体を水中で吊り持ちして前記吸出し防止用シートとともに下降させる際、前記新設する袋詰め体の吸出し防止用シートの端部に浮体を取り付けておき、該吸出し防止用シートが新設する袋詰め体下に巻き込まれないようにしたことにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る洗掘防止工は、請求項1に記載の特徴を具備することによって、隣り合う袋詰め体間の隙間から水底土砂が吸い出されることを防止する効果を得ることができる。
【0020】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、確実に隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートの他端が一方の袋詰め体の外面に被せられる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項3乃至5に記載の構成を具備することによって、水中において袋詰め体をクレーンによって吊り下ろす際、吸出し防止用シートの端部を当該袋詰め体下に巻き込まず、好適に隣り合う一方の袋詰め体の吸出し防止用シートの一端が水底面に沿って他方の袋詰め体下に敷設され、他方の袋詰め体の吸出し防止用シートの他端が一方の袋詰め体の外面に被せられる。
【0022】
また、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、各袋詰め体間の隙間から土砂の吸出しを防止する効果を合わせ持つ状態で各袋詰め体を水底に設置することができる。
【0023】
さらに、本発明において、請求項7乃至9に記載の構成を具備することによって、水中で袋詰め体をクレーンで吊持ちして下降させる際、吸出し防止用シートの端部が当該袋詰め体下に巻き込まれることを防止することができ、効率よく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る洗掘防止工の一例を示す平面図である。
図2】同上の縦断面図である。
図3】(a)は同上の洗掘防止工に使用する洗掘防止工部材の一例を示す平面図、(b)は同正面図である。
図4図3中の吸出し防止用シートの一例を示す部分破断斜視図である。
図5】(a)~(d)は洗掘防止工部材の製作手順を説明するための断面図である。
図6】同上の洗掘防止工の構築方法の作業手順を説明するための正面図であって、(a)は最初の洗掘防止工部材の設置作業の状態、(b)は同新設する袋詰め体を下降させた際の状態、(c)は同新設する袋詰め体を設置した状態、(b)は同さらに袋詰め体を新設した状態を示す図である。
図7】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態を説明するための正面図である。
図8】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態の他の一例を説明するための正面図である。
図9】同上の洗掘防止工部材を吊持ちした状態のさらに他の一例を説明するための正面図である。
図10】洗掘防止工部材を設置した際の中詰め材の充填率による違いを示すグラフであって、(a)は充填率50%、(b)は同60%、(c)は同70%である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る洗掘防止工の実施態様を図1図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水底面、符号2は水面である。
【0026】
洗掘防止工3は、袋詰め体4を有する複数の洗掘防止工部材5を備え、洗掘防止工部材5を水中構造物周辺の水底面1に設置し、袋詰め体4の荷重により水底面1を抑え込み、水底面1の土砂が波浪や水流によって洗い流されず、また、吸出し防止用シート9や袋詰め体4の内部を透過して水底土砂が吸い出されないようにしている。
【0027】
この洗掘防止工部材5は、図3(b)に示すように、袋体7内に中詰め材8,8…を収容してなる袋詰め体4と、袋詰め体4の下面に取り付けられた袋詰め体4の水底面1における設置面より大きな吸出し防止用シート9とを備えている。尚、袋詰め体4の水底面1における設置面の長さDは、2700mm~300mm程度が望ましく、吸出し防止用シート9は、袋詰め体4の下面に接着剤や合成繊維製糸又合成繊維製ロープの縫い付け等により固定、結束される(図示せず)。
【0028】
この洗掘防止工部材5は、例えば、図5に示す工程により製作する。
【0029】
先ず、図5(a)に示すように、地面等の作業面16上に吸出し防止用シート9を展開した状態で敷設し、その上に上下が開口した筒状の型枠17を設置(仮置き)する。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、袋体7を中詰め材投入口(袋口)を開口させた状態で型枠17内に設置し、中詰め材投入口の縁部を型枠17の上縁で折り返し、外側に被せる。
【0031】
また、吸出し防止用シート9の所定の位置に結束用孔(図示せず)を開け、この結束用孔に合成繊維製の糸又はロープを通し、当該糸又はロープで袋体7底部の袋体7を構成する網材と吸出し防止用シート9とを縫い付けて結束する。尚、袋体7の底部と吸出し防止用シート9との結束は中央だけではなく、型枠17の内周に沿って結束するようにしてもよい。
【0032】
その後、図5(c)に示すように、袋体7内に中詰め材8,8…を所定量投入したら、袋体7の中詰め材投入口(開口部)を口縛りロープ又は留め具10で封鎖し、型枠17を上方に引き上げて解放する。
【0033】
型枠17から解放されると、図5(d)に示すように、中詰め材8の重量によって袋詰め体4が外側に広がって扁平状に変形し、洗掘防止工部材5が出来上がる。
【0034】
袋体7は、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド繊維等の合成繊維からなる網材によって袋状に形成され、袋の中詰め材投入口(開口部)を口縛りロープ又は留め具10で封鎖するようになっている。
【0035】
中詰め材8,8…は、直径100mm程度以上の袋体7の網目より大きな砕石等を使用し、袋体7内に50~70%の充填率で収容され、設置径D、高さHの丸袋状の袋詰め体4を成すようにしている。尚、袋詰め体4の水底設置面の形状は、中詰め材8の比重に関係なく充填率が同じであれば同様の形状となることから、中詰め材8を砕石以外、例えばブロック等によって構成してもよい。
【0036】
この袋詰め体4の下面には、吸出し防止用シート9が縫い付け等によって略水底面1における設置面と同じ又はそれよりもやや小さい面積で接するように取り付けられている。
【0037】
この吸出し防止用シート9は、図3(a)、図4に示すように、織布等からなるシート状のシート体11,11を備え、縦長さL及び横長さWが袋詰め体4の設置面の縦横長さ(本実施例ではそれぞれ設置径Dが対応)のそれぞれの1.4倍以上となる矩形シート状に形成され、四方の端部が袋詰め体4の外周よりも外側に張り出した状態になっている。
【0038】
尚、吸出し防止用シート9の強度や厚みは、耐摩耗性を考慮して設定することが望ましい。
【0039】
また、この吸出し防止用シート9は、水中において袋詰め体4を吊った状態でシート体11,11を一定角度(下向きに45度)以上に撓ませないように維持する剛性形状維持手段を備え、設置作業時に吸出し防止用シート9の端部が当該袋詰め体4下に巻き込まれないようにすることが望ましい。
【0040】
剛性形状維持手段は、例えば、図4に示すように、一定の剛性を有する網状の骨格材12によって構成され、重ね合わされたシート体11,11間に骨格材12が挿入され、シート体11,11の縁部を縫い付けることにより、シート体11,11間に骨格材12が重ね合わされた状態で内包されている。
【0041】
この骨格材12は、樹脂材又は金属材によって網状に形成され、水中において下降する際にシート体11,11の形状を維持できる程度の一定の剛性を有し、且つ、接触する袋詰め体4や水底面1に追随してその接触部に合わせて網状部分が変形できる程度の追随性を有するようになっている。
【0042】
尚、剛性形状維持手段の態様は、図4に示す実施例に限定されず、例えば、シート体11,11を複数枚重ね合わせるようにしてもよい。また、骨格材12の形状は、網状に限定されず、例えば、板状であってもよい。
【0043】
そして、このような洗掘防止工部材5を用いた洗掘防止工3は、隣り合う一方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の一端が水底面1に沿って他方の袋詰め体4下に敷設され、他方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の他端が一方の袋詰め体4の外面に被せられる。
【0044】
よって、この洗掘防止工3では、図2に示すように、隣り合う袋詰め体4,4間に露出する水底面1が隣り合う両袋詰め体4に跨って敷設される吸出し防止用シート9の一端9aによって被覆され、その上方の両袋詰め体4,4間の隙間が吸出し防止用シート9の他端9bによって覆われる二重構造を成している。
【0045】
次に、この洗掘防止工3の構築方法を図6図9に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0046】
先ず、図5に示す方法等によって、地上又は作業船上で袋詰め体4下に吸出し防止用シート9が取り付けられた複数の洗掘防止工部材5を製作しておき、洗掘防止工3を設置する水中構造物6付近の水域まで洗掘防止工部材5を運搬する。
【0047】
次に、袋詰め体4の設置箇所を定めた後、図6(a)、図7に示すように、最初の洗掘防止工部材5をクレーンで吊り持ちして水中で降下させ、所定の位置に載置する。
【0048】
洗掘防止工部材5の吊り持ちは、図7に示すように、袋詰め体4の上部に吊りワイヤ13の先端部を連結し、吊りワイヤ13を介して袋詰め体4を吊り持ちすることにより、袋詰め体4下に取り付けられた吸出し防止用シート9が共に吊り持ちされる。尚、吊りワイヤ13は、自動開閉フック(図示せず)等によって袋詰め体4が所定の位置に設置された後、開放されて取り外される。
【0049】
その際、袋詰め体4は、吊り上げられることによって、袋体7内で中詰め材8,8…が移動して袋体7が変形し、全体の扁平率が小さくなり、縦横長さaが設置面長さDよりも小さくなる。
【0050】
また、吸出し防止用シート9は、剛性形状維持手段によってシート体11,11が一定角度θ(下向きに45度)以上に撓ませないように維持され、水中での設置作業中吸出し防止用シート9の端部が吸出し防止用シート9の上部に位置する袋詰め体4の下側に巻き込まれないようになっている。
【0051】
そして、その状態で洗掘防止工部材5を着底させると、図6(b)に示すように、吸出し防止用シート9が展開した状態で水底面1に敷設されるとともに、吸出し防止用シート9を介して水底面1に袋詰め体4が載置され、吊りワイヤから開放されると、袋詰め体4の扁平率が復帰し、外向きに広がって設置面長さがDとなる。
【0052】
次に、水底面1に設置済みの洗掘防止工部材5(袋詰め体4)の吸出し防止用シート9の一端9a上且つ設置済み袋詰め体4と隣接する位置に次の洗掘防止工部材5をクレーンで吊り持ちして下降させる。
【0053】
その際、吸出し防止用シート9は、図6(b)、図7に示すように、剛性形状維持手段によってシート体11,11が一定角度(下向きに45度)以上に撓ませないように維持され、水中での設置作業中吸出し防止用シート9の端部9a,9bが袋詰め体4の下側に巻き込まれないようになっている。
【0054】
また、吊り上げられることによって、袋詰め体4の扁平率が変化し、縦横長さaが設置面長さDよりも小さくなっているので、その分、設置済みの洗掘防止工部材5の袋詰め体4と次の洗掘防止工部材5の袋詰め体4との間に若干の余裕が生じる。
【0055】
よって、この状態で水底面1に設置済みの袋詰め体4の一方と隣接する位置に洗掘防止工部材5を着底させると、図6(c)に示すように、吸出し防止用シート9が展開した状態から、吸出し防止用シート9の設置済み袋詰め体4側の端部9bが設置済み袋詰め体4の外面に接触するとともに、着底によって外向きに広がった袋詰め体4に押圧されて、設置済み袋詰め体4の外面に追随して変形して被せられた状態となり、その他の端部9a、即ち、設置済み袋詰め体4と接触しない部分は水底面1に敷設される。
【0056】
一方、設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9aは、展開した状態で水底面1に沿って敷設されているので、新設した袋詰め体4が着底によって外向きに広がって設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9a上に確実に載置され、新設した袋詰め体4の上載圧で吸出し防止用シート9の端部が確実に押さえられ、隣り合う袋詰め体4,4間に露出する水底面1が隣り合う両袋詰め体4に跨って敷設される吸出し防止用シート9の一端9a及び新設した袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9bによって二重に被覆される。
【0057】
その際、袋詰め体4の外側に張り出した吸出し防止用シート9の各端部9a、9bの長さは、略0.25Dであり、そのうち半分以上の長さである端側の0.15D程度の範囲に隣接する袋詰め体4が載置され、上載圧を受けるので吸出し防止用シート9の端部9aが安定した状態が維持される。
【0058】
尚、設置済み袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9aに作用する新設した袋詰め体4による上載圧は、中詰め材8,8…の充填率によって異なり、図10に記載のように解析した結果、充填率50%では最大圧の94%程度、同60%では最大圧の91%程度、同70%では最大圧の90%程度の上載圧が作用する。最大圧90%以上であれば海底地盤の不陸や将来的に地形変化が生じた場合であっても安定して載置しておくことができることから、充填率50~70%であれば、確実に吸出し防止用シート9の端部を確実に押さえることができる。
【0059】
そして、この洗掘防止工部材5の設置作業を繰り返すことにより、図6(d)に示すように、隣り合う一方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の一端9aが水底面1に沿って他方の袋詰め体4下に敷設され、他方の袋詰め体4の吸出し防止用シート9の端部9bが一方の袋詰め体4の外面に被せられた状態に各洗掘防止工部材5が設置され、洗掘防止工3が形成される。
【0060】
尚、吸出し防止用シート9を袋詰め体4下に巻き込まずに水中で設置する方法は、上述の剛性形状維持手段を用いる場合に限定されず、例えば、図8に示すように、吸出し防止用シート9の縁部に一定の浮力を有する浮体14,14を取り付け、当該浮体14,14の浮力により吸出し防止用シート9の縁部を持ち上げるようにしてもよく、図9に示すように、吸出し防止用シート9の端部を吊りワイヤ13とは別個の捲り上げ用吊りワイヤ15,15によって捲り上げるようにしてもよい。
【0061】
また、上述の実施例では、吸出し防止用シート9を袋詰め体4の下面にだけ取り付けた場合について説明したが、吸出し防止用シート9を袋詰め体4の上下面に取り付けてもよい。
【0062】
また、吸出し防止用シート9の形状は、平面視矩形に限定されず、例えば、楕円形であってもよい。
【0063】
さらに、吸出し防止用シート9の端部9a又は9bが所定の長さ(例えば、長さ0.25D以上)を有していれば、袋詰め体4を吸出し防止用シート9の中央部に配置せず、吸出し防止用シート端部9a又は9bの何れか側に片寄せて配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 水底面
2 水面
3 洗掘防止工
4 袋詰め体
5 洗掘防止工部材
6 水中構造物
7 袋体
8 中詰め材
9 吸出し防止用シート
10 留め具
11 シート体
12 骨格材
13 吊りワイヤ
14 浮体
15 捲り上げ用吊りワイヤ