(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149622
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付き袋体
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20231005BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058280
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】田上 直斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
【Fターム(参考)】
3B098AA03
3B098AA10
3B098BA01
3B098BB02
3E064AA05
3E064BA27
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA39
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC18
3E064EA04
3E064EA09
3E064FA03
3E064HN13
3E064HN18
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】良好な成形性を有し、熱による収縮及び変形が起こりにくい嵌合具、及び前記嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供する。
【解決手段】帯状の第1基材11の表面11aに長手方向に沿って雄側嵌合部12が設けられた雄側嵌合部材10と、帯状の第2基材21の表面21aに長手方向に沿って雌側嵌合部22が設けられた雌側嵌合部材20とを備え、雄側嵌合部12と雌側嵌合部22が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果が、(1)応力増加開始点(A)の温度T
Aが、70℃以上140℃以下、(2)最大応力点(B)の荷重L
Bが、1mN以上200mN以下、(3)(A)(B)間の傾きの数値が、0.1以上10以下である、嵌合具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1基材の表面に長手方向に沿って雄側嵌合部が設けられた雄側嵌合部材と、帯状の第2基材の表面に長手方向に沿って雌側嵌合部が設けられた雌側嵌合部材とを備え、前記雄側嵌合部と前記雌側嵌合部が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、
熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果が、以下の(1)~(3)を満たす、嵌合具。
(1)応力増加開始点(A)の温度TAが、70℃以上140℃以下である。
(2)最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上200mN以下である。
(3)(A)(B)間の傾きの数値が、0.1以上10以下である。
【請求項2】
前記(2)において、最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上20mN以下であり、
前記(3)において、(A)(B)間の傾きの数値が0.1以上5以下である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項3】
前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、メイン層と、前記メイン層の前記雄側嵌合部及び前記雌側嵌合部とは反対側に設けられたシール層と、を備える、請求項1又は2に記載の嵌合具。
【請求項4】
前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、前記メイン層と前記シール層との間に設けられた中間層を備える、請求項3に記載の嵌合具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記嵌合具が前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具及び嵌合具付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に封じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付き袋体が広く用いられている。
嵌合具は繰り返し開閉しても嵌合部が壊れないことが重要であり、そのためには生産時、金型から樹脂が押し出される際に、嵌合部が良好に成形される必要がある。良好な成形性を付与するため、嵌合具の材料として弾性率の高いポリプロピレン系樹脂(PP)が広く使用されている。しかし、ポリプロピレン系樹脂の溶着温度は高温であり、それにより外観上シール皺が発生し、製品品質を低下させるという課題がある。さらに、嵌合具の材料には、密閉性を付与するため、ある程度の柔軟性も求められる。
【0003】
これらの課題を解決するために、従来、嵌合部の材料として、溶着温度が低く、柔軟性を有するような特定の配合の樹脂が用いられてきた。
特許文献1には、プロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンとを含むランダム共重合体を用いる嵌合具が開示されている。特許文献1に開示された嵌合部によれば、PPフィルムからなる袋体に使用する場合、比較的良好な柔軟性および溶着温度を下げる効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良好な成形性を示す嵌合具は、硬度が必要であるため、高い融点の樹脂を用いる。特許文献1では、シール温度が180℃以上と比較的高温であり、嵌合具を袋体に熱溶着する際に袋体が熱収縮を起こし、外観上シワが入りやすいという課題があった。
一方、嵌合具に単に融点が低い樹脂を用いる場合には、嵌合具自体の熱収縮が起こり、嵌合具が変形しやすいおそれがある。
また、良好な成形性を有し、熱による収縮及び変形が起こりにくい嵌合具を提供する際、複数の樹脂を配合する場合の目安となる物性値が望まれているのが実情である。
【0006】
本発明は、良好な成形性を有し、熱による収縮及び変形が起こりにくい嵌合具、及び前記嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
[1] 帯状の第1基材の表面に長手方向に沿って雄側嵌合部が設けられた雄側嵌合部材と、帯状の第2基材の表面に長手方向に沿って雌側嵌合部が設けられた雌側嵌合部材とを備え、前記雄側嵌合部と前記雌側嵌合部が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、
熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果が、以下の(1)~(3)を満たす、嵌合具。
(1)応力増加開始点(A)の温度TAが、70℃以上140℃以下である。
(2)最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上200mN以下である。
(3)(A)(B)間の傾きの数値が、0.1以上10以下である。
[2] 前記(2)において、最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上20mN以下であり、
前記(3)において、(A)(B)間の傾きの数値が0.1以上5以下である、[1]に記載の嵌合具。
[3] 前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、メイン層と、前記メイン層の前記雄側嵌合部及び前記雌側嵌合部とは反対側に設けられたシール層と、を備える、[1]又は[2]に記載の嵌合具。
[4] 前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、前記メイン層と前記シール層との間に設けられた中間層を備える、[3]に記載の嵌合具。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記嵌合具が前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な成形性を有し、熱による収縮及び変形が起こりにくい嵌合具、及び前記嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の嵌合具を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の嵌合具における、TMA装置を用いた熱収縮応力測定の結果の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の嵌合具付き袋体100を示す概略正面図である。
【
図5】
図5は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[嵌合具]
以下、本発明の嵌合具について、一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、実施形態の一例の嵌合具1は、帯状の第1基材11の表面11aに長手方向に沿って雄側嵌合部12が設けられた雄側嵌合部材10と、帯状の第2基材21の表面21aに長手方向に沿って雌側嵌合部22が設けられた雌側嵌合部材20とを備えている。
【0012】
図1及び
図2に示す一例の雄側嵌合部12は、第1基材11の第2基材21との対向面である表面11aから立ち上がる幹部12aと、幹部12aの先端部に設けられ、幹部12aよりも大きい断面略半円形状の頭部12bとを備えている。雌側嵌合部22は、第2基材21の第1基材11との対向面である表面21aから断面円弧状に立ち上がる一対のアーム部22a,22bを備え、それらアーム部22a,22bの内側に凹部22cが形成されている。
雄側嵌合部12と雌側嵌合部22は、雄側嵌合部12の頭部12bが雌側嵌合部22の凹部22cに嵌まることにより、着脱自在に嵌合する。なお、雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22の態様は、着脱自在に嵌合するものであればよく、
図1及び
図2の態様には限定されない。
【0013】
図2に示すように、第1基材11は、メイン層13と、メイン層13の雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層14と、メイン層13とシール層14の間に設けられた中間層15と、を備えている。
【0014】
メイン層13を形成する材料としては、特に限定されず、公知の嵌合具の基材に使用されるものが使用できる。例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)等を例示できる。なかでも、剛性と柔軟性のバランスの点から、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にLDPE及びLLDPEの少なくとも1種類を含むことがより好ましい。メイン層を形成する材料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
シール層14を形成する材料としては、特に限定されず、例えばLLDPE、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエステル樹脂を例示できる。なかでも、柔軟性及び低温シール性の点から、LLDPEが好ましい。シール層を形成する材料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
中間層15を形成する材料としては、特に限定されず、公知の嵌合具の基材に使用されるものが使用できる。例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)等を例示できる。なかでも、嵌合具が充分な剛性を有するため、ポリプロピレン(PP)や、密度が930kg/m3以上の樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましい。
【0017】
メイン層13、シール層14及び中間層15には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
【0018】
第1基材11の幅W1は、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。第1基材11の幅W1は、柔軟性に優れ、かつ取り扱いやすく、流通及び保管時の嵌合具の変形が起こりづらいことから60mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましい。第1基材11の幅W1の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば3mm以上40mm以下が好ましい。
【0019】
第1基材11の厚さは、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、0.1mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましい。第1基材11の厚さは、柔軟性に優れ、取り扱いやすいことから、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。第1基材11の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.1mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0020】
メイン層13の厚さは、充分な剛性を有することから、0.01mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましい。メイン層13の厚さは、柔軟性に優れ取り扱いやすいことから、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。メイン層13の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.01mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0021】
シール層14の厚さは、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましい。シール層14の厚さは、柔軟性に優れ取り扱いやすいことから、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。シール層14の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.02mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0022】
中間層15の厚さは、充分な剛性を有することから、0.02mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。中間層15の厚さは、良好なポイントシール性(装体のサイドシール部を形成する際の嵌合具を潰すポイントシール工程において、潰した部分にピンホールが発生することを抑制する)を有することから、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。中間層15の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。
【0023】
第2基材21は、第1基材11と同様の構成であり、メイン層23と、メイン層23の雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層24と、メイン層23とシール層24の間に設けられた中間層25と、を備えている。
【0024】
メイン層23、シール層24及び中間層25を形成する材料としては、特に限定されず、メイン層13、シール層14及び中間層15を形成する材料として例示したものと同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。
【0025】
メイン層23、シール層24及び中間層25には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
メイン層13、シール層14及び中間層15を形成する材料と、メイン層23、シール層24及び中間層25を形成する材料とは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
第2基材21の好ましい幅W2は、第1基材11の好ましい幅W1と同様である。第1基材11の幅W1と第2基材21の幅W2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
第2基材21、メイン層23、シール層24及び中間層25の好ましい厚さは、第1基材11、メイン層13、シール層14及び中間層15の好ましい厚さと同様である。第1基材11、メイン層13、シール層14及び中間層15の厚さと、第2基材21、メイン層23、シール層24及び中間層25の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
嵌合具全体におけるメイン層、シール層及び中間層の質量割合は、嵌合具の総質量に対して、メイン層が10質量%以上95質量%以下、シール層が5質量%以上30質量%以下、中間層が60質量%以下(合計が100質量%)であることが好ましく、メイン層が50質量%以上93質量%以下、シール層が8質量%以上20質量%以下、中間層が10質量%以上45質量%以下(合計が100質量%)であることがより好ましい。メイン層、シール層及び中間層の質量割合が前記範囲内であれば、良好な成形性を有し、熱による収縮及び変形を抑制することが容易になる。
【0028】
嵌合具1は、
図3に示すように、熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果が、以下の(1)~(3)を満たす。なお、
図3中、X軸は、温度(℃)を示し、第1Y軸は熱機械分析値(μm)を示し、第2Y軸は荷重(mN)を示す。
(1)応力増加開始点(A)の温度T
Aが、70℃以上140℃以下である。
(2)最大応力点(B)の荷重L
Bが、1mN以上200mN以下である。
(3)(A)(B)間の傾きの数値が、0.1以上10以下である。
【0029】
(熱機械分析装置:TMA装置)
測定に使用するTMA装置は、特に限定されず、市販の装置を用いることができる。市販のTMA装置としては、例えば、日立ハイテクサイエンス製TMA装置(製品名:TMA/SS 7100)が挙げられる。
【0030】
(試料)
TMA装置を用いた熱収縮応力測定に用いる試料は、嵌合具の第1基材(第1嵌合部を含まない帯状基部)を、嵌合部に沿った方向を長手方向として切断し(長さ:30mm、幅:4mm、厚み:0.15mm)、治具に設定した時のサンプル長が20mmになるようにした。
【0031】
(測定条件)
TMA装置を用いた熱収縮応力測定は、以下の測定条件を用いる。
・測定モード:引張モード
・昇温速度:3(℃/min)
・温度範囲:25~190(℃)
なお、温度の上限は、配合する樹脂の融点のうち、最も高い融点よりも15℃高い温度まで測定した。
・使用雰囲気:高純度窒素(N2)
【0032】
応力増加開始点(A)は、
図3に示すように、TMA曲線の高温側および低温側のそれぞれの外挿線(直線部分の延長線)の交点である。また、応力増加開始点(A)の温度T
Aは、上記交点における温度(℃)である。
応力増加開始点(A)の温度T
Aは、70℃以上であり、100℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましい。応力増加開始点(A)の温度T
Aが70℃以上であると、耐熱性が良く、熱による収縮及び変形が起こりにくい。また、製袋時、外観上のシワが発生しにくい。
一方、応力増加開始点(A)の温度T
Aは、140℃以下であり、138℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。応力増加開始点(A)の温度T
Aが140℃以下であると、柔軟性に優れ、嵌合部の密閉度やポイントシール性に優れる。また、第1基材及び第2基材が単層の場合、低い温度でのヒートシールが可能となる。
応力増加開始点(A)の温度T
Aの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば70℃以上140℃以下が好ましく、100℃以上135℃以下がより好ましい。
【0033】
最大応力点(B)は、
図3に示すように、TMA曲線の最大値である。また、最大応力点(B)の荷重L
Bは、上記最大値における荷重(mN)である。
最大応力点(B)の荷重L
Bは、1mN以上であり、1.2mN以上が好ましく、1.3mN以上がより好ましい。最大応力点(B)の荷重L
Bが1mN以上であると、柔軟性に優れ、嵌合部の密閉度やポイントシール性に優れる。
一方、最大応力点(B)の荷重L
Bは、200mN以下であり、130mN以下が好ましく、20mN以下がより好ましい。最大応力点(B)の荷重L
Bが200mN以下であると、熱により形状が変化しにくい。
最大応力点(B)の荷重L
Bの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1mN以上200mN以下が好ましく、1mN以上20mN以下がより好ましい。
【0034】
上記交点(A)と上記最大値(B)間との傾きは、0.1以上であり、0.8以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。上記傾きの数値が、0.1上であると、柔軟性に優れ、嵌合部の密閉度やポイントシール性に優れる。
一方、上記交点(A)と上記最大値(B)間との傾きは、10以下であり、8以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。上記傾きの数値が、10以下であると、耐熱性が良く、熱による収縮及び変形が起こりにくい。また、製袋時、外観上のシワが発生しにくい。
上記交点(A)と上記最大値(B)間との傾きの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.1以上10以下が好ましく、0.8mN以上5mN以下がより好ましい。
【0035】
嵌合具1において、融点が高い樹脂を用い、その他樹脂との組成比を調整し、その層を厚く調整することで、応力増加開始点(A)の温度TAを増加させることができる。一方、融点の低い樹脂を用い、その他の樹脂との組成比を調整し、その層を厚く調整することで、応力増加開始点(A)の温度TAを減少させることができる。
また、嵌合具1において、荷重LBは樹脂の種類による影響が大きい。そのため、厚さ、樹脂種類、樹脂組成比を調整することで、最大応力点(B)の荷重LBを調整することができる。
さらに、嵌合具1において、融点や剛性が高い樹脂を用い、その他樹脂との組成比を調整し、その層を厚く調整することで、上記交点(A)と上記最大値(B)間との傾きを減少させることができる。一方、融点や剛性の低い樹脂を用い、その他の樹脂との組成比を調整し、その層を厚くに調整することで、上記交点(A)と上記最大値(B)間との傾きを増加させることができる。
【0036】
(製造方法)
嵌合具1の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を利用できる。
例えば、メイン層、シール層、中間層を形成するための樹脂材料を溶融混練等によってそれぞれ調製し、特定の領域に中間層を有する多層構成の雄側嵌合部材又は雌側嵌合部材を形成するための複合異形ダイを備えた押出機を用いて共押出しする方法を例示できる。
【0037】
材料の混合方法としては、スーパーミキサ、ヘンシェルミキサ等で乾式混合する方法が挙げられる。
溶融混練方法としては、原料を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機に供給して溶融混練する方法が挙げられる。
成形方法としては、押出成形法、射出成形法、インフレーション成形法、真空成形法等が挙げられる。
【0038】
[嵌合具付き袋体]
本発明の嵌合具付き袋体は、本発明の嵌合具を備える嵌合具付き袋体である。本発明の嵌合具付き袋体は、本発明の嵌合具を備える以外は、公知の態様を採用できる。
以下、実施形態の一例の嵌合具付き袋体について説明する。
【0039】
図4に示す例の嵌合具付き袋体100(以下、単に「袋体100」ともいう。)は、内容物を収容する袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に取り付けられた嵌合具1とを具備している。
【0040】
袋本体50は、正面からの視野において矩形を呈する。嵌合具1は、袋本体50の上部側の内面において、袋本体50の短手方向に伸びて設けられている。なお、袋本体50の形状は矩形には限定されない。
【0041】
袋本体50は、不図示の内容物を封入した状態で密封されている。袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54を重ね合わせ、四方の周縁部56を全てヒートシールすることで得られる。周縁部56においては、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54と共に、嵌合具1の両端がヒートシールされている。
【0042】
第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具1を溶着できるものであればよく、内面側からシーラント層と基材層を少なくとも有する積層フィルムが好ましい。
【0043】
積層フィルムが有する基材層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポ英エチレン、ポリエステル、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
積層フィルムが有するシーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
積層フィルムには、バリア層等の機能層を設けてもよい。
また、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、シーラント層のみからなる単層フィルムであってもよい。
【0044】
袋本体50は、嵌合具1よりも上部の側に、嵌合具1に沿って切断補助線58が設けられている。
切断補助線58は、袋本体50の切断を補助するための加工が線状に施された部分である。切断補助線58としては、例えば、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54における切断補助線58の部分に設けられた弱化線が挙げられる。弱化線は、フィルム材に周囲と比べて薄肉化した部分を設けることで形成することができる。その他、弱化線は、ミシン目や、列状に形成された細孔によっても形成することができる。
また、切断補助線58は、弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
【0045】
周縁部56における切断補助線58の端部には、ノッチ60が形成されている。ノッチ60の形状は、特に限定されず、三角状又は半円形状の切り欠きを採用することができる。また、ノッチ60は、周縁部56に設けられた切込みであってもよい。
【0046】
図5は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。袋体100は、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することにより、上部に開口部62を形成して開封することができる。
袋体100に形成した開口部62は、嵌合具1の雄側嵌合部材10と雌側嵌合部材20とを着脱することで、繰り返し開閉できる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0049】
[原料]
本実施例で使用した原料を、以下の表1に示す。また、MFRは、JIS K 7210-1に準拠して、温度:190℃、荷重:2.16kgの条件で測定される値である。
【0050】
【0051】
[評価方法]
(熱機械分析装置(TMA装置):熱収縮応力測定)
測定に使用するTMA装置として、日立ハイテクサイエンス製TMA装置(製品名:TMA/SS 7100)を用いた。
また、TMA装置を用いた熱収縮応力測定に用いる試料は、各例で作製した嵌合具の第1基材(第1嵌合部を含まない帯状基部)を嵌合部に沿った方向を長手方向として切断し(長さ:30mm、幅:4mm、厚み:0.15mm)、治具に設定した時のサンプル長が20mmになるようにした。
TMA測定は、以下の測定条件を用いた。
・測定モード:引張モード
・昇温速度:3(℃/min)
・温度範囲:25~190(℃)
温度の上限は、配合する樹脂の融点のうち、最も高い融点よりも15℃高い温度まで測定した。
・使用雰囲気:高純度窒素(N2)
【0052】
(成形性)
各例で作製した嵌合具の形状を目視で確認し、製袋時の嵌合具の成形性について、以下の評価基準に従って評価した。
〇:嵌合具の形状が安定して成形された。
×:嵌合具の形状が不安定、または、基材部の厚さにムラが生じた。
【0053】
(耐熱性)
各例で作製した嵌合具の形状を目視で確認し、製袋時の嵌合具の耐熱性(熱による収縮及び変形)について、以下の評価基準に従って評価した。
〇:熱により変形しなかった。
×:熱により変形した。
【0054】
[実施例1]
図1及び
図2に例示した嵌合具1から中間層を除く2層構成になっている雄側嵌合部材及び雌側嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。
メイン層を形成するための樹脂材料X-1として、PP1を口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度190℃の条件で溶融混錬した。
シール層を形成するための樹脂材料Y-1として、PP3の40質量部、及びLLDPE5の60質量部を、口径30mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度170℃の条件で溶融混錬した。
樹脂材料X-1、及びY-1を複合異形ダイに導き、押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、テープ幅が13mm、第1基材及び第2基材のそれぞれの総厚が0.15mmの嵌合具を得た。
メイン層及びシール層の質量比は90:10とした。
【0055】
[実施例2]
図1及び
図2に例示した嵌合具1と同じ3層構成の雄側嵌合部材及び雌側嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。
メイン層を形成するための樹脂材料X-1として、LDPE1の40質量部、LLDPE1の40質量部、及びLLDPE2の20質量部を、口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度170℃で溶融混錬した。
シール層を形成するための樹脂材料Y-2として、LLDPE6を、口径30mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度170℃で溶融混錬した。
中間層を形成するための樹脂材料Z-2としてHDPE1を、口径30mm、L/Dが30の押出機を用い、成形温度190℃で溶融混錬した。
樹脂材料X-1、Y-1、及びZ-1を複合異形ダイに導き、押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、テープ幅が13mm、第1基材及び第2基材のそれぞれの総厚が0.15mmの嵌合具を得た。
メイン層、中間層及びシール層の質量比は60:30:10とした。
【0056】
[比較例1]
メイン層を形成するための樹脂材料Xと、シール層を形成するための樹脂材料Yを表1に示すとおりに変更し、中間層を設けず、メイン層とシール層の質量比は90:10、メイン層の成形温度を170℃とした以外は、実施例1と同様にして嵌合具を作製した。
【0057】
[比較例2~4]
メイン層を形成するための樹脂材料Xを表1に示すとおりに変更し、中間層及びシール層を設けず、メイン層、中間層及びシール層の質量比を100:0:0とし、配合する樹脂の融点により成形温度を150~200℃(配合する樹脂の融点より40~50℃高い温度)にした以外は、実施例1と同様にして嵌合具を作製した。
【0058】
各例のメイン層、中間層、シール層の組成、及び、評価結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
表1に示すように、熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果、(1)応力増加開始点(A)の温度TAが、70℃以上140℃以下であり、(2)最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上200mN以下であり、(3)(A)(B)間の傾きの数値が、0.1以上10以下である実施例1及び実施例2の嵌合具は、成形性に優れており、耐熱性(熱による収縮及び変形が起こりにくい)に優れていた。
【0061】
一方、TMA装置を用いた熱収縮応力測定の結果、(1)応力増加開始点(A)の温度TAが70℃未満であり、(2)最大応力点(B)の荷重LBが200mN超である、比較例1及び比較例2の嵌合具は、製袋時に嵌合具の形状が不安定、または、基材部の厚さにムラが生じ、熱により変形が生じた。
また、比較例3の嵌合具は、剛性が大きすぎたため、安定した成形ができなかった。
さらに、比較例4の嵌合具は、熱機械分析装置(TMA装置)を用いた熱収縮応力測定の結果、(1)応力増加開始点(A)の温度TAが、70℃以上140℃以下であり、(2)最大応力点(B)の荷重LBが、1mN以上200mN以下であるものの、(3)(A)(B)間の傾きの数値が10を超えており、製袋時に嵌合具の形状が不安定、または、基材部の厚さにムラが生じた。
1…嵌合具、10…雄側嵌合部材、11…第1基材、11a…表面、12…雄側嵌合部、13…メイン層、14…シール層、15…中間層、20…雌側嵌合部材、21…第2基材、21a…表面、22…雌側嵌合部、23…メイン層、24…シール層、25…中間層、50…袋本体、100…嵌合具付き袋体。