(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149678
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20231005BHJP
F16H 59/08 20060101ALI20231005BHJP
E02F 3/84 20060101ALI20231005BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/08
E02F3/84 A
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058366
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 利康
(72)【発明者】
【氏名】宮本 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 徹也
【テーマコード(参考)】
2D003
3J552
【Fターム(参考)】
2D003AA03
2D003AB01
2D003AC02
2D003BA02
2D003CA01
2D003DA04
3J552MA01
3J552MA06
3J552NA07
3J552NB01
3J552PA32
3J552PA38
3J552RA28
3J552RB17
3J552SB05
3J552SB12
3J552SB25
3J552VA62W
3J552VA70W
(57)【要約】
【課題】速度制限状態に応じて適切な発進時シフトポジションを選択することができる作業車両を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、作業車両であって、変速装置と、プロセッサを含むコントローラと、を備え、前記コントローラは、作業車両の速度制限状態が、第1の速度制限状態と、前記第1の速度制限状態よりも速度制限が必要な状態である第2の速度制限状態とのうちのいずれにあるかを判定し、作業車両の速度制限状態が前記第2の速度制限状態にある場合に、発進時に適用される速度範囲である発進時速度範囲として設定可能な速度範囲を制限する作業車両。である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両であって、
変速装置と、
プロセッサを含むコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
作業車両の速度制限状態が、第1の速度制限状態と、前記第1の速度制限状態よりも速度制限が必要な状態である第2の速度制限状態とのうちのいずれにあるかを判定し、
作業車両の速度制限状態が前記第2の速度制限状態にある場合に、発進時に適用される速度範囲である発進時速度範囲として設定可能な速度範囲を制限する、
作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1の速度制限状態から前記第2の速度制限状態へ変更した場合に、前記第1の速度制限状態中に設定された発進時速度範囲が、前記第2の速度制限状態中に設定可能な速度範囲外であった場合、前記設定された発進時速度範囲を、前記第2の速度制限状態中に設定可能な速度範囲のうちのいずれかに再設定する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第2の速度制限状態中に設定可能な速度範囲のうち、前進する際の速度範囲を示すポジション値、後進する際の速度範囲を示すポジション値が共に、前記第2の速度制限状態に対応して定められた上限値以下である速度範囲に再設定する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第2の速度制限状態中に設定可能な速度範囲のうち、前進する際の速度範囲を示すポジション値、後進する際の速度範囲を示すポジション値が共に、前記第1の速度制限状態中に設定された発進時速度範囲の各ポジション値以下である速度範囲に再設定する、
請求項2または3に記載の作業車両。
【請求項5】
操作装置を備え、
前記コントローラは、前記操作装置からの指令信号に基づいて、複数の速度範囲のうちのいずれかを、前記発進時速度範囲として設定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記発進時速度範囲が設定された場合に、前記設定された発進時速度範囲を示すインデックス値を記憶し、
前記速度制限状態が変更した場合、前記発進時速度範囲を、前記記憶したインデックス値が示す速度範囲に設定する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータグレーダ、ブルドーザ等の作業車両には、複数の変速段を有する自動変速機を備えたものがある。作業車両の自動変速機は、整地・掘削等の作業、自走による回送等を行う際の車速や負荷に応じ、速度段が自動的に切替わるように制御される。例えば、特許文献1に記載されているブルドーザの自動変速装置では、発進時にはオペレータによって選択された速度段で発進し、その後、車速に応じて速度段が切り替えられていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両においては、例えば、作業時の操作容易化のため、操舵を自動的に行う運転モードを備えることがある。また、ステアリングハンドルを操作せず、作業機レバーの近辺に設けられたステアリング操作レバー等で操舵することができる運転モードを備えることがある。このような運転モードにおいては、通常の運転モードに対し、作業車両の走行時における速度制限状態が異なることがある。このように、速度制限が異なる複数の運転モードを有する作業車両においては、発進時においても、速度制限状態に応じて適切な速度段に切り替わるように、制御がなされることが望まれる、いう課題があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、速度制限状態に応じて適切な発進時シフトポジションを選択することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、作業車両であって、変速装置と、プロセッサを含むコントローラと、を備え、前記コントローラは、作業車両の速度制限状態が、第1の速度制限状態と、前記第1の速度制限状態よりも速度制限が必要な状態である第2の速度制限状態とのうちのいずれにあるかを判定し、作業車両の速度制限状態が前記第2の速度制限状態にある場合に、発進時に適用される速度範囲である発進時速度範囲として設定可能な速度範囲を制限する作業車両である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様によれば、速度制限状態に応じて適切な発進時シフトポジションを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る作業車両の構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る作業車両における、変速装置の動作を制御するための機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る作業車両の表示装置における情報の表示例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る作業車両のコントローラが記憶する、発進時シフトポジションとシフトインデックス、各運動モードで選択可能なシフトポジションの一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る作業車両のコントローラにおいて、発進時シフトポジションとして選択可能なシフトポジションを模式的に示す図である。
【
図6】実施形態に係る作業車両のコントローラにおいて、運転モードが変更されたときの、発進時シフトポジションの設定例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るコントローラの動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る作業車両のコントローラにおいて、運転モードが変更されたときの、発進時シフトポジションの他の設定例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る作業車両のコントローラにおいて、運転モードが変更されたときの、発進時シフトポジションの他の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る作業車両10の構成を示す概略図である。
図1に示すように、実施形態に係る作業車両10は、例えばモータグレーダである。なお、作業車両10は、モータグレーダ以外の、ホイール式ショベル、ブルドーザ、ホイールローダ等であってもよい。
【0011】
本実施形態における作業車両10としてのモータグレーダは、車体フレーム11と、前輪12、後輪13と、運転室14と、作業機15と、駆動機室16と、変速装置18と、を主に備えている。
【0012】
車体フレーム11は、作業車両10の前後方向Daに沿って延びている。車体フレーム11は、運転室14を支持している。車体フレーム11は、前後方向Daの後方に配置されたリヤフレーム11rと、前後方向Daの前方に配置されたフロントフレーム11fと、を有している。リヤフレーム11rは、駆動機室16を支持している。フロントフレーム11fは、リヤフレーム11rに回動可能に連結されている。
【0013】
前輪12、後輪13は、車体フレーム11の前後方向Daの前方と後方とにそれぞれ備えられている。前輪12、後輪13は、それぞれ、水平面内で前後方向Daに交差する作業車両10の幅方向Dwの両側に配置されている。前輪12は、フロントフレーム11fの前端部に回転自在に支持されている。後輪13は、例えば、前後方向Daに間隔をあけて、リヤフレーム11rに2組備えられている。
【0014】
作業機15は、例えばブレード152を含んでいる。作業車両10は、例えば、ブレード152で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0015】
図2は、本実施形態に係る作業車両における、変速装置18の動作を制御するための機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、後輪13は、駆動機室16に配置された駆動機17によって回転駆動される。駆動機17は、エンジンである。駆動機17は、電動モータであってもよい。駆動機17による駆動力は、変速装置18を介して、後輪13の車軸13sに伝達される。
【0016】
変速装置18は、駆動機17から出力される回転を変速して車軸13sに出力する。変速装置18は、本実施形態において、複数のギヤの噛み合い状態を切り替えることで、変速比(速度範囲)を複数段階に切替可能な有段変速装置である。また、変速装置18は、いわゆるCVT(Continuously Variable Transmission)等のように、入力側と出力側との変速比を無段階に調整可能な無段変速装置であってもよい。
【0017】
作業車両10は、変速装置18を介して後輪13が回転駆動されることで、前後方向Daに進退可能とされている。変速装置18は、前進、後進のそれぞれにおいて、例えば複数段階(例えば、8段階)の速度範囲(シフトポジション)で、変速比を切替可能である。本明細書においては、変速装置18が有段変速機である場合には、各速度段で駆動機17から車軸13sへの駆動力伝達を担う領域を、速度範囲と称する。変速装置18が無段変速機である場合には、無段変速機に擬似的に設定される各速度段で駆動機17から車軸13sへの駆動力伝達を担う領域を、速度範囲と称する。
【0018】
変速装置18は、後述のコントローラ30の制御により、前進時、後進時のそれぞれにおいて、速度センサ19で検出される作業車両10の走行速度に応じて、シフトポジションを切り替える。変速装置18は、作業車両10の走行速度の絶対値が大きくなるほど、減速比が段階的に小さくなるように、シフトポジションの切替制御がなされる。変速装置18は、コントローラ30の制御により、変速動作を行うためのソレノイドバルブ等の電磁制御弁18vが操作されることで、シフトポジションが切り替わる。
【0019】
図1に示すように、運転室14は、車体フレーム11の前後方向Daの中間部に配置されている。運転室14内には、
図2に示すように、ステアリングホイール21、複数の作業機レバー22と、及びステアリング操作レバー23と、前後進(FNR)切替レバー24と、運転モード切替スイッチ25と、アクセルペダル26と、シフトレバー(操作装置)28と、表示装置29と、コントローラ30と、を少なくとも備えている。
【0020】
ステアリングホイール21は、作業車両10のオペレータが着座する運転席(図示無し)の正面前方に配置されている。ステアリングホイール21は、オペレータがステアリングホイール21を回動操作することで、前輪12を操舵する。
【0021】
複数の作業機レバー22は、作業機15を操作するためのものである。複数の作業機レバー22は、運転席に着座したオペレータの左右(幅方向)の両側に配置されている。各作業機レバー22は、傾動方向が、例えば前後方向、左右方向等に設定されている。各作業機レバー22をオペレータが傾動操作することで、作業機15のブレード152が、上下動、前後動、左右方向への移動、傾動等といった各種の動作をなす。なお、作業機レバー22の数、配置、作業機レバー22を操作した場合の作業機15の動作については、何ら限定するものではない。
【0022】
ステアリング操作レバー23は、複数の作業機レバー22の近傍に配置されている。ステアリング操作レバー23は、オペレータがステアリング操作レバー23を傾動操作することで、前輪12を操舵する。ステアリング操作レバー23は、オペレータがステアリングホイール21に触れることなく、前輪12の操舵を可能とするものである。
【0023】
前後進切替レバー24は、後述する変速装置18を操作することで、駆動機17の駆動力が伝達される後輪13の回転方向を切り替える。前後進切替レバー24は、オペレータの操作により、作業車両10が前進するよう駆動機17の駆動力を後輪13に伝達する「前進(F)」、駆動機17の駆動力の後輪13への伝達を遮断する「ニュートラル(N)」、作業車両10が後進するよう駆動機17の駆動力を後輪13に伝達する「後進(R)」のいずれか一つに切り替えるよう、変速装置18に指令を出力する。
アクセルペダル26は、オペレータの操作に応じて駆動機17の回転数を調整し、作業車両10の走行速度を調整するものである。
【0024】
運転モード切替スイッチ25は、オペレータの操作により、作業車両10の運転モードの切替を行う。本実施形態において、作業車両10の運転モードとしては、「通常モード」と、「サブステアリングモード」、「オートステアリングモード」、の3通りが選択可能とされている。
【0025】
「通常モード」では、オペレータによるステアリングホイール21の操作によって前輪12を操舵するとともに、オペレータによるによるアクセルペダル26の操作により、作業車両10の走行速度の調整を行いながら、作業車両10を走行させる。
【0026】
「サブステアリングモード」では、オペレータによるステアリング操作レバー23の傾動操作により前輪12を操舵するとともに、オペレータによるアクセルペダル26の操作により、作業車両10の走行速度の調整を行いながら、作業車両10を走行させる。「サブステアリングモード」では、作業車両10の走行速度を制限する。「サブステアリングモード」では、後述のコントローラ30の制御により、作業車両10の発進時における変速装置18で選択(設定)可能なシフトポジションを制限する。
【0027】
「オートステアリングモード」では、後述するコントローラ30の制御により、前輪12の操舵を自動的に行う。「オートステアリングモード」では、作業車両10の走行速度を制限する。「オートステアリングモード」では、後述のコントローラ30の制御により、作業車両10の発進時における変速装置18で選択(設定)可能なシフトポジションを制限する。「オートステアリングモード」では、「サブステアリングモード」よりも、作業車両10の発進時に選択(設定)可能なシフトポジションがさらに制限され、走行速度制限が、より低速側に設定されている。
【0028】
つまり、「通常モード」では、速度制限を要する制御機能が無効とされた、第1の速度制限状態に設定される。これに対し、「サブステアリングモード」、及び「オートステアリングモード」では、速度制限を要する制御機能が有効な状態とされた、第2の速度制限状態に設定される。「サブステアリングモード」、及び「オートステアリングモード」では、第1の速度制限状態よりも速度制限が必要な状態である、第2の速度制限状態に設定される。
【0029】
シフトレバー28は、変速装置18におけるシフトポジションを、オペレータの操作により切替可能とするものである。シフトレバー28は、通常時は、変速装置18のシフトポジションを変化させない「0(ゼロ)」の位置に配置されている。オペレータの操作により、シフトレバー28は、変速装置18のシフトポジションをアップさせる「UP」、又はシフトポジションをダウンさせる「DOWN」に切り替えることができる。後述のコントローラ30は、オペレータのシフトレバー28の操作によってシフトポジションが切り替えられた場合、その操作内容に応じて変速装置18における変速比の切替を行い、それ以外の場合は、作業車両10の走行速度に応じて変速装置18の変速比の切替を自動的に行う。なお、変速装置18の変速比の切替は、オペレータのシフトレバー28の操作内容に応じてのみ行われてもよく、コントローラ30の制御により作業車両10の走行速度に応じて自動的に行われなくてもよい。
また、作業車両10の発進に際し、オペレータがシフトレバー28を操作した場合、コントローラ30は、シフトレバー28の操作に応じて、変速装置18の発進時シフトポジションを切り替える。
【0030】
図3は、本実施形態における作業車両10の表示装置29における情報の表示例を示す図である。
表示装置29は、作業車両10が有する複数の機能に係る情報を表示する。本実施形態において、
図3に示すように、表示装置29は、後に詳述する発進時シフトポジション(発進時速度範囲)を示す情報I1を表示する。
【0031】
(コントローラの構成例)
コントローラ30は、変速装置18の動作を制御する。
コントローラ30は、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えたコンピュータと、コンピュータの周辺回路や周辺装置等のハードウェアを用いて構成することができる。コントローラ30は、は、ハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、
図2に示すように、入出力部31、設定条件記憶部32、状態記憶部33、変速制御部34、及び発進時設定部35を備える。
【0032】
入出力部31は、所定の周期で繰り返し、ステアリングホイール21、複数の作業機レバー22、ステアリング操作レバー23、前後進切替レバー24、運転モード切替スイッチ25、及びアクセルペダル26の操作情報を入力する。入出力部31は、後述の変速制御部34の処理に基づいて、変速装置18のシフトポジションの切替を制御するための指令情報を出力する。入出力部31は、表示装置29で表示すべき画像情報、文字情報等を出力する。
【0033】
設定条件記憶部32は、変速装置18の制御に用いられる各種の設定条件を記憶している。設定条件記憶部32は、例えば、
図4に示すように、作業車両10が停止状態(走行速度=0)から発進する際の前進時(F)、及び後退時(R)のシフトポジション(速度範囲)である発進時シフトポジション(発進時速度範囲)の組み合わせと、発進時シフトポジションの組み合わせを示すインデックス値である、シフトインデックスS1~S8と、を関連付けて記憶している。
本実施形態では、設定条件記憶部32は、例えば、
前進1段(F1)/後進1段(R1):シフトインデックスS1、
前進1段(F1)/後進2段(R2):シフトインデックスS2、
前進1段(F1)/後進3段(R3):シフトインデックスS3、
前進2段(F2)/後進2段(R2):シフトインデックスS4、
前進2段(F2)/後進3段(R3):シフトインデックスS5、
前進3段(F3)/後進2段(R2):シフトインデックスS6、
前進3段(F3)/後進3段(R3):シフトインデックスS7、
前進3段(F4)/後進2段(R2):シフトインデックスS8、
と関連付けて記憶している。
【0034】
また、設定条件記憶部32は、作業車両10の運転モードである、「通常モード」と、「サブステアリングモード」、「オートステアリングモード」のそれぞれにおいて、
図3に示した、複数の発進時シフトポジションの組み合わせ(シフトインデックスS1~S8)のうち、選択可能であるか否かを示す情報を記憶している。
図3において、「○」は、それぞれの運転モードで、発進時シフトポジションとして選択可能であることを示し、「×」は、発進時シフトポジションとして選択不可であることを示す。
本実施形態では、「通常モード」においては、発進時の速度を制限する速度制限制御の対象とならず、シフトインデックスS1~S8の全てが、発進時シフトポジションとして選択可能とされている。
「サブステアリングモード」においては、シフトインデックスS8が速度制限制御の対象となり、シフトインデックスS1~S7が、発進時シフトポジションとして選択可能とされている。
「オートステアリングモード」においては、シフトインデックスS3、S5~S8が速度制限制御の対象となり、シフトインデックスS1、S2、S4のみが、発進時シフトポジションとして選択可能とされている。
【0035】
状態記憶部33は、入出力部31に入力された、ステアリングホイール21、複数の作業機レバー22、ステアリング操作レバー23、前後進切替レバー24、運転モード切替スイッチ25、及びアクセルペダル26の操作情報(操作状態)を記憶している。状態記憶部33は、直前に設定された発進時シフトポジションを、一時的に記憶している。また、状態記憶部33は、オペレータによるシフトレバー28の操作によって、発進時シフトポジションが変更された場合、変更後の発進時シフトポジションを記憶する。本実施形態では、状態記憶部33は、発進時シフトポジションに対応するシフトインデックスのインデックス値を記憶する。
【0036】
変速制御部34は、電磁制御弁18vの動作を制御することで、変速装置18におけるシフトポジションの切替動作を制御する。変速制御部34は、作業車両10の発進に際しては、後述の発進時設定部35で設定された発進時シフトポジションに応じ、変速装置18のシフトポジション(速度段)を切り替える。変速制御部34は、作業車両10の発進後、速度センサ19で検出される作業車両10の走行速度や作業車両10の負荷等に応じ、変速装置18のシフトポジションを変化させる。変速制御部34は、予め設定された変速制御マップ等に基づき、作業車両10の走行速度や作業車両10の負荷等に応じて変速装置18のシフトポジションを変化させる。なお、変速制御部34は、オペレータのシフトレバー28の操作内容に応じてのみ変速装置18のシフトポジションを変化させてもよく、作業車両10の走行速度や作業車両10の負荷等に応じて変速装置18のシフトポジションを変化させなくてもよい。ここでは、作業車両10の発進後の、変速制御部34による変速装置18の変速制御内容について、具体的に限定するものではない。
【0037】
発進時設定部35は、作業車両10の発進に際し、作業車両10の運転モードに応じた発進時シフトポジションを設定する。発進時設定部35は、設定条件記憶部32に記憶された、運転モード毎に発進時シフトポジションとして選択可能なシフトポジション(
図4参照)に基づいて、発進時シフトポジションを設定する。
【0038】
発進時設定部35は、作業車両10が停止している場合にのみ、発進時シフトポジションを設定する処理を実行する。本実施形態では、前後進切替レバー24の位置が、「ニュートラル(N)」であり、かつ、作業車両10が停止状態である場合にのみ、発進時シフトポジションを設定する処理を実行する。ここで、停止状態とは、速度センサ19で検出される作業車両10の走行速度が0の場合であり、本実施形態では、速度センサが時速1km未満を0.5sec以上継続して検出した場合、作業車両10の走行速度を0とする。
【0039】
発進時設定部35は、
図4、
図5に示すように、作業車両10の運転モードが、速度制限を要する制御機能が無効な第1の速度制限状態である「通常モード」である場合、シフトインデックスS1~S8の中から、いずれかのシフトポジションを選択し、発進時シフトポジションとして設定する。発進時設定部35は、作業車両10の運転モードが、速度制限を要する制御機能が有効な第2の速度制限状態である「サブステアリングモード」である場合、シフトインデックスS1~S7の中から、いずれかのシフトポジションを選択し、発進時シフトポジションとして設定する。発進時設定部35は、作業車両10の運転モードが、速度制限を要する制御機能が有効な第2の速度制限状態である「オートステアリングモード」である場合、シフトインデックスS1、S2、S4の中から、いずれかのシフトポジションを選択し、発進時シフトポジションとして設定する。
【0040】
発進時設定部35は、作業車両10の運転モードが変更された場合、変更後の運転モードに応じた発進時シフトポジションを設定する。例えば、「通常モード」中に設定された発進時シフトポジションが、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」中に設定可能なシフトポジション外であった場合、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」中に設定可能なシフトポジションのうちのいずれかを選択し、発進時シフトポジションとして再設定する。具体的には、発進時設定部35は、変更後の運転モードが「サブステアリングモード」である場合、変更直前の「通常モード」中に設定されていた発進シフトポジションが、「サブステアリングモード」中に選択可能なシフトインデックスS1~S7以外、つまりシフトインデックスS8に対応したシフトポジションF4/R2であった場合、シフトインデックスS1~S7の何れかに対応したシフトポジションを選択し、発進時シフトポジションとして設定する。また、発進時設定部35は、変更後の運転モードが「オートステアリングモード」である場合、変更直前の「通常モード」、又は「サブステアリングモード」中に設定されていた発進シフトポジションが、「オートステアリングモード」中に選択可能なシフトインデックスS1、S2、S4以外、つまりシフトインデックスS3、S5~S8に対応したシフトポジションであった場合、シフトインデックスS1、S2、S4の何れかに対応したシフトポジションを選択し、発進時シフトポジションとして設定する。
【0041】
また、発進時設定部35は、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」中に設定可能なシフトポジションのうち、その前進(F)側のポジション値、後進(R)側のポジション値が、ともに、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」に対応して定められたポジション値の上限値以下となるように、発進時シフトポジションを設定する。また、発進時設定部35は、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」中に設定可能なシフトポジションのうち、その前進側、及び後進側のポジション値が共に、「通常モード」中に設定された発進時シフトポジションの各ポジション値以下となるように、発進時シフトポジションを設定する。
具体的には、
図6に示すように、変更直前の「通常モード」で設定されていた発進時シフトポジションが、シフトインデックスS8のF4/R2であった場合、「通常モード」における前進側のポジション値は4であり、後進側のポジション値は2である。このため、発進時設定部35は、変更後の運転モードが「サブステアリングモード」である場合、
図6に示すように、シフトインデックスS1~S7のうち、前進側のポジション値の上限値が4以下で、後進側のポジション値の上限値が2以下であり、かつ「通常モード」で設定されていた発進時シフトポジションのポジション値に近いシフトインデックスS6(F3/R2)を、発進時シフトポジションとして設定する。また、
図6に示すように、運転モードが「サブステアリングモード」から「オートステアリングモード」へ変更された場合、シフトインデックスS1、S2、S4のうち、前進側のポジション値の上限値が3以下で、後進側のポジション値の上限値が2以下であり、かつ「サブステアリングモード」で設定されていた発進時シフトポジションのポジション値に近いシフトインデックスS3(F2/R2)を、発進時シフトポジションとして設定する。
【0042】
また、発進時設定部35は、オペレータによりシフトレバー28が操作された場合、シフトレバー28から指令信号に基づいて、複数のシフトポジションのうちのいずれかを、発進時シフトポジションとして、強制的に設定する。シフトレバー28により、発進時シフトポジションをアップ(UP)させる操作がなされた場合、シフトインデックスS1~S8の順でインデックス値が増加する方向に、シフトポジションを変化させる。シフトレバー28により、発進時シフトポジションをダウン(DOWN)させる操作がなされた場合、シフトインデックスS8~S1の順でインデックス値が減少する方向に、シフトポジションを変化させる。このとき、発進時設定部35は、運転モードが、速度制限を要する制御機能が有効な第2の速度制限状態である、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」である場合、「サブステアリングモード」、「オートステアリングモード」で選択不可能なインデックス値をスキップして、アップ操作、ダウン操作が行われる。
【0043】
また、運転モードを変更させる操作が、作業車両10の走行中に行われた場合、発進時設定部35は、変更後の運転モードを状態記憶部33に記憶させておく。前述の、前後進切替レバー24の位置が「ニュートラル(N)」であり、かつ、作業車両10が停止状態となった場合に、発進時設定部35は、状態記憶部33から、変更後の運転モードを呼び出し、発進時シフトポジションを再設定する処理を実行する。
【0044】
(コントローラによる処理の流れ)
図7は、実施形態に係るコントローラ30の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、コントローラ30は、予め設定された時間間隔毎に、以下に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0045】
まず、コントローラ30の発進時設定部35は、前後進切替レバー24の位置が「ニュートラル(N)」であり、かつ、作業車両が停止状態であるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101において、前後進切替レバー24の位置が「ニュートラル(N)」ではない、または、作業車両が停止状態でないと判定された場合(ステップS101:No)、発進時設定部35は、処理を終了する。ステップS101において、前後進切替レバー24の位置が「ニュートラル(N)」であり、かつ、作業車両が停止状態であると判定された場合(ステップS101:Yes)、発進時設定部35は、発進時シフトポジションの設定を行うため、状態記憶部33を参照し、現在選択されている作業車両10の運転モードの情報を取得する(ステップS102)。
【0046】
次に、発進時設定部35は、状態記憶部33を参照し、現在の作業車両10の運転モードが、直前に設定された運転モードから変化したか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103において、現在の作業車両10の運転モードが、直前に設定された運転モードから変化していないと判定された場合(ステップS103:No)、発進時設定部35は、現在の運転モードにおける発進時シフトポジションを維持する(ステップS104)。
また、ステップS103において、現在の作業車両10の運転モードが、直前に設定された運転モードから変化したと判定された場合(ステップS103:Yes)、発進時設定部35は、状態記憶部33に記憶されている発進時シフトポジションを選択する(ステップS105)。
【0047】
ステップS104、又はS105の完了後、発進時設定部35は、オペレータによるシフトレバー28の操作の有無を判定する(ステップS106)。
オペレータによるシフトレバー28の操作が無いと判定された場合(ステップS106:No)、発進時設定部35は、ステップS104、又はステップS105で選択された発進時シフトポジションが、その時点で選択されている運転モードに対応したシフトポジションとなるように、発進時シフトポジションを設定する(ステップS107)。例えば、その時点での運転モードが、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」である場合、発進時設定部35は、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」で設定可能なシフトポジションのうち、その前進(F)側のポジション値、後進(R)側のポジション値が、ともに、「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」に対応して定められたポジション値の上限値以下となるように、発進時シフトポジションを設定する。さらに、変更後の「サブステアリングモード」、または「オートステアリングモード」中に設定可能なシフトポジションのうち、その前進側、及び後進側のポジション値が共に、変更前の「通常モード」中に設定された発進時シフトポジションの各ポジション値以下となるように、発進時シフトポジションを設定する。
【0048】
また、オペレータによってシフトレバー28が操作されたと判定された場合(ステップS106:Yes)、発進時設定部35は、その時点で選択されている運転モードで設定可能なシフトポジションの中から、シフトレバー28の操作に応じて発進時シフトポジションを再設定する(ステップS108)。
発進時設定部35は、ステップS108で再設定した発進時シフトポジションを、全ての運転モードにおける新たな発進時シフトポジションとして、状態記憶部33に記憶させる(ステップS109)。
【0049】
このようにして、コントローラ30における、一連の発進時シフトポジションの設定が終了する。
【0050】
図8は、実施形態に係る作業車両10のコントローラ30において、運転モードが変更されたときの、発進時シフトポジションの他の設定例を示す図である。
図7に示すような、コントローラ30における発進時シフトポジションの設定処理を繰り返し実行していると、「通常モード」から、「オートステアリングモード」に変更した場合、ステップS105において、状態記憶部33に記憶されている発進時シフトポジションに対応するシフトインデックスのインデックス値(
図8の例では、シフトインデックスS7:F3/R3)が選択される。その後のステップS107において、変更後の運転モードである「オートステアリングモード」に対応して、発進時シフトポジションとして、シフトインデックスS4のF2/R2が設定される。その後、運転モードが、「オートステアリングモード」から「通常モード」へ変更された場合、発進時設定部35は、状態記憶部33に記憶されているシフトインデックスS7を選択し、発進時シフトポジションが再設定される。
【0051】
また、
図9は、実施形態に係る作業車両10のコントローラ30において、運転モードが変更したときの、発進時シフトポジションのさらに他の設定例を示す図である。
図9に示すように、「通常モード」から、「オートステアリングモード」へ変更された場合、ステップS105において、状態記憶部33に記憶されている発進時シフトポジションに対応するシフトインデックスのインデックス値(
図9の例では、シフトインデックスS7:F3/R3)が選択される。その後、「オートステアリングモード」において、オペレータによるシフトレバー26の操作によって、発進時シフトポジションが、例えばシフトインデックスS2のF1/R2が設定されると、ステップS108で設定された発進時シフトポジションが状態記憶部33に記憶される。
さらにその後、「オートステアリングモード」から「通常モード」、「通常モード」
から「オートステアリングモード」へ変更しても、ステップS105において、状態記憶部33に記憶された発進時シフトポジションが選択され、その後のステップS107において、シフトインデックスS2が設定される。
【0052】
(作用・効果)
本実施形態によれば、作業機械100における速度制限状態に応じて適切な発進時シフトポジションを選択することができる。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、通常モードに対し、速度制限が必要な運転モードとして、サブステアリングモードとオートステアリングモードとを例に挙げたが、これに限るものではなく、適宜他の運転モードに代えることができる。
また、各運転モードにおいて、選択可能なシフトポジションの例を示したが、適宜、他のシフトポジションを、発進時シフトポジションとして選択可能である。
【0055】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…作業車両 18…変速装置 27…シフトレバー(操作装置) 30…コントローラ