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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149573
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】既設渠の更生構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/02 20060101AFI20231005BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20231005BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02B5/02 Q
E03F7/00
E03F3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058213
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】平松 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA01
2D063BA06
2D063BA19
2D063BA37
2D063EA06
(57)【要約】
【課題】経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設渠の更生構造を提供すること。
【解決手段】既設渠1であるボックスカルバートの内側に設けられる更生管2と、更生管2と既設渠1との間に配置される環状の補強部材3と、更生管2と既設渠1との間に充填、固化される充填材4とを備えてなる既設渠の更生構造であって、当該更生構造のみで既設渠1の周囲からかかる荷重を支持する強度を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設渠の内側に設けられる更生管と、前記更生管と前記既設渠との間に配置される環状の補強部材と、前記更生管と前記既設渠との間に充填、固化される充填材とを備えてなる既設渠の更生構造であって、
当該更生構造のみで前記既設渠の周囲からかかる荷重を支持する強度を備えてなることを特徴とする既設渠の更生構造。
【請求項2】
前記更生管が、合成樹脂製の表層材を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の既設渠の更生構造。
【請求項3】
前記環状の補強部材に、連結部材を配設し、前記連結部材に更生管を配設するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の既設渠の更生構造。
【請求項4】
前記環状の補強部材が、異形鉄筋からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の既設渠の更生構造。
【請求項5】
前記既設渠の内底部側に、前記既設渠の軸方向に延びるレール部材を設置し、前記レール部材上に環状の補強部材を配置してなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の既設渠の更生構造。
【請求項6】
前記環状の補強部材が、外周側補強部材と内周側補強部材とを備えてなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の既設渠の更生構造。
【請求項7】
前記外周側補強部材の中心位置が前記既設渠の内面から23mm以上で、かつ、充填材の厚さの1/2以下の外周側の位置に、前記内周側補強部材の中心位置が前記更生管の背面から21mm以上で、かつ、充填材の厚さの1/2以下の内周側の位置に、それぞれ配置されてなることを特徴とする請求項6に記載の既設渠の更生構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設渠の内側に設けられる更生管と、該更生管と前記既設渠との間に配置される環状の補強部材と、更生管と前記既設渠との間に充填、固化される充填材とを備えてなる既設渠の更生構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、市街地において古くから石積やコンクリート等により構築された渠(水路)が使用されている。
これらの渠は、当初開渠だったものを、都市開発等により渠の上部を覆って暗渠にし、道路等として使用されているものがある。
しかし、石積やコンクリートの崩れや亀裂等による劣化が進み、渠としての機能や強度が担保されない状況となっている。
【0003】
これに対する方策として、既設暗渠を更新する方法と更生する方法がある。
既設暗渠を更新する方法は、既設暗渠を一旦取り除く必要があり、膨大な労力及びコストがかかるとともに、大規模な通行止め等により市民生活にも影響を及ぼすという欠点がある。
このため、上記の問題点がない、既設暗渠を暗渠の状態で更生する方法が要請されていた。
【0004】
ところで、既設渠を更生する方法として、従来、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂製の更生管を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1及び2に開示された方法によれば、既設暗渠を更生するという目的を一応は達成できるものの、更生管自体によって既設渠の強度の大きな向上を期待できないことから、例えば、地表面を道路等として使用している、強度が低下し、周囲からかかる荷重を支持する強度が担保されない状況となっている既設暗渠をこれらの方法で更生したとしても、その強度を担保することは困難であった。
【0005】
また、既設管渠を更生する場合、既設管渠と更生部とが一体化した更生構造として強度設計を行うのが一般的であるが、石積やコンクリートの崩れや亀裂等による劣化が進んだ既設暗渠の場合、既設暗渠自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難であった。
このことは、経年劣化により腐食が進んだコンクリート管や鋼管等からなる既設管渠においても同様であり、このような既設管渠の場合も、既設管渠自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-294679号公報
【特許文献2】特開2012-219985号公報
【特許文献3】特許第5746443号公報
【特許文献4】特開2017-198305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の既設暗渠や既設管渠の有する問題点に鑑み、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設暗渠や既設管渠(本明細書
において、既設暗渠及び既設管渠を包括して「既設渠」という。)の更生構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の既設渠の更生構造は、既設渠の内側に設けられる更生管と、前記更生管と前記既設渠との間に配置される環状の補強部材と、前記更生管と前記既設渠との間に充填、固化される充填材とを備えてなる既設渠の更生構造であって、
当該更生構造のみで前記既設渠の周囲からかかる荷重を支持する強度を備えてなることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記更生管が、合成樹脂製の表層材を備えてなるようにすることができる。
【0010】
また、前記環状の補強部材に、連結部材を配設し、前記連結部材に更生管を配設するようにすることができる。
【0011】
また、前記環状の補強部材が、異形鉄筋からなるようにすることができる。
【0012】
また、前記既設渠の内底部側に、前記既設渠の軸方向に延びるレール部材を設置し、該レール部材上に前記環状の補強部材を配置してなるようにすることができる。
【0013】
また、前記環状の補強部材が、外周側補強部材と内周側補強部材とを備えてなるようにすることができる。
【0014】
また、前記外周側補強部材の中心位置が前記既設渠の内面から23mm以上で、かつ、充填材の厚さの1/2以下の外周側の位置に、前記内周側補強部材の中心位置が前記更生管の背面から21mm以上で、かつ、充填材の厚さの1/2以下の内周側の位置に、それぞれ配置されてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の既設渠の更生構造によれば、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設渠を、周囲からかかる荷重を支持する強度が担保された状態に更生することができ、換言すれば、既設渠自体が有する強度を勘案することなく、周囲からかかる荷重を支持できる強度が担保された状態に更生することができ、例えば、地表面を道路等として安全に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の既設渠の更生構造の第1実施例を示し、(a)は横断面図、(b)は更生管の表層拡大断面図である。
図2】同既設渠の更生構造の補強部材の縦断面図である。
図3】既設管渠と更生部とが一体化した更生構造の場合(一般の既設渠の更生構造)の限界状態設計法を用いた強度設計の説明図である。
図4】更生部単体で構成される更生構造の場合(本発明の既設渠の更生構造)の限界状態設計法を用いた強度設計の説明図である。
図5】本発明の既設渠の更生構造の第1実施例の第1変形例を示す横断面図である。
図6】本発明の既設渠の更生構造の第1実施例の第2変形例を示す横断面図である。
図7】同既設渠の更生構造のレール部材を示し、(a)は平面図、(b)は部分拡大正面図、(c)は部分拡大側面図である。
図8】同既設渠の更生構造の第2実施例を示す横断面図である。
図9】従来の既設管渠の更生構造の例を示し、(a)は円形断面の既設管渠の更生構造を示す説明図、(b)は矩形断面の既設管渠の更生構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の既設渠の更生構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1図2に、本発明の既設渠の更生構造の第1実施例を示す。
この既設渠の更生構造は、既設渠1の内側に設けられる更生管2と、更生管2と既設渠1との間に配置される環状の補強部材3と、更生管2と既設渠との間に充填、固化される充填材4とを備えてなる既設渠の更生構造であって、当該更生構造のみで既設渠の周囲からかかる荷重を支持する強度を備えてなるようにしている。
ここで、既設渠1に対して、更生管2、補強部材3及び充填材4からなる部分を、更生部Rという。
【0019】
ところで、本実施例が更生の対象としている既設渠1は、断面が矩形のボックスカルバートであるが、これに限定されるものではなく、断面が円形の鉄筋コンクリート管(ヒューム管)のほか、石積で構成された壁部を備えた既設渠等も更生の対象にしている。
【0020】
更生管2には、老朽化した下水道管等の既設管を更生するために用いられている公知の更生管を広く用いることができるが、本実施例においては、図9に記載した更生管(FFT工法協会「ストリング工法」(登録商標))(特許文献3及び4参照。)を用いるようにしている。
【0021】
更生管2は、高密度ポリエチレン等の合成樹脂製の帯状の内面材21と、隣接する内面材21同士を連結し、その隙間を覆う高密度ポリエチレン・熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製のファスナー22とを備えるようにしている。
【0022】
更生管2の内面材21は、既設渠1の内面に沿って配置される環状の補強部材3に配設した連結部材23と、この連結部材23と、間隔を規定するスペーサーを介して、更生管2の管軸方向に隣接する環状の補強部材3に配設した連結部材23に架設されるようにしている。
【0023】
環状の補強部材3は、更生管2の管軸方向に間隔をあけて設置した異形鉄筋からなる環状の外周側補強部材31と、その内側に間隔をあけて設置した異形鉄筋からなる環状の内周側補強部材32と、外周側補強部材31及び内周側補強部材32の位置決め筋33とを備えるようにしている。
また、管軸方向に隣接する環状の外周側補強部材31同士及び内周側補強部材32同士にそれぞれ架け渡すように軸筋34を配置するようにしている。
【0024】
充填材4には、高流動・高強度モルタルを好適に用いることができる。
【0025】
外周側補強部材31、内周側補強部材32、位置決め筋33及び軸筋34のサイズ(径)や配置及び充填材4の打設厚さ等は、更生構造のみで既設渠の周囲からかかる荷重を支持する強度を備えるように構造設計を行うことで、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設渠1を、周囲からかかる荷重を支持する強度が担保された状態に更生することができるようにする。
具体的には、外周側補強部材31及び内周側補強部材32には、D13(JIS G 3112の呼び名。以下、同様。)(D6~D22)の異形鉄筋を使用するようにする。
そして、充填材4によるかぶり厚さを考慮して、使用する異形鉄筋のサイズ(径)に合
わせて、外周側補強部材31の中心位置は、好ましくは、既設渠1の内面から36.5mm(D13の場合)(33mm(D6の場合)~41mm(D22の場合))以上で、かつ、充填材4の厚さの1/2以下の外周側の位置に配置されるようにする。
ここで、充填材4によるかぶり厚さを規定する外周側補強部材31の中心位置の値は、少なくとも、23mm程度を確保すれば、上記の値よりも小さく設定することができる。
一方、充填材4に加え、厚さ数mmの合成樹脂製の帯状の内面材21で覆われる内周側補強部材32の中心位置は、更生管2の背面(打設される充填材4が接する面)から24.5mm(D13の場合)(21mm(D6の場合)~26mm(D22の場合))以上で、かつ、充填材4の厚さの1/2以下の内周側の位置に配置されるようにする。
これにより、十分なかぶり厚さを確保し、耐久性を高めることができる。
【0026】
外周側補強部材31、内周側補強部材32、位置決め筋33及び軸筋34は、強度設計に基づいて配筋するようにする。
具体的には、外周側補強部材31及び内周側補強部材32の配筋のピッチPは、例えば、表1に示すように設定することができる。
ここで、外周側補強部材31と内周側補強部材32の配筋のピッチPは、同一又は一方を他方の整数倍とし、外周側補強部材31と内周側補強部材32とを重なり合うように配筋するようにする。
【0027】
【表1】
【0028】
ところで、既設渠を更生する場合、図3に示すように、既設渠1と更生部Rとが一体化した更生構造と看做して、強度設計を行うのが一般的である。
この場合、既設渠1の周囲からかかる荷重によって生じる外側引張破壊に対しては、既設渠1の既設鉄筋1Rが耐力を確保するように、また、同内側引張破壊に対しては、更生部Rの内周側補強部材32が耐力を確保するように、限界状態設計法を用いた構造設計法による強度設計を行うようにする。
【0029】
一方、本実施例では、同様に既設渠1を更生する場合でも、図4に示すように、更生部Rのみで既設渠1の周囲からかかる荷重を支持する強度を備えるようにするために、既設渠1の既設鉄筋1Rの有無にかかわらず、既設渠1の周囲からかかる荷重によって生じる外側引張破壊に対しては、更生部Rの外周側補強部材31が耐力を確保するように、また、同内側引張破壊に対しては、更生部Rの内周側補強部材32が耐力を確保するように、限界状態設計法を用いた構造設計法による強度設計を行うようにする。
【0030】
これにより、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設渠1を、周囲からかかる荷重を支持する強度が担保された状態に更生することができ、換言すれば、既設渠1自体が有する強度を勘案することなく、周囲からかかる荷重を支持できる強度が担保された状態に更生することができ、例えば、地表面を道路等として安全に使用することが可能となる。
【0031】
ここで、図5に示す本発明の既設渠の更生構造の第1実施例の第1変形例及び図6に示
す第2変形例のように、環状の補強部材3である外周側補強部材31及び内周側補強部材32を所定位置に設置するために、図7に示すレール部材51、52を用いることができる。
図5に示す第1実施例の第1変形例においては、既設渠1の内底部側の外周側補強部材31と内周側補強部材32との間に位置するようにレール部材52を、図6に示す第1実施例の第2変形例においては、レール部材52に加え、既設渠1の内底部と外周側補強部材31との間に位置するようにレール部材51を、既設渠1の軸方向に設置し、レール部材51上に外周側補強部材31を、レール部材52上に内周側補強部材32を配置するようにしている。
レール部材51、52は、図7に示すように、複数本(実施例では、各3本)の形鋼(実施例では、溝形鋼を用いるようにしているが、I形鋼等を用いることもできる。)を、これと直交する方向に配設した固定部材53で井桁状に連結するようにしている。
レール部材51、52に溝形鋼を用いる場合、下フランジの幅寸法を上フランジの幅寸法をよりも大きいもの(例えば、上フランジの幅寸法:30mm、下フランジの幅寸法:50mm)を用いるようにする。そして、上フランジの位置で、既設渠1の軸方向に隣接するレール部材51、52と、接続部材54を介して、ねじ部材55を用いて接続するようにし、下フランジに、既設渠1の内底部の不陸を吸収するためのねじ部材56を、操作しやすい位置に配設するようにする。
レール部材51、52の高さ寸法(ウェブ寸法)は、レール部材51の場合は、既設渠1の内底部と外周側補強部材31との設計間隔、レール部材52の場合は、外周側補強部材31と内周側補強部材32との設計間隔に合わせて設定(実施例では、ウェブ寸法:60~110mm)するようにする。
このレール部材51、52を用いることにより、既設渠1の内底部の不陸を吸収しながら、外周側補強部材31及び内周側補強部材32を正確かつ確実に支持して、所定位置に設置することができる。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、上記第1実施例の既設渠の更生構造と同様である。
【0032】
また、図8に示す本発明の既設渠の更生構造の第2実施例は、石積で構成された側壁部11を備えた既設渠1を更生の対象としたものである。
具体的には、既設渠1は、側壁部11を石積で、底部12をコンクリートで、天面部13をPC桁で支持されたコンクリート床板で、それぞれ構成されている。
本実施例は、石積で構成された側壁部11を通して周囲の地盤から水が浸入する箇所が存在する既設渠1を更生するためのもので、内部に水路を形成する更生管2と、更生管2と既設渠1との間に配置される環状の補強部材3と、更生管2と既設渠1との間に充填、硬化されてなる充填材4と、充填材4と既設渠1の側壁部11との境界に設けた面状部材6と、充填材4(面状部材6を設ける場合は、面状部材6。)と既設渠1との境界に、更生管2の管軸方向に設けた、既設渠1の側壁部11を通して周囲の地盤から浸入した水が導入される導水管7とを備えるようにしている。
【0033】
面状部材6は、本実施例においては、石積で構成された既設渠1の側壁部11を通して周囲の地盤から浸入した水を、導水管7に案内、導入されるようにするとともに、流動性を有する打設した充填材4が既設渠1側に漏洩することを防止するために、充填材4と既設渠1の側壁部11との境界のみに設けるようにしているが、既設渠1の構造によっては、底部12や天面部13にも設けるようにすることができる。
【0034】
面状部材6には、上記目的を達成できる機能を有する、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の遮水シート(例えば、タキロンシーアイ社製「ビノン」(登録商標))のほか、エンボス型排水・保護マット(例えば、タキロンシーアイシビル社製「ジオフロー」(登録商標))、面状排水材(例えば、タキロンシーアイシビル社製「グリシート」
(商品名))等の遮水性と導水性を備えた面状部材を用いることができる。
【0035】
導水管7は、既設渠1の側壁部11を通して周囲の地盤から浸入した水が導入され、導入された水を、外部に排水、例えば、適宜箇所で更生管2の内部に形成された水路に導入させるようにするためのもので、石積で構成された既設渠1の側壁部11の最下部位置(又は複数設ける場合は、既設渠1の側壁部11の最下部位置及び上部位置や中間位置)で、充填材4(面状部材6を設ける場合は、面状部材6。)と既設渠1との境界の、更生管2及び充填材4の強度に影響を及ぼさない箇所に敷設する。
【0036】
導水管7には、上記目的を達成できる機能を有する、ポリエチレン等の合成樹脂製の有孔管やメッシュ管(例えば、タキロンシーアイシビル社製の集排水外圧管「スーパー管W型」(商品名)、同暗渠排水パイプ「ダブルドレン」(商品名))等を用いることができる。
【0037】
この既設渠の更生構造によれば、充填材4(面状部材6を設ける場合は、面状部材6。)と既設渠1との境界に、更生管2の管軸方向に設けた、既設渠1の側壁部11を通して周囲の地盤から浸入した水が導入される導水管7を備えることにより、石積やコンクリート等で構成された壁部を通して周囲の地盤から水が浸入する箇所が存在する既設渠1の更生管2の周囲に浸入した水を、導水管7を介して排出することで、更生管2の周囲に浸入した水が滞留することがなく、更生管2に浮力がかかって浮き上がったり、周囲の地盤が流出して陥没事故を起こしたりすることを防止することができる。
そして、この既設渠の更生構造は、既設渠1を掘削せずに施工することができることから、コストの軽減及び工期の短縮化を図るとともに、周囲への影響を最小限に抑えることができる。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、上記第1実施例の既設渠の更生構造と同様である。
【0038】
以上、本発明の既設渠の更生構造について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の既設渠の更生構造は、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設渠の更生構造を提供することができることから、経年劣化によりそれ自体が有する強度を更生する際の設計に織り込むことが困難な既設暗渠や既設管渠の更生の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
R 更生部
1 既設渠(既設暗渠、既設管渠)
11 側壁部
12 底部
13 天面部
2 更生管
21 内面材
22 ファスナー
23 連結部材
3 補強部材
31 外周側補強部材
32 内周側補強部材
33 位置決め筋
34 軸筋
4 充填材
51 レール部材
52 レール部材
6 面状部材
7 導水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9