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特開2023-149625熱硬化性樹脂組成物および半導体装置
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  • 特開-熱硬化性樹脂組成物および半導体装置 図1
  • 特開-熱硬化性樹脂組成物および半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149625
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L23/30 B
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058284
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 咲子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊誠
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BC123
4J002BK003
4J002CC022
4J002CC032
4J002CC033
4J002CC052
4J002CC053
4J002CD002
4J002CD003
4J002CD041
4J002CD042
4J002CD051
4J002CD052
4J002CD061
4J002CD062
4J002CD071
4J002CD072
4J002CD131
4J002CD132
4J002CD141
4J002CD142
4J002CD191
4J002CD192
4J002CE002
4J002CE003
4J002CM023
4J002CM043
4J002CN022
4J002ED026
4J002EF116
4J002EF126
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN076
4J002EQ026
4J002ER006
4J002ER007
4J002ET006
4J002EU116
4J002EU117
4J002EV046
4J002EV106
4J002EV216
4J002EW137
4J002EW177
4J002EY016
4J002EY017
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD157
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002HA03
4M109AA02
4M109BA04
4M109CA21
4M109EA03
4M109EA08
4M109EA11
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ボンディングパッドとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させることができる熱硬化性樹脂組成物。
【解決手段】配線基板と、配線基板上に搭載された、半導体チップ1と、半導体チップと配線基板とを接続するボンディングワイヤ7と、半導体チップ、配線基板の半導体チップの搭載面及びボンディングワイヤを封止する樹脂封止体4と、を備える半導体装置において、ボンディングワイヤの周囲の少なくとも一部又は半導体チップを被覆するために用いる電子回路保護材用の熱硬化性樹脂組成物5であって、熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び溶剤を含み、熱硬化性樹脂組成物を15μm厚の硬化膜とした時、硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、かつTMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板上に搭載された、半導体チップと、
前記半導体チップと前記配線基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記配線基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤの周囲の少なくとも一部、または前記半導体チップを被覆するために用いる電子回路保護材用の熱硬化性樹脂組成物であって、
当該熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および溶剤を含み、
当該熱硬化性樹脂組成物を15μm厚の硬化膜とした時、当該硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、かつTMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂が、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、10質量%以上である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤は、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿酸、乳酸エチル、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチルおよびメチル-3-メトキシプロピオネートから選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物、フェノール化合物とジメタノール化合物との反応物、エポキシ樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂から選択される少なくとも1つを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤をさらに含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いて製造される半導体装置に関する。より詳細には、本発明は、半導体チップの電極パッドがボンディングワイヤで電気的に接合され、半導体チップとボンディングワイヤとが熱硬化性樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体装置において、電極パッドとボンディングワイヤとの接合部を保護するために用いる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、通常、半導体チップがボンディングワイヤとともに樹脂で封止(パッケージング)された状態で流通している。パッケージ内において、半導体チップの電極パッドと、樹脂パッケージから一部が露出する電極リードとが、ボンディングワイヤにより電気的に接続されている。したがって、実装基板の配線に対して電極リードを外部端子として接続することにより、半導体チップと実装基板との電気的な接続が達成される。
【0003】
電極パッドと電極リードとを結ぶボンディングワイヤとして、従来は主に金ワイヤが用いられているが、高価な金の使用を減らすべく、近年では、金ワイヤよりも安価な銅ワイヤの使用が検討されている。近年主流のアルミニウム製の電極パッドに接続するワイヤとして銅ワイヤを用いた場合には、その浸入水分が電極パッドとボンディングワイヤとの接合界面に入り込むと、当該接合界面付近においてアルミニウムの腐食が進行しやすくなる。そのため、パッド-ワイヤ間において、電気的オープンが生じるおそれがある。また封止樹脂中の塩素元素と、電極パッドとボンディングワイヤとの接合界面に形成された金属間化合物が、腐食反応を起こすことにより、接合部の電気抵抗の増加や接合強度の低下を引き起こす場合があった。
【0004】
パッド-ワイヤ間の接続信頼性を向上するための技術として、例えば、特許文献1では、ボンディングワイヤの合金化添加元素を適正化することで、ボンディングワイヤと電極との接合部の長期信頼性を向上させる方法が記載されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1では、ボンディングワイヤと電極との間の十分な接続信頼性を得るのは困難であった。本発明者らは、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの間の接続信頼性を改善するために、これらの接合部をワイヤコート材で被覆する技術を検討した。ワイヤコート材で被覆する場合、ワイヤコート材として用いる樹脂組成物の特性を制御して、良好な塗布性を維持しつつ、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの間の接続信頼性を向上させることが重要な技術的課題であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-133362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ボンディングパッドとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させることができる、ボンディングワイヤの少なくとも一部と接合界面とを被覆するための熱硬化性樹脂組成物、およびこの熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる、電気的信頼性に優れた半導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、基板と、前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を、透湿度およびガラス転移温度とを特定範囲に制御した樹脂材料で被覆することにより、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、
配線基板と、
前記配線基板上に搭載された、半導体チップと、
前記半導体チップと前記配線基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記配線基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤの周囲の少なくとも一部、または前記半導体チップを被覆するために用いる電子回路保護材用の熱硬化性樹脂組成物であって、
当該熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および溶剤を含み、
当該熱硬化性樹脂組成物を15μm厚の硬化膜とした時、当該硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、かつTMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上である、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0010】
また本発明によれば、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの接続部周辺に対する密着性に優れ、よって半導体チップとボンディングワイヤとの接続信頼性を向上することができる、電子部品保護材用の熱硬化性樹脂組成物、ならびにこれを用いて製造された信頼性に優れる半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る半導体装置の断面模式図である。
図2】本実施形態に係る図1に示す半導体装置における、半導体チップとボンディングワイヤとの接合部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」のことを表す。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0014】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、を備える半導体装置において、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するために用いる電子回路保護材として用いるための熱硬化性樹脂組成物である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、および溶剤を含み、当該熱硬化性樹脂組成物を15μm厚の硬化膜とした時、当該硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、かつTMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上であることを特徴とする。
【0015】
なお、本実施形態において、「透湿度」とは、JIS Z0208:1976に規定される透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定された透湿度をいう。または「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量測定装置を用い、昇温速度10℃/分で測定し中点法で算出したときの温度である。
【0016】
また本実施形態に係る半導体装置は、
基板と、
前記基板上に搭載され、ボンディングパッドを有する半導体チップと、
前記ボンディングパッドに接続され、前記半導体チップと前記基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記半導体チップ、前記基板の前記半導体チップの搭載面、および前記ボンディングワイヤを封止する樹脂封止体と、
前記ボンディングワイヤと前記ボンディングパッドとの接続部周辺を被覆するように設けられた電子回路保護材と、を備え、
前記電子回路保護材が、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0017】
以下、本実施形態の電子回路保護材、および半導体装置について説明する。
【0018】
[半導体装置]
図1は、本実施形態に係る半導体装置10の断面図である。図1に示すように、半導体装置10は、半導体チップ1、回路基板2、接続パッド8、樹脂封止体(封止樹脂)4、外部電極端子6、ボンディングワイヤ7を備える。半導体装置10において、回路基板2上の接続パッド8上にダイアタッチ材9を介して半導体チップ1が固定されている。半導体チップ1の電極パッド(図示せず)と回路基板2との間はボンディングワイヤ7によって接続されている。回路基板2の半導体チップ1が搭載された面は、樹脂封止体4によって封止されている。回路基板2上の電極パッドは、回路基板2の非封止面側の外部電極端子6と内部で接合されている。
【0019】
(半導体チップ1)
半導体チップ1の種類は特に限定されず、あらゆる種類の半導体チップが用いられ得る。半導体チップ1は、半導体チップ1の裏面が接続パッド8の上面に接するように、ダイアタッチ層9を介して回路基板2上に搭載されている。半導体チップ1の上面において、ボンディングワイヤ7がワイヤボンディング法を用いて、接合層(ボンディングパッド)17を介して半導体チップ1に電気的に接続されており、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分が、電子回路保護材5により被覆されている。ここで、図2は、図1における半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分における拡大図を示している。図2に示すように、半導体チップ1は、その上面に、バリア層18、19と、接合層17とを備え、接合層17を介してボンディングワイヤ7の一端に電気的に接続されており、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接続部分が、以下で詳述する本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物よりなる電子回路保護材5により被覆されている。
【0020】
この構成によれば、接合層17およびボンディングワイヤ7の一部が、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物よりなる電子回路保護材5により被覆されている。そのため、樹脂パッケージ内部に水分が侵入しても、その水分をこの電子回路保護材5により塞ぎ止めることができるため、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合界面(接合層17)が水分と接触して腐食することを防止することができる。また樹脂封止体4に含まれる水分や塩素イオンによる半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合界面(接合層17)の腐食を抑制することができる。さらに腐食が生じたとしてもその広がりを抑制することができる。また樹脂封止体4に含まれる酸素により、ボンディングワイヤ7や接合層17が酸化するのを防止することができる。その結果、パッド-ワイヤ間の接続信頼性を向上することができ、信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0021】
(回路基板2)
本実施形態の半導体装置10が備える回路基板2は、半導体チップ1の載置板として使用される。回路基板2は、その裏面側に外部電極端子6を備えている。また、回路基板2は、回路基板2の上面および内部に配線を備える。更に、回路基板2は、回路基板2の上面に配線を介して接続パッド8を備える。図2に示すように、接続パッド8の裏面の全体が配線に接続されている必要はなく、接続パッド8の一部が配線に接続されていればよいが、接続パッド8の裏面の全体が配線に接続されていてもよい。また、回路基板2は、接続パッド8を介して半導体チップ1に接続される。
【0022】
本実施形態にて用いられる回路基板2の種類は特に限定されず、ガラスエポキシ材、BT(ビスマレイミドトリアジン)、レジン、ポリイミド等の有機絶縁基材に銅配線をパターニングした回路基板等を用いることができる。
【0023】
(ボンディングワイヤ7)
ボンディングワイヤ7は、半導体チップ1と回路基板2とを電気的に接続するために用いられる。具体的には、ボンディングワイヤ7の一端が半導体チップ1の上面に接合層17を介して電気的に接続されており、ボンディングワイヤ7の他端が回路基板2に電気的に接続されている。この電気的な接続には、ワイヤボンディング法が用いられている。なお、本実施形態にて用いられるワイヤボンディングの種類は特に限定されず、ボールボンディング、ステッチボンディング等のあらゆる種類のワイヤボンディングが用いられ得る。
【0024】
本実施形態において用いられるボンディングワイヤ7は、アルミニウム、銀、および銅の何れかが導電材料として用いられていてもよい。ボンディングワイヤ7は、金属により予め被覆されていてもよい。
【0025】
(外部電極端子6)
外部電極端子6は、球形状をしており、回路基板2の裏面側(非封止面側)に設けられている。外部電極端子6の何れかが、配線(図示なし)に接続されており、これにより、半導体チップ1を駆動させるための電力が、外部電極端子6から配線およびボンディングワイヤ7を介して半導体チップ1に供給される。外部電極端子6としては、半田ボールを用いた球形状の端子、または、金を用いたランド形状の端子等が用いられる。
【0026】
(接続パッド8)
接続パッド8は、配線を介して回路基板2の上面に接続されている。一般に、半導体チップ1と回路基板2とがワイヤボンディング法を用いて電気的に接続される場合、半導体チップ1が積載されている接続パッド8は、半導体チップ1の周辺に配置されていることが望ましい。
【0027】
(樹脂封止体4)
樹脂封止体(封止樹脂)4は、回路基板2上の半導体チップ1を封止するために用いられており、図1に示すように、半導体チップ1、ボンディングワイヤ7、接続パッド8、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部、ボンディングワイヤ7と回路基板2との接合部、および配線を被覆する絶縁層(図示なし)の全体を覆うように、回路基板2上に形成される。樹脂封止体4の形成方法は、プレスおよび金型を用い、圧力を印加して樹脂成形するトランスファーモールド方法やコンプレッションモールド方法等が一般的であるが、本実施形態においては特にこれに限定されず、あらゆる種類の形成方法が用いられ得る。
【0028】
樹脂封止体4は、当該分野で一般的に用いられる材料より構成され、例えば、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、無機充填剤とを含む封止用樹脂組成物を用いて作製することができる。
【0029】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0030】
エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値としては特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂全体の配合割合が上記範囲内であると、粘度上昇によるワイヤ切れを引き起こす恐れが少ない。また、エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値としては特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対して、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値が上記範囲内であると、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0031】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合される硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤のいずれかを用いることができる。
【0032】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0033】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0034】
縮合型の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。高温保管特性や高温動作特性をさらに向上させるという観点では、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂が好ましく、トリフェノールメタン型フェノール樹脂が特に好ましい。
【0036】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、吸水率増加による耐湿信頼性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0037】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合におけるエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下又は樹脂硬化物の物性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0038】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物に配合される無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができ、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、チタンホワイト、窒化珪素等が挙げられる。最も好適に使用されるものとしては、溶融シリカである。これらの無機充填材は、単独でも混合して用いても差し支えない。また、これらの無機充填材は、カップリング剤により表面処理されていてもかまわない。充填材の形状としては、流動性改善のために、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
【0039】
無機充填材の含有割合は特に限定されないが、無機充填材の含有割合の下限値は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、82質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがよりに好ましい。上記下限値を下回らない範囲であれば、低吸湿性、低熱膨張性が得られるため耐湿信頼性が不十分となる恐れが少ない。また、無機充填材の含有割合の上限値は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、92質量%以下であることが好ましく、89質量%以下であることがより好ましい。上記上限値を超えない範囲であれば、流動性が低下し成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内のワイヤ流れ等の不都合が生じたりする恐れが少ない。
【0040】
樹脂封止体4を作製するための封止用樹脂組成物には硬化促進剤をさらに配合してもよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の官能基(例えば、フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基)との架橋反応を促進させるものであればよく、一般にエポキシ樹脂組成物に使用するものを用いることができる。例えば、1、8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0041】
硬化促進剤の配合割合の下限値としては特に限定されないが、封止用樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。硬化促進剤の配合割合の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下を引き起こす恐れが少ない。また、硬化促進剤の配合割合の上限値としては特に限定されないが、封止樹脂組成物全体に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤の配合割合の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0042】
(電子回路保護材5)
電子回路保護材5は、ボンディングワイヤ7と半導体チップ1の接合層(ボンディングパッド)17との接続部周辺を被覆するために用いられる。本実施形態の電子回路保護材として用いられる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および溶剤を必須成分として含み、当該熱硬化性樹脂組成物を15μm厚の硬化膜とした時、当該硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、かつTMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上である。当該特性を有する熱硬化性樹脂組成物は、用いる成分、その配合量、および製造方法を調整することにより製造することができる。本実施形態の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物(本明細書中、「熱硬化性樹脂組成物」または「樹脂組成物」と称する場合がある)に用いられる成分について、以下に詳細に説明する。
【0043】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に配合される熱硬化性樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、アリル化ノボラック型フェノール樹脂、およびキシリレンノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、およびクレゾールノボラック樹脂等のフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物;フェノールアラルキル樹脂等のフェノール化合物とジメタノール化合物との反応物;エポキシ樹脂;ヒドロキシスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリベンゾオキサゾール樹脂;ポリイミド樹脂;ならびに環状オレフィン樹脂を用いることができる。中でも、得られる電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物の耐熱性の観点から、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましく、特に、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、10質量%以上の量で配合される。熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の配合量は、固形分全体に対して、好ましくは、10質量%以上95質量%以下、より好ましくは、20質量%以上90質量%以下、さらにより好ましくは、30質量%以上85質量%以下である。
【0045】
(溶剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に配合される用いられる溶剤としては、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿酸、乳酸エチル、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチルおよびメチル-3-メトキシプロピオネート等を用いることができる。中でも、γ-ブチロラクトンを用いることが、粘度の制御の観点から好ましい。
【0046】
本実施形態において、溶剤は、熱硬化性樹脂組成物の粘度を所望の範囲とするのに適切な量で使用することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下の量で使用できる。
【0047】
(硬化剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、熱硬化性樹脂と熱により反応可能な基を有する化合物を使用することができ、具体例としては、たとえば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール(パラキシレングリコール)、1,3,5-ベンゼントリメタノール、4,4-ビフェニルジメタノール、2,6-ピリジンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4,4'-メチレンビス(2,6-ジアルコキシメチルフェノール)などのメチロール基を有する化合物;フロログルシドなどのフェノール類;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメトキシメチルフェノール)などのアルコキシメチル基を有する化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサブタノールメラミン等から代表されるメチロールメラミン化合物;ヘキサメトキシメラミンなどのアルコキシメラミン化合物;テトラメトキシメチルグリコールウリルなどのアルコキシメチルグリコールウリル化合物;メチロールベンゾグアナミン化合物、ジメチロールエチレンウレアなどのメチロールウレア化合物;アルキル化尿素樹脂;ジシアノアニリン、ジシアノフェノール、シアノフェニルスルホン酸などのシアノ化合物;1,4-フェニレンジイソシアナート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナートなどのイソシアナート化合物;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂およびアルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、エポリードGT401などの脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物;N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-メチレンジマレイミドなどのマレイミド化合物等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、得られる熱硬化性樹脂組成物の成形性を向上する観点から、熱硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上である。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物(電子部品保護材)の耐湿信頼性や耐リフロー性、耐温度サイクル性を向上する観点から、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0049】
(硬化促進剤)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させるものであればよく、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択される。
【0050】
本実施形態において、硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、アミノホスフィン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物;スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、およびサリチル酸塩などの熱により酸を発生する化合物からなる群から選択される1種類または2種類以上を含む。低温での反応速度を向上する観点からは熱により酸を発生する化合物またはリン原子含有化合物の一方または双方を含むことがより好ましい
【0051】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。一方で、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。硬化促進剤の量を適切に調整することで、十分な耐湿信頼性を得つつ、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することができる。
【0052】
(無機フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーを用いることにより、流動性とチキソトロピー性を所望の値に調整することができる。
用いることができる無機フィラーとしては、たとえば、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、および木材等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
上記のシリカとしては、結晶性シリカ(破砕状の結晶性シリカ)、溶融シリカ(破砕状のアモルファスシリカ、球状のアモルファスシリカ)、および液状封止シリカ(液状封止用の球状のアモルファスシリカ)が挙げられる。なかでも、保存性を保持しつつ、低温封止を実現しやすくする観点から、溶融球状シリカを用いることが好ましい。
【0054】
無機フィラーを用いる場合、この無機フィラーの平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、最も好ましくは0.3μm以上である。こうすることにより、熱硬化性樹脂組成物中の無機フィラーの沈降を効果的に抑制できる。また、ジェットディスペンサのノズルが摩耗し、吐出される樹脂組成物が所望の領域外へ飛散しやすくなることを抑制できる。
また、上記平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。こうすることにより、ジェットディスペンサ等による塗布性を向上することができる。
ここで、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、ISO-13320(2009)に準拠してレーザー回折法(レーザー回折散乱式粒度分布測定法)によって測定した体積基準のメジアン径(d50)を指す。
【0055】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、その含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。無機フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、この熱硬化性樹脂組成物の取扱い性を改善することができる。また、無機フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとし、塗布性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0056】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを実質的に含まない形態であってもよい。ここで、無機フィラーを実質的に含まないとは、熱硬化性樹脂組成物中の固形分全体に対する無機フィラーの含有量が、例えば、5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下であり、より好ましくは、2質量%以下であり、さらに好ましくは、1質量%以下であり、特に好ましくは、まったく含まない(0質量%)ことをいう。無機フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物は、高い流動性を有しよって取扱い性および塗布性に優れるとともに、ボンディングワイヤに対して高い密着性を有する。
【0057】
(その他の添加剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、流動性付与剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤のうち1種または2種以上を、適宜含んでもよい。
【0058】
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0059】
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が、樹脂組成物の溶融混練時に反応することを抑制できる。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。
流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0060】
イオン捕捉剤としては、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0061】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されず、熱硬化樹脂組成物に含まれる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。例えば、上記各成分を、上記溶剤に混合して溶解することにより調製することができる。これにより、ワニスの形態の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0062】
(熱硬化性樹脂組成物の特性)
上記成分を含む本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、15μm厚の硬化膜とした時、当該硬化膜の透湿度が、200g/m・24h以下であり、好ましくは、180g/m・24h以下であり、より好ましくは160g/m・24h以下である。また上記成分を含む本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化膜は、TMAで測定した当該硬化膜のガラス転移温度が、150℃以上であり、好ましくは、160℃以上であり、より好ましくは、170℃以上である。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物が上記特性を備えることにより、ボンディングワイヤとボンディングパッドとの間の接続信頼性が改善され得る。
【0063】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の半導体装置は、上述の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物を使用して、以下方法にて作製される。
(1)ワイヤボンディング工程:まず、半導体チップ1の上面において、ボンディングワイヤ7を、例えばアルミニウムから成る接合層17を介して、半導体チップ1に接続する。その後、回路基板2の上面において、ボンディングワイヤ7を回路基板2に接続する。
(2)被覆工程:次に、ジェットディスペンサを用いて、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部に、上述の電子回路保護材用熱硬化性樹脂組成物を塗布する。このようにして、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部を接合層17を含めて電子回路保護材5により被覆する。
(3)封止工程:最後に、電子回路保護材5を構成する樹脂とは異なる封止樹脂から成る樹脂封止体4により、半導体チップ1、回路基板2上の半導体チップが搭載された表面、ボンディングワイヤ7、半導体チップ1とボンディングワイヤ7との接合部、および、ボンディングワイヤ7と回路基板2との接合部を含めて半導体装置10の表面全体を覆う。
【0064】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
【0066】
(溶剤)
・溶剤1:γ-ブチロラクトン(メルク(AZエレクトロニックマテリアルズ)社製)
【0067】
(熱硬化性樹脂)
・熱硬化性樹脂1:フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR-X18121、重量平均分子量:54040)
・熱硬化性樹脂2:以下の方法で得られた樹脂
<熱硬化性樹脂2の合成>
撹拌機および冷却管を備えた5Lのセパラブルフラスコに、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン304.2g(0.95モル)、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物355.39g(0.80モル)、4,4'-オキシジフタル酸二無水物62.04g(0.20モル)及びGBL1684gを加えて窒素雰囲気下で室温にて16時間反応し重合反応を行った。続いてオイルバスにて反応液温度を180℃まで上げ3時間反応を行ったのち室温まで冷却してポリイミド樹脂溶液を作成した。
続いて、反応液をイソプロパノール/水=4/7の混合溶液に撹拌しながら滴下し、樹脂固体を析出させた。得られた固体を荒濾過したのち、更にイソプロパノール/水=4/7で洗浄してポリイミドの白色固体を得た。得られた白色固体を200℃にて真空乾燥することにより、末端に酸無水物基を有するポリイミド樹脂(熱硬化性樹脂2)を得た。
ポリイミド樹脂(熱硬化性樹脂2)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は49,000であった。
【0068】
(硬化剤)
・硬化剤1:トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(プリンテック社、VG3101L)
・硬化剤2:3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(ダイトーケミックス社製、CROLIN-318)
・硬化剤3:直鎖型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YX-7105)
・硬化剤4:2官能脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製、CEL2021P)
【0069】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート(ケイ・アイ化成社製、TPP-BQ)
・硬化促進剤2:式(2)で表されるテトラフェニルホスホニウム 4,4'-スルフォニルジフェノラート(住友ベークライト社製)
【化1】
・硬化促進剤3:4-アセトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(三新化学工業社製、SI-B3A)
【0070】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:1:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503P)
【0071】
(界面活性剤)
・界面活性剤1:2-[N-ペルフルオロブチルスルホニル-N-メチルアミノ)エチル=アクリラート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=モノアクリラート・ポリ(オキシアルキレングリコール)=ジアクリラートの共重合物(3M社製、FC-4432)
【0072】
(実施例1~4、比較例1~3)
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例1~2において、表1に示す配合量の各成分を、溶剤に混合して、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
【0073】
(透湿度)
各例で得られた感光性樹脂組成物を、基材に塗布し、175℃、120分の条件で硬化して、幅100mm×長さ100mm×厚み15μmのシートを得た。得られたシートについて、JIS Z0208:1976に規定される透湿度試験方法(カップ法)に準拠して、透湿度を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(硬化物の物性測定)
各例で得られた感光性樹脂組成物を、基材に塗布し、175℃、120分の条件で硬化して、幅3mm×長さ10mm×厚み10μmの試験片を得た。得られた試験片の以下の物性を測定した。物性の測定結果および評価結果は、表1に示す。
【0075】
(線膨張率およびガラス転移温度)
上記で得られた試験片に対し、熱機械分析装置(TMA、Seiko Instruments Inc社製、SS6000)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定をおこない、測定結果より、ガラス転移温度Tg(℃)および50~100℃の温度領域の線膨張係数(ppm/℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0076】
(半導体装置の信頼性評価)
半導体装置の信頼性を、THB耐性を測定することにより評価した。
実施例1~5、および比較例1~2において、上述の「半導体装置の製造方法」に記載の方法にしたがって、THB耐性評価用の半導体装置を作製した。半導体装置の作製の際、ワイヤコート用熱硬化性樹脂組成物と封止樹脂との硬化は、175℃の温度条件で実施した。なお、封止樹脂については。加速試験のために封止樹脂にClが700ppmとなるように塩化マグネシウムを添加したものを用いた。得られた半導体装置に、温度130℃、85%RHの環境下で、20VのDC電圧を120時間印加した。測定開始から、40時間後、80時間後、および120時間後の半導体装置の不良(リーク不良)の発生数を調べた。n=10。結果を、サンプル数10個のうちの不良発生数として、以下の表に示す。
【0077】
比較例3において、ワイヤコート用熱硬化性樹脂組成物を使用しないこと以外は、上記実施例と同様にして、半導体装置を作製した。得られた半導体装置に、温度130℃、85%RHの環境下で、20VのDC電圧を120時間印加した。測定開始から、40時間後、80時間後、および120時間後の半導体装置の不良(リーク不良)の発生数を調べた。n=10。結果を、サンプル数10個のうちの不良発生数として、以下の表に示す。
【0078】
40時間後のリーク不良の発生数が2個以下であり、80時間後のリーク不良数が3個以下であり、かつ120時間後のリーク不良数が5個以下であれば、半導体装置として問題なく使用できるといえる。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例の熱硬化性樹脂組成物を電子回路保護材として備える半導体装置は、THB耐性において優れるものであった。
図1
図2