(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149571
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/30 20060101AFI20231005BHJP
F16F 15/16 20060101ALI20231005BHJP
F16F 7/01 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16F9/30
F16F15/16
F16F7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058209
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊内 敦士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
【テーマコード(参考)】
3J066
3J069
【Fターム(参考)】
3J066BD03
3J066CB03
3J069AA39
(57)【要約】
【課題】流動体の漏出を防止する。
【解決手段】ダンパAは、可撓性を有するケース30と、ケース30内に充填された流動体としての粉粒体35、ケース30の外部に配置された回転軸21と、ケース30を構成し、回転軸21と一体に回転することによってケース30の容積を増減させる回転体22と、を備えている。ケース30の容積が増減すると、粉粒体35の流動に起因する流動抵抗等により、回転軸21に対して減衰力が作用する。回転体22は、ケース30を構成する部位を貫通した状態で相対移動するものではないから、ケース30と回転体22との間には、粉粒体35の漏出の虞がある隙間は存在しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するケースと、
前記ケース内に充填された流動体と、
前記ケースの外部に配置された回転軸と、
前記ケースを構成し、前記回転軸と一体に回転することによって前記ケースの容積を増減させる回転体と、を備えているダンパ。
【請求項2】
前記流動体は、粉粒体である請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記ケースが、蛇腹部を含む請求項1又は請求項2に記載のダンパ。
【請求項4】
2つの前記ケースが、連結部を介すことによって連通可能に繋がっており、
前記回転体が前記連結部に対して相対移動することによって、前記2つのケースの容積が増減する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダンパ。
【請求項5】
前記連結部は、前記2つのケースの間における流動体の流動経路へ進出する引掛部を有する請求項4に記載のダンパ。
【請求項6】
前記連結部は、前記2つのケース間を仕切る仕切壁と、前記仕切壁を貫通する流動孔とを有する請求項4又は請求項5に記載のダンパ。
【請求項7】
前記流動孔内に、抵抗体が設けられている請求項6に記載のダンパ。
【請求項8】
前記抵抗体は、前記流動孔に挿通された状態で、前記回転体と一体に回転することが可能であり、
前記流動孔内における前記抵抗体の断面積又は断面形状が、前記回転体の回転に伴って変化する請求項7に記載のダンパ。
【請求項9】
前記ケースに、前記流動体を充填するための充填口が設けられている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粒状体が充填されたケース内に、ロッドと一体に移動するピストンを収容したダンパ装置が開示されている。ロッドは、ケースを構成するキャップを貫通して、ケースの外部へ露出している。ケースの外部においてロッドに外力が作用すると、ケース内ではピストンが移動することによって粒状体が流動する。粒状体の流動によって、粒状体同士の間や、粒状体とピストンとの間に摩擦力が生じ、この粒状体の摩擦力によって、ロッドに対する減衰力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のダンパ装置は、ロッドがキャップを貫通した状態でケースの内外を移動するようになっているため、ケース内の粒状体が、キャップとロッドとの隙間からケース外へ漏出することが懸念される。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、流動体の漏出を防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパは、
可撓性を有するケースと、
前記ケース内に充填された流動体と、
前記ケースの外部に配置された回転軸と、
前記ケースを構成し、前記回転軸と一体に回転することによって前記ケースの容積を増減させる回転体と、を備えている。
【0007】
本発明のダンパは、前記流動体が、粉粒体であることが好ましい。粉粒体は微小な固体からなるので、粉粒体同士の間で大きな摩擦力が生じる。これにより、高い減衰機能を発揮させることができる。
【0008】
本発明のダンパは、前記ケースが、蛇腹部を含むことが好ましい。蛇腹部の変形によって、ケースの容積を増減させることができる。
【0009】
本発明のダンパは、2つの前記ケースが、連結部を介すことによって連通可能に繋がっており、前記回転体が前記連結部に対して相対移動することによって、前記2つのケースの容積が増減することが好ましい。回転体が回転すると、一方のケースの容積が減少し、他方のケースの容積が増大することによって、流動体(粉粒体)が流動する。粉粒体の流動抵抗によって、減衰力が生じる。
【0010】
本発明のダンパは、前記連結部が、前記2つのケースの間における流動体の流動経路へ進出する引掛部を有することが好ましい。粉粒体が引掛部に引っ掛かることによって、良好な流動抵抗が生じ、高い減衰機能が発揮される。
【0011】
本発明のダンパは、前記連結部が、前記2つのケース間を仕切る仕切壁と、前記仕切壁を貫通する流動孔とを有することが好ましい。粉粒体が流動孔を通過するときに生じる流動抵抗によって、減衰機能が発揮される。
【0012】
本発明のダンパは、前記流動孔内に、抵抗体が設けられているものであることが好ましい。流動孔内における流動抵抗を、抵抗体によって任意に設定又は変更することができる。
【0013】
本発明のダンパは、前記抵抗体が、前記流動孔に挿通された状態で、前記回転体と一体に回転することが可能であり、前記流動孔内における前記抵抗体の断面積又は断面形状が、前記回転体の回転に伴って変化することが好ましい。可動体の回転角度によって、減衰力が増減する。
【0014】
本発明のダンパは、前記ケースに、前記流動体を充填するための充填口が設けられていることが好ましい。作動空間へ流動体を補充したり、ケース内の流動体を交換したりする等のメンテナンスを行い易い。
【発明の効果】
【0015】
ケースの容積が増減すると、流動体の流動に起因する流動抵抗や、流動体の体積増減に起因する圧力が生じる。この流動抵抗や圧力により、回転軸に対して減衰力が作用する。回転体は、ケースを構成する部位を貫通した状態で相対移動するものではないから、ケースと回転体との間には、流動体の漏出の虞がある隙間は存在しない。よって、ケース内の流動体が漏出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1のダンパにおいて、回転体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図2】実施形態1のダンパにおいて、回転体が中立位置から反時計回り方向へ回転した状態をあらわす断面図
【
図3】実施形態1のダンパにおいて、回転体が中立位置から時計回り方向へ回転した状態をあらわす断面図
【
図4】実施形態1において、流動孔内に抵抗体が配置されている状態をあらわす部分拡大断面図
【
図5】実施形態1において、抵抗体の形状をあらわす斜視図
【
図6】実施形態2のダンパにおいて、回転体が中立位置にある状態をあらわす断面図
【
図7】実施形態2のダンパにおいて、回転体が中立位置から反時計回り方向へ回転した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
次に、本発明を具体化した実施形態1を
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態1のダンパAは、可動体20が回転軸21を中心として回転するものである。ダンパAは、支持部材10と、可動体20と、ケースユニット30と、ケース31内に収容された粉粒体35と、を有する。
【0018】
支持部材10は、円筒形をなしている。支持部材10の内周面には、連結部11が固定して設けられている。連結部11は、支持部材10の内周面から支持部材10の中心に向かって径方向内側へ突出した板状の部材である。連結部11は、板厚方向が支持部材10の周方向を向くように配置されている。連結部11には、連結部11を周方向(板厚方向)に貫通する円形断面の流動孔12が形成されている。流動孔12の内径は、流動孔12の軸線方向全長に亘って一定の寸法である。
【0019】
図4,5に示すように、流動孔12の内部には、抵抗体13が配置されている。抵抗体13は、全体として円柱形をなす部材である。抵抗体13の最大外径は、流動孔12の内径よりも小さい。抵抗体13は、流動孔12と同軸状に配置されている。抵抗体13の外周面は、定径面14と、急傾斜面15と、緩傾斜面16とから構成されている。定径面14の外径は、軸線方向全領域に亘って一定である。急傾斜面15と緩傾斜面16は、抵抗体13の軸線方向において定径面14を挟むように配置されている。急傾斜面15は、定径面14から遠ざかる方向に向かって径寸法が次第に小さくなるような円錐台形をなしている。緩傾斜面16も、定径面14から遠ざかる方向に向かって径寸法が次第に小さくなるような円錐台形をなしている。
図4に示すように、抵抗体13の軸線に対する急傾斜面15の鋭角側の傾斜角度αは、抵抗体13の軸線に対する緩傾斜面16の鋭角側の傾斜角度βよりも大きく設定されている。抵抗体13は、定径面14の外周面から径方向外方へ延出した複数の支持片17を介して、流動孔12の内周面に固定されている。
【0020】
可動体20は、回転軸21と、回転軸21の外周面から径方向外方へ突出した板状の回転体22とを有する単一部材である。可動体20は、支持部材10の内部に収容され、回転軸21が支持部材10の中心と同心となるように配置されている。回転体22は、板厚方向が周方向(可動体20の移動方向)を向くように配置されている。可動体20は、回転軸21を中心として、支持部材10に対して相対回転可能に支持されている。可動体20の回転範囲は、
図1に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ180°未満の領域である。可動体20が中立位置にある状態では、回転体22は、回転軸21を挟んで連結部11とは正反対の位置に配置され、連結部11と回転軸21と回転体22が一直線状に並ぶ。支持部材10の内部空間は、回転体22と連結部11とによって、2つの弧状空間18に区画されている。
【0021】
ケースユニット30は、互いに連通した2つのケース31を備えている。ケースユニット30は、構成部品として、連結部11と、回転体22と、一対の蛇腹部32とを備えている。一対の蛇腹部32は、軸線が円弧形をなすように湾曲させたものである。一対の蛇腹部32は、2つの弧状空間18内に個別に収容され、回転軸21と同軸状に配置されている。蛇腹部32の一方の端部は、回転体22に固着され、蛇腹部32の他方の端部は連結部11に固着されている。連結部11と、1つの蛇腹部32と、回転体22とによって、1つのケース31が構成されている。ケースユニット30は、支持部材10に固定した連結部11を介すことによって、2つのケース31を繋げた構成である。各ケース31の内部空間を、作動空間33と定義する。2つの作動空間33は、流動孔12の内周面と抵抗体13の外面との隙間(以下、流動空間34)を介して連通している。
【0022】
2つの作動空間33内及び流動空間34内には、流動体としての粉粒体35が収容されている。粉粒体35は、作動空間33及び流動空間34内に隙間が生じないように充填されている。粉粒体35は、粒径(ラジアン径)が0.001μm~10mmの粉状物又は粒状物である。粉粒体35の材料としては、シリカ系(炭化ケイ素)の無機物、鉄等の金属等が用いられる。
【0023】
可動体20(回転体22)が中立位置にあるときに、2つの作動空間33は同一容積の半円弧状をなす。可動体20が中立位置から時計回り方向又は反時計回り方向へ回転すると、
図2又は
図3に示すように、一方の弧状空間18が容積を増大させた優弧空間19Eとなり、他方の弧状空間18が容積を減少させた劣弧空間19Rとなる。これに伴い、優弧空間19E内では、蛇腹部32が円弧形を保ったまま伸張変形し、作動空間33の容積が増大する。劣弧空間19R内では、蛇腹部32が円弧形を保ったまま収縮変形し、作動空間33の容積が減少する。2つの作動空間33の容積が交互に増減すると、容積が減少する側の作動空間33内の粉粒体35が、流動空間34を通ることによって、容積が増大する側の作動空間33内へ流動する。
【0024】
連結部11のうち2つの作動空間33に臨む部位は、2つのケース31(作動空間33)の間を仕切る仕切壁36として機能する。流動孔12は、仕切壁36を周方向に貫通することによって、2つの作動空間33同士を連通させる連通路として機能する。仕切壁36のうち、流動孔12を除いた領域は引掛部37として機能する。引掛部37は、粉粒体35が2つの作動空間33の間を行き来するときの流動経路内へ進出するように配置され、粉粒体35の流動を妨げる機能を発揮する。
【0025】
2つの作動空間33の容積が交互に増減するのに伴い、粉粒体35が、各作動空間33の内部において流動するとともに、流動空間34を通過することによって2つの作動空間33の間を行き来する。このとき、粉粒体35と回転体22との間、粉粒体35と蛇腹部32の内面との間、粉粒体35と仕切壁36(連結部11)との間、粉粒体35と流動孔12の内周面との間、粉粒体35と抵抗体13の外面との間、粉粒体35同士の間で、摩擦抵抗が生じる。粉粒体35が流動孔12を通過するときに、流動抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗と流動抵抗とによって、可動体20の回転を抑制する減衰機能が発揮される。
【0026】
また、流動孔12内に配置された抵抗体13は、急傾斜面15と緩傾斜面16とを有する。回転軸21を中心とする周方向において、急傾斜面15は、
図1~3における時計回り方向へ面し、緩傾斜面16は、
図1~3における反時計回り方向へ面している。回転体22が、中立位置から
図2に示すように反時計回り方向へ回転する過程では、粉粒体35が、急傾斜面15に摺接しながら流動空間34内を移動する。粉粒体35の流動方向に対する急傾斜面15の傾斜角度αは、比較的大きいので、回転体22が反時計回り方向へ回転したときの減衰力は、比較的大きい。これに対し、回転体22が時計回り方向へ回転する過程では、粉粒体35が、緩傾斜面16に摺接しながら流動空間34内を移動する。粉粒体35の流動方向に対する緩傾斜面16の傾斜角度βは、急傾斜面15の傾斜角度αに比べて小さいので、回転体22が時計回り方向へ回転したときの減衰力は、反時計回り方向へ回転したときよりも小さい。
【0027】
本実施形態1のダンパAは、可撓性を有するケース31と、ケース31内に充填された流動体としての粉粒体35と、回転軸21と、回転体22とを有する。ケース31は、回転軸21を中心とする円弧に沿うように配置されており、回転軸21はケース31の外部に配置されている。回転体22は、ケース31を構成するものであり、回転軸21と一体に回転することによってケース31の容積を増減させる。ケース31は、蛇腹部32を含む。蛇腹部32の変形によって、ケース31の容積を増減させることができる。
【0028】
ケース31の容積が増減すると、流動体(粉粒体35)が流動空間34を流動することに起因する摩擦力によって、流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、回転軸21に対して減衰力が作用する。回転軸21に減衰力を付与する流動体は、粉粒体35である。粉粒体35は微小な固体からなるので、粉粒体35同士の間で大きな摩擦力が生じる。これにより、高い減衰機能を発揮させることができる。
【0029】
回転軸21はケース31の外部に配置されており、回転体22はケース31の外面を構成する部材である。即ち、回転軸21も回転体22も、ケース31を構成する部位を貫通した状態で相対移動するものではない。したがって、ケース31と回転軸21との間にも、ケース31と回転体22との間にも、ケース31内の粉粒体35(流動体)を漏出させる虞のある隙間は存在しない。回転体22は、蛇腹部32と固着することによってケース31を構成するものであるから、回転体22と蛇腹部32とを気密状又は液密状に密着させておくことができる。よって、ケース31内の流動体が漏出することを防止できる。
【0030】
2つのケース31は、連結部11を介すことによって連通可能に繋がっている。回転体22が連結部11に対して相対移動することによって、2つのケース31の容積が増減する。回転体22が回転すると、一方のケース31の容積が減少し、他方のケース31の容積が増大することによって、流動体(粉粒体35)が流動する。粉粒体35の流動抵抗によって、減衰力が生じる。
【0031】
連結部11は、2つのケース31の間における粉粒体35の流動経路へ進出する引掛部37を有する。粉粒体35が引掛部37に引っ掛かることによって、良好な流動抵抗が生じ、高い減衰機能が発揮される。連結部11は、2つのケース31間を仕切る仕切壁36と、仕切壁36を貫通する流動孔12とを有する。粉粒体35が流動孔12を通過するときに生じる流動抵抗によって、減衰機能が発揮される。流動孔12内には、抵抗体13が設けられている。流動孔12内における流動抵抗を、抵抗体13によって任意に設定又は変更することができる。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を
図6~
図7を参照して説明する。本実施形態2のダンパBは、可動体50が回転軸51を中心として回転するものである。ダンパBは、支持部材40と、可動体50と、ケースユニット60と、ケース61内に収容された粉粒体35と、を有する。粉粒体35は、実施形態1と同じものである。
【0033】
支持部材40は、円筒形をなしている。支持部材40の内周面には、連結部41が固定して設けられている。連結部41は、支持部材40の内周面から支持部材40の中心に向かって径方向内側へ突出した板状の部材である。連結部41は、板厚方向が支持部材40の周方向を向くように配置されている。連結部41には、連結部41を周方向(板厚方向)に貫通する円形断面の流動孔42が形成されている。流動孔42の内径は、流動孔42の軸線方向全長に亘って一定の寸法である。
【0034】
可動体50は、回転軸51と、板状をなす2つの回転体52とを有する単一部材である。2つの回転体52は、回転軸51の外周面から互いに異なる径方向外方へ突出している。2つの回転体52は、周方向において所定の角度(例えば、120°程度)を空けた位置関係で配置されている。回転体52は、板厚方向が周方向(可動体50の移動方向)を向くように配置されている。
【0035】
可動体50は、支持部材40の内部に収容され、回転軸51が支持部材40の中心と同心となるように配置されている。可動体50は、回転軸51を中心として、支持部材40に対して相対回転可能に支持されている。可動体50の回転範囲は、
図6に示す中立位置から、時計回り方向、及び反時計回り方向へ一定角度の範囲である。可動体50の回転が許容される角度は、2つの回転体52によって作業空間44が構成される角度が小さいほど、大きくなる。可動体50が中立位置にある状態では、2つの回転体52が、回転軸51を挟んで連結部41とは反対側の半円領域内に配置され、連結部41と回転軸51を通る仮想線Sに関して対称となるように位置する。支持部材40の内部空間は、連結部41と、2つの回転体52とによって、2つの弧状空間43と1つの作業空間44とに区画されている。弧状空間43は、連結部41と回転体52との間の空間であり、作業空間44は、2つの回転体52の間の空間である。
【0036】
ケースユニット60は、互いに連通した2つのケース61を備えている。ケースユニット60は、構成部品として、連結部41と、回転体52と、一対の蛇腹部62と、1つの抵抗体63とを備えている。一対の蛇腹部62は、軸線が円弧形をなすように湾曲させたものである。一対の蛇腹部62は、2つの弧状空間43内に個別に収容され、回転軸51と同軸状に配置されている。蛇腹部62の一方の端部は、一方の回転体52に固着され、蛇腹部62の他方の端部は連結部41に固着されている。連結部41と、1つの蛇腹部62と、回転体52とによって、1つのケース61が構成されている。ケースユニット60は、支持部材40に固定した連結部41を介すことによって、2つのケース61を繋げた構成である。各ケース61の内部空間を、作動空間64と定義する。2つの作動空間64は、流動孔42の内周面と後述する抵抗体63の外面との隙間(以下、流動空間65)を介して連通している。2つの作動空間64内及び流動空間65内には、流動体としての粉粒体35が収容されている。
【0037】
抵抗体63は、回転軸51と同軸状の円弧形をなす細長い部材である。抵抗体63は、流動孔42に挿通された状態で、2つの作動空間64内に収容されている。抵抗体63の周方向両端部は、2つの回転体52に固着されている。抵抗体63は、流動孔42に挿通された状態を保ったままで、回転体52(可動体50)と一体に回転移動する。抵抗体63は、一対の大径部66と、一対のテーパ部67と、1つの小径部68と、を有する。一対の大径部66は、抵抗体63の両端部を構成する部位である。大径部66の基端部は回転体52に固着されている。一対のテーパ部67は、大径部66の先端部に連なり、大径部66から遠ざかるほど外径寸法が小さくなる形状である。小径部68は、一対のテーパ部67を繋ぐように配置されている。大径部66の外径は、流動孔42の内径よりも小さい。小径部68の外径は大径部66の外径よりも小さい。
【0038】
可動体50(回転体52)が中立位置にあるときに、2つの作動空間64は同一容積の半円弧状をなす。可動体50が中立位置から時計回り方向又は反時計回り方向へ回転すると、
図7に示すように、一方の弧状空間43が容積を増大させた優弧空間45Eとなり、他方の弧状空間43が容積を減少させた劣弧空間45Rとなる。これに伴い、優弧空間45E内では、蛇腹部62が円弧形を保ったまま伸張変形し、作動空間64の容積が増大する。劣弧空間45R内では、蛇腹部62が円弧形を保ったまま収縮変形し、作動空間64の容積が減少する。2つの作動空間64の容積が交互に増減すると、容積が減少する側の作動空間64内の粉粒体35が、流動空間65を通ることによって、容積が増大する側の作動空間64内へ流動する。
【0039】
連結部41のうち2つの作動空間64に臨む部位は、2つのケース61(作動空間64)の間を仕切る仕切壁46として機能する。流動孔42は、仕切壁46を周方向に貫通することによって、2つの作動空間64同士を連通させる連通路として機能する。仕切壁46のうち、流動孔42を除いた領域は引掛部47として機能する。引掛部47は、粉粒体35が2つの作動空間64の間を行き来するときの流動経路内へ進出するように配置され、粉粒体35の流動を妨げる機能を発揮する。
【0040】
2つの作動空間64の容積が交互に増減するのに伴い、粉粒体35が、各作動空間64の内部において流動するとともに、流動空間65を通過することによって2つの作動空間64の間を行き来する。このとき、粉粒体35と回転体52との間、粉粒体35と蛇腹部62の内面との間、粉粒体35と仕切壁46(連結部41)との間、粉粒体35と流動孔42の内周面との間、粉粒体35と抵抗体63の外面との間、粉粒体35同士の間で、摩擦抵抗が生じる。粉粒体35が流動空間65を通過するときに、流動抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗と流動抵抗とによって、可動体50の回転を抑制する減衰機能が発揮される。
【0041】
本実施形態2のダンパBは、可撓性を有するケース61と、ケース61内に充填された流動体としての粉粒体35と、回転軸51と、回転体52とを有する。ケース61は、回転軸51を中心とする円弧に沿うように配置されており、回転軸51はケース61の外部に配置されている。回転体52は、ケース61を構成するものであり、回転軸51と一体に回転することによってケース61の容積を増減させる。ケース61は、蛇腹部62を含む。蛇腹部62の変形によって、ケース61の容積を増減させることができる。
【0042】
ケース61の容積が増減すると、流動体(粉粒体35)が流動空間34を流動することに起因する摩擦力によって、流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、回転軸51に対して減衰力が作用する。回転軸51に減衰力を付与する流動体は、粉粒体35である。粉粒体35は微小な固体からなるので、粉粒体35同士の間で大きな摩擦力が生じる。これにより、高い減衰機能を発揮させることができる。
【0043】
回転軸51はケース61の外部に配置されており、回転体52はケース61の外面を構成する部材である。即ち、回転軸51も回転体52も、ケース61を構成する部位を貫通した状態で相対移動するものではない。したがって、ケース61と回転軸51との間にも、ケース61と回転体52との間にも、ケース61内の粉粒体35(流動体)を漏出させる虞のある隙間は存在しない。回転体52は、蛇腹部62と固着することによってケース61を構成するものであるから、回転体52と蛇腹部62とを気密状又は液密状に密着させておくことができる。よって、ケース61内の流動体が漏出することを防止できる。
【0044】
2つのケース61は、連結部41を介すことによって連通可能に繋がっている。回転体52が連結部41に対して相対移動することによって、2つのケース61の容積が増減する。回転体52が回転すると、一方のケース61の容積が減少し、他方のケース61の容積が増大することによって、流動体(粉粒体35)が流動する。粉粒体35の流動抵抗によって、減衰力が生じる。
【0045】
連結部41は、2つのケース61の間における粉粒体35の流動経路へ進出する引掛部47を有する。粉粒体35が引掛部47に引っ掛かることによって、良好な流動抵抗が生じ、高い減衰機能が発揮される。連結部41は、2つのケース61間を仕切る仕切壁46と、仕切壁46を貫通する流動孔42とを有する。粉粒体35が流動孔42を通過するときに生じる流動抵抗によって、減衰機能が発揮される。
【0046】
流動孔42内には、抵抗体63が設けられている。抵抗体63は、流動孔42に挿通された状態で、回転体52と一体に回転することが可能である。流動孔42内における抵抗体63の断面積は、回転体52の回転に伴って変化する。可動体50が中立位置にあるとき、及び中立位置から反時計回り方向又は反時計回り方向へ一定角度だけ回転した範囲内にあるときに、流動孔42内には小径部68が配置される。小径部68が流動孔42内に配置される状態では、流動空間65の容積が比較的大きいので、減衰力は比較的小さい。
【0047】
この状態から、回転体52が一定角度だけ回転する過程では、流動孔42内にテーパ部67が配置される。テーパ部67が流動孔42内を移動するのに伴い、流動空間65の容積が次第に小さくなるので、減衰力が次第に強くなる。可動体50の回転が更に進むと、流動孔42内に大径部66が配置される状態となるので、大きい減衰力が発揮される。このように、支持部材40に対する可動体50の回転角度によって、減衰力が増減する。
【0048】
ケース61を構成する2つの回転体52には、流動体を充填するための充填口70が設けられている。充填口70は、作業空間44と作動空間64とを連通させるようになっており、閉塞部材71によって開閉することが可能である。ケース61に充填口70を設けたので、作業空間44から作動空間64へ粉粒体35(流動体)を補充したり、ケース61内の粉粒体35を交換したりする等のメンテナンスを行い易い。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
実施形態1,2において、流動体は、粉粒体よりも粒径の大きい粒状体(例えば、ラジアン径が1mmよりも大きい粒状の固体)、粘性を有する液体、気体、シリコンオイル等の圧縮性を有する液体等でもよい。
実施形態1,2において、ケースは、蛇腹部以外の部位によって、容積を増減させるものでもよい。
実施形態1,2において、ケースを1つだけとしてもよい。この場合、1つのケース内に圧縮性の流体を充填し、1つのケースの容積の増減によって減衰力を生じさせるようにしてもよい。
実施形態1,2において、連結部は、2つのケース間を仕切る仕切壁を有せず、流動体の流動経路内へ片持ち状に突出した引掛部のみを有するものでもよい。
実施形態1,2では、支持部材に固定した連結部を介すことによって、2つのケースを繋げた構成として説明しているが、実施形態1,2のダンパは、1つのケースの周方向中間部(連結部)を、支持部材に固定した構成と捉えることができる。
実施形態1,2では、粉粒体の粒径(ラジアン径)を0.001μm~10mmとしたが、粒径(ラジアン径)が0.001μm~1mmの粉粒体を用いることによって、減衰機能をより効果的に発揮させることができる。
実施形態1,2において、流動孔は、流動孔の軸線に沿って内径が変化するような形状でもよい。
【0050】
実施形態1において、流動孔内に抵抗体を配置しない形態としてもよい。
実施形態1において、回転体又は連結部に、流動体の充填口を設けてもよい。
実施形態1における抵抗体の形状は、任意に変更することができる。例えば、急傾斜面や緩傾斜面の形状を円錐台形から球面等に変更したり、抵抗体に粉粒体を流動させる小孔を形成したりしてもよい。
【0051】
実施形態2において、前記回転体の回転に伴って、流動孔内における抵抗体の断面形状が変化するようにしてもよい。
実施形態2において、充填口を連結部に設けてもよい。
実施形態2において、抵抗体は、小径部とテーパ部だけで構成したものでもよく、大径部とテーパ部だけで構成したものでもよく、大径部と小径部だけで構成して両者が段差状に連なるものでもよい。
実施形態2の抵抗体は、対称な形状に限らず、非対称な形状でもよい。
【符号の説明】
【0052】
A,B…ダンパ
11,41…連結部
12,42…流動孔
13,63…抵抗体
21,51…回転軸
22,52…回転体
31,61…ケース
32,62…蛇腹部
35…粉粒体(流動体)
36,46…仕切壁
37,47…引掛部
70…充填口