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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149569
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粉粒体ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/01 20060101AFI20231005BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231005BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20231005BHJP
   F16F 15/129 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16F7/01
F16F15/02 E
F16F15/02 Z
F16F15/023 Z
F16F15/129 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058207
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊内 敦士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AC02
3J048BA24
3J048BE12
3J048BE14
3J066AA26
3J066BB01
3J066BD03
(57)【要約】
【課題】粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止する。
【解決手段】粉粒体ダンパAは、ケース10と、ケース10内の作動空間13に収容された粉粒体27と、粉粒体27に接触した状態で往復移動する可動体20と、を備え、ケース10は、可動体20の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面15を有し、作動空間13のうち端壁面15に臨む端部空間17の断面積は、作動空間13における端部空間17以外の定径空間16の断面積よりも大きくなるように設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内の作動空間に収容された粉粒体と、
前記粉粒体に接触した状態で往復移動する可動体と、を備え、
前記ケースは、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、
前記作動空間のうち前記端壁面に臨む端部空間の断面積は、前記作動空間における前記端部空間以外の領域の断面積よりも大きくなるように設定されている粉粒体ダンパ。
【請求項2】
前記作動空間のうち前記端部空間以外の領域は、断面積が一定の空間であり、
前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成する領域には、前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成しない領域に対して相対的に凹ませた拡径部が形成されている請求項1に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項3】
前記拡径部における断面積は、前記端壁面に接近するほど徐々に拡大するように設定されている請求項2に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項4】
前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成しない領域には、前記可動体の移動方向に並ぶ複数の凹部が形成されている請求項2に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項5】
前記可動体は、回転軸から径方向へ可動板を突出させた形状であって、前記回転軸を中心として回転可能であり、
前記ケースは、前記可動板の回転経路に沿うように設けられて前記作動空間を構成する周壁部を有し、
前記端壁面は、前記周壁部から前記回転軸に向かって延出するように配置され、
前記回転軸から前記周壁部までの距離は、前記端部空間以外の領域よりも前記端部空間の方が大きくなるように設定されている請求項1に記載の粉粒体ダンパ。
【請求項6】
前記可動体は、回転軸から径方向へ可動板を突出させた形状であって、前記回転軸を中心として回転可能であり、
前記端壁面は、前記可動板の回転経路の延長線上に配置され、
前記ケースは、前記可動板と前記端壁面とを繋ぎ、前記可動板の回転方向において伸縮可能な筒状の伸縮部材を備えて構成されており、
前記伸縮部材のうち前記端部空間を構成する部位の断面積は、前記伸縮部材のうち前記端部空間を構成しない部位の断面積よりも大きくなるように設定されている請求項1に記載の粉粒体ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粒状体が充填されたケース内に、ロッドと一体に移動するピストンを収容したダンパ装置が開示されている。ピストンが移動すると、粒状体が流動することによって、粒状体同士の間や、粒状体とピストンとの間に摩擦力が生じる。このダンパ装置は、粒状体の摩擦力によって減衰力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-021648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンは、ケースの両端部において折り返しながら往復移動する。ケースの両端部では、ケースの端壁部とピストンとの間で強く加圧された粒状体が、凝集し易くなる。凝集すると、粒状体の流動性が低下するため、ピストンの往復経路における折返部では、減衰機能が低下する。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉粒体ダンパは、
ケースと、
前記ケース内の作動空間に収容された粉粒体と、
前記粉粒体に接触した状態で往復移動する可動体と、を備え、
前記ケースは、前記可動体の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面を有し、
前記作動空間のうち前記端壁面に臨む端部空間の断面積は、前記作動空間における前記端部空間以外の領域の断面積よりも大きくなるように設定されている。
【0007】
本発明の粉粒体ダンパは、前記作動空間のうち前記端部空間以外の領域は、断面積が一定であり、前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成する領域には、前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成しない領域に対して相対的に凹ませた拡径部が形成されていることが好ましい。可動体が端部空間以外の領域を移動する過程では、減衰力が安定する。
【0008】
本発明の粉粒体ダンパは、前記拡径部における断面積は、前記端壁面に接近するほど徐々に拡大するように設定されていることが好ましい。可動体が端部空間内を移動するときに、減衰力の変動が緩やかである。
【0009】
本発明の粉粒体ダンパは、前記ケースの内周面のうち前記端部空間を構成しない領域には、前記可動体の移動方向に並ぶ複数の凹部が形成されていることが好ましい。可動体が移動する過程で、減衰力を変動させることができる。
【0010】
本発明の粉粒体ダンパは、前記可動体は、回転軸から径方向へ可動板を突出させた形状であって、前記回転軸を中心として回転可能であり、前記ケースは、前記可動板の回転経路に沿うように設けられて前記作動空間を構成する周壁部を有し、前記端壁面は、前記周壁部から前記回転軸に向かって延出するように配置され、前記回転軸から前記周壁部までの距離は、前記端部空間以外の領域よりも前記端部空間の方が大きくなるように設定されていることが好ましい。可動板によって端壁面側へ押圧された粉粒体は、可動板の押圧方向と交差する径方向外方へ逃げることができる。これにより、粉粒体が可動板と端壁面との間で押し潰されることを防止し、ひいては、粉粒体が凝集することを防止できる。
【0011】
本発明の粉粒体ダンパは、前記可動体は、回転軸から径方向へ可動板を突出させた形状であって、前記回転軸を中心として回転可能であり、前記端壁面は、前記可動板の回転経路の延長線上に配置され、前記ケースは、前記可動板と前記端壁面とを繋ぎ、前記可動板の回転方向において伸縮可能な筒状の伸縮部材によって構成されており、前記伸縮部材のうち前記端部空間を構成する部位の断面積は、前記伸縮部材のうち前記端部空間を構成しない部位の断面積よりも大きくなるように設定されている。可動板によって端壁面側へ押圧された粉粒体は、可動板の押圧方向と交差する径方向外方へ逃げることができる。これにより、粉粒体が可動板と端壁面との間で押し潰されることを防止し、ひいては、粉粒体が凝集することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
作動空間の端部空間では粉粒体が可動体と端壁面との間で挟まれる。この点に鑑み、端部空間の断面積を、他の領域よりも大きく設定した。可動体によって端壁面側へ押圧された粉粒体は、可動体の押圧方向と交差する方向へ逃げることができるので、端壁面で凝集する虞がない。これにより、粉粒体の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
図2】実施形態1の粉粒体ダンパにおいて可動体の可動板が端部空間へ移動した状態をあらわす断面図
図3】実施形態2の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
図4】実施形態2の粉粒体ダンパにおいて可動体の可動板が端部空間へ移動した状態をあらわす断面図
図5】実施形態3の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
図6】実施形態3の粉粒体ダンパにおいて可動体の可動板が端部空間へ移動した状態をあらわす断面図
図7】実施形態4の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
図8】実施形態4の粉粒体ダンパにおいて可動体の可動板が端部空間へ移動した状態をあらわす断面図
図9】実施形態5の粉粒体ダンパにおいて可動体が中立位置にある状態をあらわす断面図
図10】実施形態5の粉粒体ダンパにおいて可動体の可動板が端部空間へ移動した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1図2を参照して説明する。尚、以下の説明においては、前後方向と軸線方向を同義で用いる。図1,2における左方を前方、右方を後方と定義する。本実施形態1の粉粒体ダンパAは、ケース10と、可動体20と、粉粒体27と、を備えている。ケース10は、軸線を前後方向に向けた円筒形の周壁部11と、周壁部11の前後両端を閉塞する一対の端壁部12とを有する。ケース10の内部は、可動体20の一部と、粉粒体27とが収容される作動空間13である。端壁部12の中心部には、端壁部12をケース10と同軸状に貫通した形状のガイド孔14が形成されている。
【0015】
端壁部12のうち作動空間13に臨む面は、後述する可動体20の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面15として機能する。端壁面15は、可動体20の往復移動方向において抵抗部22と対向するように配置されている。可動体20の往復移動過程で往動と復動とが切り替わるときに、抵抗部22は、端壁面15に接近し、端壁面15から離隔する。
【0016】
作動空間13は、1つの定径空間16と、前後一対の端部空間17とによって構成されている。定径空間16は、一対の端部空間17の間に配置されている。周壁部11のうち定径空間16を構成する定径壁部18の内径は、定径空間16の前端から後端に亘って一定寸法である。一対の端部空間17は、作動空間13の前後両端部に配置され、端壁面15に臨んでいる。端部空間17は、周壁部11に形成した拡径部19によって確保された空間を含んでいる。拡径部19の内径は、作動空間13の軸線方向中央から端壁面15に向かって、次第に大きくなるようなテーパ状をなしている。拡径部19は、定径壁部18に対して滑らかに連なっている。ケース10を軸線と直角に切断したときの端部空間17の断面積は、定径空間16の断面積よりも大きい。
【0017】
可動体20は、ケース10を同軸状に貫通した円形断面のロッド21と、ロッド21と一体に移動する抵抗部22とを有する部材である。ロッド21は、前後両ガイド孔14に挿通されることによってガイドされ、ケース10と同軸の状態を保ちながらケース10に対して前後方向に相対移動することができる。ケース10の外部でロッド21に外力が作用すると、可動体20は、ケース10に対して軸線方向に往復移動する。
【0018】
抵抗部22は、外径がロッド21の外径よりも大きい円柱形をなし、粉粒体27に抗力を生じさせるための抗力発生部として機能する。抵抗部22の外径は、ロッド21の外径よりも大きく、周壁部11の内径よりも小さい。抵抗部22の外周面と周壁部11の内周面との間には、粉粒体27の流動空間25が確保されている。抵抗部22は、定径部23と、定径部23の前後両端に連なる一対のテーパ部24とから構成されている。定径部23は、定径部23の前端から後端まで外径寸法が一定の円柱形をなす。テーパ部24は、定径部23から端壁部12に向かって外径が次第に小さくなるような円錐台形をなす。
【0019】
粉粒体27は、粒径(ラジアン径)が0.001μm~10mmの粉状物又は粒状物である。粉粒体27の材料としては、シリカ系(炭化ケイ素)の無機物、鉄等の金属等が用いられる。粉粒体27は、作動空間13内のうちケース10の内面と可動体20の外面との間の空間に充填されている。粉粒体27の充填率は、粉粒体27の流動性を阻害せず、且つ所定の減衰力を確保するために、例えば40%~50%に設定されている。
【0020】
可動体20が前後方向へ往復移動すると、作動空間13内では、抵抗部22が、粉粒体27を押し動かしながらロッド21と一体となって往復移動し、抵抗部22の周囲では粉粒体27が流動する。粉粒体27の流動に伴って、粉粒体27とテーパ部24の外周面との間、粉粒体27と定径部23の外周面との間、粉粒体27とロッド21の外周面との間、粉粒体27と周壁部11の内周面との間、粉粒体27と端壁面15との間、粉粒体27同士の間で、転がり摩擦や滑り摩擦が生じる。この摩擦力は、可動体20の軸線方向への移動を抑制する抗力、即ち粉粒体ダンパAの減衰力としての機能を発揮する。
【0021】
抵抗部22は、端壁面15の近傍において折り返しながら往復移動する。折り返す直前では、粉粒体27が、抵抗部22と端壁面15との間で強く加圧されるため、端壁面15上で凝集することが懸念される。粉粒体27が凝集すると粉粒体27の流動性が低下するため、ピストンの往復経路における折返部では、減衰機能が低下する。この対策として、本実施形態1では、作動空間13のうち端壁面15に臨む端部空間17の断面積を、定径空間16よりも大きくした。端部空間17においては、抵抗部22の外周面と周壁部11(拡径部19)の内周面との径方向の間隔が、定径空間16における抵抗部22と周壁部11(定径壁部18)の内周面との間隔よりも大きい。端部空間17においては、抵抗部22と端壁面15との間で加圧された粉粒体27が、拡径部19の内周面に向かって径方向外方へ逃げるように流動し易い。よって、端壁面15における粉粒体27の凝集を防止することができる。
【0022】
本実施形態1の粉粒体ダンパAは、ケース10と、ケース10内の作動空間13に収容された粉粒体27と、粉粒体27に接触した状態で往復移動する可動体20と、を備えている。ケース10は、可動体20の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面15を有する。作動空間13のうち端壁面15に臨む端部空間17の断面積は、作動空間13における端部空間17以外の領域(定径空間16)の断面積よりも大きくなるように設定されている。作動空間13の断面積は、ケース10を可動体20の往復移動方向と直角に切断したときの面積である。
【0023】
作動空間13の端部空間17では、粉粒体27が可動体20の抵抗部22と端壁面15との間で挟まれるため、粉粒体27が端壁面15において凝集することが懸念される。この対策として、端部空間17の断面積を定径空間16の断面積よりも大きくした。これにより、抵抗部22によって端壁面15側へ押圧された粉粒体27は、抵抗部22の押圧方向(軸線方向)と交差する径方向へ逃げることができるので、粉粒体27が端壁面15で凝集する虞がなくなった。本実施形態1の粉粒体ダンパAによれば、粉粒体27の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【0024】
作動空間13のうち端部空間17以外の領域は、断面積が一定の定径空間16である。ケース10の内周面のうち端部空間17を構成する領域には、ケース10の内周面のうち端部空間17を構成しない領域(定径壁部18の内周面)に対して相対的に凹ませた拡径部19が形成されている。可動体20の抵抗部22が端部空間17以外の領域(定径空間16)を移動する過程では、減衰力が安定する。拡径部19における断面積は、端壁面15に接近するほど徐々に拡大するように設定されている。抵抗部22が端部空間17内を移動するときに、減衰力の変動が緩やかである。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図3図4を参照して説明する。本実施形態2の粉粒体ダンパBは、ケース30の内周面の形状、及び端部空間37の形状を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。可動体20及び粉粒体27については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0026】
ケース30は、周壁部31と端壁部32を有する。作動空間33のうち端壁面35に臨む端部空間37は、ケース30の前後両端部に設けられている。端部空間37は、周壁部31の内周面に拡径部39を形成することによって構成されている。拡径部39は、周壁部31の内周面を段差状に凹ませた形状である。端部空間37の断面積を大きくしたので、抵抗部22によって端壁面35側へ押圧された粉粒体27は、抵抗部22の押圧方向(軸線方向)と交差する径方向へ逃げることができる。これにより、粉粒体27が端壁面35で凝集する虞がなくなったので、粉粒体27の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【0027】
周壁部31の内周面のうち一対の拡径部39の間の領域には、複数の凹部36が軸線方向に並ぶように形成されている。凹部36は、拡径部39と同様、周壁部31の内周面を段差状に凹ませた形状である。作動空間33内において、抵抗部22の外周面と周壁部31の内周面との間の流動空間38の間隔は、抵抗部22の移動経路に沿って交互に増減する。凹部36が形成されている領域では、流動空間38の径方向の間隔が広く、粉粒体27が流動し易いので、減衰力が比較的弱い。凹部36が形成されていない領域では、流動空間38の径方向の間隔が狭く、粉粒体27が流動し難いので、減衰力が比較的強く働く。ケース30の内周面のうち端部空間37を構成しない領域に、可動体20の移動方向に並ぶ複数の凹部36を形成したので、可動体20が移動する過程で、減衰力を変動させることができる。
【0028】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図5図6を参照して説明する。本実施形態3の粉粒体ダンパCは、可動体50が回転軸51を中心として回転するものである。粉粒体ダンパCは、筒形をなすケース40と、可動体50と、ケース40内に収容された粉粒体27と、を有する。粉粒体27は、実施形態1と同じものである。
【0029】
ケース40は、周壁部41を有する。周壁部41の内部は、減衰力を生じさせる作動空間42として機能する。周壁部41の内周面は、全体として卵形をなし、曲率が一定の半円弧面43(図5,6における右半分の領域)と、曲率が周方向に沿って異なる非円弧面44(図5,6における右半分の領域)とから構成されている。非円弧面44の曲率は、半円弧面43に連なる両端部44Rにおいて最小であり、半円弧面43から最も遠い先端部44Pにおいて最大である。半円弧面43の中心43Pと非円弧面44との間の径方向の距離は、非円弧面44の両端部44Rで最小であり、非円弧面44の先端部44Pで最大である。
【0030】
周壁部41(作動空間42内)には、非円弧面44の先端部44Pから半円弧面43の中心43Pに向かって片持ち状に延出する抵抗板45が設けられている。抵抗板45は、板厚方向を周方向に向けて固定して配置されている。抵抗板45には、抵抗板45を周方向(板厚方向)に貫通する流動孔46が形成されている。抵抗板45のうち径方向に沿った2つの面は、後述する可動板52の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面47として機能する。
【0031】
可動体50は、回転軸51と可動板52とを有する単一部材である。回転軸51は、作動空間42内における半円弧面43の中心43Pと同軸状に配置されている。抵抗板45の突出端45Pと回転軸51との間には連通溝53が空いている。可動板52は、板厚方向を回転軸51の周方向に向けて、回転軸51から径方向外方へ片持ち状に突出している。可動体50は、回転軸51を中心として周方向へ移動可能である。可動体50の回転に伴い、可動板52が作動空間42内で周方向に移動する。可動体50は、図5に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ180°未満の範囲で往復回転することができる。可動体50が中立位置にあるとき、可動板52は、回転軸51を挟んで抵抗板45とは正反対の位置、即ち半円弧面43の周方向中央と対向する位置に配置される。中立位置では、抵抗板45と可動板52が一直線上に並ぶ。
【0032】
可動板52の回転軸51からの突出寸法は、ケース40の中心40Pから半円弧面43までの距離(半円弧面43の半径)よりも小さい寸法である。図5,6には、可動板52の突出端52Pの移動軌跡を想像線で示している。可動板52の突出端52Pと半円弧面43との間の径方向の対向間隔は、僅かである。ケース40の中心40Pから非円弧面44までの距離は、ケース40の中心40P(半円弧面43の中心43P)から半円弧面43までの距離よりも大きいので、可動板52の突出端52Pと非円弧面44との間の径方向の対向間隔は、比較的大きい。
【0033】
作動空間42内には、粉粒体27が充填されている。作動空間42は、抵抗板45と可動板52とによって2つの弧状空間55に仕切られている。作動空間42のうち端壁面47に臨む領域を、端部空間56と定義する。端部空間56は、周壁部41の内周面のうち非円弧面44の先端部44Pのみに臨む空間である。2つの弧状空間55は、流動孔46と、連通溝53と、可動板52の突出端52Pと周壁部41の内周面との隙間を介して連通している。可動板52が時計回り方向又は反時計回り方向へ回転する過程では、2つの弧状空間55の容積が可動板52の移動に伴って交互に増減する。2つの弧状空間55の容積が最小になった状態においても、弧状空間55は端部空間56を含む。
【0034】
回転軸51と非円弧面44との間の径方向の距離は、回転軸51と半円弧面43との間の径方向の距離よりも大きい。即ち、回転軸51の軸心(半円弧面43の中心43P)を含むようにケース40を切断したときの弧状空間55の断面積は、半円弧面43に臨む空間領域よりも、非円弧面44に臨む空間領域の方が大きい。非円弧面44に臨む空間領域の断面積は、両端部44Rから先端部44Pに向かって次第に大きくなる。弧状空間55の断面積は、端部空間56において最大である。
【0035】
2つの弧状空間55の容積が増減するのに伴い、粉粒体27は、主に、流動孔46と連通溝53を通って2つの弧状空間55内を行き来する。粉粒体27が流動孔46と連通溝53を通過するときに、流動抵抗が生じる。また、粉粒体27と可動板52との間、粉粒体27と抵抗板45との間、粉粒体27と周壁部41の内周面との間、粉粒体27同士の間に、摩擦抵抗が生じる。これらの流動抵抗と摩擦抵抗が、可動体50に対し減衰力として付与される。
【0036】
可動体50の往動と復動が切り替わるときに、可動板52は、端部空間56内において端壁面47に接近し、端壁面47から離隔することによって折り返す。折り返す直前では、粉粒体27が、可動板52と端壁面47との間で挟み込まれるため、抵抗板45(端壁面47)上で凝集することが懸念される。粉粒体27が凝集すると粉粒体27の流動性が低下するため、可動体50の往復経路における折返部(可動板52が端壁面47の近傍に位置する領域)では、減衰機能が損なわれる。この対策として、作動空間42の断面積を、端部空間56において最大となるように設定した。端部空間56においては、可動板52と端壁面47との間で加圧された粉粒体27が、非円弧面44の先端部44Pに向かって径方向外方へ逃げるように流動し易い。よって、端壁面47における粉粒体27の凝集を防止することができる。
【0037】
本実施形態3の粉粒体ダンパCは、ケース40と、ケース40内の作動空間42に収容された粉粒体27と、粉粒体27に接触した状態で往復移動する可動体50と、を備えている。ケース40は、可動板52の回転経路に沿うように設けられて作動空間42を構成する周壁部41を有する。ケース40は、可動体50の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面47を有する。端壁面47は、周壁部41から前記回転軸51に向かって延出するように配置されている。可動体50は、回転軸51から径方向へ可動板52を突出させた形状である。可動体50は、回転軸51を中心として回転可能である。
【0038】
作動空間42を構成する弧状空間55のうち端壁面47に臨む端部空間56の断面積は、弧状空間55における端部空間56以外の空間領域の断面積よりも大きくなるように設定されている。回転軸51から周壁部41までの距離は、端部空間56以外の空間領域よりも端部空間56の方が大きくなるように設定されている。可動板52によって端壁面47側へ押圧された粉粒体27は、可動板52の押圧方向と交差する径方向へ逃げることができる。可動板52によって端壁面47側へ押圧された粉粒体27は、可動板52の押圧方向と交差する径方向外方へ逃げることができる。これにより、粉粒体27が可動板52と端壁面47との間で押し潰されることを防止できるので、端壁面47上で粉粒体27が凝集する虞はない。よって、粉粒体27の凝集に起因する減衰機能の低下を防止することができる。
【0039】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を図7図8を参照して説明する。本実施形態4の粉粒体ダンパDは、可動体50が回転軸51を中心として回転するものである。粉粒体ダンパDは、筒形をなすケース60と、可動体50と、ケース60内に収容された粉粒体27と、を有する。可動体50と粉粒体27は、実施形態1と同じものである。実施形態4の作用及び効果は、実施形態3と同じである。
【0040】
ケース60は、周壁部61を有する。周壁部61の内部は、減衰力を生じさせる作動空間62として機能する。周壁部61の内周面は、円形をなす。ケース60(作動空間62内)には、周壁部61の内周面から作動空間62(ケース60)の中心62Pに向かって片持ち状に延出する抵抗板63が設けられている。抵抗板63は、板厚方向を周方向に向けて固定して配置されている。抵抗板63には、抵抗板63を周方向(板厚方向)に貫通する流動孔64が形成されている。抵抗板63のうち径方向に沿った2つの面は、後述する可動板52の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面65として機能する。
【0041】
可動体50の回転軸51は、作動空間62の中心62Pから、抵抗板63とは反対方向(図7,8における右方)へ偏心した位置に配置されている。抵抗板63の突出端と回転軸51との間には連通溝66が空いている。可動体50は、図7に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ180°未満の範囲で往復回転することができる。可動体50が中立位置にあるとき、可動板52は、回転軸51を挟んで抵抗板63とは正反対の位置に配置され、抵抗板63と可動板52とが一直線上に並ぶ。
【0042】
可動板52の回転軸51からの突出寸法は、作動空間62の中心62Pから周壁部61の内周面までの距離よりも小さい寸法である。図7,8には、可動板52の突出端52Pの移動軌跡を想像線で示している。可動体50が中立位置にあるときに、可動板52の突出端52Pと周壁部61の内周面の間の径方向の対向間隔は、最小である。可動体50の回転に伴って可動板52が端壁面65に接近するほど、可動板52の突出端52Pと周壁部61の内周面との間の径方向の対向間隔が、次第に大きくなっていく。
【0043】
作動空間62は、抵抗板63と可動板52とによって2つの弧状空間67に仕切られている。作動空間62のうち端壁面65に臨む領域を、端部空間68と定義する。端部空間68は、周壁部61の内周面のうち端壁面65の近傍領域のみに臨む空間である。2つの弧状空間67は、流動孔64と、連通溝66と、可動板52の突出端52Pと周壁部61の内周面との隙間を介して連通している。可動板52が往復回転するのに伴って、2つの弧状空間67の容積が交互に増減し、粉粒体27が流動孔64と連通溝66を通過することによって、流動抵抗が生じる。粉粒体27と可動板52との間、粉粒体27と抵抗板63との間、粉粒体27と周壁部61の内周面との間、粉粒体27同士の間に、摩擦抵抗が生じる。これらの流動抵抗と摩擦抵抗が、可動体50に対し減衰力として付与される。
【0044】
回転軸51の軸心51Pを含むようにケース60を切断したときの弧状空間67の断面積は、中立位置の可動板52に沿った空間領域の断面積が最小である。弧状空間67の断面積は、端壁面65に近づくほど、次第に大きくなり、端壁面65に沿った空間領域(端部空間68)の断面積が最大である。
【0045】
可動体50の往動と復動が切り替わるときに、粉粒体27が可動板52と端壁面65との間で挟み込まれる。弧状空間67の断面積は、端部空間68において最大となるように設定されているので、端部空間68においては、可動板52と端壁面65との間で加圧された粉粒体27が、周壁部61の内周面に向かって径方向外方へ逃げるように流動する。よって、端壁面65における粉粒体27の凝集を防止することができる。
【0046】
<実施形態5>
次に、本発明を具体化した実施形態5を図9図10を参照して説明する。本実施形態5の粉粒体ダンパEは、可動体80が回転軸81を中心として回転するものである。粉粒体ダンパEは、円筒形の支持部材70と、可撓性を有するケース74と、可動体80と、ケース74内に収容された粉粒体27と、を備えている。粉粒体27は、実施形態1と同じものである。
【0047】
支持部材70の中心には、可動体80を構成する回転軸81が、回転可能に支持されている。可動体80は、回転軸81から径方向外方へ延出した可動板82を有する。可動板82は、板厚方向が周方向(可動体80の移動方向)を向くように配置されている。支持部材70には、支持部材70の内周面から回転軸81に向かって径方向内側へ突出した板状の抵抗板71が設けられている。抵抗板71は、板厚方向が支持部材70の周方向を向くように配置されている。抵抗板71には、抵抗板71を周方向(板厚方向)に貫通する流動孔72が形成されている。
【0048】
可動体80は、図9に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ180°未満の範囲で往復回転する。可動体80が中立位置にあるときに、可動板82は、回転軸81を挟んで抵抗板71とは正反対に位置する。支持部材70の内部空間は、可動板82と抵抗板71とによって、互いに連通した2つの弧状空間73に区画されている。
【0049】
ケース74は、可動板82と、抵抗板71と、一対の蛇腹部75とから構成されている。一対の蛇腹部75は、軸線が円弧形をなすように湾曲させたものである。一対の蛇腹部75は、2つの弧状空間73内に個別に収容され、回転軸81と同軸状に配置されている。蛇腹部75の一方の端部は、可動板82に固着され、蛇腹部75の他方の端部は抵抗板71に固着されている。
【0050】
ケース74内は、抵抗板71によって2つの作動空間78に仕切られている。2つの作動空間78は、流動孔72を介して連通している。抵抗板71のうち作動空間78に臨む2つの面は、可動体80の往復移動経路の延長線上に位置する端壁面79として機能する。端壁面79は、可動体80の往復移動方向において可動板82と対向するように配置されている。可動体80の往復移動過程で往動と復動とが切り替わるときに、可動板82は、端壁面79に接近し、端壁面79から離隔する。
【0051】
1つの蛇腹部75は、1つの作動空間78を構成する。1つの蛇腹部75は、可動板82に固着された定径伸縮部76と、抵抗板71(端壁面79)に固着されたテーパ状伸縮部77とから構成されている。回転軸81の軸心を含むように切断したときの定径伸縮部76の断面積は、定径伸縮部76の周方向全長に亘って一定である。回転軸81の軸心を含むように切断したときのテーパ状伸縮部77の断面積は、定径伸縮部76側の端部から、抵抗板71に固着されている側の端部に向かって、次第に大きくなっている。作動空間78のうち、端壁面79に臨む空間領域を、端部空間83と定義する。作動空間78の断面積は、端部空間83において最大である。
【0052】
可動体80が中立位置にあるときに、2つの弧状空間73は対称な形状の半円弧状をなし、2つの作動空間78も対称な形状の半円弧状をなす。可動体80が中立位置から時計回り方向又は反時計回り方向へ回転すると、図10に示すように、一方の弧状空間73が容積を増大させた優弧空間84となり、他方の弧状空間73が容積を減少させた劣弧空間85となる。これに伴い、優弧空間84内では、蛇腹部75が円弧形を保ったまま伸張変形し、作動空間78の容積が増大する。劣弧空間85内では、蛇腹部75が円弧形を保ったまま収縮変形し、作動空間78の容積が減少する。
【0053】
ケース74内には、粉粒体27が充填されている。作動空間78の容積の増減に伴い、粉粒体27が流動孔72を通って2つの作動空間78内を行き来する。このときに、粉粒体27と蛇腹部75の内面との間、粉粒体27と可動板82との間、粉粒体27と抵抗板71との間、粉粒体27と流動孔72の内面との間、との間に摩擦抵抗が生じる。粉粒体27が流動孔72を通過するときに流動抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗と流動抵抗が、回転軸81に対する減衰力として機能する。
【0054】
可動体80の往動と復動が切り替わるときに、可動板82は、端壁面79に接近し、端壁面79から離隔することによって折り返す。折り返す直前では、粉粒体27が、可動板82と端壁面79との間で挟み込まれるため、抵抗板71(端壁面79)上で凝集することが懸念される。この対策として、作動空間78の断面積を、端壁面79に臨む端部空間83において最大となるように設定した。つまり、端壁面79のうち端部空間83に臨む面積が、広く確保されている。これにより、可動板82と端壁面79との間で加圧された粉粒体27が、端壁面79に沿って移動し易くなっているので、端壁面79における粉粒体27の凝集を防止することができる。
【0055】
可動体80は、回転軸81から径方向へ可動板82を突出させた形状であって、回転軸81を中心として回転可能である。端壁面79は、可動板82の回転経路の延長線上に配置されている。ケース74は、可動板82と端壁面79とを繋ぎ、可動板82の回転方向において伸縮可能な筒状の伸縮部材(蛇腹部75)を備えて構成されている。蛇腹部75のうち端部空間83を構成する部位(テーパ状伸縮部77における端壁面79側の端部)の断面積は、蛇腹部75のうち端部空間83を構成しない部位(定径伸縮部76)の断面積よりも大きくなるように設定されている。可動板82によって端壁面79側へ押圧された粉粒体27は、可動板82の押圧方向と交差する径方向外方へ逃げることができる。これにより、粉粒体27が可動板82と端壁面79との間で押し潰されることを防止し、ひいては、粉粒体27が凝集することを防止できる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
実施形態1において、拡径部のうち端壁面から遠い側の端部を、ケースの内周面のうち拡径部以外の領域に対して段差状に凹ませた形状にしてもよい。
実施形態2において、拡径部の断面積を、実施形態1のように端壁面に接近するほど徐々に大きくなるようにしてもよい。
実施形態3,4において、周壁部の内周面のうち拡径部を、拡径部以外の領域に対して段差状に凹ませた形状としてもよい。
実施形態1~4では、粉粒体の粒径(ラジアン径)を0.001μm~10mmとしたが、粒径(ラジアン径)が0.001μm~1mmの粉粒体を用いることによって、減衰機能をより効果的に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0057】
A,B,C,D,E…粉粒体ダンパ
10,30,40,60,74…ケース
11,31,41,61…周壁部
13,33,42,62,78…作動空間
15,35,47,65,79…端壁面
16…定径空間(作動空間における端部空間以外の領域)
17,37,56,68,83…端部空間
19,39…拡径部
20,50,80…可動体
27…粉粒体
36…凹部
51,81…回転軸
52,82…可動板
75…蛇腹部(伸縮部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10