(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149557
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】マイクロストリップアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20231005BHJP
H01Q 5/321 20150101ALI20231005BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q5/321
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058191
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「有人エリアIoTシステム利用を目指す準ミリ波帯高効率空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】519416853
【氏名又は名称】株式会社Space Power Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 実
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA05
5J045AA27
5J045CA01
5J045DA10
5J045HA06
(57)【要約】
【課題】高い放射効率と大きなフィルタの減衰量を両立させることができるマイクロストリップアンテナを提供する。
【解決手段】マイクロストリップアンテナ10は、接地導体11と、接地導体11に対向し、第1部分21、第2部分22、及び第3部分23を有するパッチ導体20と、接地導体11とパッチ導体20の間に形成された絶縁層12と、第1部分21に接続され、第1導体パターンで形成された分布定数フィルタ13と、を備える。第1部分21は第2部分22と第3部分23の間を延伸するように形成される。第1部分21の延伸方向に垂直な方向において、第1部分21は第2部分22及び第3部分23より短い。分布定数フィルタ13は、第1部分21を第1部分21の延伸方向に伝搬する基本波を通過させ、第1部分21を第1部分21の延伸方向に伝搬する不要波を減衰させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地導体と、
前記接地導体に対向し、第1部分、第2部分、及び第3部分を有するパッチ導体と、
前記接地導体と前記パッチ導体の間に形成された第1絶縁層と、
前記第1部分に接続され、第1導体パターンで形成された分布定数フィルタと、を備え、
前記第1部分は前記第2部分と前記第3部分の間を延伸するように形成され、
前記第1部分の延伸方向に垂直な方向において、前記第1部分は前記第2部分及び前記第3部分より短く、
前記分布定数フィルタは、前記第1部分を前記第1部分の延伸方向に伝搬する基本波を通過させ、前記第1部分を前記第1部分の延伸方向に伝搬する不要波を減衰させる、マイクロストリップアンテナ。
【請求項2】
前記分布定数フィルタは、前記不要波の実効波長の1/4の長さを有する開放スタブで構成される、請求項1に記載のマイクロストリップアンテナ。
【請求項3】
前記分布定数フィルタは前記不要波の周波数で共振する共振器を含む、請求項1又は2に記載のマイクロストリップアンテナ。
【請求項4】
前記第1導体パターンに面する前記第1絶縁層は、前記第2部分及び前記第3部分に面する前記第1絶縁層より薄い、請求項1から3の何れかに記載のマイクロストリップアンテナ。
【請求項5】
絶縁体基板と、
前記絶縁体基板に形成され、前記第1導体パターンの少なくとも一部を含む第2導体パターンと、を備え、
前記接地導体は前記絶縁体基板の一方面に形成され、前記第2導体パターンは前記絶縁体基板の他方面に形成され、
前記第1部分は前記第2導体パターン上に配置され、
前記第2部分及び前記第3部分に面する前記第1絶縁層は、前記絶縁体基板及び前記絶縁体基板と同等以上の厚みの第2絶縁層から構成される、請求項1から4の何れかに記載のマイクロストリップアンテナ。
【請求項6】
前記第2絶縁層は空気層である、請求項5に記載のマイクロストリップアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に無線電力伝送に使用されるマイクロストリップアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送に使用される送信機は、無線通信に使用される送信機より高出力の電波を放射する。このため、無線電力伝送に使用される送信機がその無線電力伝送の使用周波数帯外の周波数を有する電波を放射すると、電波干渉が特に問題となる。このため、無線電力伝送に使用される送信機に設けられ、使用周波数帯外の周波数を有する電波の放射を低減し、電波干渉を低減するフィルタには、より優れた特性、即ちより大きい減衰量が求められている。
【0003】
従来の送信機では、増幅器とアンテナの間に挿入されたフィルタの段数を増やし、回路面積を大きくすることで、フィルタの減衰量の増加を実現している。しかし、送信機の回路面積には多くの制限がある。
【0004】
一方、送信機のアンテナが必要なアンテナ利得を実現するために比較的大きな空間を占有することは許容されている。このため、アンテナにフィルタ機能を付加すれば、増幅器とアンテナの間に挿入されたフィルタの小型化、それにより送信機内の容積の有効活用が可能になる。
【0005】
非特許文献1には、基本モードの電流線に沿ったスリットを有するパッチを備える円形マイクロストリップアンテナが開示されている。このマイクロストリップアンテナでは、高調波の周波数付近に発生する高次モードのパッチ表面電流分布が乱される結果、その高次モードの発生が抑圧されたり、その高次モードの共振周波数が低下したりするため、高調波の放射が抑制される。このようにして、このマイクロストリップアンテナには、フィルタ機能が付加される。
【0006】
また、特許文献1には、H型のマイクロストリップパッチを備え、高い放射効率を有するマイクロストリップアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】シャリアル、外4名、「レクテナ素子として使用するスリット入り円形マイクロストリップアンテナに関する考察」、電子情報通信学会論文誌B、日本、一般社団法人電子情報通信学会、2001年2月、Vol. J84-B、No.2、pp. 244-253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非特許文献1に開示されたマイクロストリップアンテナでは、大きなフィルタの減衰量を得るために、共振器としての放射素子の無負荷Qを高くし、急峻な共振特性を実現する必要がある。しかし、無負荷Qを高くするために、マイクロストリップアンテナの誘電体基板を薄くすると、放射効率が低下する。
【0010】
例えば、基本波の周波数が2.45GHz帯にある場合、2次高調波の周波数において、0.18dBの反射減衰量、換言すれば14dBのフィルタの減衰量が得られる。しかし、このとき、誘電体基板の厚みは、λを基本波の波長として、0.006λであり、無負荷Qは107であり、放射効率は約58%である。
【0011】
また、特許文献1に開示されたマイクロストリップアンテナは、高い放射効率を有するが、あまり優れたフィルタ機能を有しない。
【0012】
本発明の目的は、高い放射効率と大きなフィルタの減衰量を両立させることができるマイクロストリップアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のマイクロストリップアンテナは、接地導体と、前記接地導体に対向し、第1部分、第2部分、及び第3部分を有するパッチ導体と、前記接地導体と前記パッチ導体の間に形成された第1絶縁層と、前記第1部分に接続され、第1導体パターンで形成された分布定数フィルタと、を備え、前記第1部分は前記第2部分と前記第3部分の間を延伸するように形成され、前記第1部分の延伸方向に垂直な方向において、前記第1部分は前記第2部分及び前記第3部分より短く、前記分布定数フィルタは、前記第1部分を前記第1部分の延伸方向に伝搬する基本波を通過させ、前記第1部分を前記第1部分の延伸方向に伝搬する不要波を減衰させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い放射効率と大きなフィルタの減衰量を両立させることができるマイクロストリップアンテナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(A)は本発明の第1実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10の平面図である。
図1(B)はマイクロストリップアンテナ10のA-A断面図である。
【
図2】
図2は、マイクロストリップアンテナ10、及び第1比較例のマイクロストリップの反射減衰量の周波数特性を例示するグラフである。
【
図3】
図3は、マイクロストリップアンテナ10、第1比較例のマイクロストリップアンテナ、及び第2比較例のマイクロストリップアンテナの2次高調波減衰量及び放射効率を例示するグラフである。
【
図4】
図4(A)は本発明の第2実施形態に係るマイクロストリップアンテナ30の平面図である。
図4(B)はマイクロストリップアンテナ30のB-B断面図である。
【
図5】
図5(A)は本発明の第3実施形態に係るマイクロストリップアンテナ50の平面図である。
図5(B)はマイクロストリップアンテナ50のC-C断面図である。
【
図6】
図6は、パッチ導体60が図示されていないマイクロストリップアンテナ50の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、本発明の複数の実施形態を示す。それぞれの実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。それぞれの実施形態では、その実施形態以前に説明した点と異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0017】
《第1実施形態》
図1(A)は本発明の第1実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10の平面図である。
図1(B)はマイクロストリップアンテナ10のA-A断面図である。マイクロストリップアンテナ10は、接地導体11、パッチ導体20、絶縁層12、及び分布定数フィルタ13を備える。パッチ導体20は、第1部分21、第2部分22、第3部分23、及び複数のスタブ24を有する。スタブ24は本発明の「第1導体パターン」の一例である。絶縁層12は本発明の「第1絶縁層」の一例である。
【0018】
パッチ導体20は接地導体11に対向するように配置される。これにより、パッチ導体20の全面が接地導体11に対向する。パッチ導体20は、例えばスペーサ(図示せず)によって接地導体11に対して間隔をあけて固定される。絶縁層12は、空気層であり、接地導体11とパッチ導体20の間に形成される。パッチ導体20の第1部分21はパッチ導体20の第2部分22とパッチ導体20の第3部分23の間をx軸方向に延伸するように形成される。x軸方向に垂直なy軸方向において、第1部分21は第2部分22及び第3部分23より短い。分布定数フィルタ13は、スタブ24で構成され、第1部分21に接続される。そして、分布定数フィルタ13は、第1部分21を第1部分21の延伸方向に伝搬する基本波を通過させ、第1部分21を第1部分21の延伸方向に伝搬する所定の高調波を減衰させる。高調波は本発明の「不要波」の一例である。
【0019】
なお、絶縁層12は、空気層に代えて、絶縁体材料で形成されてもよい。
【0020】
また、分布定数フィルタ13は、2次高調波を減衰させてもよいし、より高次の高調波を減衰させてもよい。
【0021】
また、変形例において、分布定数フィルタ13は、例えば2次高調波と3次高調波の両方を減衰させてもよい。
【0022】
また、変形例において、分布定数フィルタ13は、高調波以外のスプリアスを減衰させてもよい。
【0023】
パッチ導体20は、長方形をその長方形の向かい合う辺の中央からその長方形の中央に向けて切り欠いた形状、即ちほぼH型の形状を有する。第1部分21は、細長い形状を有し、x軸方向に延伸する。第2部分22及び第3部分23は長方形の形状を有し、その長方形は、x軸方向に平行な2辺と、y軸方向に平行な2辺とを有する。
【0024】
x軸方向における第1部分21の長さL1はλg1/2である。x軸方向における第2部分22の長さL2はλg2/2である。x軸方向における第3部分23の長さL3はλg3/2である。y軸方向における第2部分22及び第3部分23の長さL4はλg4/2以上である。ここで、λg1、λg2、及びλg3は、それぞれ、基本波が第1部分21、第2部分22、及び第3部分23をx軸方向に伝搬する場合の実効波長である。λg4は、基本波が第2部分22又は第3部分23をy軸方向に伝搬する場合の実効波長である。
【0025】
なお、第1部分21、第2部分22、及び第3部分23の寸法は、多少、上記の値と異なってもよい。
【0026】
第2部分22及び第3部分23はそれぞれスリット25及びスリット26を有する。スリット26は給電点15の近くに形成される。
【0027】
なお、スリット25,26は、必須ではなく、形成されなくてもよい。
【0028】
パッチ導体20は給電ピン14によって給電される。給電点15は例えばパッチ導体20の第3部分23に位置する。
【0029】
給電が行われると、パッチ導体20にx軸方向に電流が流れる。第1部分21に流れる電流は、第2部分22及び第3部分23に流れる電流と逆の位相を有する。その結果、第1部分21は、メインローブに寄与せず、サイドローブを引き起こす。このため、第1部分21は、放射に寄与せず、伝送線路として働く。そして、第2部分22及び第3部分23が放射素子として働く。
【0030】
マイクロストリップアンテナ10では、パッチ導体に切欠きを有しない方形マイクロストリップアンテナと比較して、x軸方向におけるパッチ導体の中央部分(第1部分21に相当する部分)のy軸方向における長さが短い。このため、当該中央部分が、より高い特性インピーダンスを有し、電流をより流しにくくなる。それ故、より低いサイドローブレベルが得られる。
【0031】
また、マイクロストリップアンテナ10は、放射素子として働く第2部分22及び第3部分23を有するが、アレイアンテナに設けられるような電力分配器を必要としない。このため、マイクロストリップアンテナ10では、アンテナ素子として方形マイクロストリップアンテナを有するアレイアンテナと比較して、電力分配器で生じる損失がなく、高い放射効率が得られる。
【0032】
スタブ24は、x軸方向に延伸する第1部分21から分岐するように形成される。スタブ24は、開放端を有し、さらに高調波の実効波長の1/4の長さを有する。即ち、スタブ24は高調波に対して1/4波長開放スタブである。これからわかるように、分布定数フィルタ13は、伝送線路として働く第1部分21に直列に接続され、基本波を通過させ、高調波を阻止する帯域阻止フィルタである。また、分布定数フィルタ13は高調波の周波数で共振する共振器でもある。
【0033】
なお、分布定数フィルタ13は、分布定数線路で構成された低域通過フィルタ又は帯域通過フィルタでもよい。また、分布定数フィルタ13は、基本波より低い周波数のスプリアスを減衰させる場合、分布定数線路で構成された高域通過フィルタでもよい。
【0034】
図2は、マイクロストリップアンテナ10、及び第1比較例のマイクロストリップの反射減衰量の周波数特性を例示するグラフである。第1比較例のマイクロストリップアンテナは、分布定数フィルタ13を有しない点を除いて、マイクロストリップアンテナ10と同様に構成される。
図2に示したグラフは電磁界シミュレーションによる計算結果である。また、
図2に示したf
0は基本波の周波数である。
図2に示すように、マイクロストリップアンテナ10では、第1比較例のマイクロストリップアンテナと比較して、2次高調波の周波数2f
0における反射減衰量が小さい。
【0035】
図3は、マイクロストリップアンテナ10、第1比較例のマイクロストリップアンテナ、及び第2比較例のマイクロストリップアンテナの2次高調波減衰量及び放射効率を例示するグラフである。第2比較例のマイクロストリップアンテナは、非特許文献1に示されるように、基本モードの電流線に沿ったスリットを有する円形のパッチを備える。
図3に示すように、マイクロストリップアンテナ10では、第1比較例及び第2比較例のマイクロストリップアンテナと比較して、2次高調波減衰量が大きく、第2比較例のマイクロストリップアンテナと比較して、放射効率が高い。このように、マイクロストリップアンテナ10は、大きい2次高調波減衰量と高い放射効率を両立させることができる。
【0036】
第1実施形態によれば、高調波のような不要波を減衰させる分布定数フィルタ13が、放射に寄与せず、伝送線路として働くパッチ導体20の第1部分21に接続される。このため、アンテナからの放射は分布定数フィルタ13の影響を受けず、かつ共振器としてのパッチ導体20の全体において不要波が減衰される。それ故、放射効率が低下せず、かつアンテナのフィルタ機能が向上する。従って、高い放射効率と大きいフィルタの減衰量を両立させることができるマイクロストリップアンテナを実現できる。
【0037】
《第2実施形態》
図4(A)は本発明の第2実施形態に係るマイクロストリップアンテナ30の平面図である。
図4(B)はマイクロストリップアンテナ30のB-B断面図である。マイクロストリップアンテナ30は第1の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ10と次の点で異なる。即ち、マイクロストリップアンテナ30は、絶縁層12に代えて絶縁層32を備え、パッチ導体20に代えてパッチ導体40を備える。
【0038】
パッチ導体40の第1部分21及びスタブ24に面する絶縁層32の厚みh1は、パッチ導体40の第2部分22及び第3部分23に面する絶縁層32の厚みh2より薄い。換言すれば、パッチ導体40の第1部分21及びスタブ24と接地導体11との間の距離は、パッチ導体40の第2部分22及び第3部分23と接地導体11との間の距離より短い。
【0039】
パッチ導体40は、例えば、板金加工等によって導体板を折り曲げることで製作される。
【0040】
絶縁層32の厚みh1は、大きいフィルタの減衰量が得られるように選択される。より具体的に、絶縁層32の厚みh1は設計上の制約を満たした上で極力薄いほうがよい。絶縁層32の厚みh2は、高い放射効率が得られるように選択される。例えば、使用周波数が5GHz帯にある場合、適切な絶縁層32の厚みh1は約0.4mmであり、適切な絶縁層32の厚みh2は約1.5mmである。
【0041】
第2実施形態によれば、分布定数フィルタ13の形成された箇所において、絶縁層32が薄く設定される。このため、共振器としての分布定数フィルタ13の無負荷Qが高くなる。それ故、分布定数フィルタ13は、より急峻な共振特性、即ちより急峻なフィルタ特性を有する。従って、より大きいフィルタの減衰量が得られる。
【0042】
また、放射素子として働く第2部分22及び第3部分23の形成された箇所と、分布定数フィルタ13の形成された箇所において、絶縁層32の厚みが個別に設定されるので、放射効率は低下しない。
【0043】
第2実施形態は、適切な絶縁層32の厚みの差が顕著になる使用周波数帯、具体的に、適切な絶縁層32の厚みの差が1mm程度以上になる5GHz帯以下の使用周波数帯で、特に有効である。
【0044】
《第3実施形態》
図5(A)は本発明の第3実施形態に係るマイクロストリップアンテナ50の平面図である。
図5(B)はマイクロストリップアンテナ50のC-C断面図である。
図6はパッチ導体60が図示されていないマイクロストリップアンテナ50の平面図である。
【0045】
マイクロストリップアンテナ50は第2の実施形態に係るマイクロストリップアンテナ30と次の点で異なる。即ち、マイクロストリップアンテナ50は、パッチ導体40に代えてパッチ導体60を備え、絶縁層32に代えて絶縁層52を備え、分布定数フィルタ13に代えて分布定数フィルタ53を備える。さらに、マイクロストリップアンテナ50は絶縁体基板56及び導体パターン58を備える。導体パターン58は本発明の「第2導体パターン」の一例である。
【0046】
パッチ導体60は第1部分21に代えて第1部分61を有する。第1部分61は、x軸方向における位置に従って変化する幅を有する。接地導体11は絶縁体基板56の一方面に形成される。導体パターン58は絶縁体基板56の他方面に形成される。導体パターン58は、x軸方向に延伸し、x軸方向における位置に従って変化する幅を有する。導体パターン58は、例えば、エッチング技術によってプリント基板上の銅箔をパターニングすることで形成される。パッチ導体60の第1部分61は、導体パターン58上に配置され、半田付け等によって導体パターン58に接続される。分布定数フィルタ53は、互いに接続されたパッチ導体60の第1部分61と導体パターン58によって、Stepped Impedance型の低域通過フィルタとして構成される。分布定数フィルタ53は、基本波を通過させ、高帯域のスプリアスを減衰させる。
【0047】
なお、分布定数フィルタ53は、マイクロストリップ線路で構成されているが、分布定数フィルタ53はコプレーナ導波路又は他の分布定数線路で構成されてもよい。
【0048】
パッチ導体60の第1部分61及び導体パターン58で構成される部分に面する絶縁層52は絶縁体基板56で構成される。パッチ導体60の第2部分22及び第3部分23に面する絶縁層52は絶縁体基板56及び空気層57で構成される。空気層57は本発明の「第2絶縁層」の一例である。空気層57の厚みh4は絶縁体基板56の厚みh3と同等以上である。
【0049】
なお、絶縁層52は、空気層57に代えて、絶縁体材料で形成された層を有してもよい。
【0050】
使用周波数帯がマイクロ波帯のような高周波数帯である場合、分布定数フィルタの導体パターンが微細となるため、その導体パターンをパッチ導体に一体的に形成することが困難となる。第3実施形態によれば、導体パターン58は絶縁体基板56上に形成される。このため、エッチング技術によって導体パターン58を微細に形成できる。それ故、使用周波数帯が高周波数帯である場合でも、分布定数フィルタ53を容易に制作できる。
【0051】
また、放射素子として働く第2部分22及び第3部分23の形成された箇所おいて、絶縁層52は絶縁体基板56及び絶縁体基板56と同等以上の厚みの空気層のような絶縁層から構成される。このため、分布定数フィルタ53の導体パターンを絶縁体基板56に形成しても、放射素子として働く第2部分22及び第3部分23の放射効率を高く設定できる。
【0052】
従って、使用周波数帯が高周波数帯である場合でも、優れたフィルタ機能を有するマイクロストリップアンテナを実現できる。
【0053】
また、パッチ導体60は半田付け等によって導体パターン58に固定される。このため、スペーサのようなパッチ導体60の保持構造は不要である。
【符号の説明】
【0054】
10,30,50…マイクロストリップアンテナ
11…接地導体
12,32,52…絶縁層
13,53…分布定数フィルタ
14…給電ピン
15…給電点
20,40,60…パッチ導体
21,61…第1部分
22…第2部分
23…第3部分
24…スタブ
25,26…スリット
56…絶縁体基板
57…空気層
58…導体パターン