(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149672
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】磁気分離装置及び磁気分離方法
(51)【国際特許分類】
B03C 1/12 20060101AFI20231005BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B03C1/12
B03C1/00 B
B03C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058357
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 英樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、被処理液中の固体分を磁力により分離する磁気分離において、稼働や維持管理に係る負荷が少なく、かつ、分離効率の高い磁気分離装置及び磁気分離方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、内筒及び外筒を有する二重管構造からなる分離部と、分離部の外側に配置され、内筒の外側に磁場を発生させる磁場発生部と、を備え、分離部は、内筒の一端から磁性体を含む被処理液が供給されるとともに、内筒の他端側に整流部材を有する磁気分離装置及びこの装置を用いた磁気分離方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒及び外筒を有する二重管構造からなる分離部と、
前記分離部の外側に配置され、前記内筒の外側に磁場を発生させる磁場発生部と、を備え、
前記分離部は、前記内筒の一端から磁性体を含む被処理液が供給されるとともに、前記内筒の他端側に整流部材を有することを特徴とする、磁気分離装置。
【請求項2】
前記被処理液は、非磁性体からなる固形分も含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記磁場発生部は、一定方向に磁場を移動させる手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
前記分離部は、前記被処理液と比べ、磁性体含有量が低下した処理液を回収する第1回収部と、前記被処理液と比べ、磁性体含有量が増加した処理液を回収する第2回収部と、を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気分離装置。
【請求項5】
内筒及び外筒を有する二重管構造を用いた分離工程と、
前記二重管構造の外側から、前記内筒の外側に磁場を発生させる磁場発生工程と、を有し、
前記分離工程は、前記内筒の一端から磁性体を含む被処理液を供給する被処理液供給工程と、前記内筒の他端側に設けた整流部材により、前記内筒内の被処理液の移動方向と前記内筒外の被処理液の移動方向を反転させる整流工程と、を含むことを特徴とする、磁気分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気分離装置及び磁気分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体分を含む被処理液に対する処理手段の一つとして、被処理液中の固体分の除去あるいは回収を行う固液分離が挙げられる。
固液分離に係る技術としては、例えば、重力による固体分の沈降を行う沈殿分離、凝集剤を用いて重力による分離を促進する凝集沈殿分離、ろ過材を用いた膜ろ過分離、磁力を用いた磁気分離などが挙げられる。
特に、磁気分離は、被処理液中の固体分に磁性付与(担磁)を行い、磁力により固体分を濃縮、回収するものであり、重力による分離よりも分離効率が高く、ろ過材を用いる場合と比べ、稼働や維持管理に係る負荷が少ないという利点がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、廃水が供給される分離槽内に配設され、回転しながら廃水内の磁性フロックを磁力によって吸着するドラム状の分離器を備える磁気分離装置が記載されており、また、この分離器としては、ドラム回転体と、ドラム回転体の内周面に沿って配置された多数の磁石からなる磁石群を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された磁気分離装置のように、ドラム回転体に磁石を設けたものを用いる場合、ドラム表面の磁場強度や磁場勾配が小さいため、分離効率が低く、一度分離したものを繰り返し処理する必要がある。
【0006】
また、磁気分離装置の他の例としては、磁性媒体を充填したフィルターに外部から磁場を印加し、このフィルター上に磁性を有する固体分を吸着させるものも知られているが、固体分を含む被処理液に対する固液分離を行う場合、連続的な稼働が困難であるとともに、フィルターの閉塞が起こりやすいという問題がある。
【0007】
さらに、上述したような従来の磁気分離装置では、被処理液に磁場を印加する手段(例えば、磁石や磁性媒体を充填したフィルター等)や、その駆動機構が被処理液に直接接触している。このため、従来の磁気分離装置では、稼働を続けることで腐食や故障に対応するためのコスト(負荷)が増大していくことになる。
【0008】
したがって、本発明の課題は、被処理液中の固体分を磁力により分離する磁気分離において、稼働や維持管理に係る負荷が少なく、かつ、分離効率の高い磁気分離装置及び磁気分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、被処理液を供給して固液分離を行う分離部の外側に、磁場を発生させる磁場発生部を設けるとともに、分離部内における被処理液の移動方向を整流することで、磁場を印加する手段と被処理液が非接触の状態で磁気分離を行うことが可能となり、稼働や維持管理に係る負荷が少なく、かつ、分離効率を高めることが可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の磁気分離装置及び磁気分離方法である。
なお、本発明において、「磁性体」とは、磁場により強く磁化され、磁場を除いても磁化が残る物質であり、いわゆる強磁性体のことを指すものである。また、「非磁性体」とは、強磁性体ではない物質のことを指すものである。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の磁気分離装置は、内筒及び外筒を有する二重管構造からなる分離部と、分離部の外側に配置され、内筒の外側に磁場を発生させる磁場発生部と、を備え、分離部は、内筒の一端から磁性体を含む被処理液が供給されるとともに、内筒の他端側に整流部材を有することを特徴とするものである。
本発明の磁気分離装置によれば、被処理液を供給して固液分離を行う分離部の外側に、磁場を発生させる磁場発生部を設けることで、磁場を印加する手段と被処理液が非接触の状態で磁気分離を行うことが可能となる。これにより、稼働や維持管理に係る負荷を低減させることが可能となる。また、分離部を内筒と外筒を有する二重管構造とし、内筒の一端から被処理液を供給し、その他端側に整流部材を設けることで、内筒内部における被処理液の移動方向と、内筒から外筒側に排出された被処理液の移動方向を反転させ、分離部内で循環流を形成することが可能となる。この循環流により、磁場発生部によって発生した磁場内を被処理液が繰り返し通過するため、磁気分離効率を高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明の磁気分離装置の一実施態様としては、被処理液は、非磁性体からなる固形分も含むという特徴を有する。
この特徴によれば、被処理液中の磁性体及び非磁性体からなる固形分を一体として磁気分離(固液分離)の対象とすることが可能となる。これにより、本発明の磁気分離装置による処理が可能となる処理対象の適用範囲が拡張され、非磁性体からなる固形分についても、高い分離効率で固液分離を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の磁気分離装置の一実施態様としては、磁場発生部は、一定方向に磁場を移動させる手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、磁場の移動を行うことで、被処理液中の磁性体(及び非磁性体からなる固形分)を一定方向に誘導することが容易となる。これにより、磁気分離効率をより高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明の磁気分離装置の一実施態様としては、分離部は、被処理液と比べ、磁性体含有量が低下した処理液を回収する第1回収部と、被処理液と比べ、磁性体含有量が増加した処理液を回収する第2回収部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、分離部内において磁性体を含む被処理液が磁場内を通過するように旋回させる中で、磁性体含有量が低下する処理液と、磁性体含有量が増加する処理液が生じてくる。これらの処理液を回収する回収部を個々に設けることで、回収後の各処理液を適切に取り扱うことが容易となる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の磁気分離方法は、内筒及び外筒を有する二重管構造を用いた分離工程と、二重管構造の外側から、内筒の外側に磁場を発生させる磁場発生工程と、を有し、分離工程は、内筒の一端から磁性体を含む被処理液を供給する被処理液供給工程と、内筒の他端側に設けた整流部材により、内筒内の被処理液の移動方向と内筒外の被処理液の移動方向を反転させる整流工程と、を含むという特徴を有する。
本発明の磁気分離方法によれば、分離工程を行う二重管構造の外側から、磁場を発生させる磁場発生工程を行うことで、磁場を印加する手段と被処理液が非接触の状態で磁気分離を行うことが可能となる。これにより、稼働や維持管理に係る負荷を低減させることが可能となる。また、分離工程を内筒と外筒を有する二重管構造を用いて行い、内筒の一端から被処理液を供給し、その他端側に整流部材を設けることで、内筒内部における被処理液の移動方向と、内筒から外筒側に排出された被処理液の移動方向を反転させ、分離工程において、二重管構造内で循環流を形成することが可能となる。この循環流により、磁場発生工程によって発生した磁場内を被処理液が繰り返し通過するため、磁気分離効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理液中の固体分を磁力により分離する磁気分離において、稼働や維持管理に係る負荷が少なく、かつ、分離効率の高い磁気分離装置及び磁気分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る磁気分離装置を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様に係る磁気分離装置における分離部の別態様を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施態様に係る磁気分離装置を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施態様に係る磁気分離装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る磁気分離装置及び磁気分離方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する磁気分離装置については、本発明に係る磁気分離装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様に記載する磁気分離方法についても、本発明に係る磁気分離装置を用いた磁気分離方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の磁気分離装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る磁気分離装置10Aは、
図1に示すように、分離部20と、磁場発生部30Aと、を備えるものである。また、分離部20に対して、磁性体を含む被処理液W0を供給する被処理液供給部であるラインL1を有している。
なお、
図1の各矢印は流体または磁場の移動方向を示すものである。
【0019】
分離部20は、磁性体を含む被処理液W0(以下、単に「被処理液W0」とも呼ぶ)が供給され、被処理液W0に対し、磁力による固液分離(磁気分離)を行うためのものである。
また、本実施態様における分離部20は、
図1に示すように、内筒21と外筒22を有する二重管構造からなり、分離部20内では、内筒21及び外筒22を介して、被処理液W0の循環流が形成されるものである。
【0020】
本実施態様における分離部20に供給される被処理液W0は、固液分離の処理対象となる溶液であるとともに、磁性体を含む溶液であればよく、特に限定されない。
例えば、本実施態様における被処理液W0としては、分離対象としての磁性体を含む溶液が挙げられる。このような被処理液W0の具体例としては、工作機械や動力機構に対して用いられることで、磁性体である金属片や金属粉末を含む溶液となるクーラント液(使用済みクーラント液)が挙げられる。
また、本実施態様における被処理液W0の他の例としては、分離対象となる固形分を含み、かつ、この固形分を担磁させるための磁性体が添加された溶液が挙げられる。ここで、磁性体によって担磁される固形分とは、非磁性体からなる固形分であり、固液分離によって溶液中から除去または回収される対象となるものを指す。この固形分を含む溶液としては、除去対象となる懸濁物質を含む河川水、排水、下水のほか、回収対象となる微生物を含む生物処理後の処理水が挙げられる。そして、固形分を含む溶液に添加される磁性体としては、固形分に磁性を付与することができるものであればよく、マグネタイト粒子や鉄粉などの磁性体金属粒子のほか、樹脂に磁性体が混練された担体などが挙げられる。なお、添加される磁性体の大きさについては特に限定されないが、取扱いの容易性や、担磁効率(固形分との接触(吸着)効率)等を考慮し、0.1μm~10cm程度とすることが挙げられる。
【0021】
以下、本実施態様における分離部20の構造に係る具体例について、
図1に基づき、説明する。
本実施態様における分離部20は、
図1に示すように、内筒21及び外筒22を有するとともに、内筒21の一端(
図1では、内筒21の上端側)に対して、被処理液供給部(ラインL1)を接続するとともに、内筒21の他端側(
図1では、内筒21の下端側)には整流面23aを有する整流部材23が設けられる。
また、分離部20の上方部には、被処理液W0よりも磁性体含有量が低下した処理液W1(以下、単に「処理液W1」とも呼ぶ)を回収する第1回収部24が設けられ、分離部20の下方部には、被処理液W0よりも磁性体含有量が増加した処理液W2(以下、単に「処理液W2」とも呼ぶ)を回収する第2回収部25が設けられる。
【0022】
内筒21は、被処理液供給部(ラインL1)を介して被処理液W0が供給されるものであり、両端部が開口した管状部材からなることが挙げられる。
内筒21の具体的な材質及び形状については特に限定されない。例えば、内筒21の形状の一例としては、
図1に示すように、被処理液供給部と接続する方の端部(
図1における内筒21の上端)が、外周側に傾斜した形状とすることが挙げられる。後述するように、内筒21上端側から供給された被処理液W0は、循環流を形成し、再び内筒21上端側に戻ってくることになる。このとき、内筒21端部が外周側に傾斜した形状を有することで、外筒22内を移動してきた被処理液W0が内筒21内に進入しやすくなるとともに、内筒21端部近傍において移動方向の異なる被処理液W0の流れが干渉し合うのを抑制することが可能となり、安定した循環流を形成することが可能となる。
【0023】
また、内筒21には、供給された被処理液W0の移動を円滑に行うための機構を設けることが好ましく、例えば、
図1に示すように、内筒21内に移送スクリュー21aを設けることが挙げられる。この移送スクリュー21aを駆動機構21b(モーター)によって稼働させることで、被処理液供給部から供給された被処理液W0が内筒21内を閉塞することなく、移動(流下)していく。
【0024】
外筒22は、内筒21から排出された被処理液W0が貯留されるとともに、被処理液W0を、処理液W1と、処理液W2に分離するものであり、内筒21より径の大きい管状部材からなるものが挙げられる。
外筒22の具体的な材質及び形状については特に限定されない。例えば、外筒22の形状の一例としては、
図1に示すように、外筒22上方側面に処理液W1を回収する第1回収部24としての配管が接続され、外筒22底面は、処理液W2を回収する第2回収部25としての流路を形成する構造とすることが挙げられる。なお、第2回収部25には、処理液W2(固形分含有量が高い溶液)を円滑に搬送するための搬送手段を設けることが好ましく、このような搬送手段としては、スラリーポンプや移送スクリューなどが挙げられる。
【0025】
整流部材23は、内筒21から排出される被処理液W0の流れを反転させるものであり、被処理液W0が排出される側の内筒21端部(
図1では内筒21の下端)の開口部に対向するように設けられた整流面23aを有するものが挙げられる。ここで、整流面23aとしては、内筒21から排出される被処理液W0の流れを反転させることができるものであればよく、水平面からなるものであってもよく、傾斜面の組み合わせからなるものであってもよい。
なお、整流部材23としては、
図1に示すように、内筒21から排出される被処理液W0を反転させることと併せ、外筒22底面側に設けられる第2回収部25への流路形成を行う構造を有するものとしてもよい。
【0026】
磁場発生部30Aは、分離部20の外側に配置され、内筒21の外側に磁場を発生させるものである。より具体的には、本実施態様における磁場発生部30Aは、被処理液W0と直接接触することなく、分離部20内における被処理液W0の移動領域に対して磁場を発生させ、被処理液W0に磁場を印加するものである。
【0027】
磁場発生部30Aとしては、分離部20の外側から、内筒21の外側(特に外筒22側壁近傍)に磁場を発生させることができるものであればよい。これにより、被処理液W0に磁場を印加するに当たり、磁気発生に係る構成については、被処理液W0と接触することによる腐食や故障が生じることがなく、磁気分離装置10Aの稼働や維持管理に係る負荷が低減される。
また、磁場発生部30Aとしては、発生させる磁場を一定方向に移動させることができる手段(磁場移動手段)を備えることが好ましい。これにより、被処理液W0中の磁性体及び磁性体によって担磁された固形分の移動が一定方向に誘導され、固液分離(磁気分離)効率を高めることが可能となる。
【0028】
本実施態様における磁場発生部30Aとしては、
図1に示すように、磁石31と、磁石31が貼り付けられたベルトコンベア32を備えるものが挙げられる。なお、ここで、ベルトコンベア32は、磁場移動手段に相当する。
磁石31としては、外部からエネルギー(磁場や電流)を受けることなく、長期にわたって磁場を発生できるものであればよく、例えば、合金磁石、フェライト磁石、希土類磁石のような永久磁石と呼ばれるものが挙げられる。
図1に示すように、ベルトコンベア32は、磁石31が貼り付けられた面が外筒22の側壁に対向するように設けられており、ベルトコンベア32を回転駆動することで、磁石31によって発生した磁場がベルトコンベア32の回転方向(
図1では、外筒22の中央部から下部)に向かって移動することになる。
【0029】
磁場発生部30Aとして設ける磁石31及びベルトコンベア32の個数については特に限定されない。例えば、
図1に示すように、一対のベルトコンベア32を設けることのほか、外筒22の外周を取り囲むように複数のベルトコンベア32を設けることが挙げられる。
【0030】
本実施態様における磁気分離装置10Aを用いた磁気分離方法に係る各工程について、
図1に基づき、説明する。
まず、本実施態様の磁気分離装置10Aに係る内筒21及び外筒22を有する二重管構造を用いた分離工程として、内筒21の一端(
図1では、内筒21の上端側)から、被処理液供給部(ラインL1)を介して被処理液W0を内筒21内部に供給する(被処理液供給工程)。そして、内筒21内部に供給された被処理液W0は、内筒21に沿って移動(
図1では流下)し、内筒21の他端(
図1では、内筒21の下端側)から外筒22内に向かって排出される。
このとき、内筒21の他端側に整流部材23を設けることで、内筒21から排出された被処理液W0が整流部材に接触することで、被処理液W0の流れが反転し、外筒22内では、内筒21内と逆方向に被処理液W0が移動することになる(整流工程)。なお、本実施態様における分離部20の構造では、
図1に示すように、内筒21内を流下してきた被処理液W0は、整流部材23によって流れが反転し、外筒22内を上昇していき、再び内筒21側に戻ることで循環流が形成される(
図1の薄灰色の矢印)。この循環流により、磁場発生工程によって発生する磁場内を被処理液W0が繰り返し通過することになる。これにより、磁気分離効率を高めることが可能となる。
【0031】
一方、分離工程を行う二重管構造の外側(外筒22の外側)から、内筒21の外側(外筒22内)に磁場を発生させる磁場発生工程として、ベルトコンベア32を回転駆動させ、分離部20の中央部から下部に向かって磁石31による磁場を発生させる。これにより、被処理液W0中の磁性体及び担磁された固形分は、発生した磁場の流れに沿って分離部20の下方向に移動することになり、磁場を通過した被処理液W0の一部は、磁性体含有量が増加した処理液W2として、第2回収部25方向へ移動していく(
図1の濃灰色の矢印)。
また、被処理液W0に含まれる磁性体及び担磁された固形分が、磁場発生部30Aによる磁場を通過することで濃縮され、処理液W2として回収される一方で、磁性体含有量が低下した処理液W1は、外筒22内を上昇し、第1回収部24によって回収される(
図1の白塗りの矢印)。
【0032】
なお、第1回収部24及び第2回収部25を介して回収された処理液W1及び処理液W2は、それぞれの処理液の性質に応じ、活用あるいは更に処理を行うものとしてもよい。
例えば、第1回収部24で回収された処理液W1については、用水として他の処理施設で利用することや、pH調整や消毒処理などを経て、河川等に放流することが挙げられる。また、第2回収部25で回収された処理液W2は、磁性体のみを回収・再利用する処理設備に導入することや、固形分として微生物を含む場合、回収した処理液W2をそのまま生物処理設備に返送することなどが挙げられる。
【0033】
また、
図1には、本実施態様の磁気分離装置10Aにおける分離部20について、内筒21上端側から被処理液W0を供給し、内筒21内を流下した被処理液W0が外筒22内を上昇して循環流を形成するものを示したが、これに限定されるものではない。
図2は、本実施態様の磁気分離装置1Aにおける分離部20の別態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、本実施態様の磁気分離装置10Aにおける分離部20の別態様としては、被処理液供給部(ラインL1)を内筒21下端側に設け、整流部材23を内筒21上端側に設けることで、内筒21内を上昇した被処理液W0が外筒22内を下降して循環流を形成するものが挙げられる。なお、
図1に示した構成と同じものについては説明を省略する。
【0034】
図2に示す磁気分離装置10Aでは、外筒22内における被処理液W0の循環流(
図2の薄灰色の矢印)の向きと、磁場発生部30Aによって磁場が移動する向き(処理液W2の移動方向、
図2の濃灰色の矢印)が同じ方向となる。したがって、外筒22内における被処理液W0及び処理液W2の流れは、互いに干渉し合うことがなく、安定した循環流を形成することが可能となる。
【0035】
以上のように、本実施態様の磁気分離装置10A及び磁気分離方法により、磁性体を含む被処理液に対して磁場を印加する手段が、被処理液と非接触の状態で磁気分離を行うことが可能となる。これにより、装置の稼働や維持管理に係る負荷を低減させることが可能となる。また、本実施態様の磁気分離装置10A及び磁気分離方法により、内筒と外筒を有する二重管構造において、内筒の一端から被処理液を供給し、その他端側に整流部材を設けることで、被処理液の循環流を形成することができる。そして、この循環流によって被処理液が磁場内を繰り返し通過することで、磁気分離効率を高めることが可能となる。
【0036】
上述したように、第1の実施態様における磁気分離装置10Aにおいては、磁場発生部30Aとして、磁石31及びベルトコンベア32を備えるものを示したが、これに限定されるものではない。
以下、本発明の磁気分離装置に係る他の実施態様として、被処理液W0に磁場を印加する手段(磁場発生部)に係る別態様について例示する。
【0037】
[第2の実施態様]
図3は、本発明の第2の実施態様の磁気分離装置10Bの概略説明図である。
本実施態様に係る磁気分離装置10Bは、
図3に示すように、磁場発生部30Bとして複数の電磁石33aからなる電磁石ユニット33を用いるものである。
なお、本実施態様における磁気分離装置10Bの構成のうち、第1の実施態様の磁気分離装置10Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0038】
本実施態様における磁場発生部30Bは、
図3に示すように、複数の電磁石33aを分離部20の外側に縦方向に固定して配置したものを電磁石ユニット33として扱い、この電磁石ユニット33を分離部20の外周(外筒22の外周)に沿って複数設けるものが挙げられる。
ここで、電磁石ユニット33において、複数の電磁石33aに対して電流の供給を均一に行うものとし、分離部20内の一定範囲に対して均一な磁場を形成するものとてもよいが、第1の実施態様における磁気分離装置10Aと同様に、磁場移動手段を設けることが好ましい。
本実施態様の磁場発生部30Bにおける磁場移動手段としては、例えば、各電磁石33aに対して供給する電流の制御を行うことができる制御手段を設け、電磁石ユニット33として配列されている各電磁石33aにおいて、配列の上から下(あるいは配列の下から上)の順番で、電流の供給を行うように制御することが挙げられる。これにより、磁場発生部30Bで発生させる磁場の大きさや磁場の移動速度について、作業者が任意に変更することが容易となる。
【0039】
[第3の実施態様]
図4は、本発明の第3の実施態様の磁気分離装置10Cの概略説明図である。
本実施態様に係る磁気分離装置10Cは、
図4に示すように、磁場発生部30Cとして、分離部20の外周に設けた螺旋回転体34に対し、磁石35を取り付けたものを用いるものである。
なお、本実施態様における磁気分離装置10Cの構成のうち、第1の実施態様の磁気分離装置10Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0040】
本実施態様における磁場発生部30Cは、
図4に示すように、外筒22の外周に沿って巻き付けるように設けられた螺旋状部材34a及びこの螺旋状部材34aを回転駆動する駆動機構34bを有する螺旋回転体34と、螺旋状部材34aに取り付けられる磁石35と、を備えるものが挙げられる。
【0041】
螺旋状部材34aは、磁石35を取り付け可能な幅を有し、かつ、分離部20(外筒22)の外周に沿った形状を備えるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、
図4に示すように、リボン状部材を螺旋状に成形したものが挙げられる。
駆動機構34bは、螺旋状部材34aを回転駆動させることができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、
図4に示すように、螺旋状部材34aと連結され、かつ、分離部20の外周(外筒22の外周)を回転可能な円環部材を設け、この円環部材を回転させるためのギア及びモーター(不図示)を備えるものなどが挙げられる。
本実施態様における螺旋回転体34は、磁場移動手段も兼ねるものとなる。
【0042】
本実施態様における磁石35は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。また、磁石35を螺旋回転体34に設ける個数についても特に限定されない。
【0043】
磁石35が取り付けられた螺旋回転体34を分離部20の外側(外筒22の外周)で回転駆動させることで、比較的少ない部品数によって、内筒21の外側(外筒22側壁近傍)における広範囲に磁場を発生させるとともに、磁場の移動を行うことが可能となる。これにより、磁気分離効率の向上とともに、磁気分離装置10Cとしての省スペース化やコストダウンが可能となる。
【0044】
なお、上述した実施態様は磁気分離装置及び磁気分離方法の一例を示すものである。本発明に係る磁気分離装置及び磁気分離方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る磁気分離装置及び磁気分離方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の磁気分離装置及び磁気分離方法は、磁性体を含む被処理液に対する磁気分離に対して好適に活用することができる。また、本発明の磁気分離装置及び磁気分離方法は、磁性体及び非磁性体からなる固形分を含む被処理液に対する磁気分離についても好適に活用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10A,10B,10C 磁気分離装置、20 分離部、21 内筒、21a 移送スクリュー、21b 駆動機構、22 外筒、23 整流部材、23a 整流面、24 第1回収部、25 第2回収部、30A,30B,30C 磁場発生部、31 磁石、32 ベルトコンベア、33 電磁石ユニット、33a 電磁石、34 螺旋回転体、34a 螺旋状部材、34b 駆動機構、35 磁石、L1 ライン(被処理液供給部)、W0 磁性体を含む被処理液、W1 磁性体含有量が低い処理液、W2 磁性体含有量が高い処理液