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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149545
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】温度制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/14 20060101AFI20231005BHJP
   G01K 1/02 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
G01K7/14
G01K1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058176
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲史
(72)【発明者】
【氏名】松永 晋
(57)【要約】
【課題】熱電対を調節計に接続して使用する場合、基準接点の補償を行うための感温素子は調節計の筐体に内蔵されるため、内部の電源回路や電子部品からの発熱で、検出温度に誤差が生じる問題があり、高精度の温度管理が求められる規格に適合できない場合があった。
【解決手段】熱電対からの測定値を温度変換器により、高精度にデジタル温度データに変換することで、調節計本体の温度補償の精度によらないで、高精度の温度制御を可能にする温度制御システムを提供する。また、デジタル温度データに変換することで、他の機器への温度データの送信が容易になる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の温度をアナログ温度情報として測温する測温部と、
測温部からアナログ温度情報を取得する取得する取得部と、
基準接点の温度を決定する温度補償部と、
取得部が取得したアナログ温度情報と前記温度補償部の温度に基づき、デジタル温度情報に変換する変換部と、
デジタル温度情報を制御部に出力する出力部と、
出力部から出力されたデジタル温度情報に基づき、被制御対象の温度を制御する制御部と、
からなる、温度制御システム。
【請求項2】
前記測温部は、熱電対であることを特徴とする請求項1に記載の温度制御システム。
【請求項3】
前記変換部と前記制御部との間に、データ送受信装置を配置したことを特徴とする請求項1および請求項2に記載の温度制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対の測定値に基づき、制御パラメータを算出し、制御対象の温度制御を行う温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電対は熱電能の異なる二種の金属を接合して、2つの接合点を異なる温度にすると、一定の方向に電流が流れ、熱起電力が生じる現象(ゼーベック効果)を利用して、温度を測定する。そして、熱電対を利用した温度測定においては、熱電対を接続する基準接点(冷接点)の温度をダイオードなどの感温素子などで検出して、常に基準接点が0℃になっているように電気的に補償を行っている。
【0003】
熱電対を調節計に接続して使用する場合、基準接点の補償を行うための感温素子は調節計の筐体に内蔵されるので、内部の電源回路や電子部品からの発熱で、検出温度に誤差が生じる問題があった。
【0004】
そこで、端子部と感温素子を包囲する保護ボックスを設けることで、入力端子と感温素子に対する調節計内部からの熱の影響を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-236681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、調節計の入力精度が±0.1%で、R熱電対を測定温度1100℃で使用する場合、温度の精度は±1.1℃となり、クラス1の±1.0℃を満たせない。AMS(Aerospace Material Specification)2750の様に、航空宇宙材料に対する高度な高温計測の規格では、その調節計は使用できないことになる。
【0007】
そこで、基準接点の補償を行う感温素子を調節計の外部に設けることで、調節計内部の影響を受けないようにする。さらに、熱電対による温度測定値をデジタルデータとして出力する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された温度制御システムは、
制御対象の温度をアナログ温度情報として測温する測温部と、
測温部からアナログ温度情報を取得する取得部と、
基準接点の温度を決定する温度補償部と、
取得部が取得したアナログ温度情報と前記温度補償部の温度に基づき、デジタル温度情報に変換する変換部と、
デジタル温度情報を制御部に出力する出力部と、
出力部から出力されたデジタル温度情報に基づき、被制御対象の温度を制御する制御部と、
からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載された温度制御システムは、測温部が熱電対であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載された温度制御システムは、変換部と制御部との間に、データ送受信装置を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、調節計本体の温度補償の精度によらないで、高精度の温度制御を可能にする温度制御システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の温度制御システムの構成の一例を表す図
図2】実施例1の温度制御システムの処理の流れを示すフロー図
図3】実施例2の温度制御システムの構成の一例を表す概念図
図4】温度変換器を調節計に取り付けた例
図5】温度変換器を調節計のモジュールとして内蔵した例
図6】調節計単独での温度制御と調節計と温度変換器を接続しての温度制御の比較
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0014】
<実施例1>
<機能的構成>
図1に、本発明の第1の実施例と構成を示す。温度制御システムは、測温部1100、制御対象1200、温度変換器1300、調節計1400を有する。
【0015】
制御対象1200は加工物を加熱したり、所定温度に温度を保持したりする装置で、制御回路1201と温度制御装置1202を有する。温度制御装置1202は、用途に応じて、ヒータ、ランプ、冷却ファン、水冷装置などを用いることができる。
【0016】
測温部1100は、制御対象1200の中に設置され、制御対象の内部の温度を測定する温度センサである。具体的には、熱電対や測温抵抗体を使用する。
【0017】
温度変換器1300は、測温部が熱電対の場合、測温部から送られてきたアナログデータを取得する取得部1301、アナログ温度データをデジタル温度データに変換する変換部1302、変換部に基準接点温度を提供する温度補償部1303、デジタルデータに変換されたデジタル温度データを外部へ出力する出力部1304を有する。
【0018】
測温部が測温抵抗体の場合、温度補償部1303からの基準接点温度を使用せずに、取得部1301で得た測定値を変換部1302でデジタル温度データに変換して、出力部1304から外部へ送ることが可能である。
【0019】
制御部1400は、デジタル温度データを受信する入力部1401、デジタル温度データを入力値として、制御対象の制御パラメータを算出する演算部1402、算出した制御パラメータを外部へ出力する出力部1403を有する。制御部は調節計が使用される。単独で動作する調節計の他に、モジュールを増設して、接続端子を増やすことができるモジュール型の調節計も使用できる。
【0020】
<処理の流れ>
図2は、実施例1の温度制御システムの処理の流れを示すフロー図である。
【0021】
(S2101)測温部により温度が測定される。熱電対を使用する場合、測定値はアナログ電流データとして出力される。
【0022】
(S2201)測温部からの出力は、温度変換器へ入力される。
【0023】
(S2202)温度補償部で基準接点温度が測定される。
【0024】
(S2203)アナログ温度データが、温度補償部で測定された基準接点の温度に基づき、デジタル温度データに変換される。
【0025】
(S2204)デジタル温度データ値が制御部となる調節計へ送信される。温度変換器と調節計はRS-485の等のシリアル通信で接続される。なお、デジタル温度データは通常のデータと同じ取り扱いができるので、有線LAN、無線LAN、携帯電話回線等の様々な通信手段で送信することもできる。
【0026】
(S2301)制御部となる調節計で、デジタル温度データを受信する。
【0027】
(S2302)デジタル温度データ及び調節計のプログラムに基づいて、制御パラメータが算出される。
【0028】
(S2303)制御パラメータが、制御対象に送信される。
【0029】
(S2401)制御対象が、制御部となる調節計が算出した制御パラメータを受信する。
【0030】
(S2402)制御パラメータが実行される。具体的には、図1の制御回路1201が温度制御装置1202を制御パラメータに従って動作させる。
【0031】
引き続き、制御を行う場合は、制御結果に基づく温度を測温部で測定し、処理が行われる。
【0032】
<実施例2>
<機能的構成>
図3に、本発明の第2の実施例と構成を示す。温度制御システムは、測温部3100、制御対象3200、温度変換器3300、データ送受信装置3400、制御部3500、上位制御装置3600からなる。
【0033】
実施例2でも、測温部3100で測定したアナログ電流値を温度変換器でデジタル温度データに変換し、制御部3500でデジタル温度データに基づき、制御パラメータを算出し、制御対象3200の温度制御装置3202を動作させるという基本的な処理の流れは実施例1と同じである。そのため、測温部3100、制御対象3200、温度変換器3300、制御部3500およびその内部構成は、実施例1と同じである。
【0034】
実施例2では、温度変換器3300と制御部3500の間に、データ送受信装置3400を配置し、温度変換器3300から送信されたデジタル温度データは、データ送受信機3400を介して、制御部3500、上位制御装置3600に送信される。したがって、データ送受信装置が出力部として機能する。
【0035】
この構成は、温度測定データがデジタルデータに変換されたことにより、温度測定データを通常のデータと同じ手法で、外部機器へ送信できることにより可能となる。従来の構成では、測温部の温度データがアナログ電流として調節計に送られていたので、調節計で温度データをデジタル温度データにして、上位制御装置に送信する必要があった。
【0036】
上位制御装置3600は、制御対象3200だけでなく、制御対象で部品を加熱して、制御対象の前後の工程で、加工や組み立てを行う不図示の装置を含む、製造工程全般を管理する装置である。そのため、測温部3100の温度測定結果が異常な場合や、逆にその他の装置の異常により、制御対象での処理が滞る場合に、関連する装置に対して、停止命令や警報を出すことができる。
【0037】
また、制御部3500で算出された制御パラメータは、データ送受信装置3400に送られ、データ送受信装置3400から制御対象3200の制御回路3201へ送られ、温度制御装置3202を制御する。
【0038】
なお、どちらの実施例においても、制御部と制御対象は通信を介して接続できるため、離れた場所に配置できる。その一方、制御部と制御対象との間の通信が途絶えると、ヒータが加熱をしているにも関わらず、制御ができない事態になる可能性もある。そのため、制御部と制御対象を通信で接続する場合は、通信異常に対応して、制御対象の近くで警告を発する装置や制御対象を強制的に停止する仕様があると望ましい。
【0039】
図4図5は、温度変換器を調節計と接続して、一体化する場合の例である。図4は、調節計本体4100に、外付けモジュールの様に温度変換器4101を接続した場合の例である。図5は、調節計本体5100に対して、温度変換機能を有するモジュール5101をスロットに挿入して、調節計5100に温度変換機能を追加する場合の例である。
【0040】
図6は調節計単独で電気炉を制御した場合と、調節計に温度変換器を接続して、電気炉を制御した場合の温度変化を比較したものである。400秒で、200℃から600℃へ加熱した時の昇温特性及び一定温度を保持する特性に差がないことがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1100 測温部
1200 制御対象
1300 温度変換器
1400 制御部
3400 データ送受信装置
3600 上位制御装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6