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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149582
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】バッテリー配送方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/083 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058227
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 潤
(72)【発明者】
【氏名】内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】船見 立朗
(72)【発明者】
【氏名】永冨 学
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】発電プラントにおいて発電された電力で充電されたバッテリーを周辺地域に迅速に配送できるバッテリー配送方法を提供する。
【解決手段】バッテリー配送方法は、発電プラントにおいて発電された電力により充電されたバッテリーを周辺地域に配送するためのバッテリー配送方法であって、発電プラントの保管庫に保管されているバッテリーを搬出する搬出工程と、発電プラントで発電された電力によって搬出工程において搬出されたバッテリーを充電する充電工程と、充電工程において充電されたバッテリーを車両に搭載する搭載工程と、バッテリーが搭載された車両を周辺地域における配送先に向けて移動させる移動工程とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントにおいて発電された電力により充電されたバッテリーを周辺地域に配送するためのバッテリー配送方法であって、
前記発電プラントの保管庫に保管されているバッテリーを搬出する搬出工程と、
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーを、前記発電プラントで発電された電力によって充電する充電工程と、
前記充電工程において充電された前記バッテリーを車両に搭載する搭載工程と、
前記バッテリーが搭載された前記車両を前記周辺地域における配送先に向けて移動させる移動工程と
を備えるバッテリー配送方法。
【請求項2】
前記充電工程では、前記搬出工程において前記保管庫から搬出された前記バッテリーを充電する
請求項1に記載のバッテリー配送方法。
【請求項3】
前記車両は、電動車両であり、
前記バッテリーは、前記電動車両用の交換式バッテリーを含み、
前記搭載工程は、前記電動車両の給電ラインに接続される装着部に前記バッテリーを装着する装着工程を含む
請求項1または2に記載のバッテリー配送方法。
【請求項4】
前記バッテリーは、前記電動車両の前記装着部とは異なる積載部に積載するための積載バッテリーを含み、
前記搭載工程は、
前記電動車両の前記積載部に、充電された前記積載バッテリーを載せる積載工程をさらに含む
請求項3に記載のバッテリー配送方法。
【請求項5】
前記積載工程において前記積載部に載せられる前記積載バッテリーは、前記電動車両用の中古の交換式バッテリーである
請求項4に記載のバッテリー配送方法。
【請求項6】
前記発電プラントで発電された前記電力により作動する温水器によって加熱された温水を温水タンクに貯める貯留工程をさらに備え、
前記移動工程では、前記温水が貯留された前記温水タンクと前記バッテリーとが搭載された前記車両を前記配送先まで移動させる
請求項1乃至5の何れか1項に記載のバッテリー配送方法。
【請求項7】
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーの総容量は、前記発電プラントから規定距離以内の前記周辺地域が被災した場合に必要になると試算される電力総容量よりも大きい
請求項1乃至6の何れか1項に記載のバッテリー配送方法。
【請求項8】
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーの個数は、前記発電プラントから規定距離以内の前記周辺地域が被災した場合に必要になると試算されるバッテリー総個数よりも多い
請求項1乃至7の何れか1項に記載のバッテリー配送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバッテリー配送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される発電プラントの一例である再エネ発電プラント(より具体的にはバイオマス発電プラント)では、木屑、食品残渣、または畜糞等といったバイオマスを利用した発電が行われる。詳細には、バイオマスをガス化して得られるバイオガスを燃料としてスターリングエンジンが駆動し、スターリングエンジンに連結される発電機が稼働する。また、スターリングエンジンの排熱を利用して排熱ボイラが蒸気を生成し、該蒸気によって蒸気タービンが回転する。これにより、蒸気タービンに連結される別の発電機が稼働する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-174392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電プラントで発電された電力により充電されたバッテリーがプラント周辺地域に配送可能になれば、発電プラントの送電網に依存しない電力供給が可能になる。また、この配送は迅速に行われることが好ましい。
【0005】
本開示の目的は、発電プラントにおいて発電された電力で充電されたバッテリーを周辺地域に迅速に配送できるバッテリー配送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るバッテリー配送方法は、
発電プラントにおいて発電された電力により充電されたバッテリーを周辺地域に配送するためのバッテリー配送方法であって、
前記発電プラントの保管庫に保管されているバッテリーを搬出する搬出工程と、
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーを、前記発電プラントで発電された電力によって充電する充電工程と、
前記充電工程において充電された前記バッテリーを車両に搭載する搭載工程と、
前記バッテリーが搭載された前記車両を前記周辺地域における配送先に向けて移動させる移動工程と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発電プラントにおいて発電された電力で充電されたバッテリーを周辺地域に迅速に配送できるバッテリー配送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るバッテリーの配送を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る発電プラントの概略図である。
図3】一実施形態に係るバッテリー配送方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る供給機器を示す概略図である。
図5】一実施形態に係るバッテリーの搭載工程の詳細を示すフローチャートである。
図6】他の実施形態に係る供給機器の概略図である。
図7】他の実施形態に係るバッテリーの配送方法を示すフローチャートである。
図8】一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置を示す概略図である。
図9】一実施形態に係る配送先情報を示す概略図である。
図10】一実施形態に係る端末の表示を示す概略図である。
図11】一実施形態に係る配送完了条件が充足された場合の端末の表示態様の変化を示す概略図である。
図12A】一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置の構成を示す概略図である。
図12B】他の実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置の構成を示す概略図である。
図13】一実施形態に係る配送依頼情報を受信した端末の表示態様を示す概略図である。
図14】一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理処理を示すフローチャートである。
図15A】第1の実施形態に係る発電プラントを示す概略図である。
図15B】第2の実施形態に係る発電プラントを示す概略図である。
図15C】第3の実施形態に係る発電プラントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0010】
<1.バッテリー71の配送の概要の例示>
図1は、本開示の一実施形態に係るバッテリー71の配送を示す概略図である。本実施形態では、発電プラント2において発電された電力により充電されたバッテリー71を、車両40を運転する運搬者が発電プラント2の周辺地域75に配送する。周辺地域75への配送にあたり、本例の運搬者は、保有する端末5によって表示される周辺地域75における配送先120を確認したうえで車両40を運転する。配送先120は、例えば、病院、老人ホーム、または避難所といった複数人を収容可能な施設であってもよい。上記配送によれば、大雨、台風、または地震などの災害の発生に伴い発電プラント2の送電網が停電した場合でも、送電網に依存することのない電力供給が可能となる点で周辺地域75への貢献が可能となる。なお、運搬者は、バッテリー71のみならず温水を配送先120に配送してもよい(詳細は後述する)。
【0011】
端末5は一例として運搬者によって保有される。より具体的な一例として、端末5は、運搬者が保有する車両40と共に移動可能な通信端末であり、例えば、スマートフォン、タブレットPC、またはノートPCなどのモバイル端末であってもよいし、スマートウォッチ、スマートグラス、またはヘッドマウントディスプレイなどのウエアラブル端末であってもよい。あるいは、カーナビゲーション装置など車両取付型端末であってもよい。なお、端末5は、運搬者によって保有されることに限定されず、また、車両40と共に移動可能であることにも限定されない。例えば、端末5は、発電プラント2において設置されたスマートテレビなどの通信端末であってもよい。以下、端末5が運搬者によって保有されるスマートフォンである実施形態を例示する。
【0012】
また、運搬者は、発電プラント2から規定距離以内となる周辺地域75にて車両40を保有する者、または、発電プラント2から周辺地域75よりも離れた非周辺地域76にて車両40を保有する者のいずれであってもよい。周辺地域75は発電プラント2に近接する地域であり、発電プラント2に車両40が比較的短時間で(例えば2時間以内で)向かうことができる地域である。非周辺地域76は周辺地域75から外れた地域であり、発電プラント2に車両40が規定時間で(例えば6時間以内で)向かうことができる地域である。図1の例では周辺地域75は円形である。即ち、周辺地域75を定義するための、発電プラント2からの規定距離は、発電プラント2を基準とした方位によらず一定である。他の例では、周辺地域75は多角形状または楕円形状などの非円形状であってもよい。即ち、発電プラント2からの規定距離は発電プラント2を基準とした方位に応じて変化してもよい。周辺地域75は特定の機関によって作成されたハザードマップに基づいて設定されてもよい(非周辺地域76も同様である)。
【0013】
図2は、本開示の一実施形態に係る発電プラント2の概略図である。同図で例示される発電プラント2は、発電された電力を送電網であってもよい送電系統9に送るための給電ライン60、および、発電された電力を供給機器30に送るための別給電ライン64を備える。発電プラント2の構成要素である供給機器30は、発電プラント2の保管庫13から搬出対象となる複数のバッテリー71を順次充電するための充電器31を含む。搬出対象となるバッテリー71は、保管庫13にて保管されているバッテリー71であってもよいし、保管庫13から搬送された後のバッテリー71であってもよい。同図で例示される充電器31は、保管庫13から搬送されたバッテリー71を充電するように構成される。このバッテリー71は、車両40の一例としての電動車両41A、41B(図3参照)に給電するように構成されてもよい。あるいは、バッテリー71は、電動車両41A、41B以外の機器に給電するように構成されてもよい。より詳細な一例として、バッテリー71は、携帯電話もしくはスマートフォンなどの通信装置、携帯ライトなどの発光装置、または、給湯器などに給電可能であってもよい。なお、電動車両41A、41Bは、電気自動車、ハイブリッドカー、電動二輪車、または、電動四輪車などである。電動車両が電気自動車である場合、充電器31はEV充電ステーションを構成する。なお、図2では、保管庫13と充電器31は一体的に構成されてもよい。より具体的な一例として、保管庫13の内部に充電器31が設けられてもよいし、充電器31そのものが保管庫13として機能しても何ら問題ない。従って、保管庫13から搬出される前にバッテリー71は充電されてもよい。
【0014】
上記のような充電されたバッテリー71の周辺地域75への配送は、一例として、発電プラント2のサーバであってもよい蓄エネ機器配送管理装置100により管理される。蓄エネ機器配送管理装置100は、運搬者の端末5に配送先120に関する情報を送信するように構成される。運搬者は端末5を確認した上で車両40を運転し、規定の配送先120までバッテリー71を配送できる。
【0015】
なお、本開示では、運搬者が周辺地域75にバッテリー71を配送するに際して端末5を確認することが必須とはならない。つまり、蓄エネ機器配送管理装置100は設けられなくてもよいし、運搬者は端末5を保有しなくてもよい。例えば、運搬者が発電プラント2にて配送先120の住所を口頭で聞く実施形態、または、運搬者が周辺地域75を巡回しながらバッテリー71を適宜配送する実施形態にも、本開示は適用可能である。
【0016】
<2.一実施形態に係るバッテリー71の配送方法の例示>
図3は、本開示の一実施形態に係るバッテリー配送方法を示すフローチャートである。以下の説明では、「ステップ」を「S」と略記する場合がある。はじめに、発電プラント2の保管庫13に保管されている複数のバッテリー71を充電器31まで搬出する搬出工程が実行される(S11)。バッテリー71の搬出は、フォークリフトなどの運搬装置によって実行されてもよいし、台車などを用いた人力によって実行されてもよい。本例では、保管庫13にて保管される複数のバッテリー71にはいずれも充電が全くなされていない。搬出工程が実行されることで、バッテリー71は充電器31による充電が可能な場所まで搬出される。
【0017】
次いで、S11において搬出対象となるバッテリー71を、発電プラント2で発電された電力によって充電する充電工程が実行される(S13)。本例の供給機器30の充電器31は、保管庫13から搬出された複数のバッテリー71を同時に充電する。ただし、充電器31が同時に充電可能なバッテリー71の個数は、保管庫13にて保管されるバッテリー71の個数よりも少ない。従って、保管されるバッテリー71を全て充電するには、充電器31が複数回に亘って稼働しなければならない。
【0018】
次いで、S13において充電されたバッテリー71を車両40に搭載する搭載工程が実行される(S15)。S15の実行により、充電されたバッテリー71は車両40と共に移動可能な状態となる。
【0019】
次いで、バッテリー71が搭載された車両40を周辺地域75における配送先120に向けて移動させる移動工程が実行される(S31)。S31の具体的な一例として、蓄エネ機器配送管理装置100から端末5に配送先120に関する情報が送信されて運搬者が配送先120を確認する。そして、バッテリー71が搭載された車両40に乗った運搬者は、配送先120に向けて発電プラント2から出発する。S31の具体的な他の例として、発電プラント2の運営者が運搬者によって運転される車両40を発電プラント2内の出発場所まで案内する。いずれの実施形態であっても、車両40は発電プラント2内において配送先120に向けて出発する。なお、配送先120に向けた出発とは、具体的な配送場所を特定した上で発電プラント2を出発することを指すのみならず、具体的な配送場所は定まっていないものの何れかの配送先120に配送することを目的に発電プラント2を出発することをも指す。S31の実行により、充電されたバッテリー71は周辺地域75の配送先120に配送される。
【0020】
上記構成によれば、発電プラント2で保管されるバッテリー71を、発電プラント2において発電された電力により充電させ、充電されたバッテリー71を、車両40を用いて周辺地域75に配送することができる。充電対象となるバッテリー71は保管庫13に予め保管されているので、必要に応じて即座に保管庫13から搬出することができるため、周辺地域75への迅速な配送が可能となる。よって、発電プラント2において発電された電力で充電されたバッテリー71を周辺地域75に迅速に配送できるバッテリー71配送方法が実現される。
なお、充電工程S13はS11の実行前に実行されてもよい。上述のように、充電器31が保管庫13と一体的に構成される実施形態であれば実現可能である。この場合であっても、上記利点は得られる。
【0021】
また、図3で例示されるように、S13がS11よりも後に実行される実施形態においては、保管庫13から離れた場所で充電工程(S13)を実行できるので、充電工程を実行し易くできる。より具体的な一例として、充電器31を操作する作業、または、充電器31にバッテリー71を着脱する作業の少なくとも1つの作業をより広いスペースで行えるので、充電工程を実行し易くできる。
【0022】
<3.保管庫13において保管されるバッテリー71>
本開示の一実施形態では、搬送工程において搬出対象となるバッテリー71の総容量は、周辺地域75が被災した場合に必要になると試算される電力総容量(必要電力総容量)よりも大きい。本例の必要電力総容量は、周辺地域75が被災した場合に1以上の配送先120の全てにおいて必要となる0.5日分の電力総容量である。具体的な必要電力総容量の試算は以下のように行われる。例えば、周辺地域75が被災したという想定のもとバッテリー71の配送が必要となる1以上の配送先120を具体化し、該配送先120における0.5日当たりの必要電力総容量を試算する。該試算は、各配送先120における電力使用量を実測した結果に基づき行われてもよいし、配送先120にある各種機器が必要とする電力を機器仕様書などから特定することで行われてもよい。保管庫13において搬出対象となるバッテリー71の総容量は、必要電力総容量の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上であり、さらに好ましくは3倍以上である。
【0023】
上記構成によれば、周辺地域75が被災した場合においてバッテリー71を用いて配送する電力量が不足するのを抑制でき、十分な電力を周辺地域75の配送先120に配送することができる。なお、必要電力総容量は、配送先120における1日分の必要電力総容量、または、2日分の必要電力総容量であってもよい。いずれの実施形態であっても、上記利点は得られる。
【0024】
本開示の一実施形態では、搬出工程(S11)において搬出対象となる、保管庫13において保管されるバッテリー71の個数は、周辺地域75が被災した場合に必要になると試算されるバッテリー71の総個数(必要総個数)よりも多い。本例の必要総個数は、一例として、周辺地域75が被災したという想定のもとバッテリー71の配送が必要とされる配送先120の数を予め特定することで具体化できる。保管庫13で保管されるバッテリー71の個数は、必要総個数の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上であり、さらに好ましくは3倍以上である。
【0025】
周辺地域75が被災した場合において、十分な電力容量を有するバッテリー71が発電プラント2において充電されても、その個数が複数の配送先120の数よりも少ないと配送先120を順番に訪問して電力供給する必要が生じる。この点、上記構成によれば、複数の配送先120に向けておおよそ同じタイミングで複数のバッテリー71を配送することも可能となるので、充電されたバッテリー71を周辺地域75に迅速に配送することができる。つまり、個々のバッテリー71の電力容量が、1つの配送先120において必要となる電力容量よりもたとえ小さくても、複数のバッテリー71が該配送先120に向かいさえすれば、幅広く配送先120全体に対して迅速な電力供給が可能となる。
【0026】
<4.供給機器30の詳細>
図4は本開示の一実施形態に係る供給機器30を示す概略図である。バッテリー71を運搬するための車両40は電動車両41Aを含む。電動車両41Aは、走行における駆動源となる電動モータと、電動モータに電力供給するための給電ラインと、給電ラインに接続されるバッテリー用の装着部48とを備える。供給機器30の充電器31によって充電されるバッテリー71は、装着部48に装着可能な交換式バッテリー71Aを含む。さらに同図で示されるバッテリー71は、例えば荷台またはトランクルームなどであってもよい電動車両41Aの積載部45に積載されるための積載バッテリー71Bを含む。積載バッテリー71Bは、交換式バッテリー71Aと同型バッテリーであってもよいし、別種のバッテリー71であってもよい。別種のバッテリー71が採用される場合、充電器31は、交換式バッテリー71Aと積載バッテリー71Bのそれぞれに対応した複数の充電部を有してもよい。また、装着部48に装着されるバッテリー71は、交換式バッテリー71Aに代えて固定式バッテリーであってもよい。また、積載バッテリー71Bの電気容量は交換式バッテリー71Aの電気容量よりも大きくてもよい。上記実施形態における搭載工程(図3のS15)の詳細は一例として以下のようになる。
【0027】
図5は、一実施形態に係るバッテリー71の搭載工程(S15)の詳細を示すフローチャートである。はじめに、充電された交換式バッテリー71Aが電動車両41Aの装着部48に装着される(S41)。より具体的な一例として、装着部48に装着されていた交換式バッテリー71Aが取り外された後、既に充電が完了している別の交換式バッテリー71Aが装着部48に装着される。このような交換作業は、運搬者によって実行されてもよいし、発電プラント2の運営者によって実行されてもよいし、ロボットアームなどの装置によって自動的に実行されてもよい。
【0028】
次いで、積載バッテリー71Bが電動車両41Aの積載部45に搭載される(S43)。より具体的な一例として、充電器31によって充電された複数の積載バッテリー71Bが積載部45に積載される。S43は、運搬者またはプラントの運営者によって実行されてもよいし、ロボットアームによって実行されてもよい。また、S43がS41と並行して実行されて、バッテリー71の搭載工程(S15)の所要時間の短縮化が図られてもよい。
【0029】
上記構成によれば、充電工程(S13)において予め充電した交換式バッテリー71Aを装着工程(S41)において装着部48に装着することも可能になる。従って、装着部48から外した交換式バッテリー71Aを一旦充電して再装着する場合に比べて、装着工程の完了までの所要時間を短縮化できる。よって、充電された交換式バッテリー71Aを周辺地域75に迅速に配送できる。なお、バッテリー71の搭載工程(S15)は、バッテリー71の積載工程(S43)を含まなくてもよい。即ち、積載バッテリー71Bの積載部45への積載は実行されなくてもよい。この場合であっても、上記利点は得られる。
【0030】
また、積載バッテリー71Bの積載工程(S43)が実行される構成によれば、装着部48に加えて積載部45にもバッテリー71を電動車両41Aに搭載することができるので、1台当たりの電動車両41Aによって配送先120に供給できる電力量を増大させることができる。従って、配送先120に十分な電力を供給することができるので、バッテリー71の配送を通じた周辺地域75への貢献を高めることができる。
【0031】
本開示の一実施形態に係る積載バッテリー71Bは、中古の交換式バッテリー(以下、中古バッテリーともいう)である。中古バッテリーは、電動車両において1度は使用されたことのある交換式バッテリーである。中古バッテリーの給電対象となる電動車両は、上述した電動車両41Aよりも大型の電動車両であってもよく、この場合、電動車両41Aに装着される交換式バッテリー71Aよりも大きな電気容量を中古バッテリーは保有する。
【0032】
上記構成によれば、積載部45に積載するバッテリー71として中古バッテリーを使用することで、バッテリー71の調達コストを低減することができる。また、バッテリー71の配送が発電プラント2の送電網の停電時になどに限定される場合には、保管庫13にてバッテリー71を保管する期間が長くなるおそれがある。この点、上記構成によれば、バッテリー71が中古バッテリーであることで、必要なときにしか使用しないバッテリー71の調達コストを低減することができる。
【0033】
<5.他の実施形態に係る供給機器30>
図6は、他の実施形態に係る供給機器30の概略図である。供給機器30は、上述の充電器31に加えて、発電プラント2において発電された電力により作動するように構成される温水器32を含む。そして、温水器32は、貯水タンク33と、供給される電力によって貯水タンク33内の水を加熱するためのヒータ34とを有する。ヒータ34の加熱によって貯水タンク33内で生成される温水は、温水タンク72に供給されて貯留される。該温水タンク72は、例えば車両40の一例である電動車両41Bの積載部45に固定されている。さらに積載部45には、充電器31によって充電された積載バッテリー71Bが積載され、電動車両41Bの装着部48には、充電器31によって充電された交換式バッテリー71Aが装着される。従って、電動車両41Bは、充電されたバッテリー71と、温水が貯留される温水タンク72とを配送先120に配送することができ、災害発生時において配送先120に温水を配送することもできる。
【0034】
図7は、他の実施形態に係るバッテリー71の配送方法を示すフローチャートである。本例の配送方法は、図3を用いて説明したステップに加えて、S15とS31との間において実行されてもよいS21を備える。S21は、温水器32によって加熱された温水を温水タンク72に貯める貯留工程である。より具体的な一例として、発電プラント2の貯水タンク33に貯められた温水が、ホースおよびポンプなどの機材を用いて、温水タンク72に送られ貯められる。本実施形態では移動工程(S31)において、温水が貯留された温水タンク72とバッテリー71とが搭載された車両40を配送先120まで移動させる。上記構成によれば、例えば周辺地域75が被災した場合において、電気のみならず温水も配送先120まで配送することができるので、周辺地域75への貢献度を増すことができる。
【0035】
以下、バッテリー71または温水タンク72の少なくとも一方である蓄エネ機器70を配送する際に、端末5が参照される実施形態の詳細を説明する。
【0036】
<6.蓄エネ機器配送管理装置100の構成の詳細>
図8は、本開示の一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置100を示す概略図である。例えば発電プラント2に設置されるサーバであってもよい蓄エネ機器配送管理装置100は、1以上のコンピュータで構成されており、プロセッサ、メモリ、および外部通信インタフェースを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、又はこれらの組み合わせなどである。プロセッサは、PLD、ASIC、FPGA、またはMCU等の集積回路により実現されてもよい。メモリは、各種データを一時的または非一時的に記憶するように構成され、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、またはこれらの組み合わせによって実現される。メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサがデータを処理することで、蓄エネ機器70の配送を管理するための処理が実行される。
【0037】
本開示の一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置100は、蓄エネ機器70の少なくとも1つの配送先120の位置情報を含む配送先情報200を取得するように構成される配送先情報取得部102と、配送先情報取得部102によって取得された配送先情報200を端末5に送信するための配送先情報送信部104とを備える。
【0038】
配送先情報200に含まれる位置情報は、例えば、住所であってもよいし、経度と緯度とによって示される配送先120の位置であってもよいし、後述のマップ画像16(図10参照)における2次元座標によって示される配送先120の位置であってもよい。このような位置情報を含む配送先情報200は、蓄エネ機器配送管理装置100のメモリに配送先120ごとに予め記憶されており、配送先情報取得部102はメモリを参照することで配送先情報200を取得できる。なお、他の実施形態に係る配送先情報200は、発電プラント2から離れた遠隔地にあるサーバ装置に記憶されてもよく、この場合、配送先情報取得部102はネットワーク15を介して配送先情報200を取得してもよい。配送先情報200のデータ構成の詳細については後述する。
【0039】
配送先情報送信部104から端末5に配送先情報200を送るには、一例として、端末5を識別するための端末情報が必要となる。本実施形態の端末情報は蓄エネ機器配送管理装置100のメモリに予め記憶されており、配送先情報送信部104はメモリを参照することで端末情報を取得する。これにより、配送先情報送信部104は、ネットワーク15を介して端末5に配送先情報200を送信することができる。なお、配送先情報送信部104は、メモリに記憶される端末情報の端末5の全てに配送先情報200を送信してもよいし、規定条件を満たす端末5(例えば周辺地域75または非周辺地域76に位置する端末5)のみに配送先情報200を送信してもよい。端末5が周辺地域75または非周辺地域76に位置するか否かは、端末5から送信される位置情報に基づき判定可能である。そして、この判定処理が定期的に(例えば10分毎に)実行され、判定結果が逐次端末情報に反映されてもよい。なお、他の実施形態に係る端末情報は、発電プラント2から離れた遠隔地にあるサーバ装置に記憶されてもよい。また、配送先情報200の送信に際して、端末情報は必須ではない。例えば、発電プラント2から離れた遠隔地にあるサーバ装置が配送先情報を記憶しており、端末5は、該サーバ装置によって提供される専用URLのサイトにアクセスをすることによって配送先情報を取得してもよい。この場合、当該サーバ装置が配送先情報送信部104として機能する。あるいは、規定のアプリをインストールした端末のみがサーバ装置にアクセス可能であってもよい。当該実施形態においては、サーバ装置が端末情報を管理する代わりに、運搬者を識別するためのユーザ識別情報(ユーザID)を記憶していてもよい。ユーザIDが管理される場合においては、運搬者は自身の所有物ではない端末を使って配送先情報200を取得することも可能となる。
【0040】
配送先情報200を受信した端末5は、配送先120の位置情報を表示可能である。エネルギーが蓄積された蓄エネ機器70を発電プラント2にて保有した運搬者は、端末5を確認し、周辺地域75にある規定の配送先120まで蓄エネ機器70を車両40で配送することができる。
【0041】
上記構成によれば、車両40とともに移動する端末5に位置情報を含む配送先情報200が送られるので、蓄エネ機器70の運搬者は、端末5で表示される配送先情報200を確認したうえで車両40を運転し、周辺地域75内の規定の配送先120に蓄エネ機器70を滞りなく届けることができる。よって、発電プラント2において発電された電力によりエネルギーを蓄積した蓄エネ機器70を周辺地域75に効率的に配送できる。また、発電プラント2の送電網に依存することなく周辺地域75へのエネルギー配送が可能となり、例えば災害の発生に伴い送電網の停電が起きた場合でも、エネルギー配送を通じた周辺地域75への貢献が可能となる。なお、端末5が発電プラント2に設置されている実施形態においても、運搬者は、端末5によって表示される配送先情報200を確認してから車両40を運転して発電プラント2を出発すれば、規定の配送先120に蓄エネ機器70を滞りなく届けることができ、上記利点が得られる。
【0042】
<7.配送先情報200の詳細の例示>
図9は、本開示の一実施形態に係る配送先情報200を示す概略図である。配送先情報200は、周辺地域75内の各配送先120を識別するための施設IDと、配送先120の施設名を示す施設名情報と、配送の優先度とをさらに含む。施設名情報、優先度、及び上述の位置情報はいずれも、施設IDに紐づけられて管理されている。優先度は、例えばA、B、またはCなどの記号によって示されてもよいし、優先順位に該当する数字によって示されてもよい。同図の例では、優先度はA、B、及び、Cの3種の記号によって示されており、Aが最も高い配送の優先度を示し、Cが最も低い配送の優先度を示す。上記構成の配送先情報200を受信した端末5は、各配送先120についての優先度を表示することができる。
【0043】
図10は、一実施形態に係る端末5の表示を示す概略図である。上記の配送先情報200を受信した端末5は、マップ画像16において蓄エネ機器70の配送先120(図1参照)の優先度を例えばリスト形式で表示する。該リストは、マップ画像16と重畳して表示されてもよいし、優先度を示すリストだけが単独で表示されてもよい。後者の場合、運搬者は、マップ画像16の表示と上記リストの表示とを切り替える操作指示を端末5に入力すればよい。
【0044】
上記構成によれば、蓄エネ機器70の運搬者は端末5を参照して配送の優先度を確認することができるので、優先度の高い順から配送先120に蓄エネ機器70を配送することが可能となる。例えば、災害発生時において病院などの施設においてエネルギー供給が途絶えると、病人の看護に支障が出てしまう。この点、上記構成によれば、配送先120において病院の優先度が高くなるように予め設定されていれば、端末5を確認した運搬者は蓄エネ機器70を優先的に病院に配送できるので、病人の看護に支障がでるのを抑制でき、周辺地域75への貢献度を増すことができる。なお、配送先情報200は、施設IDと、施設名情報を含んでいなくてもよい。配送先120の位置情報と優先度とが紐づけられていれば、優先度の高い順から配送先120に蓄エネ機器70が配送できるという利点は得られる。また、配送先情報200に含まれる全ての施設IDに紐づけて優先度が割り当てられる必要はなく、一部の施設IDには優先度が割り当てられていなくてもよい。
【0045】
図10に示すように、端末5は、マップ画像16において蓄エネ機器70の配送先120(図1参照)を配送先マークとして表示する。同図では、この配送先マークとして、病院マーク185、老人ホームマーク186、及び、避難所マーク187が例示される。病院マーク185、老人ホームマーク186、及び、避難所マーク187はそれぞれ、位置情報によって示される配送先120の位置と重畳するようにして表示される。このマップ画像16は、規定のインターネットサイトからダウンロードすることにより取得される。他の例では、マップ画像16は蓄エネ機器配送管理装置100のメモリに記憶されており、配送先情報送信部104がマップ画像16を配送先情報200と共に端末5に送信してもよい。
【0046】
配送先マークは、一例として、以下のように配送先情報200において管理される。図9で例示されるように、配送先情報200の位置情報は、マップ画像16(図10参照)上において配送先120の位置に重畳して表示される配送先マークを含む。配送先マークは、端末5において運搬者が配送先120の種別を識別可能なマークであり、一例として、上述の病院マーク185、老人ホームマーク186、及び、避難所マーク187などが挙げられる。図9の例では、これらの配送先マークが施設IDに紐づけられて管理されている。これにより、配送先情報200を受信した端末5は、マップ画像16における配送先120の位置に対応付けて配送先マーク(病院マーク185、老人ホームマーク186、及び、避難所マーク187)を表示することができる。
【0047】
上記構成によれば、配送先情報200を受信した端末5は、マップ画像16上における配送先120の位置に重畳して配送先マークを示す。これにより、蓄エネ機器70の運搬者は配送先120の種別を直感的に理解することができる。
【0048】
本開示の一実施形態では、蓄エネ機器70によって配送されるエネルギーは、バッテリー71に充電された電気エネルギーと、温水タンク72に貯留された熱エネルギーとを含み、配送されるエネルギーの種類とエネルギーの量が、配送先情報200において例えば以下のように管理される。
【0049】
図9に戻り、本開示の一実施形態に係る配送先情報200は、少なくとも1つの配送先120において必要となるエネルギーの種類または量の少なくとも一方に関するエネルギー情報をさらに含む。本例のエネルギー情報は、エネルギーの種類および量の双方に関する情報である。本実施形態のエネルギーの種類は、電気エネルギー及び熱エネルギーであり、エネルギーの量は、例えば、電気容量(KW)と温水の量(L)とによって示される。このような配送先情報200を配送先情報送信部104が端末5に送信すると、端末5は、配送先120に必要なエネルギーの種類と量を例えばリスト形式にして表示する(図示外)。該リストは、マップ画像16と重畳するように表示してもよいし、単独で表示されてもよい。後者の場合、運搬者は、マップ画像16の表示と上記リストの表示とを切り替える操作指示を端末5に入力すればよい。
【0050】
上記構成によれば、蓄エネ機器70の運搬者は配送先120で必要とされるエネルギーの種類または量の少なくとも一方を、端末5を参照して確認することができる。これにより、必要な種類または量の少なくとも一方を配送先120に配送することができる。例えば、災害の発生時において病院と老人ホームとで求められるエネルギーの種類が異なる場合には、配送先120に応じた柔軟なエネルギー配送が可能となり、周辺地域75への貢献度を増すことができる。
【0051】
図9で例示されるエネルギー情報は、配送先120において必要となるエネルギーの種類または量の少なくとも一方を示すエネルギーのマークであって、マップ画像16上において配送先マークに隣接して表示されるためのエネルギーマークを含む。より具体的な一例として、エネルギーマークがエネルギーの種類を示す場合を以下に説明する。エネルギーマークは電力マーク83と温水マーク82とを含む。電力マーク83は、バッテリー71に充電された電気エネルギーに対応するマークであり、温水マーク82は、温水タンク72に貯留された熱エネルギーに対応するマークである。エネルギー情報を受信した端末5は、マップ画像16においてエネルギーマークを表示できる。例えば図10で示される通り、特定の配送先マークに隣接するように(つまり、特定の配送先マークに対応していると識別可能となるように)、エネルギーマークは表示される。より具体的な一例として、病院マーク185に隣接して電力マーク83と温水マーク82とが表示され、老人ホームマーク186に隣接して電力マーク83が表示される。なお、エネルギーマークは、配送先マークに対して規定の位置関係で表示されれば、特定のエネルギーマークに特定の配送先マークが対応していることを識別可能となる。図10の例では、各配送先マークの右上に、エネルギーマークが表示される。なお、エネルギーマークがエネルギーの量を示す実施形態においては、エネルギーマークとして、必要とされる電気容量(KW)または温水量(L)を示す文字、数字、図形、記号、またはこれらの組み合わせが採用されてもよい。
【0052】
上記構成によれば、配送先情報200を受信した端末5は、マップ画像16上において配送先マークに隣接してエネルギーマークを表示する。これにより、蓄エネ機器70の運搬者は配送先120に必要なエネルギーの種類または量の少なくとも一方を直感的に理解することができ、蓄エネ機器70の正確かつ迅速な運搬が実現される。また本例では、配送先情報200を受信した端末5は、マップ画像16上において配送先マークに隣接して電力マーク83または温水マーク82の少なくとも一方を表示できる。これにより、蓄エネ機器70の運搬者は配送先120に必要なエネルギーの種類が、電力、温水、または両方なのかを直感的に理解することができる。
【0053】
<8.蓄エネ機器配送管理装置100によるルート情報の生成>
図8に戻り、本開示の一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置100は、周辺地域75の道路の通行可否を示す道路情報を取得するための道路情報取得部106と、配送先120の位置情報と道路情報とに基づいて配送先120に至るマップ画像16におけるルート情報を生成するルート情報生成部108とをさらに備える。
【0054】
本例の道路情報取得部106は、例えば規定のインターネットサービスを提供するサーバ装置にアクセスすることで、道路情報を取得するように構成される。該サーバ装置は、例えばドライバーまたは行政機関から提供される情報を収集することにより、道路情報を生成するように構成される。さらにこの道路情報には、マップ画像16を示すマップデータが含まれてもよい。この場合、道路情報は、通行不能な道路をマップ形式で示されるデータになる。
【0055】
本例のルート情報生成部108は、配送先120と発電プラント2のそれぞれの位置情報と、道路情報とに基づき、配送先120に至るルートを決定する。該ルートは、道路情報によって示される通行不能なマップ上のポイントまたはエリアを避けるようにして生成される。生成されたルート情報は配送先情報送信部104に取得される。これにより、ルート情報を含む配送先情報200が配送先情報送信部104から端末5に送られる。端末5は、受信した配送先情報200に含まれるルート情報に基づき、決定されたルートを示すルートオブジェクト89をマップ画像16に重畳して表示してもよい(図10参照)。本実施形態の配送先情報200には、さらに、通行不能なポイントまたはエリアを示す通行不能情報が含まれてもよい(図示外)。この場合、配送先情報200を受信した端末5は、通行不能なポイントまたはエリアを示す通行不能オブジェクト88をマップ画像16と重畳して表示してもよい。これにより、運搬者は、通行を避けるべき道路を直感的に理解することができる。
【0056】
上記構成によれば、配送先情報送信部104は、ルート情報を含む配送先情報200を端末5に送信する。これにより、蓄エネ機器70の運搬者は、例えば災害発生時において、寸断された道路などの通行不能な道路を避けつつ配送先120に向かうことができる。よって、災害発生時において蓄エネ機器70を滞りなく配送先120に配送することができる。
【0057】
<9.蓄エネ機器配送管理装置100による配送の管理の例示>
図8で例示される蓄エネ機器配送管理装置100は、少なくとも1つの配送先120(図1参照)に含まれる第1配送先が配送完了条件を充足するかを判定するように構成される。配送完了条件は、第1配送先に必要なエネルギーが配送された、または、第1配送先に必要なエネルギーが判定開始時刻から所定時間以内に配送される場合に充足される条件である。必要なエネルギーは、配送先情報200に含まれるエネルギー情報によって示されるエネルギーの種類または量の少なくとも一方に基づき管理可能である。
【0058】
蓄エネ機器配送管理装置100は、上記のような判定機能を有する送信部135を備える。より詳細には、送信部135は、第1配送先から第1距離以内に位置している端末5から送信される情報に基づき配送完了条件が充足されると判定した場合に、端末5における第1配送先の表示態様を変更させる変更指示情報を端末5に送信するように構成される。
【0059】
一実施形態に係る配送完了条件の充足の有無を判定するための処理は、一例として以下のようにして実現される。送信部135は、第1配送先に蓄エネ機器70を配送した運搬者から配送完了報告を受け付ける。具体的には、運搬者は、第1配送先に配送したエネルギーの種別と量(例えばバッテリー71の個数または温水の量)を示す情報を配送完了報告として端末5から送信する。このときの端末5は、第1配送先から第1距離以内に位置する。送信部135は、端末5から送られる配送完了報告に基づき、第1配送先に配送されたエネルギーの種別と量を集計する。集計結果と、配送先情報200のエネルギー情報とに基づいて、送信部135は、第1配送先の配送完了条件が充足されたかを判定する。
【0060】
他の実施形態に係る配送完了条件の充足の有無を判定するための処理は、一例として以下のようにして実現される。運搬者が発電プラント2にてエネルギーが蓄積された蓄エネ機器70を保有する際、運搬するエネルギーの種別及び量と、目的の配送先120(第1配送先)とを登録する。この登録は、運搬者が端末5に入力操作を行うことで実現されてもよいし、発電プラント2の運営者が別端末に入力操作することで実現されてもよい。いずれの場合も、登録結果は蓄エネ機器配送管理装置100のメモリに記憶される。これにより、第1配送先に必要な蓄エネ機器70が配送可能か、発電プラント2での蓄エネ機器70の受け渡し時に管理可能となる。そして、運搬者が蓄エネ機器70を運搬する過程で、端末5は自身の位置を定期的に送信部135に送信する(あるいは、送信部135から送られるデマンドに応答して端末5は自身の位置を返信してもよい)。送信部135は、第1配送先を目的地とする端末5が全て、第1配送先から第1距離以内のエリアに一度は到達したかを判定する。第1距離は、第1配送先まで所要時間以内と見込める距離であり、上述した規定距離よりも短い距離である。該当する全ての端末5が一度は上記エリアに入った場合、送信部135は、第1配送先の配送完了条件が充足されたと判定する。
【0061】
図11は、本開示の一実施形態に係る配送完了条件が充足された場合の端末5の表示態様の変化を示す概略図である。配送完了条件が充足されたことを契機として送信部135が変更指示情報を端末5に送ると、端末5は第1配送先に該当する配送先マーク(図11の例では病院マーク185)を表示画面から消す。これにより、配送先120の候補が減ったことを運搬者は把握することができる。なお、変更指示情報を受信する端末5は、周辺地域75に位置する端末5のみに限定されてもよい。あるいは、蓄エネ機器配送管理装置100に規定のデマンドを送信した端末5のみに表示更新情報が返送されてもよい。また、表示態様の変更は、該当する配送先マークを消すことに限定されず、配送先マークの色を変更する、所定のテキスト情報を追加するなどによって実行されてもよい。
【0062】
上記構成によれば、必要なエネルギーが第1配送先に配送された場合、または、必要なエネルギーが所定時間以内に第1配送先に配送される場合、端末5における第1配送先の表示態様が変化し、蓄エネ機器70の運搬者はそのことを認識できる。よって、第1配送先に過剰な蓄エネ機器70が配送されるのを抑制でき、蓄エネ機器70を無駄なく周辺地域75に行き渡らせることができる。
【0063】
<10.蓄エネ機器配送管理装置100による配送依頼>
図12Aは、一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置100A(100)の構成を示す概略図である。図12Bは、他の実施形態に係る蓄エネ機器配送管理装置100B(100)の構成を示す概略図である。蓄エネ機器配送管理装置100A、100B(100)は、上述した配送先情報取得部102と配送先情報送信部104とを備える。図8で例示される道路情報取得部106、ルート情報生成部108、または送信部135は、蓄エネ機器配送管理装置100A、100Bに組み込まれてもよいし、組み込まれなくてもよい。
【0064】
図12Aで例示される蓄エネ機器配送管理装置100Aは、予め登録された端末5に蓄エネ機器70の配送依頼情報を送信するための第1配送依頼部131をさらに備える。端末5を識別するための端末情報は、運搬者によって予め登録され、蓄エネ機器配送管理装置100のメモリに記憶される。本例では、例えば災害が発生して発電プラント2の送電網の停電が発生した場合に、第1配送依頼部131が配送依頼情報を登録された端末5に一斉送信する。図13は、本開示の一実施形態に係る配送依頼情報を受信した端末5の表示態様を示す概略図である。同図で例示される通り、端末5が蓄エネ機器70の運搬者を募っていることを表示する。上記構成によれば、発電プラント2の運営者は運搬者を迅速に募ることができる。
【0065】
図12Bで例示される蓄エネ機器配送管理装置100Bは、予め登録された端末5のうちで、周辺地域75及び非周辺地域76内に位置する端末5に(即ち、周辺地域75を含む広範囲な地域に)、蓄エネ機器70の配送依頼情報を送信するための第2配送依頼部132をさらに備える。第2配送依頼部132から配送依頼情報を受信した端末5は、図13で示すように、蓄エネ機器70の運搬者を募っていることを表示する。上記構成によれば、第2配送依頼部132が、予め登録された端末5のうちで、周辺地域75を含む広範囲地域内に位置する端末5に、蓄エネ機器70の配送依頼情報を送信する。これにより、発電プラント2に向かうことが現実的に可能な運搬者のみに運搬を依頼することができ、運搬者の効率的な募集が実現される。
【0066】
<11.蓄エネ機器配送管理処理の例示>
図14は、本開示の一実施形態に係る蓄エネ機器配送管理処理を示すフローチャートである。本管理処理は、蓄エネ機器配送管理装置100のプロセッサ(以下、単にプロセッサという場合がある)によって実行される。蓄エネ機器管理処理は、例えば、発電プラント2の周辺地域75が被災した場合に実行される。本例では、非周辺地域76(図1参照)は非被災地域に該当する。
【0067】
はじめに、プロセッサは、配送依頼情報を端末5に送信する(S11)。S11を実行するプロセッサは、上述の第1配送依頼部131または第2配送依頼部132のいずれかに該当する。
【0068】
次いで、プロセッサは、道路情報を取得し(S13)、ルート情報を生成する(S15)。S13を実行するプロセッサとS15を実行するプロセッサは、それぞれ、上述の道路情報取得部106とルート情報生成部108に該当する。さらに、プロセッサは、配送先情報200を取得し(S17)、取得した配送先情報200を端末5に送信する(S19)。S17を実行するプロセッサとS19を実行するプロセッサは、それぞれ、上述の配送先情報取得部102と配送先情報送信部104に該当する。
【0069】
次いで、プロセッサは、第1配送先から第1距離以内に位置している端末5から送信される情報に基づき、第1配送先の配送完了条件が充足されると判定した場合に、変更指示情報を端末5に送信する(S21)。S21を実行するプロセッサは、上述の送信部135に該当する。その後、プロセッサは、蓄エネ機器配送管理処理を終了する。
【0070】
<12.発電プラント2の具体的構成の例示>
図15A図15B図15Cは、発電プラント2A、2B、2C(2)を示す概略図である。同図で例示される発電プラント2は、再エネ発電プラントであり、より具体的にはバイオマスを利用して発電するように構成されるバイオマス発電プラントである。バイオマスは、動植物から得られる有機性の資源であり、例えば、木質バイオマス、農林水産物、食品廃棄物、または家畜排せつ物などである。発電プラント2で利用されるバイオマスは何であってもよいが、以下の説明では木質バイオマス(より詳細には木屑)により発電がなされる発電プラント2A、2B、2C(2)を例示する。
【0071】
<12-1.第1の実施形態に係る発電プラント2A>
図15Aで例示される発電プラント2Aは、少なくとも2つの発電系統を備える。1つ目の発電系統は、バイオマスの燃焼から得られる熱エネルギーを蒸気タービン4の回転エネルギーに変換して発電する第1発電系統10である。第1発電系統10によって生成される電力(以下、第1電力ともいう)は、例えば送電網であってもよい送電系統9に供給される。2つ目の発電系統は、バイオマスから得られるバイオガスの燃焼によってバイオガス発電装置23を駆動して発電する第2発電系統20である。第2発電系統20によって生成される電力(以下、第2電力ともいう)は、後述の補機モータ55に供給される。つまり、第2発電系統20は第1発電系統10の補機用補助発電系統である。また、図15Aの例では、第2電力は補機モータ55のみならず上述の送電系統9と後述の供給機器30とにも供給される。
【0072】
補機モータ55に供給される電力は主に第2電力によってまかなわれるが、例えば発電プラント2の起動時などの特定の期間においては、外部電源系統(図示外)から供給される電力によってまかなわれてもよい。外部電源系統は、火力発電所で発電された電力を供給してもよいし、風力発電所、太陽光発電所、または潮汐発電所など再生可能エネルギー利用型の発電所で発電された電力を供給してもよい。
【0073】
図15Aで例示される第1発電系統10は、バイオマスを燃料とするバイオマスボイラ3と、バイオマスボイラ3から供給される蒸気を駆動源とする蒸気タービン4と、蒸気タービン4の駆動により発電するための第1発電機11と、第1発電機11によって生成された電力を送電系統9に供給するための第1給電ライン61とを含む。
【0074】
バイオマスボイラ3は、バイオマス供給装置81から供給されるバイオマスを燃焼させるための火炉39を備える。バイオマスの燃焼で得られる熱エネルギーによって、バイオマスボイラ3では蒸気(過熱蒸気)が生成される。蒸気は蒸気供給ラインL1を経由して蒸気タービン4に供給されて、蒸気タービン4は回転する。これにより、蒸気タービン4に連結される第1発電機11は発電する。蒸気タービン4から排出される蒸気は、復水器6にて復水されて、ボイラ給水ラインL2を経由して火炉39に戻る。ボイラ給水ラインL2には、復水を火炉39に送出するための給水ポンプ7が設けられている。
【0075】
なお、概略図としての図15Aでは、ボイラ給水ラインL2における各種装置の図示が省略されている(図15Bも同様である)。例えば、給水ポンプ7の上流には復水を脱気するための脱気器が設けられており、脱気器と復水器6との間には、復水を脱気器に送出するための脱気器給水ポンプが設けられる。また、脱気器給水ポンプの上流には復水を加熱するための給水加熱器が設けられており、給水加熱器と復水器6との間には、復水を給水加熱器に送出するための復水ポンプが設けられる。給水ポンプ7、脱気器給水ポンプ、及び、復水ポンプは復水をバイオマスボイラ3に供給するためのポンプであり、バイオマスボイラ3が駆動するための補機装置50として機能する。
【0076】
火炉39の内部でバイオガスの燃焼により発生する排ガスは、煙道17、空気予熱器14、及び、バグフィルタ18を順に通過する。排ガスに含まれるダストはバグフィルタ18によって集塵され、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)19は、バグフィルタ18から排ガスを吸引して排気筒8へ送出する。空気予熱器14は、押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)12によって送出される空気を、煙道17を通過した排ガスを熱源として加熱するように構成される。空気予熱器14から排出される加熱された空気は、バイオマスの燃焼用空気(燃焼用ガス)としてバイオマスボイラ3に供給される。なお、上記の誘引通風機19と押込通風機12は、ガス(排ガスまたは燃焼用ガス)を吸引または送出する通風機であり、バイオマスボイラ3が駆動するための補機装置50として機能する。
【0077】
上記のように幾つかの実施形態では、第1発電系統10の構成要素である補機装置50は、給水ポンプ7、脱気器給水ポンプ、及び、復水ポンプなどのポンプと、誘引通風機19及び押込通風機12などの通風機とを含む。そして、第1発電系統10は、これら補機装置50に動力を付与するための補機モータ55をさらに備える。概略図としての図15Aでは図面を見やすくする都合、補機装置50から離れた位置にて補機モータ55を図示している。また、補機モータ55は単数である必要はなく、各々の補機装置50に搭載されてもよい。
【0078】
第2発電系統20は、バイオマス供給装置81から供給されるバイオマスを加熱処理するための加熱装置21と、加熱処理されたバイオマスからバイオガスを生成するためのガス化炉24と、ガス化炉24から供給されるバイオガスを用いて発電するためのバイオガス発電装置23とを含む。
【0079】
本例の加熱装置21は一例として乾燥庫である。本例では、加熱された空気に木質バイオマスが晒されることにより、加熱処理(乾燥処理)は実行される。ガス化炉24は、加熱装置21で加熱処理されたバイオマスに更なる加熱処理を施す。該加熱処理は一例として蒸し焼きであり、ガス化炉24内で蒸し焼きされるバイオマスは熱分解し、バイオガスが生成される。ガス化炉24から排出されるバイオガスは、例えば防塵装置26を経由してバイオガス発電装置23に供給される。
【0080】
バイオガス発電装置23は、ガス化炉24から防塵装置26を経由して供給されるバイオガスを燃料とするガスエンジン25と、ガスエンジン25の駆動により発電するための第2発電機22とを有する。第2発電機22は、ガスエンジン25に連結されており、ガスエンジン25の駆動に伴い発電する。これにより、第2電力が生成される。
【0081】
本例の第2発電系統20は、第2電力を送電系統9に供給するための第2給電ライン62と、第2給電ライン62と補機モータ55とに接続されるモータ給電ライン63と、モータ給電ライン63と並列に設けられる別給電ライン64とを含む。第2給電ライン62は、一例として、第1発電機11と送電系統9の間において第1給電ライン61に接続される。一例として分岐給電ライン67を介して第2給電ライン62に接続されるモータ給電ライン63は、バイオガス発電装置23によって生成された第2電力を補機モータ55に供給するように構成されている。補機モータ55は、第2電力の他に外部電源系統(図示外)から電力を一時的に受けるように構成される。また、別給電ライン64は供給機器30に第2電力を供給するように構成される。
【0082】
上記構成によれば、第1発電系統10の補機装置50の電力を第2発電系統20がまかなうことができるので、外部電源系統への依存を低減できる。また、第2発電系統20はバイオマスを利用して発電をするため、環境負荷を低減できる。以上より、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減した発電プラント2が実現される。また、ガス化炉24とガスエンジン25を用いた発電は、バイオマスボイラ3と蒸気タービン4を用いた発電よりも効率的に行える。従って、バイオマス供給装置81がバイオマスの全てを第1発電系統10に供給する場合に比べて、本実施形態では発電プラント2の全体的な効率を向上させることもできる。
【0083】
なお、他の実施形態に係る第2発電系統20は、第2給電ライン62または別給電ライン64の少なくとも一方を含まなくてもよい。つまり、第2発電系統20は補機モータ55に給電可能でありさえすればよい。また、バイオマス供給装置81は、第1発電系統10には木質バイオマスを供給し、第2発電系統20には食品廃棄物または家畜排せつ物を供給してもよい。この場合、ガス化炉24は、食品廃棄物または家畜排せつ物をメタン発酵させてバイオガスを生成してもよい。いずれの実施形態においても既述の理由によって、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減した発電プラント2が実現される。
【0084】
さらに他の実施形態について説明すると、バイオガス発電装置23は、ガスエンジン25と第2発電機22とを有する代わりに、バイオガスを利用した固体酸化物形燃料電池(SOFC)を有してもよい。あるいは、他の実施形態に係る第2発電系統20は、加熱装置21、ガス化炉24、及び、ガスエンジン25を備える代わりに、バイオマスボイラ、及び、第2発電系統20に連結される蒸気タービンを備えてもよい。これらのバイオマスボイラと蒸気タービンはそれぞれ、第1発電系統10のバイオマスボイラ3と蒸気タービン4よりも小型であってもよい。いずれの実施形態においても既述の理由によって、外部電源系統への依存を低減し、環境負荷もあわせて低減した発電プラント2が実現される。
【0085】
<12-2.第2の実施形態に係る発電プラント2B>
図15Bを参照し、第2の実施形態に係る発電プラント2Bを説明する。発電プラント2Bは、図15Aで例示される第2発電系統20を備えない点で、発電プラント2Aとは異なる。発電プラント2Bでは、第1給電ライン61と分岐給電ライン67とに接続される第3給電ライン73が設けられる。本例では、第1発電機11によって生成された第1電力の一部によって、補機モータ55の必要電力と、供給機器30の必要電力とがまかなわれる。
【0086】
<12-3.第3の実施形態に係る発電プラント2C>
図15Cを参照し、第3の実施形態に係る発電プラント2Cを説明する。発電プラント2Cは、図15Aで例示される第1発電系統10、補機モータ55を備えない点で発電プラント2Aとは異なる。第2給電ライン62は、別給電ライン64と直列に接続される。本実施形態では、第2発電機22は、供給機器30に電力を専ら供給するために設けられる。
【0087】
<13.その他>
蓄エネ機器70の配送は災害発生時に限られない。例えば、発電プラント2が通常通りの定格運転が実行されるときに、蓄エネ機器70の配送が併せて実行されてもよい。発電プラント2の一例である再エネ発電プラントは、上記のようなバイオマス発電プラントに限定されず、風力発電プラント、太陽光発電プラント、または潮汐発電プラントであってもよい。発電プラント2は、原子力発電プラントまたは火力発電プラントなどであってもよい。火力発電プラントの燃料は、石炭、石油、または液化天然ガスなどの化石燃料であってもよいし、アンモニアなどカーボンフリーな燃料であってもよい。蓄エネ機器70に蓄積されるエネルギーは、電気エネルギーまたは熱エネルギーに限定されず、例えば水を電気分解することで得られる水素または酸素などのガスであってもよい。
【0088】
<14.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0089】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るバッテリー配送方法は、
発電プラント(2)において発電された電力により充電されたバッテリー(71)を周辺地域(75)に配送するためのバッテリー配送方法であって、
前記発電プラントの保管庫(13)に保管されているバッテリー(71)を搬出する搬出工程(S11)と、
前記発電プラントで発電された電力によって前記搬出工程において搬出された前記バッテリーを充電する充電工程(S13)と、
前記充電工程において充電された前記バッテリーを車両に搭載する搭載工程(S15)と、
前記バッテリーが搭載された前記車両(40)を前記周辺地域における配送先(120)に向けて移動させる移動工程(S31)と
を備える。
【0090】
上記1)の構成によれば、発電プラントで保管されるバッテリーを、発電プラントにおいて発電された電力により充電させ、充電されたバッテリーを、車両を用いて周辺地域に配送することができる。充電対象となるバッテリーは保管庫に予め保管されているので、必要に応じて即座に保管庫から搬出することができるため、周辺地域への迅速な配送が可能となる。よって、発電プラントにおいて発電された電力で充電されたバッテリーを周辺地域に迅速に配送できるバッテリー配送方法が実現される。
【0091】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のバッテリー配送方法であって、
前記充電工程では、前記搬出工程において前記保管庫から搬出された前記バッテリーを充電する。
【0092】
上記2)の構成によれば、保管庫から離れた場所で充電工程を実行できるので、充電工程を実行しやすくすることができる。
【0093】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載のバッテリー配送方法であって、
前記車両は、電動車両(41A、41B)であり、
前記バッテリーは、前記電動車両用の交換式バッテリー(71A)を含み、
前記搭載工程は、前記電動車両の給電ラインに接続される装着部(48)に前記バッテリーを装着する装着工程(S41)を含む。
【0094】
上記3)の構成によれば、充電工程において予め充電した交換式バッテリーを装着工程で装着部に装着することも可能になる。従って、装着部から外した交換式バッテリーを一旦充電して再装着する場合に比べて、装着工程の完了までの所要時間を短縮化することができる。よって、充電された交換式バッテリーを周辺地域に迅速に配送できる。
【0095】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載のバッテリー配送方法であって、
前記バッテリーは、前記電動車両の前記装着部とは異なる積載部(45)に積載するための積載バッテリー(71B)を含み、
前記搭載工程は、
前記電動車両の前記積載部に、充電された前記積載バッテリーを載せる積載工程(S43)をさらに含む。
【0096】
上記4)の構成によれば、装着部に加えて積載部にもバッテリーを電動車両に搭載することができるので、1台当たりの電動車両によって配送先に供給できる電力量を増大させることができる。従って、配送先に十分な電力を供給することができるので、バッテリーの配送を通じた周辺地域への貢献を高めることができる。
【0097】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のバッテリー配送方法であって、
前記積載工程において前記積載部に載せられる前記積載バッテリーは、前記電動車両用の中古の交換式バッテリーである。
【0098】
上記5)の構成によれば、積載部に積載するバッテリーとして中古の交換式バッテリーを使用することで、バッテリーの調達コストを低減することができる。また、バッテリーの配送が発電プラントの送電網の停電時になどに限定される場合には、保管庫にてバッテリーを保管する期間が長くなるおそれがある。この点、上記4)の構成によれば、バッテリーが中古の交換式バッテリーであることで、必要なときにしか使用しないバッテリーの調達コストを低減することができる。
【0099】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載のバッテリー配送方法であって、
前記発電プラントで発電された前記電力により作動する温水器(32)によって加熱された温水を温水タンク(72)に貯める貯留工程(S21)をさらに備え、
前記移動工程では、前記温水が貯留された前記温水タンクと前記バッテリーとが搭載された前記車両を前記配送先まで移動させる。
【0100】
上記6)の構成によれば、例えば周辺地域が被災した場合において、電気のみならず温水も配送先まで配送することができるので、ブラント周辺地域への貢献を増すことができる。
【0101】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載のバッテリー配送方法であって、
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーの総容量は、前記発電プラントから規定距離以内の前記周辺地域が被災した場合に必要になると試算される電力総容量よりも大きい。
【0102】
上記7)の構成によれば、周辺地域が被災した場合においてバッテリーを用いて配送される電力量が不足するのを抑制でき、十分な電力を周辺地域の配送先に配送することができる。
【0103】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載のバッテリー配送方法であって、
前記搬出工程において搬出対象となる前記バッテリーの個数は、前記発電プラントから規定距離以内の前記周辺地域が被災した場合に必要になると試算されるバッテリー総個数よりも多い。
【0104】
周辺地域が被災した場合において、十分な電力容量を有するバッテリーが再エネ発電プラントにおいて充電されても、その個数が複数の配送先の数よりも少ないと配送先を順番に訪問して電力供給する必要が生じる。この点、上記8)の構成によれば、複数の配送先に向けておおよそ同じタイミングで複数のバッテリーを配送することも可能となるので、充電されたバッテリーを周辺地域に迅速に配送することができる。
【符号の説明】
【0105】
2 :発電プラント
13 :保管庫
30 :供給機器
31 :充電器
32 :温水器
40 :車両
41A、41B :電動車両
45 :積載部
48 :装着部
60 :給電ライン
71 :バッテリー
71A :交換式バッテリー
71B :積載バッテリー
72 :温水タンク
75 :周辺地域
120 :配送先

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図15C