(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149590
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】締結機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20231005BHJP
B25B 23/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B23P19/06 D
B25B23/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058240
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】足立 涼
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BA02
3C038BA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、供給ユニットから締結部品を安定して取り出し可能な締結機に関する。
【解決手段】
頭部N1および脚部N2を有する締結部品Nを所定の待機位置にて待機させるように構成されている供給ユニット20と、前記待機位置に待機する締結部品Nを吸着する吸着パイプ33を有するツールユニット30とを備え、前記供給ユニット20は、締結部品Nを吊下する吊下溝271が形成された吊下部材27を備え、前記吊下部材27には、前記吊下溝271の開口部を上方に突出させるように挿通突起272が形成されており、前記挿通突起272は、前記吸着パイプ33内に進入可能な大きさに構成されていることを特徴とする締結機10による。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部および脚部を有する締結部品を所定の待機位置にて待機させるように構成されている供給ユニットと、
前記待機位置に待機する締結部品を吸着する吸着パイプを有するツールユニットとを備えた締結機において、
前記供給ユニットは、締結部品を吊下する吊下溝が形成された吊下部材を備え、
前記吊下部材には、前記吊下溝の開口部を上方に突出させるように挿通突起が形成されており、
前記挿通突起は、前記吸着パイプ内に進入可能な大きさに構成されていることを特徴とする締結機。
【請求項2】
前記挿通突起は、締結部品の脚部より短く構成されていることを特徴とする請求項1に記載の締結機。
【請求項3】
前記供給ユニットは、締結部品を吊下溝まで搬送する搬送手段と、この搬送手段と交差する方向に吊下部材を往復摺動させる往復駆動源とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の締結機。
【請求項4】
前記吊下部材には、前記往復駆動源の駆動により吊下溝が前記待機位置まで移動した際に、前記搬送手段の先端を封鎖する封鎖凸部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の締結機。
【請求項5】
前記往復駆動源の駆動による吊下部材の往復摺動をガイドするフレームを有し、
前記フレームには、前記吊下溝が待機位置まで移動した際に、挿通突起と合致して前記吸着パイプ内に進入可能な合致突起が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の締結機。
【請求項6】
前記挿通突起は、締結部品の頭部の外径より小径に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の締結機。
【請求項7】
前記締結部品の脚部には、座金が装着されており、
前記挿通突起は、座金の外径より小径に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の締結機。
【請求項8】
前記吸着パイプの下端開口部には、下方に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の締結機。
【請求項9】
前記ツールユニットを昇降駆動させる位置制御機構を備え、
前記位置制御機構は、吸着パイプの下端開口部が挿通突起の上面より下方に位置し、なおかつ下端開口部が挿通突起の周辺に当接しないよう設定された所定の高さまでツールユニットを下降させることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載の締結機。
【請求項10】
前記ツールユニットには、前記吸着パイプ内で昇降自在かつ回転自在に構成されるとともに、その下端が前記締結部品の頭部と嵌合可能に構成された締結工具を有しており、
前記位置制御機構は、前記締結工具が締結部品の頭部と当接しない高さまで前記ツールユニットを下降させることを特徴とする請求項9に記載の締結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給ユニットから締結部品を安定して取り出し可能な締結機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部と脚部とを有する締結部品を所定の締結位置に締結する締結機として、特許文献1に開示のものが知られている。この締結機は、
図9に示すように前記締結部品を吊下する吊下溝271が形成された吊下部材27と、この供給ユニットにより待機位置まで供給された締結部品を吸着する吸着パイプ33を備えたツールユニットと、ツールユニットを移動させる位置制御機構を備えており、吸着パイプ33により締結部品を吸着保持後、位置制御機構が駆動することにより、締結部品ごとツールユニットを締結位置の上方に移動させるように構成されている。このように待機位置まで供給された締結部品を吸着パイプ33が取り出す構成の締結機は、特許文献2に開示されるチャックユニット等、別途締結部品を保持する保持機構が吸着パイプ33周辺に配置されないため、比較的狭い箇所に締結することができる等の特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-59816号公報
【特許文献2】特許第3431815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の締結機は、
図9に示すように締結部品Nが頭部N1座面に円盤状の座部N3を有していたり、座金が装着されていたりすると、締結部品を吸着パイプ33にて吸着する際に、当該吸着パイプ33の下端と吊下部材との間に前記座部N3または座金が挟まれることがあった。このように座部N3や座金が挟まれた締結部品Nは、吸着パイプ33内に正しい姿勢で吸引されないため、吊下部材27から抜去されなかったり、不安定な姿勢で吸着されて吸着パイプ33の移動途中に脱落したりする等の問題があった。また、このため、ねじ締め不良が発生する等の問題が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、確実にねじを吸着可能な締結機の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、 頭部および脚部を有する締結部品を所定の待機位置にて待機させるように構成されている供給ユニットと、前記待機位置に待機する締結部品を吸着する吸着パイプを有するツールユニットとを備えた締結機において、前記供給ユニットは、締結部品を吊下する吊下溝が形成された吊下部材を備え、前記吊下部材には、前記吊下溝の開口部を上方に突出させるように挿通突起が形成されており、前記挿通突起は、前記吸着パイプ内に進入可能な大きさに構成されていることを特徴とする。なお、前記挿通突起は、締結部品の脚部より短く構成されていることが好ましい。また、前記供給ユニットは、締結部品を吊下溝まで搬送する供給レールと、この供給レールと交差する方向に吊下部材を往復摺動させる往復駆動源とを備えることが好ましい。さらに、前記吊下部材には、前記往復駆動源の駆動により吊下溝が前記待機位置にて移動した際に、前記供給レールの先端を封鎖する封鎖凸部を備えていることが好ましい。また、前記往復駆動源の駆動による吊下部材の往復摺動をガイドするフレームを有し、前記フレームには、前記吊下溝が待機位置まで移動した際に、挿通突起と合致して前記吸着パイプ内に進入可能な合致突起が設けられていることが好ましい。しかも、前記挿通突起は、締結部品の頭部の外径より小径に構成されていることが好ましい。その上、前記締結部品の脚部には、座金が装着されており、前記挿通突起は、座金の外径より小径に構成されていることが好ましい。また、前記吸着パイプの下端開口部には、下方に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部が形成されていることが好ましい。さらに、前記ツールユニットを昇降駆動させる位置制御機構を備え、前記位置制御機構は、吸着パイプの下端開口部が挿通突起の上面より下方に位置し、なおかつ下端開口部が挿通突起の周辺に当接しないよう設定された所定の高さまでツールユニットを下降させることが好ましい。しかも、前記ツールユニットには、前記吸着パイプ内で昇降自在かつ回転自在に構成されるとともに、その下端が前記締結部品の頭部と嵌合可能に構成された締結工具を有しており、前記位置制御機構は、前記締結工具が締結部品の頭部と当接しない高さで前記ツールユニットを停止させることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、締結部品を吊下支持する吊下穴周辺に設けられた挿通突起に吸着パイプが被さった状態で吸着するため、締結部品が吸着パイプと吊下部材に挟まれることがない。このため、締結部品を確実に吸着保持することが可能となる等の利点がある。なお、前記挿通突起が締結部品の脚部より短く構成されているため、締結部品が移動中に吊下溝から脱落することがない等の利点がある。また、吊下部材が往復駆動源の駆動により移動するため、次段の締結部品と距離が離れ、確実に一本ずつ吸着できる等の利点もある。さらに、前記吊下部材に前記搬送手段の先頭を封鎖する封鎖凸部が設けられているため、吊下溝が待機位置に位置する時、次段の締結部品が搬送手段の先頭から脱落することがない等の利点もある。また、挿通突起と合致突起の両方で締結部品を支持するため、吸着時、締結部品の姿勢がより安定する等の利点もある。しかも、挿通突起の外径が締結部品の頭部外径あるいは、座金の外径より小径に構成されているため、吸着パイプの穴径を締結部品基準に作成でき、吸着後、締結部品が位置ずれすることを防止できる。また、前記吸着パイプの下端開口部に拡径部が形成されてため、締結部品が吸着パイプ内に進入しやすくなる等の利点もある。さらに、前記位置制御機構による吸着パイプの下降停止位置がその下端開口部が挿通突起の上面より下方に位置し、なおかつ下端開口部が挿通突起の周辺に当接しないよう設定されているため、吸着パイプ内に締結部品が進入可能かつ吸着パイプが挿通突起周辺に当接することを防止可能となる等の利点もある。しかも、前記位置制御機構による吸着パイプの下降停止位置がツールユニットの締結工具と締結部品とが接触しないように設定されているため、下降時にこれらが衝突して破損することを防止可能等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明に係る供給ユニットの動作を示す要部拡大平面図である。
【
図4】
図3から次の状態に移行する動作を示す要部拡大平面図である。
【
図5】
図3のA-A線に沿った要部拡大一部断面側面図である。
【
図6】
図4のB-B線に沿った要部拡大一部断面側面図である。
【
図7】
図4のC-C線に沿った要部拡大一部断面側面図である。
【
図9】従来の供給ユニットにおいて、吸着パイプと吊下部材にねじの座部が挟まれた状態を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1ないし
図2において10は、締結部品の一例であるねじNをワーク(図示せず)に締結する締結機であり、ねじNを予め設定される待機位置まで供給する供給ユニット20と、この供給ユニット20から供給されたねじNを吸着保持するツールユニット30と、このツールユニット30を前記待機位置および所定の締付位置との間で往復移動させる位置制御機構40と、これらの駆動を制御する制御部50とを有している。
【0009】
前記ねじNは、頭部N1と脚部N2とが一体に形成されており、このねじNの頭部N1は、上方へ突起し丸みを帯びた曲部と、この曲部に連続する円板形状の座部N3とを有している。
【0010】
前記供給ユニット20は、搬送手段の一例である前後方向に延びる供給レール21と、この供給レール21の前方に配される切り出し部22とを有している。この供給ユニット20の供給レール21は、前後方向に延びる2本の板材から構成されており、この板材は、前記ねじNの脚部N2の外径より若干広く、なおかつ頭部N1の外径より狭い所定の隙間を開けて設置されている。このため、供給レール21は、その上面に頭部N1の座面を当接させた状態にてねじNを吊り下げ支持可能となる。また、この供給レール21には、バイブレータ(図示せず)が接続されており、このバイブレータの振動により吊り下げ支持したねじNを前方に搬送するように構成されている。なお、この供給レール21の後方には、ねじNを多数貯留可能な貯留部(図示せず)が接続されており、この貯留部は、供給レール21上にねじNを一列に供給するよう構成されている。
【0011】
一方、前記切り出し部22は、前記供給レール21と直交方向(以下、横方向という)に延びるフレーム23と、このフレーム23内に配され、ねじNを吊下支持する吊下部材27と、この吊下部材27に吊下支持されたねじNを洗浄する洗浄部29とを有する。この切り出し部22のフレーム23は、
図3に示すように後方に開口する供給口231が形成されている。この供給口231には、前記供給レール21の終端部が進入しており、その前方には、横方向に延びる切欠溝232が連続している。この切欠溝232は、その横方向片側が側壁24によって閉鎖されているとともに当該切欠溝232の底面には、供給口231より側壁24から離反する側(以下、開口側という)に下方に貫通する吸気穴233が形成されている。またフレーム23の上面には、前記供給口231より側壁24側に蓋部材25が固定されている一方、前記供給口231より開口側に検出センサ26が固定されている。この検出センサ26は、投光側から受光側へと検出光を投光する一対の光学センサであり、当該検出光が前記吸気穴233の上方を通過するように配置されている。このため、
図4および
図7に示すように示すように吸気穴233の上方に位置するねじNが達すると、当該ねじNの頭部N1によって前記検出光が遮断され、制御部50がねじNを検出する。
【0012】
前記吊下部材27は、前記切欠溝232内に配置されるとともにその前後方向の厚さが前記切欠溝232の溝幅とほぼ同寸に構成されており、切欠溝232に沿って横方向に摺動自在に構成されている。この吊下部材27は、その後方面には、上下方向に貫通する略U字形状の吊下溝271が切欠き形成されている。この吊下溝271は、その溝幅が前記供給レール21と同様、前記ねじNの脚部N2の外径より若干広く、なおかつ頭部N1外径より狭く構成されており、ねじNを吊り下げ支持可能に構成されている。また、切り出し部22には、吊下部材27を切欠溝232に沿って往復移動させるシリンダ28を備えている。このシリンダ28は、前記側壁24に固定されており、そのピストンロッドが前記吊下部材27に連結されている。このシリンダ28のストロークは、ピストンロッドの収縮時、
図1および
図2に示すように吊下部材27の吊下溝271が供給レール21に連続する一方、ピストンロッドの伸張時、
図3および
図4に示すように吊下溝271が前記フレーム23の吸気穴233に連続する寸法に設定されている。
【0013】
また、前記吊下部材27の上面には、前記吊下溝271の上側開口部を上方に突出させるように平面視略D字形状の挿通突起272が形成されている。この挿通突起272は、前記ねじNの頭部N1外径より若干小さい径に構成されるとともに上下方向の長さ寸法がねじNの脚部N2の長さ寸法より短寸に構成されており、
図5に示すようその上面が前記供給レール21の上面と連続可能に構成されている。これら構成により、吊下部材27は、吊下溝271が供給レール21と連続した際、供給レール21上の最前のねじNを一本受け取り吊下支持することが可能となる。さらに、吊下部材27には、
図4に示すように吊下溝271が前記吸気穴233に連続する位置(以下、待機位置という)に達した際に前記供給レール21の前方に位置する箇所に封鎖凸部273が設けられている。この封鎖凸部273は、
図6に示すように前記挿通突起272と同じ高さに構成されており、吊下溝271が待機位置にて待機している間、前記供給レール21上のねじNが供給レール21から脱落しないようにその前方を封鎖している。なお前記フレーム23の前記待機位置周辺には、挿通突起272と合致して後述する吸着パイプ33内に進入可能な外径の円柱形状を形成する合致突起234が形成されている。
【0014】
前記洗浄部29は、前記フレーム23に形成された吸気穴233に連続する吸気ホース291と、この吸気ホース291に連続する吸気手段292を備えており、吸気手段292の駆動により、吸気ホース291を介して吸気穴233から空気を吸引することが可能に構成されている。また、吸気ホース291は、その途中にフィルター(図示せず)を有しており、後述する駆動時、吸引された空気中の埃等を除去可能に構成されている。
【0015】
前記ツールユニット30は、
図1に示すようにねじNと嵌合可能なドライバビット31と、このドライバビット31を回転駆動させる締付けモータ32と、前記ドライバビット31を軸方向に往復移動可能かつ内部で回転自在に内包する吸着パイプ33とを備えている。吸着パイプ33は、クッションばね(図示せず)によって下方に付勢されており、このクッションばねが撓むことにより、吸着パイプ33は、ドライバビット31および締付けモータ32に対して軸方向に相対移動するように構成されている。また、吸着パイプ33には、真空発生器等の吸着手段(図示せず)が連続しており、この吸着手段が駆動することでその下端開口部にねじNを吸引保持可能に構成されている。
【0016】
前記吸着パイプ33は、その軸方向に前記ドライバビット31の外径より若干大きくねじNの頭部N1外径より小さい穴径を有する通気穴331が貫通しているとともにこの通気穴331の下端には頭部保持穴332が連続している。この頭部保持穴332は、その穴径がねじNの頭部N1の外径より若干大きく形成されているとともに、その下端開口部には、下方に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部333が形成されている。なお、前記ドライバビット31は、その下端が前記通気穴331内に位置するよう構成されているとともに、前記クッションばねは、吸着パイプ33の下端からドライバビット31が突出可能な寸法撓むことができるように設定されている。
【0017】
前記位置制御機構40は、前後方向に直動可能な直動アーム41と、この直動アーム41に対して回転自在に装着された旋回アーム42と、この旋回アーム42の先端に取り付けられる昇降駆動部43とから構成されており、昇降駆動部43は、前記上下方向に延びるボールねじ44と、このボールねじ44を回転させる昇降モータ45と、ボールねじ44と螺合する駆動ナット46とを備えており、この駆動ナット46には、前記ツールユニット30が連結されている。このように構成された位置制御機構40の駆動により、ツールユニット30は、
図1の二点鎖線に示すように昇降可能かつ、
図2に示す可動域301内を移動可能となる。なお、前記供給ユニット20は少なくともねじNの待機位置が前記可動域301内に位置するように配置されている。また、位置制御機構40は、前記吸着パイプ33によりねじNを吸着する際、吸着パイプ33を
図8に示すような所定の吸着高さまで下降させるように構成されている。この吸着高さは、吸着パイプ33の下端が前記供給ユニット20の挿通突起272の上面と挿通突起272の周辺部分274(以下、下段部274という)との間に位置し、なおかつ前記通気穴331と頭部保持穴332との境界部分とねじNの座部N3、並びに、ドライバビット31の下端とねじNの頭部N1とが当接しない高さに設定されている。
【0018】
次に上記のように構成された供給ユニット20の作用を説明する。
駆動信号が入力されると制御部50は、前記バイブレータに駆動させるとともに、
図1に示すように前記シリンダ28のピストンロッドを収縮させる。これにより、前記供給レール21が振動し、供給レール21上に吊り下げ支持されたねじNが前方に振動搬送されるとともに、吊下部材27の吊下溝271が供給レール21の終端部に連続する。このため、先頭のねじNが供給レール21の終端部から吊下溝271に受け渡される。吊下溝271にねじNが受け渡されると、制御部50は、前記シリンダ28のピストンロッドを伸張させ、前記吊下部材27を前記待機位置まで移動させる。この時、前述のように挿通突起272の軸方向の長さ寸法がねじNの脚部N2の長さ寸法より短寸に設定されているため、ねじNは、その脚部N2が常時吊下溝271と、その後方側に位置する切欠溝232の溝壁とによって保持される。このため、待機位置までの移動中にねじNが吊下溝271から脱落すること等がない。
【0019】
その後、吊下部材27が待機位置に到達し、吊下溝271が吸気穴233に連続すると、
図3に示すように当該下溝271に吊り下げ支持されたねじNの頭部N1が前記検出センサ26の検出光を遮断する。検出センサ26の検出光が遮断されると、制御部50は、前記吸気手段292を駆動させ、吸気穴233および吸気穴233に連続する吊下溝271内の空気を吸気する。これにより、ねじNの座面と吊下部材27の上面との隙間等から空気が吊下溝271内に流入し、この流入した空気が吊下溝271内を勢いよく通過する。この結果、ねじNの頭部N1および脚部N2の表面に付着していた切り粉や埃等の付着物がその表面から除去される。このねじNの表面から除去された付着物は、空気に乗って洗浄部29に回収される。
【0020】
このように供給ユニット20が吸気手段292によってねじNに付着した切り粉等の付着物を吸引するように構成されているため、ねじNから除去された付着物が周辺に飛散することがなく、もちろん前段あるいは次段のねじN等に付着すること等も防止される。また、洗浄部29の駆動時、前記吊下溝271の後方側が切欠溝232の溝壁によって閉鎖されているため、吸気手段292による吸気量が比較的少なくても吊下溝271内では付着物を除去するのに十分な流速となる。このため、比較的駆動に必要なエネルギーが少なくて良く、効率の良い駆動が可能となる。なお、ねじNの表面から回収された付着物は吸気ホース291の途中に設けられたフィルターにより、空気中から除去される。このため、付着物が混入していない空気を排出することができる。
【0021】
また、上述のように検出センサ26の検出光が遮断されると、制御部50は、前記位置制御機構40に駆動指令を出力する。これにより、前記位置制御機構40は、直動アーム41および旋回アーム42を駆動させて前記吸着パイプ33を前記吊下溝271の上方に水平移動させる。吸着パイプ33が吊下溝271の上方に達すると、制御部50は、ボールねじ44に駆動指令を出力して吸着パイプ33をねじNに向かい下降させる。
【0022】
上述のように吸着パイプ33が下降する際、当該吸着パイプ33の吸着高さが前述のように当該吸着パイプ33の下端が前記供給ユニット20の挿通突起272の上面より下方となるように設定されているため、吸着高さに達した吸着パイプ33は、
図8に示すように挿通突起272および合致突起234を被覆する。このように吸着パイプ33が挿通突起272を被覆することにより、吊下溝271に吊下支持されているねじNも同様に吸着パイプ33の頭部保持穴332内に収容される。このため、
図9に示すようにねじNの頭部N1が吸着パイプ33と吊下部材27とに挟まれること等なく、確実にねじNの頭部N1を吸着パイプ33内に収容できる。また、吸着パイプ33が前述の吸着高さまで下降することおよび前記吸着パイプ33の下端に前記拡径部333が形成されていることにより、ねじNと吸着パイプ33とが若干位置ずれしていても、ねじNは、下降する吸着パイプ33の拡径部333の傾斜面に押される。これにより、ねじNは、吸着パイプ33と合致するように中心方向に移動するため、確実に頭部保持穴332内に収容される。また、ねじNは、挿通突起272および合致突起234の両方に支持されることで、傾斜等なく吸着パイプ33に吸着保持されることとなる。さらに、ねじNは、前記吸気手段292に吸引されており、予期せぬ衝撃等が発生した際もねじNが外部に弾き出されることが防止されるため、確実に吸着パイプ33に吸着される。しかも、吸着パイプ33の吸着高さが前述のように吸着パイプ33の下端と挿通突起272周辺の下段部274および、通気穴331と頭部保持穴332との境界部分とねじN、ドライバビット31とねじNが衝突しないように構成されているため、当該衝突により、吸着パイプ33やねじN等が破損することが防止される。
【0023】
上述のように吸着パイプ33が所定の吸着高さに達すると、制御部50は前記吸気手段292を停止して前記吸着手段を作動させる。これにより、吸着パイプ33内に空気が吸引されると、吸着パイプ33内にねじNが吸引される。この時、吸着パイプ33に頭部保持穴332が形成されていることおよびドライバビット31の下端が通気穴331内に収容されていることにより、吸着されたねじNは、座部N3を頭部保持穴332と通気穴331との境界部分に当接させることが可能となる。これにより、ねじNは、安定した姿勢で吸着保持される。また、前記挿通突起272の外径がねじNの頭部N1の外径より小径に構成されており、吸着パイプ33の頭部保持穴332の穴径をねじNの頭部N1の外径より若干大径に設定できsるため、頭部保持穴332内でねじNが位置ずれし難い。結果、ねじNがワークの下穴に挿入し易くなるとともにねじ締め作業時、ドライバビット31とねじNとが嵌合し易くなる。このように吸着パイプ33にねじが吸着保持されると、制御部50は、前記ボールねじ44を逆駆動させて吸着パイプ33を上昇させて、これに吸着保持されたねじNを吊下溝271から抜去する。その後、制御部50は、直動アーム41および旋回アーム42を駆動させて吸着パイプ33およびねじNを所定の締め付け位置に搬送してねじ締めを行う。また、締結装置によりねじNが吊下溝271から抜去され、前記検出センサ26間の検出光が通過可能になると、制御部50は、前記シリンダ28のピストンロッドを収縮させる。これにより、前記吊下溝271が供給レール21に再度連続し、次段のねじNを受け取り可能となる。
【0024】
なお、本発明に係る締結機10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ツールユニット30および位置制御機構40は、吸着パイプ33を備え、これを移動させる構成であれば、多関節のロボットアームや、直交ロボット等、その他構成であっても何ら問題ない。また、供給ユニット20の吊下部材27を往復移動させるシリンダ28は、その他、往復直進駆動源等であっても何ら問題ない。さらに、フレームは、前記切欠溝232の側壁24と逆側の開口部に吊下部材27と当接してこれを停止させるショックアブソーバー(図示せず)等を設置してもよい。このショックアブソーバー(図示せず)に当接して停止することで、前記吊下部材27は、より正確に待機位置に停止することが可能となる。しかも、前記下段部274は、前記吸着パイプ33が挿通突起272を被覆可能であればどのような形状をしていてもよい。同様に封鎖凸部273も供給レール21の前方を封鎖可能であればその他形状であっても何ら問題ない。
【0025】
また、締結部品も頭部N1と脚部N2を有するものであれば、ねじNに限定されず、かしめリベットや植込みボルト等その他部品であっても何ら問題なく、頭部N1に設けられた座部N3の代わりに脚部N2に円板形状の座金(図示せず)が装着されたものであっても良い。なお、締結部品が座金を有する場合、前記挿通突起272の外径は、座金の外径より小さく、吸着パイプ33の頭部保持穴332が座金の外径より大きく構成されていることが好ましい。これにより、座金付きの締結部材であっても前述のねじNと同様に取り出し可能となる。さらに締結部品を変更する場合、前記ドライバビット31も締結部品に適する締結工具に変更されることが好ましい。同様に挿通突起272および合致突起234の形状も締結部品および吸着パイプ33の形状に合わせて適宜変更されることが好ましく、平面視非円形形状等その他形状であっても何ら問題ない。
【符号の説明】
【0026】
10 … 締結機
20 … 供給ユニット
21 … 搬送手段
23 … フレーム
232… 切欠溝
234… 合致突起
27 … 吊下部材
271… 吊下溝
272… 挿通突起
273… 封鎖凸部
30 … ツールユニット
33 … 吸着パイプ
333… 拡径部
40 … 位置制御機構
50 … 制御部
N … 締結部品
N1… 頭部
N2… 脚部
N3… 座部