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特開2023-149623熱硬化性樹脂組成物および半導体装置
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  • 特開-熱硬化性樹脂組成物および半導体装置 図1
  • 特開-熱硬化性樹脂組成物および半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149623
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L23/30 B
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058281
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 咲子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊誠
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BC121
4J002BK001
4J002CC021
4J002CC051
4J002CC061
4J002CC081
4J002CC121
4J002CD001
4J002CD032
4J002CD052
4J002CD062
4J002CD072
4J002CD192
4J002CE001
4J002CL001
4J002CM021
4J002CM041
4J002EW126
4J002EW146
4J002EX037
4J002FD142
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002HA03
4M109AA02
4M109BA04
4M109CA21
4M109EA03
4M109EA07
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ボンディングパッドとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させる。
【解決手段】基板と、基板上に搭載され接続パッド8を有する半導体チップ1と、接続パッドに接続され、半導体チップと基板とを接続するボンディングワイヤ7と、半導体チップ、基板の半導体チップの搭載面及びボンディングワイヤを封止する樹脂封止体4と、半導体チップとボンディングワイヤとの接続部分を被覆する電子回路保護材5と、を備える半導体装置において、ボンディングワイヤと接続パッドとの接続部周辺を被覆するために用いる電子回路保護材用の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び溶剤を含む。硬化促進剤は、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、テトラ置換ホスホニウム化合物又はホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選択される少なくとも1つである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するために用いる電子回路保護用の熱硬化性樹脂組成物であって、
当該熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および溶剤を含み、
前記硬化促進剤は、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、テトラ置換ホスホニウム化合物、またはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選択される少なくとも1つである、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物、フェノール化合物とジメタノール化合物との反応物、エポキシ樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤が、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿酸、乳酸エチル、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチルおよびメチル-3-メトキシプロピオネートから選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、10質量%以上である、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いて製造される半導体装置に関する。より詳細には、本発明は、半導体チップの電極パッドがボンディングワイヤで電気的に接合され、半導体チップとボンディングワイヤとが熱硬化性樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体装置において、電極パッドとボンディングワイヤとの接合部を保護するために用いる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、通常、半導体チップがボンディングワイヤとともに樹脂で封止(パッケージング)された状態で流通している。パッケージ内において、半導体チップの電極パッドと、樹脂パッケージから一部が露出する電極リードとが、ボンディングワイヤにより電気的に接続されている。したがって、実装基板の配線に対して電極リードを外部端子として接続することにより、半導体チップと実装基板との電気的な接続が達成される。
【0003】
電極パッドと電極リードとを結ぶボンディングワイヤとして、従来は主に金ワイヤが用いられているが、高価な金の使用を減らすべく、近年では、金ワイヤよりも安価な銅ワイヤの使用が検討されている。近年主流のアルミニウム製の電極パッドに接続するワイヤとして銅ワイヤを用いた場合には、その浸入水分が電極パッドとボンディングワイヤとの接合界面に入り込むと、当該接合界面付近においてアルミニウムの腐食が進行しやすくなる。そのため、パッド-ワイヤ間において、電気的オープンが生じるおそれがある。また封止樹脂中の塩素元素と、電極パッドとボンディングワイヤとの接合界面に形成された金属間化合物が、腐食反応を起こすことにより、接合部の電気抵抗の増加や接合強度の低下を引き起こす場合があった。
【0004】
パッド-ワイヤ間の接続信頼性を向上するための技術として、例えば、特許文献1では、ボンディングワイヤの合金化添加元素を適正化することで、ボンディングワイヤと電極との接合部の長期信頼性を向上させる方法が記載されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1では、ボンディングワイヤと電極との間の十分な接続信頼性を得るのは困難であった。本発明者らは、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの間の接続信頼性を改善するために、これらの接合部をワイヤコート材で被覆する技術を検討した。ワイヤコート材で被覆する場合、ワイヤコート材として用いる樹脂組成物の組成を最適化して、良好な塗布性を維持しつつ、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの間の接続信頼性を向上させることが重要な技術的課題であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-133362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ボンディングパッドとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させることができる、ボンディングワイヤの少なくとも一部と接合界面とを被覆するための熱硬化性樹脂組成物、およびこの熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる、電気的信頼性に優れた半導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、基板と、前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を樹脂材料で被覆することにより、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するために用いる電子回路保護材用の熱硬化性樹脂組成物であって、
当該熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および溶剤を含み、
前記硬化促進剤は、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、テトラ置換ホスホニウム化合物、およびホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選択される少なくとも1つである、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0010】
また本発明によれば、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの接続部周辺に対する密着性に優れ、よって半導体チップとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上することができる、電子部品保護材用の熱硬化性樹脂組成物、ならびにこれを用いて製造された信頼性に優れる半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る半導体装置の断面模式図である。
図2】本実施形態に係る図1に示す半導体装置における、半導体チップとボンディングワイヤとの接合部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」のことを表す。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0014】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するために用いる電子回路保護材として用いるための熱硬化性樹脂組成物である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および溶剤を含み、硬化促進剤は、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、テトラ置換ホスホニウム化合物、およびホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選択される少なくとも1つである。
【0015】
また本実施形態に係る半導体装置は、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0016】
以下、本実施形態の電子回路保護材、および半導体装置について説明する。
【0017】
[半導体装置]
図1は、本実施形態に係る半導体装置10の断面図である。図1に示すように、半導体装置10は、半導体チップ1、回路基板2、接続パッド8、樹脂封止体(封止樹脂)4、外部電極端子6、ボンディングワイヤ7を備える。半導体装置10において、回路基板2上の接続パッド8上にダイアタッチ材9を介して半導体チップ1が固定されている。半導体チップ1の電極パッド(図示せず)と回路基板2との間はボンディングワイヤ7によって接続されている。回路基板2の半導体チップ1が搭載された面は、樹脂封止体4によって封止されている。回路基板2上の電極パッドは、回路基板2の非封止面側の外部電極端子6と内部で接合されている。
【0018】
(半導体チップ1)
半導体チップ1の種類は特に限定されず、あらゆる種類の半導体チップが用いられ得る。半導体チップ1は、半導体チップ1の裏面が接続パッド8の上面に接するように、ダイアタッチ層9を介して回路基板2上に搭載されている。半導体チップ1の上面において、ボンディングワイヤ7がワイヤボンディング法を用いて、接合層(ボンディングパッド)17を介して半導体チップ1に電気的に接続されており、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分が、電子回路保護材5により被覆されている。ここで、図2は、図1における半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分における拡大図を示している。図2に示すように、半導体チップ1は、その上面に、バリア層18、19と、接合層17とを備え、接合層17を介してボンディングワイヤ7の一端に電気的に接続されており、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分が、以下で詳述する本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物よりなる電子回路保護材5により被覆されている。
【0019】
この構成によれば、接合層17およびボンディングワイヤ7の一部が、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物よりなる電子回路保護材5により被覆されている。そのため、樹脂パッケージ内部に水分が侵入しても、その水分をこの電子回路保護材5により塞ぎ止めることができるため、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合界面(接合層17)が水分と接触して腐食することを防止することができる。また樹脂封止体4に含まれる水分や塩素イオンによる半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合界面(接合層17)の腐食を抑制することができる。さらに腐食が生じたとしてもその広がりを抑制することができる。また樹脂封止体4に含まれる酸素により、ボンディングワイヤ7や接合層17が酸化するのを防止することができる。その結果、パッド-ワイヤ間の接続信頼性を向上することができ、信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0020】
(回路基板2)
本実施形態の半導体装置10が備える回路基板2は、半導体チップ1の載置板として使用される。回路基板2は、その裏面側に外部電極端子6を備えている。また、回路基板2は、回路基板2の上面および内部に配線を備える。更に、回路基板2は、回路基板2の上面に配線を介して接続パッド8を備える。図2に示すように、接続パッド8の裏面の全体が配線に接続されている必要はなく、接続パッド8の一部が配線に接続されていればよいが、接続パッド8の裏面の全体が配線に接続されていてもよい。また、回路基板2は、接続パッド8を介して半導体チップ1に接続される。
【0021】
本実施形態にて用いられる回路基板2の種類は特に限定されず、ガラスエポキシ材、BT(ビスマレイミドトリアジン)、レジン、ポリイミド等の有機絶縁基材に銅配線をパターニングした回路基板等を用いることができる。
【0022】
(ボンディングワイヤ7)
ボンディングワイヤ7は、半導体チップ1と回路基板2とを電気的に接続するために用いられる。具体的には、ボンディングワイヤ7の一端が半導体チップ1の上面に接合層17を介して電気的に接続されており、ボンディングワイヤ7の他端が回路基板2に電気的に接続されている。この電気的な接続には、ワイヤボンディング法が用いられている。なお、本実施形態にて用いられるワイヤボンディングの種類は特に限定されず、ボールボンディング、ステッチボンディング等のあらゆる種類のワイヤボンディングが用いられ得る。
【0023】
本実施形態において用いられるボンディングワイヤ7は、アルミニウム、銀、および銅の何れかが導電材料として用いられていてもよい。ボンディングワイヤ7は、金属により予め被覆されていてもよい。
【0024】
(外部電極端子6)
外部電極端子6は、球形状をしており、回路基板2の裏面側(非封止面側)に設けられている。外部電極端子6の何れかが、配線(図示なし)に接続されており、これにより、半導体チップ1を駆動させるための電力が、外部電極端子6から配線およびボンディングワイヤ7を介して半導体チップ1に供給される。外部電極端子6としては、半田ボールを用いた球形状の端子、または、金を用いたランド形状の端子等が用いられる。
【0025】
(接続パッド8)
接続パッド8は、配線を介して回路基板2の上面に接続されている。一般に、半導体チップ1と回路基板2とがワイヤボンディング法を用いて電気的に接続される場合、半導体チップ1が積載されている接続パッド8は、半導体チップ1の周辺に配置されていることが望ましい。
【0026】
(樹脂封止体4)
樹脂封止体(封止樹脂)4は、回路基板2上の半導体チップ1を封止するために用いられており、図1に示すように、半導体チップ1、ボンディングワイヤ7、接続パッド8、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部、ボンディングワイヤ7と回路基板2との接合部、および配線を被覆する絶縁層(図示なし)の全体を覆うように、回路基板2上に形成される。樹脂封止体4の形成方法は、プレスおよび金型を用い、圧力を印加して樹脂成形するトランスファーモールド方法やコンプレッションモールド方法等が一般的であるが、本実施形態においては特にこれに限定されず、あらゆる種類の形成方法が用いられ得る。
【0027】
樹脂封止体4は、当該分野で一般的に用いられる材料より構成され、例えば、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、無機充填剤とを含む封止用樹脂組成物を用いて作製することができる。
【0028】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0029】
エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値としては特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂全体の配合割合が上記範囲内であると、粘度上昇によるワイヤ切れを引き起こす恐れが少ない。また、エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値としては特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対して、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値が上記範囲内であると、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0030】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合される硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤のいずれかを用いることができる。
【0031】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0032】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0033】
縮合型の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。高温保管特性や高温動作特性をさらに向上させるという観点では、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂が好ましく、トリフェノールメタン型フェノール樹脂が特に好ましい。
【0035】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0036】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合におけるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下又は樹脂硬化物の物性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0037】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合される無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができ、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、チタンホワイト、窒化珪素等が挙げられる。最も好適に使用されるものとしては、溶融シリカである。これらの無機充填材は、単独でも混合して用いても差し支えない。また、これらの無機充填材は、カップリング剤により表面処理されていてもかまわない。充填材の形状としては、流動性改善のために、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
【0038】
無機充填材の含有割合は特に限定されないが、無機充填材の含有割合の下限値は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、82質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがよりに好ましい。上記下限値を下回らない範囲であれば、低吸湿性、低熱膨張性が得られるため耐湿信頼性が不十分となる恐れが少ない。また、無機充填材の含有割合の上限値は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、92質量%以下であることが好ましく、89質量%以下であることがより好ましい。上記上限値を超えない範囲であれば、流動性が低下し成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内のワイヤ流れ等の不都合が生じたりする恐れが少ない。
【0039】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物には硬化促進剤をさらに配合してもよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の官能基(例えば、フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基)との架橋反応を促進させるものであればよく、一般にエポキシ樹脂組成物に使用するものを用いることができる。例えば、1、8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0040】
硬化促進剤の配合割合の下限値としては特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。硬化促進剤の配合割合の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下を引き起こす恐れが少ない。また、硬化促進剤の配合割合の上限値としては特に限定されないが、封止樹脂組成物全体に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤の配合割合の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0041】
(電子回路保護材5)
電子回路保護材5は、ボンディングワイヤ7と半導体チップ1の接合層(ボンディングパッド)17との接続部周辺を被覆するために用いられる。本実施形態の電子回路保護材として用いられる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤および溶剤を必須成分として含む。本実施形態の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物(本明細書中、「熱硬化性樹脂組成物」または「樹脂組成物」と称する場合がある)に用いられる成分について、以下に詳細に説明する。
【0042】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に配合される熱硬化性樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、アリル化ノボラック型フェノール樹脂、およびキシリレンノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、およびクレゾールノボラック樹脂等のフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物;フェノールアラルキル樹脂等のフェノール化合物とジメタノール化合物との反応物;エポキシ樹脂;ヒドロキシスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリベンゾオキサゾール樹脂;ポリイミド樹脂;ならびに環状オレフィン樹脂を用いることができる。中でも、得られる電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物の耐熱性の観点から、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましく、特に、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、10質量%以上95質量%以下、好ましくは、20質量%以上90質量%以下、より好ましくは、30質量%以上85質量%以下の量で配合される。
【0044】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に配合される硬化促進剤は、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、テトラ置換ホスホニウム化合物、またはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物である。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。各硬化促進剤について詳述する。
【0045】
・ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化1】
【0047】
一般式(8)において、
Pはリン原子を表す。
10、R11およびR12は、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。
【0048】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0049】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0050】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0051】
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0052】
・3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物
3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物(以下、単に「アミノホスフィン化合物」と称する)としては、以下の一般式(I)の構造を有する化合物が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(R-P-(NR・・式(I)
【0054】
上記一般式(I)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基であり、R及びRは、基中に、環、不飽和結合、窒素元素、及び酸素原子の少なくとも一つを含んでもよく、R、R、及びRのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環を形成していてもよく、nは1~3の整数であり、mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、m及びnの総和は3である。
【0055】
脂肪族基としては、例えば、炭素数1~20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、基中に窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
芳香族基(アリール基)としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0056】
置換とは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基等の置換基の一または二以上を基中のいずれかの原子に結合させてもよいが、基中の原子の一または二以上を窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子に置き換えてもよい。
【0057】
及びRは、それぞれ、基中に環を有してもよいが、互いに結合して環を形成してもよい。
【0058】
環は、脂環式環、芳香族環、及び複素環の一または二以上を含んでもよい。2以上の環を含む場合、単結合やアルキル基を介して結合してもよいが、互いに縮合して縮合環を形成してもよい。また、環は、無置換でも、置換されてもよい。
脂環式環には、シクロアルカン等の単環、デカヒドロナフタレン等の二環等が挙げられる。
芳香族環には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
複素環には、飽和、不飽和のいずれでもよく、窒素原子や酸素原子などの1個または2個以上のヘテロ原子を含む三員環、四員環、五員環、六員環などが挙げられる。
【0059】
アミノホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、nが2である化合物を含んでもよい。これによって、硬化性を高めることができる。
【0060】
アミノホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、mが1、かつRがフェニル基である化合物を含んでもよい。これによって、熱硬化性樹脂組成物中における分散性を高めることができる。
このとき、R及びRの2基が互いに結合してなる環は、それぞれ、同一でもよく、異なってもよい。環は、硬化性の観点から、内部に2以上の窒素原子を有することが好ましい。
【0061】
アミノホスフィン化合物は、以下の一般式(II)の構造を有する化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
【化2】
【0063】
上記一般式(II)中の、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基である。
及びR、またはR及びRのいずれか一方は、2基が互いに結合して環を形成していてもよい。一般式(II)の脂肪族基、芳香族基、環の例示については、一般式(I)と同様のものを用いてもよい。
【0064】
また、上記一般式(II)中の-NR、及び-NRは、それぞれ、同一または異なる官能基で構成されてもよく、互いに一つの官能基を構成してもよい。
【0065】
官能基の一例を以下に示す。例示中、-NR、及び-NR中のN元素については、結合手に波線を記す。
【0066】
官能基は、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、それぞれの基中に環を有してもよいが有さなくてもよい。環を有するとき、R及びRの少なくとも一方は、R及びRと同一構造の基を有してもよいが、異なる基を有してもよく、異なる基として、水素原子、メチル基などのアルキル基でもよい。R、R、R、及びRの基中に含まれる環は、上記一般式(II)中のN原子を含むように構成されてもよく、そのN原子とメチル基やエチル基などのアルキル基等を介して結合するように構成されてもよい。
【0067】
また、官能基は、R及びRの2基、R及びRの2基のそれぞれが互いに結合してなる環を有してもよい。
【0068】
【化3】
【0069】
アミノホスフィン化合物は、25℃で液体、及び25℃で固体の少なくとも一方を含んでもよい。例えば、アミノホスフィン化合物は、25℃で液体である二種以上含んでもよく、25℃で固体である二種以上含んでもよく、液体と固体の両方を含んでもよい。
アミノホスフィン化合物は、融点の下限が、例えば、30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上の化合物を含んでもよい。これによって、取り扱い性が良好となる上、熱硬化性樹脂組成物中への均一分散を高められ、反応性を向上できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、アミノホスフィン化合物は、融点の上限が、例えば、250℃以下の化合物を含んでもよい。これによって、低温硬化に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供できる。この中でも、アミノホスフィン化合物は、融点が35℃以上の固体のものを一または二種以上含んでもよい。
【0070】
・テトラ置換ホスホニウム化合物
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
【化4】
【0072】
一般式(6)において、
Pはリン原子を表す。
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、芳香族基またはアルキル基を表す。
Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。
AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。
x、yは1~3、zは0~3であり、かつx=yである。
【0073】
一般式(6)で表される化合物は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0074】
・ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0075】
【化5】
【0076】
一般式(9)において、
Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。
16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
20は、基YおよびYと結合する有機基である。
21は、基YおよびYと結合する有機基である。
およびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
およびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0077】
一般式(9)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0078】
一般式(9)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(9)中の-Y-R20-Y-、およびY-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0079】
一般式(9)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0080】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法は、例えば以下である。
メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。
【0081】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。一方で、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。硬化促進剤の量を適切に調整することで、十分な耐湿信頼性を得つつ、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することができる。
【0082】
(溶剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に配合される用いられる溶剤としては、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿酸、乳酸エチル、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチルおよびメチル-3-メトキシプロピオネート等を用いることができる。中でも、γ-ブチロラクトンを用いることが、粘度の制御の観点から好ましい。
【0083】
第一の実施形態において、溶剤は、熱硬化性樹脂組成物の粘度を所望の範囲とするのに適切な量で使用することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下の量で使用できる。
【0084】
(硬化剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含む。硬化剤としては、エポキシ樹脂を用いることが好ましく、エポキシ樹脂の例としては、たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の2官能性または結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂およびアルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、エポリードGT401などの脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、低温硬化性の向上と、成形性の向上の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0085】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、得られる熱硬化性樹脂組成物の成形性を向上する観点から、熱硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上である。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物(電子部品保護材)の耐湿信頼性や耐リフロー性、耐温度サイクル性を向上する観点から、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0086】
(無機フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーを用いることにより、流動性とチキソトロピー性を所望の値に調整することができる。
用いることができる無機フィラーとしては、たとえば、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、および木材等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
上記のシリカとしては、結晶性シリカ(破砕状の結晶性シリカ)、溶融シリカ(破砕状のアモルファスシリカ、球状のアモルファスシリカ)、および液状封止シリカ(液状封止用の球状のアモルファスシリカ)が挙げられる。なかでも、保存性を保持しつつ、低温封止を実現しやすくする観点から、溶融球状シリカを用いることが好ましい。
【0088】
無機フィラーを用いる場合、この無機フィラーの平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、最も好ましくは0.3μm以上である。こうすることにより、熱硬化性樹脂組成物中の無機フィラーの沈降を効果的に抑制できる。また、ジェットディスペンサのノズルが摩耗し、吐出される樹脂組成物が所望の領域外へ飛散しやすくなることを抑制できる。
また、上記平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。こうすることにより、ジェットディスペンサ等による塗布性を向上することができる。
ここで、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、ISO-13320(2009)に準拠してレーザー回折法(レーザー回折散乱式粒度分布測定法)によって測定した体積基準のメジアン径(d50)を指す。
【0089】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、その含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。無機フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、この熱硬化性樹脂組成物の取扱い性を改善することができる。また、無機フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとし、塗布性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0090】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを実質的に含まない形態であってもよい。ここで、無機フィラーを実質的に含まないとは、熱硬化性樹脂組成物中の固形分全体に対する無機フィラーの含有量が、例えば、5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下であり、より好ましくは、2質量%以下であり、さらに好ましくは、1質量%以下であり、特に好ましくは、まったく含まない(0質量%)ことをいう。無機フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物は、高い流動性を有しよって取扱い性および塗布性に優れるとともに、ボンディングワイヤに対して高い密着性を有する。
【0091】
(その他の添加剤)
樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、流動性付与剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤のうち1種または2種以上を、適宜含んでもよい。
【0092】
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0093】
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が、樹脂組成物の溶融混練時に反応することを抑制できる。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。
流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0094】
イオン捕捉剤としては、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0095】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されず、熱硬化樹脂組成物に含まれる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。例えば、上記各成分を、上記溶剤に混合して溶解することにより調製することができる。これにより、ワニスの形態の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0096】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の半導体装置は、上述の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物を使用して、以下方法にて作製される。
(1)ワイヤボンディング工程:まず、半導体チップ1の上面において、ボンディングワイヤ7を、例えばアルミニウムから成る接合層17を介して、半導体チップ1に接続する。その後、回路基板2の上面において、ボンディングワイヤ7を回路基板2に接続する。
(2)被覆工程:次に、ジェットディスペンサを用いて、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部に、上述の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物を塗布する。このようにして、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部を接合層17を含めて電子回路保護材5により被覆する。
(3)封止工程:最後に、電子回路保護材5を構成する樹脂とは異なる封止樹脂から成る樹脂封止体4により、半導体チップ1、回路基板2上の半導体チップが搭載された表面、ボンディングワイヤ7、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部、および、ボンディングワイヤ7と回路基板2との接合部を含めて半導体装置10の表面全体を覆う。
【0097】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0098】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
【0099】
(溶剤)
・溶剤1:γ-ブチロラクトン(メルク(AZエレクトロニックマテリアルズ)社製)
(熱硬化性樹脂)
・熱硬化性樹脂1:フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、重量平均分子量:54040)
(硬化剤)
・硬化剤1:トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(プリンテック社、VG3101L)
・硬化剤2:2官能脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製、CEL2021P)
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:式(1)で表されるアミノホスフィン化合物(融点:40℃、25℃で固体)
【化6】
・硬化促進剤2:式(2)で表されるテトラフェニルホスホニウム 4,4'-スルフォニルジフェノラート(住友ベークライト社製)
【化7】
・硬化促進剤3:式(3)で表される化合物(住友ベークライト社製)
【化8】
・硬化促進剤4:式(4)で表される化合物(住友ベークライト社製)
【化9】
・硬化促進剤5:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート(ケイ・アイ化成社)
・硬化促進剤6:トリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)
・(カップリング剤)
・カップリング剤1:1:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503P)
(イオンキャッチャー)
・イオンキャッチャー1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業社製、品番:DHT-4H)
(界面活性剤)
・界面活性剤1:2-[N-ペルフルオロブチルスルホニル-N-メチルアミノ)エチル=アクリラート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=モノアクリラート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=ジアクリラートの共重合物(3M社製、FC-4432)
【0100】
(実施例1~9、比較例1~2)
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例2について、以下のように熱硬化性樹脂組成物を調製した。
各実施例において表1に示す表1に示す配合量の各成分を、溶剤に混合して、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
【0101】
(ワニス状樹脂組成物の物性)
上記で得られたワニス状の樹脂組成物について、以下の物性を測定した。物性の測定結果および評価結果は、表1に示す。
【0102】
(半導体装置の信頼性評価)
半導体装置の信頼性を、THB耐性を測定することにより評価した。
実施例1~9、および比較例2において、上述の「半導体装置の製造方法」に記載の方法にしたがって、THB耐性評価用の半導体装置を作製した。半導体装置の作製の際、ワイヤコート用熱硬化性樹脂組成物と封止樹脂との硬化は、175℃の温度条件で実施した。なお、封止樹脂については。加速試験のために封止樹脂にClが700ppmとなるように塩化マグネシウムを添加したものを用いた。得られた半導体装置に、温度130℃、85%RHの環境下で、20VのDC電圧を120時間印加した。測定開始から、40時間後、80時間後、および120時間後の半導体装置の不良(リーク不良)の発生数を調べた。n=10。結果を、サンプル数10個のうちの不良発生数として、以下の表に示す。
【0103】
比較例1において、ワイヤコート用熱硬化性樹脂組成物を使用しないこと以外は、上記実施例と同様にして、半導体装置を作製した。得られた半導体装置に、温度130℃、85%RHの環境下で、20VのDC電圧を120時間印加した。測定開始から、40時間後、80時間後、および120時間後の半導体装置の不良(リーク不良)の発生数を調べた。n=10。結果を、サンプル数10個のうちの不良発生数として、以下の表に示す。
【0104】
40時間後のリーク不良の発生数が2個以下であり、80時間後のリーク不良数が3個以下であり、かつ120時間後のリーク不良数が5個以下であれば、半導体装置として問題なく使用できるといえる。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例の熱硬化性樹脂組成物を電子回路保護材として備える半導体装置は、THB耐性において優れるものであった。
図1
図2