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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149567
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】吹付コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20231005BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/14 B
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058205
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽根井 誉久
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB12
4G112MB13
4G112MB23
4G112MB26
4G112PB10
4G112PB11
(57)【要約】
【課題】高い強度発現性を示し、且つひび割れしにくい吹付コンクリートを提供すること。
【解決手段】セメント、骨材及び強度増進材を含むコンクリート組成物と、急結混和材と、水とを含み、強度増進材が、石膏類及び/又は非晶質アルミノシリケートであり、強度増進材の含有量は、セメント100質量部に対して1~15質量部である、吹付コンクリート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、骨材及び強度増進材を含むコンクリート組成物と、急結混和材と、水とを含み、
前記強度増進材が、石膏類及び/又は非晶質アルミノシリケートであり、
前記強度増進材の含有量は、セメント100質量部に対して1~15質量部である、吹付コンクリート。
【請求項2】
前記急結混和材が、カルシウムアルミネート、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、及び硫酸アルミニウムを含む、請求項1に記載の吹付コンクリート。
【請求項3】
前記セメントの単位容積質量が400~650kg/mである、請求項1又は2に記載の吹付コンクリート。
【請求項4】
前記骨材の細骨材率が45~70体積%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の吹付コンクリート。
【請求項5】
前記水セメント比が25~50質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吹付コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吹付コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、採掘抗、地下空間等において、掘削面の崩壊防止、採掘時又は掘削後の地山補強の観点から、吹付コンクリートによる施工が行われている。吹付コンクリートは、その急結性によって施工対象物への付着性を担保し、施工対象物の補強に寄与している。
【0003】
吹付コンクリートには急結性付与のために急結成分が混和されており、中でも、カルシウムアルミネート、アルミン酸ナトリウム等を有効成分とする粉体急結剤は、強力な急結性を付与することができ、高い強度を得ることもできる。吹付コンクリートの一般的な施工法である湿式吹付工法では、例えば、少なくともセメント、水及び骨材を秤量・混合してベースコンクリートを作製し、アジテーター車等を介した上で施工時に吹付装置にポンプ圧送する。吹付装置内では別送の粉体又は液体の急結剤を圧送中のベースコンクリートに添加し、吹付装置の吹付ノズル内で混合を進めて吹付コンクリートを形成し、これをノズル端孔から吹付ける。この吹付装置内の急結成分が水と接する地点(接水地点)から吹付ノズル端の吐出孔までを移動する間に、混合がなされて吹付コンクリートが形成される。混合に使われる距離は通常は数十cm~数mの距離であり、その移動時間が混合時間になる。一般にこの距離が長いほど混合が進み、混合性が高まり、組織的にも性状的にもより均一なコンクリートを得易くなる。
【0004】
このような吹付コンクリートを得るために、ベースコンクリートに混和される粉体状の急結材は、一般的には前述した急結成分に諸性状を調整するための諸成分が加えられたものである。例えば、従来の代表的な粉体急結剤には、化学成分としてのCaO含有量を多くしたカルシウムアルミネートに、硬化促進のための石膏を配合し、これらに初期強度発現性を高めるアルミン酸ナトリウムや凝結促進のための炭酸ナトリウム等が添加されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-121763号公報
【特許文献2】特開2003-012356号公報
【特許文献3】特許第5129955号公報
【特許文献4】特開2020-11891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、用途や施工現場の環境によっては、従来の吹付コンクリートよりも更に高い強度発現性が求められることがある。高い強度発現性を発揮するためには、セメント量を増やしたり水量を減らしたりする方法があるが、そのような吹付コンクリートでは硬化時のひび割れが問題となることがあった。
【0007】
したがって、本発明は高い強度発現性を示し、且つひび割れしにくい吹付コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題について鋭意検討した結果、石膏類及び/又は非晶質アルミノシリケートを強度増進材として用い、その含有量を調整することで高い圧縮強度を示し、且つひび割れしにくい吹付コンクリートが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメント、骨材及び強度増進材を含むコンクリート組成物と、急結混和材と、水とを含み、強度増進材が、石膏類及び/又は非晶質アルミノシリケートであり、強度増進材の含有量は、セメント100質量部に対して1~15質量部である、吹付コンクリート。
[2]急結混和材が、カルシウムアルミネート、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、及び硫酸アルミニウムを含む、[1]に記載の吹付コンクリート。
[3]セメントの単位容積質量が400~650kg/mである、[1]又は[2]に記載の吹付コンクリート。
[4]骨材の細骨材率が45~70体積%である、[1]~[3]のいずれかに記載の吹付コンクリート。
[5]水セメント比が25~50質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の吹付コンクリート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば高い強度発現性を示し、且つひび割れしにくい吹付コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本明細書において、含有量等は全て固形分換算、無水物換算である。
【0012】
本実施形態の吹付コンクリートは、セメント、骨材及び強度増進材を含むコンクリート組成物と、急結混和材と、水とを含む。
【0013】
[コンクリート組成物]
コンクリート組成物は、セメント、骨材、強度増進材を含む。
セメントは、ポルトランドセメントが好ましく、ポルトランドセメントは何れの種類のものでもよく、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の各種ポルトランドセメントが挙げられる。セメントとしては、例えば高炉セメント、フライアッシュセメント等のポルトランドセメントを含む混合セメントも使用できる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。ポルトランドセメントを使用する場合の粒度は特に限定されず、例えば、JIS規格(JIS R 5210:2019)の2500~7000cm/gのものが挙げられる。
【0014】
セメントの単位容積質量は、400~650kg/mであることが好ましく、450~600kg/mであることがより好ましく、470~580kg/mであることが更に好ましい。セメントの単位容積質量が上記範囲内であれば、強度発現性がより一層向上する。
【0015】
骨材は、細骨材、粗骨材等を混合したものである。細骨材は、モルタルやコンクリートに使用できる細骨材であれば特に限定されない。粗骨材はコンクリートに使用できる粗骨材であれば特に限定されない。細骨材、粗骨材とも、所定の骨材強度が確保し易く、他の含有成分との比重差が小さく材料分離が生じ難い観点から、表乾密度が2.3~2.9g/cmの骨材を使用することが好ましい。このような骨材の具体例としては、細骨材は、珪砂、石灰石砂等の天然骨材、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕砂などが挙げられ、粗骨材は、珪石、石灰石、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕石や砂利が挙げられる。骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0016】
細骨材の単位容積質量は、700~1200kg/mであることが好ましく、800~1100kg/mであることがより好ましく、900~1050kg/mであることが更に好ましい。細骨材の単位容積質量が上記範囲内であれば、強度発現性がより一層向上する。
粗骨材の単位容積質量は、400~750kg/mであることが好ましく、500~700kg/mであることがより好ましく、550~650kg/mであることが更に好ましい。粗骨材の単位容積質量が上記範囲内であれば、強度発現性がより一層向上する。
【0017】
骨材の細骨材率([細骨材の体積/全骨材の体積]×100)は、45~70体積%であることが好ましく、50~68体積%であることがより好ましく、55~65体積%であることが更に好ましい。骨材の細骨材率が上記範囲内であれば、施工時の圧送性が更に優れ、強度発現性もより一層向上する。
【0018】
強度増進材は、石膏類及び/又は非晶質アルミノシリケートである。強度増進材は、石膏類を単独で用いてもよく、非晶質アルミノシリケートを単独で用いてもよく、石膏類及び非晶質アルミノシリケートを併せて用いてもよい。
【0019】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。石膏類の粉末度は、初期の強度発現をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3200~18000cm/gであることが好ましく、5000~15000cm/gであることがより好ましく、5500~14000cm/gであることが更に好ましく、7000~12000cm/gであることが特に好ましい
【0020】
非晶質アルミノシリケートは、粘土鉱物に由来し、非晶質部分を含むアルミノシリケートであれば特に限定されず、いずれも使用可能である。原料である粘土鉱物の例としては、(1)カオリン鉱物、(2)雲母粘土鉱物、(3)スメクタイト型鉱物、及びこれらが混合生成した混合層鉱物が挙げられる。非晶質アルミノシリケートは、これらの結晶性アルミノシリケートを、例えば焼成・脱水して非晶質化することにより得られる。非晶質アルミノシリケートとしては、反応性に更に優れるという観点から、カオリナイト、ハロサイト、ディッカイト等のカオリン鉱物由来のものが好ましく、カオリナイトを焼成して得られるメタカオリンがより好ましい。非晶質アルミノシリケートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。非晶質アルミノシリケートのBET比表面積は、1~22m/gであることが好ましく、1.5~16m/gであることがより好ましい。
本明細書において「非晶質」とは、粉末X線回折装置による測定で、原料である粘土鉱物に由来するピークがほぼ見られなくなることをいう。本実施形態に係る非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は非晶質の割合が70質量%以上であればよく、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%、即ち粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られないものが最も好ましい。ここで、非晶質の割合は、標準添加法により求めた値である。非晶質の割合が高いアルミノシリケート、即ち結晶質の割合が低いアルミノシリケートは、非晶質の割合が低いアルミノシリケートに比べて、同じ混和量における強度発現性が更によい傾向にある。アルミノシリケートの非晶質化のための加熱としては、外熱キルン、内熱キルン、電気炉等による焼成、及び溶融炉を用いた溶融等が挙げられる。
【0021】
強度増進材の含有量は、セメント100質量部に対して1~15質量部である。強度増進材の単位容積質量が上記範囲外であると、初期及び長期の強度発現性が十分に得られず、硬化時のひび割れも生じやすい。より一層高い強度発現性が得られ、ひび割れが生じにくいという観点から、強度増進材の含有量は、セメント100質量部に対しては1.5~12質量部であることが好ましく、2~10質量部であることが更に好ましい。強度増進材として石膏類及び非晶質アルミノシリケートを併用する場合も、これらの合計の単位容積質量が上記範囲内となるように調整することができる。
【0022】
本実施形態に係るコンクリート組成物は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの中では、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0023】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましく、0.5~1.5質量部であることが最も好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、良好な流動性が得られやすく、強度発現性も向上しやすい。
【0024】
コンクリート組成物には本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張材、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維、ポゾラン物質が挙げられる。
【0025】
コンクリート組成物は、通常用いられる混練器具により上記した各成分を混合することで調製でき、その器具は特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、コンクリートミキサ等が挙げられる。
【0026】
[急結混和材]
急結混和材としては、粉体であってもよく、液体であってもよく、急結性が高いという観点から、粉体であることが好ましい。粉体の急結混和材としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、硫酸アルミニウムを含むものが挙げられる。液体急結混和材としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩以外に硫酸アルミニウムを主成分として含むものが挙げられ、市販の液体急結混和材を用いることもできる。
【0027】
カルシウムアルミネートは、CaOとAlを主要化学成分とする無機水和活性物質であり、CaOとAlの含有モル比(CaO/Al)が1.8~2.7であることが好ましく、1.9~2.65であることが好ましく、2.0~2.6であることがより好ましい。CaOとAlの含有モル比が上記範囲内であれば、急結性と施工性の両立がしやすくなる。カルシウムアルミネートには、原料由来のCaOとAl以外の不純物等の異成分も、その存在形態にかかわらず、本発明の効果を阻害させない範囲で含んでもよい。
【0028】
カルシウムアルミネートは、結晶質、非晶質、それらの混合物のいずれも用いることができる。カルシウムアルミネートは、より優れた急結性が得られやすいという観点から、非晶質化の度合いであるガラス化率が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。カルシウムアルミネートの粉末度は特に制限されないが、コンクリートへの急結混和材に使用したときに適度な反応活性が得られやすいことから、混和対象となるベースコンクリート中のセメントと同程度かそれ以上の粉末度であることが好ましく、例えば、ブレーン比表面積3000~6500cm/gの粉末度が挙げられる。
【0029】
カルシウムアルミネートは、例えば、CaO源となる原料及びAl源となる原料を、目的とする化学成分としてのCaOとAlの含有モル比が得られるように配合した原料混合物を、溶融するまで加熱することで得られる。また、製造時の加熱後の冷却過程の違いにより、冷却後のカルシウムアルミネートの構造状態に様々な差異が生じるため、冷却速度等の冷却条件に応じて、非晶質化の度合であるガラス化率を調整できる。
【0030】
カルシウムアルミネートの含有率は、急結混和材全質量を基準として、60~85質量%であることが好ましく、65~83質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることが更に好ましい。カルシウムアルミネートの含有率が上記範囲内であれば、急結性及び混合性を両立しやすい。
【0031】
アルカリ金属硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、中でもナトリウムが好ましい。アルカリ金属硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ金属硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で4~16質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましく、6~14質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、急結性及び強度発現性に優れやすい。
【0032】
アルカリ土類金属硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、中でもカルシウムが好ましい。アルカリ土類金属硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ土類金属の硫酸塩の粒径や粒度も特に制限されるものではなく、例えば、ブレーン比表面積が4000~8500cm/g程度のものが挙げられる。アルカリ土類金属の硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で10~35質量部であることが好ましく、11~30質量部であることがより好ましく、12~25質量部であることが更に好ましい。アルカリ土類金属の硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、長期の強度発現性に優れやすい。
【0033】
急結混和材中におけるアルカリ金属硫酸塩及びアルカリ土類金属硫酸塩の質量比([アルカリ土類金属硫酸塩の質量]/[アルカリ金属硫酸塩の質量])は、無水物換算で1.1~2.5であることが好ましく、1.2~2.4であることがより好ましく、1.3~2.35であることが更に好ましい。アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ土類金属硫酸塩の質量比が上記範囲内であれば、急結性、混合性、長期の強度発現性が得られやすい。
【0034】
硫酸アルミニウムはいずれの形態でもよく、例えば、16水和物、無水物等が挙げられ、中でも16水和物が好ましい。硫酸アルミニウムの含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~7質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が上記範囲内であれば、低温環境下で急結性を高めた場合であっても長期の強度発現性を確保しやすい。
【0035】
急結混和材中におけるアルカリ金属硫酸塩及び硫酸アルミニウムの質量比([硫酸アルミニウムの質量]/[アルカリ金属硫酸塩の質量])は、無水物換算で0.05~2であることが好ましく、0.1~1.8であることがより好ましく、0.15~1.5であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩及び硫酸アルミニウムの質量比が上記範囲内であれば、急結性、混合性、及び強度発現性が得られやすい。
【0036】
急結混和材は、上記の各成分を混合して製造される。混合方法は特に制限されるものではなく、例えば、傾動ミキサ、パン型ミキサ、2軸ミキサ、グラウトミキサ、ホバートミキサ、オムニミキサ等の汎用的なミキサを用いることができる。
【0037】
急結混和材の量は、セメント100質量部に対し、5~15質量部であることが好ましく、6~14質量部であることがより好ましく、7~13質量部であることが更に好ましい。急結混和材の添加量が上記範囲内であれば、急結性及び混合性を両立しやすい。
【0038】
[吹付コンクリート]
吹付コンクリートは、例えば、急結混和材を除く各材料と水をコンクリートミキサ等で混練してベースコンクリートとし、吹付ノズルの先端でベースコンクリート及び急結混和材を混合して吹付ける湿式吹付工法により製造してもよく、急結混和材を含む各材料を混合してベース組成物とし、吹付ノズルの先端でベース組成物及び水を混合して吹付ける乾式吹付工法により製造してもよい。吹付コンクリートは、粉塵やリバウンドがより低減されやすく、より均一に各材料が混合できるという観点から、湿式吹付工法により製造することが好ましい。
【0039】
吹付コンクリートは、使用する目的、場所等の要因に応じて水の量を適宜調整することができる。水の単位容積質量は100~300kg/mであることが好ましく、150~250kg/mであることがより好ましく、170~220kg/mであることが更に好ましい。水の単位容積質量が上記範囲内であれば、施工時の圧送性が更に優れ、高い強度発現性も確保しやすい。水の量は、湿式吹付工法であっても乾式吹付工法であっても上記範囲内で調整することができる。
【0040】
吹付コンクリートの水セメント比([水の質量/セメントの質量]×100)は25~50質量%であることが好ましく、30~45質量%であることがより好ましく、32~42質量%であることが更に好ましい。水セメント比が上記範囲内であれば、施工時の圧送性が更に優れ、高い強度発現性も確保しやすい。
【0041】
吹付コンクリートの材齢28日における圧縮強度は、68kN/m以上であることが好ましく、70kN/m以上であることがより好ましく、75kN/m以上であることが更に好ましい。吹付コンクリートの圧縮強度の上限は、例えば、150kN/m以下であってもよい。吹付コンクリートの圧縮強度が上記範囲内であれば、より長期にわたり強度発現性を維持することができ、吹付コンクリートの耐久性が一層向上する。吹付コンクリートの圧縮強度は、アムスラー式圧縮強度試験機により測定した一軸圧縮強度によって評価することができる。
【0042】
本実施形態の吹付コンクリートは、高い強度発現性を示し、且つひび割れしにくいものである。そのため、本実施形態の吹付コンクリートは、トンネル壁面、斜面、湧水がある環境、地盤が軟弱な環境等への吹き付けにおいて好適に使用することができる。
【実施例0043】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例は、特記しない限り、20±1℃の環境下で行った。実施例において、含有量等は全て固形分換算、無水物換算である。
【0044】
[材料]
・急結混和材
カルシウムアルミネート:CaO/Alが2.5、ブレーン比表面積5400cm/g、ガラス化率95質量%
硫酸ナトリウム試薬:無水芒硝
硫酸カルシウム試薬:無水石膏
硫酸アルミニウム試薬:16水和物
・ベースコンクリート
セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3200cm/g、密度3.15g/cm
骨材:細骨材及び粗骨材の混合骨材(細骨材率62体積%)
細骨材:石灰石細骨材(表乾密度;2.65g/cm、中心粒径;0.6mm)
粗骨材:砕石(表乾密度;2.74g/cm、粒径5~15mm)
強度増進材1:無水石膏、ブレーン比表面積11000cm/g
強度増進材2:メタカオリン、BET比表面積2.1m/g
減水剤:ポリカルボン酸系減水剤
【0045】
[急結混和材の調製]
カルシウムアルミネート100質量部に対し、硫酸アルミニウム1・7質量部、硫酸ナトリウム10.8質量部、硫酸カルシウム20質量部となるように配合設計し、これらをヘンシェルミキサーで混合して急結混和材を作製した。
【0046】
[ベースコンクリートの調製]
セメント、骨材、水、強度増進材を表1に示す単位容積質量とし、減水剤をセメント100質量部に対して1質量部として配合設計し、各材料をコンクリートミキサで2分間混合し、ベースコンクリートを作製した。強度増進材は、セメント100質量部に対する量である。
[吹付コンクリートの作製]
ベースコンクリートを混練後直ちに供給用タンクに入れ、そこから長さ約10m、内径6cmの樹脂製ホースを介して吹付装置へポンプ圧送した。吹付装置は、ベースコンクリートが圧送される内径2インチの圧送管と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに空気を供給添加するための円筒状側管(空気供給部)と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに添加物(急結混和材)を供給添加するための円筒状側管(急結混和材供給部)と、吹付コンクリートを吹き付ける内径(先端孔径)2インチの噴射用ノズルとを基本構成とする市販品である。
急結混和材供給部である側管は、圧送管本管と噴射用ノズルとの間に鋼製ト字状管(三方管)を介すことで形成させた。ト字状管の直線上に位置する二方の管口に圧送管本管と噴射用ノズルがそれぞれ接続され、残りの管口に、別送される急結混和材の供給管が接続される構造とした。ト字状管内でのベースコンクリートへの急結混和材の添加位置(ベースコンクリートと急結混和材の合流地点)から噴射用ノズル孔端までの距離の間に、ベースコンクリートと急結混和材の混合がなされ、その距離(以下、混合距離と称す)は2mとした。
急結混和材は圧搾空気により所定量を空気圧送することで、吹付装置内で圧送中のベースコンクリートに添加される。添加されたコンクリートは所定の混合距離を進む間に混合され、吹付コンクリートが作製される。急結混和材の添加量はセメント100質量部に対し、9質量部である。
【0047】
[評価方法]
吹付コンクリートの各種評価方法は以下のとおりである。評価結果は表1に示す。
・強度発現性
上記吹付装置を用いて、吹付コンクリートを内寸30×40×20cmの成形用型枠内に吹き付け、型枠内を満たすようにした。これを20℃(±1℃)の恒温庫に入れ、所定時間経過後、型枠内の硬化コンクリートからコアドリルによって直径5cm、高さ10cmの円柱状供試体を採取し、材齢7日又は28日の供試体を得た。この供試体の一軸圧縮強度をアムスラー式圧縮強度試験機で測定した。
・ひび割れ評価
60×60×6cmの平板型枠に平滑になるように吹付コンクリートを吹き付けてコンクリート平板を作製した。コンクリート平板は20℃、湿度60%環境下で28日間静置して養生した。養生したコンクリート平板を目視によりひび割れを確認し、ひび割れが認められないものを◎、ひび割れ幅が0.5mm未満及び長さ10cm未満であり、且つひび割れ本数が2本以下であるものを〇、ひび割れ幅が0.5mm以上、長さ10cm以上、又はひび割れ本数が3本以上であるものを×と評価した。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例の吹付コンクリートは28日時点で高い圧縮強度を示し、またひび割れもほとんど見られなかった。一方、比較例の吹付コンクリートは、圧縮強度が低い、又は、高い圧縮強度があってもひび割れが生じるものであった。