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特開2023-14963パワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法
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  • 特開-パワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014963
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】パワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20230124BHJP
【FI】
G01R31/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192707
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2021119136の分割
【原出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】591107230
【氏名又は名称】株式会社デンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】南 晃央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 譜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英登
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AC04
2G003AD03
2G003AD06
2G003AH00
(57)【要約】
【課題】結露の発生を抑制できるパワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法を提供する。
【解決手段】パワーサイクル試験装置10は、液冷式ヒートシンク12に取り付けられ制御端子及び主端子TM1~TM3を有する液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14が載る載置エリアAが設けられた載置台202と、載置台202を覆い内部に試験空間Sを形成するためのカバー204と、を備え、試験空間Sの内部に、制御端子へと延びる第1のケーブルが接続される第1のケーブル接続部210と、主端子TM1~TM3へと延びる第2のケーブルが接続される第2のケーブル接続部220と、冷却液を供給するための冷却液供給管240と、冷却液を排出する冷却液排出管230と、ドライエアを供給するドライエア供給管250と、試験空間Sの内部の温度及び湿度を測定する温湿度測定部260と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式ヒートシンクに取り付けられ制御端子及び主端子を有する液冷式ヒートシンク付パワーモジュールが載る載置エリアが設けられた載置台と、
前記載置台を覆い内部に試験空間を形成するためのカバーと、を備え、
前記パワーモジュールに通電し、該パワーモジュールを試験するパワーサイクル試験装置であって、
前記試験空間の内部に、
前記制御端子へと延びる第1のケーブルが接続される第1のケーブル接続部と、
前記主端子へと延びる第2のケーブルが接続される第2のケーブル接続部と、
前記液冷式ヒートシンクへと延びる第1のチューブが接続される、冷却液を供給するための冷却液供給管と、
前記液冷式ヒートシンクから延びる第2のチューブが接続される、冷却液を排出する冷却液排出管と、
予め決められた相対湿度以下に維持されたドライエアを供給するドライエア供給管と、
前記試験空間の内部の温度及び相対湿度を測定する温湿度測定部と、を備えたパワーサイクル試験装置。
【請求項2】
請求項1記載のパワーサイクル試験装置において、
前記第1のケーブル接続部及び前記第2のケーブル接続部が、正面視して前記載置エリアを挟んで左右方向に間隔を空けて配置され、
前記冷却液供給管及び前記冷却液排出管が、前記載置台の上面の後端側の位置に配置されているパワーサイクル試験装置。
【請求項3】
請求項2記載のパワーサイクル試験装置において、
前記載置台の上面から突出して設けられ、外部に冷却液が漏出することを抑制するための漏液抑制部材と、
漏洩した冷却液を検出する漏液センサと、を更に備え、
前記漏液抑制部材の内側の前記載置台に、漏洩した冷却液を排出する排液孔が設けられているパワーサイクル試験装置。
【請求項4】
請求項3記載のパワーサイクル試験装置において、
前記漏液センサが、前記漏液抑制部材の内側に配置された検知帯を有し、
前記検知帯が、平面視して、少なくとも前記載置エリア及び前記冷却液供給管を取り囲むように配置されているパワーサイクル試験装置。
【請求項5】
請求項4記載のパワーサイクル試験装置において、
前記ドライエアの供給を制御する制御部を更に備え、
前記制御部が、前記温湿度測定部によって測定された前記温度及び前記相対湿度に基づいて求められる露点温度が予め決められた設定値以下になるまで、前記ドライエアを供給するパワーサイクル試験装置。
【請求項6】
請求項5記載のパワーサイクル試験装置において、
前記試験空間の内部に、前記冷却液供給管及び前記冷却液排出管を互いに接続し、流路を開閉するバルブが設けられたバイパス管を更に備えるパワーサイクル試験装置。
【請求項7】
請求項2記載のパワーサイクル試験装置において、
前記ドライエアの供給を制御する制御部を更に備え、
前記制御部が、前記温湿度測定部によって測定された前記温度及び前記相対湿度に基づいて求められる露点温度が予め決められた値になるまで、前記ドライエアを供給するパワーサイクル試験装置。
【請求項8】
請求項1記載のパワーサイクル試験装置を使用したパワーサイクル試験方法であって、
前記液冷式ヒートシンク付パワーモジュールが前記載置エリアに載せられ、前記制御端子及び前記第1のケーブル接続部の間と前記主端子及び前記第2のケーブル接続部の間とにそれぞれ前記第1のケーブル及び前記第2のケーブルが接続される準備ステップと、
前記準備ステップが実施された後、予め決められたサイクルで前記パワーモジュールが通電される試験ステップと、
前記制御部が、前記露点温度が予め決められた範囲を外れた場合に、該露点温度が予め決められた設定値以下になるまで前記ドライエアを供給する露点温度管理ステップと、を含むパワーサイクル試験方法。
【請求項9】
請求項8記載のパワーサイクル試験方法において、
前記試験ステップにて、前記制御部が、前記パワーモジュールが通電される前に、前記露点温度が予め決められた設定値以下になるまで、前記ドライエアを供給するパワーサイクル試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被試験デバイスへの電力印加およびその停止による試験サイクルを繰り返し、被試験デバイスに繰り返し温度変化を与えるパワーサイクル試験装置が記載されている。このパワーサイクル試験装置は、被試験デバイスに電力を印加するための電力印加部と、電力印加部による電力印加および電力印加の停止を制御する制御部と、を備える。
【0003】
特許文献2には、ミドルパワー及びハイパワーIC用テストバーンイン装置が記載されている。このミドルパワー及びハイパワーIC用テストバーンイン装置は、バーンインボードのソケットの被測定デバイスを冷却させ、温度コントロールするサーマルヘッド及びサーマルアレイとテストソケットと被測定デバイスを結露させないために、除湿させる機能と密閉構造を持っている。
【0004】
特許文献3には、半導体デバイスの低温での動作特性をチップの状態で検査することができるようにした温度特性検査装置が記載されている。この温度特性検査装置は、光通信用発光素子又は受光素子チップを乗せて検査するための検査台と、検査台を冷却するための冷却機構と、冷却機構を冷却するための冷却液を導入する冷却液入口管と冷却機構を冷却した冷却液を排出するための冷却液排出管とよりなる冷却液供給排出機構と、検査台と冷却機構と冷却液入口管と冷却液排出管の冷却機構に続く一部を囲む遮蔽板と、遮蔽板の後面に固定され乾燥空気を導入し一時貯留する乾燥空気チャンバと、乾燥空気チャンバの前面にあり乾燥空気チャンバから乾燥空気を遮蔽板の内部へ供給する乾燥ガス供給口である乾燥空気供給板と、遮蔽板の前方から上方にかけて切り欠かれた乾燥空気排出口であり半導体チップの出入り口である開口部と、開口部を通して半導体チップを検査台へ運び検査台から運び去るための搬送用コレットと、開口部を通過して半導体チップの電極に接触し電流又は電圧を与えるプローブと、半導体チップから開口部を通して外部へ出る光を検出しあるいは開口部から半導体チップに光を当てて光電流を検出することによって半導体チップの光特性を検出する装置とからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-114403号公報
【特許文献2】特開2005-156172号公報
【特許文献3】特開2007-163193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、被試験対象となるパワーモジュールを液冷しながらパワーサイクル試験を行う場合、試験環境によって被試験対象に結露が生じる場合がある。
本発明は、結露の発生を抑制できるパワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液冷式ヒートシンクに取り付けられ制御端子及び主端子を有する液冷式ヒートシンク付パワーモジュールが載る載置エリアが設けられた載置台と、前記載置台を覆い内部に試験空間を形成するためのカバーと、を備え、前記パワーモジュールに通電し、該パワーモジュールを試験するパワーサイクル試験装置であって、前記試験空間の内部に、前記制御端子へと延びる第1のケーブルが接続される第1のケーブル接続部と、前記主端子へと延びる第2のケーブルが接続される第2のケーブル接続部と、前記液冷式ヒートシンクへと延びる第1のチューブが接続される、冷却液を供給するための冷却液供給管と、前記液冷式ヒートシンクから延びる第2のチューブが接続される、冷却液を排出する冷却液排出管と、予め決められた相対湿度以下に維持されたドライエアを供給するドライエア供給管と、前記試験空間の内部の温度及び相対湿度を測定する温湿度測定部と、を備えたパワーサイクル試験装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のパワーサイクル試験装置において、前記第1のケーブル接続部及び前記第2のケーブル接続部が、正面視して前記載置エリアを挟んで左右方向に間隔を空けて配置され、前記冷却液供給管及び前記冷却液排出管が、前記載置台の上面の後端側の位置に配置されている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のパワーサイクル試験装置において、前記載置台の上面から突出して設けられ、外部に冷却液が漏出することを抑制するための漏液抑制部材と、漏洩した冷却液を検出する漏液センサと、を更に備え、前記漏液抑制部材の内側の前記載置台に、漏洩した冷却液を排出する排液孔が設けられている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のパワーサイクル試験装置において、前記漏液センサが、前記漏液抑制部材の内側に配置された検知帯を有し、前記検知帯が、平面視して、少なくとも前記載置エリア及び前記冷却液供給管を取り囲むように配置されている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載のパワーサイクル試験装置において、前記ドライエアの供給を制御する制御部を更に備え、前記制御部が、前記温湿度測定部によって測定された前記温度及び前記相対湿度に基づいて求められる露点温度が予め決められた設定値以下になるまで、前記ドライエアを供給する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のパワーサイクル試験装置において、前記試験空間の内部に、前記冷却液供給管及び前記冷却液排出管を互いに接続するバイパス管を更に備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2記載のパワーサイクル試験装置において、前記ドライエアの供給を制御する制御部を更に備え、前記制御部が、前記温湿度測定部によって測定された前記温度及び前記相対湿度に基づいて求められる露点温度が予め決められた値になるまで、前記ドライエアを供給する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1記載のパワーサイクル試験装置を使用したパワーサイクル試験方法であって、前記液冷式ヒートシンク付パワーモジュールが前記載置エリアに載せられ、前記制御端子及び前記第1のケーブル接続部の間と前記主端子及び前記第2のケーブル接続部の間とにそれぞれ前記第1のケーブル及び前記第2のケーブルが接続される準備ステップと、前記準備ステップが実施された後、予め決められたサイクルで前記パワーモジュールが通電される試験ステップと、前記制御部が、前記露点温度が予め決められた範囲を外れた場合に、該露点温度が予め決められた設定値以下になるまで前記ドライエアを供給する露点温度管理ステップと、を含むパワーサイクル試験方法である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載のパワーサイクル試験方法において、前記試験ステップにて、前記制御部が、前記パワーモジュールが通電される前に、前記露点温度が予め決められた設定値以下になるまで、前記ドライエアを供給する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、結露の発生を抑制できるパワーサイクル試験装置及びパワーサイクル試験方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るパワーサイクル試験装置の外観図である。
図2】同パワーサイクル試験装置の被試験対象となる液冷式ヒートシンク付パワーモジュールの説明図である。
図3】(A)は同パワーサイクル試験装置が備える載置台を平面視した各部の配置図であり、(B)は(A)に示したX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0019】
本発明の一実施の形態に係るパワーサイクル試験装置10(図1参照)は、予め設定されたサイクルでパワーモジュールPMに通電することで、その信頼性を評価できる。
パワーモジュールPMは、薄板状のデバイスであり、例えば三相インバータ回路の一部を構成する上下アーム及び内部の状態を検出するセンサを内蔵している。パワーモジュールPMは、制御信号を入力したりセンサ信号を出力したりするための複数の制御端子(不図示)及び電力を入出力するための主端子TM1~TM3(図2参照)を有し、第1の端面から各制御端子が延び、第1の端面とは反対の側の第2の端面から主端子TM1~TM3が延びている。
ただし、パワーモジュールPMは、このような構成に限定されるものではない。
【0020】
パワーサイクル試験装置10の被試験対象は、図2に示すように、複数のパワーモジュールPMが液冷式ヒートシンク12に挟まれた状態で構成された液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14である。この液冷式ヒートシンク12には、内部に流路(同図2に示す矢印参照)が形成され、この流路の上流側及び下流側に、それぞれ間隔を空けて一方向に延びる第1のチューブ接続部122a及び第2のチューブ接続部122bが設けられている。第1のチューブ接続部122aには、チラー(不図示)によって所定の温度に維持された冷却液を供給するための第1のチューブが接続され、第2のチューブ接続部122bには、パワーモジュールPMが発生した熱を吸収した冷却液を流すための第2のチューブが接続される。
【0021】
パワーサイクル試験装置10は、図1に示すように、第1の試験部20a、第2の試験部20b、駆動電源部50及び制御部(不図示)を備え、2つの被試験対象を異なる試験条件にて同時に試験できる。
第1の試験部20a及び第2の試験部20bは、それぞれパワーサイクル試験装置10の前面側に配置されている。ただし、第1の試験部20a及び第2の試験部20bは、実質的に同様の構成となっているため、以下、第1の試験部20aについてのみ説明する。
【0022】
第1の試験部20aは、載置台202及びカバー204を有している。
載置台202は、その外形が直方体状であり、矩形状をした上面の左右方向中央部に設けられた載置エリアA(図3(A)参照)に、液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14を保持したホルダが載せられる。
載置台202の内部には空間が形成されており、配管類やケーブルが収められている。
【0023】
カバー204は、図1に示すように、その外形が直方体状であり、載置台202の上面を覆うことができる。カバー204は、背面側に設けられたヒンジ206(図3(A)参照)により、左右水平方向に延びる回転軸AXの回りに開閉できる。
カバー204は、ガススプリング(不図示)によって支持されており、試験員が、前面側から容易に開閉できるように構成されている。
カバー204が載置台202の上面を覆うことによって、内部に破線で示した試験空間S(図1参照)が形成される。なお、カバー204の載置台202との接触面には、空気が試験空間Sの内部から外部へと漏出することを抑えるためのパッキンが設けられている。ただし、試験空間Sは完全に密閉された状態ではなく、非密閉状態となっている。
カバー204の上面は透明な板状部材により構成されており、試験空間Sを外部から視認できる。
なお、カバー204は、載置台202の上に試験空間Sを形成できれば任意でよい。
【0024】
この試験空間Sには、図3(A)及び図3(B)に示すように、第1の端子台210、第2の端子台220、冷却液供給管240、冷却液排出管230、ドライエア供給管250、温湿度計260及び電磁ロック270が配置されている。
【0025】
第1の端子台(第1のケーブル接続部の一例)210は、パワーモジュールPMの制御端子へと延びる複数の第1のケーブル(不図示)が接続される端子台であり、板状部材212を介して載置台202の上面に固定されている。第1の端子台210から試験空間Sの外部へと延びる配線は、載置台202の上面の左後端側の位置に形成された配線孔H1を通って制御部(不図示)に接続されている。
なお、第1の端子台210に代えて、第1のコネクタ(第1のケーブル接続部の一例)であってもよく、第1のケーブルを接続するための接続部であれば任意でよい。
【0026】
第2の端子台(第2のケーブル接続部の一例)220は、複数設けられ、それぞれ対応するパワーモジュールPMの主端子TM1~TM3(図2参照)へと延びる複数の第2のケーブル(不図示)が接続される端子台である。各第2の端子台220は、載置台202の上面を貫通するようにして固定され、載置台202の内部(載置台の上面の反対側)にて、駆動電源部50へと延びるケーブルが接続されている。
なお、第2の端子台220に代えて、第2のコネクタ(第2のケーブル接続部の一例)であってもよく、第2のケーブルを接続するための接続部であれば任意でよい。
【0027】
第1の端子台210及び第2の端子台220は、それぞれ載置台202の上面の左側及び右側に、間に載置エリアAを挟んで配置されている。なお、第1の端子台210及び第2の端子台220は、図3(A)に示す配置に限定されるものではなく、正面視して(前面側から見て)載置エリアAを挟んで左右方向に間隔を空けて配置されていればよい。
【0028】
冷却液供給管240は、液冷式ヒートシンク12の第1のチューブ接続部122aへと延びる第1のチューブ(不図示)が接続され、チラー(不図示)によって冷却された冷却液を供給するための管である。冷却液供給管240は、載置台202の上面の後端側(奥側)の位置に配置され上方へと延びている。
【0029】
冷却液排出管230は、液冷式ヒートシンク12の第2のチューブ接続部122bから延びる第2のチューブが接続され、パワーモジュールPMを冷却した冷却液をチラーに戻すための管である。冷却液排出管230は、冷却液供給管240と間隔を空け、載置台202の上面の後端側(奥側)の位置に配置され上方へと延びている。
【0030】
冷却液排出管230の端部及び冷却液供給管240の端部には、左右方向に延び、冷却液排出管230及び冷却液供給管240を互いに接続するバイパス管280が取り付けられている。このバイパス管280には、流路を開閉するバルブ290が設けられている。
従って、バイパス管280により、被試験対象を取り付けることなく冷却液を循環できるので、チラー(不図示)及び冷却液の流路の点検が容易となる。
【0031】
ドライエア供給管250は、予め決められた相対湿度以下に維持されたドライエアを供給するための管である。ドライエア供給管250は、載置台202の上面の前端側であって載置エリアAよりも前面側の位置に上面から突出するように配置されており、その先端は、後述する漏液抑制部材310の高さよりも高い位置となるように設定されている。
従って、何らかの要因によって漏洩した冷却液が、ドライエア供給管250に入ってしまう可能性が低減される。
ここで、液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14にドライエアが直接当たると、パワーモジュールPMの内部温度に影響を与える要因となりうる。また、温湿度計260にドライエアが直接当たると、測定値に誤差が生じる要因となりうる。
従って、ドライエアの噴出方向は、上向きであることが好ましい。ただし、ドライエアの噴出方向は、液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14及び温湿度計260がある方向とは異なる方向であれば、任意でよい。
【0032】
温湿度計(温湿度測定部の一例)260は、試験空間Sの内部の温度及び相対湿度を測定するセンサである。温湿度計260は、載置台202の上面の右側かつ後端側の位置に配置されている。従って、温湿度計260は、載置台202の上面の前端側に配置されたドライエア供給管250と離れた位置に配置されているため、測定値に誤差が生じることが抑制される。
電磁ロック270は、閉じられたカバー204を開かないようにロックできる。電磁ロック270は、載置台202の上面の左側の前端側の位置に配置されている。
【0033】
試験空間Sには、漏液抑制部材310、排液孔H2及び漏液センサ320が更に配置されている。
漏液抑制部材310は、載置台202の上面から突出して設けられ、外部に冷却液が漏れることを抑制するための部材である。漏液抑制部材310は、閉じたカバー204の下端部の内周に沿って、前述の第1の端子台210、第2の端子台220、冷却液供給管240、冷却液排出管230、ドライエア供給管250、温湿度計260及び電磁ロック270を取り囲むように配置されている。
【0034】
排液孔H2は、漏洩した冷却液を排出する孔であり、載置台202の上面の後端部に形成されている。排液孔H2は、漏液抑制部材310の内側に配置され、漏洩した冷却液を排出する排液管315(図3(B)参照)が接続されている。
【0035】
漏液センサ320は、例えば電極間抵抗検知方式により、漏洩した冷却液を検出するためのセンサである。漏液センサ320は、漏液抑制部材310の内側に配置され、アンプ322及び帯状の検知帯324を有している。検知帯324は、接続端子台326を介してアンプ322に接続され、終端がターミネータ328に接続されている。検知帯324は、平面視して、1)液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14が載る載置エリアA、2)排液孔H2、3)冷却液供給管240、及び4)ドライエア供給管250を取り囲むように配置されている。ただし、検知帯324は、平面視して、少なくとも載置エリアA及び冷却液供給管240を取り囲むように配置されていればよい。
【0036】
駆動電源部50は、第1の試験部20a及び第2の試験部20bの背面側に配置され、パワーサイクル試験装置10の各部や被試験対象に対する電源を供給できる。また、駆動電源部50は、例えばパワーMOSFETによるスイッチング回路を有し、パワーモジュールPMに流すパワーサイクル試験用の電流を制御できる。
【0037】
制御部(不図示)は、チラー、温湿度計260、電磁ロック270、漏液センサ320及び駆動電源部50を制御できる。また、制御部は、ドライエア供給管250からのドライエアの供給を制御できる。
【0038】
次に、パワーサイクル試験装置10の動作(パワーサイクル試験装置10を使用したパワーサイクル試験方法)について説明する。
【0039】
(準備ステップ)
試験員が、カバー204を上方へ開き、ホルダ(不図示)に保持された被試験対象である液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14(図2参照)を載置エリアAに載せる。その際、被試験対象は、パワーモジュールPMの制御端子が第1の端子台210の側となり、主端子TM1~TM3が第2の端子台の側となるように配置される。また、被試験対象は、第1のチューブ接続部122a及び第2のチューブ接続部122bが奥側又は上側となるように配置される。
その後、試験員が、各パワーモジュールPMの制御端子と第1の端子台210とを第1のケーブルにて接続し、主端子TM1~TM3と第2の端子台220とを第2のケーブルにて接続する。更に、試験員が、液冷式ヒートシンク12の第1のチューブ接続部122aと冷却液供給管240とを第1のチューブにて接続し、第2のチューブ接続部122bと冷却液排出管230とを第2のチューブにて接続する。
【0040】
このように、載置エリアAを挟んでそれぞれ左右に第1の端子台210及び第2の端子台220が配置され、載置エリアAよりも後側の位置に冷却液供給管240及び冷却液排出管230が配置されているので、試験員は、載置台202の前面側から容易に配線及び配管の作業が可能となる。
従って、載置台202を覆うカバー204が上方に開き、試験員が作業するための広い空間が確保されることと相俟って、試験準備における作業性が向上する。
配線等が完了した後、試験員が、カバー204を閉じ、チラーの運転を開始する。閉じられたカバー204は、電磁ロック270によりロックされる。チラーの運転に伴い、冷却液の温度が低下する。試験環境によっては、液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14が結露する場合がある。
【0041】
(試験ステップ)
準備ステップが完了した後、試験員が操作パネル(不図示)から制御部(不図示)に対して指令信号を出力し、パワーサイクル試験を開始する。
パワーサイクル試験が開始されると、制御部が、所定の周期STごとに露点温度を算出し、予め決められた条件A~Cを全て満たすまで、ドライエア供給管250からドライエアを供給する。
ここで、条件Aは、温湿度計260によって測定された温度及び相対湿度に基づいて求められた露点温度が、予め決められた設定値以下になることである。
条件Bは、冷却液の温度が予め決められた範囲内に到達したことである。
条件Cは、パワーサイクル試験が開始されてから予め設定された時間Tが経過したことである。この時間Tは、結露した液冷式ヒートシンク付パワーモジュール14を乾燥させるために必要な時間として設定される。
【0042】
なお、露点温度は、温湿度計260によって測定された試験空間Sの内部の温度から飽和水蒸気圧の近似値を求め、温湿度計260によって測定された試験空間Sの内部の相対湿度から算出される水蒸気圧から得られる。飽和水蒸気圧と温度との関係は、例えばTetensの式により定められる。
予め決められた条件A~Cが全て成立すると、制御部は、ドライエアの供給を停止し、予め決められたサイクルでパワーモジュールPMに通電する。
【0043】
(露点温度管理ステップ)
予め決められたサイクルでパワーモジュールPMに通電している間、制御部は、引き続き所定の周期STごとに露点温度を算出し、算出した露点温度が予め決められた範囲にあることを監視する。
制御部は、露点温度が予め決められた範囲を外れた場合に、ドライエア供給管250からドライエアを供給する。露点温度が設定値以下になると、制御部は、ドライエアの供給を停止する。
その結果、試験空間Sの相対湿度が制御され、被試験対象の結露が抑えられる。
【0044】
なお、パワーサイクル試験の間に、冷却液が漏洩したり結露が発生したりした場合には、漏液センサ320がこれを検出し、制御部が、パワーサイクル試験を中止する。
漏洩した冷却液や結露による水は、漏液抑制部材310の内側に留まり、排液孔H2から排出されるため、載置台202の外に漏出することが抑制される。
【0045】
以上説明したように、パワーサイクル試験装置10によれば、ドライエア供給管250からドライエアが供給され、試験空間Sの相対湿度が適切に制御されるため、パワーサイクル試験中の結露の発生が抑制される。
その結果、より広い温度範囲(0℃以下を含む)において、パワーサイクル試験を実施することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
【符号の説明】
【0047】
10 パワーサイクル試験装置
12 液冷式ヒートシンク
14 液冷式ヒートシンク付パワーモジュール
122a 第1のチューブ接続部
122b 第2のチューブ接続部
20a 第1の試験部
20b 第2の試験部
50 駆動電源部
202 載置台
204 カバー
206 ヒンジ
210 第1の端子台
212 板状部材
220 第2の端子台
230 冷却液排出管
240 冷却液供給管
250 ドライエア供給管
260 温湿度計
270 電磁ロック
280 バイパス管
290 バルブ
310 漏液抑制部材
315 排液管
320 漏液センサ
322 アンプ
324 検知帯
326 接続端子台
328 ターミネータ
A 載置エリア
AX 回転軸
H1 配線孔
H2 排液孔
PM パワーモジュール
S 試験空間
TM1、TM2、TM3 主端子
図1
図2
図3