(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149568
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粉粒体ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 7/01 20060101AFI20231005BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231005BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20231005BHJP
F16F 15/129 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16F7/01
F16F15/02 E
F16F15/02 Z
F16F15/023 Z
F16F15/129 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058206
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊内 敦士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AA06
3J048AC02
3J048BA24
3J048BC02
3J048BE12
3J048BE14
3J066AA26
3J066BB01
3J066BD03
(57)【要約】
【課題】粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止する。
【解決手段】粉粒体ダンパAは、ケース10と、ケース10内に収容された粉粒体30と、粉粒体30に接触しながら移動する可動体20と、ケース10内に設けられ、粉粒体30の凝集を防止する凝集防止部材としての圧縮コイルバネ32と、を備えている。圧縮コイルバネ32によって粉粒体30が凝集することが防止されるので、粉粒体30の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に収容された粉粒体と、
前記粉粒体に接触しながら移動する可動体と、
前記ケース内に設けられ、前記粉粒体の凝集を防止する凝集防止部材と、を備えている粉粒体ダンパ。
【請求項2】
前記可動体が、前記ケース内を往復移動するものであり、
前記ケースが、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、
前記凝集防止部材が前記可動体と前記端壁面との間に配置されている請求項1に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項3】
前記凝集防止部材が、前記粉粒体を攪拌するように弾性変形する請求項1又は請求項2に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項4】
前記凝集防止部材が、コイルバネである請求項3に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項5】
前記凝集防止部材が、コイル径が一定でないコイルバネである請求項4に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項6】
前記凝集防止部材が、前記可動体の移動に伴い、前記可動体の移動方向とは異なる方向へ弾性変形する粘弾性体からなる請求項1又は請求項2に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項7】
前記ケースが、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、
前記凝集防止部材が、前記端壁面に接した状態で配置され、
前記可動体の往動と復動が切り替わるときに、前記凝集防止部材が、前記可動体から押圧されることによって前記端壁面に摺接するように弾性変形する請求項6に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項8】
前記凝集防止部材が、ゴム材料からなる請求項6又は請求項7に記載の粉粒体ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粒状体が充填されたケース内に、ロッドと一体に移動するピストンを収容したダンパ装置が開示されている。ピストンが移動すると、粒状体が流動することによって、粒状体同士の間や、粒状体とピストンとの間に摩擦力が生じる。このダンパ装置は、粒状体の摩擦力によって減衰力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンは、ケースの両端部において折り返しながら往復移動する。ケースの両端部では、ケースの端壁部とピストンとの間で強く加圧された粒状体が、凝集し易くなる。凝集すると、粒状体の流動性が低下するため、ピストンの往復経路における折返部では、減衰機能が低下する。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉粒体ダンパは、
ケースと、
前記ケース内に収容された粉粒体と、
前記粉粒体に接触しながら移動する可動体と、
前記ケース内に設けられ、前記粉粒体の凝集を防止する凝集防止部材と、を備えている。
【0007】
本発明の粉粒体ダンパは、前記可動体が、前記ケース内を往復移動するものであり、前記ケースが、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、前記凝集防止部材が前記可動体と前記端壁面との間に配置されていることが好ましい。可動体の往動と復動が切り替わるときに、凝集防止部材は、可動体と端壁面との間で挟み付けられることによって弾性変形する。可動体と端壁面との間に凝集防止部材が介在することによって、粉粒体が可動体と端壁面との間で押し潰されて凝集することを防止できる。
【0008】
本発明の粉粒体ダンパは、前記凝集防止部材が、前記粉粒体を攪拌するように弾性変形することが好ましい。凝集防止部材が粉粒体を撹拌することによって、粉粒体の凝集を防止することができる。
【0009】
本発明の粉粒体ダンパは、前記凝集防止部材が、コイルバネであることが好ましい。圧縮コイルバネの素線が粉粒体を撹拌することによって、粉粒体の凝集を防止することができる。
【0010】
本発明の粉粒体ダンパは、前記凝集防止部材が、コイル径が一定でないコイルバネであることが好ましい。コイルバネの素線が、径方向における異なる位置で粉粒体を撹拌するので、粉粒体の凝集を効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の粉粒体ダンパは、前記凝集防止部材が、前記可動体の移動に伴い、前記可動体の移動方向とは異なる方向へ弾性変形する粘弾性体からなることが好ましい。可動体が移動すると、凝集防止部材が可動体の移動方向とは異なる方向へ弾性変形することによって、粉粒体の凝集を防止することができる。
【0012】
本発明の粉粒体ダンパは、前記ケースが、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、前記凝集防止部材が、前記端壁面に接した状態で配置され、前記可動体の往動と復動が切り替わるときに、前記凝集防止部材が、前記可動体から押圧されることによって前記端壁面に摺接するように弾性変形することが好ましい。凝集防止部材が端壁面に摺接するように弾性変形することによって、端壁面に接している粉粒体や端壁面の近傍の粉粒体が、可動体の移動方向と交差する径方向へ押し動かされる。これにより、粉粒体が端壁面と可動体との間で凝集することを防止できる。
【0013】
本発明の粉粒体ダンパは、前記凝集防止部材が、ゴム材料からなることが好ましい。ゴム材料は、金属材料に比べると弾性変形量が大きいので、粉粒体の凝集を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
凝集防止部材によって粉粒体が凝集することが防止されるので、粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図2】実施形態1の粉粒体ダンパにおいて可動体がケースの端部へ移動した状態をあらわす断面図
【
図3】実施形態2の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図4】実施形態2の粉粒体ダンパにおいて可動体がケースの端部へ移動した状態をあらわす断面図
【
図5】実施形態3の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図6】実施形態4の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図7】実施形態4の粉粒体ダンパにおいて可動体がケースの端部へ移動した状態をあらわす断面図
【
図8】実施形態5の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図9】実施形態5の粉粒体ダンパにおいて可動体がケースの端部へ移動した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を
図1~
図2を参照して説明する。尚、以下の説明においては、前後方向と軸線方向を同義で用いる。
図1,2における左方を前方、右方を後方と定義する。
【0017】
本実施形態1の粉粒体ダンパAは、ケース10と、可動体20と、粉粒体30と、凝集防止部材(圧縮コイルバネ32)と、を備えている。ケース10は、軸線を前後方向に向けた円筒形の周壁部11と、周壁部11の前後両端を閉塞する一対の端壁部12とを有する。ケース10の内部には、可動体20の一部と、粉粒体30と、凝集防止部材と、が収容される作動空間13が形成されている。端壁部12の中心部には、端壁部12をケース10と同軸状に貫通した形状のガイド孔14が形成されている。
【0018】
可動体20は、ケース10を同軸状に貫通した円形断面のロッド21と、ロッド21と一体に移動する抵抗部22とを有する部材である。ロッド21は、前後両ガイド孔14に挿通されることによってガイドされ、ケース10と同軸の状態を保ちながらケース10に対して前後方向に相対移動することができる。抵抗部22は、外径がロッド21の外径よりも大きい円柱形をなし、粉粒体30に抗力を生じさせるための抗力発生部として機能する。抵抗部22の外径は、ロッド21の外径よりも大きく、周壁部11の内径よりも小さい。抵抗部22の外周面と周壁部11の内周面との間には、粉粒体30の流動空間15が確保されている。抵抗部22は、定型部23と、定型部23の前後両端に連なる一対のテーパ部24とから構成されている。定型部23は、定型部23の前端から後端まで外径寸法が一定の円柱形をなす。テーパ部24は、定型部23から端壁部12に向かって外径が次第に小さくなるような円錐台形をなす。
【0019】
ケース10の外部でロッド21に外力が作用すると、可動体20は、ケース10に対して軸線方向に往復移動する。端壁部12のうち作動空間13に臨む面は、可動体20の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面16として機能する。端壁面16は、可動体20の往復移動方向において抵抗部22と対向するように配置されている。可動体20の往復移動過程で往動と復動とが切り替わるときに、抵抗部22は、端壁面16に接近し、端壁面16から離隔する。
【0020】
粉粒体30は、粒径(ラジアン径)が0.001μm~10mmの粉状物又は粒状物である。粉粒体30の材料としては、シリカ系(炭化ケイ素)の無機物、鉄等の金属等が用いられる。粉粒体30は、作動空間13内のうちケース10の内面と可動体20の外面との間の空間に充填されている。粉粒体30の充填率は、粉粒体30の流動性を阻害せず、且つ所定の減衰力を確保するために、例えば40%~50%に設定されている。
【0021】
凝集防止部材は、軸線を前後方向に向けた前後一対の圧縮コイルバネ32からなる。一対の圧縮コイルバネ32は、同一の部品である。圧縮コイルバネ32のコイル径は、ロッド21の外径よりも大きく、抵抗部22の最大外径よりも小さい。各圧縮コイルバネ32は、ロッド21を包囲した状態で、抵抗部22のテーパ部24と端壁面16(端壁部12)との間に配置されている。可動体20に外力が作用していない状態では、一対の圧縮コイルバネ32が、弾性的に収縮変形した状態でテーパ部24と端壁面16とに当接しているので、可動体20は中立位置(
図1参照)に保持されている。可動体20が中立位置にある状態では、抵抗部22が、作動空間13内の前後方向における中央に位置する。
【0022】
可動体20が前後方向へ往復移動すると、作動空間13内では、抵抗部22が、粉粒体30を押し動かしながらロッド21と一体となって往復移動し、抵抗部22の周囲では粉粒体30が流動する。粉粒体30の流動に伴って、粉粒体30とテーパ部24の外周面との間、粉粒体30と定型部23の外周面との間、粉粒体30とロッド21の外周面との間、粉粒体30と周壁部11の内周面との間、粉粒体30と端壁面16との間、粉粒体30同士の間で、転がり摩擦や滑り摩擦が生じる。この摩擦力は、可動体20の軸線方向への移動を抑制する抗力、即ち粉粒体ダンパAの減衰力としての機能を発揮する。
【0023】
可動体20が移動するのに伴い、抵抗部22の移動方向前方側に位置する圧縮コイルバネ32が、抵抗部22と端壁面16との間で軸線方向に収縮するように弾性変形する。圧縮コイルバネ32の軸線方向への弾性変形に伴い、圧縮コイルバネ32の素線が軸線方向に移動する。圧縮コイルバネ32の素線の移動によって、素線の周囲では、粉粒体30が撹拌される。
【0024】
抵抗部22は、端壁面16の近傍において折り返しながら往復移動する。折り返す直前では、粉粒体30が、抵抗部22と端壁面16との間で強く加圧されるため、端壁面16上で凝集することが懸念される。粉粒体30が凝集すると粉粒体30の流動性が低下するため、可動体20の往復経路における折返部では、減衰機能が低下する。この対策として、本実施形態1では、作動空間13内に圧縮コイルバネ32(凝集防止部材)を収容している。
【0025】
可動体20の移動に伴う圧縮コイルバネ32の素線の変形によって、粉粒体30が撹拌され、端壁面16の近傍において粉粒体30の流動性が高められる。これにより、粉粒体30は、抵抗部22と端壁面16との間で加圧されたときに、径方向外方へ逃げるように流動し易くなるので、粉粒体30の凝集を防止することができる。また、圧縮コイルバネ32の弾縮量が最大になって素線同士が軸線方向に密着した状態になったときに、抵抗部22が端壁面16に対して最接近するが、このとき、抵抗部22と端壁面16との間には圧縮コイルバネ32が介在するので、粉粒体30が抵抗部22と端壁面16との間で強く加圧される虞がない。したがって、粉粒体30の凝集を防止することができる。
【0026】
本実施形態1の粉粒体ダンパAは、ケース10と、ケース10内に収容された粉粒体30と、可動体20と、凝集防止部材とを備えている。可動体20は、ケース10内に収容され、粉粒体30に接触しながら移動する。凝集防止部材は、ケース10内に設けられ、粉粒体30の凝集を防止する機能を発揮する。凝集防止部材によって粉粒体30が凝集することが防止されるので、粉粒体30の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【0027】
可動体20は、ケース10内を前後方向に往復移動する。ケース10は、可動体20の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面16を有する。凝集防止部材(圧縮コイルバネ32)は可動体20の抵抗部22と端壁面16との間に配置されている。可動体20の往動と復動が切り替わるときに、圧縮コイルバネ32は、可動体20と端壁面16との間で挟み付けられることによって弾性変形する。可動体20と端壁面16との間に圧縮コイルバネ32が介在することによって、粉粒体30が可動体20と端壁面16との間で押し潰されて凝集することを防止できる。
【0028】
凝集防止部材は、圧縮コイルバネ32である。圧縮コイルバネ32は、素線を軸線方向へ移動させるように弾性変形する。圧縮コイルバネ32の弾性変形に伴って、圧縮コイルバネ32の素線が粉粒体30を撹拌することによって、粉粒体30の凝集を防止することができる。
【0029】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を
図3~
図4を参照して説明する。本実施形態2の粉粒体ダンパBは、凝集防止部材を、上記実施形態1とは異なる構成としたものである。ケース10、粉粒体30及び可動体20の構成及び作用効果については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0030】
本実施形態2の凝集防止部材は、円錐コイルバネと称される圧縮コイルバネ33からなる。圧縮コイルバネ33は、全体として円錐台形状をなす。圧縮コイルバネ33のコイル径は、軸線方向において一定ではなく、可動体20の抵抗部22側から端壁面16側に向かって次第に大きくなっている。よって、実施形態1のものに比べると、径方向において幅広い範囲に亘って粉粒体30を撹拌することができる。更に、圧縮コイルバネ33の最大コイル径は、可動体20の抵抗部22の最大外径よりも大きいので、抵抗部22よりも径方向外方に存在する粉粒体30を撹拌することができる。圧縮コイルバネ33の素線が、径方向において異なる複数の位置で粉粒体30を撹拌するので、粉粒体30の凝集を効果的に防止することができる。
【0031】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を
図5を参照して説明する。本実施形態3の粉粒体ダンパCは、凝集防止部材を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。ケース10、粉粒体30及び可動体20の構成及び作用効果については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0032】
本実施形態3の凝集防止部材は、樽形コイルバネと称される圧縮コイルバネ34からなる。圧縮コイルバネ34のコイル径は、軸線方向において一定ではなく、軸線方向中央が最大径であり、軸線方向両端が最少径である。よって、実施形態1のものに比べると、径方向において幅広い範囲に亘って粉粒体30を撹拌することができる。更に、圧縮コイルバネ34の最大コイル径は、可動体20の抵抗部22の最大外径よりも大きいので、抵抗部22よりも径方向外方に存在する粉粒体30を撹拌することができる。圧縮コイルバネ34の素線が、径方向における異なる位置で粉粒体30を撹拌するので、粉粒体30の凝集を効果的に防止することができる。
【0033】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を
図6~
図7を参照して説明する。本実施形態4の粉粒体ダンパDは、凝集防止部材35を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。ケース10、粉粒体30及び可動体20については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
抵抗部22と2つの端壁部12との間には、一対の凝集防止部材35が配置されている。凝集防止部材35は、円錐台形状をなし、弾性変形可能なゴム材料からなる単一部品である。各凝集防止部材35の大径側の端面36Lは、端壁部12の内面(端壁面16)に面接触している。凝集防止部材35の小径側の端面36Sは、抵抗部22側に面している。小径側の端面36Sの外径は、抵抗部22の最少外径よりも大きい寸法に設定されている。凝集防止部材35には、前後方向に貫通した貫通孔37が形成されている。貫通孔37の内径は、ガイド孔14の内径と同じ寸法である。貫通孔37は、ガイド孔14と同心状に連通している。
【0035】
可動体20が軸線方向に往復移動する過程では、抵抗部22が、端壁面16の近傍において折り返しながら往復移動する。折り返す直前では、テーパ部24が、凝集防止部材35における小径側の端面36Sを押圧し、小径側の端面36Sに食い込む。
図7に示すように、凝集防止部材35は、テーパ部24と端壁面16との間で弾性的に押し潰されることによって、径方向外方へ拡径するように弾性変形する。このとき、凝集防止部材35の大径側の端面36Lが、端壁面16上を擦るように移動するので、凝集防止部材35の外周面の近傍では、粉粒体30が、径方向外方(周壁部11の内周面に接近する方向)へ押し動かされる。
【0036】
抵抗部22が折り返した後は、凝集防止部材35が抵抗部22による押圧状態から解放されるので、凝集防止部材35が縮径するように弾性復帰する。弾性復帰の過程では、凝集防止部材35の大径側の端面36Lが端壁面16に摺接するとともに、小径側の端面36Sが軸線方向(抵抗部22側)へ変位する。この凝集防止部材35の弾性復帰によって、凝集防止部材35の近傍の粉粒体30が移動する。抵抗部22が折り返す過程では、抵抗部22と端壁面16との間に凝集防止部材35が介在するので、粉粒体30が抵抗部22と端壁面16との間で強く押し潰されることがない。よって、端壁面16において粉粒体30が凝集することが防止される。
【0037】
凝集防止部材35は、端壁面16に接した状態で配置されている。可動体20の往動と復動が切り替わるときに、凝集防止部材35は、可動体20の抵抗部22から押圧されることによって、端壁面16に摺接するように弾性変形する。凝集防止部材35が端壁面16に摺接するように弾性変形することによって、端壁面16に接している粉粒体30や端壁面16の近傍の粉粒体30が、可動体20の移動方向と交差する径方向へ押し動かされる。これにより、粉粒体30が端壁面16と可動体20との間で凝集することを防止できる。凝集防止部材35は、ゴム材料からなる。ゴム材料は、金属材料に比べると弾性変形量が大きいので、粉粒体30の凝集を効果的に防止することができる。
【0038】
<実施形態5>
次に、本発明を具体化した実施形態5を
図8~
図9を参照して説明する。本実施形態5の粉粒体ダンパEは、可動体41が回転軸42を中心として回転するものである。粉粒体ダンパEは、円筒形の支持部材40と、可撓性を有するケース50と、可動体41と、ケース50内に収容された粉粒体30と、ケース50内に収容された一対の凝集防止部材と、円弧形の経路で往復移動するものである。粉粒体30は、実施形態1と同じものである。
【0039】
支持部材40の中心には、可動体41を構成する回転軸42が、回転可能に支持されている。可動体41は、回転軸42から径方向外方へ延出した可動板43を有する。可動板43は、板厚方向が周方向(可動体41の移動方向)を向くように配置されている。支持部材40には、支持部材40の内周面から回転軸42に向かって径方向内側へ突出した板状の固定部44が設けられている。固定部44は、板厚方向が支持部材40の周方向を向くように配置されている。固定部44には、固定部44を周方向(板厚方向)に貫通する流動孔45が形成されている。
【0040】
可動体41は、
図8に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ180°未満の範囲で回転することができる。可動体41は、回転軸42を中心として周方向に往復移動する。可動体41が中立位置にあるとき、可動板43は、回転軸42を挟んで固定部44とは正反対に位置する。支持部材40の内部空間は、可動板43と固定部44とによって、2つの弧状空間46に区画されている。2つの弧状空間46は、可動板43の延出端縁と支持部材40の内周面との隙間、及び回転軸42と固定部44との隙間を介して連通している。
【0041】
ケース50は、可動板43と、固定部44と、一対の蛇腹部51とから構成されている。一対の蛇腹部51は、軸線が円弧形をなすように湾曲させたものである。一対の蛇腹部51は、2つの弧状空間46内に個別に収容され、回転軸42と同軸状に配置されている。蛇腹部51の一方の端部は、可動板43に固着され、蛇腹部51の他方の端部は固定部44に固着されている。
【0042】
ケース50内は、固定部44によって2つの作動空間52に仕切られている。2つの作動空間52は、流動孔45を介して連通している。固定部44のうち作動空間52に臨む2つの面は、可動体41の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面53として機能する。端壁面53は、可動体41の往復移動方向において可動板43と対向するように配置されている。可動体41の往復移動過程で往動と復動とが切り替わるときに、可動板43は、端壁面53に接近し、端壁面53から離隔する。
【0043】
可動体41が中立位置にあるときに、2つの弧状空間46は同一容積の半円弧状をなし、2つの作動空間52も同一容積の半円弧状をなす。可動体41が中立位置から時計回り方向又は反時計回り方向へ回転すると、
図9に示すように、一方の弧状空間46が容積を増大させた優弧空間46Yとなり、他方の弧状空間46が容積を減少させた劣弧空間46Rとなる。これに伴い、優弧空間46Y内では、蛇腹部51が円弧形を保ったまま伸張変形し、作動空間52の容積が増大する。劣弧空間46R内では、蛇腹部51が円弧形を保ったまま収縮変形し、作動空間52の容積が減少する。
【0044】
一対の凝集防止部材は、アークコイルバネと称される一対のコイルバネ54からなる。コイルバネ54は、軸線を円弧状に湾曲させた形状である。コイルバネ54のコイル径は、コイルバネ54の全長に亘って一定である。コイルバネ54は、ケース50内に収容され、回転軸42及び蛇腹部51と同軸状に配置されている。コイルバネ54の一方の端部は可動板43に固着され、他方の端部は固定部44に固着されている。優弧空間46Y内では、作動空間52の容積の増大に連動して、コイルバネ54が円弧形を保ったまま伸張変形する。劣弧空間46R内では、作動空間52の容積の減少に連動して、蛇腹部51が円弧形を保ったまま収縮変形する。
【0045】
ケース50内には粉粒体30が充填されている。作動空間52の容積の増減に伴い、粉粒体30が流動孔45を通って2つの作動空間52内を行き来する。このときに、粉粒体30と蛇腹部51の内面との間、粉粒体30と可動板43との間、粉粒体30と固定部44との間、粉粒体30と流動孔45の内面との間、粉粒体30とコイルバネ54との間、粉粒体30同士の間に摩擦抵抗が生じる。粉粒体30が流動孔45を通過するときに流動抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗と流動抵抗が、回転軸42に対する減衰力として機能する。
【0046】
可動体41が回転するのに伴い、可動板43に固着されたコイルバネ54が、伸張するように又は収縮するように弾性変形する。コイルバネ54の伸縮変形に伴い、コイルバネ54の素線が軸線方向(周方向)及び径方向に移動する。コイルバネ54の素線の移動に伴って、素線の周囲では粉粒体30が撹拌される。
【0047】
可動板43は、固定部44(端壁面53)の近傍において折り返しながら往復移動する。折り返す直前では、劣弧空間46R側の作動空間52内の粉粒体30が、可動板43と端壁面53との間で加圧されるため、端壁面53上で凝集することが懸念される。粉粒体30が凝集すると粉粒体30の流動性が低下するため、可動体41の往復経路における折返部(端壁面53の近傍)では、減衰機能が低下する。この対策として、作動空間52内にコイルバネ54(凝集防止部材)を収容している。コイルバネ54は、端壁面53に固着された状態に保持されている。
【0048】
可動体41の回転移動に伴うコイルバネ54の素線の変形によって、粉粒体30が撹拌され、端壁面53の近傍において粉粒体30の流動性が高められる。これにより、粉粒体30は、可動板43と端壁面53との間で加圧されたときに、流動孔45内へ流動し易くなるので、粉粒体30の凝集を防止することができる。また、コイルバネ54の弾縮量が最大になって素線同士が軸線方向に密着した状態になったときに、可動板43が端壁面53に対して最接近するが、このとき、可動板43と端壁面53との間にはコイルバネ54が介在するので、粉粒体30が可動板43と端壁面53との間で強く加圧される虞がない。したがって、粉粒体30の凝集を防止することができる。
【0049】
本実施形態5の粉粒体ダンパEは、粉粒体30が収容されたケース50と、粉粒体30に接触しながら移動する可動体41と、凝集防止部材とを備えている。凝集防止部材は、コイルバネ54である。コイルバネ54は、ケース50内に設けられ、軸線方向(回転軸42の周方向)に伸縮変形する。コイルバネ54の弾性変形に伴って、コイルバネ54の素線が粉粒体30を撹拌することによって、粉粒体30の凝集を防止することができる。これにより、粉粒体30の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
凝集防止部材は、端壁面と可動体との間に限らず、ケースの周壁部と可動体との間に配置してもよい。
実施形態1~5では、粘弾性体の材料として弾性の傾向が強い材料を用いたが、粘弾性体として、粘性の傾向が強い材料を用いてもよい。
実施形態1~3において、コイルバネは、軸線方向両端部のコイル径が軸線方向中央部のコイル径よりも大きい鼓形のバネでもよい。
実施形態1~3において、コイルバネは、弾縮時にのみ減衰力を発揮する圧縮コイルバネに限らず、伸張時にのみ減衰力を発揮する引張りコイルバネでもよい。
実施形態1~3において、1つの粉粒体ダンパに、1つの圧縮コイルバネと1つの引張りコイルバネとを設けてもよい。
実施形態1~3,5において、1つの粉粒体ダンパに、凝集防止部材として1つの圧縮コイルバネのみを設ける形態としてもよい。
実施形態1~3において、1つの粉粒体ダンパに、凝集防止部材として1つの引張りコイルバネのみを設ける形態としてもよい。
粘弾性体は、実施形態1~3,5で例示したコイルバネに限らず、皿バネ、板バネ、たこ足状のバネ部材等であってもよい。
実施形態1~3において、コイルバネを可動体と端壁面との両方に連結し、コイルバネが弾縮したときと伸張したときの両形態で減衰力を発揮するようにしてもよい。このようにすると、可動体の往復移動に伴って、コイルバネが、圧縮コイルバネとしての機能と引張りコイルバネとしての機能とを交互に発揮する。
実施形態1~3、5において、コイルバネを可動体のみに連結し、コイルバネが端壁面から離間し得るようにしてもよい。
実施形態1~3,5において、素線径、コイル径、軸長、バネ定数等が異なる2つのコイルバネを、1つのケース内に収容してもよい。
実施形態1~5では、粉粒体の粒径(ラジアン径)を0.001μm~10mmとしたが、粒径(ラジアン径)が0.001μm~1mmの粉粒体を用いることによって、減衰機能をより効果的に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0051】
A,B,C,D,E…粉粒体ダンパ
10,50…ケース
16,53…端壁面
20,41…可動体
30…粉粒体
32,33,34…圧縮コイルバネ(凝集防止部材、コイルバネ)
35…凝集防止部材
54…コイルバネ(凝集防止部材)